説明

TRPA1の活性抑制剤、TRPA1の活性抑制方法および外用剤

【課題】TRPA1の活性抑制剤および皮膚に対する刺激性が低い外用剤の提供。
【解決手段】式(I):


(式中、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R4は酸素原子または硫黄原子を示す)で表される化合物を含有するTRPA1の活性抑制剤、ならびに前記活性抑制剤を含有する外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TRPA1の活性抑制剤、TRPA1の活性抑制方法および外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に直接適用される化粧料などの皮膚外用剤、皮膚に接触することがある頭髪外用剤などの外用剤に清涼化剤、パラベン類、アルカリ剤などが含まれている場合、使用者によっては、前記外用剤を用いたときに、皮膚に不快な刺激を感じることがある。
【0003】
例えば、前記パラベン類やアルカリ剤は、一過性受容体電位チャネルの1つであるTRPA1を活性化し、活性化されたTRPA1を介して不快な刺激を引き起こすことが、本発明者らによって見出されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
しかしながら、近年、使用者の安全意識の高まりから、このような不快な刺激を与えないか、または不快な刺激が少ない外用剤が好まれる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−79528号公報
【特許文献2】特開2009−82053号公報
【特許文献3】特開2009−225733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、TRPA1の活性を効果的に抑制するTRPA1の活性抑制剤を提供することを目的とする。また、本発明は、TRPA1の活性を効果的に抑制するTRPA1の活性抑制方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、皮膚に対する不快な刺激が少ない外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、
(1)TRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R4は酸素原子または硫黄原子を示す)
で表される化合物を含有することを特徴とするTRPA1の活性抑制剤、
(2)TRPA1の活性を抑制する活性抑制方法であって、式(I):
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R4は酸素原子または硫黄原子を示す)
で表される化合物をTRPA1と接触させることを特徴とするTRPA1の活性抑制方法、ならびに
(3)TRPA1を活性化する成分が配合された外用剤であって、前記(1)に記載のTRPA1の活性抑制剤を含有することを特徴とする外用剤
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のTRPA1の活性抑制剤は、TRPA1の活性を効果的に抑制するという優れた効果を奏する。また、本発明のTRPA1の活性抑制方法は、TRPA1の活性を効果的に抑制するという優れた効果を奏する。さらに、本発明の外用剤は、皮膚に対する不快な刺激が少ないという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】試験例1において、試料の種類と抑制率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図2】試験例2において、試料と抑制率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.TRPA1の活性抑制剤
本発明のTRPA1の活性抑制剤(以下、「活性抑制剤」という)は、式(I):
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R4は酸素原子または硫黄原子を示す)
で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0017】
式(I)で表される化合物は、TRPA1アゴニストによるTRPA1の活性化を抑制してTRPA1の活性を抑制する。したがって、本発明の活性抑制剤は、前記式(I)で表される化合物を含有しているので、当該活性抑制剤をTRPA1と接触させることにより、TRPA1の活性を抑制することができる。
【0018】
式(I)において、R1は、水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基である。アルキル基の炭素数は、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、1以上であり、当該活性抑制剤をヒトに用いる場合において、ヒトの皮膚に対する十分な親和性を確保する観点から、4以下、好ましくは3以下である。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基が挙げられる。R1のなかでは、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させるとともに、当該活性抑制剤をヒトに用いる場合において、ヒトの皮膚に対する十分な親和性を確保する観点から、メチル基が好ましい。
【0019】
式(I)において、R2およびR3はそれぞれ独立して水酸基、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基である。アルキル基は、前記R1におけるアルキル基と同様である。R2およびR3のなかでは、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させるとともに、当該活性抑制剤をヒトに用いる場合において、ヒトの皮膚に対する十分な親和性を確保する観点から、メチル基が好ましい。
【0020】
式(I)において、R4は酸素原子または硫黄原子である。R4のなかでは、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させるとともに、当該活性抑制剤をヒトに用いる場合において、ヒトの皮膚に対する十分な親和性を確保する観点から、酸素原子であることが好ましい。
【0021】
式(I)で表される化合物のなかでは、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、R1、R2およびR3がメチル基であり、R4が酸素原子である1,8−シネオールが好ましい。
【0022】
式(I)で表される化合物は、例えば、ユーカリオイルを蒸留すること、ローリエ、ヨモギ、バジリコ、ニガヨモギ、ローズマリー、セージなどから得られる抽出物を蒸留することなどにより単離することができる。
【0023】
本発明の活性抑制剤における式(I)で表される化合物の含有量は、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、当該活性抑制剤をヒトに用いる場合において、ヒトの皮膚に対する十分な親和性を確保する観点から、100質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0024】
本発明の活性抑制剤は、本発明の目的が妨げられない範囲内で、例えば、水、pH調整剤、キレート化剤、安定化剤などの他の成分を含有していてもよい。なお、本発明の活性抑制剤が前記成分を含有する場合、本発明の目的が妨げられない範囲で、本発明の活性抑制剤中において、式(I)で表される化合物と前記成分とが複合体を形成していてもよい。
【0025】
前記TRPA1の活性としては、例えば、細胞におけるイオン流束の調節能、細胞における膜電位の調節能などが挙げられる。細胞におけるイオン流束の調節能としては、例えば、細胞外から細胞内への陽イオンの輸送能などが挙げられる。また、細胞における膜電位の調節能としては、例えば、電流の発生能などが挙げられる。これらの活性は、TRPA1アゴニストがTRPA1に結合して当該TRPA1が活性化することによって発現される。前記陽イオンとしては、例えば、カルシウムイオン、ナトリウムイオンなどが挙げられる。
【0026】
また、前記TRPA1アゴニストとしては、例えば、メントール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、アルカリ剤(例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、水酸化カリウムなど)、アリルイソチオシアネート、メチルパラベン、アリシン、イシリン、過酸化水素、ブラジキニン、アクロレイン、香油成分(例えば、シトラール、オイゲノール、シンナムアルデヒドなど)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0027】
前記TRPA1の活性に対する本発明の活性抑制剤の抑制作用は、例えば、TRPA1を発現する細胞(以下、「TRPA1発現細胞」という)内におけるカルシウムイオン濃度、前記TRPA1発現細胞内における電流などに基づいて評価することができる。
【0028】
