説明

SiC単結晶の製造方法及び製造装置

【課題】SiC単結晶の成長の途中においてもメルトバックを行うことができるSiC単結晶の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】坩堝10の周囲に配置された加熱装置22により坩堝10中にて内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されたSi−C溶液24に、種結晶保持軸12に保持されたSiC種結晶14を接触させて、種結晶14を基点としてSiC単結晶を成長させる、溶液法によるSiC単結晶の製造方法であって、SiC単結晶の成長中に、Si−C溶液24の内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、種結晶14と種結晶14を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶をメルトバックすることを含む、SiC単結晶の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC単結晶の溶液法による製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SiC単結晶は、熱的、化学的に非常に安定であり、機械的強度に優れ、放射線に強く、しかもSi単結晶に比べて高い絶縁破壊電圧、高い熱伝導率などの優れた物性を有する。そのため、Si単結晶やGaAs単結晶などの既存の半導体材料では実現できない高出力、高周波、耐電圧、耐環境性等を実現することが可能であり、大電力制御や省エネルギーを可能とするパワーデバイス材料、高速大容量情報通信用デバイス材料、車載用高温デバイス材料、耐放射線デバイス材料等、といった広い範囲における、次世代の半導体材料として期待が高まっている。
【0003】
従来、SiC単結晶の成長法としては、代表的には気相法、アチソン(Acheson)法、及び溶液法が知られている。気相法のうち、例えば昇華法では、成長させた単結晶にマイクロパイプ欠陥と呼ばれる中空貫通状の欠陥や積層欠陥等の格子欠陥及び結晶多形が生じやすいという欠点を有するが、結晶の成長速度が大きいため、従来、SiCバルク単結晶の多くは昇華法により製造されており、成長結晶の欠陥を低減する試みも行われている。アチソン法では原料として珪石とコークスを使用し電気炉中で加熱するため、原料中の不純物等により結晶性の高い単結晶を得ることは不可能である。
【0004】
そして、溶液法は、黒鉛坩堝中でSi融液またはSi融液に合金を融解し、その融液中に黒鉛坩堝からCを溶解させ、低温部に設置した種結晶基板上にSiC結晶層を析出させて成長させる方法である。溶液法は気相法に比べ熱平衡に近い状態での結晶成長が行われるため、低欠陥化が最も期待できる。このため、最近では、溶液法によるSiC単結晶の製造方法がいくつか提案されている。
【0005】
一般的に、SiC単結晶を成長させる種結晶基板の表層には、転位等の加工変質層や自然酸化膜等が存在していることがあり、溶液法において、SiC単結晶を成長させる前にこれらを溶解して除去するメルトバックを行うことが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−284301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、SiC単結晶の成長前しかメルトバックすることができず、SiC単結晶の成長中に発生した欠陥を溶かし込むことができない。
【0008】
したがって、SiC単結晶の成長の途中においてもメルトバックを行うことができるSiC単結晶の製造方法及び製造装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、坩堝の周囲に配置された加熱装置により坩堝中にて内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されたSi−C溶液に、種結晶保持軸に保持されたSiC種結晶を接触させて、種結晶を基点としてSiC単結晶を成長させる、溶液法によるSiC単結晶の製造方法であって、
SiC単結晶の成長中に、Si−C溶液の内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、種結晶と種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶をメルトバックすることを含む、SiC単結晶の製造方法である。
【0010】
本発明はまた、Si−C溶液を収容する坩堝と、
坩堝の周囲に配置された加熱装置と、
上下方向に移動可能に配置された種結晶保持軸とを備え、
種結晶保持軸に保持されたSiC種結晶を、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されたSi−C溶液に接触させて、種結晶を基点としてSiC単結晶を成長させる、溶液法によるSiC単結晶の製造装置であって、
SiC単結晶の成長中に、Si−C溶液の内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、種結晶と種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶をメルトバックする手段を備えた、SiC単結晶の製造装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、SiC単結晶の成長の途中においてもメルトバックを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明において用いられ得るSiC単結晶製造装置の基本構成の一例を表す断面模式図である。
【図2】第1の実施形態において用いられ得る、坩堝上面に追加の断熱材を配置及び取り外し可能なSiC単結晶製造装置の断面模式図である。
【図3】第2の実施形態において用いられ得る、坩堝及び/または坩堝の周囲に配置された加熱装置の位置を上下方向に変更することが可能なSiC単結晶製造装置の断面模式図である。
【図4】第3の実施形態において用いられ得る、Si−C溶液を液面から加熱することが可能な加熱装置をSi−C溶液の液面上近傍に備えたSiC単結晶製造装置の断面模式図である。
【図5】第4の実施形態において用いられ得る、種結晶保持軸を加熱することが可能な加熱装置を種結晶保持軸の周囲に備えたSiC単結晶製造装置の断面模式図である。
【図6】第5の実施形態において用いられ得る、Si−C溶液の逆温度勾配領域まで種結晶と種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶を浸漬することが可能な、SiC単結晶製造装置の断面模式図である。
【図7】第3の実施形態において用いられ得る、Si−C溶液を液面から加熱することが可能なS字状の黒鉛ヒーターを備えたSiC単結晶製造装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、坩堝の周囲に配置された加熱装置により坩堝中にて内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されたSi−C溶液に、種結晶保持軸に保持されたSiC種結晶を接触させて、種結晶を基点としてSiC単結晶を成長させる、溶液法によるSiC単結晶の製造方法であって、SiC単結晶の成長中に、Si−C溶液の内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、種結晶と種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶(以下、成長単結晶という)をメルトバックすることを含む、SiC単結晶の製造方法である。
【0014】
本発明に係る製造方法によれば、SiC単結晶の成長途中の任意のタイミングで、Si−C溶液の内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、内部から表面の領域のSi−C溶液中のSiC飽和度を低下させることによって、成長単結晶をメルトバックすることができる。また、本発明に係る製造方法によれば、SiC単結晶を成長させる前に種結晶をメルトバックすることも可能である。
【0015】
本明細書においては、上述のように、成長単結晶とは、種結晶と種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶のことをいう。種結晶を基点としてSiC単結晶を成長させている途中にメルトバックを行うため、このように表現するものである。本発明によれば、成長結晶の表層部分に発生した転位や欠陥等が発生、増殖した結晶部を溶かし込むことができる。成長結晶の厚みが非常に薄い場合は、表層部分に含まれる転位や欠陥だけでなく下地の種結晶基板も同時に溶かし込むことができる。
