説明

SSCチップ、SSC付きファイバアレイ、SSC付きPLCモジュールおよびSSCチップの製造方法

【課題】スポットサイズ変換器(SSC)を付加した光導波路回路を有する従来のPLCチップよりも歩留まりの向上と工程の簡素化を図れるSSCチップ、SSC付きファイバアレイ、SSC付きPLCモジュールおよびSSCチップの製造方法を提供する。
【解決手段】SSCチップ10は、4つのスポットサイズ変換器(SSC)11を有し、PLCチップとは別に作製される。各SSC11は、PLCチップの入出力導波路の端部と同じコア幅およびコア高さの直線導波路12と、コア幅が直線導波路12のコア幅から横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路13と、コア高さが横テーパー導波路13のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路14と、コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部15と、を有する。PLCチップの入出力導波路の端部にSSCを加工する必要が無く、PLCチップの歩留まりが向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポットサイズ変換器(SSC:Spot-Size Converter)を有するSSCチップ、SSC付きファイバアレイ、SSC付きPLCモジュールおよびSSCチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)の集積化・小型化のために導波路の高Δ(比屈折率差)化が検討されている。高Δ導波路の平面光波回路を有するPLCチップと通常のシングルモードファイバ(SMF)が整列されたファイバアレイとを結合する際には、高Δ導波路とシングルモードファイバはモードフィールドが異なるために,大きな結合損失が生じてしまう。また、導波路のΔが異なるPLC同士を結合する際にも、低Δ導波路と高Δ導波路はモードフィールドが異なるために、大きな結合損失が生じてしまう。そこで、モードフィールドミスマッチを低減するために、さまざまなスポットサイズ変換器(SSC)が検討されている。
【0003】
スポットサイズ変換器(SSC)に関する従来技術として、例えば、非特許文献1乃至5に記載された技術がある。非特許文献1には、低Δコアの中央にテーパー構造を有する高Δコアを配置したダブルコア型SSCが記載されている。非特許文献2には、低Δコア上にテーパー構造を有する高Δコアを積層した積層型SSCが記載されている。非特許文献3には、縦および横方向にコア径を拡大した縦横テーパー型SSCが記載されている。非特許文献4には、縦横テーパー型のエッチング時間を短縮し、コアの形状がT字型となるSSCが開示されている。そして、非特許文献5には、横方向にコア径が減少する狭テーパー型SSCが記載されている。
【0004】
また、垂直方向へ広がったテーパー状のコアを作成する従来技術として、例えば、特許文献1乃至3に記載された技術がある。特許文献1には、エッチングにより基板またはクラッド層に段差を形成し、その段差の分垂直方向に広がったコアを作成する技術が記載されている。特許文献2には、フォトリソグラフィーにおいてレジストやコアのエッチングレートに差をつけてコアをテーパー状に作成する技術が記載されている。そして、特許文献3には、コアに段差を形成し、その上にコアの薄膜を堆積して段差を平均化してテーパー状のコアを作成する技術が記載されている。
【特許文献1】特開平09−197153号公報
【特許文献2】特開平07−027934号公報
【特許文献2】特開2002−156539号公報
【非特許文献1】渡辺啓他,信学会エレクトロニクスソサイエティ大会,C-3-7, pp.130 (2007).
【非特許文献2】渡辺啓他,信学会総合大会,C-3-81, pp. 251 (2005).
【非特許文献3】井藤幹隆他,信学会エレクトロニクスソサイエティ大会,C-3-13, pp. 146 (2003).
【非特許文献4】井藤幹隆他,信学会総合大会,C-3-72, pp. 212 (2003).
【非特許文献5】水野隆之他,信学会総合大会,C-3-73, pp. 213 (2003).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術では、スポットサイズの異なる光導波路やファイバを低損失に接続するために、平面光波回路を有するPLCチップを、光導波路の端にSSCを付加するように加工して作製している。このため、PLCチップ自体の光導波路の歩留まりにSSCの歩留まりが加わるため全体の歩留まりが低下してしまうという問題があった。
また、PLCチップ自体に、縦および横方向にコア径を拡大した縦横テーパーを作成しようとすると、フォトマスクで横方向へ拡大したコアに加工する工程の他に、縦方向にコア径を拡大する加工の工程が必要であるため、その工程数分だけPLCチップ自体の製造コストが増大してという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、スポットサイズ変換器(SSC)を付加した光導波路回路を有する従来のPLCチップよりも歩留まりの向上と工程の簡素化を図れるSSCチップ、SSC付きファイバアレイ、SSC付きPLCモジュールおよびSSCチップの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係るSSCチップは、平面光波回路を有するPLCチップに結合して用いられ、1或いは複数のスポットサイズ変換器を有するSSCチップであって、前記スポットサイズ変換器はクラッドおよびコアからなる光導波路であり、コア幅およびコア高さが一定の直線導波路と、コア幅およびコア高さのうち少なくともコア高さが前記直線導波路のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路と、コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、スポットサイズ変換器(SSC)を有するSSCチップを、平面光波回路を有するPLCチップとは独立に作製することで、スポットサイズの異なる光導波路を有するPLCチップ同士やPLCとファイバを低損失に接続するために、PLCチップの光導波路の端、つまり、実回路に接続された入出力導波路の端部に、SSCを付加する加工を施す必要が無くなる。これにより、SSCを入出力導波路の端部に付加した平面光波回路を有する従来のPLCチップよりも歩留まりが向上する。