TRPA1発現細胞内におけるカルシウムイオン濃度を用いる場合、前記抑制作用は、例えば、
(A1) TRPA1発現細胞と被験物質(活性抑制剤)とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内におけるカルシウムイオン濃度〔「カルシウムイオン濃度(A)」という〕を測定するステップ、
(A2) TRPA1発現細胞とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内におけるカルシウムイオン濃度〔「カルシウムイオン濃度(B)」という〕を測定するステップ、および
(A3) 前記ステップ(A1)で得られたカルシウムイオン濃度(A)と前記ステップ(A2)で得られたカルシウムイオン濃度(B)とを比較するステップ
を行なうことにより評価することができる(「評価法A」という)。前記ステップ(A3)において、カルシウムイオン濃度(B)と比べてカルシウムイオン濃度(A)が減少している場合、当該被験物質は、TRPA1の活性に対する抑制作用を有すると評価することができる。また、前記カルシウムイオン濃度(A)とカルシウムイオン濃度(B)との間の差が大きいほど、当該被験物質は、高い抑制作用を有すると評価することができる。
【0029】
前記カルシウムイオン濃度は、例えば、カルシウムキレート化剤に基づく蛍光試薬(以下、「蛍光カルシウム指示薬」ともいう)をTRPA1発現細胞に導入し、当該細胞内のカルシウムイオンに前記蛍光カルシウム指示薬を結合させ、カルシウムイオンと結合した蛍光カルシウム指示薬の蛍光強度を調べる方法などによって測定することができる。前記蛍光カルシウム指示薬としては、カルシウムイオンと結合し、蛍光カルシウム指示薬の量によってその蛍光特性が変化するのであれば特に限定されないが、例えば、FURA 2、FURA 2−AM、Fluo−3などが挙げられる。
【0030】
TRPA1発現細胞内における電流を用いる場合、前記抑制作用は、例えば、
(B1) TRPA1発現細胞と被験物質(活性抑制剤)とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内における一定電位下での電流〔「電流(A)」という〕を測定するステップ、
(B2) TRPA1発現細胞とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内における前記(1)における電位と同じ電位下での電流〔「電流(B)」という〕を測定するステップ、および
(B3) 前記ステップ(B1)で得られた電流(A)と前記ステップ(B2)で得られた電流(B)とを比較するステップ
を行なうことにより評価することができる(「評価法B」という)。前記ステップ(B3)において、電流(B)と比べて電流(A)が小さい場合、当該被験物質は、TRPA1の活性に対する抑制作用を有すると評価することができる。また、前記電流(A)と電流(B)との間の差が大きいほど、当該被験物質は、高い抑制作用を有すると評価することができる。前記電流は、例えば、パッチクランプ法などによって測定することができる。
【0031】
本発明の活性抑制剤によれば、皮膚における不快な刺激感との関連性があるTRPA1の活性を抑制することから、皮膚における不快な刺激を抑制することができる。したがって、本発明の活性抑制剤は、皮膚における不快な刺激を感じやすい敏感肌に対して用いられる外用剤に好適に用いることができる。
【0032】
2.TRPA1の活性抑制方法
本発明のTRPA1の活性抑制方法(以下、「活性抑制方法」という)は、TRPA1の活性を抑制する活性抑制方法であって、式(I)で表される化合物をTRPA1と接触させることを特徴とする。
【0033】
本発明の活性抑制方法によれば、式(I)で表される化合物が用いられているので、例えば、ヒトの皮膚に存在する感覚神経に含まれるTRPA1、口腔などの粘膜下に存在する感覚神経に含まれるTRPA1などの活性を効果的に抑制することができる。
【0034】
式(I)で表される化合物とTRPA1との接触は、TRPA1を含む部位、例えば、皮膚を構成する細胞に式(I)で表される化合物を供給することによって行なうことができる。
【0035】
前記TRPA1と接触させる式(I)で表される化合物の量は、本発明の活性抑制方法の適用対象などによって異なることから、一概には決定することができないので、本発明の活性抑制方法の適用対象などに応じて適宜設定することが好ましい。前記TRPA1と接触させる式(I)で表される化合物の量は、例えば、本発明の活性抑制方法の適用対象が皮膚に存在する感覚神経に含まれるTRPA1である場合、通常、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、皮膚10cm2あたり、好ましくは10μg以上、より好ましくは100μg以上であり、皮膚への負荷を抑制する観点から、好ましくは100mg以下、より好ましくは10mg以下である。
【0036】
TRPA1の活性に対する本発明の活性抑制方法による抑制作用は、前記活性抑制剤によるTRPA1の活性に対する抑制作用の評価と同様の手法によって評価することができる。
【0037】
本発明の活性抑制方法は、皮膚における不快な刺激感との関連性があるTRPA1の活性を抑制することから、例えば、当該活性抑制方法を皮膚と接触したときに不快な刺激を与える可能性がある成分を含む外用剤を使用するときに、式(I)で表される化合物と前記外用剤とを併用して当該活性抑制方法を行なうことにより、皮膚における細胞に含まれるTRPA1の活性を抑制し、不快な刺激を抑制することができる。したがって、本発明のTRPA1の活性抑制方法は、敏感肌を有するヒトが前記外用剤の使用する際に適用するのに好適である。
【0038】
3.外用剤
本発明の外用剤は、TRPA1を活性化する成分が配合された外用剤であって、前記TRPA1の活性抑制剤を含有することを特徴とする。
【0039】
本発明の外用剤は、前記活性抑制剤を含有しているので、TRPA1の活性化を抑制する。したがって、本発明の外用剤によれば、TRPA1を活性化する成分による不快な刺激などのTRPA1の活性化に基づく不快な刺激を低減することができる。本発明の外用剤は、好ましくは敏感肌用外用剤である。
【0040】
本明細書において、「敏感肌」とは、皮膚のバリア機能が低下しており、平均的な肌では反応しない物質、刺激などに対しても過敏に反応し、肌のかゆみ、肌のかさつきなどの状態が生じやすい傾向がある肌をいう。
【0041】
また、本明細書において、「TRPA1を活性化する成分」とは、TRPA1アゴニストのうち、外用剤に用いることができる成分をいう。かかるTRPA1を活性化する成分としては、例えば、前記評価法Aと同様の操作を行なったときに、ステップ(A3)において、カルシウムイオン濃度(B)と比べ、カルシウムイオン濃度(A)が増加していることを示す成分、前記評価法Bを行なったときに、ステップ(B3)において、電流(B)と比べ、電流(A)が大きいことを示す成分などが挙げられる。前記TRPA1を活性化する成分としては、例えば、メントール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、アルカリ剤(例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、水酸化カリウムなど)、アリルイソチオシアネート、メチルパラベン、アリシン、イシリン、過酸化水素、アクロレイン、香油成分(例えば、シトラール、オイゲノール、シンナムアルデヒドなど)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0042】
本発明の外用剤中の前記活性抑制剤に含まれる式(I)で表される化合物のなかでは、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、R1、R2およびR3がメチル基であり、R4が酸素原子である1,8−シネオールが好ましい。
【0043】
本発明の外用剤の剤形は、本発明の外用剤の用途などに応じて適宜選択することができる。本発明の外用剤の剤形としては、例えば、ローション、クリーム、フォーム、乳液、ジェル、パック、粉剤、エアゾール剤、貼付剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0044】
本発明の外用剤には、皮膚に直接適用される化粧料などの皮膚外用剤、皮膚に接触することがある頭髪外用剤などが包含される。
【0045】
前記皮膚外用剤としては、例えば、ボディーローション、デオドラント化粧料(例えば、デオドラントローション、デオドラントジェル、デオドラントスプレー、デオドラントロールオン、デオドラントペーパーなど)、化粧水、乳液、スキンケアクリーム、トニック、スティック化粧料、リップ、皮膚脱色剤(ボディーブリーチング剤)、洗浄料(例えば、ボディーシャンプー、クレンジング剤、洗顔剤、固形石鹸など)、シート化粧料(例えば、拭き取り用シート、シートパック剤など)、貼付剤(例えば、パップ剤など)、髭剃り用化粧料(例えば、シェービングジェルなど)などが挙げられる。
【0046】
また、前記頭髪外用剤としては、例えば、洗髪用化粧料(例えば、シャンプー、リンスなど)、育毛剤、ヘアカラー、ヘアブリーチ、パーマ液、ヘアスタイリング剤(例えば、ヘアトニックなど)などが挙げられる。
【0047】
