TFTアレイ検査装置
【課題】TFTアレイの検査時間を長くすることなく、TFTアレイの電位をチャージ保持することで検出される欠陥を検出する。
【解決手段】荷電粒子ビームをTFT基板上で二次元的に走査して走査画像を形成し、この走査画像によりTFTアレイを検査するTFTアレイ検査装置であり、試料を支持するとともに二次元方向に移動するステージと、このステージを駆動制御するステージ制御部と、荷電粒子ビームの走査を制御するとビーム走査制御部と、TFT基板への検査信号の印加を制御する検査信号制御部と、走査画像を取得してアレイ検査を行う信号処理部とを備える。ステージ制御部およびビーム走査制御部は、荷電粒子ビームのX方向のビーム走査と、ステージのX方向と直交するY方向のステージ送りとによる二次元走査を一パスとして、TFT基板をビーム走査方向に複数のパスで分割して二次元走査し、各パスにおいて、同一のパスを往路と復路とで往復して走査する。
【解決手段】荷電粒子ビームをTFT基板上で二次元的に走査して走査画像を形成し、この走査画像によりTFTアレイを検査するTFTアレイ検査装置であり、試料を支持するとともに二次元方向に移動するステージと、このステージを駆動制御するステージ制御部と、荷電粒子ビームの走査を制御するとビーム走査制御部と、TFT基板への検査信号の印加を制御する検査信号制御部と、走査画像を取得してアレイ検査を行う信号処理部とを備える。ステージ制御部およびビーム走査制御部は、荷電粒子ビームのX方向のビーム走査と、ステージのX方向と直交するY方向のステージ送りとによる二次元走査を一パスとして、TFT基板をビーム走査方向に複数のパスで分割して二次元走査し、各パスにおいて、同一のパスを往路と復路とで往復して走査する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームやイオンビーム等の荷電粒子ビームを基板上で二次元的に走査して得られる走査画像に基づいて基板検査を行うTFTアレイ検査装置および走査ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象のTFTアレイに検査信号を印加し、電子ビームやイオンビーム等の荷電粒子ビームを基板上で二次元的に走査し、ビーム走査で得られる走査画像に基づいて基板検査を行う基板検査装置が知られている。例えば、TFTディスプレイ装置に用いるTFTアレイ基板の製造工程では、製造されたTFTアレイ基板が正しく駆動するかの検査が行われるが、このTFTアレイ基板検査では、荷電粒子ビームとして例えば電子ビームを用いて、TFTアレイ基板を走査することで走査画像を取得し、この走査画像に基づいて検査を行っている。(特許文献1,2,3)
【0003】
特許文献3には、電子線の走査において、照射領域にウエハ帯電用電子線を照射して帯電させ、同照射領域に画像取得用電子線を走査して二次電子画像を取得する方法が開示されている。
【0004】
図8は従来のTFT素子と走査領域との関係を説明するための図である。図8では、TFT素子の一つのピクセル120と、荷電粒子ビームが走査する走査領域130との関係を示している。一般に、ピクセル120には縦方向および横方向のピッチサイズを異にする複数種類のピクセルサイズが存在する。例えば、横99μm、縦297μmのピクセルサイズ、あるいは横264μm、縦88μmのピクセルサイズ等が知られている。
【0005】
電子ビームをTFTアレイ基板上で二次元的に走査する際には、電子ビームとステージをX向及びY方向に相対的に移動させている。
【0006】
ビーム走査とステージ移動との制御形態として、TFTアレイの一ピクセルのY方向の幅に相当する送り幅のステージ送りと、一ピクセルのX方向の幅に相当する走査幅のビーム走査とを交互に行うことによって、パス内の走査画像を複数のフレームによって取得する制御が知られている。
【0007】
図9は、TFTアレイ上における荷電粒子ビームの走査を説明するための図である。図9において、複数の荷電粒子ビーム源(GUN1、GUN2,…)から発せられた荷電粒子ビームはTFTアレイ基板上を照射する。この荷電粒子ビームの照射において、各荷電粒子ビーム源は、TFTアレイ上に設定した複数のパス(図9ではパス1〜パス4)の一パス内において、荷電粒子ビームを走査幅Dxの幅で走査する。この荷電粒子ビームの走査は、荷電粒子ビーム源によるビームの振り動作によってパスを単位として行い、一つのパスが終了した後、ステージを移動して隣接するパスの走査を行う。このステージ移動の際には、パスの幅分に相当するステージ移動幅Lxだけ移動する。
【0008】
図9(b)は、図9(a)に示すパス1の走査位置からステージをステージ移動幅Lxだけ移動することによって、パス2を走査する状態を示している。また、図9(c)は、図9(b)の位置からステージをステージ移動幅Lxだけ移動することによってパス3を走査する状態を示している。このようにして、TFTアレイ上に設定した複数の全パスについて走査を行っている。
【0009】
図10〜図13は、パスによる走査を説明するための図である。図10のフローチャートにおいて、一つの荷電粒子ビーム源が走査する範囲を四パスに分割して行う場合には、各パスの走査(図10のS101,S103,S105,S107)と隣接するパスへのx方向の移動(図10のS102,S104,S106)とを順に繰り返すことで行う。
【0010】
図11の各パスの走査を説明するフローチャートにおいて、各パスの走査では、基板に検査信号を印加し(S111)、荷電粒子ビームを走査して二次電子を検出し、検出信号を取得する(S112)。S111の検査信号の印加と、S112の検出信号の検出とを、一フレーム内において設定回数行うと共に(S113)、一パス内において設定数のフレームについて行う(S114)。一パスで行うS111〜S113の工程を全パスについて行うことで基板全体の走査を行う(S115)。
【0011】
図12は一パスにおける走査状態を示している。図12は、四パスを行う例であり、一パスをフレーム1〜フレームmのm個のフレーム(例えば、360フレーム)で走査する例を示している。各フレームでは、同一のフレーム対して検査信号の印加と荷電粒子ビームの走査および二次電子の検出とを複数回(例えば20回)行い、得られた複数の検出信号を重畳し走査画像を形成する。検出信号を重畳させることで検出信号の信号強度を増加させている。
【0012】
図13は走査における信号状態を示している。一つの荷電粒子ビーム源が走査する範囲を四パスに分割する場合(図13(a))において、各パスの一パス分をフレーム1からフレームmのmフレーム分で検出し、各フレームについて走査画像を形成する(図13(b))。各フレームでは、検査信号の印加(図13(c))と、この検査信号の印加による電位状態を荷電粒子ビームの走査と(図13(d))を、走査1から走査nのn走査分(例えば、20走査)について行う。
【特許文献1】特開2004−271516号公報
【特許文献2】特開2004−309488号公報
【特許文献3】特開2002−289128号公報(段落0054、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のTFTアレイ検査装置では、検査信号の印加によるTFTアレイの電位状態を荷電粒子ビームの走査によって検出している。従来の検査では、検査信号の印加によるアレイの各部位の電位状態を、走査画像を取得することによって検出しているため、TFTアレイでの電位のチャージ時間は考慮されていない。むしろ、TFTアレイの電位のチャージを保持させないことによって検査時間を短縮し、また、各フレームでの検査回数を増加させて検出信号の信号強度を高めることが行われている。