また、SSCチップ10を、平面光波回路を有するPLCチップとは独立に作製することで、PLCチップ自体に、縦方向にコア径を拡大した縦テーパーを作成する必要がなくなり、PLCチップを作製する際に、縦方向にコア径を拡大する加工の工程が必不要になる。そのため、その工程数分だけPLCチップ作製工程の簡素化を図ることができ、PLCチップの製造コストを低減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係るSSCチップは、前記SSCチップが、前記平面光波回路の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が無い前記PLCチップに用いられ、前記スポットサイズ変換器は、前記PLCチップの入出力導波路の端部と同じコア幅およびコア高さの直線導波路と、コア幅が前記直線導波路のコア幅から横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路と、コア高さが前記横テーパー導波路のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路と、コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部と、が順に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、SSCチップは、コア幅が直線導波路のコア幅から横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路と、コア高さが横テーパー導波路13のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路と、を備えている。このため、スポットサイズの異なる光導波路やファイバを低損失に接続するために、実回路に接続された複数の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が無いPLCチップに用いることができる。そのため、PLCチップには、横テーパー導波路と縦テーパー導波路の両方を形成する必要が無く、歩留まりが更に向上する。
【0011】
請求項3に記載の発明に係るSSCチップは、前記SSCチップが、前記平面光波回路の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が無い前記PLCチップに用いられ、前記スポットサイズ変換器は、前記PLCの入出力導波路の端部と同じコア幅およびコア高さの直線導波路と、コア幅およびコア高さが前記直線導波路のコア幅およびコア高さからそれぞれ縦および横方向にテーパー状に拡大した縦横テーパー導波路と、コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部と、が順に形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、実回路に接続された複数の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が無いPLCチップに用いることができる。そのため、PLCチップには、横テーパー導波路と縦テーパー導波路の両方を形成する必要が無く、歩留まりが更に向上する。
【0013】
請求項4に記載の発明に係るSSCチップは、前記SSCチップが、前記平面光波回路の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が無い前記PLCチップに用いられ、前記スポットサイズ変換器は、前記PLCチップの入出力導波路の端部と同じコア幅およびコア高さの直線導波路と、コア高さが前記直線導波路のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路と、コア幅が前記縦テーパー導波路のコア幅から横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路と、コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部と、が順に形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、実回路に接続された複数の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が無いPLCチップに用いることができる。そのため、PLCチップには、横テーパー導波路と縦テーパー導波路の両方を形成する必要が無く、歩留まりが更に向上する。
【0015】
請求項5に記載の発明に係るSSCチップは、前記SSCチップが、前記平面光波回路の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が形成された前記PLCチップに用いられ、前記スポットサイズ変換器は、前記PLCチップの前記横テーパー導波路と同じコア幅およびコア高さの直線導波路と、コア高さが前記直線導波路のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路と、コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部と、が順に形成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、実回路に接続された複数の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が形成されたPLCチップに用いることができる。そのため、PLCチップには、縦テーパー導波路を形成する必要が無く、歩留まりが向上する。
【0017】
請求項6に記載の発明に係るSSC付きファイバアレイは、請求項1乃至5のいずれかに記載のSSCチップと、複数のファイバが整列配置されたファイバアレイとを備え、
前記複数のスポットサイズ変換器の各スポットサイズ拡大部と、前記複数のファイバの各端面とが最小の接続損失で接続されるように、前記SSCチップの端面とファイバアレイの端面とが結合されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、SSCチップの各SSCの直線導波路の端部と、PLCチップの各入出力導波路の端部とをすべてのポートで最小の接続損失となるように接続することで、スポットサイズの異なるPLCチップの光導波路とファイバを、SSCチップを介して低損失に接続することができる。また、複数のスポットサイズ変換器を有するSSCチップを、平面光波回路を有するPLCチップとは独立に作製することで、本発明に係るSSC付きファイバアレイが用いられるPLCチップの歩留まりが向上する。
【0019】