本発明の外用剤における前記活性抑制剤の含有量は、前記TRPA1を活性化する成分の種類や量、外用剤の用途などによって異なることから、一概には決定することができないので、前記TRPA1を活性化する成分の種類や量、外用剤の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。通常、本発明の外用剤における前記活性抑制剤の含有量は、本発明の外用剤における式(I)で表される化合物の含有量が、TRPA1の活性に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上となり、皮膚に対する負荷を抑制する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下となるように調整されることが望ましい。
【0048】
前記TRPA1を活性化する成分に対する前記活性抑制剤の量は、前記TRPA1を活性化する成分の種類や量、外用剤の用途などによって異なることから、一概には決定することができないので、前記TRPA1を活性化する成分の種類や量、外用剤の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。通常、前記TRPA1を活性化する成分に対する前記活性抑制剤の量は、前記TRPA1を活性化する成分100質量部あたりの式(I)に示される化合物の量が、前記TRPA1を活性化する成分による不快な刺激を抑制する観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上となり、適度な冷感を得る観点から、好ましくは500質量部以下、より好ましくは200質量部以下となるように調整されることが望ましい。
【0049】
本発明の外用剤には、上記「TRPA1を活性化する成分」の他に、本発明の目的が妨げられない範囲で、例えば、TRPA1を活性化する成分以外の高級アルコール、ロウ、炭化水素油、脂肪酸、油脂、エステル油、シリコーン油などの油剤;陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤;TRPA1を活性化する成分以外の多価アルコール、糖、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体などの保湿剤;増粘剤、酸化防止剤、キレート剤、TRPA1を活性化する成分以外のpH調整剤、TRPA1を活性化する成分以外の香料、色素、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン、アミノ酸、TRPA1を活性化する成分以外の防腐剤、水などの成分が配合されていてもよい。
【0050】
前記油剤としては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリンなどのロウ;セレシン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、流動イソパラフィン、流動パラフィン、ポリエチレン末、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ワセリンなどの炭化水素油;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコールなどの高級アルコール;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸;ヤシ油、パーム油、水素添加パーム油、アボカド油、ゴマ油、オリーブ油、ククイナッツ油、ブドウ粒子油、サフラワー油、アーモンド油、トウモロコシ油、綿実油、ヒマワリ種子油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ローズヒップ油、ホホバ油などの油脂;オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシルなどのエステル油;メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンなどのシリコーン油などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記油剤は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
前記界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸およびその塩、N−アシルサルコシンおよびその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩などの陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩などのアミン塩、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩などのアルキル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などの環式4級アンモニウム塩、塩化ベンゼエトニウムなどの陽イオン界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ヒマシ油、硬化ヒマシ油およびこれらのアルキレンオキシド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロールおよびその誘導体、ポリオキシエチレンラノリンおよびその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類などの非イオン界面活性剤;アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルグリシン塩などのグリシン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩などのアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルヒドロキシスルホベタインなどのスルホベタイン型両性界面活性剤などの両性界面活性剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記界面活性剤は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
前記保湿剤としては、例えば、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオールなどの多価アルコール;ソルビトール、マンニトール、グルコース、ショ糖、フルクトース、キシリトール、ラクトース、マルトース、マルチトール、トレハロースなどの糖;ヒアルロン酸、加水分解ヒアルロン酸、ヒアルロン酸プロピレングリコールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記保湿剤は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
前記増粘剤としては、例えば、アラビアガム、トラガントガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、寒天、ペクチン、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼインなどの天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロースなどの半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルメチルセルロース、ポリアミド樹脂、アクリレーツ/メタクリル酸ポリオキシエチレンセチルエーテルコポリマー、アクリレーツ/メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテルコポリマー、アクリレーツ/メタクリル酸ポリオキシエチレンべへニルエーテルコポリマー、アクリレーツ/イタコン酸ポリオキシエチレンセチルエーテルコポリマー、アクリレーツ/イタコン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテルコポリマー、アクリレーツ/メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテルクロスポリマー、アクリル酸アルキル/ネオデカン酸ビニルクロスポリマーなどの合成高分子化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記増粘剤は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0054】
前記酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸アルミニウム、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルカリウム、アスコルビン酸リン酸エステルアルミニウム、アスコルビン酸硫酸エステルナトリウム、アスコルビン酸硫酸エステルカリウム、アスコルビン酸硫酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸硫酸エステルカルシウム、アスコルビン酸硫酸エステルアルミニウムなどのアスコルビン酸および/またはその誘導体;スクアレン、サポニン、リモニン、カメリアゲニン、ホパン、ラノステロール、ファシクロール、ウルソール酸、オレオノール酸、ベツリン酸などのトリテルペン;トコフェロール、酢酸トコフェロール、アスタキサンチン、コエンザイムQ10、白金コロイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記酸化防止剤は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0055】