【0014】
本出願の発明者は、TFTアレイの欠陥には、アレイの電位のチャージを保持させなくとも検出することができる欠陥の他に、製造プロセスによってはチャージを長時間保持させることによって検出することができる欠陥があり、従来のTFTアレイ検査装置ではこのようなチャージ保持によってはじめて検出することができる欠陥については検出が難しく、TFTアレイの欠陥検出効率が結果的に悪化する要因となっていることに注目した。
【0015】
従来のTFTアレイ検査装置によって、上記のような電位のチャージ保持を要する欠陥検出を行う構成として、例えば、各フレームにおいて、検査信号を印加してからビーム走査を開始するまでの時間幅を長くすることが考えられる。しかしながら、このように各フレームについて検査信号の印加からビーム走査までの時間幅を広げると、各パスの検査時間が長くなるという問題があり、TFT基板全体の検査時間が長くなり、短時間で検査することが困難となる。
【0016】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、TFTアレイの検査時間を長くすることなく、TFTアレイの電位をチャージ保持することで検出される欠陥を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、荷電粒子ビームをTFT基板上で二次元的に走査して走査画像を形成し、この走査画像によりTFTアレイを検査するTFTアレイ検査装置であり、試料を支持するとともに二次元方向に移動するステージと、このステージを駆動制御するステージ制御部と、荷電粒子ビームの走査を制御するビーム走査制御部と、TFT基板への検査信号の印加を制御する検査信号制御部と、走査画像を取得してアレイ検査を行う信号処理部とを備える。
【0018】
ステージ制御部およびビーム走査制御部は、荷電粒子ビームのX方向のビーム走査と、ステージのX方向と直交するY方向のステージ送りとによる二次元走査を一パスとして、TFT基板をビーム走査方向に複数のパスで分割して二次元走査する。さらに、各パスにおいて、同一のパスを往路と復路とで往復して走査する。往路と復路の切り替えは、ステージ制御部の制御によってステージの移動方向を変更することで行うことができる。
【0019】
検査信号制御部は、往路と復路の各走査における一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を異ならせる。これによって、信号処理部は一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くすることで電位をチャージ保持させた状態の走査画像を形成することができ、一方、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を短くすることで電位をチャージ保持させない状態の走査画像を形成することができる。
【0020】
本発明の検査信号制御部は、各パスの往路又は復路の何れか一方の二次元走査において、最初に一回のみ検査信号を印加してTFTに電位をチャージする。この検出信号の印加制御により、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くすることができる。
【0021】
また、最初に一回のみにおいて検査信号を印加する他、所定間隔を開けて複数回について検査信号を印加するようにしてもよい。
【0022】
また、短時間の電位チャージによる走査画像形成において、本発明のTFTアレイ検査装置が備えるビーム走査制御部および検査信号制御部は、各パスをステージ送り方向に分割して複数フレームとし、各フレームを一走査領域として複数回の検査信号を印加してTFTに電位をチャージする。これによって、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を短くし、一走査領域で得られる複数の検出信号を重畳して走査画像を形成する。検出信号を重畳することによって、走査画像の信号強度を高めることができ、欠陥検出の精度を高めることができる。
【0023】
本発明の検査信号制御部は、各パスの往路又は復路の何れか一方の二次元走査において、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くする際に短時間の電位チャージにおけるフレーム数よりも少ない所定回数の検査信号を所定間隔で印加してTFTに電位をチャージする。これによって、最初に一回検査信号を印加するだけでなく、所定間隔を開けて複数回について検査信号を印加することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、TFTアレイの検査時間を長くすることなく、TFTアレイの電位をチャージ保持することで検出される欠陥を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明のTFTアレイ検査装置の構成例を説明するために概略ブロック図である。図1において、TFTアレイ検査装置1は、ステージ3上に載置した基板のTFTアレイ(図示していない)上に荷電粒子ビームを走査する走査ビーム部分と、荷電粒子ビームをTFTアレイ上で走査することで得られる二次電子によってTFTアレイ検査を行う検査部分とを備える。
【0027】
走査ビーム部分は、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム源2、荷電粒子ビーム源2から照射する荷電粒子ビームを制御して、ステージ3上に載置した基板で荷電粒子ビームを走査させるビーム走査制御部4、基板(図示していない)を載置するステージ3、ステージの移動を制御するステージ制御部5、ステージ3上に載置した基板に印加する検査信号を制御する検査信号制御部6を備える。
【0028】
検査部分は、荷電粒子ビームの照射によって基板から放出される二次電子を検出する検出器7、および検出器7で検出した検出信号に基づいて走査画像を形成する信号処理部8を備える。
【0029】
また、ビーム走査制御部4、ステージ制御部5、検査信号制御部6の各制御部、および信号処理部8を制御する制御部10を備える。
【0030】
荷電粒子ビーム源2はステージ3上に載置された基板に形成されたTFTアレイ上に電子ビーム等の荷電粒子ビームを照射する。
【0031】
TFTアレイ上への荷電粒子ビームの走査は、ビーム走査制御部4による荷電粒子ビームを偏向と、ステージ制御部5によるステージ3の移動とによって行う。ビーム走査制御部4は、荷電粒子ビーム源2から放出される荷電粒子ビームを偏向させることによって、TFTアレイ上を照射する荷電粒子ビームの照射位置の移動を制御する。この照射位置の制御において、荷電粒子ビームの照射位置をX軸方向に移動させることによって、TFTアレイの各パスにおいて、パス内に配列されるピクセル上で荷電粒子ビームを順に照射する。
【0032】
ステージ制御部5は、ステージ3の移動を制御する。ステージ制御部5は、TFTアレイの一ピクセルのY方向の幅に相当する送り幅だけ、基板上のY方向にステージ3を送る。ビーム走査制御部4は、荷電粒子ビームをX方向に走査する。ステージ制御部5のステージ送りとビーム走査制御部4のビーム走査とを交互に行うことによって、一パス内で荷電粒子ビームを走査する。