請求項7に記載の発明に係るSSC付きPLCモジュールは、請求項1乃至5のいずれかに記載のSSCチップと、複数の入出力導波路に接続された平面光波回路を有するPLCチップと、複数のファイバが整列配置されたファイバアレイとを備え、前記複数のスポットサイズ変換器の前記直線導波路の端部と前記平面光波回路の複数の入出力導波路の端部とがそれぞれ最小の接続損失で接続されるように、前記SSCチップの一端面と前記PLCチップの端面とが結合され、かつ、前記複数のスポットサイズ変換器の前記スポットサイズ拡大部と前記複数のファイバの端面とがそれぞれ最小の接続損失で接続されるように、前記SSCチップの他端面とファイバアレイの端面とが結合されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、スポットサイズの異なるPLCチップの光導波路とファイバアレイの各ファイバを、SSCチップを介して低損失に接続することができる。また、複数のスポットサイズ変換器を有するSSCチップを、平面光波回路を有するPLCチップとは独立に作製することで、スポットサイズ変換器を入出力導波路の端部に付加した平面光波回路を有する従来のPLCチップよりも歩留まりが向上する。
【0021】
請求項8に記載の発明に係るSSCチップの製造方法は、請求項1乃至5のいずれか一つに記載のSSCチップの製造方法であって、火炎堆積法により、基板上に下部クラッド層を成膜する段階と、前記基板上に第1のコア層を成膜する段階と、プラズマCVD装置内で、前記第1のコア層上の所定位置に複数の開口部を有するシャドウマスクを配置し、プラズマCVDにより、前記第1のコア層上の所定位置に、コア高さがテーパー状に拡大した縦方向のテーパー構造を持つ第2のコア層を成膜する段階と、フォトリソグラフィーおよびエッチングにより複数の導波路パターンを形成する段階と、火炎堆積法により、前記複数の導波路パターン上に上部クラッド層を成膜する段階と、を備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、SSCチップの第2のコア層を成膜する工程を、プラズマCVDとシャドウマスクを組み合わせて行うことで、縦方向にコア径を拡大させたテーパー、つまり、コア高さがテーパー状に拡大した縦テーパー導波路を作成することができる。そのため、PLCチップを作製する際に、縦方向にコア径を拡大させるための加工工程を省くことができ、工程を簡素化できる。従って、スポットサイズ変換器(SSC)を付加した光導波路回路を有する従来のPLCチップよりも歩留まりの向上と工程の簡素化を図ることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明に係るSSCチップの製造方法は、前記第1のコア層をプラズマCVDにより形成することを特徴とする。この構成によれば、第1のコア層をプラズマCVDにより成膜し、第1のコア層18上に同じくプラズマCVDにより縦方向のテーパー構造を持つ第2のコア層を成膜している。これにより、第1のコア層が第2のコア層と同じ光学特性を有するので、光学特性に優れたSSCチップを実現することができる。
【0024】
請求項10に記載の発明に係るSSCチップの製造方法は、前記第1のコア層を火炎堆積法により形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、スポットサイズ変換器(SSC)を有するSSCチップを、平面光波回路を有するPLCチップとは独立に作製することで、SSCを付加した光導波路回路を有する従来のPLCチップよりも歩留まりが向上する。
【0026】
また、SSCチップの第2のコア層を成膜する工程を、プラズマCVDとシャドウマスクを組み合わせて行うことで、縦方向にコア径を拡大させたテーパー、つまり、コア高さがテーパー状に拡大した縦テーパー導波路を作成することができる。そのため、PLCチップを作製する際に、縦方向にコア径を拡大させるための加工工程を省くことができ、工程を簡素化できる。従って、スポットサイズ変換器(SSC)を付加した光導波路回路を有する従来のPLCチップよりも歩留まりの向上と工程の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を具体化したスポットサイズ変換器(SSC:Spot-Size Converter)を有するSSCチップ、SSC付きファイバアレイ、SSC付きPLCモジュールおよびSSCチップの製造方法の各実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(SSCチップの第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るSSCチップ10を図1乃至図5に基づいて説明する。
図1はSSCチップ10を示す斜視図、図2はSSCチップ10の一つのスポットサイズ変換器11を示す拡大図である。図3はSSCチップ10を示す平面図、図4は図3のX−X線に沿った断面図である。図5(A)はスポットサイズ変換器11を示す平面図、図5(B)はスポットサイズ変換器11部分の縦断面図、図5(C)はスポットサイズ変換器11各部の横断面を示す断面図である。
【0029】
なお、図1乃至図5において、各部の形状や大きさの比率は多少異なっているが、同じ部位には同じ符号を付してある。また、以下の各実施形態で説明するSSCチップは、平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)を有するPLCチップに結合して用いられるものであり、1或いは複数のスポットサイズ変換器(SSC)を有している。PLCチップには、アレイ導波路格子(AWG: Arrayed Waveguide Grating)や、マッハツェンダー干渉計(MZI:Mach-Zehnder interferometer)回路等の実回路および実回路に接続された複数の入出力導波路をそれぞれ構成するコアおよびクラッドからなる光導波路を含む平面光波回路が形成されている。
【0030】
第1実施形態に係るSSCチップ10は、図1および図2に示すように、1例として4つのスポットサイズ変換器(以下、「SSC」と言う。)11を有し、上記PLCチップとは別に作製される。
【0031】
SSCチップ10は、図15に示すようなPLCチップ30に用いられる。このPLCチップ30は、実回路31に接続された複数の入出力導波路32の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が無いPLCチップ(以下、このPLCチップを「タイプAのPLCチップ」と言う。)である。
【0032】