前記キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸およびその塩、クエン酸およびその塩、グルコン酸およびその塩、酒石酸およびその塩、フィチン酸およびその塩、ポリリン酸およびその塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記キレート剤は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
なお、前記活性抑制剤に含まれる式(I)で表される化合物が、R1、R2およびR3がメチル基であり、R4が酸素原子である1,8−シネオールである場合、かかる活性抑制剤は、ヒトの皮膚に清涼感を与える。したがって、前記1,8−シネオールを含有する活性抑制剤は、本発明の外用剤において、清涼化剤として用いることもできる。
【0057】
例えば、清涼化剤としてメントールなどのTRPA1を活性化する成分が配合された外用剤に、前記1,8−シネオールを含有する活性抑制剤をさらに配合した場合、TRPA1の活性化に基づく不快な刺激を抑制することができる。また、清涼化剤として、メントールなどのTRPA1を活性化する成分の代わりに、前記1,8−シネオールを含有する活性抑制剤を外用剤に配合した場合、TRPA1の活性化に基づく不快な刺激を抑制することができ、しかもヒトの皮膚に清涼感を与えることができる。したがって、本発明の外用剤には、前記活性抑制剤に含まれる式(I)で表される化合物が、R1、R2およびR3がメチル基であり、R4が酸素原子である1,8−シネオールを好適に用いることができる。
【0058】
前記1,8−シネオールを含有する活性抑制剤は、本発明の外用剤であるシート化粧料に用いられる支持体に含浸させた場合であっても、また、前記1,8−シネオールを含有する活性抑制剤は、貼付剤などに用いられる支持体上に形成された粘着性の膏体層に配合させた場合であっても、TRPA1の活性化に基づく不快な刺激を抑制することができる。
【0059】
前記支持体は、ヒトの皮膚の凹凸や伸縮に適応する柔軟な素材からなることが好ましい。前記支持体としては、例えば、織布、不織布、フィルムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記支持体は、ヒトの皮膚への貼付または皮膚上での拭き取りが容易であることから、伸縮性を有することが好ましい。前記織布および不織布の材料としては、例えば、綿、黄麻マニラ麻、羊毛、絹繊維、羽毛繊維などの天然繊維;ビスコースレーヨン繊維などの再生繊維;アセテート繊維、トリアセテート繊維、プロミックス繊維などの半合成繊維;ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維などの合成繊維などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記フィルムの材料としては、例えば、ポリアミド;ポリエステル;アクリル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記支持体は、前記シート化粧料または貼付剤の用途などに応じて適宜選択することができる。
【0060】
前記支持体の厚さは、前記シート化粧料または前記貼付剤の用途などによって異なることから、一概には決定することができないので、前記シート化粧料または前記貼付剤の用途などに応じて適宜設定することが好ましい。通常、前記支持体の厚さは、使い易さを確保する観点から、好ましくは0.1〜2.5mm、より好ましくは0.5〜2mmである。
【0061】
以上説明したように、本発明の外用剤によれば、ヒトの皮膚に対する不快な刺激を低減することができる。
【実施例】
【0062】
以下に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
式(I)において、R1、R2およびR3がメチル基であり、R4が酸素原子である1,8−シネオールをその濃度が5mMとなるように25℃で溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコース、10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕に溶解させ、活性抑制剤を得た。
【0064】
得られた活性抑制剤に対して、TRPA1のアゴニストであるメントールをその濃度が1mMとなるように25℃で溶解させ、試料を得た。
【0065】
(比較例1)
実施例1において、1,8−シネオールの代わりに、TRPA1のアンタゴニストであるルテニウムレッドを用い、当該ルテニウムレッドの濃度が10μMとなるように25℃で溶媒Aに溶解させたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、試料を得た。
【0066】
(比較例2)
実施例1において、1,8−シネオールの代わりに、TRPA1の活性との関連性がない対照としてのグリセリンを用い、当該グリセリンの濃度が5mMとなるように25℃で溶媒Aに溶解させたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、試料を得た。
【0067】
(製造例1)
ヒトTRPA1をコードするcDNA〔配列番号:1(GenBankアクセッション番号:NM_007332)に示される塩基配列の63位〜3888位のポリヌクレオチド〕を、哺乳動物細胞用ベクター〔インビトロジェン社製、商品名:pcDNA3.1(+)〕のクローニングサイトに挿入し、ヒトTRPA1発現ベクターを得た。得られたヒトTRPA1発現ベクター1μgと、遺伝子導入用試薬〔インビトロジェン社製、商品名:PLUS Reagent(プラスリージェント)、カタログ番号:11514−015〕6μlとを混合し、混合物Iを得た。また、遺伝子導入用カチオン性脂質〔インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミン(登録商標)、カタログ番号:18324−012〕4μlと、血清使用量低減培地〔インビトロジェン社製、商品名:OPTI−MEM(登録商標)I Reduced−Serum Medium(カタログ番号:11058021)200μlとを混合し、混合物IIを得た。
【0068】
また、5体積%二酸化炭素雰囲気中、37℃に維持された直径35mmのシャーレ上の10質量%FBS含有DMEM培地中において、5×10細胞のHEK293細胞を70%のコンフルエンシーになるまで培養した。
【0069】
得られた細胞培養物に、前記混合物Iと混合物IIとを添加することにより、HEK293細胞に前記ヒトTRPA1発現ベクターを導入し、TRPA1発現細胞を得た。
【0070】
(試験例1)
製造例1で得られたTRPA1発現細胞を、細胞内カルシウムイオン測定用試薬であるFURA 2−AM(インビトロジェン社製)を最終濃度5μMで含む10質量%ウシ胎仔血清含有DMEM培地中、室温で60分間インキュベーションすることにより、前記TRPA1発現細胞にFURA 2−AMを導入し、FURA 2−AM導入TRPA1発現細胞を得た。
【0071】
得られたFURA 2−AM導入TRPA1発現細胞を循環定温チャンバー付蛍光測定装置〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:ARGUS−50〕の各チャンバーに入れた。その後、チャンバー中のFURA 2−AM導入TRPA1発現細胞を、溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコース、10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕で洗浄した。
【0072】
つぎに、洗浄後のFURA 2−AM導入TRPA1発現細胞が入ったチャンバーにTRPA1のアゴニストを入れ、FURA 2−AM導入TRPA1発現細胞と前記アゴニストとを混合した。なお、前記アゴニストとして、1mMメントールを含有する溶媒Aを用いた。
【0073】
その後、チャンバーにおいて、励起波長340nmにおけるTRPA1発現細胞に導入され、かつ細胞内のカルシウムイオンに結合したFURA 2−AMに基づく蛍光の強度(以下、「蛍光強度340nm」という)および励起波長380nmにおけるTRPM1発現細胞に導入されたFURA 2−AMに基づく蛍光の強度(以下、「蛍光強度380nm」という)を測定した。
【0074】
測定された蛍光強度340nmおよび蛍光強度380nmから、Δ蛍光強度比アゴニストを算出した。前記Δ蛍光強度比試料は、式(II):
【0075】
【数1】

【0076】
に基づいて算出した。なお、前記対照は、溶媒Aである。
【0077】