【0033】
また、他の一制御形態では、荷電粒子ビームを一パス内の一ピクセルのX方向の幅を走査する間に、基板のY方向にTFTアレイの一ピクセルのY方向の幅に相当する送り量を連続送りするようにしてもよい。ステージを連続送りする態様では、荷電粒子ビームをX方向に一走査幅分だけ走査する間に、X方向の走査幅方向と直交するY方向にステージ送りする。
【0034】
また、ステージ制御部5は、一パス内の走査領域が終了した後、隣接するパスの走査領域に移動する場合には、基板上のX軸方向において一パスの幅に相当するステージ送りを行う。このステージ移動によって、荷電粒子ビーム源3と次のパスとの位置合わせを行うことができる。
【0035】
制御部10は、このビーム走査制御部4とステージ制御部5を制御し、基板上の走査範囲の切り換えと、この走査範囲内での荷電粒子ビームの走査を行う。上記した構成によって、荷電粒子ビームは、ビーム走査制御部4によるX方向の走査と、ステージ制御部5によるY方向の2種類の移動とによって、基板上に形成されたTFTアレイをパス毎に走査して各ピクセルに荷電粒子ビームを照射する。
【0036】
各ピクセルにおいて、荷電粒子ビームの照射位置から二次電子が放出される。検査部分において、放出された二次電子を検出器7で検出し、検出した検出信号を信号処理部8で処理することによって、TFTアレイの各ピクセルの欠陥の有無や、短絡や断線等の欠陥種の判定等のTFTアレイ検査を行う。
【0037】
次に、本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作について図2〜図7を用いて説明する。図2はTFTアレイ検査装置による検査動作を説明するためのフローチャートであり、図3は各パスにおける検査動作を説明するためのフローチャートであり、図4はTFTアレイ検査装置による検査動作の第1の形態を説明するための説明図であり、図5はTFTアレイ検査装置による検査動作の第1の形態を説明するための信号図であり、図6はTFTアレイ検査装置による検査動作の第2の形態を説明するための説明図であり、図7はTFTアレイ検査装置による検査動作の第2の形態を説明するための信号図である。
【0038】
本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作は、一パスにおいて、往路と復路の往復動作で走査を行い、往路と復路の各走査における一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を異ならせて印加し、信号処理部において、長時間の電位チャージによる走査画像と、短時間の電位チャージによる走査画像とを形成する。
【0039】
各パスnにおいて、往路で走査動作を行って走査画像を形成し(S2)、往路の終端でY方向の移動方向を反転させ(S3)、同一のパスnについて復路で走査動作を行って走査画像を形成する(S4)。S2〜S4の工程を、全パスについて繰り返す(S1,S5,S6)ことによって、基板上の全アレイをカバーする走査画像を求めることができる。
【0040】
一つの荷電粒子ビーム源が走査する範囲を四パスに分割する場合(図5(a)、図6(a))、各パスの一パス分において、往路で走査し、Y方向の移動方向を反転した後、復路で走査を行う(図5(b)、図6(b))。
【0041】
はじめに、往路における検査動作について説明する。なお、ここでは、往路で行う走査において一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くすることによって、長時間の電位チャージによる走査画像を形成し、復路で行う走査において一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を短くすることによって、短時間の電位チャージによる走査画像を形成する例について説明する。
【0042】
図3のフローチャートにおいて、往路において(S2)、ステージを往路方向の移動を開始し(S2a)、基板に検査信号を印加する。検査信号を印加することによって、基板上のアレイには所定の電位が印加される。各アレイの電位は、検査信号が印加された後は保持される(S2b)。
【0043】
予め設定した経過時間Thが経過した時点で(S2c)、荷電粒子ビーム(例えば、電子線)を照射して基板を走査し、基板から放出される二次電子を検出し検出信号を取得する。荷電粒子ビームを基板上で走査することによって、走査領域中の電位状態を走査画像として検出することができる。
【0044】
検査信号を印加した後の設定経過時間Thの間は、アレイには電位がチャージされた状態に保持される。この設定経過時間Thを設定することで、チャージ時間を定めることができる。
【0045】
図4(a)は第1の形態における往路での走査状態を示している。この第1の形態では、往路の開始時点で一回のみ検査信号を印加してアレイに電位をチャージさせ、その電位のチャージ状態を所定の期間(保持期間)保持した後、荷電粒子ビームを走査して走査画像を取得して電位状態を検出する。
【0046】
図5(c)は往路の検査信号の印加とフレーム1〜フレームmの走査状態を示し、図5(d)はアレイにおける保持電位状態を示している。アレイにおける保持電位は、経過時間と共に変化する。なお、図5(d)は経過時間と共に保持電位が減少する状態を示しているが、図示する変化状態は一例であって、これに限られるものではない。
【0047】
設定経過時間Thが経過した後に走査することによって、長時間の電位チャージにおける状態を検出し、長時間チャージによって検出可能となる欠陥を検出することができる。設定経過時間Thは、電位をチャージして保持する保持区間に相当する。
【0048】
図6(a)は第2の形態における往路での走査状態を示している。この第2の形態では、往路の開始時点、および往路内の複数時点で検査信号を印加してアレイに電位をチャージさせ、その電位のチャージ状態を所定の期間(保持期間)保持した後、荷電粒子ビームを走査して走査画像を取得して電位状態を検出する。
【0049】
図7(a)は往路の検査信号を示し、図7(b)は検査信号を印加した後に行うフレーム1〜フレームmの走査状態を示し、図7(c)はアレイにおける保持電位状態を示している。アレイにおける保持電位は、検査信号が印加される毎に電位が更新され、その後、経過時間と共に変化する。なお、図7(c)においても、図5(d)と同様に、経過時間と共に保持電位が減少する状態を示しているが、図示する変化状態は一例であって、これに限られるものではない。
【0050】
設定経過時間Thが経過した後に走査することによって、長時間の電位チャージにおける状態を検出し、長時間チャージによって検出可能となる欠陥を検出することができる。設定経過時間Thは、電位をチャージして保持する保持区間に相当する。
【0051】
この第2の形態によれば、長時間チャージによる欠陥検出において、チャージ時間を往路あるいは復路の全行程に渡って設定することなく、この全行程に対応する時間よりも短いチャージ時間によって欠陥検出が可能な場合に適用することができ、複数回繰り返すことによって検査精度を向上させることができる(S2d)。
【0052】
パス内の全フレームについてS2dの工程を繰り返して行うことで、往路における走査画像を求めることができる(S2e)。
【0053】
往路の走査が完了した後、ステージのY方向の移動方向を反転させた後、復路の走査を行う(S3)。
【0054】