4つのSSC11は、図2乃至図5に示すように、PLCチップ30の入出力導波路32の端部と同じコア幅およびコア高さの直線導波路12と、コア幅が直線導波路12のコア幅から横方向にテーパー状に拡大した横テーパー部13aを有する横テーパー導波路13と、コア高さが横テーパー導波路13のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー部14aを有する縦テーパー導波路14と、コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部15と、がそれぞれ順に形成されている。スポットサイズ拡大部15は、縦テーパー導波路14の端部である。
【0033】
図1に示すSSCチップ10は、図3および図4に示すように、基板16と、基板16上に形成された下部クラッド層17と、下部クラッド層17上に形成された第1のコア層18と、第1のコア層18上の一部に形成された第2のコア層19と、第1のコア層18および第2のコア層19の全体を埋めるように、第1のコア層18および第2のコア層19上に形成された上部クラッド層21とを有する。直線導波路12と横テーパー導波路13は、下部クラッド層17と、第1のコア層18と、上部クラッド層21とにより形成されている。また、縦テーパー導波路14は、下部クラッド層17と、第1のコア層18と、第2のコア層19と、上部クラッド層21とにより形成されている。
【0034】
このような構成のSSCチップ10のSSC11では、図5(A)〜(C)に示すように、その一端側のコア高さとコア幅、つまりスポットサイズ拡大部15のコア高さT2とコア幅W2は、その他端側の高さとコア幅、つまり直線導波路12のコア高さT1とコア幅W1より大きくなっている。
【0035】
(SSCチップ10の製造方法の一例)
上記第1実施形態に係るSSCチップ10は、次のようにして作製される。
(第1の段階)
まず、図6(A)に示すように、火炎堆積(FHD:Flame Hydrolysis Deposition)法により、基板16上に下部クラッド層17を成膜する。
この第1の段階では、一例として、火炎堆積法により、シリコン基板などの基板16上に、下部クラッド層17となるシリカ材料(SiO系のガラス粒子)を堆積し、加熱してガラス膜を溶融透明化する。
【0036】
(第2の段階)
次に、図示を省略したプラズマCVD装置内で、プラズマCVDにより下部クラッド層17上にシリカ材料(SiO系のガラス粒子)からなる第1のコア層18を成膜する(図6(A)参照)。
【0037】
(第3の段階)
次に、プラズマCVD装置内で、第1のコア層18上の所定位置に、図7(A),(B)に示すような矩形の開口部22aを有するシャドウマスク22を配置し(図6(B),図7(A),(B)参照)、プラズマCVDにより、第1のコア層18上の所定位置に、シリカ材料(SiO系のガラス粒子)からなり、コア高さが縦方向にテーパー状に拡大した縦方向のテーパー構造を持つ第2のコア層19を成膜する(図6(C),図7(C)参照)。
【0038】
この第3の段階では、プラズマ状態になった原料ガス(活性化したラジカルやイオン)が、シャドウマスク22の遮蔽部22bと開口部22aの各境界A,B,C,D(図7(A),(B)参照)でシャドウマスク22下に回り込むことにより、図6(C)および図7(C)に示すようにコア高さがテーパー状に拡大した縦方向のテーパー構造を持つ第2のコア層19が第1のコア層18上の所定位置に形成される。
【0039】
(第4の段階)
次に、図8(A)に示すような4つのパターン230を有するフォトマスク23を用い、フォトリソグラフィーと反応性イオンエッチングにより4つの導波路パターン、つまり、図8(B)に示す4つのSSC11の横方向の形状を形成する。なお、各パターン230の直線部230aはSSC11の直線導波路12の横方向の形状を形成する部分であり、傾斜部230bはSSC11の横テーパー導波路13の横方向の形状を形成する部分であり、そして、直線部230cはSSC11の縦テーパー導波路14の横方向の形状を形成する部分である。
【0040】
(第5の段階)
次に、再び火炎堆積法により、4つのSSC(導波路パターン)11上に上部クラッド層21を成膜する(図9(A)参照)。
【0041】
(第6の段階)
次に、図2に示す直線導波路12の端部およびスポットサイズ拡大部15がそれぞれ端面に形成されるように、図9(A)に示す構造体を切断する。なお、スポットサイズ拡大部15が端面に形成されるようにするには、図9(A)に示す構造体を同図の切断箇所Fで切断する。これにより、4つのSSC11を有する図1に示すSSCチップ10が完成する(図9(B)参照)。図9(B)は完成したSSCチップ10の横断面を示している。
【0042】
[実施例]
次に、図1に示すSSCチップ10の実施例を説明する。
この実施例では、上記第3の段階において、2.5%Δ(下部クラッド層17との比屈折率差Δが2.5%)の第1のコア層18上にプラズマCVDとシャドウマスクを組み合わせて縦方向のテーパー構造を持つ2.5%Δ(上部クラッド層21との比屈折率差Δが2.5%)の第2のコア層19を成膜した。
そして、上記第4の段階において、フォトリソグラフィーと反応性イオンエッチングにより4つの導波路パターンを形成してSSC11を作成した。
【0043】
SSC11の他端側のコア高さT1とコア幅W1は2.5%Δコアの実回路(例えば、図15に示すPLCチップ30の実回路31の入出力導波路32)と同じT1=W1=3.5μmとなっており、SSC11の一端側はT2=W2=12.5μmとなっている。コア高さT1とコア幅W1が3.5μmであるSSC11の他端、つまり、直線導波路12の端部は、2.5%ΔコアのPLCチップの入出力導波路(例えば、図15に示すPLCチップ30の入出力導波路32)と低損失で接続されるスポットサイズである。また、コア高さT2とコア幅W2が12.5μmであるSSC11の一端、つまり、スポットサイズ拡大部15は、SMM(シングルモードファイバ)と低損失で接続されるスポットサイズに変換されている。
【0044】
SSC11の断面は、実回路31の入出力導波路32と同じサイズの直線導波路12、横テーパー導波路13、縦テーパー導波路14及びスポットサイズ拡大部15の全てが矩形に維持されている。
【0045】
SSC11のサイズT=W(コア高さT=コア幅W)とSSC−SMF間結合損失の計算値との関係は図10のようになっている。2.5%Δコアの実回路の入出力導波路と同じT1=W1=3.5μmでは、SMFとそのまま接続すると接続損失は約2.6dBとなるが、T2=W2=12.5μmのSSC11とSMFとを接続すると、接続損失は約0.07dBと低減される。
以上の構成を有する第1実施形態に係るSSCチップ10によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0046】