また、前記アゴニストを単独で用いる代わりに、前記アゴニストと被験試料(実施例1で得られた試料、比較例1で得られた試料または比較例2で得られた試料)とを組み合わせて用いたことを除き、前記アゴニストを用いた場合と同様にして蛍光強度340nmおよび蛍光強度380nmを測定した。
【0078】
測定された蛍光強度340nmおよび蛍光強度380nmから、Δ蛍光強度比アゴニストを算出した。前記Δ蛍光強度比アゴニスト+被験試料は、式(III):
【0079】
【数2】

【0080】
に基づいて算出した。
【0081】
算出されたΔ蛍光強度比アゴニストとΔ蛍光強度比アゴニスト+被験試料とから、TRPA1の活性に対する抑制率を算出した。なお、抑制率は、式(IV):
【0082】
抑制率(%)=(Δ蛍光強度比アゴニスト−Δ蛍光強度比アゴニスト+被験試料)/Δ蛍光強度比アゴニスト×100 (IV)
【0083】
にしたがって算出した。
【0084】
試験例1において、試料の種類と抑制率との関係を調べた結果を図1に示す。図中、1は実施例1で得られた試料を用いたときの抑制率、2は比較例1で得られた試料を用いたときの抑制率、3は比較例2で得られた試料を用いたときの抑制率を示す。
【0085】
図1に示された結果から、実施例1で得られた試料を用いたときの抑制率(図中、1)は、約40%であることがわかる。対照としてのグリセリンが含まれた比較例2で得られた試料を用いたときの抑制率(図中、3)は、0%以下であることから、実施例1で得られた試料に含まれる1,8−シネオールは、ブロッカーとして働き、メントールによって引き起こされるTRPA1の活性化により発現するTRPA1の活性を抑制することが示唆される。また、1,8−シネオールによるTRPA1の活性に対する抑制率(図中、1)は、TRPA1の既知のアンタゴニストによるTRPA1の活性に対する抑制率(図中、2)と同程度であることがわかる。
【0086】
これらの結果から、式(I)において、R1、R2およびR3がメチル基であり、R4が酸素原子である1,8−シネオールは、TRPA1の活性を抑制することがわかる。
【0087】
(試験例2)
試験例1において、メントールの代わりに、TRPA1に対する既知のアゴニストであるアリルイソチオシアナートを用い、当該アリルイソチオシアナートの濃度が20μMとなるように調整したことを除き、試験例1と同様の操作を行ない、実施例1で得られた試料を用いたときの抑制率を算出した。
【0088】
試験例2において、試料と抑制率との関係を調べた結果を図2に示す。図中、1は実施例1で得られた試料を用いたときの抑制率を示す。
【0089】
図2に示された結果から、実施例1で得られた試料を用いたときの抑制率(図中、1)は、約25%であることがわかる。したがって、実施例1で得られた試料に含まれる1,8−シネオールは、ブロッカーとして働き、アリルイソチオシアナートによって引き起こされるTRPA1の活性化により発現するTRPA1の活性を抑制することが示唆される。
【0090】
(実施例2)
式(I)で表される化合物のうち、1,8−シネオール以外の化合物と、メントールとを当該化合物の濃度が5mMとなり、メントールの濃度が1mMとなるように25℃で溶媒Aに溶解させ、試料を得る。
【0091】
(試験例3)
試験例1において、実施例1で得られた試料の代わりに、実施例2で得られた試料を用い、試験例1と同様の操作を行ない、実施例2で得られた試料を用いたときの抑制率を算出する。
【0092】
その結果、実施例1で得られた試料を用いたときと同様の結果が得られる。
【0093】
以上の結果から、式(I)で表される化合物は、TRPA1の活性を抑制することから、TRPA1の活性抑制剤として有用であることが示唆される。また、式(I)で表される化合物は、TRPA1の活性を抑制してTRPA1の活性に基づく不快な刺激を抑制することから、外用剤、特に、敏感肌用外用剤に用いるのに好適であることが示唆される。
【0094】
(実施例3および比較例3)
メントール、エタノールおよび1,8−シネオールを、それぞれの濃度が1体積%、10体積%および0.5体積%となるように25℃で精製水に溶解させ、試料を得た(実施例3)。
【0095】
一方、実施例3において、1,8−シネオールを用いなかったことを除き、実施例3と同様に操作を行ない、試料を得た(比較例3)。
【0096】
(実施例4および比較例4)
エタノールおよび1,8−シネオール、それぞれの濃度が50体積%および0.5体積%となるように25℃で精製水に溶解させ、試料を得た(実施例4)。
【0097】
一方、実施例4において、1,8−シネオールを用いなかったことを除き、実施例と同様に操作を行ない、試料を得た(比較例4)。
【0098】
(実施例5および比較例5)
アンモニア、エタノールおよび1,8−シネオールを、それぞれの濃度が1体積%、10体積%および0.5体積%となるように25℃で精製水に溶解させ、試料を得た(実施例5)。
【0099】
一方、実施例5において、1,8−シネオールを用いなかったことを除き、実施例と同様に操作を行ない、試料を得た(比較例5)。
【0100】
(試験例4)
(1)スティンガーの選択
目の下周辺を中心に顔を洗った健常な男性86名の被験者を、室温25℃、相対湿度45〜60%の試験室内で5分間馴化させた。
【0101】
つぎに、0.2体積%オクタノール水溶液750μLを不織布〔三昭紙業(株)製、品番:KP9560、縦1cm×横3cm〕に含浸させ、試験用シートを得た。
【0102】
一方、前記0.2体積%オクタノール水溶液の代わりに、10体積%エタノール水溶液750μLを用いたことを除き、前記と同様にして対照用シートを得た。
【0103】
前記試験用シートおよび対照用シートを、それぞれ両目の目の下に貼付した。貼付時から2.5分間、5分間および8分間経過時における刺激の強さに対して、以下の刺激の評価方法にしたがって、それぞれ、順に、スティンギングスコアSA2.5、SA5およびSA8をつけた。
【0104】
また、貼付時から10分間経過時における刺激の強さ評価の終了後、両目の目の下から試験用シートおよび対照用シートそれぞれを除去した。その後、試験用シートおよび対照用シートそれぞれの除去時から1週間以上の期間の経過後、前記試験用シートおよび対照用シートそれぞれを、両目の目の下に貼付し、前記と同様にして、貼付時から2.5分間、5分間および8分間経過時における刺激の強さに対して、それぞれ、順に、スティンギングスコアSB2.5、SB5およびSB8をつけた。
【0105】
被験者ごとに、スティンギングスコアSA2.5〜SA8より最大値SAmaxを集計するとともに、スティンギングスコアSB2.5〜SB8より最大値Smaxを集計し、各被験者の最大値SAmaxと最大値Smaxとの平均値を求めた。
【0106】
〔刺激の評価方法〕
以下の評価基準に基づいて、各被験者が、各時間の経過時に試験用シートおよび対照用シートのそれぞれについて刺激の強さを評価した。
【0107】
[評価基準]
0点:刺激をまったく感じない。
1点:かすかな刺激を感じる。
2点:「かすかな刺激」と「はっきりとした刺激」との中間の強さの刺激を感じる。
3点:はっきりとした刺激を感じる。
4点:「はっきりとした刺激」と「我慢できない刺激」との中間の強さの刺激を感じる。
5点:我慢できない刺激を感じる。
【0108】
〔スティンガーの選択〕
被験者のなかから、試験用シートについて、前記平均値が3以上であり、かつ対照シートについて、前記平均値が1以下である被験者をスティンガーとして採用した。
【0109】
(2)顔におけるスティンギングテスト
前記(1)において、前記(1)で選ばれたスティンガーを被験者とし、実施例3〜5および比較例3〜5で得られた各試料を用い、前記(1)と同様にして刺激の強さを評価した。その結果を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
表1に示された結果から、メントールおよびエタノールと1,8−シネオールとを併用したときのスティンギングスコアの平均値(実施例3参照)は、1,8−シネオールを用いず、メントールおよびエタノールを用いたときのスティンギングスコアの平均値(比較例3参照)と比べて、小さいことがわかる。また、エタノールと1,8−シネオールとを併用したときのスティンギングスコアの平均値(実施例4参照)は、1,8−シネオールを用いず、エタノールを用いたときのスティンギングスコアの平均値(比較例4参照)と比べて、小さいことがわかる。さらに、アンモニアおよびエタノールと1,8−シネオールとを併用したときのスティンギングスコアの平均値(実施例5参照)は、1,8−シネオールを用いず、アンモニアおよびエタノールを用いたときのスティンギングスコアの平均値(比較例5参照)と比べて、小さいことがわかる。これらの結果から、1,8−シネオールによれば、メントール、エタノールまたはアンモニアがTRPA1を活性化させることにより引き起こされる不快な刺激を抑制することができることが示唆される。したがって、1,8−シネオールは、TRPA1の活性を抑制してTRPA1の活性に基づく不快な刺激を抑制することから、外用剤、特に、敏感肌用外用剤に用いるのに好適であることが示唆される。
【0112】
(試験例5)
試験例4において、1,8−シネオールの代わりに、式(I)で表される化合物のうちの1,8−シネオール以外の化合物を用いることを除き、試験例4同様の操作を行ない、刺激の強さを評価した。その結果、1,8−シネオールを用いたときと同様の結果が得られる。