【0016】
本発明に係る製造方法によれば、SiC単結晶の成長途中に発生した転位や欠陥が発生してしまった結晶部を溶かし込むことができるため、転位や欠陥が少ないSiC単結晶を得ることができる。メルトバックに次いでSiC単結晶の成長を続けることができ、また、メルトバックとSiC単結晶の成長とを複数回繰り返すこともできる。当然のことながら、SiC単結晶の成長中に本製造方法によるメルトバックを行うとともに、SiC単結晶の成長前に、種結晶基板に本発明に係る製造方法のメルトバック方法を適用することができ、または従来行われていた種結晶基板のメルトバック方法を併用してもよい。
【0017】
本明細書において、メルトバックとは、種結晶または種結晶を基点として成長したSiC単結晶の表面層をSi−C溶液中に溶解させて除去することをいう。一般的に、SiC単結晶を成長させる種結晶基板の表層には、転位等の加工変質層や自然酸化膜等が存在していることがあり、SiC単結晶を成長させる前にこれらを溶解して除去することが、高品質なSiC単結晶を成長させるために効果的である。本発明においては、従来除去することができなかった成長中のSiC単結晶に発生し得る転位及び欠陥等を除去することができる。
【0018】
メルトバックにより溶解する厚みは、成長中に発生し得る転位及び欠陥を含む層を十分に除去するために、転位、欠陥を含む層の厚みにもよるが、一般的に、およそ1μm〜1mm程度または1μm〜100μm程度が好ましい。
【0019】
メルトバックは、Si−C溶液の内部から溶液の表面に向けて温度が一定または増加する温度勾配を、成長単結晶近傍のSi−C溶液に形成することにより行われ得る。SiC単結晶成長を行う場合には、種結晶基板のSi−C溶液の内部から溶液の表面に向けて温度低下する温度勾配を形成するが、この温度勾配を一定または増加する温度勾配に変更することによって成長単結晶をメルトバックすることができる。Si−C溶液の内部から溶液の表面に向けて増加する温度勾配は、溶液表面から10mm、8mm、6mm、4mm、3mm、2mm、1mm等の範囲で、0〜50℃/cmが好ましく、0〜20℃/cmがより好ましい。
【0020】
本明細書において、Si−C溶液の内部から表面の領域とは、種結晶を基点としてSiC単結晶を成長させるため、または成長単結晶をメルトバックするためのSi−C溶液の液面近傍の領域をいう。Si−C溶液の内部から表面の領域とは、Si−C溶液の表面から例えば1mm、2mm、4mm、6mm、8mm、または10mm程度の深さの間の領域であることができ、成長単結晶のより近傍領域、例えばSi−C溶液の表面から10μm、50μm、または100μm程度の深さの間の領域であることができる。
【0021】
図1に、本発明に係る製造方法を実施するのに用いられ得るSiC単結晶製造装置の基本構成の一例を示す。図示したSiC単結晶製造装置100は、SiまたはSi/Xの融液中にCが溶解してなるSi−C溶液24を収容した坩堝10を備え、Si−C溶液24の内部からSi−C溶液24の表面に向けて温度低下する温度勾配を形成し、昇降可能な種結晶保持軸12の先端に保持された種結晶基板14をSi−C溶液24に接触させて、種結晶基板14を基点としてSiC単結晶を成長させることができる。坩堝10及び種結晶保持軸12を、種結晶保持軸12の軸を中心に回転させることが好ましい。
【0022】
Si−C溶液24は、原料を坩堝に投入し、加熱融解させて調製したSiまたはSi/Xの融液にCを溶解させることによって調製される。Xは一種類以上の金属であり、SiC(固相)と熱力学的に平衡状態となる液相(溶液)を形成できれば特に制限されない。適当な金属Xの例としては、Ti、Mn、Cr、Ni、Ce、Co、V、Fe等が挙げられる。例えば、坩堝内にSiに加えて、Cr、Ni等を投入し、Si−Cr溶液、Si−Cr−Ni溶液等を形成することができる。また、坩堝10を、黒鉛坩堝などの炭素質坩堝またはSiC坩堝とすることによって、坩堝10の溶解によりCが融液中に溶解し、Si−C溶液が形成される。こうすると、Si−C溶液24中に未溶解のCが存在せず、未溶解のCへのSiC単結晶の析出によるSiCの浪費が防止できる。Cの供給は、例えば、炭化水素ガスの吹込み、または固体のC供給源を融液原料と一緒に投入するといった方法を利用してもよく、またはこれらの方法と坩堝の溶解とを組み合わせてもよい。
【0023】
Si−C溶液24は、その表面温度が、Si−C溶液へのCの溶解量の変動が少ない1800〜2200℃であることが好ましい。
【0024】
Si−C溶液の温度測定は、熱電対、放射温度計等を用いて行うことができる。熱電対に関しては、高温測定及び不純物混入防止の観点から、ジルコニアやマグネシア硝子を被覆したタングステン−レニウム素線を黒鉛保護管の中に入れた熱電対が好ましい。
【0025】
種結晶保持軸12は、その端面に種結晶基板を保持する黒鉛の軸であり、円柱状、角柱状等の任意の形状の黒鉛軸を用いることができる。
【0026】
保温のために、坩堝10の外周は、断熱材18で覆われ得る。これらを一括して石英管26内に収容してもよい。断熱材18の周囲には、加熱装置22が配置されている。加熱装置は、例えば高周波コイルであることができる。高周波コイルは、例えばそれぞれ独立して制御可能な上段コイル及び下段コイル等の多段構成から構成され得る。
【0027】
坩堝10、断熱材18、及び加熱装置22は、高温になるので、水冷チャンバーの内部に配置され得る。水冷チャンバーは、装置内の雰囲気調整を可能にするために、ガス導入口とガス排気口とを備えることができる。
【0028】
Si−C溶液24の温度は、通常、輻射等のためSi−C溶液24の内部よりも表面の温度が低くなる温度分布を形成しやすい。また、加熱装置22が上段コイル及び下段コイルを備えた高周波コイルである場合は、上段コイル及び下段コイルの出力をそれぞれ調整することによって、Si−C溶液24の内部から表面の領域に所定の温度低下する温度勾配を形成することができる。温度勾配は、溶液表面から10mm、8mm、6mm、4mm、3mm、2mm、1mm等の範囲で、50℃/cm以下が好ましく、40℃/cm以下がより好ましい。
【0029】
Si−C溶液24中に溶解したCは、拡散及び対流により分散される。種結晶基板14の下面近傍は、加熱装置22の出力制御、Si−C溶液24の表面からの放熱、及び種結晶保持軸12を介した抜熱等によって、Si−C溶液24の内部よりも低温となる温度勾配が形成され得る。高温で溶解度の大きい溶液内部に溶け込んだCが、低温で溶解度の低い種結晶基板付近に到達すると過飽和状態となり、この過飽和度を駆動力として種結晶基板上にSiC単結晶を成長させることができる。
【0030】
このようにしてSiC単結晶を成長させているときに、任意のタイミングで、成長単結晶をメルトバックする方法として、幾つかの方法が挙げられる。以下に図面を参照しながら説明する。
【0031】
(本製造方法の第1の実施形態)
本発明に係る製造方法の第1の実施形態においては、坩堝が周囲に断熱材を有し、SiC単結晶の成長中に、坩堝上部の断熱材の厚みを大きくして、Si−C溶液の内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することにより、内部から表面の領域のSi−C溶液中のSiC飽和度を低下させて、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0032】
図2に示すように、SiC単結晶の成長途中に、坩堝10の上部の断熱材18上に、さらに断熱材28を配置することができる。坩堝上部の断熱材18上にさらに断熱材28を配置すると、断熱材による保温効果が向上して、特にSi−C溶液24の表面の温度が上昇し、種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することができる。
【0033】
内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することによって、種結晶基板14の近傍の内部から表面の領域のSi−C溶液24中のSiC飽和度を低下させて、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0034】
断熱材28を断熱材18の上部から外すことによりメルトバックを終了することができ、Si−C溶液の温度勾配を、再度、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配に変更して、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0035】