(1)複数のSSC11を有するSSCチップ10を、平面光波回路を有するPLCチップとは独立に作製することで、スポットサイズの異なる光導波路やファイバを低損失に接続するために、PLCチップの光導波路の端、つまり、実回路に接続された入出力導波路の端部に、SSCを付加する加工を施す必要が無くなる。これにより、SSCを入出力導波路の端部に付加した平面光波回路を有する従来のPLCチップよりも歩留まりが向上する。
【0047】
(2)複数のSSC11を有するSSCチップ10を、平面光波回路を有するPLCチップとは独立に作製することで、PLCチップ自体に、縦方向にコア径を拡大した縦テーパーを作成する必要がなくなり、PLCチップを作製する際に、縦方向にコア径を拡大する加工の工程が必不要になる。そのため、その工程数分だけPLCチップ作製工程の簡素化を図ることができ、PLCチップの製造コストを低減することができる。
【0048】
(3)SSCチップ10の第2のコア層19を成膜する工程を、プラズマCVDとシャドウマスクを組み合わせて行うことで、縦方向にコア径を拡大させたテーパー構造、つまり、コア高さが縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路14を作成することができる。そのため、PLCチップを作製する際に、縦方向にコア径を拡大させるための加工工程を省くことができ、工程を簡素化できる。従って、スポットサイズ変換器(SSC)を付加した光導波路回路を有する従来のPLCチップよりも歩留まりの向上と工程の簡素化を図ることができる。
【0049】
(4)SSCチップ10は、コア幅が直線導波路12のコア幅から横方向にテーパー状に拡大した横テーパー部13aを有する横テーパー導波路13と、コア高さが横テーパー導波路13のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー部14aを有する縦テーパー導波路14と、を備えている。このため、スポットサイズ(モードフィールド径)の異なる光導波路やファイバを低損失に接続するために、図15に示すようなPLCチップ30、つまり、実回路31に接続された複数の入出力導波路32の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が無いタイプAのPLCチップに用いることができる。
【0050】
(5)高Δ(比屈折率差の大きい)導波路の平面光波回路を有するタイプAのPLCチップと通常のシングルモードファイバ(SMF)が整列されたファイバアレイとを結合する際に、そのPLCチップとファイバアレイの間にSSCチップ10を介在させることで、モードフィールドミスマッチ(モードフィールド径の違い)が低減されて、接続損失を低減できる。
【0051】
(6)導波路のΔが異なるタイプAのPLCチップ同士を結合する際にも、両PLCチップの間にSSCチップ10を介在させることで、モードフィールドミスマッチが低減されて、接続損失を低減できる。
【0052】
(7)上述したSSCチップ10の製造方法の一例では、第1のコア層18をプラズマCVDにより成膜し、第1のコア層18上に同じくプラズマCVDにより縦方向のテーパー構造を持つ第2のコア層19を成膜している。これにより、第1のコア層18が第2のコア層19と同じ光学特性を有するので、光学特性に優れたSSCチップ10を実現することができる。
【0053】
(SSCチップの他の実施形態)
図11(A)〜(C)は、第2実施形態に係るSSCチップ10AのSSCのみを示している。このSSCチップ10Aは、図1乃至図5に示す上記第1実施形態に係るSSCチップ10において、SSC11の形態のみを変更したものであり、その他の構成はSSCチップ10と同様である。
【0054】
図11(A)〜(C)に示すSSCチップ10Aは、SSCチップ10と同様に、図15に示すようなタイプAのPLCチップ30に用いられる。SSCチップ10AのSSC11Aは、PLC30の入出力導波路32の端部と同じコア幅およびコア高さの直線導波路12Aと、コア幅およびコア高さが直線導波路12Aのコア幅およびコア高さからそれぞれ縦および横方向にテーパー状に拡大した縦横テーパー導波路24と、コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部15Aと、が順に形成されている。
第2実施形態に係るSSCチップ10Aによれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0055】
図12(A)〜(C)は、第3実施形態に係るSSCチップ10BのSSCのみを示している。このSSCチップ10Bは、上記第1実施形態に係るSSCチップ10において、SSC11の形態のみを変更したものであり、その他の構成はSSCチップ10と同様である。
【0056】
図12(A)〜(C)に示すSSCチップ10Bは、SSCチップ10と同様に、図15に示すようなタイプAのPLCチップ30に用いられる。SSCチップ10BのSSC11Bは、PLCチップ30の入出力導波路32の端部と同じコア幅およびコア高さの直線導波路12Bと、コア高さが直線導波路12Bのコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路14Bと、コア幅が縦テーパー導波路14Bのコア幅から横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路13Bと、コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部15Bと、が順に形成されている。
第3実施形態に係るSSCチップ10Bによれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0057】
図13(A)〜(C)は、第4実施形態に係るSSCチップ10CのSSCのみを示している。このSSCチップ10Cは、上記第1実施形態に係るSSCチップ10において、SSC11の形態のみを変更したものであり、その他の構成はSSCチップ10と同様である。
【0058】
図13(A)〜(C)に示すSSCチップ10Cは、図18に示すようなPLCチップ30Aに用いられる。このPLCチップ30Aは、実回路31Aに接続された複数の入出力導波路32Aの端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路33が形成されたPLCチップ(以下、このPLCチップを「タイプBのPLCチップ」と言う。)である。
【0059】