【0113】
以上の結果から、式(I)で表される化合物は、メントール、エタノールまたはアンモニアがTRPA1を活性化させることにより引き起こされる不快な刺激を抑制することができることが示唆される。したがって、式(I)で表される化合物は、TRPA1の活性を抑制してTRPA1の活性に基づく不快な刺激を抑制することから、外用剤、特に、敏感肌用外用剤に用いるのに好適であることが示唆される。
【0114】
(実施例6〜10および比較例6〜10)
表2に記載の組成となるように、各成分を混合し、エアゾールスプレーの原液を調製した。得られた原液と噴射剤である液化石油ガスとを、原液/噴射剤(体積比)が5/95となるようにステムよりエアゾール容器に充填し、ステムに適したボタンを装着してエアゾールスプレーを得た(実施例6および比較例6)。
【0115】
【表2】

【0116】
また、表3に記載の組成となるように、各成分を混合し、化粧水(実施例7および比較例7)を調製した。
【0117】
【表3】

【0118】
表4に記載の組成となるように、各成分を混合し、洗浄料(実施例8および比較例8)を調製した。
【0119】
【表4】

【0120】
表5に記載の組成となるように、各成分を混合し、洗浄料(実施例9および比較例9)を調製した。
【0121】
【表5】

【0122】
表6に記載の組成となるように、各成分を混合し、貼付剤(膏体)(実施例10および比較例10)を調製した。
【0123】
【表6】

【0124】
(試験例6)
頸部の耳下部を濡れタオルで拭き、皮脂汚れなどを除去した被験者8名を、室温23〜27℃、相対湿度45〜60%の試験室内で約10分間安静に待機させた。
【0125】
〔エアゾールスプレーのスティンギングテスト〕
実施例6で得られた原液および比較例6で得られた原液のいずれを用いたかを被験者に知らせずに、以下の操作を行なった。
【0126】
実施例6で得られた原液と噴射剤とが入ったエアゾール容器の噴霧部から左側の頸部(耳下)の皮膚までの間に内径3cmの円筒体(長さ10cm)を設置した。つぎに、前記円筒の内側に位置する左側の頚部(耳下)の皮膚に向けてエアゾール容器内の内容物を1秒間噴霧した。噴霧終了時から1分間、3分間、5分間、7分間、10分間、13分間、17分間および20分間経過時における刺激の強さに対して、以下の刺激の評価方法にしたがって、それぞれ、順に、スティンギングスコアS1、S3、S5、S7、S10、S13、S17およびS20をつけた。
【0127】
一方、実施例6で得られた原液の代わりに比較例6で得られた原液を用いたことおよび右側の頸部(耳下)の皮膚に向けてエアゾール容器内の内容物を噴霧したことを除き、前記と同様の操作を行ない、スティンギングスコアS1、S3、S5、S7、S10、S13、S17およびS20をつけた。
【0128】
〔その他の外用剤のスティンギングテスト〕
実施例7、9〜10および比較例7、9〜10で得られた各外用剤1000μLを不織布〔フタムラ化学工業(株)製、商品名:TCF#404WJ−M、縦3cm×横3cm〕に含浸させ、試験用シートを得た。
【0129】
なお、実施例8および比較例8で得られた各外用剤については、まず、外用剤の濃度が5質量%となるように精製水に溶解し、水溶液を得た。得られた水溶液1000μLを不織布〔フタムラ化学工業(株)製、商品名:TCF#404WJ−M、縦3cm×横3cm〕に含浸させ、試験用シートを得た。
【0130】
つぎに、実施例で得られた試験用シートおよび比較例で得られた試験用シートのいずれを用いたかを被験者に知らせずに、外用剤の種類ごとに以下の操作を行なった。
【0131】
実施例7〜10で得られた各試験用シートを左側の頸部(耳下)に貼付した。貼付時から1分間、3分間および5分間経過時における刺激の強さに対して、以下の刺激の評価方法にしたがって、それぞれ、それぞれ、順に、スティンギングスコアS1、S3およびS5をつけた。
【0132】
貼付時から5分間経過時における刺激の強さの評価後、左側の頸部(耳下)から試験用シートを除去した。そして、ひきつづき、試験用シートの貼付時から7分間、10分間、13分間、17分間および20分間経過時における刺激の強さに対して、以下の刺激の評価方法にしたがって、それぞれ、順に、スティンギングスコアS7、S10、S13、S17およびS20をつけた。
【0133】
実施例7〜10で得られた各試験用シートの代わりに比較例7〜10で得られた各試験用シートを用いたことおよび各試験用シートを右側の頸部(耳下)に貼付したことを除き、前記と同様の操作を行ない、スティンギングスコアS1、S3、S5、S7、S10、S13、S17およびS20をつけた。
【0134】
〔スティングングスコアの集計〕
実施例6〜10および比較例6〜10で得られた各外用剤について、被験者ごとに、スティンギングスコアS1〜S20より最大値Smaxを集計し、各被験者の最大値Smaxの平均値を求めた。
【0135】
〔刺激の評価方法〕
試験例4と同じ評価基準に基づいて、各被験者が、各時間の経過時に試験用シートについて刺激の強さを評価した。その結果を表2〜6に併記する。
【0136】
表2〜6に示された結果から、メントールと1,8−シネオールとを併用したときのエアゾールスプレー(実施例6)のスティンギングスコアの平均値は、1,8−シネオールを用いず、メントールを用いたときのエアゾールスプレー(比較例6)のスティンギングスコアの平均値と比べて、小さいことがわかる。また、1,3−ブチレングリコールおよびエタノールと1,8−シネオールとを併用したときの化粧水(実施例7)のスティンギングスコアの平均値は、1,8−シネオールを用いず、1,3−ブチレングリコールおよびエタノールを用いたときの化粧水(比較例7)のスティンギングスコアの平均値と比べて、小さいことがわかる。さらに、1,3−ブチレングリコールおよび水酸化カリウムと1,8−シネオールとを併用したときの洗浄料(実施例8)のスティンギングスコアの平均値は、1,8−シネオールを用いず、1,3−ブチレングリコールおよび水酸化カリウムを用いたときの洗浄料(比較例8)のスティンギングスコアの平均値と比べて、小さいことがわかる。また、1,3−ブチレングリコールと1,8−シネオールとを併用したときの洗浄料(実施例9)のスティンギングスコアの平均値は、1,8−シネオールを用いず、1,3−ブチレングリコールを用いたときの洗浄料(比較例9)のスティンギングスコアの平均値と比べて、小さいことがわかる。また、メントールと1,8−シネオールとを併用したときの貼付剤(実施例10)のスティンギングスコアの平均値は、1,8−シネオールを用いず、メントールを用いたときの貼付剤(比較例10)のスティンギングスコアの平均値と比べて、小さいことがわかる。
【0137】
これらの結果から、1,8−シネオールによれば、メントール、エタノール、1,3−ブチレングリコールまたは水酸化カリウムがTRPA1を活性化させることにより引き起こされる不快な刺激を抑制することができることが示唆される。
【0138】
したがって、1,8−シネオールは、TRPA1の活性を抑制してTRPA1の活性に基づく不快な刺激を抑制することから、外用剤、特に、敏感肌用外用剤に用いるのに好適であることが示唆される。なお、1,8−シネオールは、洗浄後のヒトの皮膚に清涼感を与えることから、1,8−シネオールは、不快な刺激を抑制し、かつヒトの皮膚に清涼感を与える成分として、外用剤、特に、敏感肌用外用剤に用いるのに好適であることが示唆される。
【0139】
(実施例11および比較例11)
表7に記載の組成となるように、各成分を混合し、毛髪脱色剤の第1剤および第2剤を調製した。
【0140】
【表7】

【0141】
(試験例7)
(1)スティンガーの選択
特開2007−191412号公報に記載の方法により、アルカリ剤に敏感な被験者を選定した。その後、頸部の耳下部を濡れタオルで拭き、皮脂汚れなどを除去した被験者8名を、室温23〜27℃、相対湿度45〜60%の試験室内で5分間安静に待機させた。
【0142】
表7に記載の組成からなる毛髪脱色剤の第1剤と第2剤とを、第1剤/第2剤(質量比)が80/20となるように混合し、毛髪脱色剤を調製した。
【0143】
つぎに、被験者の頸部の正中線から左方向に外れた皮膚分節C2〜C3付近の約3cm×3cm四方の領域内に実施例11で得られた毛髪脱色剤1gを塗布した。塗布時から1分間、3分間、5分間、7分間10分間、13分間、15分間および20分間経過時における刺激の強さに対して、以下の刺激の評価方法にしたがって、それぞれ、順に、スティンギングスコアS1、S3、S5、S7、S10、S13、S17およびS20をつけた。
【0144】
一方、被験者の頸部の正中線からから右方向に外れた皮膚分節C2〜C3付近の約3cm×3cm四方の領域内に比較例11で得られた毛髪脱色剤1gを塗布したことを除き、前記と同様の操作を行ない、スティンギングスコアS1、S3、S5、S7、S10、S13、S17およびS20をつけた。
【0145】
実施例11および比較例11で得られた各毛髪脱色剤について、被験者ごとに、スティンギングスコアS1〜S20より最大値Smaxを集計し、各被験者の最大値Smaxの平均値を求めた。
【0146】
〔刺激の評価方法〕
試験例4と同じ評価基準に基づいて、各被験者が、各時間の経過時に毛髪脱色剤について刺激の強さを評価した。その結果を表7に併記する。
【0147】