次に、図3のフローチャートにおいて、復路において(S4)、ステージの移動方向は反転させて復路方向の移動を開始し(S4a)、基板に検査信号を印加する。検査信号を印加することによって、基板上のアレイには所定の電位が印加される(S4b)。
【0055】
検査信号を印加してアレイを所定電位とした後、荷電粒子ビーム(例えば、電子線)を照射して基板を走査し、基板から放出される二次電子を検出し検出信号を取得する。荷電粒子ビームを基板上で走査することによって、走査領域中の電位状態を走査画像として検出することができる(S4c)。
【0056】
復路における走査において、基板に検査信号を印加し、荷電粒子ビームを走査して二次電子を検出し、検出信号を取得する。この検査信号の印加と検出信号の検出とを、一フレーム内において設定回数行うと共に(S4d)、一パス内において設定数のフレームについて行う(S4e)。
【0057】
図4(b)は一パスにおける復路の走査状態を示している。図4(b)は、四パスを行う例であり、一パスをフレーム1〜フレームmにm個のフレーム(例えば、360フレーム)で走査する例を示している。各フレームでは、同一のフレーム対して検査信号の印加と荷電粒子ビームの走査および二次電子の検出とを複数回(例えば20回)行い、得られた複数の検出信号を重畳し走査画像を形成する。検出信号を重畳させることで検出信号の信号強度を増加させている。
【0058】
図5(e)〜図5(g)は復路の走査における信号状態を示している。各パスの復路において、各パスの復路をフレーム1からフレームmのmフレーム分で検出し、各フレームについて走査画像を形成する(図5(e))。各フレームでは、検査信号の印加(図5(f))と、この検査信号の印加による電位状態を荷電粒子ビームの走査(図5(g))とを、走査1と走査2の2走査分について行う。
【0059】
一パスで行うS2〜S4の工程、X方向に一パス分移動させることによって全パスについて行い、基板全体の走査を行う(S6a、S5)。
【0060】
上記では、往路において長時間の電位チャージによって走査画像を形成し、復路において短時間の電位チャージによって走査画像を形成する例について説明したが、復路において長時間の電位チャージによって走査画像を形成し、往路において短時間の電位チャージによって走査画像を形成してもよい。
【0061】
従来の検査動作において、一パスが約360フレームを含み、各フレームにおいて20回の走査動作を行う場合には、一パスについて走査画像を取得するために約16秒を要し、四パス分で約64秒を要する。
【0062】
これに対して、本発明の検査動作によれば、例えば往路の長時間チャージによる走査画像を取得するために約3.3秒を要し、往路から復路への反転動作に約1秒を要し、復路の短時間チャージによる走査画像の取得するために、約8.4秒を要し、四パス分で約50.8秒を要する。なお、ここで、復路での走査画像の取得では、一フレームについて2回の走査動作を行う。
【0063】
この例によれば、従来と同様の時間幅で、長い時間の電位チャージを要して初めて検出可能となる欠陥検出と、長い時間の電位チャージを要さない欠陥検出の2種類の欠陥検査を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の走査ビーム装置は、電子線マイクロアナライザ、走査電子顕微鏡、X線分析装置等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のTFTアレイ検査装置の構成例を説明するために概略ブロック図である。
【図2】本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の各パスにおける検査動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作の第1の形態を説明するための説明図である。
【図5】本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作の第1の形態を説明するための信号図である。
【図6】本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作の第2の形態を説明するための説明図である。
【図7】本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作の第2の形態を説明するための信号図である。
【図8】従来のTFT素子と走査領域との関係を説明するための図である。
【図9】TFTアレイ上における荷電粒子ビームの走査を説明するための図である。
【図10】従来のアレイ検査においてパスによる走査を説明するためのフローチャートである。
【図11】従来のアレイ検査において各パスの走査を説明するためのフローチャートである。
【図12】従来のアレイ検査において一パスにおける走査状態を示す図である。
【図13】従来のアレイ検査において走査における信号状態を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1…アレイ検査装置、2…荷電粒子ビーム源、3…ステージ、4…ビーム走査制御部、5…ステージ制御部、6…検査信号制御部、7…検出器、8…信号処理部、10…制御部、Dx…走査幅、Lx…ステージ移動幅、120…ピクセル、130…走査領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームやイオンビーム等の荷電粒子ビームを基板上で二次元的に走査して得られる走査画像に基づいて基板検査を行うTFTアレイ検査装置および走査ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象のTFTアレイに検査信号を印加し、電子ビームやイオンビーム等の荷電粒子ビームを基板上で二次元的に走査し、ビーム走査で得られる走査画像に基づいて基板検査を行う基板検査装置が知られている。例えば、TFTディスプレイ装置に用いるTFTアレイ基板の製造工程では、製造されたTFTアレイ基板が正しく駆動するかの検査が行われるが、このTFTアレイ基板検査では、荷電粒子ビームとして例えば電子ビームを用いて、TFTアレイ基板を走査することで走査画像を取得し、この走査画像に基づいて検査を行っている。(特許文献1,2,3)
【0003】
特許文献3には、電子線の走査において、照射領域にウエハ帯電用電子線を照射して帯電させ、同照射領域に画像取得用電子線を走査して二次電子画像を取得する方法が開示されている。
【0004】
図8は従来のTFT素子と走査領域との関係を説明するための図である。図8では、TFT素子の一つのピクセル120と、荷電粒子ビームが走査する走査領域130との関係を示している。一般に、ピクセル120には縦方向および横方向のピッチサイズを異にする複数種類のピクセルサイズが存在する。例えば、横99μm、縦297μmのピクセルサイズ、あるいは横264μm、縦88μmのピクセルサイズ等が知られている。
【0005】
電子ビームをTFTアレイ基板上で二次元的に走査する際には、電子ビームとステージをX向及びY方向に相対的に移動させている。
【0006】
ビーム走査とステージ移動との制御形態として、TFTアレイの一ピクセルのY方向の幅に相当する送り幅のステージ送りと、一ピクセルのX方向の幅に相当する走査幅のビーム走査とを交互に行うことによって、パス内の走査画像を複数のフレームによって取得する制御が知られている。
【0007】