SSCチップ10CのSSC11Cは、PLCチップ30Aの横テーパー導波路33と同じコア幅およびコア高さの直線導波路12Cと、コア高さが直線導波路12Cのコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路14Cと、コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部15Cと、が順に形成されている。
第3実施形態に係るSSCチップ10Cによれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0060】
(第1実施形態に係るSSC付きファイバアレイ)
図14乃至図17は、本発明の第1実施形態に係るSSC付きファイバアレイ40を示している。
SSC付きファイバアレイ40は、図1に示すSSCチップ10と、複数の(本例では4本の)ファイバ25が整列配置されたファイバアレイ20とを備えている。各ファイバ25は例えばシングルモードファイバである。ファイバアレイ20は、図16および図17に示すように、4つのV溝26aを有する保持板26と、4つのV溝26a上に載置されて整列配置された4本のファイバ25とを備える。
【0061】
SSC付きファイバアレイ40は、4つのSSC11の各スポットサイズ拡大部15と、4本のファイバ25の各端面25aとが最小の接続損失で接続されるように、SSCチップ10の端面10aとファイバアレイ20の端面20aとが結合されている。
【0062】
SSC付きファイバアレイ40では、上述したフォトリソグラフィーにより作製するSSCチップ10はファイバアレイ20の各ファイバ25のコアの間隔と同じ間隔に複数のSSC11が形成される。そして、SSCチップ10の各SSC11とファイバアレイ20の各ファイバ25をすべてのポートで最小の接続損失となるように接続して、SSC付きファイバアレイ40を作製する。
【0063】
このような構成を有するSSC付きファイバアレイ40によれば、図15に示すような上記タイプAのPLCチップ30に用いることができる。
また、SSCチップ10の各SSC11の直線導波路12の端部と、PLCチップ30の各入出力導波路32の端部とをすべてのポートで最小の接続損失となるように接続することで、スポットサイズの異なるPLCチップ30の光導波路とファイバを、SSCチップ10を介して低損失に接続することができる。
【0064】
さらに、SSCチップ10のSSC11の数と、ファイバアレイ20のファイバ25の数とをそれぞれ多くした(例えば8つにした)SSC付きファイバアレイ40を作製しておくことで、1種類のSSC付きファイバアレイ40を、PLCチップ30の入出力導波路32の数が異なる多種類のPLCチップ30に共通に用いることができる。
【0065】
(第2実施形態に係るSSC付きファイバアレイ)
図18および図19は、本発明の第2実施形態に係るSSC付きファイバアレイ40Aを示している。
SSC付きファイバアレイ40Aは、図13に示す4つのSSC11Cを有するSSCチップ10Cと、4本のファイバ25が整列配置されたファイバアレイ20とを備えている。
【0066】
SSC付きファイバアレイ40Aは、4つのSSC11Cの各スポットサイズ拡大部15Cと、4本のファイバ25の各端面25a(図14参照)とが最小の接続損失で接続されるように、SSCチップ10Cの端面10aとファイバアレイ20の端面20aとが結合されている。
【0067】
SSC付きファイバアレイ40Aでは、上述したフォトリソグラフィーにより作製するSSCチップ10Cはファイバアレイ20の各ファイバ25のコアの間隔と同じ間隔にSSC11Cが形成される。そして、SSCチップ10Cの各SSC11Cとファイバアレイ20の各ファイバ25をすべてのポートで最小の接続損失となるように接続して、SSC付きファイバアレイ40Aを作製する。
【0068】
このような構成を有するSSC付きファイバアレイ40Aによれば、図18に示すようなタイプBのPLCチップ30に用いることができる。
また、SSCチップ10Cの各SSC11Cの直線導波路12Cの端部と、PLCチップ30Aの各入出力導波路32A端部の横テーパー導波路33とをすべてのポートで最小の接続損失となるように接続することで、スポットサイズの異なるPLCチップ30Aの光導波路とファイバを、SSCチップ10Cを介して低損失に接続することができる。
【0069】
さらに、SSCチップ10Cの各SSC11Cの数と、ファイバアレイ20のファイバ25の数とを多くした(例えば8つにした)SSC付きファイバアレイ40Aを作製しておくことで、1種類のSSC付きファイバアレイ40Aを、PLCチップ30Aの入出力導波路32Aの数が異なる多種類のPLCチップ30Aに共通に用いることができる。
【0070】
(第1実施形態に係るSSC付きPLCモジュール)
第1実施形態に係るSSC付きPLCモジュール50を図15乃至図17に基づいて説明する。
このSSC付きPLCモジュール50は、図14乃至図17で説明した第1実施形態に係るSSC付きファイバアレイ40と、図15に示す上記タイプAのPLCチップ30とを組み合せたものである。すなわち、SSC付きPLCモジュール50は、図1に示す第1実施形態に係るSSCチップ10と、PLCチップ30と、複数のファイバ25が整列配置されたファイバアレイ20とを備えている。
【0071】
このSSC付きPLCモジュール50にあっては、4つの(複数の)SSC11の各直線導波路12の端部とPLCチップ30の4つの(複数の)入出力導波路32の端部とがそれぞれ最小の接続損失で接続されるように、SSCチップ10の端面(一端面)10bとPLCチップ30の端面30aとが結合されている。
【0072】
また、このSSC付きPLCモジュール50にあっては、4つのSSC11の各スポットサイズ拡大部15と4本のファイバ25の端面25aとがそれぞれ最小の接続損失で接続されるように、SSCチップ10の端面(他端面)10aとファイバアレイ20の端面20aとが結合されている。
【0073】
第1実施形態に係るSSC付きPLCモジュール50によれば、スポットサイズの異なるPLCチップ30の光導波路とファイバアレイ20の各ファイバ25を、SSCチップ10を介して低損失に接続することができる。また、複数のSSC11を有するSSCチップ10を、平面光波回路を有するPLCチップ30とは独立に作製することで、SSCを入出力導波路の端部に付加した平面光波回路を有する従来のPLCチップよりも歩留まりが向上する。
【0074】
(第2実施形態に係るSSC付きPLCモジュール)
第2実施形態に係るSSC付きPLCモジュール50Aを図18および図19に基づいて説明する。
【0075】