表7に示された結果から、アンモニアとモノエタノールアミンと過酸化水素と1,8−シネオールとを併用したときの毛髪脱色剤(実施例11)のスティンギングスコアの平均値は、1,8−シネオールを用いず、アンモニアとモノエタノールアミンと過酸化水素とを用いたときの毛髪脱色剤(比較例11)のスティンギングスコアの平均値と比べて、小さいことがわかる。これらの結果から、1,8−シネオールによれば、アンモニア、モノエタノールアミンおよび過酸化水素がTRPA1を活性化させることにより引き起こされる不快な刺激を抑制することができることが示唆される。したがって、1,8−シネオールは、TRPA1の活性を抑制してTRPA1の活性に基づく不快な刺激を抑制することから、外用剤、特に、敏感肌用外用剤に用いるのに好適であることが示唆される。
【0148】
(処方例)
以下、本発明に係る外用剤の処方例を示す。なお、原料名中のカッコ内の「E.O.」はオキシエチレン基を示す。また、「E.O.」の前に記載されている数字はオキシエチレン基の付加モル数を示す。
(処方例1 敏感肌用化粧水)
下記原料を下記組成となるように混合し、敏感肌用化粧水とした。
1,8−シネオール 0.1質量%
ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 1.0質量%
グリセリン 1.5質量%
1,3−ブチレングリコール 15.0質量%
クエン酸 0.05質量%
クエン酸ナトリウム 0.1質量%
1,2−オクタンジオール 0.2質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0149】
(処方例2 敏感肌用乳液)
下記原料を下記組成となるように混合し、敏感肌用乳液とした。
1,8−シネオール 0.1質量%
流動パラフィン 15.0質量%
ミツロウ 2.0質量%
ラノリン 1.5質量%
セスキオレイン酸ソルビタン 2.5質量%
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0質量%
1,2−オクタンジオール 0.05質量%
1,3−ブチレングリコール 13.0質量%
キサンタンガム 0.5質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0150】
(処方例3 敏感肌用クリーム)
下記原料を下記組成となるように混合し、敏感肌用クリームとした。
1,8−シネオール 0.3質量%
ステアリルアルコール 5.0質量%
ステアリン酸 2.0質量%
ワセリン 5.0質量%
スクワラン 5.0質量%
トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 1.0質量%
ホホバ油 1.0質量%
オリーブ油 1.0質量%
1.3−ブチレングリコール 15.0質量%
プロピレングリコールモノステアリン酸エステル 2.5質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0質量%
トリエタノールアミン 1.0質量%
1,2−ヘキサンジオール 0.15質量%
1,2−オクタンジオール 0.1質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0151】
(処方例4 デオドラントジェル)
下記原料を下記組成となるように混合し、デオドラントジェルとした。
1,8−シネオール 0.5質量%
メントール 0.5質量%
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.2質量%
水酸化カリウム 0.02質量%
イソノナン酸イソノニル 1.5質量%
トリクロサン 0.1質量%
エタノール 30.0質量%
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0152】
(処方例5 シェービングジェル)
下記原料を下記組成となるように混合し、シェービングジェルとした。
カルボキシビニルポリマー 0.6質量%
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1質量%
水酸化ナトリウム 0.25質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 0.5質量%
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 3.0質量%
グリセリン 3.0質量%
ポリエチレングリコール(PEG−32) 3.0質量%
70質量%ソルビット液 5.0質量%
アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体液
0.1質量%
メントール 0.4質量%
1,8−シネオール 0.4質量%
エタノール 2.0質量%
パラオキシ安息香酸メチル 適量
エデト酸塩 適量
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0153】
(処方例6 化粧水)
下記原料を下記組成となるように混合し、化粧水とした。
1,8−シネオール 0.3質量%
1,3−ブチレングリコール 6.0質量%
グリセリン 4.0質量%
加水分解ヒアルロン酸 0.1質量%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン 2−デシルテトラデシルエーテル
0.2質量%
フェノキシエタノール 0.3質量%
香料 適量
エタノール 3.0質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0154】
(処方例7 デオドラントロールオン)
下記原料を下記組成となるように混合し、デオドラントロールオンとした。
1,8−シネオール 0.3質量%
メントール 0.1質量%
トリクロサン 0.1質量%
クロルヒドロキシルアルミニウム 10.0質量%
イソノナン酸イソノニル 1.0質量%
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0質量%
エタノール 60.0質量%
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0155】
(処方例8 拭き取り用シート化粧料)
不織布1gに下記組成からなる組成物5gを含浸させて、拭き取り用シート化粧料とした。
[拭き取り用シート組成物]
1,8−シネオール 0.3質量%
メントール 0.1質量%
タルク 10.0質量%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン 2−デシルテトラデシルエーテル
0.2質量%
エタノール 40.0質量%
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0156】
(処方例9 スキンケアジェル)
下記原料を下記組成となるように混合し、スキンケアジェルとした。
1,8−シネオール 0.5質量%
1,3−ブチレングリコール 10.0質量%
グリセリン 3.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.4質量%
キサンタンガム 0.01質量%
水酸化カリウム 0.15質量%
デカメチルポリシロキサン 5.0質量%
トリメチルグリシン 10.0質量%
1.2−ペンタンジオール 0.1質量%
グリセリンモノ2−エチルヘキシルエーテル 0.05質量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1質量%
エタノール 3.0質量%
エデト酸二ナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0157】
(処方例10 スキンケアクリーム)
下記原料を下記組成となるように混合し、スキンケアクリームとした。
流動パラフィン 5.0質量%
パラフィン 5.0質量%
水素添加パーム油 3.0質量%
ベヘニルアルコール 3.0質量%
ステアリン酸 1.0質量%
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 5.0質量%
キサンタンガム 0.05質量%
カルボキシビニルポリマー 0.4質量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1.5質量%
ステアリン酸グリセリル 0.5質量%
1,3−ブチレングリコール 10.0質量%
1,2−オクタンジオール 0.2質量%
1,8−シネオール 0.5質量%
グリセリンモノ−2−エチルヘキシルエーテル 0.35質量%
グリセリン 5.0質量%
水酸化カリウム 適量
トコフェロール 適量
エデト酸ニナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0158】
(処方例11 ボディー用化粧水)
下記原料を下記組成となるように混合し、ボディー用化粧水とした。
1,8−シネオール 0.5質量%
メントール 0.5質量%
1,3−ブチレングリコール 5.0質量%
ナイロン粉末 5.0質量%
エタノール 50.0質量%
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0159】
(処方例12 トニック)
下記原料を下記組成となるように混合し、トニックとした。
1,8−シネオール 0.5質量%
