説明

TGF−β受容体キナーゼ阻害剤としてのヘテロアリールアミノキノリン

式(I)の新規なヘタリールアミノキノリン誘導体(X、Z、Het、R1、R2、R3およびR4は、請求項1に記載の意味を有する)は、ATP消費タンパク質阻害剤であり、とりわけ、腫瘍の治療のために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、貴重な特性を有する新規な化合物、特に医薬品の調製のために使用することができる化合物を見出す目的を有する。
【0002】
本発明は、キナーゼなどのATP消費タンパク質(ATP consuming proteins)によるシグナル伝達の阻害、レギュレーションおよび/またはモデュレーションが役割を果たす化合物および化合物の使用、特にTGF−β受容体キナーゼの阻害剤に関する。本発明の目的はまた、これらの化合物を含む医薬組成物、およびキナーゼ誘発性の疾患の治療のためのこれらの化合物の使用である。
【0003】
トランスフォーミング増殖因子βは、胚発生の間およびまた成体生物においての両方で重要な機能を果たす、高度に保存された多指向性増殖因子(pleiotrophic growth factors)のファミリーであるTGF−βスーパーファミリーのプロトタイプである。哺乳動物において、TGF−βの3つのアイソフォーム(TGF−β1、2および3)が同定されてきており、TGF−β1は最も一般なアイソフォームである(Kingsley(1994)Genes Dev 8:133〜146)。TGF−β3は、例えば、間葉細胞にのみ発現し、一方TGF−β1は、間葉および上皮細胞において見出される。TGF−βはプレプロタンパク質として合成され、不活性形態で細胞外マトリックス中に放出される(Derynck(1985)Nature 316:701〜705;Bottinger(1996)PNAS 93:5877〜5882)。潜在関連ペプチド(LAP)としてまた公知であり、成熟領域と会合したままであるプロ配列が切断されるのに加えて、潜在型TGF−β結合タンパク質の4つのアイソフォーム(LTBP1〜4)の1つはまた、TGF−βに結合し得る(Gentry(1988)Mol Cell Biol 8:4162〜4168、Munger(1997)Kindey Int 51:1376〜1382)。TGF−βの生物学的作用の発生のために必要な不活性複合体の活性化はまだ完全に明らかにされてこなかった。しかし、例えば、プラスミン、血漿トランスグルタミナーゼまたはトロンボスポンジンによるタンパク質プロセシングは確かに必要である(Munger(1997)Kindey Int 51:1376〜1382)。活性化リガンドであるTGF−βは、膜上の3種のTGF−β受容体、すなわち、遍在的に発現しているI型およびII型受容体、ならびにIII型受容体βグリカンおよびエンドグリン(後者は、内皮細胞においてのみ発現する)を介して、その生物学的作用を媒介する(Gougos(1990)J Biol Chem 264:8361〜8364、Loeps−Casillas(1994)J Cell Biol 124:557〜568)。両方のIII型TGF−β受容体は、細胞内へのシグナル伝達を促進する細胞内キナーゼドメインを欠いている。III型TGF−β受容体はTGF−βアイソフォームの3つ全てに高親和性で結合し、II型TGF−β受容体はまたIII型受容体に結合したリガンドへのより高い親和性を有するため、その生物学的機能は、I型およびII型のTGF−β受容体のリガンドの利用能のレギュレーションにあると考えられる(Lastres(1996)J Cell Biol 133:1109〜1121;Lopes−Casillas(1993)Cell 73:1435〜1344)。構造的に密接に関連するI型およびII型受容体は、シグナル伝達に関与するセリン/トレオニンキナーゼドメインを細胞質領域において有する。II型TGF−β受容体はTGF−βに結合し、その後I型TGF−β受容体はこのシグナル伝達複合体に動員される。II型受容体のセリン/トレオニンキナーゼドメインは常時活性型であり、I型受容体のいわゆるGSドメインにおけるこの複合体中のセリル基をリン酸化することができる。このリン酸化によってI型受容体のキナーゼが活性化され、キナーゼ自体は今や細胞内のシグナルメディエーターであるSMADタンパク質をリン酸化し、このように細胞内シグナル伝達を開始させることができる(Derynck(1997)Biochim Biophys Acta 1333:F105〜F150に概説されている)。
【0004】
SMADファミリーのタンパク質は、全てのTGF−βファミリー受容体キナーゼのための基質の役割を果たす。今日まで、8種のSMADタンパク質が同定されてきており、これらは3つの群に分割することができる。(1)受容体関連SMAD(R−SMAD)は、TGF−β受容体キナーゼの直接の基質である(SMAD1、2、3、5、8);(2)シグナルカスケードの間にR−Smadと会合するco−SMAD(SMAD4);および(3)上記のSMADタンパク質の活性を阻害する阻害型SMAD(SMAD6、7)。様々なR−SMADの中で、SMAD2およびSMAD3は、TGF−β特異的シグナルメディエーターである。TGF−βシグナルカスケードにおいて、SMAD2/SMAD3は、このようにしてI型TGF−β受容体によってリン酸化され、SMAD4と会合することが可能となる。この結果生じたSMAD2/SMAD3およびSMAD4の複合体は、これより細胞核に移行することができ、そこでTGF−βによってレギュレートされた遺伝子の転写を直接的にまたは他のタンパク質を介して開始することができる(Itoh(2000)Eur J Biochem 267:6954〜6967;Shi(2003)Cell 113:685〜700に概説されている)。
【0005】
TGF−βの機能の範囲は広範であり、細胞型および分化状態によって決まる(Roberts(1990)Handbook of Experimental Pharmacology:419〜472)。TGF−βに影響される細胞機能には、アポトーシス、増殖、分化、移動性および細胞接着が含まれる。したがって、TGF−βは、非常に多種多様な生物学的過程において重要な役割を果たす。胚発生の間、TGF−βは、形態形成の部位において、特に上皮間葉相互作用を伴う領域において発現し、そこで重要な分化過程を誘発する(Pelton(1991)J Cell Biol 115:1091〜1105)。TGF−βはまた、幹細胞の自己再生および未分化状態の維持において重要な機能を果たす(Mishra(2005)Science 310:68〜71)。さらに、TGF−βはまた、免疫系のレギュレーションにおいて重要な機能を果たす。TGF−βは一般に、とりわけ、リンパ球の増殖を阻害し、組織マクロファージの活性を制限するため、免疫抑制作用を有する。したがってTGF−βは、炎症性反応を再び抑えることを可能にし、こうして過剰な免疫反応を防止することを助長する(Bogdan(1993)Ann NY Acad Sci 685:713〜739、Letterio(1998)Annu Rev Immunol 16:137〜161に概説)。TGF−βの別の機能は、細胞増殖のレギュレーションである。TGF−βは、内皮、上皮および造血性由来の細胞の増殖を阻害するが、間葉由来の細胞の増殖を促進する(Tucker(1984)Science 226:705〜707、Shipley(1986)Cancer Res 46:2068〜2071、Shipley(1985)PNAS 82:4147〜4151)。TGF−βのさらなる重要な機能は、細胞接着および細胞間相互作用のレギュレーションである。TGF−βは、細胞外マトリックスのタンパク質(例えば、フィブロネクチンおよびコラーゲンなど)の誘発によって、細胞外マトリックスの構築を促進する。さらに、TGF−βは、マトリックス分解性メタロプロテアーゼおよびメタロプロテアーゼの阻害剤の発現を減少させる(Roberts(1990)Ann NY Acad Sci 580:225〜232;Ignotz(1986)J Biol Chem 261:4337〜4345;Overall(1989)J Biol Chem 264:1860〜1869;Edwards(1987)EMBO J6:1899〜1904)。
【0006】
TGF−βの広範囲の作用は、TGF−βが、多くの生理的状況(創傷治癒など)において、ならびに病理過程(がんおよび線維症など)において重要な役割を果たすことを意味する。
【0007】
TGF−βは、創傷治癒における重要な増殖因子の1つである(O'Kane(1997)Int J Biochem Cell Biol 29:79〜89に概説)。肉芽形成相の間、TGF−βは、傷害の部位で血小板から放出される。次いで、TGF−βは、マクロファージにおけるその自己産生をレギュレートし、例えば、単球による他の増殖因子の分泌を誘発する。創傷治癒の間の最も重要な機能には、炎症細胞の走化性の刺激、細胞外マトリックスの合成、ならびに創傷治癒過程に関与する全ての重要な細胞型の増殖、分化および遺伝子発現のレギュレーションが含まれる。
【0008】
病的状態において、これらのTGF−βによって媒介される作用、特に、細胞外マトリックス(ECM)の産生のレギュレーションは、線維形成または皮膚の瘢痕をもたらす恐れがある(Border(1994)N Engl J Med 331:1286〜1292)。
【0009】
線維性疾患、糖尿病性腎症および糸球体腎炎(glomeronephritis)について、TGF−βが腎細胞肥大および細胞外マトリックスの病原性蓄積を促進することが示されてきた。抗TGF−β抗体を用いた処理によるTGF−βシグナル伝達経路の遮断は、糖尿病動物において、糸球体間質マトリックスの拡大、腎機能の進行的低下を防止し、糖尿病性糸球体症の既にできている病変を減少させる(Border(1990)346:371〜374、Yu(2004)Kindney Int 66:1774〜1784、Fukasawah(2004)Kindney Int 65:63〜74、Sharma(1996)Diabetes 45:522〜530)。
【0010】
TGF−βはまた、肝線維症において重要な役割を果たしている。肝硬変の発生過程における細胞外マトリックスの主な産生細胞である筋線維芽細胞をもたらす肝星細胞の活性化(肝線維症の発生に必須である)は、TGF−βによって刺激を受ける。ここで同様に、TGF−βシグナル伝達経路の遮断は、実験モデルにおいて線維症を低減することが示されてきた(Yata(2002)Hepatology 35:1022〜1030;Arias(2003)BMC Gastroenterol 3:29)。
【0011】
TGF−βはまた、がんの形成において重要な機能を果たす(Derynck(2001)Nature Genetics:29:117〜129;Elliott(2005)J Clin One 23:2078〜2093に概説されている)。がんの発生の初期段階において、TGF−βはがんの形成に対抗する。この腫瘍抑制作用は、TGF−βが上皮細胞の分裂を阻害する能力に主に基づいている。対照的に、TGF−βは、腫瘍の後期段階においてがんの増殖および転移の形成を促進する。これは、大部分の上皮性腫瘍が、TGF−βの増殖阻害作用への耐性を生じ、TGF−βは他の機序を介してがん細胞の増殖を同時に補助するという事実によって生じ得る。これらの機序には、血管新生の促進、腫瘍細胞が免疫系の制御機能(免疫監視)を回避するのを補助する免疫抑制作用、ならびに侵襲性および転移の形成の促進が含まれる。腫瘍細胞の浸潤性表現型の形成は、転移の形成にとって主要な必要条件である。TGF−βは、細胞接着、運動性、および細胞外マトリックスの形成をレギュレートするその能力によって、この過程を促進する。さらに、TGF−βは、細胞の上皮表現型から浸潤性間葉表現型への転換を誘発する(上皮間葉転換=EMT)。がん増殖の促進におけるTGF−βが果たす重要な役割はまた、強力なTGF−β発現と予後不良との相関を示す調査によって示される。TGF−βレベルの増加は、とりわけ、前立腺がん、乳房がん、腸がんおよび肺がんを有する患者において見出されてきた(Wikstrom(1998)Prostate 37:19〜29;Hasegawa(2001)Cancer 91:964〜971;Friedman(1995)Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 4:549〜54)。
【0012】
上記のTGF−βのがん促進作用によって、例えば、TGF−βI型受容体の阻害を介したTGF−βシグナル伝達経路の阻害は、可能な治療概念である。多数の前臨床試験において、TGF−βシグナル伝達経路の遮断はがん増殖を実際に阻害することが示されてきた。したがって、可溶性TGF−βII型受容体による処理は、時間の経過と共に浸潤性乳がんを発症するトランスジェニックマウスにおいて転移の形成を低減させる(Muraoka(2002)J Clin Invest 109:1551〜1559、Yang(2002)J Clin Invest 109:1607〜1615)。
【0013】
欠陥のあるTGF−βII型受容体を発現している腫瘍細胞系は、腫瘍および転移性増殖の減少を示す(Oft(1998)Curr Biol 8:1243〜1252、McEachern(2001)Int J Cancer 91:76〜82、Yin(1999)J Clin Invest 103:197〜206)。
【0014】
「TGF−β活性の増強によって特徴付けられる」状態には、TGF−βが増加したレベルで存在するようなTGF−β合成が刺激された状態、またはTGF−β潜在型タンパク質が望ましくなく活性化され、もしくは活性TGF−βタンパク質に変換された状態、またはTGF−β受容体がアップレギュレートされた状態、またはTGF−βタンパク質が疾患の部位において細胞もしくは細胞外マトリックスへの結合の増強を示す状態が含まれる。したがっていずれにしても、「増強した活性」とは、原因に関わりなく、TGF−βの生物活性が望ましくなく高い任意の状態を意味する。
【0015】
いくつかの疾患は、TGF−β1の過剰産生に関連付けられてきた。
【0016】
TGF−β細胞内シグナル伝達経路の阻害剤は、線維増殖性疾患のための有用な治療である。具体的には、線維増殖性疾患には、糸球体腎炎(GN)(メサンギウム増殖性GN、免疫性GN、および半月体形成性GNなど)を含めた、レギュレートされていないTGF−β活性および過剰な線維症と関連する腎臓障害が含まれる。他の腎臓の状態には、糖尿病性腎症、間質性腎線維症、シクロスポリンを投与されている臓器移植患者における腎線維症、およびHIVに関連する腎症が含まれる。膠原血管障害には、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、強皮症(sclerorma)、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、限局性強皮症、またはレイノー症候群の発症と関連する障害が含まれる。過剰なTGF−β活性からもたらされる肺線維症には、成人呼吸促迫症候群、特発性肺線維症、ならびに間質性肺線維症(自己免疫障害(全身性エリテマトーデスおよび強皮症など)、化学物質との接触、またはアレルギーと関連することが多い)が含まれる。線維増殖性の特徴と関連する別の自己免疫障害は、関節リウマチである。
【0017】
線維増殖性状態と関連する眼疾患には、増殖性硝子体網膜症を伴う網膜復位術、眼内レンズ挿入術を伴う白内障摘出術が含まれ、緑内障ドレナージ手術後はTGF−β1の過剰産生と関連する。
【0018】
TGF−β1の過剰産生と関連する線維性疾患は、慢性的状態(腎臓、肺および肝臓の線維症など)、ならびにより急性状態(皮膚瘢痕および再狭窄など)に分割することができる(Chamberlain, J. Cardiovascular Drug Reviews、19(4):329〜344)。腫瘍細胞によるTGF−β1の合成および分泌はまた、高悪性度脳腫瘍または乳房腫瘍を有する患者に見られるように免疫抑制をもたらし得る(Arteagaら(1993)J. Clin. Invest. 92:2569〜2576)。マウスにおけるリーシュマニア感染の過程は、TGF−β1によって劇的に変化する(Barral−Nettoら(1992)Science 257:545〜547)。TGF−β1は疾患を悪化させ、一方TGF−β1抗体は、遺伝的に感受性の強いマウスにおいて疾患の進行を停止させた。遺伝的に耐性のあるマウスは、TGF−β1の投与によってリーシュマニア感染に対して感受性となった。
【0019】
細胞外マトリックス沈着に対するTGF−β1の強い作用は総説されており(RoccoおよびZiyadeh(1991)、Contemporary Issues in Nephrology v.23、Hormones, autocoids and the kidney、編Jay Stein、Churchill Livingston、New York、391〜410頁;Robertsら(1988)Rec. Prog. Hormone Res. 44:157〜197)、細胞外マトリックス成分の合成の刺激および分解の阻害が含まれる。糸球体の構造および濾過特性は、糸球体間質および糸球体膜の細胞外マトリックス組成によって大部分が決定されるため、TGF−β1が腎臓に対して強い作用を有することは驚くにはあたらない。増殖性糸球体腎炎(Borderら(1990)Kidney Int. 37:689〜695)および糖尿病性腎症(Mauerら(1984)J. Clin. Invest. 74:1143〜1155)における糸球体間質マトリックスの蓄積は、これらの疾患の明確で主要な病理学的特徴である。TGF−β1レベルは、ヒト糖尿病性糸球体硬化症(進行した神経障害)において上昇する(Yamamotoら(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. 90:1814〜1818)。TGF−β1は、いくつかの動物モデルにおいて腎線維症の発生における重要なメディエーターである(Phanら(1990)Kidney Int. 37:426;Okudaら(1990)J. Clin. Invest. 86:453)。ラットにおいて実験的に誘発された糸球体腎炎の抑制は、TGF−β1に対する抗血清(Borderら(1990)Nature 346:371)によって、およびTGF−β1に結合することができる細胞外マトリックスタンパク質であるデコリン(Borderら(1992)Nature 360:361〜363)によって示されてきた。
【0020】
過剰なTGF−β1は、皮膚瘢痕組織の形成をもたらす。ラットにおいて、回復期創傷の周辺部に注射された中和TGF−β1抗体は、創傷治癒の速度または創傷の引張強さを妨げることなく瘢痕を阻害することが示されてきた(Shahら(1992)Lancet 339:213〜214)。同時に、血管新生が減少し、創傷においてマクロファージおよび単球数が減少し、瘢痕組織において無秩序な膠原線維沈着量が減少した。
【0021】
TGF−β1は、バルーン血管形成術後の動脈における平滑筋細胞の増殖および細胞外マトリックスの沈着からもたらされる、動脈壁の進行的な肥厚化における要因であり得る。再狭窄した動脈の直径は、この肥厚化により90%減少し得る。直径の減少の大部分が平滑筋細胞体よりもむしろ細胞外マトリックスに起因するものであるため、広範な細胞外マトリックス沈着を単に減少させることによって、これらの血管を50%まで広げることが可能となり得る。TGF−β1遺伝子をインビボでトランスフェクトした無傷のブタ動脈において、TGF−β1遺伝子発現は、細胞外マトリックス合成と過形成との両方に関連した(Nabelら(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10759〜10763)。TGF−β1によって誘発された過形成は、PDGF−BBによって誘発されるものほど広範ではなかったが、細胞外マトリックスはTGF−β1形質移入体でより広範であった。この遺伝子導入ブタモデルにおいて、細胞外マトリックス沈着は、FGF−1によって誘発される過形成(FGFの分泌された形態)と関連しなかった(Nabel(1993)Nature 362:844〜846)。
【0022】
腫瘍によって産生されたTGF−β1が有害であり得るいくつかのタイプのがんがある。MATLyLuラット前立腺がん細胞(SteinerおよびBarrack(1992)Mol. Endocrinol 6:15〜25)およびMCF−7ヒト乳がん細胞(Arteagaら(1993)Cell Growth and Differ. 4:193〜201)は、マウスTGF−β1を発現しているベクターによるトランスフェクション後に、より腫瘍原性および転移性となった。TGF−β1は、ヒト前立腺がんおよび進行性胃がんにおける血管新生、転移および予後不良と関連付けられてきた(Wikstromら(1998)Prostate 37:19〜29;Saitoら(1999)Cancer 86:1455〜1462)。乳がんにおいて、予後不良は増加したTGF−βと関連し(Dicksonら(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:837〜841;Kasidら(1987)Cancer Res. 47:5733〜5738;Dalyら(1990)J. Cell Biochem. 43:199〜211;Barrett−Leeら(1990)Br. J Cancer 61:612〜617;Kingら(1989)J. Steroid Biochem. 34:133〜138;Welchら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:7678〜7682;Walkerら(1992)Eur. J. Cancer 238:641〜644)、タモキシフェン治療によるTGF−β1の誘発(Buttaら(1992)Cancer Res. 52:4261〜4264)は、乳がんのためのタモキシフェン治療の失敗と関連付けられてきた(Thompsonら(1991)Br. J. Cancer 63:609〜614)。抗TGF−β1抗体は、胸腺欠損マウスにおいてMDA−231ヒト乳がん細胞の増殖を阻害するが(Arteagaら(1993)J. Clin. Invest. 92:2569〜2576)、この治療は、脾臓のナチュラルキラー細胞活性の増加と相関する。潜在型TGF−β1をトランスフェクトされたCHO細胞はまた、ヌードマウスにおいてNK活性の減少および腫瘍増殖の増加を示した(Wallickら(1990)J. Exp. Med. 172:1777〜1784)。したがって、乳房腫瘍によって分泌されるTGF−βは、内分泌免疫抑制をもたらし得る。TGF−β1の高い血漿濃度は、進行性乳がん患者についての予後不良を示すことが示されてきた(Anscherら(1993)N. Engl. J. Med. 328:1592〜1598)。高用量化学療法および自家骨髄移植の前に高い循環TGF−βを有する患者は、肝静脈閉塞症(全ての患者の15〜50%、死亡率は最大50%)および特発性間質性肺臓炎(全ての患者の40〜60%)のリスクが高い。これらの治験の意味は、1)TGF−β1の血漿レベルの上昇を使用して、危険性のある患者を同定することができること、および2)TGF−β1の低下によって、乳がん患者についての一般治療の罹患率と死亡率を減少させることができることである。
【0023】
多くの悪性細胞は、強力な免疫抑制剤であるトランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)を分泌し、TGF−βの産生が、宿主の免疫監視からの腫瘍の重要なエスケープ機序を表し得ることをこれは示唆する。腫瘍を有する宿主におけるTGF−βシグナル伝達が乱された白血球亜集団の確立は、がんの免疫療法のための強力な手段を提供する。T細胞中のTGF−βシグナル伝達が乱されたトランスジェニック動物モデルは、通常致死的なTGF−βを過剰発現しているリンパ腫EL4を根絶することができる(GorelikおよびFlavell(2001)Nature Medicine 7(10):1118〜1122)。
【0024】
腫瘍細胞におけるTGF−β分泌のダウンレギュレーションは、宿主における免疫原性の回復をもたらす一方、TGF−βに対するT細胞の非感受性は、分化および自己免疫の促進をもたらし、これらの要素は、耐容性を示す宿主において自己抗原発現腫瘍を抑制するために必要であり得る。TGF−βの免疫抑制効果はまた、CD4/CD8T細胞数に基づいて予想されるより低い免疫応答を有するHIV患者の亜集団において関連付けられてきた(Garbaら、J. Immunology(2002)168:2247〜2254)。TGF−β中和抗体は、培養物における作用を逆行させることができた。これは、TGF−βシグナル伝達阻害剤が、HIV患者のこのサブセットにおいて存在する免疫抑制を逆行させることにおいて有用性を有し得ることを示す。
【0025】
発癌の最も早い段階の間に、TGF−β1は、強力な腫瘍抑制物質として作用し、いくつかの化学予防剤の作用を媒介し得る。しかし、悪性新生物の発生および進行の間のある時点において、微小環境における生理活性TGF−βの出現と並行して、腫瘍細胞は、TGF−β依存性の増殖阻害から回避すると考えられる。TGF−βの腫瘍抑制/腫瘍促進の2重の役割は、ケラチン生成細胞においてTGF−βを過剰発現しているトランスジェニック系において最も明らかに解明されてきた。トランスジェニック体は良性皮膚病変の形成に対してより耐性であったが、トランスジェニック体における転移変換の速度は劇的に増加した(Cuiら(1996)Cell 86(4):531〜42)。原発性腫瘍における悪性細胞によるTGF−β1の産生は、腫瘍進行の段階が進行するにつれ増加すると考えられる。主要な上皮がんの多くの研究から、ヒトがんによるTGF−βの産生の増加は、腫瘍進行の間の相対的に遅い事象として起こることが示唆される。さらに、この腫瘍に関連するTGF−βは、腫瘍細胞に選択的利点をもたらし、腫瘍進行を促進する。細胞/細胞および細胞/間質相互作用に対するTGF−β1の作用は、より高い浸潤および転移傾向をもたらす。
【0026】
腫瘍に関連するTGF−βは、それが活性化リンパ球のクローン性増殖の強力な阻害剤であるため、腫瘍細胞が免疫監視を回避することを可能とし得る。TGF−βはまた、アンジオスタチンの産生を阻害することが示されてきた。放射線療法および化学療法などのがん治療モダリティは、腫瘍において活性化TGF−βの産生を誘発し、それによってTGF−βの増殖阻害作用に対して耐性である悪性細胞の増殖を選択する。したがって、これらの抗がん治療は、増殖性および侵襲性が増強された腫瘍の危険性を増加させ、発生を促進する。この状況において、TGF−βが媒介するシグナル伝達を標的とする薬剤は、非常に有効な治療方針であり得る。TGF−βに対する腫瘍細胞の耐性は、放射線療法および化学療法の細胞毒性作用の多くを無効にすることが示されてきており、間質におけるTGF−βの治療依存的な活性化ですら、微小環境が腫瘍進行をより助長するものとなり、線維症をもたらす組織の損傷の一因となり得るため、有害であり得る。TGF−βシグナル伝達阻害剤の開発は、単独で、および他の治療と組み合わせて、進行がんの治療の利益になる可能性が高い。
【0027】
この化合物は、前記化合物(複数可)を、それを必要としている患者に投与することによって、前記患者においてTGF−βを阻害することによって、がん、およびTGF−βの影響を受ける他の病態の治療に適している。TGF−βはまた、アテローム性動脈硬化症(T. A. McCaffrey:TGF−ps and TGF−β Receptors in Atherosclerosis:Cytokine and Growth Factor Reviews 2000、11、103〜114)およびアルツハイマー病(Masllah, E.;Ho, G.;Wyss−Coray, T.:Functional Role of TGF−β in Alzheimer's Disease Microvascular Injury:Lessons from Transgenic Mice:Neurochemistry International 2001、39、393〜400)に対して有用である。