このSSC付きPLCモジュール50Aは、図18および図19で説明した第2実施形態に係るSSC付きファイバアレイ40Aと、図18に示す上記タイプBのPLCチップ30Aとを組み合せたものである。すなわち、SSC付きPLCモジュール50Aは、図13に示す第3実施形態に係るSSCチップ10Cと、PLCチップ30Aと、4本のファイバ25が整列配置されたファイバアレイ20とを備えている。
【0076】
このSSC付きPLCモジュール50Aにあっては、4つのSSC11Cの各直線導波路12Cの端部とPLCチップ30Aの4つの入出力導波路32端部の各横テーパー導波路33とがそれぞれ最小の接続損失で接続されるように、SSCチップ10Cの端面(一端面)10bとPLCチップ30Aの端面30aとが結合されている。
また、このSSC付きPLCモジュール50Aにあっては、4つのSSC11Cの各スポットサイズ拡大部15Cと4本のファイバ25の端面25aとがそれぞれ最小の接続損失で接続されるように、SSCチップ10Cの端面(他端面)10aとファイバアレイ20の端面20aとが結合されている。
【0077】
第2実施形態に係るSSC付きPLCモジュール50Aによれば、スポットサイズの異なるPLCチップ30Aの光導波路とファイバアレイ20の各ファイバ25を、SSCチップ10Cを介して低損失に接続することができる。また、複数のSSC11Cを有するSSCチップ10Cを、平面光波回路を有するPLCチップ30Aとは独立に作製することで、SSCを入出力導波路の端部に付加した平面光波回路を有する従来のPLCチップよりも歩留まりが向上する。
【0078】
(SSCチップ10の製造方法の別例)
この別例では、上述したSSCチップ10の製造方法の一例で説明した上記第4の段階において、図8(A)に示すフォトマスク23に代えて図20に示すフォトマスク23Aを用いる。
【0079】
このフォトマスク23Aは、4つのパターン240を有し、各パターン240で2つ分のSSC11の横方向の形状をそれぞれ形成するようになっている。つまり、各パターン240は、SSC11の直線導波路12の横方向の形状をそれぞれ形成する左右の直線部240aと、SSC11の横テーパー導波路13の横方向の形状をそれぞれ形成する傾斜部240bと、SSC11の縦テーパー導波路14の横方向の形状を形成する幅の広い直線部240cとを有する。この直線部240cの長手方向の長さ(図20で左右方向の長さ)は、縦テーパー導波路14の長手方向の長さの2倍になっている。そして、各パターン240は、直線部240cの長手方向の中心に関して左右対称になっている。
【0080】
このようなフォトマスク23Aを用いる本例の製造方法では、上述したSSCチップ10の製造方法の一例で説明した上記第6の段階において、図2に示す直線導波路12の端部およびスポットサイズ拡大部15がそれぞれ端面に形成されるように、図20(B)に示す構造体を切断する。この構造体では、4つのパターン240の各々で2つのSSC11が形成されている。このため、図20(B)に示す構造体を同図の切断箇所Gで切断することにより、4つのSSC11をそれぞれ有しかつ図9(B)に示す横断面をそれぞれ有する2つのSSCチップ10が完成する。従って、本例の製造方法によれば、1チップ上に多数のSSCチップ10を形成することができ、材料の無駄を減らしてコストの低減を図れる。
【0081】
なお、上記SSCチップ10の製造方法の一例では、プラズマCVDにより下部クラッド層17上に第1のコア層18を成膜しているが、第1のコア層18を火炎堆積法により下部クラッド層17上に成膜しても良い。
【0082】
なお、上記各実施形態で説明したSSCチップにおいて、SSCの数は「4」に限らず、1或いは複数のSSCを有するSSCチップに本発明は適用可能である。また、上記各実施形態で説明したSSC付きファイバアレイおよびSSC付きPLCモジュールにおいて、SSCの数やファイバの数は「4」に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係るSSCチップを示す斜視図。
【図2】同SSCチップの一つのスポットサイズ変換器を示す拡大図。
【図3】同SSCチップを示す平面図。
【図4】図3のX−X線に沿った断面図。
【図5】(A)はスポットサイズ変換器を示す平面図、(B)はスポットサイズ変換器の縦断面図、(C)はスポットサイズ変換器の各部の横断面を示す断面図。
【図6】(A)〜(C)はSSCチップの製造方法の一例の工程を示す説明図。
【図7】(A),(B)はSSCチップの製造方法の一例の工程を示す説明図。
【図8】(A),(B)はSSCチップの製造方法の一例の工程を示す説明図。
【図9】(A)はSSCチップの製造方法の一例の工程を示す説明図、(B)は作製されたSSCチップを示す断面図。
【図10】実施例で作製されたSSC11のサイズT=W(コア高さT=コア幅W)とSSC−SMF間結合損失の計算値との関係を示すグラフ。
【図11】(A)は第2実施形態に係るSSCチップのスポットサイズ変換器を示す平面図、(B)はスポットサイズ変換器の縦断面図、(C)はスポットサイズ変換器の各部の横断面を示す断面図。
【図12】(A)は第3実施形態に係るSSCチップのスポットサイズ変換器を示す平面図、(B)はスポットサイズ変換器の縦断面図、(C)はスポットサイズ変換器の各部の横断面を示す断面図。
【図13】(A)は第4実施形態に係るSSCチップのスポットサイズ変換器を示す平面図、(B)はスポットサイズ変換器の縦断面図、(C)はスポットサイズ変換器の各部の横断面を示す断面図。
【図14】第1実施形態に係るSSC付きファイバアレイを示す斜視図。
【図15】同SSC付きファイバアレイを示す平面図。
【図16】同SSC付きファイバアレイを示す縦断面図。
【図17】図15のY−Y線に沿った断面図。
【図18】第2実施形態に係るSSC付きファイバアレイを示す平面図。
【図19】同SSC付きファイバアレイを示す縦断面図。
【図20】(A),(B)はSSCチップの製造方法の別例の工程を示す説明図。
【符号の説明】
【0084】
10,10A,10B,10C…SSCチップ
10a,10b…端面
11,11A,11B,11C…スポットサイズ変換器(SSC)
12,12A,12B,12C…直線導波路
13,13B…横テーパー導波路
14,14B,14C…縦テーパー導波路
15,15A,15B,15C…スポットサイズ拡大部
16…基板
17…下部クラッド層
18…第1のコア層
19…第2のコア層
21…上部クラッド層
24…縦横テーパー導波路
20…ファイバアレイ
20a…端面
23,23A…フォトマスク
25…ファイバ
30,30A…PLCチップ
30a…端面
32…入出力導波路
33…横テーパー導波路
40,40A…SSC付きファイバアレイ
50,50A…PLCモジュール