図9は、TFTアレイ上における荷電粒子ビームの走査を説明するための図である。図9において、複数の荷電粒子ビーム源(GUN1、GUN2,…)から発せられた荷電粒子ビームはTFTアレイ基板上を照射する。この荷電粒子ビームの照射において、各荷電粒子ビーム源は、TFTアレイ上に設定した複数のパス(図9ではパス1〜パス4)の一パス内において、荷電粒子ビームを走査幅Dxの幅で走査する。この荷電粒子ビームの走査は、荷電粒子ビーム源によるビームの振り動作によってパスを単位として行い、一つのパスが終了した後、ステージを移動して隣接するパスの走査を行う。このステージ移動の際には、パスの幅分に相当するステージ移動幅Lxだけ移動する。
【0008】
図9(b)は、図9(a)に示すパス1の走査位置からステージをステージ移動幅Lxだけ移動することによって、パス2を走査する状態を示している。また、図9(c)は、図9(b)の位置からステージをステージ移動幅Lxだけ移動することによってパス3を走査する状態を示している。このようにして、TFTアレイ上に設定した複数の全パスについて走査を行っている。
【0009】
図10〜図13は、パスによる走査を説明するための図である。図10のフローチャートにおいて、一つの荷電粒子ビーム源が走査する範囲を四パスに分割して行う場合には、各パスの走査(図10のS101,S103,S105,S107)と隣接するパスへのx方向の移動(図10のS102,S104,S106)とを順に繰り返すことで行う。
【0010】
図11の各パスの走査を説明するフローチャートにおいて、各パスの走査では、基板に検査信号を印加し(S111)、荷電粒子ビームを走査して二次電子を検出し、検出信号を取得する(S112)。S111の検査信号の印加と、S112の検出信号の検出とを、一フレーム内において設定回数行うと共に(S113)、一パス内において設定数のフレームについて行う(S114)。一パスで行うS111〜S113の工程を全パスについて行うことで基板全体の走査を行う(S115)。
【0011】
図12は一パスにおける走査状態を示している。図12は、四パスを行う例であり、一パスをフレーム1〜フレームmのm個のフレーム(例えば、360フレーム)で走査する例を示している。各フレームでは、同一のフレーム対して検査信号の印加と荷電粒子ビームの走査および二次電子の検出とを複数回(例えば20回)行い、得られた複数の検出信号を重畳し走査画像を形成する。検出信号を重畳させることで検出信号の信号強度を増加させている。
【0012】
図13は走査における信号状態を示している。一つの荷電粒子ビーム源が走査する範囲を四パスに分割する場合(図13(a))において、各パスの一パス分をフレーム1からフレームmのmフレーム分で検出し、各フレームについて走査画像を形成する(図13(b))。各フレームでは、検査信号の印加(図13(c))と、この検査信号の印加による電位状態を荷電粒子ビームの走査と(図13(d))を、走査1から走査nのn走査分(例えば、20走査)について行う。
【特許文献1】特開2004−271516号公報
【特許文献2】特開2004−309488号公報
【特許文献3】特開2002−289128号公報(段落0054、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のTFTアレイ検査装置では、検査信号の印加によるTFTアレイの電位状態を荷電粒子ビームの走査によって検出している。従来の検査では、検査信号の印加によるアレイの各部位の電位状態を、走査画像を取得することによって検出しているため、TFTアレイでの電位のチャージ時間は考慮されていない。むしろ、TFTアレイの電位のチャージを保持させないことによって検査時間を短縮し、また、各フレームでの検査回数を増加させて検出信号の信号強度を高めることが行われている。
【0014】
本出願の発明者は、TFTアレイの欠陥には、アレイの電位のチャージを保持させなくとも検出することができる欠陥の他に、製造プロセスによってはチャージを長時間保持させることによって検出することができる欠陥があり、従来のTFTアレイ検査装置ではこのようなチャージ保持によってはじめて検出することができる欠陥については検出が難しく、TFTアレイの欠陥検出効率が結果的に悪化する要因となっていることに注目した。
【0015】
従来のTFTアレイ検査装置によって、上記のような電位のチャージ保持を要する欠陥検出を行う構成として、例えば、各フレームにおいて、検査信号を印加してからビーム走査を開始するまでの時間幅を長くすることが考えられる。しかしながら、このように各フレームについて検査信号の印加からビーム走査までの時間幅を広げると、各パスの検査時間が長くなるという問題があり、TFT基板全体の検査時間が長くなり、短時間で検査することが困難となる。
【0016】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、TFTアレイの検査時間を長くすることなく、TFTアレイの電位をチャージ保持することで検出される欠陥を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、荷電粒子ビームをTFT基板上で二次元的に走査して走査画像を形成し、この走査画像によりTFTアレイを検査するTFTアレイ検査装置であり、試料を支持するとともに二次元方向に移動するステージと、このステージを駆動制御するステージ制御部と、荷電粒子ビームの走査を制御するビーム走査制御部と、TFT基板への検査信号の印加を制御する検査信号制御部と、走査画像を取得してアレイ検査を行う信号処理部とを備える。
【0018】
ステージ制御部およびビーム走査制御部は、荷電粒子ビームのX方向のビーム走査と、ステージのX方向と直交するY方向のステージ送りとによる二次元走査を一パスとして、TFT基板をビーム走査方向に複数のパスで分割して二次元走査する。さらに、各パスにおいて、同一のパスを往路と復路とで往復して走査する。往路と復路の切り替えは、ステージ制御部の制御によってステージの移動方向を変更することで行うことができる。
【0019】
検査信号制御部は、往路と復路の各走査における一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を異ならせる。これによって、信号処理部は一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くすることで電位をチャージ保持させた状態の走査画像を形成することができ、一方、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を短くすることで電位をチャージ保持させない状態の走査画像を形成することができる。
【0020】
本発明の検査信号制御部は、各パスの往路又は復路の何れか一方の二次元走査において、最初に一回のみ検査信号を印加してTFTに電位をチャージする。この検出信号の印加制御により、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くすることができる。
【0021】
また、最初に一回のみにおいて検査信号を印加する他、所定間隔を開けて複数回について検査信号を印加するようにしてもよい。
【0022】