【0028】
シグナル伝達の別の重要な生化学的機序は、タンパク質上のチロシン残基の可逆的リン酸化が関与する。タンパク質のリン酸化状態は、その立体構造および/または酵素活性、ならびにその細胞位置に影響を与え得る。タンパク質のリン酸化状態は、様々な特定のチロシン残基において、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)とタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)との相互作用によって変更される。
【0029】
タンパク質チロシンキナーゼは、膜貫通受容体の大きなファミリーと、複数の機能ドメインを有する細胞内酵素とを含む。リガンドの結合は、細胞膜を通過するシグナルをアロステリックに伝達し、そこでPTKの細胞質部分が、シグナルを細胞中および細胞核へ伝搬する分子相互作用のカスケードを開始する。多くの受容体型タンパク質チロシンキナーゼ(RPTK)(上皮増殖因子受容体(EGFR)および血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)など)は、リガンド結合によってオリゴマー化され、受容体は、(自己リン酸化またはトランスリン酸化によって)受容体の細胞質部分における特定のチロシン残基上で自己リン酸化される。細胞質タンパク質チロシンキナーゼ(CPTK)(ヤヌスキナーゼ(例えば、JAK1、JAK2、TYK2)およびSrcキナーゼ(例えば、src、lck、fyn)など)は、サイトカイン(例えば、IL−2、IL−3、IL−6、エリスロポエチン)およびインターフェロンの受容体、ならびに抗原受容体と関連する。これらの受容体はまた、オリゴマー化され、活性化の間にリン酸化されるチロシン残基を有するが、受容体ポリペプチド自体は、キナーゼ活性を有しない。
【0030】
PTKと同様に、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)は、膜貫通のファミリーと、高度に保存された活性部位をコンセンサスモチーフと共に含有する少なくとも概ね230のアミノ酸の触媒ドメインを有する細胞質酵素とを含む。PTPの基質は、リン酸化チロシン残基を有するPTK、またはPTKの基質であってもよい。
【0031】
いかなる時点においても、正常な細胞増殖および分化のために必要なチロシンリン酸化のレベルは、PTKおよびPTPの協調作用によって達成される。細胞の状況によって、これらの2つのタイプの酵素は、シグナル伝達の間に互いに拮抗または協力し得る。これらの酵素の間の不均衡は、正常な細胞機能を損ない、代謝障害および細胞形質転換をもたらし得る。
【0032】
例えば、HER2などのPTKの過剰発現は、がんの発生において決定的な役割を果たすことができ、この酵素の活性を遮断できる抗体は、腫瘍増殖を抑制することができることはまた周知である。Flk−1およびPDGF受容体などのチロシンキナーゼのシグナル伝達能力を遮断することによって、動物モデルにおいて腫瘍増殖を遮断することが示されてきた。
【0033】
ATPに結合し、かつそのエネルギーを利用して、立体構造を変化させ、基質をリン酸化し、シグナル伝達カスケードを開始させるタンパク質は、多くのクラス(キナーゼ、ホスファターゼ、シャペロンまたはイソメラーゼなど)から公知である。特定のツールおよび技術によって、ATP結合タンパク質を濃縮することができる。
【0034】
タンパク質キナーゼの大きなファミリーから、チロシンキナーゼおよびセリントレオニンキナーゼのサブファミリーに分かれ、部分的な一覧には、cAbI、Akt、ALK、ALK1およびそのファミリーメンバー(ALK1およびALK5など)、Axl、Aurora AおよびB、Btk、Dyrk2、EGFR、Erk、エフリン受容体(EphA2など)、FAK、FGF受容体(FGFR3など)、インスリン受容体IRおよびインスリン様増殖因子受容体IGF1R、IKK2、Jak2、JNK3、cKit、LimK、VEGF受容体1、2、および3、Mek1、Met、P70s6K、PDGFR、PDK1、PI3K、PIk1、PKD1、bRaf、RSK1、Srcおよびそのファミリーメンバー、TAK1、Trk A、B、C、Zap70が含まれる。異なるキナーゼは、当業者には周知のいくつかの同義語で記載することができ、Kinwebなどのデータベースにおいてアクセス可能であり、代替の名称、分類、遺伝子アノテーション、配列および遺伝子構造、ならびにpdb3D構造の情報へのリンクを有する遺伝子およびタンパク質についてのリポートが見出せる。同様に、プロテオミクスサーバーによって、遺伝子およびタンパク質(キナーゼを含めた)についての多くの情報および分析および予測ツールにアクセスを行う。
【0035】
がんの顕著な特徴の機構的部分として、Ser/Thrキナーゼおよび受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、細胞内シグナル伝達において不可欠である酵素をリン酸化する。細胞周期、生存、増殖および細胞死は、組織が増殖し、再生し、恒常性となり、または退縮することを可能とする、細胞シグナル伝達によってレギュレートされる細胞過程である。したがって、いくつかのキナーゼは、哺乳動物の治療についての精巧な標的である。
【0036】
ヒトキノームの一部であるキナーゼの異なるファミリーの内、VEGF受容体2とも称される受容体チロシンキナーゼKDRは、VEGFによって細胞外で結合された場合、内皮細胞の生存および増殖を刺激することができる。次いで、リガンド結合は、細胞内リン酸化事象、シグナル伝達カスケード、および究極的には増殖をもたらし得る。このKDRシグナル伝達の阻害は、様々な治療によって試みられている。
【0037】
内皮細胞の機能のために重要な他のキナーゼおよびリガンドは、TIE2キナーゼおよびアンジオポエチン、PDGF受容体およびPDGF、ならびにPIGFである。エフリン受容体キナーゼおよびエフリン、特に、EphB4およびエフリン−B2。さらに、リガンドTGFβおよびその受容体TGFβR、すなわち、Alk1/Alk5は、血管の健全性の維持において重要な役割を果たす。TGFβII型受容体に結合することによって、TGFβは、内皮細胞において2つの別個のI型受容体、すなわち、ECに限定されたALK1、およびEC挙動に対する反対の作用を有する広範に発現しているALK5を活性化することができる。ALK1は、Smad1/5転写因子によってEC増殖および移動を刺激し、ALK5は、Smad2/3転写因子によってSmad1/5転写因子の機能を阻害する。EC増殖およびシート形成を促進するAlk5キナーゼ阻害剤についての一例は、SB−431542である。リガンド結合の阻害は、また血管新生におけるTGFβ受容体シグナル伝達をモジュレートするさらなるアプローチであり得る。これは2種のペプチドで示され、また可溶性TGFβ受容体であるsTβR−Fcについて考察された。抗TGFβ抗体、それどころかTGFβトラップ(TGFβ trap)の使用は、TGFβシグナル伝達を阻害する別の戦略である。
【0038】
TGFβタンパク質は、遍在的に発現しており、不活性な形態で分泌される、約25kDaの分子量を有する保存された二量体タンパク質のファミリーを含む。適当な刺激に反応した局所タンパク質分解は、活性TGFβリガンドをもたらす。TGFβシグナル伝達は、がん、心血管、骨、CNS、PNS、炎症性および神経変性障害を含めた多数の状態および疾患において関係付けられている。
【0039】
上皮細胞において、TGFβは、細胞増殖を阻害する。癌腫細胞への正常な上皮細胞の転換は、TGFβに対する増殖阻害反応のダウンレギュレーションを伴い、細胞が、TGFβシグナル伝達のオートクライン抗腫瘍活性(autocrine tumor suppressor activities)を回避することを可能とする。癌腫細胞によるTGFβ産生の増加は、がん細胞の浸潤性および転移性挙動の一因となる。TGFβは、上皮間葉転換(EMT)を誘発することができ、細胞が、浸潤性および遊走性となることを可能とする。さらに、TGFβ産生の増加によって、ストローマ細胞および免疫細胞に対して、がん進行のために都合よい微小環境を提供する作用を示す。TGFβタンパク質は、TβR−I/II受容体キナーゼおよびそれらのSmad基質によってシグナルを伝えるが、またSmadと無関係にシグナルを伝えることができる(ERK MAPキナーゼ、PI3キナーゼ、Rho様GTPアーゼ、タンパク質ホスファターゼ2A、およびPar6など)。活性化I型TβRキナーゼは細胞の生存を増強し、病理学的細胞進行を促進し得る。
【0040】
TGFβ受容体I型およびII型(TβR I、TβR II)は、1回膜貫通型の細胞内セリン/トレオニンキナーゼを持つ細胞外リガンド(TGFβ)結合受容体である。細胞内シグナル伝達は、自己リン酸化、トランスリン酸化および基質リン酸化によって進行し、標的遺伝子発現のモデュレーションをもたらす。TβRタンパク質のクローニングおよびゲノム構築は周知である。TβR配列は、www.uniprot.orgにおいて、TGFR1_ヒト(アクセッション番号P36897)、およびTGFβR2_ヒト(アクセッション番号P37173)として寄託されている。タンパク質レベルにおいて、I型TβRは、受容体キナーゼドメインの前にGlyおよびSerに富んだ領域(GSドメイン)を含有すると記載されている。TβR IIは、その自己/リン酸化状態において、I型受容体に結合し、かつGSドメインにおいてI型受容体をリン酸化する常時活性型のキナーゼである。
【0041】
Tβ受容体(2つのTβR Iおよび2つのTβR II単位のリガンドTGFβ結合(活性化)四量体複合体)は、それらのC末端SSXSモチーフにおいて基質としてSmad(Smad2およびSmad3)をリン酸化する(phophorylate)ことができ、Smad2およびSmad3はSmad4に結合し/結合され、細胞核に移動し、そこでTGFβ応答性遺伝子をモジュレートする。I型およびII型TβRの中でホモマーおよびヘテロマーの複合体形成をレギュレートする異なるドメインが公知である。TβR IのGSドメインにおける変異は、常時活性型であり得る。キナーゼ不活性化変異は、I型TβRについてK232Rと共に、およびII型TβRについてK277Rと共に見出された。I型およびII型TβR遺伝子についての遺伝子における不活性化または減弱変異は、種々のがんにおいて見出される。さらに、TβRのシグナル伝達は、リン酸化および脱リン酸化機序、ユビキチン化およびSUMO化によって、ならびにエンドサイトーシスによって、ならびにI型(II型受容体ではない)のTACEが媒介する外部ドメインのシェディング(shedding)によってレギュレートされる。TACE、aka ADAM−17は、サイトカイン、GF受容体、および接着タンパク質のシェディングを媒介し、がんにおいて高度に発現している。
【0042】
TβR IおよびFKBP12のX線共結晶構造は記載されてきており、キナーゼ活性化過程が考察された。一方、いくつかの結晶構造は、PDBデータベース:1B6C、1IAS、1PY5、1RW8、1VJY、2PJY、およびモデル1TBIにおいて見出すことができる。TβR IIについて、細胞外リガンド結合ドメインについてのX線研究のみが公知である(1KTZ、1M9Z、および1PLO(NMR))が、キナーゼドメインについては公知ではない。
【0043】
TGFβシグナル伝達は、TβR I型受容体キナーゼについての唯一の基質であるSmadが関与する。ヒトゲノムは、発生に亘り、および成体組織において遍在的に発現している、3つのサブファミリー(R−、Co−、I−Smad)からの8種のSmadをコードする。SmadはI型TGFβ受容体キナーゼによってリン酸化されるだけでなく、オリゴマー化、ユビキチン化および分解、および核原形質シャットリング(nucleoplasmatic shuttling)によってレギュレートされる。
【0044】
VEGF放出は、ALK1およびALK5によってレギュレートされることが示されたが、一方では、TGFβはVEGFの発現を増強し、BMP−9はVEGFの発現を抑制した。
【0045】
短縮型ALK4アイソフォームを対象にした研究は、アクチビンシグナル伝達のドミナントネガティブな阻害による、下垂体腫瘍の増殖および発生におけるこのI型キナーゼの関与を示唆する。胚発生、中胚葉誘導のレギュレーション、原条形成、原腸形成、体軸形成および左右軸決定における、ALK4の役割の時空間的窓の研究は、成人におけるALK4の役割をまだ明らかにしていない。
【0046】
大規模なヒト候補スクリーンにおいて、ドミナントネガティブなALK2対立遺伝子は、先天性心疾患(不適切な房室(atrioventrikular)中隔発生など)と関連することが見出された。
【0047】
ALK1は、TβR−IIおよびエンドグリン/CD105/TβR−IIIに結合し、SMAD−1および−5をリン酸化する。エンドグリン、特に2つのバリアントであるL−およびS−エンドグリンによるTGFβシグナル伝達のディファレンシャルモデュレーション(differential modulation)の役割が示されてきた。ALK1は血管再構築において機能し、炎症性組織における内皮、創傷および腫瘍の活性化状態の平衡化においてALK5と共に見出される。ALK1は、肺、胎盤、および他の高度に血管化した組織において発現し、ECに選択的に見出される。さらに、ALK1は、ニューロンに検出された。
【0048】
II型TβRの発現の減少は、ヒト乳癌における高い腫瘍悪性度と相関し、これは乳(beast)がん進行の一因となることを示す。腫瘍増殖は、変異または他の遺伝子変化によるRTKシグナル伝達の撹乱による、無秩序な、すなわち、自律的な細胞増殖によって特徴付けることができる。シグナル伝達に関与している32000のヒトコーディング遺伝子の内、520を超えるタンパク質キナーゼおよび130のタンパク質ホスファターゼは、タンパク質リン酸化に対する厳格および可逆的な制御を発揮する。選択性は、チロシンおよびセリン/トレオニンリン酸化について見出される。ヒトゲノムにおいて90を超える公知のPTK遺伝子が存在し、50超は、20のサブファミリーに分布する膜貫通RPTKをコードし、32は、10のサブファミリーの細胞質非受容体PTKをコードする。例えば、Trk Aは、甲状腺癌および神経芽細胞腫において重要な役割を有し、EphB2およびB4は、癌腫において過剰発現しており、AxlおよびLckは、白血病において過剰発現している。
【0049】
がんの治療のためのTGFβ阻害剤が概説された。抗血管新生、血管形成、安定化、維持および退行を介してがん、創傷治癒および炎症を間接的に標的とするさらなる適応症および病態が存在する。
【0050】
既存の血管からの新しい血管の発生である血管新生は、胚形成、器官形成、および創傷治癒における血管発生において重大な意味を持つ。それらの生理的過程に加えて、血管新生は、腫瘍増殖、転移および炎症について重要であり、乳房、子宮頸部、子宮体部(子宮内膜)、卵巣、肺、気管支、肝臓、腎臓、皮膚、口腔および咽頭、前立腺、膵臓、膀胱、血液細胞、結腸、直腸、骨、脳、中枢および末梢神経系の腫瘍などの疾患(乳がん、結腸直腸がん、神経膠腫、リンパ腫などとして例示される)、ならびに炎症性疾患(関節リウマチおよび乾癬など)、または眼の疾患(黄斑変性(macula degeneration)、および糖尿病性網膜症など)をもたらす。血管形成の分子機構、および腫瘍化における血管新生のスイッチは、最近考察された。血管パターン形成は、Eph受容体チロシンキナーゼおよびエフリンリガンドにより、例えば、Eph B4およびEph B1を介したエフリン−B2シグナル伝達によりレギュレートされる。EphB4は、生後の血管新生の間の血管形態形成を制御する。血管新生または脈管形成によって形成される新生血管系の成熟は、壁細胞(周皮細胞、平滑筋細胞)、細胞外マトリックスの生成、および構造支持のための血管壁の分化、および血管機能のレギュレーションを必要とする。それらの過程のレギュレーション、および内皮細胞とそれらの壁細胞との間の相互作用は、いくつかのリガンドキナーゼのペア(VEGF/VEGFR1、VEGFR2、EphrinB2/EphB4、PDGFR/PDGFRβ、アンジオポエチン/TIE2、TGFβ/TGFβR−ALK1/ALK5など)が関与する。血管構築、毛細血管形成、出芽、安定化および不安定化、退行でさえも、それらのキナーゼおよびリガンドの機能的バランスによってレギュレートされている。リンパ脈管新生は、VEGF受容体3、およびそのリガンドであるVEGF CおよびD、ならびにTIE2およびそのリガンドであるアンジオポエチン1、2によってレギュレートされている。VEGFR3および/またはTIE2シグナル伝達の阻害、したがってリンパ管の形成の阻害は、腫瘍細胞の転移を停止させる手段となり得る。病理学的血管新生化についての情報全体から、血管新生の阻害ががんおよび他の障害の治療のための有望な戦略であるという仮説を導き出される。
【0051】
血管新生過程のためのTGFβ受容体の重要性は、全てが血管の欠陥による胚性致死表現型を示すAlk1、エンドグリン、Alk5およびTβR II KOマウスによって示される。さらに、ECにおいて、TGFβリガンドは、Alk1の下流のSmad1/5/8のリン酸化(posphorylation)、およびAlk5の下流のSmad2/3のリン酸化と共に、2つの経路を刺激することができる。両方の経路は、互いにクロストークを行う。L45ループ変異を有するAlk5ノックインマウスは、不完全なSmad活性化を示す。TGFβ/Alk5シグナル伝達は、ECにおいてALK1によってアンタゴナイズされる。
【0052】
TGFβは、少なくとも5つのアイソフォーム(TGFβ1〜5)で存在し、これらはTGFaと関連せず、TGFβ1は主要な形態である。TGFβは、増殖、分化、移動、細胞生存、血管新生および免疫監視を含めた、細胞過程および生理的過程の遍在的および必要不可欠なレギュレーターである。
【0053】
がん細胞は腫瘍特異的抗原を発現するため、免疫系によって通常認識され、破壊される。腫瘍化の間、がん細胞は、複数の機序によってこの免疫監視を逃れる能力を獲得する。主要な機序は、強力な免疫抑制性サイトカインであるTGFβの分泌による、がん細胞が媒介する免疫抑制である。TGFβは、腫瘍サプレッサーから腫瘍プロモーターおよび転移促進性因子にスイッチする可能性を有する。
【0054】
TGFβの機能は、2つの群であるTGFβ/アクチビンおよびBMP/GDFブランチに分けられる、リガンドのTGFβスーパーファミリーのメンバーの会合の後に活性化される、I型およびII型受容体と称される膜貫通型セリン−トレオニンキナーゼ受容体の2つの群からなる四量体受容体複合体によって伝えられる。TGFβ1、2、および3は、リガンドのTGFβ/アクチビンブランチに属する。これらの結合事象は、異なる細胞型において異なってレギュレートされる下流の反応を特定化する。
【0055】
創傷修復の間の皮膚における上皮間葉相互作用における線維芽細胞の重要性は、皮膚線維芽細胞におけるTGFβRIIの誘導可能な生後欠損において記載された。創傷修復の間に、リガンドTGFβならびにその受容体RI型およびRII型の発現は、時間的および空間的にレギュレートされる。CD34+急性骨髄性白血病細胞系、EC、活性化血小板およびT細胞によって発現されるGPI結合細胞表面抗原であるCD109は、ヒトケラチン生成細胞におけるTβR系の部分である。毛包の隆起部における濾胞幹細胞(FSC)は、毛周期および創傷治癒の間の複数の系列を生じさせることができる。TGFβシグナル伝達の共通のメディエーターであるSmad4は、FSC維持の一部である。マウス皮膚のSmad4KO研究は、毛包の欠損および扁平上皮細胞癌の形成を示した。TGFβの潜在的な抑制は、毛包における退行期の進行を遅延させた。退行期相の間のケラチン生成細胞アポトーシスにおけるTGFβの十分に記載された役割は、共存下のTβRIおよびTβRIIがまた関与する成長期特異的毛包(anagen−specific hair follicle)成分を伴う可能性が高い。
【0056】
いくつかの器官(皮膚、腎臓、心臓および肝臓など)の線維症におけるTGFβの異常な活性は公知であり、線維性疾患におけるTβR阻害剤の使用についての理論的根拠となっている。皮膚および内部器官の線維症をもたらす結合組織の複雑な障害である全身性硬化症(強皮症)は、TGFβ/受容体RI依存性であることが示された。末梢動脈平滑筋細胞の異常な増殖は活性化TGFβ受容体によって促進されるため、肺動脈高血圧症(PAH)は、ALK5阻害剤で潜在的に治療可能な状態である。ラットにおける処理は、SB525334で成功した。ラットにおける利益はまた、IN−1233で示された。腎線維症は、糖尿病をもたらし得る。
【0057】
TβRキナーゼ阻害剤誘導体の有益な副作用、およびTGFβシグナル伝達とC型肝炎ウイルス(HCV)複製との関連は公知である。TGFβシグナル伝達は、転移性乳がんにおける明らかになりつつある幹細胞標的として議論されている。TGFβ1、2、3およびそれらの受容体は、ニューロン、アストロサイトおよびミクログリアにおいて発現する。TGFβシグナル伝達モジュレーターによる病理学的結果の改善を予想することができる。心血管疾患(アテローム性動脈硬化症、心筋虚血および心臓リモデリングなど)におけるTGFβスーパーファミリーは、心血管研究の課題の焦点である。
【0058】
本発明による化合物およびその塩は、耐容性良好である一方、非常に貴重な薬理学的特性を有することが見出されてきた。特に、本発明による化合物およびその塩は、TGF−β受容体Iキナーゼ阻害特性を示す。
【0059】
本発明による化合物は好ましくは、酵素アッセイ、例えば、本明細書に記載のアッセイにおいて容易に示される有利な生物活性を示す。このような酵素アッセイにおいて、本発明による化合物は好ましくは、適切な範囲、好ましくはマイクロモル範囲、さらに好ましくはナノモル範囲のIC50値によって通常実証される阻害作用を示し、かつもたらす。
【0060】
本明細書で説明するように、これらのシグナル伝達経路は、様々な疾患に関連する。
【0061】
したがって、本発明による化合物は、前記シグナル伝達経路の1つまたは複数との相互作用による前記シグナル伝達経路に依存する疾患の予防および/または治療に有用である。したがって、本発明は、本明細書に記載されているシグナル伝達経路の促進剤または阻害剤としての、好ましくは阻害剤としての本発明による化合物に関する。したがって、本発明は好ましくは、TGF−βシグナル伝達経路の促進剤または阻害剤としての、好ましくは阻害剤としての、本発明による化合物に関する。
【0062】
本発明はさらに、疾患、好ましくはTGF−β活性の増加によってもたらされ、媒介され、かつ/または波及される本明細書に記載されている疾患の治療および/または予防における、1種または複数の本発明による化合物の使用に関する。したがって、本発明は、前記疾患の治療および/または予防における医薬品および/または医薬品活性成分としての本発明による化合物、ならびに前記疾患の治療および/または予防のための薬剤の調製のための、本発明による化合物の使用、ならびにこのような投与を必要としている患者に1種または複数の本発明による化合物を投与することを含む、前記疾患を治療する方法に関する。
【0063】
宿主または患者は、任意の哺乳動物種、例えば、霊長類種、特に、ヒト;げっ歯類(マウス、ラットおよびハムスターを含めた);ウサギ;ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属していてもよい。動物モデルは、ヒト疾患の治療のためのモデルを提供し、実験的研究のために重要である。
【0064】
本発明による化合物による処理に対する特定の細胞の感受性は、インビトロの試験によって決定することができる。典型的には、細胞の培養物を、活性剤が細胞死を誘発し、または移動の阻害を可能とするのに十分な期間、通常、約1時間から1週間、様々な濃度で本発明による化合物と合わせる。インビトロの試験は、生検試料からの培養細胞を使用して行うことができる。次いで、処理の後に残った生存細胞を計数する。
【0065】
用量は、使用する特定の化合物、特定の疾患、患者の状態などによって変化する。治療用量は典型的には、患者の生存能を維持する一方、標的組織における望ましくない細胞集団を減少させるのに相当に十分である。細胞負荷の相当な減少、例えば、少なくとも約50%の減少が起こるまで治療を一般に継続し、本質的にそれ以上の望ましくない細胞が体内において検出されなくなるまで治療を継続し得る。
【0066】
シグナル伝達経路の同定のために、および様々なシグナル伝達経路の間の相互作用を検出するために、様々な科学者は、適切なモデルまたはモデル系、例えば、細胞培養モデル(例えば、Khwajaら、EMBO、1997、16、2783〜93)およびトランスジェニック動物のモデル(例えば、Whiteら、Oncogene、2001、20、7064〜7072)を開発してきた。シグナル伝達カスケードの特定の段階の決定のために、シグナルをモジュレートするために相互作用化合物を用いることができる(例えば、Stephensら、Biochemical J.、2000、351、95〜105)。本発明による化合物はまた、動物および/もしくは細胞培養モデルにおいて、または本出願に記載されている臨床疾患において、キナーゼ依存性シグナル伝達経路を試験するために、試薬として使用することができる。
【0067】
キナーゼ活性の測定は、当業者には周知の技術である。基質、例えば、ヒストン(例えば、Alessiら、FEBS Lett.1996、399、3、333〜338頁)または塩基性ミエリンタンパクを使用したキナーゼ活性の決定のための一般試験系が、文献に記載されている(例えば、Campos−Gonzalez, R.およびGlenney, Jr.、J.R.1992、J. Biol. Chem. 267、14535頁)。
【0068】
キナーゼ阻害剤の同定のために、様々なアッセイ系が利用可能である。シンチレーション近接アッセイ(Sorgら、J. of. Biomolecular Screening、2002、7、11〜19)およびフラッシュプレートアッセイにおいて、基質としてタンパク質またはペプチドの、γΑΤΡによる放射性リン酸化を測定する。阻害性化合物の存在下で、減少した放射性シグナルが検出でき、または全く検出できない。さらに、均一時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(HTR−FRET)および蛍光偏光(FP)技術は、アッセイ法として適切である(Sillsら、J. of Biomolecular Screening、2002、191〜214)。他の非放射性ELISAアッセイ法は、特異的リン酸化抗体(ホスホ−AB)を使用する。ホスホ−ABは、リン酸化基質のみを結合する。この結合は、第2のペルオキシダーゼ共役抗ヒツジ抗体を使用して、化学発光によって検出することができる。
【0069】
いくつかの従前の参考文献は、キノリン誘導体の合成に関する。WO06/058201A2は、2−アリール−4−アリール−アミノキノリン(ならびにキナゾリンおよびイソキノリン)を記載しているが、4−ピリジル−アミノ(4)置換の合成および使用については教示していない。WO04/081009A1は、全てが4位において二環式アザインドリンまたはテトラヒドロナフチリジン系で置換されているいくつかのキナゾリンおよび3−Fキノリンについて記載しているが、修飾されていない3位を有するキノリン系の合成および使用については教示していない。WO03/018561A1は、カルシウムチャネル遮断薬のためのキノリンの使用を記載している。WO05/030129A2は、カリウムチャネル阻害剤を対象とする。WO00/076982A1の4−アミノキノリンは、免疫調節において適用される。後者の3つの引用のどれもが、TβR阻害のために最適化されたキノリンのファルマコフォア装飾(pharmacophoric decoration)について記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0070】
本発明は、式(I)の化合物、および/またはその生理学的に許容される塩に関し、
【0071】
【化1】