断熱材28を配置及び取り外す方法は、手動または自動の任意の方法で行うことができ、例えば昇降手段を有する昇降機によって断熱材28を上下に移動させることにより行うことができる。また、2以上の断熱材を積み重ねて用いてもよく、あるいは、断熱材28としていくつかの厚みを有する断熱材を用意しておき、狙いの温度勾配に応じて所望の厚みを有する断熱材を選んで用いてもよい。
【0036】
(本製造方法の第2の実施形態)
本発明に係る製造方法の第2の実施形態においては、SiC単結晶を成長させているときのSi−C溶液が、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有し、且つ内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されており、
坩堝内における加熱中心の位置の上方に移動して、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を、内部から表面に向けて一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、内部から表面の領域のSi−C溶液中のSiC飽和度を低下させることにより、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0037】
坩堝に収容されたSi−C溶液24は、図3に示すような周囲に配置された加熱装置22によって加熱される構成を有しているため、加熱装置22の中央部に近いSi−C溶液が最も加熱されやすく、また坩堝の下部から熱が逃げやすいため、通常、Si−C溶液の内部から溶液の表面に向けて温度低下する温度勾配を形成しつつ、Si−C溶液24の内部から溶液の深部に向けて温度低下する温度勾配を形成しやすい。つまり、Si−C溶液24の内部に加熱中心があり、表面及び深部において温度が比較的低く、内部において温度が比較的高い温度勾配を形成することができる。
【0038】
本実施形態においては、図3に示すように、SiC単結晶の成長途中に、坩堝10の周囲に配置された加熱装置22を、坩堝10に対して上下方向に移動させることができる。坩堝10に対して加熱装置22を上方に移動させると、坩堝内における加熱中心を坩堝内の上方に移動させることができるので、内部から深部に向けて温度低下する温度勾配をSiC溶液24中の上方に移動させて、種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することができる。
【0039】
種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液24の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することによって、内部から表面の領域のSi−C溶液24中のSiC飽和度を低下させることができ、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0040】
上方に移動させた加熱装置22を、下方に移動させることによりメルトバックを終了することができ、再度、Si−C溶液の温度勾配を、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配に変更して、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0041】
加熱装置22を上下に移動させる方法は、手動または自動の任意の方法で行うことができ、例えば昇降手段を有する昇降機によって加熱装置22を上下に移動させることにより行うことができる。
【0042】
本実施形態においては、成長単結晶近傍のSi−C溶液中の温度勾配を連続的に変化させることができるので、成長単結晶のメルトバックが可能なだけでなく、SiC単結晶の成長速度を連続的に変化させることもできる。
【0043】
別法では、図3に示すように、SiC単結晶の成長途中に、坩堝10の周囲に配置された加熱装置22に対して、Si−C溶液24を収容した坩堝10を上下方向に移動させることができる。加熱装置22に対して坩堝10を下方に移動させると、坩堝内における加熱中心を坩堝内の上方に移動させることができるので、内部から深部に向けて温度低下する温度勾配をSiC溶液24中の上方に移動させて、種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することができる。
【0044】
種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液24の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することによって、内部から表面の領域のSi−C溶液24中のSiC飽和度を低下させることができ、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0045】
下方に移動させた坩堝10を、上方に移動させることにより、メルトバックを終了することができ、再度、Si−C溶液24の温度勾配を、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配に変更して、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0046】
坩堝10を上下に移動させる方法は、手動または自動の任意の方法で行うことができ、例えば昇降手段を有する昇降機によって坩堝10を上下に移動させることにより行うことができる。
【0047】
また、加熱装置22及び坩堝10の両方を同時に上下に移動させて、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、成長単結晶をメルトバックしてもよい。
【0048】
(本製造方法の第3の実施形態)
本発明に係る製造方法の第3の実施形態においては、Si−C溶液の液面上に配置した液面加熱装置によりSi−C溶液を加熱してSi−C溶液の内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、内部から表面の領域のSi−C溶液中のSiC飽和度を低下させることにより、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0049】
図4に示すように、Si−C溶液24の表面近傍に液面加熱装置30を配置し、SiC単結晶の成長途中に、液面加熱装置30によって、Si−C溶液24を液面から加熱することができる。これにより、Si−C溶液24の表面領域の温度が上昇し、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液24の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することができる。
【0050】
液面加熱装置30は、坩堝内に配置して、Si−C溶液24を液面から加熱できるものであれば任意の加熱装置であることができ、例えば、図7に示すようなSi−C溶液24の液面上近傍においてリング形状を有する断面がS字状の黒鉛ヒーターであって高周波コイルヒーター36を備えた黒鉛ヒーター34であることができる。黒鉛ヒーター34は、L字状等他の形状であってもよい。
【0051】
種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液24の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することによって、内部から表面の領域のSi−C溶液24中のSiC飽和度を低下させることができ、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0052】
液面加熱装置30の出力を切ることにより、メルトバックを終了することができ、Si−C溶液24の温度勾配を、再度、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配に変更して、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0053】
本実施形態においては、成長単結晶のメルトバックが可能なだけでなく、液面を加熱することができるため、メルトバック後に単結晶の成長を再開させる際のSi−C溶液24の液面における急激な温度低下を抑制でき、液面近傍における多結晶の発生を抑制することができる。
【0054】
(本製造方法の第4の実施形態)