230,240…パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面光波回路を有するPLCチップに結合して用いられ、1或いは複数のスポットサイズ変換器を有するSSCチップであって、
前記スポットサイズ変換器はクラッドおよびコアからなる光導波路であり、
コア幅およびコア高さが一定の直線導波路と、
コア幅およびコア高さのうち少なくともコア高さが前記直線導波路のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路と、
コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部と、を備えることを特徴とするSSCチップ。
【請求項2】
前記SSCチップは、前記平面光波回路の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が無い前記PLCチップに用いられ、
前記スポットサイズ変換器は、
前記PLCチップの入出力導波路の端部と同じコア幅およびコア高さの直線導波路と、
コア幅が前記直線導波路のコア幅から横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路と、
コア高さが前記横テーパー導波路のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路と、
コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部と、が順に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のSSCチップ。
【請求項3】
前記SSCチップは、前記平面光波回路の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が無い前記PLCチップに用いられ、
前記スポットサイズ変換器は、
前記PLCの入出力導波路の端部と同じコア幅およびコア高さの直線導波路と、
コア幅およびコア高さが前記直線導波路のコア幅およびコア高さからそれぞれ縦および横方向にテーパー状に拡大した縦横テーパー導波路と、
コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部と、が順に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のSSCチップ。
【請求項4】
前記SSCチップは、前記平面光波回路の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が無い前記PLCチップに用いられ、
前記スポットサイズ変換器は、
前記PLCチップの入出力導波路の端部と同じコア幅およびコア高さの直線導波路と、
コア高さが前記直線導波路のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路と、
コア幅が前記縦テーパー導波路のコア幅から横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路と、
コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部と、が順に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のSSCチップ。
【請求項5】
前記SSCチップは、前記平面光波回路の入出力導波路の端部にコア幅が横方向にテーパー状に拡大した横テーパー導波路が形成された前記PLCチップに用いられ、
前記スポットサイズ変換器は、
前記PLCチップの前記横テーパー導波路と同じコア幅およびコア高さの直線導波路と、
コア高さが前記直線導波路のコア高さから縦方向にテーパー状に拡大した縦テーパー導波路と、コア幅およびコア高さがともに拡大したスポットサイズ拡大部と、が順に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のSSCチップ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載のSSCチップと、複数のファイバが整列配置されたファイバアレイとを備え、
前記複数のスポットサイズ変換器の各スポットサイズ拡大部と、前記複数のファイバの各端面とが最小の接続損失で接続されるように、前記SSCチップの端面とファイバアレイの端面とが結合されていることを特徴とするSSC付きファイバアレイ。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載のSSCチップと、複数の入出力導波路に接続された平面光波回路を有するPLCチップと、複数のファイバが整列配置されたファイバアレイとを備え、
前記複数のスポットサイズ変換器の前記直線導波路の端部と前記平面光波回路の複数の入出力導波路の端部とがそれぞれ最小の接続損失で接続されるように、前記SSCチップの一端面と前記PLCチップの端面とが結合され、かつ、
前記複数のスポットサイズ変換器の前記スポットサイズ拡大部と前記複数のファイバの端面とがそれぞれ最小の接続損失で接続されるように、前記SSCチップの他端面とファイバアレイの端面とが結合されていることを特徴とするSSC付きPLCモジュール。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載のSSCチップの製造方法であって、
火炎堆積法により、基板上に下部クラッド層を成膜する段階と、
前記基板上に第1のコア層を成膜する段階と、
プラズマCVD装置内で、前記第1のコア層上の所定位置に複数の開口部を有するシャドウマスクを配置し、プラズマCVDにより、前記第1のコア層上の所定位置に、コア高さがテーパー状に拡大した縦方向のテーパー構造を持つ第2のコア層を成膜する段階と、
フォトリソグラフィーおよびエッチングにより複数の導波路パターンを形成する段階と、
火炎堆積法により、前記複数の導波路パターン上に上部クラッド層を成膜する段階と、を備えることを特徴とするSSCチップの製造方法。
【請求項9】
前記第1のコア層をプラズマCVDにより形成することを特徴とする請求項8に記載のSSCチップの製造方法。
【請求項10】
前記第1のコア層を火炎堆積法により形成することを特徴とする請求項8に記載のSSCチップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−128109(P2010−128109A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301628(P2008−301628)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】