【0072】
式中、
Xは、N、−N(CO)−、S、O、Alkまたは−N(Alk)−を表し、
Zは、CHまたはNを表し、
Hetは、
【0073】
【化2】

【0074】
を表し、
W1は、NまたはCR7を表し、
W2は、NまたはCR6を表し、
W3は、NまたはCR5を表し、
W5は、NまたはCR9を表し、
W6は、NまたはCR8を表し、
R1は、H、A、Het、Het、Het、Ar、−COA、−CO−Het、Alk−COOYまたはCycを表し、
R5は、H、A、Hal、OY、CN、−Alk−OY、COOY、−CO−NYY、SA、SOA、NYY、−OAlk−OYY、NO、−NH−Alk−COOY、−NH−CO−Alk−OY、−NH−CO−Alk−OCOY、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−CO−NYY、−NH−CO−Het、−NH−SO−NYY、−NH−SO−(NYY)、−NH−SOH、−NH−SO−Alk−Y、−NH−Het、−NH−R2、−CO−NH−Alk−NYY、−CO−R2、−CO−NY−R2、−OCO−R2、−SO−R2、−SO−NY−R2またはHetを表し、
R1、R5は一緒になって、−CH=CH−、−C(Y)=N−、−C(Alk−NYY)=N−、−C(Alk−OY)=N−、−C(Het)=N−、−CO−N(COOY)−、−C(CO−R2)=N−、−CH(CO−Het)−、−(CO)−N(Y)−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−COA−、−SO−NH−、−NH−SO−または−NH−SO−N(SO)−を表し、
R6は、H、A、Hal、OY、CN、−Alk−OY、COOY、−CO−NYY、NYY、−NH−Alk−NYY、−NH−COA、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−CO−Alk−NH−COOA、−NH−SO−NYY、−NH−HetまたはHetを表し、
R5、R6は一緒になって、=CH−C(Y)=C(Y)−CH=、−CH=CH−NH−または−N=CH−CH=CH−を表し、
R7、R8、R9は、互いに独立に、H、A、Hal、OY、NYY、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−HetまたはHetを表し、
R2は、Cyc、5〜8個のC原子を有する単環式カルボアリール、または2〜7個のC原子ならびに1〜4個のN、Oおよび/もしくはS原子を有する単環式ヘテロアリールを表し、これらの各々は、A、Hal、CN、NYY、OY、=O、Cyc、Alk−Arの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよく、
R3、R4は、互いに独立に、H、A、Hal、CN、NYY、OY、−OAlk−NYY、−OAlk−OY、Hetを表し、または一緒になって、−OAlk−O−を表し、
Yは、H、A、HalまたはOAを表し、
Aは、1〜10個のC原子を有する枝分かれしていないまたは分岐状のアルキルを表し、1〜7個のH原子は、Halで置き換えられていてもよく、
Cycは、3〜7個のC原子を有するシクロアルキルを表し、1〜4個のH原子は、互いに独立に、A、Halおよび/またはOYで置き換えられていてもよく、
Alkは、1〜6個のC原子を有するアルキレンを表し、1〜4個のH原子は、互いに独立に、Halおよび/またはCNで置き換えられていてもよく、
Arは、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、−Alk−Het、−OAlk−Het、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、6〜10個のC原子を有する飽和、不飽和または芳香族の単環式または二環式の炭素環を表し、
Hetは、−NH−Het、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、2〜7個のC原子および1〜4個のN原子を有する単環式ヘテロアリールを表し、
Hetは、R2、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、2〜9個のC原子および1〜4個のN原子を有する二環式ヘテロアリールを表し、
Hetは、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、2〜7個のC原子ならびに1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する飽和単環式複素環を表し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを表す。
【0075】
明確にするために、R1;R5;R6;R1とR5とが一緒になったもの;R5とR6とが一緒になったものは、示された意味を有し、ただし、(i)R1;R5およびR6が示された意味を有する場合、R1とR5とが一緒になったもの、およびR5とR6とが一緒になったものは、存在せず、(ii)R1とR5とが一緒になったもの、およびR6が示された意味を有する場合、R1;R5およびR5とR6とが一緒になったものは、存在せず、(iii)R1およびR5とR6とが一緒になったものが示された意味を有する場合、R1とR5とが一緒になったもの;R5およびR6は、存在しない。
【0076】
本発明の意味において、化合物には、その薬学的に使用可能な誘導体、溶媒和物、プロドラッグ、互変異性体、エナンチオマー、ラセミ化合物および立体異性体(全ての割合のこれらの混合物を含めた)が含まれると定義される。
【0077】
「薬学的に使用可能な誘導体」という用語は、例えば、本発明による化合物の塩、およびまたいわゆるプロドラッグ化合物の意味に解釈される。化合物の「溶媒和物」という用語は、それらの相互の引力によって形成される、化合物への不活性な溶媒分子の内転(adductions)の意味に解釈される。溶媒和物は、例えば、一水和物もしくは二水和物またはアルコキシドである。「プロドラッグ」という用語は、例えば、アルキルまたはアシル基、糖またはオリゴペプチドによって修飾されており、かつ生物において急速に切断され、本発明による有効な化合物を形成する本発明による化合物の意味に解釈される。これらにはまた、例えば、Int. J. Pharm. 115、61〜67(1995)に記載されているような、本発明による化合物の生分解性ポリマー誘導体が含まれる。本発明の化合物が、任意の所望のプロドラッグの形態(例えば、エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、アミドまたはホスフェートなど)であることは同様に可能であり、このような場合、実際に生物活性のある形態は、代謝によってのみ放出される。インビボで変換されて生理活性剤(すなわち、本発明の化合物)を提供することができる任意の化合物は、本発明の範囲および精神内のプロドラッグである。プロドラッグの様々な形態は当技術分野で周知であり、記載されている(例えば、Wermuth CGら、第31章:671〜696、The Practice of Medicinal Chemistry、Academic Press 1996;Bundgaard H、Design of Prodrugs、Elsevier 1985;Bundgaard H、第5章:131〜191、A Textbook of Drug Design and Development、Harwood Academic Publishers 1991)。前記参考文献は、参照により本明細書中に組み込まれている。化学物質は、体内で、適切な場合には所望の生物学的作用(ある場合にはより顕著な形態で)を同様に誘発し得る代謝物に変換されることがさらに公知である。本発明の化合物のいずれかから、代謝によってインビボで変換された任意の生理活性化合物は、本発明の範囲および精神内の代謝物である。
【0078】
本発明の化合物は、「純粋な」EもしくはZ異性体としてそれらの二重結合異性体の形態で、またはこれらの二重結合異性体の混合物の形態で存在し得る。可能であれば、本発明の化合物は、ケトエノール互変異性体などの互変異性体の形態でよい。本発明の化合物の全ての立体異性体は、混合物でまたは純粋もしくは実質的に純粋な形態で意図される。本発明の化合物は、炭素原子のいずれかにおいて不斉中心を有することができる。結果的に、本発明の化合物は、それらのラセミ化合物の形態で、純粋なエナンチオマーおよび/もしくはジアステレオマーの形態で、またはこれらのエナンチオマーおよび/もしくはジアステレオマーの混合物の形態で存在できる。混合物は、任意の所望の混合比の立体異性体を有し得る。したがって、例えば、1つまたは複数のキラリティーの中心を有し、かつラセミ化合物またはジアステレオマー混合物として生じる本発明の化合物は、それ自体公知の方法によって、それらの光学的に純粋な異性体、すなわち、エナンチオマーまたはジアステレオマーに分割することができる。本発明の化合物の分離は、キラルもしくは非キラル相上のカラム分離によって、あるいは任意選択で光学活性な溶媒から、または光学活性な酸もしくは塩基の使用による再結晶によって、あるいは光学活性な試薬(例えば、光学活性なアルコールなど)による誘導体化、それに続くラジカルの除去によって行うことができる。
【0079】
本発明はまた、本発明による化合物の混合物、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000の比の、例えば2種のジアステレオマーの混合物の使用に関する。これらは特に好ましくは、立体異性化合物の混合物である。
【0080】
本明細書において使用する場合、化合物、特に本発明による化合物を定義するための命名法は一般に、化合物、特に有機化合物についてのIUPAC組織のルールに基づいている。上記の本発明の化合物の説明のために示される用語は、明細書または特許請求の範囲において他に示さない限り、必ず下記の意味を有する。
【0081】
「非置換」という用語は、相当するラジカル、基または部分が置換基を有さないことを意味する。「置換」という用語は、相当するラジカル、基または部分が1個または複数の置換基を有することを意味する。基が複数の置換基を有し、様々な置換基の選択が特定される場合、置換基は互いに独立に選択され、同一である必要はない。基が複数の特に指定した置換基(例えば、YY)を有しても、このような置換基の表現は、互いに異なり得る(例えば、メチルおよびエチル)。したがって、本発明の任意の基の複数の置換は、同一または異なる基を伴い得ることを理解すべきである。したがって、個々の基が化合物において何回も出現する場合、基は、互いに独立に、示された意味を採用する。
【0082】
「アルキル」または「A」という用語は、分岐鎖または直鎖でよく、好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を有する非環式の飽和または不飽和の炭化水素基を意味する(すなわち、C〜C10−アルカニル)。適切なアルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−または1,2,2−トリメチルプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1−、2−または3−メチルブチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−または3,3−ジメチルブチル、1−または2−エチルブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、ネオ−ペンチル、tert−ペンチル、1−、2−、3−または−メチル−ペンチル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、イソヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−イコサニル、n−ドコサニルである。
【0083】
本発明の好ましい実施形態において、「A」は、1〜10個のC原子を有する枝分かれしていないまたは分岐状のアルキルを表し、1〜7個のH原子は、Halで置き換えられていてもよい。より好ましい「A」は、1〜4個のC原子を有する枝分かれしていないまたは分岐状のアルキルを表し、1〜5個の原子は、Fおよび/またはClで置き換えられていてもよい。最も好ましいのは、C1〜4−アルキルである。C1〜4−アルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、1,1,1−トリフルオロエチルまたはブロモメチル、特に、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである。「A」はメチルを表すことが、本発明の非常に好ましい実施形態である。基R1〜R9、Y、Cyc、Ar、Het、HetおよびHetにおいて、「A」の各々の明示的意味は、互いに独立であることを理解すべきである。
【0084】
「シクロアルキル」または「Cyc」という用語は、本発明の目的のために、3〜20個、好ましくは3〜12個、さらに好ましくは3〜9個の炭素原子を含有する1〜3個の環を有する、飽和および部分不飽和の非芳香族環状炭化水素基/ラジカルを意味する。シクロアルキル基はまた、二環系または多環系の一部であってもよく、例えば、シクロアルキル基は、任意の可能なおよび所望の環員(複数可)によって、本明細書に定義されているようなアリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル基に縮合している。一般式(I)の化合物への結合は、シクロアルキル基の任意の可能性のある環員を介して達成することができる。適切なシクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロヘキセニル、シクロペンテニルおよびシクロオクタジエニルである。
【0085】
本発明の好ましい実施形態において、「Cyc」は、3〜7個のC原子を有するシクロアルキルを表し、1〜4個のH原子は、互いに独立に、A、Halおよび/またはOYで置換されていてもよい。より好ましいのは、C〜C−シクロアルキルであり、1個のH原子は、A、Hal、OHまたはOAで置換されていてもよい。非常に好ましいC〜C−シクロアルキル基は、非置換であり、すなわち、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチル、好ましくはシクロヘキシルである。基R1およびR2において、「Cyc」の各々の明示的意味は、互いに独立であることを理解すべきである。
【0086】
「Alk」という用語は、1個、2個、3個、4個、5個または6個のC原子を有する枝分かれしていないまたは分岐状のアルキレン、アルケニルまたはアルキニル、すなわち、C〜C−アルキレン、C〜C−アルケニルおよびC〜C−アルキニルを意味する。アルケニルは、少なくとも1つのC−C二重結合を有し、アルキニルは、少なくとも1つのC−C三重結合を有する。アルキニルはさらにまた、少なくとも1つのC−C二重結合を有し得る。適切なアルキレン基の例は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、イソプロピレン、イソブチレン、sec−ブチレン、1−、2−または3−メチルブチレン、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピレン、1−エチルプロピレン、1−、2−、3−または4−メチルペンチレン、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−または3,3−ジメチル−ブチレン、1−または2−エチルブチレン、1−エチル−1−メチルプロピレン、1−エチル−2−メチルプロピレン、1,1,2−または1,2,2−トリメチルプロピレンである。適切なアルケニルの例は、アリル、ビニル、プロペニル(−CHCH=CH、−CH=CH−CH、−C(=CH)−CH)、1−、2−または3−ブテニル、イソブテニル、2−メチル−1−または2−ブテニル、3−メチル−1−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−メチル−1,3−ブタジエニル、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル、1−、2−、3−または4−ペンテニルおよびヘキセニルである。適切なアルキニルの例は、エチニル、プロピニル(−CH−C≡CH;−C≡C−CH)、1−、2−または3−ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルおよび/あるいはペンタ−3−エン−1−イン−イル、特に、プロピニルである。
【0087】
本発明の好ましい実施形態において、「Alk」は、1〜6個のC原子を有する枝分かれしていないまたは分岐状のアルキレンを表し、1〜4個のH原子は、互いに独立に、Halおよび/またはCNで置き換えられていてもよい。より好ましい「Alk」は、1〜6個のC原子を有する枝分かれしていないアルキレン、すなわち、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンまたはヘキシレンを表し、1〜2個のH原子は、Fおよび/またはClで置換されていてもよい。最も好ましいのは、C1〜3−アルキレンであり、その特定の例は、メチレン、エチレンおよびプロピレンである。「Alk」がメチレンまたはエチレンを表すことが、本発明の非常に好ましい実施形態である。基X、R1〜R9、Ar、Het、HetおよびHetにおいて、「Alk」の各々の明示的意味は、互いに独立であることを理解すべきである。
【0088】
「アリール」または「カルボアリール」という用語は、本発明の目的のために、任意選択で置換されていてもよい、3〜14個、好ましくは4〜10個、さらに好ましくは5〜8個の炭素原子を有する単環式または多環式の芳香族炭化水素系を意味する。「アリール」という用語にはまた、芳香族環が二環式または多環式の飽和、部分不飽和および/または芳香族系の一部である系が含まれる(芳香族環は、アリール基の任意の所望および可能な環員を介して、本明細書に定義されているような「アリール」、「シクロアルキル」、「ヘテロアリール」または「ヘテロシクリル」基に縮合しているものなど)。一般式(I)の化合物への結合は、アリール基の任意の可能性のある環員を介して達成することができる。適切な「アリール」基の例は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、1−ナフチル、2−ナフチルおよびアントラセニル、同様にインダニル、インデニルまたは1,2,3,4−テトラヒドロナフチルである。
【0089】
本発明の好ましい「カルボアリール」は、R2基に関して定義する場合、任意選択で置換されているフェニル、ナフチルおよびビフェニル、さらに好ましくは5〜8個のC原子を有する任意選択で置換されている単環式(monocylic)カルボアリール、最も好ましくは任意選択で置換されているフェニル、非常に好ましくは任意選択で置換されているフェニルである。本発明の好ましいカルボアリールは、A、Hal、CN、NYY、OY、=O、Cyc、Alk−Arの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい。
【0090】
「ヘテロアリール」という用語は、本発明の目的のために、少なくとも1個、適切な場合にはまた2個、3個、4個または5個のヘテロ原子、好ましくは窒素、酸素および/または硫黄(ヘテロ原子は、同一または異なる)を含む、2〜15員、好ましくは2〜9員、最も好ましくは5員、6員または7員の単環式または多環式芳香族炭化水素基を意味する。窒素原子の数は好ましくは、0個、1個、2個、3個または4個であり、酸素および硫黄原子の数は、独立に、0個または1個である。「ヘテロアリール」という用語にはまた、芳香族環が二環式または多環式の飽和、部分不飽和および/または芳香族系の一部である系が含まれる(芳香族環は、ヘテロアリール基の任意の所望および可能な環員を介して、本明細書に定義されているような「アリール」、「シクロアルキル」、「ヘテロアリール」または「ヘテロシクリル」基に縮合しているものなど)。一般式(I)の化合物への結合は、ヘテロアリール基の任意の可能性のある環員を介して達成することができる。適切な「ヘテロアリール」の例は、ピロリル、チエニル、フリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、フタラジニル、インダゾリル、インドリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、プテリジニル、カルバゾリル、フェナジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニルおよびアクリジニルである。
【0091】
R2基の領域において、「ヘテロアリール」は、A、Hal、CN、NYY、OY、=O、Cyc、Alk−Arの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、2〜7個のC原子ならびに1〜4個のN、Oおよび/もしくはS原子を有する単環式ヘテロアリールを表すことが好ましい。R2基の領域において、「カルボアリール」は、A、Hal、CN、NYY、OY、=O、Cyc、Alk−Arの群から選択される少なくとも1個の置換基で一置換されていてもよい、5〜8個のC原子を有する単環式カルボアリールを表すことがまた好ましい。R2は、非置換であるか、またはA、Hal、CN、NYY、OY、=O、Cyc、Alk−Arの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、Cycを表すことがさらに好ましい。したがって、上記のヘテロアリール、カルボアリールおよびCycは、基R2について好ましいマーカッシュ群を表すべきである。
【0092】
本発明のより好ましい実施形態において、R2基は、フェニル、または1〜3個のN原子を有する単環式5〜6員ヘテロアリールを表し、これらの各々は、Hal、A、NAA、CN、OAの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい。本明細書において、ヘテロアリールであるチオフェニル、フラニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニルまたはピラゾリルが特に好ましく、これらの各々は、上記で定義されるように置換されていてもよい。他の置換に従って、R2は、最も好ましくはフェニルまたはピリジン−2−、3−、4−または5−イルを表し、これらの各々は、F、Cl、Br、CH、CF、CN、OCHの群から選択される少なくとも1個の置換基で一置換または二置換されていてもよい。R2は、フェニル、ピリジン−2−イル、2−フルオロ−フェニル、2−フルオロ−5−フルオロ−フェニル、2−フルオロ−5−クロロ−フェニル、2−フルオロ−5−ブロモ−フェニル、2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル、2−クロロ−フェニル、2−クロロ−5−クロロ−フェニル、3−クロロ−フェニル、3−トリフルオロメチル−フェニルまたは6−メチル−ピリジン−2−イルであることが非常に好ましい。
【0093】
基R2自体、Het、R5およびR1とR5とが一緒になったものにおいて、「R2」の各々の明示的意味は、互いに独立であることを理解すべきである。
【0094】
「Het」の領域において、「ヘテロアリール」は、−NH−Het、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、2〜7個のC原子および1〜4個のN原子を有する単環式ヘテロアリールを表すことが好ましい。本発明のより好ましい実施形態において、Hetは、−NH−Het、Aおよび/またはHalで置換されていてもよい、2〜7個のC原子および1〜4個のN原子を有する単環式ヘテロアリールを表す。本発明の最も好ましい実施形態において、Hetは、Hetで一置換されているピリジン−4−アミンを表す。Het基の非常に好ましい実施形態は、([2−フルオロ−5−クロロ−フェニル]−キノリン−4−イル)−ピリジン−2−イル−4−アミンである。基R1およびArにおいて、「Het」の各々の明示的意味は、互いに独立であることを理解すべきである。
【0095】
「Het」の領域において、「ヘテロアリール」は、R2、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、2〜9個のC原子および1〜4個のN原子を有する二環式ヘテロアリールを表すことが好ましい。本発明のより好ましい実施形態において、Hetは、R2、Aおよび/またはHalで置換されていてもよい、2〜9個のC原子および1〜4個のN原子を有する二環式ヘテロアリールを表す。本発明の最も好ましい実施形態において、Hetは、R2で一置換されているキノリンを表す。Het基の非常に好ましい実施形態は、(2−フルオロ−5−クロロ−フェニル)−キノリン−4−イルである。基R1、R5〜R9、HetおよびR1とR5とが一緒になったものにおいて、「Het」の各々の明示的意味は、互いに独立であることを理解すべきである。
【0096】
「複素環」または「ヘテロシクリル」という用語は、本発明の目的のために、炭素原子、ならびに1個、2個、3個、4個または5個の同一または異なるヘテロ原子、特に、窒素、酸素および/または硫黄を含む、3〜20個の環原子、好ましくは3〜14個の環原子、さらに好ましくは3〜10個の環原子の単環式または多環式系を意味する。環系は、飽和または単不飽和もしくは多不飽和でよい。少なくとも2つの環からなる環系の場合、環は、縮合またはスピロまたはその他の方法で結合していてもよい。このような「ヘテロシクリル」基は、任意の環員を介して結合することができる。「ヘテロシクリル」という用語にはまた、複素環が二環式または多環式の飽和、部分不飽和および/または芳香族系の一部である系が含まれる(複素環は、ヘテロシクリル基の任意の所望および可能な環員を介して、本明細書に定義されているような「アリール」、「シクロアルキル」、「ヘテロアリール」または「ヘテロシクリル」基に縮合しているものなど)。一般式(I)の化合物への結合は、ヘテロシクリル基の任意の可能性のある環員を介して達成することができる。適切な「ヘテロシクリル」基の例は、ピロリジニル、チアピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサピペラジニル、オキサピペリジニル、オキサジアゾリル、テトラヒドロフリル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロピラニルである。
【0097】
本発明の一態様において、「Het」は、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、2〜7個のC原子ならびに1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する飽和単環式複素環を表す。本発明の好ましい実施形態において、Hetは、A、Hal、COOYおよび/またはNYYで置換されていてもよい、2〜7個のC原子ならびに1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する飽和単環式複素環を表す。本発明のより好ましい実施形態において、Hetは、A、Hal、COOYまたはNYYで一置換されていてもよい、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、ピペリドン、モルホリノンまたはピロリドンを表す。本明細書において、「A」は、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピルまたはトリフルオロメチルであり、Halは、特に、F、ClまたはBrである。基R1、R3〜R9、HetおよびR1とR5とが一緒になったものにおいて、「Het」の各々の明示的意味は、互いに独立であることを理解すべきである。
【0098】
本発明の別の実施形態において、これらに限定されないがカルボアリールを含めた「炭素環」は、A、Hal、COOY、OY、−Alk−OY、−Alk−SO、−Alk−Het1/2/3、−OAlk−Het1/2/3、NYY、−CO−NYY、−SO−NYY、CN、−Alk−NYYの群から選択される少なくとも1個の置換基で一置換、二置換または三置換されていてもよい、3〜10個のC原子を有する飽和、不飽和または芳香族の単環式または二環式の炭素環を表す「Ar」として定義される。適切な「Ar」基の例は、フェニル、o−、m−またはp−トリル、o−、m−またはp−エチルフェニル、o−、m−またはp−プロピルフェニル、o−、m−またはp−イソプロピルフェニル、o−、m−またはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−またはp−メトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシフェニル、o−、m−またはp−フルオロフェニル、o−、m−またはp−ブロモフェニル、o−、m−またはp−クロロフェニル、o−、m−またはp−スルホンアミドフェニル、o−、m−またはp−(N−メチル−スルホンアミド)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチル−スルホンアミド)フェニル、o−、m−またはp−(N−エチル−N−メチル−スルホンアミド)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジエチル−スルホンアミド)フェニル、特に、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジブロモフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−または3,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル、p−ヨードフェニル、4−フルオロ−3−クロロフェニル、2−フルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、3−ブロモ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−6−メトキシフェニルまたは2,5−ジメチル−4−クロロフェニルである。
【0099】
本発明の別の好ましい実施形態において、「Ar」基は、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、−Alk−Het、−OAlk−Het、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、6〜10個のC原子を有する飽和、不飽和または芳香族の単環式または二環式の炭素環を表す。基R1およびR2において、「Ar」の各々の明示的意味は、互いに独立であることを理解すべきである。
【0100】
本発明の目的のために、「アルキルシクロアルキル」、「シクロアルキルアルキル」、「アルキルヘテロシクリル」、「ヘテロシクリルアルキル」、「アルキルアリール」、「アリールアルキル」、「アルキルヘテロアリール」および「ヘテロアリールアルキル」という用語は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル(heterocycl)、アリールおよびヘテロアリールが、各々上記で定義される通りであり、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール基が、アルキル基、好ましくはC〜C−アルキル基、さらに好ましくはC〜C−アルキル基を介して、一般式(I)の化合物に結合していることを意味する。
【0101】
「アルキルオキシ」または「アルコキシ」という用語は、本発明の目的のために、酸素原子に結合している上記の定義によるアルキル基を意味する。一般式(I)の化合物への結合は、酸素原子を介する。例は、メトキシ、エトキシおよびn−プロピルオキシ、プロポキシおよびイソプロポキシである。好ましいのは、示した数の炭素原子を有する「C〜C−アルキルオキシ」である。
【0102】
「シクロアルキルオキシ」または「シクロアルコキシ」という用語は、本発明の目的のために、酸素原子に結合している上記の定義によるシクロアルキル基を意味する。一般式(I)の化合物への結合は、酸素原子を介する。例は、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシおよびシクロヘプチルオキシである。好ましいのは、示した数の炭素原子を有する「C〜C−シクロアルキルオキシ」である。
【0103】
「ヘテロシクリルオキシ」という用語は、本発明の目的のために、酸素原子に結合している上記の定義によるヘテロシクリル基を意味する。一般式(I)の化合物への結合は、酸素原子を介する。例は、ピロリジニルオキシ、チアピロリジニルオキシ、ピペリジニルオキシおよびピペラジニルオキシである。
【0104】
「アリールオキシ」という用語は、本発明の目的のために、酸素原子に結合している上記の定義によるアリール基を意味する。一般式(I)の化合物への結合は、酸素原子を介する。例は、フェニルオキシ、2−ナフチルオキシ、1−ナフチルオキシ、ビフェニルオキシおよびインダニルオキシである。好ましいのは、フェニルオキシである。
【0105】
「ヘテロアリールオキシ」という用語は、本発明の目的のために、酸素原子に結合している上記の定義によるヘテロアリール基を意味する。一般式(I)の化合物への結合は、酸素原子を介する。例は、ピロリルオキシ、チエニルオキシ、フリルオキシ、イミダゾリルオキシおよびチアゾリルオキシである。
【0106】
「アシル」という用語は、本発明の目的のために、酸からヒドロキシル基を切断することによって形成される基を意味する。一般式(I)の化合物への結合は、カルボニルC原子を介する。好ましい例は、−CO−A、−SO−Aおよび−PO(OA)、さらに好ましくは−SO−Aである。
【0107】
「ハロゲン」、「ハロゲン原子」、「ハロゲン置換基」または「Hal」という用語は、本発明の目的のために、1個、または適切な場合には複数のフッ素(F、フルオロ)、臭素(Br、ブロモ)、塩素(Cl、クロロ)、またはヨウ素(I、ヨード)原子を意味する。「ジハロゲン」、「トリハロゲン」および「ペルハロゲン」という名称は、2個、3個および4個の置換基を各々意味し、各置換基は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から独立に選択することができる。「ハロゲン」とは好ましくは、フッ素、塩素または臭素原子を意味する。ハロゲンがアルキル(ハロアルキル)またはアルコキシ基上で置換されている(例えば、CFおよびCFO)とき、フッ素および塩素がより好ましい。
【0108】
「ヒドロキシル」という用語は、−OH基を意味する。
【0109】
本発明によるX基の好ましい一実施形態は、Nである。
【0110】
本発明によるZ基の好ましい一実施形態は、CHである。
【0111】
本発明によるHet基の好ましい一実施形態は、
【0112】
【化3】