本発明に係る製造方法の第4の実施形態においては、種結晶保持軸の周囲に配置した種結晶保持軸加熱装置により種結晶保持軸を加熱して、種結晶保持軸を介した熱伝導によるSi−C溶液からの抜熱を抑制して、Si−C溶液の内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、内部から表面の領域のSi−C溶液中のSiC飽和度を低下させることにより、成長単結晶をメルトバックすることができる。実質的に成長単結晶の近傍のみの温度勾配を変更して成長単結晶の近傍のSi−C溶液の飽和度を下げることにより、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0055】
図5に示すように、種結晶保持軸12の周囲に種結晶保持軸加熱装置32を配置し、SiC単結晶の成長途中に、種結晶保持軸加熱装置32によって、種結晶保持軸12を加熱して、種結晶保持軸12を介した熱伝導によるSi−C溶液24からの抜熱を低減することができる。
【0056】
Si−C溶液24から種結晶保持軸12を介した抜熱を低減することによって、内部から表面の領域のSi−C溶液24中のSiC飽和度を低下させることができ、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0057】
種結晶保持軸加熱装置32の出力を切ることにより、メルトバックを終了することができ、内部から表面の領域のSi−C溶液24の温度勾配を、再度、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配に変更して、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0058】
種結晶保持軸加熱装置32は、種結晶保持軸12の周囲に配置して加熱することができる任意の加熱装置であることができ、例えば高周波ヒーター、抵抗ヒーター等であることができる。
【0059】
本実施形態においては、成長単結晶をメルトバックすることができるだけでなく、Si−C溶液の温度勾配を加熱装置からの加熱により直接変更するのではなく種結晶保持軸を介した抜熱を利用するため、成長単結晶近傍のみのSi−C溶液の飽和度を下げることが可能であり、Si−C溶液の温度ばらつきをより小さく抑えることができ、多結晶の発生を抑制することができる。
【0060】
(本製造方法の第5の実施形態)
本発明に係る製造方法の第5の実施形態においては、坩堝の周囲に配置された加熱装置により坩堝内にて内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有し、且つ内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されたSi−C溶液に、種結晶保持軸に保持されたSiC種結晶基板を接触させて、種結晶基板を基点としてSiC単結晶を成長させる、溶液法によるSiC単結晶の製造方法であって、
SiC単結晶の成長中に、成長単結晶の少なくとも一部を、内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有する領域まで浸漬して、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0061】
図6に示すように、Si−C溶液24が、内部よりも表面の温度が低い温度勾配を有し、且つ内部よりも深部の温度が低い温度勾配を有するように加熱され、
SiC単結晶の成長途中に、成長単結晶の少なくとも一部を、内部から深部に向けて温度が一定または低下する温度勾配を有する領域まで浸漬することができる。
【0062】
成長単結晶の少なくとも一部を、内部から深部の一定温度または温度低下する温度勾配を有する領域にまで浸漬することによって、成長単結晶をメルトバックすることができる。これは、上記領域まで成長単結晶を浸漬することによって、成長単結晶の近傍のSiC溶液中のSiC飽和度が低くなるためである。
【0063】
成長単結晶の下面、下面及び側面等の成長単結晶のメルトバックしたい範囲に応じて、成長単結晶の浸漬深さを変えることができ、内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有する領域に到達する成長単結晶の範囲を調節することができる。
【0064】
成長単結晶を元の位置に戻すことにより、メルトバックを終了することができ、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0065】
本実施形態においては、追加の装置を必要としないので、コスト的に有利である。
【0066】
また、図6において、Si−C溶液の表面から成長単結晶の下面までの浸漬深さをdとし、成長単結晶の厚みをtとすると、t≧dの関係を有することが好ましい。これにより、Si−C溶液24の一定温度または温度低下する温度勾配を有する内部から深部の領域まで成長単結晶を浸漬してメルトバックしつつも、種結晶保持軸12に、Si−C溶液24が接触することを防止することができ、多結晶の発生を抑制することができる。
【0067】
t≧dの関係を得るために、成長単結晶の厚みtよりもSi−C溶液24の表面から加熱中心までの距離が小さくなるような温度分布を有するように、Si−C溶液24を加熱することができる。または、t≧dの関係を得るために、Si−C溶液24の表面から加熱中心までの距離よりも、成長単結晶の厚みtが大きくなるような種結晶を準備することもできる。
【0068】
上記実施形態1〜5のいずれにおいても、あらかじめ種結晶基板を加熱しておいてから種結晶基板をSi−C溶液に接触させてもよい。低温の種結晶基板を高温のSi−C溶液に接触させると、種結晶に熱ショック転位が発生することがある。種結晶基板をSi−C溶液に接触させる前に、種結晶基板を加熱しておくことが、熱ショック転位を防止し、高品質なSiC単結晶を成長させるために効果的である。種結晶基板の加熱は種結晶保持軸ごと加熱して行うことができる。また、比較的低温のSi−C溶液に種結晶を接触させてから、SiC単結晶を成長させる温度にSi−C溶液を加熱してもよい。この場合も、熱ショック転位を防止し、高品質なSiC単結晶を成長させるために効果的である。
【0069】
本発明はまた、Si−C溶液を収容する坩堝と、
坩堝の周囲に配置された加熱装置と、
上下方向に移動可能に配置された種結晶保持軸とを備え、
種結晶保持軸に保持されたSiC種結晶を、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されたSi−C溶液に接触させて、種結晶を基点としてSiC単結晶を成長させる、溶液法によるSiC単結晶の製造装置であって、
SiC単結晶の成長中に、Si−C溶液の内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、種結晶と種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶(以下、成長単結晶という)をメルトバックする手段を備えた、SiC単結晶の製造装置である。
【0070】
本発明に係る製造装置によれば、SiC単結晶の成長途中の任意のタイミングで、Si−C溶液の内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、内部から表面の領域のSi−C溶液中のSiC飽和度を低下させることによって、成長単結晶をメルトバックすることができる。また、本発明に係る製造装置によれば、SiC単結晶を成長させる前に種結晶をメルトバックすることも可能である。
【0071】
本発明に係る製造装置によれば、SiC単結晶の成長途中に発生した転位や欠陥を溶かし込むことができるため、転位や欠陥が少ないSiC単結晶を得ることができる。メルトバックに次いでSiC単結晶の成長を続けることができ、また、メルトバックとSiC単結晶の成長とを複数回繰り返すこともできる。当然のことながら、SiC単結晶の成長中に本製造装置によるメルトバック手段を適用するとともに、SiC単結晶の成長前に、種結晶基板に本発明に係る製造装置に備えるメルトバック手段を適用することができ、または従来行われていた種結晶基板のメルトバック手段を併用してもよい。
【0072】
上述した本発明に係る製造方法に関連して記載した、成長単結晶及びメルトバックの定義及び関連する記載、並びに用いられ得るSiC単結晶製造装置の基本構成の一例に関連する説明は、本製造装置についても同様である。
【0073】
SiC単結晶を成長させているときに、任意のタイミングで、成長単結晶をメルトバックする手段として、幾つかの方法が挙げられる。以下に図面を参照しながら説明する。
【0074】
(本製造装置の第1の実施形態)
本発明に係る製造装置の第1の実施形態を図2に示す。
【0075】