また、短時間の電位チャージによる走査画像形成において、本発明のTFTアレイ検査装置が備えるビーム走査制御部および検査信号制御部は、各パスをステージ送り方向に分割して複数フレームとし、各フレームを一走査領域として複数回の検査信号を印加してTFTに電位をチャージする。これによって、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を短くし、一走査領域で得られる複数の検出信号を重畳して走査画像を形成する。検出信号を重畳することによって、走査画像の信号強度を高めることができ、欠陥検出の精度を高めることができる。
【0023】
本発明の検査信号制御部は、各パスの往路又は復路の何れか一方の二次元走査において、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くする際に短時間の電位チャージにおけるフレーム数よりも少ない所定回数の検査信号を所定間隔で印加してTFTに電位をチャージする。これによって、最初に一回検査信号を印加するだけでなく、所定間隔を開けて複数回について検査信号を印加することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、TFTアレイの検査時間を長くすることなく、TFTアレイの電位をチャージ保持することで検出される欠陥を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明のTFTアレイ検査装置の構成例を説明するために概略ブロック図である。図1において、TFTアレイ検査装置1は、ステージ3上に載置した基板のTFTアレイ(図示していない)上に荷電粒子ビームを走査する走査ビーム部分と、荷電粒子ビームをTFTアレイ上で走査することで得られる二次電子によってTFTアレイ検査を行う検査部分とを備える。
【0027】
走査ビーム部分は、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム源2、荷電粒子ビーム源2から照射する荷電粒子ビームを制御して、ステージ3上に載置した基板で荷電粒子ビームを走査させるビーム走査制御部4、基板(図示していない)を載置するステージ3、ステージの移動を制御するステージ制御部5、ステージ3上に載置した基板に印加する検査信号を制御する検査信号制御部6を備える。
【0028】
検査部分は、荷電粒子ビームの照射によって基板から放出される二次電子を検出する検出器7、および検出器7で検出した検出信号に基づいて走査画像を形成する信号処理部8を備える。
【0029】
また、ビーム走査制御部4、ステージ制御部5、検査信号制御部6の各制御部、および信号処理部8を制御する制御部10を備える。
【0030】
荷電粒子ビーム源2はステージ3上に載置された基板に形成されたTFTアレイ上に電子ビーム等の荷電粒子ビームを照射する。
【0031】
TFTアレイ上への荷電粒子ビームの走査は、ビーム走査制御部4による荷電粒子ビームを偏向と、ステージ制御部5によるステージ3の移動とによって行う。ビーム走査制御部4は、荷電粒子ビーム源2から放出される荷電粒子ビームを偏向させることによって、TFTアレイ上を照射する荷電粒子ビームの照射位置の移動を制御する。この照射位置の制御において、荷電粒子ビームの照射位置をX軸方向に移動させることによって、TFTアレイの各パスにおいて、パス内に配列されるピクセル上で荷電粒子ビームを順に照射する。
【0032】
ステージ制御部5は、ステージ3の移動を制御する。ステージ制御部5は、TFTアレイの一ピクセルのY方向の幅に相当する送り幅だけ、基板上のY方向にステージ3を送る。ビーム走査制御部4は、荷電粒子ビームをX方向に走査する。ステージ制御部5のステージ送りとビーム走査制御部4のビーム走査とを交互に行うことによって、一パス内で荷電粒子ビームを走査する。
【0033】
また、他の一制御形態では、荷電粒子ビームを一パス内の一ピクセルのX方向の幅を走査する間に、基板のY方向にTFTアレイの一ピクセルのY方向の幅に相当する送り量を連続送りするようにしてもよい。ステージを連続送りする態様では、荷電粒子ビームをX方向に一走査幅分だけ走査する間に、X方向の走査幅方向と直交するY方向にステージ送りする。
【0034】
また、ステージ制御部5は、一パス内の走査領域が終了した後、隣接するパスの走査領域に移動する場合には、基板上のX軸方向において一パスの幅に相当するステージ送りを行う。このステージ移動によって、荷電粒子ビーム源3と次のパスとの位置合わせを行うことができる。
【0035】
制御部10は、このビーム走査制御部4とステージ制御部5を制御し、基板上の走査範囲の切り換えと、この走査範囲内での荷電粒子ビームの走査を行う。上記した構成によって、荷電粒子ビームは、ビーム走査制御部4によるX方向の走査と、ステージ制御部5によるY方向の2種類の移動とによって、基板上に形成されたTFTアレイをパス毎に走査して各ピクセルに荷電粒子ビームを照射する。
【0036】
各ピクセルにおいて、荷電粒子ビームの照射位置から二次電子が放出される。検査部分において、放出された二次電子を検出器7で検出し、検出した検出信号を信号処理部8で処理することによって、TFTアレイの各ピクセルの欠陥の有無や、短絡や断線等の欠陥種の判定等のTFTアレイ検査を行う。
【0037】
次に、本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作について図2〜図7を用いて説明する。図2はTFTアレイ検査装置による検査動作を説明するためのフローチャートであり、図3は各パスにおける検査動作を説明するためのフローチャートであり、図4はTFTアレイ検査装置による検査動作の第1の形態を説明するための説明図であり、図5はTFTアレイ検査装置による検査動作の第1の形態を説明するための信号図であり、図6はTFTアレイ検査装置による検査動作の第2の形態を説明するための説明図であり、図7はTFTアレイ検査装置による検査動作の第2の形態を説明するための信号図である。
【0038】
本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作は、一パスにおいて、往路と復路の往復動作で走査を行い、往路と復路の各走査における一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を異ならせて印加し、信号処理部において、長時間の電位チャージによる走査画像と、短時間の電位チャージによる走査画像とを形成する。
【0039】
各パスnにおいて、往路で走査動作を行って走査画像を形成し(S2)、往路の終端でY方向の移動方向を反転させ(S3)、同一のパスnについて復路で走査動作を行って走査画像を形成する(S4)。S2〜S4の工程を、全パスについて繰り返す(S1,S5,S6)ことによって、基板上の全アレイをカバーする走査画像を求めることができる。
【0040】
一つの荷電粒子ビーム源が走査する範囲を四パスに分割する場合(図5(a)、図6(a))、各パスの一パス分において、往路で走査し、Y方向の移動方向を反転した後、復路で走査を行う(図5(b)、図6(b))。
【0041】
はじめに、往路における検査動作について説明する。なお、ここでは、往路で行う走査において一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くすることによって、長時間の電位チャージによる走査画像を形成し、復路で行う走査において一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を短くすることによって、短時間の電位チャージによる走査画像を形成する例について説明する。
【0042】