【0113】
(式中、W1、W2、W3、W5またはW6の少なくとも1つは、Nを表す)である。W1、W2、W3、W5、W6が、互いに独立に、Nを表す場合、R7、R6、R5、R9、R8は、互いに独立に、存在しないことはもちろんのことである。本発明のより好ましい実施形態において、Hetは、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、ピリダジニルまたはピラジルを表し、これらの各々は、R7、R6、R5、R9および/またはR8で置換されていてもよい。明確にするために、およびW1、W2、W3、W5、W6は、互いに独立に、Nを表さないという条件下で、R7は、W1のC原子に結合しており(すなわち、1位における置換基)、R6は、W2のC原子に結合しており(すなわち、2位における置換基)、R5は、W3のC原子に結合しており(すなわち、3位における置換基)、R9は、W5のC原子に結合しており(すなわち、5位における置換基)、R8は、W6のC原子に結合している(すなわち、6位における置換基)。W1、W2、W3、W5およびW6の明示的意味は、本発明の意味において、当業者によって各N−ヘテロアリールに容易に割り当てられてもよい。本発明の特定の実施形態において、例えば、W1は、Nであり、W2は、CR6であり、W3は、CR5であり、W5は、CR9であり、W6は、CR8であり、これは1位においてN原子を有するピリジン−4−イルに相当する、これは、2位においてR6で、3位においてR5で、5位においてR9で、および/または6位においてR8で任意選択で置換されていてもよい。より特定すると、1−ピリジン−4−イルは、2位においてR6で、および/または3位においてR5で一置換または二置換されていてもよい。
【0114】
本発明の別の特定の実施形態において、W1は、Nであり、W2は、CR6であり、W3は、Nであり、W5は、CR9であり、W6は、CR8であり、これは、2位においてR6で、5位においてR9で、および/または6位においてR8で任意選択で置換されていてもよい1,3−ピリミジン−4−イルに相当する。より特定すると、1,3−ピリミジン−4−イルは、2位においてR6で、または6位においてR8で一置換されていてもよい。最も特に、1,3−ピリミジン−4−イルは、6位においてR8で一置換されていてもよい。これは、2位においてR6で一置換されていてもよい1,5−ピリミジン−4−イルと同等であると考えられる。
【0115】
本発明のまた別の特定の実施形態において、W1は、Nであり、W2は、CR6であり、W3は、Nであり、W5は、CR9であり、W6は、Nであり、これは、2位においてR6で、および/または6位においてR8で任意選択で一置換または二置換されていてもよい1,3,5−トリアジン−4−イルに相当する。より特定すると、1,3,5−トリアジン−4−イルは、2位においてR6で一置換されていてもよい。
【0116】
1−ピリジン−4−イル、1,3−ピリミジン−4−イル、1,3,5−トリアジン−4−イルは、2位においてR6で、3位においてR5で、および/または6位においてR8で一置換されていてもよいことがより好ましい。本発明の非常に好ましい実施形態において、1−ピリジン−4−イルは、2位においてR6で、および/または3位においてR5で一置換されていてもよい。
【0117】
本発明によるR1基の好ましい一実施形態は、HまたはAであり、さらに好ましくはHである。
【0118】
本発明によるR5基の好ましい一実施形態は、H、A、Hal、OY、CN、−Alk−OY、−CO−NYY、SA、SOA、NYY、−OAlk−OYY、NO、−NH−Alk−COOY、−NH−CO−Alk−OY、−NH−CO−Alk−OCOY、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−CO−NYY、−NH−CO−Het、−NH−SO−NYY、−NH−SO−(NYY)、−NH−SOH、−NH−SO−Alk−Y、−NH−Het、−NH−R2、−CO−NH−Alk−NYYまたはHetである。さらに好ましくは、R5は、H、A、OA、CN、−Alk−OY、−CO−NYY、SA、NYY、−NH−CO−Alk−OY、−NH−CO−Alk−OCOY、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−CO−NYY、−NH−CO−Het、−NH−SO−NYY、−CO−NH−Alk−NYYまたはHetを表す。最も好ましくは、R5は、H、A、OA、SA、NYY、−NH−CO−Alk−OY、−NH−CO−Alk−OCOY、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−CO−NYY、−NH−CO−Hetまたは−NH−SO−NYYを表す。非常に好ましくは、R5は、H、A、OA、NHまたは−NH−SO−NHを表す。
【0119】
R1およびR5は一緒になって、−CH=CH−、−C(Y)=N−、−C(Alk−NYY)=N−、−C(Alk−OY)=N−、−C(Het)=N−、−CO−N(COOY)−、−(CO)−N(Y)−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−COA−、−SO−NH−、−NH−SO−または−NH−SO−N(SO)−を表すことは本発明による好ましい一実施形態である。さらに好ましくは、R1およびR5は、一緒になって−CH=CH−、−C(Y)=N−、−C(Alk−OY)=N−、−CO−N(COOY)−、−CO−NH−または−SO−NH−を表す。最も好ましくは、R1およびR5は、一緒になって−CO−NH−を表す。
【0120】
本発明によるR6基の好ましい一実施形態は、H、A、Hal、OY、NYY、−NH−Alk−NYY、−NH−COA、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−HetまたはHetである。さらに好ましくは、R6は、H、A、OA、NYY、−NH−Alk−NYY、−NH−COAまたは−NH−CO−Alk−NYYを表す。最も好ましくは、R6は、H、A、OA、NYY、−NH−COAまたは−NH−CO−Alk−NYYを表す。非常に好ましくは、R6は、H、AまたはNHを表す。
【0121】
R5、R6は一緒になって、=CH−CH=C(Y)−CH=、=CH−C(Y)=CH−CH=または−CH=CH−NH−または−N=CH−CH=CH−を表すことは、本発明による好ましい一実施形態である。さらに好ましくは、R1およびR5は、一緒になって=CH−CH=C(Y)−CH=または−N=CH−CH=CH−を表す。
【0122】
本発明によるR3基の好ましい一実施形態は、Hである。
【0123】
本発明によるR4基の好ましい一実施形態は、Hである。
【0124】
本発明によるR7基の好ましい一実施形態は、Hである。
【0125】
本発明によるR8基の好ましい一実施形態は、Hである。
【0126】
本発明によるR9基の好ましい一実施形態は、Hである。
【0127】
本発明によるY基の好ましい一実施形態は、H、AまたはOAである。
【0128】
したがって、本発明の主題は、上記のような任意の好ましい実施形態を特に理解して、上記の基の少なくとも1つが任意の意味を有する式(I)の化合物に関する。式(I)の任意の実施形態の状況において明確に特定されていない基、そのサブ式、またはそれに対する他の基は、本発明の問題を解決するために本明細書において下記で開示しているような、式(I)による任意の各々の明示的意味を表すと解釈すべきである。これは、これらに限定されないが、見出される状況に関わらず、上記の基が、任意の好ましい実施形態を含めて、本明細書の上記または下記において各々記載されているような全ての示された意味を採用し得ることを意味する。特定の基の任意の実施形態は、1つまたは複数の他の基の任意の実施形態と合わせることができることを特に理解すべきである。
【0129】
本発明の別の実施形態において、式(I)のキノリン誘導体、および/またはその生理学的に許容される塩を提供し、
式中、
Xは、Nを表し、
Hetは、ピリジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ピリダジニルまたはピラジルを表し、これらの各々は、R5、R6、R7、R8および/またはR9で置換されていてもよく、
R1は、HまたはAを表し、
R5は、H、A、Hal、OY、CN、−Alk−OY、−CO−NYY、SA、SOA、NYY、−OAlk−OYY、NO、−NH−Alk−COOY、−NH−CO−Alk−OY、−NH−CO−Alk−OCOY、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−CO−NYY、−NH−CO−Het、−NH−SO−NYY、−NH−SO−(NYY)、−NH−SOH、−NH−SO−Alk−Y、−NH−Het、−NH−R2、−CO−NH−Alk−NYYまたはHetを表し、
R1、R5は一緒になって、−CH=CH−、−C(Y)=N−、−C(Alk−NYY)=N−、−C(Alk−OY)=N−、−C(Het)=N−、−CO−N(COOY)−、−(CO)−N(Y)−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−COA−、−SO−NH−、−NH−SO−または−NH−SO−N(SO)−を表し、
R6は、H、A、Hal、OY、NYY、−NH−Alk−NYY、−NH−COA、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−HetまたはHetを表し、
R5、R6は一緒になって、=CH−CH=C(Y)−CH=、=CH−C(Y)=CH−CH=、−CH=CH−NH−または−N=CH−CH=CH−を表し、
R2は、フェニルまたはピリジルを表し、
これらの各々は、Hal、A、NAA、CN、OAの群から選択される少なくとも1個の置換基で一置換または二置換されていてもよく、
Hetは、−NH−Het、Aおよび/またはHalで置換されていてもよい、2〜7個のC原子および1〜4個のN原子を有する単環式ヘテロアリールを表し、
Hetは、R2、Aおよび/またはHalで置換されていてもよい、2〜9個のC原子および1〜4個のN原子を有する二環式ヘテロアリールを表し、
Hetは、A、Hal、COOYおよび/またはNYYで置換されていてもよい、2〜7個のC原子ならびに1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する飽和単環式複素環を表し、
Z、R3、R4、R7、R8、R9、Y、A、Cyc、Alk、Halは、上記で示した意味を有する。
【0130】
本発明の好ましい実施形態において、サブ式(II)のキノリン誘導体、および/またはその生理学的に許容される塩を提供し、
【0131】
【化4】