図2に示すように、本製造装置の第1の実施形態は、SiC単結晶の成長途中に、坩堝10の上部の断熱材18上に、さらに断熱材28を配置する手段を備える。坩堝上部の断熱材18上にさらに断熱材28を配置すると、断熱材による保温効果が向上して、特にSi−C溶液24の表面の温度が上昇し、種結晶基板14の近傍の内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液24の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することができる。
【0076】
種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することによって、内部から表面の領域のSi−C溶液中のSiC飽和度を低下させることができ、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0077】
本製造装置の第1の実施形態はまた、断熱材28を断熱材18の上部から外す手段を備える。断熱材28を断熱材18の上部から外すことによりメルトバックを終了することができ、Si−C溶液の温度勾配を、再度、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配に変更して、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0078】
断熱材28を配置及び取り外す手段は、手動または自動の任意の手段であることができ、例えば昇降手段を有する昇降機によって断熱材28を上下に移動させる手段を有することができる。また、2以上の断熱材を積み重ねて用いる手段を有してもよく、あるいは、断熱材28としていくつかの厚みを有する断熱材を用意しておき、狙いの温度勾配に応じて所望の厚みを有する断熱材を選択する手段を有してもよい。
【0079】
(本製造装置の第2の実施形態)
本発明に係る製造装置の第2の実施形態を図3に示す。
【0080】
図3に示すように、坩堝10に収容されたSi−C溶液24は、周囲に配置された加熱装置22によって加熱される構成を有しているため、加熱装置22の中央部に近い位置にあるSi−C溶液が最も加熱されやすく、また坩堝の下部から熱が逃げやすいため、通常、Si−C溶液の内部から溶液の表面に向けて温度低下する温度勾配を形成しつつ、Si−C溶液24の内部から溶液の深部に向けて温度低下する温度勾配を形成しやすい。つまり、Si−C溶液24の内部に加熱中心があり、表面及び深部において温度が比較的低く、内部において温度が比較的高い温度勾配を形成することができる。
【0081】
本実施形態においては、図3に示すように、SiC単結晶の成長途中に、坩堝10の周囲に配置された加熱装置22を、坩堝10に対して上下方向に移動させる手段を有することができる。坩堝10に対して加熱装置22を上方に移動させると、坩堝内における加熱中心を坩堝内の上方に移動させることができるので、内部から深部に向けて温度低下する温度勾配をSiC溶液24中の上方に移動させて、種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することができる。
【0082】
種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液24の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することによって、内部から表面の領域のSi−C溶液24中のSiC飽和度を低下させることができ、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0083】
上方に移動させた加熱装置22を、下方に移動させることによりメルトバックを終了することができ、再度、Si−C溶液の温度勾配を、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配に変更して、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0084】
加熱装置22を上下に移動させる手段は、手動または自動の任意の手段であることができ、例えば昇降手段を有する昇降機によって加熱装置22を上下に移動させる手段を有することができる。
【0085】
本実施形態においては、成長単結晶近傍のSi−C溶液中の温度勾配を連続的に変化させることができるので、成長単結晶のメルトバックが可能なだけでなく、SiC単結晶の成長速度を連続的に変化させることもできる。
【0086】
第2の実施形態の変化態様においては、図3に示すように、SiC単結晶の成長途中に、坩堝10の周囲に配置された加熱装置22に対して、Si−C溶液24を収容した坩堝10を上下方向に移動させる手段を有する。加熱装置22に対して坩堝10を下方に移動させると、坩堝内における加熱中心を坩堝内の上方に移動させることができるので、内部から深部に向けて温度低下する温度勾配をSi−C溶液24中の上方に移動させて、種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することができる。
【0087】
種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液24の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することによって、内部から表面の領域のSi−C溶液24中のSiC飽和度を低下させることができ、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0088】
下方に移動させた坩堝10を、上方に移動させることにより、メルトバックを終了することができ、再度、Si−C溶液24の温度勾配を、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配に変更して、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0089】
坩堝10を上下に移動させる手段は、手動または自動の任意の方法で行うことができ、例えば昇降手段を有する昇降機によって坩堝10を上下に移動させる手段を有することができる。
【0090】
また、加熱装置22及び坩堝10の両方を同時に上下に移動させて、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、成長単結晶をメルトバックする手段を有してもよい。
【0091】
(本製造装置の第3の実施形態)
本発明に係る製造装置の第3の実施形態を図4に示す。
【0092】
図4に示すように、本製造装置の第3の実施形態においては、Si−C溶液24の液面近傍上に配置した液面加熱装置30を備える。SiC単結晶の成長途中に、液面加熱装置30によりSi−C溶液24を液面から加熱してSi−C溶液24の内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することができる。
【0093】
種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することによって、内部から表面の領域のSi−C溶液中のSiC飽和度を低下させることができ、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0094】
液面加熱装置30は、坩堝内に配置して、Si−C溶液24を液面から加熱できるものであれば任意の加熱装置であることができ、例えば、図7に示すようなSi−C溶液24の液面上近傍においてリング形状を有する断面がS字状の黒鉛ヒーターであって高周波コイルヒーター36を備えた黒鉛ヒーター34であることができる。黒鉛ヒーター34は、L字状等他の形状であってもよい。
【0095】
液面加熱装置30の出力を切ることにより、メルトバックを終了することができ、Si−C溶液の温度勾配を、再度、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配に変更して、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0096】
本実施形態においては、成長単結晶のメルトバックが可能なだけでなく、液面を加熱することができるため、メルトバック後に単結晶の成長を再開させる際のSi−C溶液24の液面における急激な温度低下を抑制でき、液面近傍における多結晶の発生を抑制することができる。
【0097】
(本製造装置の第4の実施形態)
本発明に係る製造装置の第4の実施形態を図5に示す。
【0098】