メントール 0.5質量%
D−パントテニルアルコール 0.2質量%
ニコチン酸アミド 0.1質量%
酢酸dl−α−トコフェロール 0.1質量%
カンファー 0.001質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 0.3質量%
乳酸ナトリウム 0.5質量%
クエン酸 0.05質量%
エタノール 50.0質量%
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0160】
(処方例13 デオドラントスプレー)
下記組成からなる原液と、下記組成からなる噴射剤とを質量比(原液/噴射剤)が5/95となるようにステムよりエアゾール容器に充填し、ステムに適したボタンを装着してデオドラントスプレーとした。
(原液の組成)
タルク 20.0質量%
無水ケイ酸 20.0質量%
クロルヒドロキシアルミニウム 10.0質量%
1,8−シネオール 0.5質量%
メントール 1.5質量%
トリクロサン 0.1質量%
ジメチルポリシロキサン 15.0質量%
香料 適量
ミリスチン酸イソプロピル 残部
(噴射剤の組成)
LPG 100.0質量%
【0161】
(処方例14 デオドラントスティック)
下記原料を下記組成となるように混合し、デオドラントスティックとした。
イソプロピルメチルフェノール 0.2質量%
硫酸アルミニウムカリウム 20.0質量%
クロロヒドロキシアルミニウム 10.0質量%
ステアリルアルコール 5.0質量%
モノステアリン酸グリセリン 3.0質量%
無水ケイ酸 35.0質量%
キャンデリラロウ 0.5質量%
ヒマシ油 0.1質量%
1,8−シネオール 0.5質量%
シトラール 0.04質量%
オイゲノール 0.05質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 残部
合計 100.0質量%
【0162】
(処方例15 リップ)
下記原料を下記組成となるように混合し、リップとした。
ステアリン酸イソセチル 25.0質量%
パラフィン 20.0質量%
トリオクタノイン 10.0質量%
セレシン 5.0質量%
マイクロクリスタリンワックス 5.0質量%
ワセリン 1.0質量%
シトラール 0.04質量%
オイゲノール 0.05質量%
1,8−シネオール 0.5質量%
流動パラフィン 残部
合計 100.0質量%
【0163】
(処方例16 クレンジング剤)
下記原料を下記組成となるように混合し、クレンジング剤とした。
ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル
3.0質量%
ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル 2.0質量%
N−[3−アルキル(12,14)オキシ−2−ヒドロキシプロピル]
−L−アルギニン塩酸塩
0.2質量%
1,3−ブチレングリコール 5.0質量%
1,2−オクタンジオール 0.1質量%
1,8−シネオール 0.3質量%
リン酸二水素ナトリウム 適量
リン酸水素二ナトリウム 適量
酢酸トコフェロール 適量
フェノキシエタノール 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0164】
(処方例17 洗顔料)
下記原料を下記組成となるように混合し、洗顔料とした。
30質量%ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン液 3.0質量%
ラウリン酸 5.0質量%
ミリスチン酸 6.0質量%
パルミチン酸 4.0質量%
ステアリン酸 9.0質量%
ジステアリン酸ポリエチレングリコール(150E.O.)
5.0質量%
10質量%ビニルピロリドン・ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド
・ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミドクロリド共重合体液
10.0質量%
ポリエチレングリコール 20.0質量%
プロピレングリコール 3.0質量%
グリセリン 5.0質量%
1,2−オクタンジオール 0.5質量%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.5質量%
水酸化カリウム 5.0質量%
1,8−シネオール 0.6質量%
エデト酸塩 適量
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0165】
(処方例18 ボディーシャンプー)
下記原料を下記組成となるように混合し、ボディーシャンプーとした。
ラウリン酸 5.0質量%
ミリスチン酸 7.0質量%
プロピレングリコール 4.0質量%
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 3.5質量%
水酸化カリウム 3.6質量%
亜硫酸ソーダ 0.03質量%
パラオキシ安息香酸メチル 0.3質量%
フェノキシエタノール 0.8質量%
1,8−シネオール 0.5質量%
エデト酸塩 適量
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0166】
(処方例19 シャンプー)
下記原料を下記組成となるように混合し、シャンプーとした。
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム 6.0質量%
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 2.0質量%
ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム 3.0質量%
スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム 1.0質量%
ヤシ油脂肪酸ジアタノールアミド 5.0質量%
塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]
ヒドロキシエチルセルロース
0.2質量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.2質量%
メントール 1.0質量%
1,8−シネオール 0.5質量%
エタノール 3.0質量%
塩化ナトリウム 適量
エデト酸塩 適量
安息香酸ナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0167】
(処方例20 ヘアカラー)
下記原料を下記組成となるように混合し、ヘアカラーの第1剤および第2剤とした。使用時には、第1剤と第2剤とを、質量比(第1剤/第2剤)が80/20となるように混合し、ヘアカラーとした。なお、以下において、各成分のパーセンテージは、ヘアカラー(第1剤と第2剤との混合物)における各成分のパーセンテージを意味する。
[第1剤]
セチルアルコール 5.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 5.0質量%
1,3−ブチレングリコール 3.0質量%
モノエタノールアミン 14.0質量%
1,8−シネオール 0.5質量%
パラアミノフェノール 適量
レゾルシン 適量
精製水 残部
第1剤の合計 80.0質量%
[第2剤]
35体積%過酸化水素 9.0質量%
精製水 11.0質量%
第2剤の合計 20.0質量%
[ヘアカラー]
第1剤と第2剤の合計 100.0質量%
【0168】
(処方例21 貼付剤)
下記組成からなる膏体を支持体上に、塗布し、貼付剤とした。
[貼付剤の膏体の組成]
ポリアクリル酸 5.0質量%
ポリアクリル酸ナトリウム 2.0質量%
グリセリン 15.0質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.7質量%
サリチル酸メチル 0.2質量%
メントール 0.5質量%
1,8−シネオール 0.5質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、式(I):
【化1】


(式中、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R4は酸素原子または硫黄原子を示す)
で表される化合物を含有することを特徴とするTRPA1の活性抑制剤。
【請求項2】
TRPA1の活性を抑制する活性抑制方法であって、式(I):
【化2】


(式中、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基、R4は酸素原子または硫黄原子を示す)
で表される化合物をTRPA1と接触させることを特徴とするTRPA1の活性抑制方法。
【請求項3】
TRPA1を活性化する成分が配合された外用剤であって、請求項1に記載のTRPA1の活性抑制剤を含有することを特徴とする外用剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−62304(P2012−62304A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54523(P2011−54523)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】