【0132】
式中、
【0133】
【化5】

【0134】
は、R5で置換されていてもよいピリジル(W3がCR5である場合)、ピリミジニルまたはトリアジニルを表し、
R1は、Hを表し、
R5は、H、A、OA、CN、−Alk−OY、−CO−NYY、SA、NYY、−NH−CO−Alk−OY、−NH−CO−Alk−OCOY、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−CO−NYY、−NH−CO−Het、−NH−SO−NYY、−CO−NH−Alk−NYYまたはHetを表し、
R1、R5は一緒になって、−CH=CH−、−C(Y)=N−、−C(Alk−OY)=N−、−CO−N(COOY)−、−CO−NH−または−SO−NH−を表し、
R6は、H、A、OA、NYY、−NH−Alk−NYY、−NH−COAまたは−NH−CO−Alk−NYYを表し、
R5、R6は一緒になって、=CH−CH=C(Y)−CH=または−N=CH−CH=CH−を表し、
R7、R9は、互いに独立に、Hを表し(W1がCR7であり、またはW5がCR9である場合)、
R2は、フェニルまたはピリジルを表し、これらの各々は、F、Cl、Br、CH、CF、CN、OCHの群から選択される少なくとも1個の置換基で一置換または二置換されていてもよく、
Yは、H、AまたはOAを表し、
Aは、1〜4個のC原子を有する枝分かれしていないまたは分岐状のアルキルを表し、1〜5個のH原子は、Fおよび/またはClで置き換えられていてもよく、
Alkは、1〜3個のC原子を有するアルキレンを表し、
Hetは、A、Hal、COOYまたはNYYで一置換されていてもよい、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、ピペリドン、モルホリノンまたはピロリドンを表し、
Halは、F、ClまたはBrを表す。
【0135】
明確にするために、式(II)における下記のサブ構造は、
【0136】
【化6】

【0137】
W1、W3およびW5の任意の組合せを含み得るが、ただし、骨格は、ピリジル、ピリミジニルまたはトリアジニルであり、これらの各々は、上記で示されたように任意選択で置換されていてもよい。特に、前記サブ構造は、サブ式(II)による好ましい実施形態において下記の骨格を表す。
【0138】
【化7】

【0139】
本発明のより好ましい実施形態において、サブ式(III)のキノリン誘導体、および/またはその生理学的に許容される塩を提供し、
【0140】
【化8】

【0141】
式中、
R1は、Hを表し、
R5は、H、A、OA、NHまたは−NH−SO−NHを表し、
R1、R5は一緒になって、−CO−NH−を表し、
R6は、H、AまたはNHを表し、
R5、R6は一緒になって、=CH−CH=C(Y)−CH=または−N=CH−CH=CH−を表し、
R2は、フェニル、ピリジン−2−イル、2−フルオロ−フェニル、2−フルオロ−5−フルオロ−フェニル、2−フルオロ−5−クロロ−フェニル、2−フルオロ−5−ブロモ−フェニル、2−フルオロ−5−トリフルオロメチル−フェニル、2−クロロ−フェニル、2−クロロ−5−クロロ−フェニル、3−クロロ−フェニル、3−トリフルオロメチル−フェニル、6−メチル−ピリジン−2−イルを表し、
Yは、H、AまたはOAを表し、
Aは、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルを表す。
【0142】
最も好ましい実施形態は、表1に一覧表示されているようなこれらの式(I)、(II)および(III)の化合物である。
【0143】
【表1−1】

【0144】
【表1−2】

【0145】
【表1−3】

【0146】
【表1−4】

【0147】
【表1−5】

【0148】
【表1−6】

【0149】
【表1−7】

【0150】
【表1−8】

【0151】
【表1−9】

【0152】
【表1−10】

【0153】
【表1−11】

【0154】
【表1−12】

【0155】
【表1−13】

【0156】
【表1−14】

【0157】
【表1−15】

【0158】
【表1−16】

【0159】
【表1−17】

【0160】
【表1−18】

【0161】
【表1−19】

【0162】
LC−MS法A
質量スペクトル:MH+;Agilent計器類シリーズ1100;エレクトロスプレー正モード;スキャン85〜1000m/z;電圧可変によるフラグメンテーション;ガス温度300℃;溶媒Lichrosolv quality Merck KGaA
LCカラム:Chromolith Speed ROD RP18e、50×4.6mm
溶離液A:水中の0.1%トリフルオロ酢酸
溶離液B:アセトニトリル中の0.1%トリフルオロ酢酸
勾配:2.6分で5%〜100%の溶媒B
流速:2.4ml/分
UV検出:220nm
LC−MS法B
質量スペクトル:MH+;Agilent計器類シリーズ1100;エレクトロスプレー正モード;スキャン85〜1000m/z;電圧可変によるフラグメンテーション;ガス温度300℃;溶媒Lichrosolv quality Merck KGaA
LCカラム:Chromolith Speed ROD RP18e、50×4.6mm
溶離液A:水中の0.05%ギ酸
溶離液B:アセトニトリル中の0.04%ギ酸
勾配:2.8分で4%〜100%溶媒B、および100%Bで洗浄後0.5分
流速:2.4ml/分
UV検出:220nm
本発明の非常に好ましい実施形態において、表2における化合物の群から選択される式(I)、(II)、(III)のヘタリールアミノキノリン(hetarylaminoquinoline)化合物および上記の実施形態を提供する。
【0163】
【表2−1】

【0164】
【表2−2】

【0165】
【表2−3】

【0166】
【表2−4】

【0167】
【表2−5】

【0168】
本発明の別の態様において、化合物[2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キナゾリン−4−イル]−(ピリジン−4−イル)−アミンおよび[2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−(ピリジン−4−イル)−アミンは、本発明の任意の実施形態において求められる、1つまたは複数の主題(本明細書において下記の任意の式の化合物および/またはその医薬品、組成物および/または使用を含めた)から除かれる。
【0169】
文献に(例えば、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgartなどの標準的研究において)記載されているように、すなわち、公知であり、前記反応に適した反応条件下で、式(I)によるキノリン誘導体およびその調製のための出発物質は、各々、それ自体公知の方法によって生成される。それ自体公知の変形をまた使用することができるが、本明細書においてより詳細には記載しない。必要に応じ、出発物質はまた、粗反応混合物中で非単離状態のままにしておくことによってin situで形成することができるが、出発物質を直ちに本発明による化合物にさらに変換する。他方、反応を段階的に行うことが可能である。
【0170】
反応は、好ましくは塩基条件下にて行われる。適切な塩基は、金属酸化物、例えば、酸化アルミニウム、アルカリ金属水酸化物(とりわけ、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウム)、アルカリ土類金属水酸化物(とりわけ、水酸化バリウムおよび水酸化カルシウム)、アルカリ金属アルコラート(とりわけ、カリウムエタノレートおよびナトリウムプロパノレート)、ならびにいくつかの有機塩基(とりわけ、ピペリジンまたはジエタノールアミン)である。
【0171】
反応は一般に、不活性溶媒中で行われる。適切な不活性溶媒は、例えば、炭化水素(ヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンまたはキシレンなど);塩素化炭化水素(トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムまたはジクロロメタンなど);アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールまたはtert−ブタノールなど);エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサンなど);グリコールエーテル(エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)など);ケトン(アセトンまたはブタノンなど);アミド(アセトアミド、ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド(DMF)など);ニトリル(アセトニトリルなど);スルホキシド(ジメチルスルホキシド(DMSO)など);二硫化炭素;カルボン酸(ギ酸または酢酸など);ニトロ化合物(ニトロメタンまたはニトロベンゼンなど);エステル(酢酸エチルなど)、あるいは前記溶媒の混合物である。水、THF、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、NMP、トリエチルアミンおよび/またはジオキサンが特に好ましい。
【0172】
使用する条件によって、反応時間は、数分から14日である、反応温度は、約−30℃〜140℃、通常、−10℃〜130℃、特に好ましくは30℃〜125℃である。
【0173】
本発明はまた、
(a)式(IV)の化合物と
【0174】
【化9】

【0175】
(式中、Z、R2、R3、R4およびHalは、上記で定義される意味を有する)、
式(V)の化合物
【0176】
【化10】

【0177】
(式中、X、R1およびHetは、上記で定義される意味を有し、ただし、R1とR5とが一緒になったものは、除外される)
とを反応させ、式(I)の化合物
【0178】
【化11】

【0179】
(式中、X、Z、R1、R2、R3、R4およびHetは、上記で定義される意味を有し、ただし、R1とR5とが一緒になったものは、除外される)
を得るステップと、
任意選択で、
(b)式(I)の化合物の塩基または酸をその塩に変換するステップと
を含む、式(I)の化合物の製造方法に関する。
【0180】
式(I)のキノリン誘導体は、上記の経路を介して到達可能である。式(IV)および(V)の化合物を含めた出発物質は、当業者に通常公知であり、または公知の方法によって容易に調製することができる。
【0181】
特に、式(IV)の化合物は、2つの異なる経路を介して到達可能である。合成経路の第1の実施形態において、式(IV)の化合物は、
(a)式(VI)の化合物と
【0182】
【化12】

【0183】
(式中、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)、
式(VII)の化合物
【0184】
【化13】

【0185】
(式中、R2は、上記で定義される意味を有する)
とを反応させ、式(VIII)の化合物
【0186】
【化14】

【0187】
(式中、R2、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
(b)アルカリ環境中で式(VIII)の化合物を反応させ、式(IX)の化合物
【0188】
【化15】

【0189】
(式中、R2、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
(c)式(IX)の化合物とハロゲン化剤とを反応させ、式(IV)の化合物
【0190】
【化16】

【0191】
(式中、Zは、CHであり、R2、R3、R4およびHalは、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
任意選択で、
(d)式(I)の化合物の塩基または酸をその塩に変換させるステップと
を含む、方法(A)によって調製することができる。
【0192】
さらに詳細には、式(VI)のアミノアセトフェノンを、式(VII)の酸誘導体(安息香酸誘導体など)でアシル化し、式(VIII)のアミドを得て、これを強塩基、好ましくはKOButで処理し、濃縮し、式(IX)のキノリノンを得る。POHalまたはPHalによるハロゲン化(Halは、上記で定義される意味を有する)によって、式(IV)のハロゲン誘導体が得られる。
【0193】
合成経路の第2の実施形態において、式(IV)の化合物は、
(a)ハロゲン化剤と式(X)の化合物
【0194】
【化17】

【0195】
(式中、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
とを反応させ、式(XI)の化合物
【0196】
【化18】

【0197】
(式中、R3、R4およびHalは、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
(b)式(XI)の化合物と、ボロン酸、ボロン酸エステル、有機スズおよびボロントリフレートの群から選択される化合物(これらの各々は、上記で定義される意味を有するR2で置換されている)とを反応させ、式(IV)の化合物
【0198】
【化19】

【0199】
(式中、Zは、CHであり、R2、R3、R4およびHalは、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
任意選択で、
(c)式(I)の化合物の塩基または酸をその塩に変換するステップと
を含む、別の方法(B)によって調製することができる。
【0200】
さらに詳細には、式(X)のテトラヒドロ−キノリン−ジオンを、1種または複数のハロゲン化剤、好ましくはPOClまたはPOBrおよび/または相当するPHal(Halは、上記で定義される意味を有する)による処理によって、式(XI)の2,4−ハロ−キノリンに移行させる。PdO触媒作用下での、ボロン酸もしくはボロン酸エステルタイプ(i)による式(X)のキノリンの処理、または有機スズタイプ(ii)もしくはボロントリフレートタイプ(iii)による同様の化学作用によって、式(IV)の2−R2−4−Hal−キノリン(R2およびHalは、上記で定義される意味を有する)が得られる。
【0201】
式(X)の化合物を含めた方法(B)の出発物質は通常当業者に公知であり、または公知の方法によって容易に調製することができる。特に、式(X)の化合物は、異なる経路を介して到達可能である。合成経路の第1の実施形態において、式(X)の化合物は、
(a)アセチル化剤と、式(XII)の化合物
【0202】
【化20】

【0203】
(式中、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
とを反応させ、式(XIII)の化合物
【0204】
【化21】

【0205】
(式中、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
(b)塩基条件下で、(XIII)の化合物を反応させ、式(X)の化合物
【0206】
【化22】

【0207】
(式中、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
任意選択で、
(c)式(I)の化合物の塩基または酸をその塩に変換するステップと
を含む、方法(C)によって調製することができる。
【0208】
さらに詳細には、カップリング(脱水)条件下で、アセチル化剤、好ましくはAcCl、AcO、Ac−イミダゾール、アセチルモルホリン、Ac−CNまたは酢酸との反応によって、式(XII)のアントラニル酸エステルから出発して、式(XIII)のアセトアミド安息香酸エステル(acetamido benzoic ester)誘導体が得られ、これは塩基条件下にて、例えば、溶媒(THFおよび/またはトルエンなど)中のKN(SiMeの使用によって環化することができ、式(X)のテトラヒドロ−キノリン−ジオンを得て、方法(B)におけるようにさらに処理する。式(XII)のエステルは、ホスゲン化技術によってアントラニル酸から生じさせることができる式(XXIII)のベンゾオキサジンジオンの加アルコール分解によって生成することができる。
【0209】
【化23】

【0210】
合成経路の第2の実施形態において、式(X)の化合物は、
(a)式(XII)の化合物
【0211】
【化24】

【0212】
(式中、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
と、式(XIV)の化合物
【0213】
【化25】

【0214】
(式中、Eは、OYまたはNYYを表し、Yは、上記で定義される意味を有する)
とを反応させ、式(XV)の化合物
【0215】
【化26】

【0216】
(式中、Eは、OYまたはNYYを表し、
Y、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
(b)溶媒中およびアルカリ性条件下で、式(XV)の化合物を反応させ、式(XVI)の化合物
【0217】
【化27】

【0218】
(式中、Eは、OYまたはNYYを表し、
Y、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
(c)酸性またはアルカリ性条件下で、式(XVI)の化合物を反応させ、式(X)の化合物
【0219】
【化28】

【0220】
(式中、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
任意選択で、
(c)式(I)の化合物の塩基または酸をその塩に変換するステップと
を含む、方法(D)によって調製することができる。
【0221】
さらに詳細には、溶媒および塩基の存在下で、式(XII)のアントラニル酸エステル、および式(XIV)のマロン酸誘導体による反応から出発して、式(XV)のアシルマロン酸誘導体が形成され、それを溶媒中の塩基で環化し、式(XVI)のテトラヒドロ−キノリノンを形成することができる。酸またはアルカリ加水分解/けん化および脱カルボキシル化の後、式(X)のテトラヒドロ−キノリン−ジオンが形成され、これは方法(B)におけるようにさらに処理することができる。
【0222】
代わりに、式(X)のキノリンジオンは、相当するアニリンとマロン酸エステルクロリド(すなわち、MeOCOCHCOCl)またはマロン酸ジエチル(すなわち、CH(COOEt))との反応、それに続く、例えば、NaOHによるけん化、およびポリリン酸(PPA)によって媒介される環化から得ることができる。
【0223】
式(I)のキノリン誘導体を製造する別の態様において、式(V)の化合物は、下記の経路を介して到達可能である。合成経路の第1の実施形態において、式(V)の2−置換4−アミノピリジンは、
(a)2−ブロモ−4−ニトロ−ピリジン−N−オキシドと、式H−R6の化合物(R6は、上記で定義される意味を有する)とを反応させ、式(XVII)の化合物
【0224】
【化29】

【0225】
(式中、R6は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
(b)還元条件下で、式(XVII)の化合物を反応させて、式(V)の化合物
【0226】
【化30】

【0227】
(式中、R6は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
任意選択で、
(c)式(I)の化合物の塩基または酸をその塩に変換するステップと
を含む、方法(E)によって調製することができる。
【0228】
さらに詳細には、2−置換4−アミノピリジンの合成は、例えば、市販の2−ブロモ−4−ニトロ−ピリジン−N−オキシドから出発し、それをアルコール、フェノール、アミンまたはアニリンと塩基条件下にて反応させ、式(XVII)の化合物を得て、それを相当する4−アミノピリジン誘導体に還元することができる。
【0229】
合成経路の第2の実施形態において、式(V)の3−置換4−アミノ−ピリジンは、
(a)3−フルオロ−4−ニトロ−ピリジン−N−オキシドと、式H−R5の化合物(R5は、上記で定義される意味を有する)とを反応させ、式(XVII)の化合物
【0230】
【化31】

【0231】
(式中、R5は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
(b)還元条件下で、式(XVIII)の化合物を反応させ、式(V)の化合物
【0232】
【化32】

【0233】
(式中、R5は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
任意選択で、
(c)式(I)の化合物の塩基または酸をその塩に変換するステップと
を含む、方法(F)によって調製することができる。
【0234】
さらに詳細には、3−置換4−アミノピリジンの合成は、例えば、市販の3−フルオロ4−ニトロ−ピリジン−N−オキシドから出発し、これは塩基条件下にてアルコール、フェノール、アミンまたはアニリンと反応させ、式(XVIII)の中間体を得て、これを相当する4−アミノピリジン誘導体に還元することができる。
【0235】
したがって、式(IV)〜(XVIII)の任意の化合物は、精製され、中間体生成物として提供され、式(I)の化合物の調製のための出発物質として使用することができる。しかし、式(IV)、(V)、(IX)、(X)および/または(XI)の化合物は、中間体生成物として提供され、式(I)の化合物の調製のための出発物質、さらに好ましくは式(IV)、(V)、(IX)および/または(XI)の化合物、最も好ましくは式(IV)および/または(V)の化合物、非常に好ましくは式(IV)および(V)の化合物として使用されることが好ましい。式(IV)の化合物と式(V)の化合物との反応は、式(I)の化合物への添加をもたらす。さらに詳細には、式(IV)の化合物は、Buchwald−Hartwig反応におけるようなPdO化学を使用して式(V)の化合物と反応させ、式(I)の化合物を生成することができる。好ましくは、式(V)のアニリンを反応させ、2−R2−4−Het−アミノ−キノリンの最終親化合物(R2およびHetは、上記で定義される意味を有する)(2−(2−フルオロ−5−クロロ−フェニル)−4−(3−メトキシ−ピリジル−4−アミノ)−キノリンなど)を生成する。
【0236】
2−アリール/ヘタリール−4−アミノおよび4−tertブトキシ−キノリンを介した代替手順は、Mooreら、THL 20、1277(1963);Strekowskiら、Heterocycles 29、539(1989);Strekowskiら、JMC 34、1739(1991);Strekowskiら、J. Med. Chem. 46、1242(2003);Strekowskiら、J. Org. Chem. 62、4193(1997)、またはPaliakovら、THL 45、4093(2004)から採用することができる。さらに、キナゾリン−4−イルチアゾール−2−イルアミンは、Pierceら、J. Med. Chem. 48、1278(2005)に記載されている。合成の別の態様において、Kiselyovら、THL 35、7597(1994)による4−F−キノリンを介した経路を使用することができ、またはAbbiattiら、J. Org. Chem. 70(16)、6454(2005)によって記載されるように、置換キノリンを形成するPdが媒介する多成分反応を使用することができる。
【0237】
式(I)の化合物を、修飾(水素付加または金属還元など)し、塩素を除去し、または置換反応に供し、および/または塩中の強酸もしくは塩基、好ましくは強酸で変換することができる。有機化学、化学戦略および方策、合成経路、中間体の保護、切断および精製手順、単離ならびに特性決定に関して、多数の論文および方法が当業者にとって利用可能および有用である。一般の化学修飾は、当業者に公知である。アリールのハロゲン化、またはハロゲンによる酸、アルコール、フェノール、およびそれらの互変異性構造のヒドロキシ置換は好ましくは、POCl、またはSOCl、PCl、SOClを使用することによって行うことができる。場合によっては、塩化オキサリルがまた有用である。温度は、ピリドン構造またはカルボン酸もしくはスルホン酸(sufonic acid)をハロゲン化する課題によって0℃から還流温度に変化させることができる。時間はまた、数分から数時間または一晩に調節される。同様に、アルキル化、エーテル形成、エステル形成、アミド形成は、当業者に公知である。アリールボロン酸によるアリール化は、Pd触媒、適当なリガンドおよび塩基、好ましくはナトリウム、カリウムまたはセシウムの炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩の存在下で行うことができる。有機塩基(EtN、DIPEAまたはより塩基性のDBUなど)をまた、使用することができる。溶媒は、トルエン、ジオキサン、THF、ジグリム、モノグリム、アルコール、DMF、DMA、NMP、アセトニトリル、場合によっては水も、およびその他のものと変化させてもよい。通常使用される触媒(PdO触媒のPd(PPh、またはPd(OAc)、PdClタイプの前駆体など)は、より効率的なリガンドを有するより複雑なものに進歩している。C−Cアリール化において、ボロン酸およびエステル(スティルカップリング)の代わりに、アリール−トリフルオロボレートカリウム塩(鈴木−宮浦カップリング)、オルガノシラン(檜山カップリング)、グリニャール試薬(熊田)、亜鉛オルガニル(organyles)(根岸カップリング)およびスズオルガニル(スティルカップリング)が有用である。この経験は、N−およびO−アリール化に移行することができる。多数の論文および方法が、N−アリール化および電子不足アニリン(Biscoeら、JACS 130、6686(2008))、ならびに塩化アリールおよびアニリン(Forsら、JACS 130、13552(2008)、ならびにCu触媒作用およびPd触媒作用を使用することによるO−アリール化に関して、当業者にとって利用可能および有用である。
【0238】
3−置換4−X−N−ヘテロアリールキノリン(Xは、上記で定義される意味を有する)への合成アプローチにおいて、式(I)の修飾された化合物は、
(a)還元条件下で、式(XIX)の化合物
【0239】
【化33】

【0240】
(式中、X、Z、W1、W2、W5、W6、R1、R2、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
を反応させ、式(XX)の化合物
【0241】
【化34】

【0242】
(式中、X、Z、W1、W2、W5、W6、R1、R2、R3およびR4は、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
(b)アシル化条件下で、式(XX)の化合物を反応させ、式(XXI)の化合物
【0243】
【化35】

【0244】
(式中、Qは、−CO−、−SO−、−NY−CO−、−CO−NY−、−OCO−、NY−SOまたは結合を表し、R51は、Y、−Alk−NYY、−Alk−OY、Het、−CO−R2または−CO−Hetを表し、X、Z、W1、W2、W5、W6、R1、R2、R3、R4、Y、Alk、HetおよびHetは、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
(c)アシル化条件、それに続き酸性条件下で、式(XXI)の化合物を反応させ、式(XXII)の化合物
【0245】
【化36】