図5に示すように、本製造装置の第4の実施形態においては、種結晶保持軸12の周囲に配置された種結晶保持軸加熱装置32を備える。SiC単結晶の成長途中に、種結晶保持軸加熱装置32により種結晶保持軸12を加熱して、種結晶保持軸12を介した熱伝導によるSi−C溶液24からの抜熱を抑制して、種結晶基板14の近傍の内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することができる。
【0099】
種結晶基板14の近傍の、内部から表面に向けて温度低下するSi−C溶液の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することによって、内部から表面の領域のSi−C溶液中のSiC飽和度を低下させることができ、成長単結晶をメルトバックすることができる。
【0100】
種結晶保持軸加熱装置32の出力を切ることにより、メルトバックを終了することができ、内部から表面の領域のSi−C溶液24の温度勾配を、再度、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配に変更して、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0101】
種結晶保持軸加熱装置32は、種結晶保持軸12の周囲に配置して加熱することができる任意の加熱装置であることができ、例えば高周波ヒーター、抵抗ヒーター等であることができる。
【0102】
本実施形態においては、成長単結晶をメルトバックすることができるだけでなく、Si−C溶液の温度勾配を加熱装置からの加熱により直接変更するのではなく、種結晶保持軸を介した抜熱を利用するため、成長単結晶近傍のSi−C溶液の所定温度からのばらつきをより小さく抑えることができ、多結晶の発生を抑制することができる。
【0103】
(本製造装置の第5の実施形態)
本発明に係る製造装置の第5の実施形態を図6に示す。
【0104】
本製造装置の第5の実施形態は、
Si−C溶液を収容する坩堝と、
坩堝の周囲に配置された加熱装置と、
上下方向に移動可能に配置された種結晶保持軸とを備え、
種結晶保持軸に保持されたSiC種結晶を、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有し、且つ内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されたSi−C溶液に接触させて、種結晶を基点としてSiC単結晶を成長させる、溶液法によるSiC単結晶の製造装置であり、
SiC単結晶の成長中に、成長単結晶の少なくとも一部を、内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有する領域まで浸漬して、成長単結晶をメルトバックする手段を備える。
【0105】
図6に示すように、本製造装置の第5の実施形態は、Si−C溶液24が、内部よりも表面の温度が低い温度勾配を有し、且つ内部よりも深部の温度が低い温度勾配を有するように加熱され、
SiC単結晶の成長途中に、成長単結晶の少なくとも一部を、内部から深部に向けて温度が一定温度低下する温度勾配を有する領域まで浸漬する手段を備える。
【0106】
成長単結晶の少なくとも一部を、内部から深部の一定温度または温度低下する温度勾配を有する領域にまで浸漬することによって、成長単結晶をメルトバックすることができる。これは、上記領域まで成長単結晶を浸漬することによって、成長単結晶の近傍のSiC溶液中のSiC飽和度が低くなるためである。
【0107】
本製造装置の第5の実施形態は、成長単結晶の下面、下面及び側面等の成長単結晶のメルトバックしたい範囲に応じて、成長単結晶の浸漬深さを変える手段を有し、内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有する領域に到達する成長単結晶の範囲を調節する手段を有する。
【0108】
本製造装置の第5の実施形態はまた、成長単結晶を元の位置に戻すことにより、メルトバックを終了することができ、SiC単結晶を成長させることもできる。
【0109】
本製造装置の第5の実施形態は、追加の装置を必要としないので、コスト的に有利である。
【0110】
また、図6に示すように、第5の実施形態に係る製造装置は、Si−C溶液の表面から成長単結晶の下面までの浸漬深さをdとし、成長単結晶の厚みをtとすると、t≧dの関係を有するように制御する手段を有することが好ましい。これにより、Si−C溶液24の一定温度または温度低下する温度勾配を有する内部から深部の領域まで成長単結晶を浸漬してメルトバックしつつも、種結晶保持軸12に、Si−C溶液24が接触することを防止することができ、多結晶の発生を抑制することができる。
【0111】
第5の実施形態に係る製造装置は、t≧dの関係を得るために、成長単結晶の厚みtよりもSi−C溶液24の表面から加熱中心までの距離が小さくなるような温度分布を有するように、Si−C溶液24を加熱することができる。また、第5の実施形態に係る製造装置は、t≧dの関係を得るために、Si−C溶液24の表面から加熱中心までの距離よりも、成長単結晶の厚みtが大きくなるような種結晶を配置することもできる。
【0112】
上記の実施形態に係る製造装置1〜5のいずれにおいても、あらかじめ種結晶基板を加熱しておいてから種結晶基板をSi−C溶液に接触させる手段を有してもよい。低温の種結晶基板を高温のSi−C溶液に接触させると、種結晶に熱ショック転位が発生することがある。種結晶基板をSi−C溶液に接触させる前に、種結晶基板を加熱しておくことが、熱ショック転位を防止し、高品質なSiC単結晶を成長させるために効果的である。種結晶基板の加熱は種結晶保持軸ごと加熱して行うことができる。また、比較的低温のSi−C溶液に種結晶を接触させてから、結晶を成長させる温度にSi−C溶液を加熱する手段を有してもよい。この場合も、熱ショック転位を防止し、高品質なSiC単結晶を成長させるために効果的である。
【0113】
本発明に係るSiC単結晶の製造方法及び製造装置は、第1〜5の実施形態による製造方法及び製造装置に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0114】
以下に示す実施例及び比較例によって、本発明に係る製造方法及び製造装置について、種結晶基板をメルトバックできたか否かについて評価を行った。本実施例及び比較例においては、便宜上、成長単結晶の代わりに種結晶基板を用いてメルトバックの可否について評価したが、成長単結晶を用いても結果は同様である。メルトバックの可否については、種結晶基板の厚みが減少あるいは変化していない場合にメルトバックできており、種結晶基板の厚みが増加した場合はメルトバックできずに結晶成長した、という基準に基づいて判断した。
【0115】
(共通条件)
実施例1〜5及び比較例1〜3に共通する条件を示す。各例において、それぞれ、図1〜5に示す単結晶製造装置を用い、Si−C溶液を収容する内径40mm、高さ185mmの黒鉛坩堝、及び黒鉛坩堝の周囲に厚さ10mmの断熱材を配置し、Si/Cr/Ni/Ceを原子組成百分率で50:40:4:6の割合で融液原料として仕込んだ。単結晶製造装置の内部の空気をアルゴンで置換した。坩堝の周囲に配置される加熱装置として高上段コイル及び下段コイルを備えた高周波コイルを用いた。高周波コイルに通電して加熱により黒鉛坩堝内の原料を融解し、Si/Cr/Ni/Ce合金の融液を形成した。そして黒鉛坩堝からSi/Cr/Ni/Ce合金の融液に、十分な量のCを溶解させて、Si−C溶液を形成した。
【0116】
実施例1〜4及び比較例1〜2においては、厚み1mm、直径12mmの円盤状4H−SiC単結晶であって、下面がc面に対して0°のオフセット角度を有するSiC単結晶を用意して種結晶基板として用いた。実施例5においては、種結晶として、縦5mm、横5mm、及び厚み15mmの直方体の4H−SiC単結晶であって、下面がc面に対して0°のオフセット角度を有する種結晶を用い、比較例3においては、種結晶として、縦5mm、横5mm、及び厚み5mmの直方体の4H−SiC単結晶であって、下面がc面に対して0°のオフセット角度を有する種結晶を用いた。
【0117】
種結晶保持軸として長さ20cm及び直径12mmの円柱形状の黒鉛軸を用いて、種結晶基板の上面を、黒鉛軸の端面に、黒鉛の接着剤を用いて接着した。
【0118】
上段コイル及び下段コイルの出力を調節して、Si−C溶液の表面における温度を1920℃まで昇温させ、並びに溶液表面から8mmの範囲の溶液内部から溶液表面に向けた温度勾配が1℃/mmで温度低下する温度勾配を有しつつ、8mmの深さから10mmの深さの深部に向けて2℃/mmで温度低下する温度勾配を有するように制御した。つまり、溶液表面から8mmの深さに加熱中心がある温度分布を有していた。温度の測定は、昇降可能なタングステン−レニウム素線を黒鉛保護管の中に入れた熱電対を用いて行った。