図3のフローチャートにおいて、往路において(S2)、ステージを往路方向の移動を開始し(S2a)、基板に検査信号を印加する。検査信号を印加することによって、基板上のアレイには所定の電位が印加される。各アレイの電位は、検査信号が印加された後は保持される(S2b)。
【0043】
予め設定した経過時間Thが経過した時点で(S2c)、荷電粒子ビーム(例えば、電子線)を照射して基板を走査し、基板から放出される二次電子を検出し検出信号を取得する。荷電粒子ビームを基板上で走査することによって、走査領域中の電位状態を走査画像として検出することができる。
【0044】
検査信号を印加した後の設定経過時間Thの間は、アレイには電位がチャージされた状態に保持される。この設定経過時間Thを設定することで、チャージ時間を定めることができる。
【0045】
図4(a)は第1の形態における往路での走査状態を示している。この第1の形態では、往路の開始時点で一回のみ検査信号を印加してアレイに電位をチャージさせ、その電位のチャージ状態を所定の期間(保持期間)保持した後、荷電粒子ビームを走査して走査画像を取得して電位状態を検出する。
【0046】
図5(c)は往路の検査信号の印加とフレーム1〜フレームmの走査状態を示し、図5(d)はアレイにおける保持電位状態を示している。アレイにおける保持電位は、経過時間と共に変化する。なお、図5(d)は経過時間と共に保持電位が減少する状態を示しているが、図示する変化状態は一例であって、これに限られるものではない。
【0047】
設定経過時間Thが経過した後に走査することによって、長時間の電位チャージにおける状態を検出し、長時間チャージによって検出可能となる欠陥を検出することができる。設定経過時間Thは、電位をチャージして保持する保持区間に相当する。
【0048】
図6(a)は第2の形態における往路での走査状態を示している。この第2の形態では、往路の開始時点、および往路内の複数時点で検査信号を印加してアレイに電位をチャージさせ、その電位のチャージ状態を所定の期間(保持期間)保持した後、荷電粒子ビームを走査して走査画像を取得して電位状態を検出する。
【0049】
図7(a)は往路の検査信号を示し、図7(b)は検査信号を印加した後に行うフレーム1〜フレームmの走査状態を示し、図7(c)はアレイにおける保持電位状態を示している。アレイにおける保持電位は、検査信号が印加される毎に電位が更新され、その後、経過時間と共に変化する。なお、図7(c)においても、図5(d)と同様に、経過時間と共に保持電位が減少する状態を示しているが、図示する変化状態は一例であって、これに限られるものではない。
【0050】
設定経過時間Thが経過した後に走査することによって、長時間の電位チャージにおける状態を検出し、長時間チャージによって検出可能となる欠陥を検出することができる。設定経過時間Thは、電位をチャージして保持する保持区間に相当する。
【0051】
この第2の形態によれば、長時間チャージによる欠陥検出において、チャージ時間を往路あるいは復路の全行程に渡って設定することなく、この全行程に対応する時間よりも短いチャージ時間によって欠陥検出が可能な場合に適用することができ、複数回繰り返すことによって検査精度を向上させることができる(S2d)。
【0052】
パス内の全フレームについてS2dの工程を繰り返して行うことで、往路における走査画像を求めることができる(S2e)。
【0053】
往路の走査が完了した後、ステージのY方向の移動方向を反転させた後、復路の走査を行う(S3)。
【0054】
次に、図3のフローチャートにおいて、復路において(S4)、ステージの移動方向は反転させて復路方向の移動を開始し(S4a)、基板に検査信号を印加する。検査信号を印加することによって、基板上のアレイには所定の電位が印加される(S4b)。
【0055】
検査信号を印加してアレイを所定電位とした後、荷電粒子ビーム(例えば、電子線)を照射して基板を走査し、基板から放出される二次電子を検出し検出信号を取得する。荷電粒子ビームを基板上で走査することによって、走査領域中の電位状態を走査画像として検出することができる(S4c)。
【0056】
復路における走査において、基板に検査信号を印加し、荷電粒子ビームを走査して二次電子を検出し、検出信号を取得する。この検査信号の印加と検出信号の検出とを、一フレーム内において設定回数行うと共に(S4d)、一パス内において設定数のフレームについて行う(S4e)。
【0057】
図4(b)は一パスにおける復路の走査状態を示している。図4(b)は、四パスを行う例であり、一パスをフレーム1〜フレームmにm個のフレーム(例えば、360フレーム)で走査する例を示している。各フレームでは、同一のフレーム対して検査信号の印加と荷電粒子ビームの走査および二次電子の検出とを複数回(例えば20回)行い、得られた複数の検出信号を重畳し走査画像を形成する。検出信号を重畳させることで検出信号の信号強度を増加させている。
【0058】
図5(e)〜図5(g)は復路の走査における信号状態を示している。各パスの復路において、各パスの復路をフレーム1からフレームmのmフレーム分で検出し、各フレームについて走査画像を形成する(図5(e))。各フレームでは、検査信号の印加(図5(f))と、この検査信号の印加による電位状態を荷電粒子ビームの走査(図5(g))とを、走査1と走査2の2走査分について行う。
【0059】
一パスで行うS2〜S4の工程、X方向に一パス分移動させることによって全パスについて行い、基板全体の走査を行う(S6a、S5)。
【0060】
上記では、往路において長時間の電位チャージによって走査画像を形成し、復路において短時間の電位チャージによって走査画像を形成する例について説明したが、復路において長時間の電位チャージによって走査画像を形成し、往路において短時間の電位チャージによって走査画像を形成してもよい。
【0061】
従来の検査動作において、一パスが約360フレームを含み、各フレームにおいて20回の走査動作を行う場合には、一パスについて走査画像を取得するために約16秒を要し、四パス分で約64秒を要する。
【0062】
これに対して、本発明の検査動作によれば、例えば往路の長時間チャージによる走査画像を取得するために約3.3秒を要し、往路から復路への反転動作に約1秒を要し、復路の短時間チャージによる走査画像の取得するために、約8.4秒を要し、四パス分で約50.8秒を要する。なお、ここで、復路での走査画像の取得では、一フレームについて2回の走査動作を行う。
【0063】
この例によれば、従来と同様の時間幅で、長い時間の電位チャージを要して初めて検出可能となる欠陥検出と、長い時間の電位チャージを要さない欠陥検出の2種類の欠陥検査を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の走査ビーム装置は、電子線マイクロアナライザ、走査電子顕微鏡、X線分析装置等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のTFTアレイ検査装置の構成例を説明するために概略ブロック図である。
【図2】本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の各パスにおける検査動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作の第1の形態を説明するための説明図である。
【図5】本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作の第1の形態を説明するための信号図である。