【0246】
(式中、R51は、Y、−Alk−NYY、−Alk−OY、Het、−CO−R2または−CO−Hetを表し、X、Z、W1、W2、W5、W6、R2、R3、R4、Y、Alk、HetおよびHetは、上記で定義される意味を有する)
を得るステップと、
任意選択で、
(d)式(I)の化合物の塩基または酸をその塩に変換するステップと
を含む、方法(G)によって調製することができる。
【0247】
さらに詳細には、3−ニトロ−4−アミノピリジンを使用して、式(IV)の適当な中間体から式(XXI)の2−R2−4−(3−ニトロ−ピリジル−4−アミノ)−キノリンを合成することができる。3−ニトロ官能基の還元後、遊離アニリン(freed aniline)は、3−および4−アミノ基の両方を利用して、アルキル化、アシル化、カルバミン化(carbaminated)、スルファミド化(sulfamidated)、スルファモイル化、またはアシル化および継続的にベンゾイミダゾイル化(benzimidazoylated)することができる。ステップ(b)において、式(XX)の化合物を、アシル化条件下で、活性化カルボン酸誘導体、特に、クロリド、無水物、活性エステル、活性化スルホン酸誘導体、カーボネートまたはイソシアネートと反応させる。ステップ(c)において、このように得られた式(XXI)の化合物を、アシル化条件下で活性化カルボン酸誘導体と反応させ、それに続く酸処理によって最初に形成されたアミドを相当するイミダゾールに環化させる。
【0248】
上記の方法の最終ステップにおいて、式(I)〜(XXII)、好ましくは式(I)による化合物の塩を任意選択で提供する。本発明による前記化合物は、それらの最終の非塩形態で使用することができる。他方、本発明はまた、当技術分野において公知の手順によって様々な有機酸、無機酸、有機塩基および無機塩基に由来することができる、薬学的に許容されるその塩の形態のこれらの化合物の使用を包含する。本発明による化合物の薬学的に許容される塩の形態は、大部分は従来の方法によって調製される。本発明による化合物がカルボキシル基を含有する場合、その適切な塩の1つは、化合物と適切な塩基とを反応させることによって形成させ、相当する塩基付加塩を得ることができる。このような塩基は、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを含めた);アルカリ土類金属水酸化物(水酸化バリウムおよび水酸化カルシウムなど);アルカリ金属アルコキシド(例えば、カリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド);ならびに様々な有機塩基(ピペリジン、ジエタノールアミンおよびN−メチルグルタミンなど)である。本発明による化合物のアルミニウム塩が、同様に含まれる。本発明による特定の化合物の場合、酸付加塩は、これらの化合物を、薬学的に許容される有機酸および無機酸、例えば、ハロゲン化水素(塩化水素、臭化水素またはヨウ化水素など)、他の鉱酸およびその相当する塩(硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩など)、ならびにアルキルスルホネートおよびモノアリールスルホネート(エタンスルホネート、トルエンスルホネートおよびベンゼンスルホネートなど)、ならびに他の有機酸およびその相当する塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩など)で処理することによって形成させることができる。したがって、本発明による化合物の薬学的に許容される酸付加塩には、下記が含まれる。酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、ブロミド、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、カプリル酸塩、クロリド、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ニ水素リン酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩(galacterate)(粘液酸から)、ガラクツロン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨージド、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸塩、一水素リン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パルモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、フタル酸塩。しかし、これは制限を表さない。
【0249】
さらに、本発明による化合物の塩基性塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛塩が含まれるが、これは制限を表すことを意図しない。上記の塩の内、アンモニウム;アルカリ金属塩であるナトリウムおよびカリウム、およびアルカリ土類金属塩であるカルシウムおよびマグネシウムが好ましい。薬学的に許容される無毒有機の塩基に由来する本発明による化合物の塩には、第一級、第二級および第三級アミン、置換アミン(また天然置換アミン、環状アミンを含めた)、ならびに塩基性イオン交換体樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジシクロヘキシル−アミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン(glucoseamine)、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リドカイン、リシン、メグルミン、N−メチル−D−グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)の塩が含まれるが、これは制限を表すことを意図しない。
【0250】
塩基性窒素含有基を含有する本発明の化合物は、(C〜C)ハロゲン化アルキル、例えば、塩化、臭化、ヨウ化メチル、エチル、イソプロピルおよびtert−ブチル;硫酸ジ(C〜C)アルキル、例えば、硫酸ジメチル、ジエチルおよびジアミル;(C10〜C18)ハロゲン化アルキル、例えば、塩化、臭化、ヨウ化デシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル;およびアリール(C〜C)ハロゲン化アルキル、例えば、塩化ベンジルおよび臭化フェネチルなどの薬剤を使用して四級化することができる。本発明による水溶性および油溶性化合物の両方は、このような塩を使用して調製することができる。
【0251】
好ましい上記の医薬塩には、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベシル酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヘミコハク酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、イセチオン酸塩、マンデル酸塩、メグルミン、硝酸塩、オレイン酸塩、ホスホン酸塩、ピバル酸塩、リン酸ナトリウム、ステアリン酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、チオリンゴ酸塩、トシル酸塩およびトロメタミンが含まれるが、これは制限を表すことを意図しない。
【0252】
本発明による塩基性化合物の酸付加塩は、遊離塩基の形態と十分な量の所望の酸とを接触させ、従来の態様で塩の形成をもたらすことによって調製される。遊離塩基は、塩の形態を塩基と接触させ、遊離塩基を従来の態様で単離することによって再生することができる。遊離塩基の形態は、特定の点において、極性溶媒中の溶解性などの特定の物理学的性質に関してその対応する塩の形態と異なるが、しかし、本発明の目的のために、塩は、各々のその遊離塩基の形態にその他の点で相当する。
【0253】
記載したように、本発明による化合物の薬学的に許容される塩基付加塩は、金属またはアミン(アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミンなど)と形成される。好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムである。好ましい有機アミンは、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−D−グルカミンおよびプロカインである。
【0254】
本発明による酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸の形態と十分な量の所望の塩基とを接触させ、従来の態様で塩の形成をもたらすことによって調製される。遊離酸は、塩の形態を酸と接触させ、遊離酸を従来の態様で単離することによって再生することができる。遊離塩基の形態は、特定の点において、極性溶媒中の溶解性などの特定の物理学的性質に関してその対応する塩の形態と異なるが、しかし、本発明の目的のために、塩は、各々のその遊離塩基の形態にその他の点で相当する。
【0255】
本発明による化合物が、このタイプの薬学的に許容される塩を形成することができる複数の基を含有する場合、本発明はまた、複数の塩を包含する。典型的な複数の塩の形態には、例えば、酒石酸水素塩、二酢酸塩、ジフマル酸塩、ジメグルミン、二リン酸塩、二ナトリウムおよび三塩酸塩が含まれるが、これは制限を表すことを意図しない。
【0256】
上記で述べたものに関して、本明細書において互換的に使用される「薬学的に許容される塩」および「生理学的に許容される塩」という表現は、本関連において、特にこの塩の形態が、以前使用された、活性成分の遊離形態、または活性成分の任意の他の塩の形態と比較して、活性成分に改善された薬物動態特性を付与する場合、本発明による化合物をその塩の1つの形態で含む活性成分を意味すると解釈されることを見出すことができる。活性成分の薬学的に許容される塩の形態はまた、この活性成分に、それが以前は有していなかった所望の薬物動態特性を初めて提供することができ、体内でのその治療有効性に関して、この活性成分の薬力学に対して好ましい影響さえも有することができる。
【0257】
本発明の目的はまた、ATP消費タンパク質、特に、キナーゼを阻害するための、式(I)による化合物および/またはその生理学的に許容される塩の使用である。「阻害」という用語は、認識、結合および遮断を可能にする態様で、標的キナーゼと相互作用することができる特定の本発明の化合物の作用に基づいて、キナーゼ活性の任意の減少を表す。化合物は、キナーゼ活性の確実な結合、および好ましくは完全な遮断を確実にする、少なくとも1種のキナーゼに対するこのような高親和性によって特徴付けられる。さらに好ましくは、物質は、選択した単一のキナーゼ標的の排他的および特異的認識(directed recognition)を確実にするために、単一特異性である。本発明の状況において、「認識」という用語は、それに限定されるものではないが、特定の物質と標的との間の任意のタイプの相互作用、特に、共有結合または非共有結合または会合(共有結合、疎水性/親水性相互作用、ファンデルワールス力、イオン対、水素結合、リガンド−受容体相互作用など)に関する。このような会合はまた、他の分子(ペプチド、タンパク質またはヌクレオチド配列など)の存在を包含し得る。本発明の受容体/リガンド相互作用は、治療を受ける対象への不健康および有害な影響を除外するための、高親和性、高選択性、および他の標的分子への最小の交差反応性または交差反応性の欠如によって特徴付けられる。
【0258】
本発明の一実施形態において、キナーゼは、チロシンキナーゼおよびセリン/トレオニンキナーゼの群に属する。本発明の好ましい実施形態において、キナーゼは、TGF−β、PDK1、Met、PKD1、MINK1、SAPK2−α、SAPK2−β、MKK1、GCK、HER4、ALK1、ALK2、ALK4、ALK5およびTbR II型の群から選択される。セリン/トレオニンキナーゼを阻害することがより好ましい。阻害される最も好ましいキナーゼは、TGF−β受容体キナーゼおよび/またはALK5、非常に好ましくは、TGF−β受容体キナーゼである。
【0259】
化合物の濃度が1,000nM未満、好ましくは500nM未満、さらに好ましくは300nM未満、最も好ましくは100nM未満になる場合、キナーゼは特に半分阻害される。このような濃度はまた、IC50と称される。
【0260】
本明細書の前の段落による使用は、インビトロまたはインビボのモデルで行い得る。阻害は、本明細書において記載されている技術によってモニターすることができる。インビトロの使用は好ましくは、がん、腫瘍増殖、転移性増殖、線維症、再狭窄、HIV感染症、神経変性(neurodegenartive)障害、例えば、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、創傷治癒、血管新生、心臓血管系、骨、CNSおよび/またはPNSの炎症および障害を患っているヒトの試料に適用される。いくつかの特定の化合物および/またはその誘導体の試験は、ヒト対象の治療に最適なその活性成分の選択を可能とする。選択した誘導体のインビボでの用量率は、インビトロのデータに関して、各々の対象のキナーゼ感受性および/または疾患の重症度に応じて有利に事前調節される。したがって、治療有効性は著しく増強される。さらに、予防的もしくは治療的処置および/またはモニタリングのための医薬品の生成のための式(I)による化合物およびその誘導体の使用に関する本明細書の下記の教示は、好都合である場合、キナーゼ活性の阻害のための化合物の使用に限定せずに、妥当および適用可能と考えられる。
【0261】
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明による化合物、ならびに/またはその薬学的に使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のこれらの混合物を含めた)、ならびに任意選択で添加剤および/またはアジュバントを含むに関する。
【0262】
本発明の意味において、「アジュバント」は、同時、同時期または順次に投与した場合、本発明の活性成分に対する特異的反応を可能にし、増強し、または変更する全ての物質を表す。注射液のための公知のアジュバントは、例えば、アルミニウム組成物(水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなど)、サポニン(QS21、ムラミルジペプチドまたはムラミルトリペプチドなど)、タンパク質(γ−インターフェロンまたはTNF、M59、スクアレン(squalen)またはポリオールなど)である。
【0263】
結果的に、本発明はまた、薬学的に容認できるアジュバントと一緒に、活性成分として有効量の少なくとも1種の式(I)による化合物および/またはその生理学的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。
【0264】
本発明の意味における「医薬品」、「医薬組成物」または「医薬製剤」は、1種または複数の式(I)の化合物またはその調製物を含む医学の分野の任意の薬剤であり、生物の全体的な状態または特定の領域の状態の発症の変化を少なくとも一時的に確立することができるように、キナーゼ活性に関連する疾患を患っている患者の予防、治療、経過観察またはアフターケアにおいて使用することができる。
【0265】
さらに、活性成分は、単独でまたは他の治療と組み合わせて投与し得る。相乗効果は、医薬組成物において複数の化合物を使用することによって達成し得る。すなわち、式(I)の化合物を、式(I)の別の化合物、または異なる構造の骨組みの化合物である活性成分として少なくとも別の薬剤と合わせる。活性成分は、同時または順次に使用することができる。
【0266】
本発明の化合物は、公知の抗がん剤との組合せに適している。これらの公知の抗がん剤には、下記が含まれる。(1)エストロゲン受容体モジュレーター、(2)アンドロゲン受容体モジュレーター、(3)レチノイド受容体モジュレーター、(4)細胞毒性剤、(5)抗増殖剤、(6)プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、(7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、(8)HIVプロテアーゼ阻害剤、(9)リバーストランスクリプターゼ阻害剤、および(10)さらなる血管新生阻害剤。本発明の化合物は、放射線療法と同時に投与するのに特に適している。放射線療法との組合せにおける阻害性VEGFの相乗効果は、当技術分野で記載されてきた(WO00/61186を参照されたい)。
【0267】
「エストロゲン受容体モジュレーター」とは、機序に関わらず受容体へのエストロゲンの結合を妨げ、または阻害する化合物を意味する。エストロゲン受容体モジュレーターの例には、これらに限定されないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]フェニル2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンおよびSH646が含まれる。
【0268】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」とは、機序に関わらず受容体へのアンドロゲンの結合を妨げ、または阻害する化合物を意味する。アンドロゲン受容体モジュレーターの例には、フィナステリドおよび他の5α−レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾールおよび酢酸アビラテロンが含まれる。
【0269】
「レチノイド受容体モジュレーター」とは、機序に関わらず受容体へのレチノイドの結合を妨げ、または阻害する化合物を意味する。このようなレチノイド受容体モジュレーターの例には、ベキサロテン、トレチノイン、13−cisレチノイン酸、9−cisレチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、trans−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチンアミドおよびN−4−カルボキシフェニルレチンアミドが含まれる。
【0270】
「細胞毒性剤」とは、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、ミクロチューブリン阻害剤およびトポイソメラーゼ阻害剤を含めた、主に細胞機能に対する直接作用によって細胞死をもたらす、または細胞収縮(cell myosis)を阻害もしくは妨げる化合物を意味する。細胞毒性剤の例には、これらに限定されないが、チラパザミン(tirapazimine)、セルテネフ、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモズルシトール、ラニムスチン、ホテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、トシル酸インプロスルファン、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、ポルフィロマイシン(profiromycin)、シスプラチン、イロフルベン、デキシホスファミド、cisアミンジクロロ(2−メチルピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルフォスファミド、GPX100、(trans,trans,trans)ビスmu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン白金(II)]ビス−[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アムルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755および4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニルダウノルビシン(WO00/50032を参照されたい)が含まれる。
【0271】
ミクロチューブリン阻害剤である細胞毒性剤のさらなる例には、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキセル、リゾキシン、ドラスタチン、ミボブリンイセチオネート、アウリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ(pentafluoroo)−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリネット(prolinet)−ブチルアミド、TDX258およびBMS188797が含まれる。
【0272】
トポイソメラーゼ阻害剤である細胞毒性剤のさらなる例は、例えば、トポテカン、ヒカプタミン(hycaptamine)、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−オキソベンジリデン−シャールトルーシン、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ(fluoroo)−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)−ジオン、ルルトテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシエトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソキノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノ−プロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]−アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オンおよびジメスナである。
【0273】
「抗増殖剤」には、アンチセンスRNAおよびDNAオリゴヌクレオチド(G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231およびINX3001など)、ならびに代謝拮抗剤、例えば、エノシタビン、カルモフール、テガフル、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキセート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクフォスファート、フォステアビン(fosteabine)ナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド(paltitrexid)、エミテフル、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン(fluoroomethylene)−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシル−アミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクチナサイジン、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b]−1,4−チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル(fluoroouracil)、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシ−メチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デキスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ(cyanoo)−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシンおよび3−アミノピリジン−2−カルボキサルデヒドチオセミカルバゾンが含まれる。「抗増殖剤」にはまた、「血管新生阻害剤」として一覧表示されているもの以外の増殖因子へのモノクローナル抗体(トラスツズマブなど)、および組換えウイルスが媒介する遺伝子導入によって送達することができる腫瘍抑制遺伝子(p53など)が含まれる(例えば、US6,069,134を参照されたい)。
【0274】
本発明はまた、有効量の本発明による化合物、ならびに/またはその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のこれらの混合物を含めた)、ならびに有効量のさらなる医薬品活性成分の別々のパックからなるセット(キット)に関する。このセットは、ボックス、個々のボトル、バッグまたはアンプルなどの適切な容器を含む。このセットは、例えば、別々のアンプルを含んでもよく、各々が有効量の本発明による化合物、ならびに/またはその薬学的に許容される塩、誘導体、溶媒和物および立体異性体(全ての割合のこれらの混合物を含めた)、ならびに溶解または凍結乾燥した形態の有効量のさらなる医薬品活性成分を含有する。
【0275】
医薬製剤は、任意の所望の適切な方法による、例えば、経口(口腔もしくは舌下を含めた)、直腸、経鼻、局所(口腔、舌下もしくは経皮的を含めた)、膣または非経口(皮下、筋内、静脈内または皮内を含めた)の方法による投与のために適合させることができる。このような製剤は、例えば、活性成分を添加剤(複数可)またはアジュバント(複数可)と合わせることによって、製薬技術において公知の全ての方法を使用して調製することができる。
【0276】
本発明の医薬組成物は、医薬製造工学のための一般の固体または液体担体、賦形剤および/または添加物および通常のアジュバント(適当な投与量の)を使用して公知の方法で生成される。単一の剤形を生成するために活性成分と合わせる添加剤材料の量は、治療を受ける宿主および特定の投与方法によって変化する。適切な添加剤には、異なる投与経路(経腸(例えば、経口)、非経口または局所適用など)に適し、式(I)の化合物またはその塩と反応しない有機または無機物質が含まれる。適切な添加剤の例は、水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、炭水化物(ラクトースまたはデンプンなど)、ステアリン酸マグネシウム、タルク、および石油ゼリーである。
【0277】
経口投与のために適合された医薬製剤は、例えば、カプセル剤または錠剤;散剤または顆粒剤;水性もしくは非水性液体中の溶液剤もしくは懸濁剤;食べられるフォーム剤もしくは泡状食物;または水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョンなど別々の単位として投与することができる。
【0278】
したがって、例えば、錠剤またはカプセル剤の形態の経口投与の場合、活性成分要素は、経口の無毒性および薬学的に許容される不活性な添加剤(例えば、エタノール、グリセロール、水など)と合わせることができる。
【0279】
散剤は、化合物を適切な微細なサイズに粉砕し、それを同様に粉砕した、例えば、食用炭水化物(例えば、デンプンまたはマンニトールなど)などの医薬添加剤と混合することによって調製される。フレーバー、保存剤、分散剤および染料は、同様に存在し得る。
【0280】
カプセル剤は、上記の粉末混合物を調製し、成形されたゼラチンシェルにこれを充填することによって生成される。流動促進剤および滑沢剤(例えば、固体形態の、高度に分散したケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはポリエチレングリコールなど)を、充填操作の前に粉末混合物に加えることができる。崩壊剤または可溶化剤(例えば、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムなど)を、カプセル剤を摂取した後に医薬品の有効性を改善するために同様に加えてもよい。
【0281】
さらに、所望または必要な場合、適切な結合剤、滑沢剤および崩壊剤、ならびに染料を同様に、混合物中に組み込むことができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えば、グルコースまたはβラクトースなど)、トウモロコシから作製した甘味剤、天然および合成ゴム(例えば、アカシア、トラガントまたはアルギン酸ナトリウムなど)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。これらの剤形において使用される滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、これだけに限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、混合物を造粒または乾式圧縮し、滑沢剤および崩壊剤を加え、混合物全体を圧縮し、錠剤を得ることによって製剤される。粉末混合物は、適切な態様で粉砕した化合物と、上記のような賦形剤または塩基と、および任意選択で結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチンまたはポリビニルピロリドンなど)、溶解遅延剤(例えば、パラフィンなど)、吸収促進剤(例えば、第四級塩など)、ならびに/あるいは吸収剤(例えば、ベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウムなど)とを混合することによって調製する。粉末混合物は、それを結合剤(例えば、シロップ、デンプン糊、アカディア粘液(acadia mucilage)またはセルロース溶液またはポリマー材料など)で湿らせ、それを篩によって圧縮することによって造粒することができる。造粒に代わる方法として、粉末混合物は、タブレット成形機を通して加工して、均一ではない形状の塊を得ることができ、これを分割して顆粒剤を形成する。顆粒剤は、錠剤成形型へのくっつきを防止するために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を加えることによって潤滑させることができる。次いで、潤滑された混合物を圧縮し、錠剤を得る。本発明による化合物はまた、易流動性の不活性な添加剤と合わせ、次いで直接圧縮し、造粒または乾式圧縮ステップを行うことなく錠剤を得ることができる。シェラックシーリング層、糖またはポリマー材料の層、およびワックスの光沢層からなる透明または不透明な保護層が存在し得る。異なる投与単位を識別することができるように、染料をこれらのコーティングに加えることができる。
【0282】
経口液剤(例えば、溶液剤、シロップ剤およびエリキシル剤など)は、一定量が予め特定した量の化合物を含むように、投与単位の形態で調製することができる。シロップ剤は、化合物を適切なフレーバーと共に水溶液に溶解することによって調製することができ、一方、エリキシル剤は、無毒性アルコール性ビヒクルを使用して調製する。
【0283】
懸濁剤は、無毒性ビヒクルに化合物を分散することによって製剤することができる。可溶化剤および乳化剤(例えば、エトキシ化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなど)、保存剤、香味添加物(例えば、ハッカ油など)、または天然甘味剤もしくはサッカリン、または他の人工甘味剤などを、同様に加えることができる。
【0284】