【0119】
(比較例1)
図1に示す単結晶製造装置を用い、黒鉛軸に接着した種結晶の下面をSi−C溶液面に並行なるように保ちながら種結晶下面の位置を、Si−C溶液の液面に一致する位置に配置してSi−C溶液に種結晶を接触させ、10時間、保持した。この間、Si−C溶液は黒鉛軸に接触しなかった。
【0120】
次いで、黒鉛軸を上昇させて、種結晶基板をSi−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収した。種結晶基板を基点として種結晶の下面に垂直方向に1mm厚の結晶成長がみられ、種結晶基板はメルトバックされていなかった。
【0121】
(実施例1)
図2に示す単結晶製造装置を用い、坩堝上部に配置した断熱材上に厚さ5mmの追加の断熱材を配置し、坩堝上部の断熱材の厚みを合計15mmとし、高周波コイルの出力を下げてSi−C溶液の表面における温度を1920℃に維持した。このとき、溶液表面から8mmの範囲の溶液内部から溶液表面に向けた温度勾配は1℃/mmで温度上昇する温度勾配を有した。これら以外の条件は、比較例1に示した条件と同じ条件として種結晶基板をSi−C溶液に接触させた。
【0122】
種結晶基板をSi−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収したところ、種結晶基板が溶けて厚みが減少しており、種結晶基板はメルトバックされていた。
【0123】
(実施例2)
図3に示す単結晶製造装置を用い、高周波コイルに対して黒鉛坩堝を下方に20mm移動させて、黒鉛坩堝内における加熱中心を20mm上方に移動させた。このとき、高周波コイルの出力を調節してSi−C溶液の表面における温度を1920℃に維持しつつ、溶液表面から8mmの範囲の溶液内部から溶液表面に向けた温度勾配は、0℃/mmであった。これら以外の条件は、比較例1に示した条件と同じにして、種結晶基板をSi−C溶液に接触させた。
【0124】
種結晶基板をSi−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収したところ、種結晶基板は溶けて厚みが減少しており、メルトバックされていた。
【0125】
(比較例2)
高周波コイルに対して黒鉛坩堝を上方に10mm移動させて、黒鉛坩堝内における加熱中心を10mm下方に移動させた。このとき、高周波コイルの出力を調節してSi−C溶液の表面における温度を1920℃に維持しつつ、溶液表面から8mmの範囲の溶液内部から溶液表面に向けた温度勾配は、1℃/mmで温度低下する温度勾配を有した。これら以外の条件は、比較例1に示した条件と同じにして、種結晶基板をSi−C溶液に接触させた。
【0126】
種結晶基板をSi−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収したところ、種結晶基板を基点として1.1mm厚の結晶成長がみられ、種結晶基板はメルトバックされていなかった。
【0127】
(実施例3)
図7に示す単結晶製造装置を用い、液面加熱装置として、Si−C溶液の表面近傍にてリング形状を有し、断面がS字状の黒鉛ヒーターであって高周波コイルヒーターを備えた黒鉛ヒーターを、リング形状ヒーターの下面のSi−C溶液の液面からの距離が16mmになるように配置し、Si−C溶液を液面から加熱した。このとき、高周波コイルの出力を調節してSi−C溶液の表面における温度を1920℃に維持しつつ、溶液表面から8mmの範囲の溶液内部から溶液表面に向けた温度勾配は、1.5℃/mmで温度上昇する温度勾配を有した。これら以外の条件は、比較例1に示した条件と同じ条件として、種結晶基板をSi−C溶液に接触させた。
【0128】
種結晶基板をSi−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収したところ、種結晶基板は溶けて厚みが減少しており、メルトバックされていた。
【0129】
(実施例4)
図5に示す単結晶製造装置を用い、種結晶保持軸加熱装置32として高周波ヒーターを用いて種結晶保持軸の上部を加熱しつつ、種結晶近傍のSi−C溶液の飽和度を下げるように加熱装置22である高周波コイルの出力を下げてSi−C溶液の表面における温度を1920℃に維持した。これら以外の条件は、比較例1に示した条件と同じ条件として、種結晶基板をSi−C溶液に接触させた。
【0130】
種結晶基板をSi−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収したところ、種結晶基板は溶けて厚みが減少しており、メルトバックされていた。
【0131】
(実施例5)
図6に示す単結晶製造装置を用い、種結晶基板として、縦5mm、横5mm、及び厚み15mmの直方体の種結晶を用いて、種結晶の下面をSi−C溶液の表面から8mmの深さまで浸漬した。これら以外の条件は、比較例1に示した条件と同じ条件とした。
【0132】
種結晶基板をSi−C溶液に接触させている際、種結晶基板の厚みが浸漬深さよりも大きいので、黒鉛軸までSi−C溶液が濡れ上がらす、Si−C溶液が黒鉛軸に接触しなかった。
【0133】
種結晶基板をSi−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収したところ、種結晶基板は溶けて厚みが減少しており、メルトバックされていた。Si−C溶液が黒鉛軸に接触しなかったため、多結晶の発生も抑制できた。
【0134】
(比較例3)
種結晶基板として、縦5mm、横5mm、及び厚み5mmの直方体の種結晶を用いて、種結晶の下面を1mmの深さまで浸漬した。これら以外の条件は、比較例1に示した条件と同じ条件とした。
【0135】
種結晶基板をSi−C溶液及び黒鉛軸から切り離して回収したところ、種結晶基板を基点とした結晶成長がみられ、種結晶基板はメルトバックされていなかった。
【符号の説明】
【0136】
100 単結晶製造装置
10 黒鉛坩堝
12 黒鉛軸
14 種結晶基板
18 断熱材
22 加熱装置
24 Si−C溶液
26 石英管
28 断熱材
30 液面加熱装置
32 種結晶保持軸加熱装置
34 S字状液面加熱ヒーター
36 液面加熱ヒーターに備えられた高周波コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坩堝の周囲に配置された加熱装置により前記坩堝中にて内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されたSi−C溶液に、種結晶保持軸に保持されたSiC種結晶を接触させて、前記種結晶を基点としてSiC単結晶を成長させる、溶液法によるSiC単結晶の製造方法であって、
前記SiC単結晶の成長中に、前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、前記種結晶と前記種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶をメルトバックすることを含む、SiC単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記坩堝が前記坩堝の周囲に断熱材を有し、
前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することが、前記坩堝上部の断熱材の厚みを大きくすることにより行われる、請求項1に記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記SiC単結晶を成長させているときの前記Si−C溶液が、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有し、且つ前記内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されており、
前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することが、前記坩堝内における加熱中心の位置を上方に移動させることにより行われる、請求項1に記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記坩堝内における加熱中心の位置を上方に移動させることが、前記加熱装置を、前記坩堝に対して上方に移動させることにより行われる、請求項3に記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記坩堝内における加熱中心の位置を上方に移動させることが、前記坩堝を、前記加熱装置に対して下方に移動させることにより行われる、請求項3に記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項6】