【図6】本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作の第2の形態を説明するための説明図である。
【図7】本発明のTFTアレイ検査装置による検査動作の第2の形態を説明するための信号図である。
【図8】従来のTFT素子と走査領域との関係を説明するための図である。
【図9】TFTアレイ上における荷電粒子ビームの走査を説明するための図である。
【図10】従来のアレイ検査においてパスによる走査を説明するためのフローチャートである。
【図11】従来のアレイ検査において各パスの走査を説明するためのフローチャートである。
【図12】従来のアレイ検査において一パスにおける走査状態を示す図である。
【図13】従来のアレイ検査において走査における信号状態を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1…アレイ検査装置、2…荷電粒子ビーム源、3…ステージ、4…ビーム走査制御部、5…ステージ制御部、6…検査信号制御部、7…検出器、8…信号処理部、10…制御部、Dx…走査幅、Lx…ステージ移動幅、120…ピクセル、130…走査領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームをTFT基板上で二次元的に走査して走査画像を形成し、当該走査画像によりTFTアレイを検査するTFTアレイ検査装置であって、
前記試料を支持するとともに二次元方向に移動するステージと、
当該ステージを駆動制御するステージ制御部と、
荷電粒子ビームの走査を制御するビーム走査制御部と、
TFT基板への検査信号の印加を制御する検査信号制御部と、
走査画像を取得してアレイ検査を行う信号処理部とを備え、
前記ステージ制御部およびビーム走査制御部は、
前記荷電粒子ビームのX方向のビーム走査と、前記ステージの前記X方向と直交するY方向のステージ送りとによる二次元走査を一パスとして、TFT基板をビーム走査方向に複数のパスで分割して二次元走査し、前記各パスにおいて、同一のパスを往路と復路とで往復して走査し、
前記検査信号制御部は、
前記往路と前記復路の各走査における一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を異ならせて印加し、
前記信号処理部は、長時間の電位チャージによる走査画像と、短時間の電位チャージによる走査画像とを形成することを特徴とする、TFTアレイ検査装置。
【請求項2】
前記検査信号制御部は、
前記各パスの前記往路又は前記復路の何れか一方の二次元走査において、最初に一回のみ検査信号を印加してTFTに電位をチャージすることにより、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くすることを特徴とする、請求項1に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項3】
前記短時間の電位チャージによる走査画像形成において、
前記ビーム走査制御部および前記検査信号制御部は、各パスをステージ送り方向に分割して複数フレームとし、各フレームを一走査領域として複数回の検査信号を印加してTFTに電位をチャージすることにより、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を短くし、
前記処理信号部は、一走査領域で得られる複数の検出信号を重畳して走査画像を形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項4】
前記検査信号制御部は、
前記各パスの前記往路又は前記復路の何れか一方の二次元走査において、前記請求項3に記載の短時間の電位チャージにおけるフレーム数よりも少ない所定回数の検査信号を所定間隔で印加してTFTに電位をチャージすることにより、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くすることを特徴とする、TFTアレイ検査装置。
【請求項1】
荷電粒子ビームをTFT基板上で二次元的に走査して走査画像を形成し、当該走査画像によりTFTアレイを検査するTFTアレイ検査装置であって、
前記試料を支持するとともに二次元方向に移動するステージと、
当該ステージを駆動制御するステージ制御部と、
荷電粒子ビームの走査を制御するビーム走査制御部と、
TFT基板への検査信号の印加を制御する検査信号制御部と、
走査画像を取得してアレイ検査を行う信号処理部とを備え、
前記ステージ制御部およびビーム走査制御部は、
前記荷電粒子ビームのX方向のビーム走査と、前記ステージの前記X方向と直交するY方向のステージ送りとによる二次元走査を一パスとして、TFT基板をビーム走査方向に複数のパスで分割して二次元走査し、前記各パスにおいて、同一のパスを往路と復路とで往復して走査し、
前記検査信号制御部は、
前記往路と前記復路の各走査における一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を異ならせて印加し、
前記信号処理部は、長時間の電位チャージによる走査画像と、短時間の電位チャージによる走査画像とを形成することを特徴とする、TFTアレイ検査装置。
【請求項2】
前記検査信号制御部は、
前記各パスの前記往路又は前記復路の何れか一方の二次元走査において、最初に一回のみ検査信号を印加してTFTに電位をチャージすることにより、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くすることを特徴とする、請求項1に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項3】
前記短時間の電位チャージによる走査画像形成において、
前記ビーム走査制御部および前記検査信号制御部は、各パスをステージ送り方向に分割して複数フレームとし、各フレームを一走査領域として複数回の検査信号を印加してTFTに電位をチャージすることにより、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を短くし、
前記処理信号部は、一走査領域で得られる複数の検出信号を重畳して走査画像を形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項4】
前記検査信号制御部は、
前記各パスの前記往路又は前記復路の何れか一方の二次元走査において、前記請求項3に記載の短時間の電位チャージにおけるフレーム数よりも少ない所定回数の検査信号を所定間隔で印加してTFTに電位をチャージすることにより、一検査信号当たりのTFTの電位チャージ時間を長くすることを特徴とする、TFTアレイ検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図8】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−265014(P2009−265014A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117251(P2008−117251)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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