経口投与のための投与単位製剤は、必要に応じて、マイクロカプセル中にカプセル化することができる。製剤はまた、例えば、コーティング、または微粒子状材料をポリマー、ワックスなどに埋め込むことによるなど、放出が持続または遅延するように調製することができる。
【0285】
本発明による化合物、ならびにその塩、溶媒和物および生理機能的誘導体は、リポソーム送達系(例えば、小さな単膜小胞、大きな単膜小胞および多重膜小胞など)の形態で投与することができる。リポソームは、様々なリン脂質(例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなど)から形成することができる。
【0286】
本発明による活性成分はまた、目的地への方向性を持った輸送、標的細胞内の組込みおよび/または分布を促進する別の分子と縮合または複合体化することができる。
【0287】
本発明による化合物、ならびにその塩、溶媒和物および生理機能的誘導体はまた、モノクローナル抗体(それに、化合物分子がカップリングする)を個々の担体として使用して送達することができる。化合物はまた、標的とされた医薬品担体として、可溶性ポリマーにカップリングすることができる。このようなポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル基で置換されているポリエチレンオキシドポリリシンを包含し得る。化合物はさらに、医薬品の制御放出を達成するのに適した生分解性ポリマーのクラス(例えば、ポリ乳酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマー)にカップリングし得る。
【0288】
経皮的投与のために適合された医薬製剤は、レシピエントの表皮と長時間に亘り密接に接触させるための別個の貼付剤として投与することができる。したがって、例えば、活性成分は、Pharmaceutical Research、3(6)、318(1986)に一般用語で記載されているように、イオン泳動によって貼付剤から送達することができる。
【0289】
局所投与のために適合された医薬化合物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアゾールまたは油として製剤することができる。
【0290】
眼または他の外部組織、例えば、口および皮膚の治療のために、製剤は好ましくは、局所軟膏剤またはクリーム剤として施用される。軟膏剤を得る製剤の場合、活性成分は、パラフィン性または水混和性クリーム基剤と共に用いることができる。代わりに、活性成分を製剤して、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤を有するクリーム剤を得ることができる。
【0291】
眼への局所適用のために適合された医薬製剤には、活性成分を適切な担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁させた点眼薬が含まれる。
【0292】
口への局所適用のために適合された医薬製剤は、ロゼンジ剤、香錠および口腔洗浄剤を包含する。
【0293】
直腸投与のために適合された医薬製剤は、坐剤または浣腸の形態で投与することができる。
【0294】
担体物質が固体である、経鼻投与のために適合された医薬製剤は、すなわち、鼻の近くに保持した粉末を含有する容器から鼻道を通した急速な吸入によって鼻から吸入する態様で投与される、例えば、20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗末を含む。担体物質として液体と共に、鼻用スプレーまたは点鼻薬として投与するために適切な製剤は、水または油中の活性成分溶液を包含する。
【0295】
吸入による投与のために適合された医薬製剤は、様々なタイプのエアゾールを有する加圧式ディスペンサー、ネブライザーまたは注入器によって生じさせることができる、微粒子状の塵または霧を包含する。
【0296】
膣投与のために適合された医薬製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー製剤として投与することができる。
【0297】
非経口投与のために適合された医薬製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および溶質を含む水性および非水性の無菌注射液(これによって、製剤は、治療を受けるレシピエントの血液と等張となる);ならびに水性および非水性の無菌懸濁剤(懸濁媒体および増粘剤を含み得る)が含まれる。製剤は、単回用量または複数用量容器、例えば、密封したアンプルおよびバイアルで投与され、フリーズドライ(凍結乾燥)した状態で保存することができ、その結果、注射の目的のための無菌担体液、例えば、水を使用直前に加えることのみが必要である。処方に従って調製される注射液および懸濁液は、無菌散剤、顆粒剤および錠剤から調製することができる。
【0298】
上記で特に記載した構成成分に加えて、製剤はまた、特定のタイプの製剤に関して当技術分野で通常の他の薬剤を含んでもよく、したがって、例えば、経口投与に適した製剤は、フレーバーを含んでもよいことはもちろんのことである。
【0299】
本発明の好ましい実施形態において、医薬組成物は、経口または非経口、さらに好ましくは経口的に投与される。特に、活性成分は、薬学的に許容される塩(酸付加塩および塩基付加塩の両方を含むことを意味する)などの水溶性形態で提供される。さらに、式(I)の化合物およびその塩は、凍結乾燥してもよく、このように得られた凍結乾燥物を使用して、例えば、注射のための調製物を生成する。示された調製物は、無菌化してもよく、かつ/または助剤、例えば、担体タンパク質(例えば、血清アルブミン)、滑沢剤、保存剤、安定剤、充填剤、キレート剤、抗酸化剤、溶媒、結合剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、塩(浸透圧に影響を与えるため)、緩衝物質、着色剤、香料、および1種または複数のさらなる活性物質、例えば、1種または複数のビタミンを含んでもよい。添加物は当技術分野で周知であり、種々の製剤において使用される。
【0300】
「有効量」または「有効用量」または「用量」という用語は、本明細書において互換的に使用され、すなわち組織、系、動物またはヒトにおいて、例えば、研究者または医師によって求められもしくは所望の生物学的または医学的反応をもたらす、疾患または病的状態に対して予防的または治療的に意味のある作用を有する医薬化合物の量を意味する。「予防効果」は疾患を進展させる可能性を減少させ、またはそれどころか疾患の発症を防止する。「治療的に意味のある作用」は、疾患の1つもしくは複数の症状をある程度軽減し、または疾患もしくは病的状態と関連し、または疾患もしくは病的状態の原因である1つもしくは複数の生理的または生化学的パラメーターを、部分的にもしくは完全に正常に戻す。さらに、「治療有効量」という表現は、この量を投与されてこなかった相当する対象と比較して、下記の結果を有する量を表す。疾患、症候群、状態、愁訴、障害もしくは副作用の治療、治癒、予防もしくは消失が改善すること、またはさらに疾患、愁訴もしくは障害の進行の低減。「治療有効量」という表現はまた、正常な生理機能を増加させるのに有効な量を包含する。
【0301】
本発明による医薬組成物を投与するための各々の用量または投与量範囲は、上記の疾患、がんおよび/または線維性疾患の症状を減少させる所望の予防または治療効果を達成するために十分に高い。特定の用量レベル、任意の特定のヒトに対する投与の頻度および期間は、用いる特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的健康状態、性別、食事、投与時間および経路、排せつ率、薬物の組合せ、および特定の治療が適用される特定の疾患の重症度を含めた種々の要因によって決まることが理解される。周知の手段および方法を使用して、正確な用量は、通常の実験法として当業者が決定することができる。本明細書の上記の教示は、好都合である場合、式(I)の化合物を含む医薬組成物を制限せずに、妥当および適用可能である。
【0302】
医薬製剤は、投与単位毎に所定の量の活性成分を含む投与単位の形態で投与することができる。製剤中の予防的または治療的活性成分の濃度は、約0.1〜100重量%で変化し得る。好ましくは、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、用量単位毎に、概ね0.5〜1000mg、さらに好ましくは1〜700mg、最も好ましくは5〜100mgの用量で投与される。一般に、このような用量範囲は、全体的な毎日の組込みに適している。他の用語において、1日用量は、好ましくは概ね0.02〜100mg/kg体重である。しかし、各患者のための特定の用量は、本明細書に既に記載したような多種多様の要因によって(例えば、治療を受ける状態、投与方法、ならびに患者の年齢、体重および状態によって)決まる。好ましい投与単位製剤は、活性成分の上記で示したような1日用量もしくは分割用量、またはその相当する画分を含むものである。さらに、このタイプの医薬製剤は、製薬技術において一般に公知の方法を使用して調製することができる。
【0303】
本発明による化合物の治療有効量は、いくつかの要因(例えば、動物の年齢および体重、治療を必要とする正確な状態、状態の重症度、製剤の性質、および投与方法)を考慮することによって、治療を行う医師または獣医によって最終的に決定されなければならないが、新生物増殖、例えば、結腸癌または乳癌の治療のための本発明による化合物の有効量は一般に、1日当たり0.1〜100mg/kgレシピエント(哺乳動物)の体重の範囲、特に典型的には1日当たり1〜10mg/kg体重の範囲である。したがって、70kgの体重の成体哺乳動物についての1日当たりの実際の量は、通常70〜700mgであり、この量は、1日当たりの単回用量として、または通常、総1日用量が同じであるように、1日当たりの一連の分割用量(例えば、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つなど)で投与することができる。塩もしくは溶媒和物の、またはその生理機能的誘導体の有効量は、それ自体は本発明による化合物の有効量の画分として決定することができる。同様の用量は、上記の他の状態の治療に適していることが想定できる。
【0304】
本発明の医薬組成物は、ヒトおよび獣医学における医薬品として用いることができる。本発明によれば、式(I)の化合物および/またはその生理学的塩は、キナーゼ活性によってもたらされ、媒介され、かつ/または波及される疾患の予防的もしくは治療的処置および/またはモニタリングに適している。疾患は、がん、腫瘍増殖、転移性増殖、線維症、再狭窄、HIV感染症、神経変性障害、アテローム性動脈硬化症、創傷治癒、血管新生、心臓血管系、骨、CNSおよび/またはPNSの炎症および障害の群から選択されることが特に好ましい。化合物の宿主は、本発明による保護の現行の範囲に含まれることを理解すべきである。
【0305】
腫瘍および/またはがん疾患の治療および/またはモニタリングが特に好ましい。腫瘍は好ましくは、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭、首、食道、子宮頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、尿生殖路、リンパ系、喉頭および/または肺の腫瘍の群から選択される。
【0306】
腫瘍はさらに好ましくは、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓がん、神経膠芽腫、結腸癌および乳癌の群から選択される。さらに、血液および免疫系の腫瘍の治療および/またはモニタリング、さらに好ましくは、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および/または慢性リンパ性白血病の群から選択される腫瘍の治療および/またはモニタリングが好ましい。このような腫瘍はまた、本発明の意味においてがんと命名することができる。
【0307】
本発明のより好ましい実施形態において、上記の腫瘍は、固形腫瘍である。
【0308】
本発明の別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、レトロウイルス性疾患の予防的もしくは治療的処置および/またはモニタリング、あるいは各々、レトロウイルス性疾患、好ましくはレトロウイルス免疫疾患、さらに好ましくはHIV感染症の予防的もしくは治療的処置および/またはモニタリングのための医薬の製造のために適用される。薬剤を投与して、感染症の可能性を減少させ、または哺乳動物のレトロウイルスによる感染および疾患の発症を予め予防し、または感染病原体によってもたらされる疾患を治療することができる。特に、ウイルス内部移行の後半段階を、減少させ、かつ/または予防することができる。ウイルスのそれに続く伝播が厳密に減少し、または完全に不活性化されるように、単一のウイルスを代表するものの、例えば、創傷への浸潤後に、感染の可能性を減少させ、またはレトロウイルスによる感染を予防することが予防接種の意図である。患者の感染が既に所与である場合、体内に存在するレトロウイルスを不活性化するために、またはその伝播を阻止するために、治療のための投与が行われる。多数のレトロウイルス性疾患、特に、HIVによってもたらされるAIDSは、本発明の化合物を適用することによって首尾よく抑制することができる。
【0309】
本発明によるキノリン化合物はまた、アテローム性動脈硬化症、血管形成術治療または外科的切開または物理的外傷と関連する心血管疾患、好ましくは、うっ血性心不全、拡張型心筋症、心筋炎または血管狭窄症;線維症および/または硬化症と関連する腎臓疾患(全ての病因の糸球体腎炎、糖尿病性腎症、および(高血圧症、薬物曝露の合併症を含めた)全ての原因の間質性腎線維症、HIVに関連する腎症、移植腎症、慢性尿管閉塞を含めた);過剰な瘢痕および進行性硬化症と関連する肝疾患(全ての病因による肝硬変、感染症に起因する胆管の障害および肝機能不全(肝炎ウイルスまたは寄生虫など)を含めた);ガス交換または空気を効率的に肺に入れ、肺から出す能力の結果としての喪失を伴う肺線維症と関連する症候群(成人呼吸促迫症候群、特発性肺線維症、または感染病原体もしくは毒物による肺線維症、または自己免疫疾患を含めた);慢性もしくは持続性の性質の膠原血管障害(進行性全身性硬化症、多発性筋炎、強皮症、皮膚筋炎、筋膜炎(fascists)またはレイノー症候群または関節炎状態、好ましくは、関節リウマチを含めた);線維増殖性状態と関連する眼疾患(任意の原因の増殖性硝子体網膜症、または眼の手術(網膜復位術、白内障摘出術もしくは任意の種類のドレナージ手順など)と関連する線維症を含めた);外傷または手術創からもたらされる創傷治癒の間に起こる真皮における過剰または肥厚性瘢痕形成;慢性炎症と関連する消化管の障害、好ましくは、クローン病または潰瘍性大腸炎、または外傷もしくは手術創の結果としての癒着形成、ポリープ症、またはポリープ手術後の状態;子宮内膜症、卵巣疾患、腹膜透析または手術創と関連する腹膜の慢性瘢痕;TGF−β産生またはTGF−βへの増強した感受性によって特徴付けられる神経学的状態(外傷後状態または低酸素性傷害、アルツハイマー病およびパーキンソン病を含めた);ならびに移動性を妨害し、または疼痛を生じるのに十分な瘢痕を伴う関節の疾患(物理的外傷または外科手術による外傷後の状態、骨関節炎および関節リウマチを含めた)の群から選択される疾患に対して有用である。
【0310】
本発明によるキノリン化合物はまた、肺機能の改善の恩恵を受ける疾患との関連で有用であり、疾患は、気腫、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、肺水腫、嚢胞性線維症、閉塞性肺疾患、急性呼吸器不全症候群、喘息、肺の放射線誘発(inducted)傷害、感染性の原因、吸入した毒素または循環している外来性毒素、加齢、および肺機能障害の遺伝的素因からもたらされる肺傷害の群から選択される。
【0311】
疾患が炎症促進反応、線維増殖性反応または両方から選択される場合、本発明によるキノリン化合物はまた有用である。好ましくは、前記炎症促進反応は、多発性硬化症、IBD、関節リウマチ、リウマチ性脊椎炎、骨関節炎、痛風性関節炎、他の関節炎状態、敗血症、敗血症性ショック、内毒素ショック、グラム陰性敗血症、毒素ショック症候群、喘息、成人呼吸促迫症候群、脳卒中、再潅流傷害、CNS傷害、乾癬、再狭窄、脳マラリア、慢性肺炎症性疾患、ケイ肺症、肺肉腫(pulmonary sarcosis)、骨吸収疾患、移植片対宿主反応、クローン病、潰瘍性大腸炎またはピレシス(pyresis)である。
【0312】
別の好ましい態様において、前記線維増殖性反応は、糸球体腎炎;糖尿病性腎症;間質性腎線維症;薬物曝露の合併症からもたらされる腎線維症;HIVに関連する腎症;移植腎症;全ての病因による肝硬変;胆管の障害;感染症に起因する肝機能不全;肺線維症;成人呼吸促迫症候群;慢性閉塞性肺疾患;特発性肺線維症;急性肺傷害;感染病原体または中毒物質による肺線維症;うっ血性心不全;拡張型心筋症;心筋炎;血管狭窄症;進行性全身性硬化症;多発性筋炎;強皮症;皮膚筋炎;筋膜炎;レイノー症候群、関節リウマチ;増殖性硝子体網膜症;ならびに外傷または手術創からもたらされる創傷治癒の間の眼と関連する線維症の群から選択される。前記線維増殖性反応はまた、腎機能異常、血管障害、線維症、自己免疫障害、眼疾患、過剰な瘢痕、神経学的状態、骨髄線維症、組織の肥厚化、鼻ポリープ、ポリープ、肝硬変または骨粗鬆症と関連することができる。本明細書において、前記腎機能異常は、特に、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、間質性腎線維症、シクロスポリンを投与されている臓器移植患者における腎線維症、およびHIVに関連する腎症であり、前記血管障害は、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、強皮症、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、限局性強皮症またはレイノー症候群であり、前記線維症は、成人呼吸促迫症候群、特発性肺線維症、間質性肺線維症、心臓線維症、ケロイド形成または肥厚性瘢痕と関連し、前記自己免疫障害は、全身性エリテマトーデス、強皮症、または関節リウマチであり、前記眼疾患は、網膜剥離、白内障、または緑内障であり、前記神経学的状態は、CNS傷害、アルツハイマー病またはパーキンソン病である。
【0313】
本発明はまた、キナーゼ活性によってもたらされ、媒介され、かつ/または波及される疾患の予防的もしくは治療的処置および/またはモニタリングのための、式(I)による化合物および/またはその生理学的に許容される塩の使用に関する。さらに、本発明は、キナーゼ活性によってもたらされ、媒介され、かつ/または波及される疾患の予防的もしくは治療的処置および/またはモニタリングのための医薬品の生成のための、式(I)による化合物および/またはその生理学的に許容される塩の使用に関する。式(I)の化合物および/またはその生理学的に許容される塩は、さらなる医薬品活性成分の調製のために中間体としてさらに用いることができる。医薬品は好ましくは、非化学的態様で、例えば、活性成分と、少なくとも1種の固体、流動体および/もしくは半流動体の担体または添加剤と、ならびに任意選択で単一もしくはさらに他の活性物質とを、適当な剤形で合わせることによって調製される。
【0314】
本発明の別の実施形態において、式(I)による化合物および/またはその生理学的に許容される塩は、固形腫瘍の予防的もしくは治療的処置および/またはモニタリングのための組合せ調製物の生成のために使用され、組合せ調製物は、(1)エストロゲン受容体モジュレーター、(2)アンドロゲン受容体モジュレーター、(3)レチノイド受容体モジュレーター、(4)細胞毒性剤、(5)抗増殖剤、(6)プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、(7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、(8)HIVプロテアーゼ阻害剤、(9)リバーストランスクリプターゼ阻害剤および(10)さらなる血管新生阻害剤の群から選択される、有効量の活性成分を含む。
【0315】
本発明による式(I)の化合物は、疾患の発症の前または後に、治療として1回または数回投与することができる。本発明の使用の上記の医療品は、治療的処置のために特に使用される。治療的に意味のある作用は、自己免疫疾患の1つもしくは複数の症状をある程度軽減し、あるいは疾患もしくは病的状態と関連し、または疾患もしくは病的状態の原因である1つもしくは複数の生理的または生化学的パラメーターを、部分的にまたは完全に正常に戻す。モニタリングは、治療の1種と考えられるが、ただし、化合物は、例えば、反応を増強し、かつ病原体および/または疾患の症状を完全に根絶するために、明確な間隔で投与される。同一の化合物または異なる化合物を適用することができる。医薬品をまた使用して、疾患が進展する可能性を減少させ、または増加したキナーゼ活性と関連する疾患の発症を事前に予防さえし、または発生し、連続する症状を治療することができる。本発明によって関連する疾患は、好ましくはがんおよび/または線維性疾患である。本発明の意味において、対象が、上記の生理的または病的状態についての任意の前提条件(家族性の傾向、遺伝的欠陥、またはこれまでに経験した疾患など)を有する場合、予防的処置が望ましい。
【0316】
医薬組成物に関する本明細書の上記の教示は、前記疾患の予防および治療のための医薬品および/または組合せ調製物の生成のための、式(I)による化合物およびこれらの塩の使用に限定せずに、妥当および適用可能である。
【0317】
本発明の別の目的は、キナーゼ活性によってもたらされ、媒介され、かつ/または波及される疾患を治療する方法を提供することであり、有効量の少なくとも1種の式(I)による化合物および/またはその生理学的に許容される塩は、このような治療を必要としている哺乳動物に投与される。好ましい治療は、経口または非経口投与である。式(I)の化合物による、存在する前提条件に基づいた、がん、腫瘍増殖、転移性増殖、線維症、再狭窄、HIV感染症、神経変性障害、アテローム性動脈硬化症、創傷治癒、血管新生、心臓血管系、骨、CNSおよび/またはPNSの炎症および障害を有する患者、またはこのような疾患もしくは障害を進展させる危険性を有するヒトの治療は、これらの個人において体全体の健康状態を改善し、症状を回復させる。本発明の方法は、固形腫瘍を治療するために特に適している。
【0318】
この方法は、(1)エストロゲン受容体モジュレーター、(2)アンドロゲン受容体モジュレーター、(3)レチノイド受容体モジュレーター、(4)細胞毒性剤、(5)抗増殖剤、(6)プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、(7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、(8)HIVプロテアーゼ阻害剤、(9)リバーストランスクリプターゼ阻害剤および(10)さらなる血管新生阻害剤の群から選択される有効量の別の活性成分を、有効量の式(I)の化合物および/またはその生理学的に許容される塩と組み合わせて投与する態様で特に行われる。
【0319】
方法の好ましい実施形態において、本発明の化合物による治療を、放射線療法と合わせる。治療有効量の式(I)による化合物を、放射線療法、および上記で定義されるような群(1)から(10)の別の化合物と組み合わせて投与することがより好ましい。放射線療法と組み合わせた阻害性VEGFの相乗効果は、既に記載されてきた。
【0320】
本発明の上記の教示およびその実施形態は、好都合である場合、治療方法に限定せずに、妥当および適用可能である。
【0321】
本発明の範囲内の、新規な式(I)のヘタリールアミノキノリン化合物を、初めて提供する。本発明の化合物は、キナーゼ、特に、TGF−β受容体キナーゼなどのATP消費タンパク質を強力および/または選択的に標的とする。式(I)の化合物およびその誘導体は、高い特異性および安定性、低い製造コストならびに便利な取扱いによって特徴付けられる。これらの特徴は、再現性のある作用(交差反応性の欠如が含まれる)、ならびにそれらの適合する標的構造との確実および安全な相互作用のためのベースを形成する。本発明はまた、キナーゼ、特に、TGF−β受容体キナーゼのシグナルカスケードの阻害、レギュレーションおよび/またはモデュレーションにおける本発明のヘタリールアミノキノリン誘導体(研究および/または診断手段として有利に適用することができる)の使用を含む。
【0322】
さらに、前記化合物を含有する医薬品および医薬組成物、ならびにキナーゼが媒介する状態を治療するための前記化合物の使用は、ヒトおよび動物において症状の直接的および即時の減少をもたらす、有望な広範囲の治療のための新規なアプローチである。その影響は、単独で、または他の抗がん、抗炎症性もしくは抗線維性治療と組み合わせて、がん、炎症および/または線維性疾患などの重症の疾患を効率的に抑制するのに特に役に立つ。上記の臨床像に加えて、式(I)の化合物、これらの塩、異性体、互変異性体、鏡像異性形態、ジアステレオマー、ラセミ化合物、誘導体、プロドラッグおよび/または代謝物はまた、TGF−βキナーゼシグナル伝達から生じ、特に阻害される細胞増殖および細胞移動と関連する任意の疾病の診断および治療に有用である。低分子量の阻害剤は、それら自体で、および/または任意の治療方法(手術、免疫療法、放射線療法および/または化学療法など)の有効性の診断のための物理的測定と組み合わせて適用される。後者は、モノおよび/またはオンターゲット/オフターゲット併用療法として任意のNME(すなわち、NCEおよび/またはNBE)による標的療法を意味する。
【0323】
ATPからタンパク質にリン酸基を移行することによって細胞過程をレギュレートする、酵素のそれらの驚くほど強力および/または選択的な阻害によって、本発明の化合物は、同等またはさらに優れた所望の生物学的作用を依然として達成する一方で、従来技術の他のより強力または選択的でない阻害剤と比較してより低い用量で有利に投与することができる。さらに、このような用量の減少は、有利に医薬品の有害作用がより少ないこと、または有害作用がないことをもたらし得る。さらに、本発明の化合物の高い阻害選択性は、適用される用量に関わらず、それ自体で望ましくない副作用の減少となり得る。
【0324】
本明細書において引用した全ての参考文献は、本発明の開示において参照により組み込まれている。
【0325】
本発明は、このようなものは当然ながら変化し得るため、本明細書に記載されている特定の化合物、医薬組成物、使用および方法に限定されないことを理解すべきである。本明細書において使用される用語法は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、添付の特許請求の範囲のみによって定義される本発明の範囲を限定することを意図しないことをまた理解すべきである。添付の特許請求の範囲を含めて本明細書において使用する場合、「a」、「an」および「the」などの単語の単数形には、文脈によって明らかにそれ以外のことの指示がない限り、それらの相当する複数の参照対象が含まれる。したがって、例えば、「1つの化合物」への言及には、単一またはいくつかの異なる化合物が含まれ、「1つの方法」への言及には、当業者などに公知の同等のステップおよび方法への言及が含まれる。別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。
【0326】
本発明において必須の技術を、本明細書において詳細に記載する。詳細に記載しない他の技術は、当業者に周知である公知の標準的方法に相当し、または技術は、引用文献、特許出願または標準的な文献においてより詳細に記載されている。
【0327】
本明細書に記載されているものと同様または同等の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な例を下記に記載する。下記の例は例示として提供し、限定をするためには提供しない。実施例において、(実用的である時はいつも)汚染活性が存在しない標準的な試薬および緩衝液を使用する。例は、明示的に示した特徴の組合せに限定されないと特に解釈されるが、例示した特徴は、本発明の技術的問題が解決される場合、再び制限なく合わせてもよい。
例1
TGF−β受容体Iキナーゼ阻害剤の試験のための細胞アッセイ
一例として、阻害剤がTGF−βが媒介する増殖阻害を排除する能力を試験した。肺上皮細胞系Mv1Luの細胞を、96ウェルマイクロタイタープレート中で確定した細胞密度で蒔き、標準条件下で一晩培養した。翌日、培地を0.5%のFCSおよび1ng/mlのTGF−βを含む培地で置き換え、一般に5倍のステップでの希釈系列の形態の試験物質を確定した濃度で加えた。溶媒DMSOの濃度は、0.5%で一定であった。さらに2日後、細胞のクリスタルバイオレット染色を行った。固定細胞からクリスタルバイオレットを抽出した後、550nmでの分光光度法で吸収を測定した。これは、培養の間の、存在する接着細胞の定量的測度、したがって細胞増殖の定量的測度として使用することができた。
例2
TGF−βが媒介する作用の阻害についての阻害剤の有効性を決定するためのインビトロの(酵素)アッセイ
キナーゼアッセイを、384ウェルフラッシュプレートアッセイとして行った。31.2nMのGST−ALK5、439nMのGST−SMAD2および3mMのATP(0.3μCiの33P−ATP/ウェル)を、試験物質(5〜10つの濃度)を伴わず、または伴い、35μlの総容量(20mMのHEPES、10mMのMgCl、5mMのMnCl、1mMのDTT、0.1%のBSA、pH7.4)で30℃にて45分間インキュベートした。200mMのEDTA溶液(25μl)を使用して反応を停止させ、室温で30分後に吸引濾過を行い、ウェルを100μlの0.9%NaCl溶液で3回洗浄した。放射能をTopCountで測定した。IC50値を、RS1を使用して計算した。上記および下記で、全ての温度は、℃で表した。
【0328】
下記の実施例において、「通常の後処理」とは、以下を意味する。水を必要に応じて加え、最終生成物の構成によって、必要に応じてpHを2〜10の値に調節し、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出し、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させ、生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィーおよび/または結晶化によって精製した。R値を、シリカゲル上で決定した。溶離液は、酢酸エチル/メタノール9:1であった。
保持時間R[分]決定は、LC(システム1)によって行った。
カラム:Chromolith SpeedROD RP18e、50×4.6mm
勾配:A:B=96:4から0:100
流量:2.4ml/分
溶離液A:水+0.05%ギ酸
溶離液B:アセトニトリル+0.04%ギ酸
波長:220nm
代わりに、保持時間R[分]決定は、LC(システム2)によって行った。
カラム:Chromolith SpeedROD RP18e、50×4.6mm
勾配:2.6分、A:B=95:5から0:100
流量:2.4ml/分
溶離液A:水+0.1%のTFA(トリフルオロ酢酸(trifluorooacetic acid))、
溶離液B:アセトニトリル+0.1%のTFA
波長:220nm
例3
N−(2−アセチル−フェニル)−5−クロロ−2−フルオロ−ベンズアミド(M291.71)の合成
【0329】
【化37】