前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することが、前記Si−C溶液の液面上に配置した液面加熱装置により前記Si−C溶液を加熱することにより行われる、請求項1に記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項7】
前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更することが、前記種結晶保持軸の周囲に配置した種結晶保持軸加熱装置により前記種結晶保持軸を加熱して、前記種結晶保持軸を介した前記Si−C溶液からの抜熱を抑制することにより行われる、請求項1に記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項8】
坩堝の周囲に配置された加熱装置により前記坩堝中にて内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有し、且つ前記内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されたSi−C溶液に、種結晶保持軸に保持されたSiC種結晶を接触させて、前記種結晶を基点としてSiC単結晶を成長させる、溶液法によるSiC単結晶の製造方法であって、
前記SiC単結晶の成長中に、前記種結晶と前記種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶の少なくとも一部を、前記内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有する領域まで浸漬して、前記種結晶と前記種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶をメルトバックすることを含む、SiC単結晶の製造方法。
【請求項9】
前記種結晶と前記種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶の前記Si−C溶液の表面からの浸漬深さよりも、前記種結晶と前記種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶の厚みが大きい、請求項8に記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項10】
前記SiC単結晶の成長中または前記メルトバック中に、前記Si−C溶液が、前記種結晶保持軸に接触しない、請求項1〜9のいずれか一項に記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項11】
前記メルトバックをした後にSiC単結晶を成長させることを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項12】
Si−C溶液を収容する坩堝と、
前記坩堝の周囲に配置された加熱装置と、
上下方向に移動可能に配置された種結晶保持軸とを備え、
前記種結晶保持軸に保持されたSiC種結晶を、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱された前記Si−C溶液に接触させて、前記種結晶を基点としてSiC単結晶を成長させる、溶液法によるSiC単結晶の製造装置であって、
前記SiC単結晶の成長中に、前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更して、前記種結晶と前記種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶をメルトバックする手段を備えた、SiC単結晶の製造装置。
【請求項13】
前記坩堝が前記坩堝の周囲に断熱材を有し、
前記メルトバック手段が、
前記坩堝上部の前記断熱材の厚みを変更する断熱材厚みを変更する手段、並びに
前記SiC単結晶の成長中に、前記断熱材厚みを変更する手段により前記坩堝上部の前記断熱材の厚みを厚くすることにより、前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を一定温度または温度上昇する温度勾配に変更する手段、
を有する、請求項12に記載のSiC単結晶の製造装置。
【請求項14】
前記SiC単結晶を成長させているときの前記Si−C溶液が、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有し、且つ前記内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されており、
前記メルトバック手段が、
前記坩堝内における加熱中心の位置の上方に移動させて、前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更する手段、
を有する、請求項12に記載のSiC単結晶の製造装置。
【請求項15】
前記加熱装置を上下方向に移動させる昇降手段を有し、
前記昇降手段により、前記加熱装置を、前記坩堝に対して上方に移動させて、前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更する手段、
を有する、請求項14に記載のSiC単結晶の製造装置。
【請求項16】
前記坩堝を上下方向に移動させる昇降手段を有し、
前記昇降手段により、前記坩堝を、前記加熱装置に対して下方に移動させることにより、前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更する手段、
を有する、請求項14に記載のSiC単結晶の製造装置。
【請求項17】
前記メルトバック手段が、
前記Si−C溶液の表面に配置した液面加熱手段、並びに
前記SiC単結晶の成長中に、前記液面加熱手段により前記Si−C溶液を表面から加熱することにより、前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更する手段、
を有する、請求項12に記載のSiC単結晶の製造装置。
【請求項18】
前記メルトバック手段が、
前記種結晶保持軸の周囲に配置した種結晶保持軸加熱手段、並びに
前記SiC単結晶の成長中に、前記種結晶保持軸加熱手段により前記種結晶保持軸を加熱することにより、前記種結晶保持軸を介したSiC溶液からの抜熱を抑制して、前記Si−C溶液の前記内部から表面の領域の温度勾配を、一定温度または温度上昇する温度勾配に変更する手段、
を有する、請求項12に記載のSiC単結晶の製造装置。
【請求項19】
Si−C溶液を収容する坩堝と、
前記坩堝の周囲に配置された加熱装置と、
上下方向に移動可能に配置された種結晶保持軸とを備え、
前記種結晶保持軸に保持されたSiC種結晶を、内部から表面に向けて温度低下する温度勾配を有し、且つ前記内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有するように加熱されたSi−C溶液に接触させて、前記種結晶を基点としてSiC単結晶を成長させる、溶液法によるSiC単結晶の製造装置であって、
前記SiC単結晶の成長中に、前記種結晶と前記種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶の少なくとも一部を、前記内部から深部に向けて温度低下する温度勾配を有する領域まで浸漬して、前記種結晶と前記種結晶を基点として成長したSiC単結晶とを含む単結晶をメルトバックする手段を備えた、SiC単結晶の製造装置。
【請求項20】
前記メルトバック手段が、前記Si−C溶液の表面から前記Si−C溶液の温度勾配の傾きが変わる前記内部までの深さが、前記種結晶の厚みよりも小さい範囲になるように制御する手段を有する、請求項19に記載のSiC単結晶の製造装置。
【請求項21】
前記SiC単結晶の成長中または前記メルトバック中に、前記Si−C溶液が、前記種結晶保持軸に接触しないようにする制御手段を有する、請求項12〜20のいずれか一項に記載のSiC単結晶の製造装置。
【請求項22】
前記メルトバックをした後にSiC単結晶を成長させる手段を有する、請求項12〜21のいずれか一項に記載のSiC単結晶の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75771(P2013−75771A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214928(P2011−214928)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】