【0330】
70gの2−アミノアセトフェノンを、2.5lのTHF中で周囲温度にて、177mlのN−エチルジイソプロピルアミンの存在下で、100gの5−クロロ(cloro)−2−フルオロ−ベンゾイルクロリドと反応させ、一方温度を20から34℃に上昇させ、白色の沈殿物が現れた。さらに1晩後、懸濁液を濾過し、濾液を濃縮した。THF中の溶液を、80℃にて水でゆっくりと希釈した。1晩後、周囲温度で沈殿物を濾過し、水で洗浄した。乾燥後、ピンク色がかった針状物として149gの生成物を得た(LC−MSシステム1においてR約2.49分および正確なM+H+292)。
例4
2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−1H−キノリン−4−オン(M273.70)の合成
【0331】
【化38】

【0332】
4lのtert−BuOHに懸濁させた148gのN−(2−アセチル−フェニル)−5−クロロ−2−フルオロ−ベンズアミド(参照、例3)を、いくつかに分けて171gのKOButと共に充填した。赤色の溶液を75℃で20時間加熱し、茶色っぽくなった。約1lに濃縮した後、スラリーを5lの水/氷にゆっくりと注ぎ、pHを濃HClで1〜2に調節し、黄色のスラリーを生成させた。30分後、沈殿物を濾過し、水および2−PrOHで洗浄した。湿った沈殿物をディジェレート(digerated)し、3lのMTBエーテルと共に還流させた。濾過後、96gの生成物を得た(LC−MSシステム1においてM+H+274)。
例5
4−ブロモ−2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン(M336.59)の合成
【0333】
【化39】

【0334】
105gのPOBrを、周囲温度で3lのNMPに溶解した100gの2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−1H−キノリン−4−オン(参照、例4)にゆっくりと加えた。温度を40℃未満に維持した。溶液は黄色から赤色に変化した。30分後、反応物を95Cに3時間加熱した。1時間後に溶液は既に緑色だった。一晩周囲温度で静置し、バッチを5lの水/氷に希釈し、さらに10分間撹拌した。ターコイズ色の懸濁液が形成され、30分後に色がオリーブグリーン色に変化した。濾過、水による洗液および乾燥後、122gの白色の固体を得た(LC−MSシステム1においてR約2.53分、およびM+H+約338の正確な質量)。
例6
[2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−(3−ニトロ−ピリジン−4−イル)−アミン(M394.80)の合成
【0335】
【化40】

【0336】
500mlのtert−アミルアルコール中の10gの4−ブロモ−2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン(参照、例5;M336.59)および4.13gの3−ニトロ−4−アミノピリジンを、アルゴン下で、12.6gのKPOで調節した塩基条件下にて、117℃の外部温度(100℃の内部温度)で6.5時間、272mgのPd(dba)(ABCR)および0.69gのXanthphos(ABCR)で処理した。酢酸エチル抽出物による後処理、5%KHSO水溶液(pH2)および5%NaHCO水溶液による洗浄、NaSOによる乾燥、濾過、およびメタノールによる洗液の後で、6.6gの黄色の粉末を得た(ペトロールエーテル/EE2:1中のシリカ上のTLCにおいて、正確な質量M+H+395およびR約2.67分およびR0.44)。
例7
−[2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−ピリジン−3,4−ジアミン(M364,81)の合成
【0337】
【化41】

【0338】
150mlのTHFに溶解した13.4gの[2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−(3−ニトロ−ピリジン−4−イル)−アミン(参照、例6)を水素付加し、濾過および蒸発後に11.8gのN−[2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−ピリジン−3,4−ジアミンを泡として得て、それをエーテル、次いでエーテル/ペトロールエーテルでディジェレートし、次いで濾過し、乾燥させ、正確な質量および85%HPLC純度を有する9.58gの赤茶色の固体材料を得た。生成物を含有する母液からの1.47gのさらなる分量を、40ml/分にてCHCl中の0〜10%MeOHの20分の勾配で、40gのAnalogixシリカカラム上のCompanion機器上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。モニタリングを、254nmで行った。566mgの正確な付加生成物を単離した。
例8
−[2−(2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−ピリジン−3,4−ジアミン(M330.37)の合成
【0339】
【化42】

【0340】
60mlのTHFに溶解した353mgのN−[2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−ピリジン−3,4−ジアミン(参照、例7)、および330mgのトリエチルアミンを、正常圧および周囲の室温にて1.8gのPd−C(52%水)の上で一晩水素付加し、濾過、蒸発およびエーテルによるそれに続くディジェレーション(digeration)の後で、238mgの黄色の粉末生成物を得た(LC−MSシステム1において正確な質量M+H+331および>90%HPLC純度、R約1.23分)。CHCl/MeOH1:1中のシリカ上のTLCは、R約0.21で1つの生成物を示した。
例9
2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−4−(2−メトキシメチル−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−キノリン(M418.86)の合成
【0341】
【化43】

【0342】
−[2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−ピリジン−3,4−ジアミン(参照、例7)をメトキシ酢酸でアシル化し、酢酸または濃HClなどで酸処理した。後処理後、イミダゾピリジンを単離した(LC−MSシステム1においてR約1.93分、およびLC−MSシステム1においてM+H+419の正確な質量)。
例10
−[2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−ピリジン−3,4−ジアミン尿素(M390.8)の合成
−[2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−ピリジン−3,4−ジアミン(参照、例7)を、THF中にてCDIおよびDIPEAで周囲温度にて一晩処理した。後処理後、尿素誘導体を単離した(LC−MSシステム1において正確な質量M+H+391およびR約1.78分)。
例11
1−[2−(2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−1,3−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−2−オン(M356.36)の合成
【0343】
【化44】

【0344】
例10の尿素化合物をメタノール中のPd/C5%上で水素付加し、脱クロロ(des−chloro)化合物を得た(LC−MSシステム1において正確な質量M+H+357およびR約1.58分)。
例12
[2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン−4−イル]−(3−メトキシ−ピリジン−4−イル)−アミン(M379.82)の合成
【0345】
【化45】

【0346】
25mlのジオキサン中の250mgの4−ブロモ−2−(5−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−キノリン(参照、例5;M336.59)および94mgの3−メトキシ−4−アミノピリジン(Tyger Scientific)を、アルゴン下で、485mgのCsCOで調節した塩基条件下にて、85℃の内部温度で一晩、14mgのPd(dba)(Aldrich)および22mgのXanthphos(ABCR)で処理した。後処理を、GeminiカラムAxia RP18−100×30mm/10μm−110A上のRP HPLCによって行った。30ml/分にて緩衝液A(=水中0.3%TFA)中の1〜99%の緩衝液B(=CHCN中0.3%TFA)の30分の勾配によって溶出を行い、215nmでモニターした。乾燥後、プールした材料によって、228mgの生成物(LC−MSシステム2において正確な質量M+H+380およびR約1.74分)を得た。
例13
N−[2−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−キノリン−4−イル]−ピリミジン−4,6−ジアミンの合成
上記の例を参照すると、化合物N−[2−(6−メチル−ピリジン−2−イル)−キノリン−4−イル]−ピリミジン−4,6−ジアミンを、下記のスキームによって同じように得た。
【0347】
【化46】

【0348】
例14
医薬調製物
例A:注入バイアル
3lの再蒸留水中の100gの本発明による活性成分および5gのリン酸水素二ナトリウムの溶液を、2Nの塩酸を使用してpH6.5に調節し、無菌濾過し、注入バイアルに移し、無菌状態下にて凍結乾燥し、無菌状態下にて密封した。各注入バイアルは、5mgの活性成分を含有した。
例B:坐剤
20gの本発明による活性成分の混合物を、100gの大豆レシチンおよび1400gのカカオバターと共に溶融し、型中に注ぎ、冷却した。各坐剤は、20mgの活性成分を含有した。
例C:溶液剤
溶液剤を、940mlの再蒸留水中の1gの本発明による活性成分、9.38gのNaHPO・2H2O、28.48gのNaHPO・12HOおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから調製した。pHを6.8に調節し、溶液剤を1lにし、照射により無菌化した。この溶液剤は、点眼薬の形態で使用することができた。
例D:軟膏剤
500mgの本発明による活性成分を、無菌条件下にて99.5gのワセリンと混合した。
例E:錠剤
1kgの本発明による活性成分、4kgのラクトース、1.2kgのバレイショデンプン、0.2kgのタルクおよび0.1kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を圧縮し、各錠剤が10mgの活性成分を含有するように従来の態様で錠剤を得た。
例F:コーティング錠剤
錠剤を例Eと同じように圧縮し、従来の態様でスクロース、バレイショデンプン、タルク、トラガントおよび染料のコーティングで引き続いてコーティングした。
例G:カプセル剤
2kgの本発明による活性成分を、各カプセル剤が20mgの活性成分を含有するように、従来の態様で硬質ゼラチンカプセル剤中に導入した。
例H:アンプル剤
1kgの本発明による活性成分の再蒸留水溶液(60l)を無菌濾過し、アンプル剤に写し、無菌状態下にて凍結乾燥し、無菌状態下にて密封した。各アンプル剤は、10mgの活性成分を含有した。
例I:吸入スプレー
14gの本発明による活性成分を、10lの等張のNaCl溶液に溶解し、溶液を市販のポンプ機序を有するスプレー容器に移した。溶液は口または鼻にスプレーすることができた。1回のスプレーのショット(約0.1ml)は、約0.14mgの用量に相当した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、および/またはその生理学的に許容される塩
【化1】

[式中、
Xは、N、−N(CO)−、S、O、Alkまたは−N(Alk)−を表し、
Zは、CHまたはNを表し、
Hetは、
【化2】

を表し、
W1は、NまたはCR7を表し、
W2は、NまたはCR6を表し、
W3は、NまたはCR5を表し、
W5は、NまたはCR9を表し、
W6は、NまたはCR8を表し、
R1は、H、A、Het、Het、Het、Ar、−COA、−CO−Het、Alk−COOYまたはCycを表し、
R5は、H、A、Hal、OY、CN、−Alk−OY、COOY、−CO−NYY、SA、SOA、NYY、−OAlk−OYY、NO、−NH−Alk−COOY、−NH−CO−Alk−OY、−NH−CO−Alk−OCOY、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−CO−NYY、−NH−CO−Het、−NH−SO−NYY、−NH−SO−(NYY)、−NH−SOH、−NH−SO−Alk−Y、−NH−Het、−NH−R2、−CO−NH−Alk−NYY、−CO−R2、−CO−NY−R2、−OCO−R2、−SO−R2、−SO−NY−R2またはHetを表し、
R1、R5は一緒になって、−CH=CH−、−C(Y)=N−、−C(Alk−NYY)=N−、−C(Alk−OY)=N−、−C(Het)=N−、−CO−N(COOY)−、−C(CO−R2)=N−、−CH(CO−Het)−、−(CO)−N(Y)−、−CO−NH−、−NH−CO−、−NH−COA−、−SO−NH−、−NH−SO−または−NH−SO−N(SO)−を表し、
R6は、H、A、Hal、OY、CN、−Alk−OY、COOY、−CO−NYYNYY、−NH−Alk−NYY、−NH−COA、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−CO−Alk−NH−COOA、−NH−SO−NYY、−NH−HetまたはHetを表し、
R5、R6は一緒になって、=CH−C(Y)=C(Y)−CH=、−CH=CH−NH−または−N=CH−CH=CH−を表し、
R7、R8、R9は、互いに独立に、H、A、Hal、OY、NYY、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−HetまたはHetを表し、
R2は、Cyc、5〜8個のC原子を有する単環式カルボアリール、または2〜7個のC原子ならびに1〜4個のN、Oおよび/もしくはS原子を有する単環式ヘテロアリールを表し、これらの各々は、A、Hal、CN、NYY、OY、=O、Cyc、Alk−Arの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよく、
R3、R4は、互いに独立に、H、A、Hal、CN、NYY、OY、−OAlk−NYY、−OAlk−OY、Hetを表し、または一緒になって、−OAlk−O−を表し、
Yは、H、A、HalまたはOAを表し、
Aは、1〜10個のC原子を有する枝分かれしていないまたは分岐状のアルキルを表し、1〜7個のH原子は、Halで置き換えられていてもよく、
Cycは、3〜7個のC原子を有するシクロアルキルを表し、1〜4個のH原子は、互いに独立に、A、Halおよび/またはOYで置き換えられていてもよく、
Alkは、1〜6個のC原子を有するアルキレンを表し、1〜4個のH原子は、互いに独立に、Halおよび/またはCNで置き換えられていてもよく、
Arは、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、−Alk−Het、−OAlk−Het、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、6〜10個のC原子を有する飽和、不飽和または芳香族の単環式または二環式の炭素環を表し、
Hetは、−NH−Het、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、2〜7個のC原子および1〜4個のN原子を有する単環式ヘテロアリールを表し、
Hetは、R2、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、2〜9個のC原子および1〜4個のN原子を有する二環式ヘテロアリールを表し、
Hetは、A、Hal、OY、COOY、−Alk−OY、−Alk−SO、NYY、−CO−NYY、−SONYY、CNの群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい、2〜7個のC原子ならびに1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する飽和単環式複素環を表し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを表す]。
【請求項2】
Xが、Nを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zが、CHを表す、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Hetが、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、ピリダジニルまたはピラジルを表し、これらの各々は、R5、R6、R7、R8および/またはR9で置換されていてもよい、請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
R5が、H、A、OA、CN、−Alk−OY、−CO−NYY、SA、NYY、−NH−CO−Alk−OY、−NH−CO−Alk−OCOY、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−CO−NYY、−NH−CO−Het、−NH−SO−NYY、−CO−NH−Alk−NYYまたはHetを表し、
あるいは
R1、R5が一緒になって、−CH=CH−、−C(Y)=N−、−C(Alk−OY)=N−、−CO−N(COOY)−、−CO−NH−または−SO−NH−を表す、請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
R6が、H、A、OA、NYY、−NH−Alk−NYY、−NH−COAまたは−NH−CO−Alk−NYYを表し、
あるいは
R5、R6が一緒になって、=CH−CH=C(Y)−CH=または−N=CH−CH=CH−を表す、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
R2が、フェニルまたはピリジルを表し、これらの各々は、F、Cl、Br、CH、CF、CN、OCHの群から選択される少なくとも1個の置換基で一置換または二置換されていてもよい、請求項1から6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
R1、R3、R4、R7、R8、R9が、互いに独立に、Hを表す、請求項1から7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

の群から選択される、請求項1から8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
サブ式(II)を有する、請求項1に記載の化合物、および/またはその生理学的に許容される塩
【化3】

[式中、
【化4】

は、R5で置換されていてもよいピリジル(W3がCR5である場合)、ピリミジニルまたはトリアジニルを表し、
R1は、Hを表し、
R5は、H、A、OA、CN、−Alk−OY、−CO−NYY、SA、NYY、−NH−CO−Alk−OY、−NH−CO−Alk−OCOY、−NH−CO−Alk−NYY、−NH−CO−NYY、−NH−CO−Het、−NH−SO−NYY、−CO−NH−Alk−NYYまたはHetを表し、
R1、R5は一緒になって、−CH=CH−、−C(Y)=N−、−C(Alk−OY)=N−、−CO−N(COOY)−、−CO−NH−または−SO−NH−を表し、
R6は、H、A、OA、NYY、−NH−Alk−NYY、−NH−COAまたは−NH−CO−Alk−NYYを表し、
R5、R6は一緒になって、=CH−CH=C(Y)−CH=または−N=CH−CH=CH−を表し、
R7、R9は、互いに独立に、Hを表し(W1がCR7であり、またはW5がCR9である場合)、
R2は、フェニルまたはピリジルを表し、これらの各々は、F、Cl、Br、CH、CF、CN、OCHの群から選択される少なくとも1個の置換基で一置換または二置換されていてもよく、
Yは、H、AまたはOAを表し、
Aは、1〜4個のC原子を有する枝分かれしていないまたは分岐状のアルキルを表し、1〜5個のH原子は、Fおよび/またはClで置き換えられていてもよく、
Alkは、1〜3個のC原子を有するアルキレンを表し、
Hetは、A、Hal、COOYまたはNYYで一置換されていてもよい、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、ピペリドン、モルホリノンまたはピロリドンを表し、
Halは、F、ClまたはBrを表す]。
【請求項11】
(a)式(IV)の化合物
【化5】

(式中、Z、R2、R3、R4およびHalは、請求項1に記載の意味を有する)
と、式(V)の化合物
【化6】

(式中、X、R1およびHetは、請求項1に記載の意味を有し、ただし、R1とR5とが一緒になったものは、除外される)
とを反応させ、式(I)の化合物
【化7】

(式中、X、Z、R1、R2、R3、R4およびHetは、請求項1に記載の意味を有し、ただし、R1とR5とが一緒になったものは、除外される)
を得るステップと、
任意選択で、
(b)式(I)の化合物の塩基または酸をその塩に変換するステップと
を含む、式(I)の化合物を製造する方法。
【請求項12】
ATP消費タンパク質、好ましくはTGF−β受容体キナーゼおよび/またはALK5を阻害するための、請求項1から10のいずれかに記載の化合物および/またはその生理学的に許容される塩の使用。
【請求項13】
少なくとも1種の請求項1から10のいずれかに記載の化合物および/または生理学的に許容される塩を含む医薬品。
【請求項14】
薬学的に容認できるアジュバントと一緒に、活性成分として有効量の少なくとも1種の請求項1から10のいずれかに記載の化合物および/またはその生理学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項15】
がん、腫瘍増殖、転移性増殖、線維症、再狭窄、HIV感染症、神経変性障害、アテローム性動脈硬化症、創傷治癒、血管新生、心臓血管系、骨、CNSおよび/またはPNSの炎症および障害の群から選択される疾患の予防的もしくは治療的処置および/またはモニタリングにおける使用のための、請求項1から10のいずれかに記載の化合物および/またはその生理学的に許容される塩。

【公表番号】特表2013−510103(P2013−510103A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537312(P2012−537312)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006239
【国際公開番号】WO2011/054433
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】