説明

VEGFRの変化体ならびに妊娠関連の医学的状態の診断および処置におけるその使用

配列番号4に対して少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、VEGFR変化体である単離されたポリペプチド、およびこのポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドが開示される。単離されたポリヌクレオチドに対して特異的にハイブリダイゼーションすることができる核酸配列を含むポリヌクレオチド、および単離されたポリペプチドに対して特異的に結合する抗原認識ドメインを有する単離された抗体もまた開示される。これらを含む医薬組成物、診断方法および処置方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、VEGF関連の医学的状態を診断および処置するための単離されたポリペプチド、ならびに、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、内皮特異的な有糸分裂促進因子であり、脈管形成および血管形成の両方を促進させることにおいて重要な役割を果たす。VEGFは、胚の脈管形成の期間中における新しい血管の形成において、また、成体の生涯の期間中における血管形成において重要な調節的機能を果たす。
【0003】
VEGFの様々な活性が、主として、2つの高親和性の受容体チロシンキナーゼとのその相互作用を介して、すなわち、ともに血管内皮細胞表面に発現されるfms様チロシンキナーゼ−1(Flt−1/VEGFR−1)およびキナーゼ挿入ドメイン領域(KDR/Flk−1/VEGFR−2)とのその相互作用を介して媒介される。Flt−1の選択的スプライシングは、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを有さないが、リガンド結合ドメインを保持する、可溶性Flt1(sFlt1)として示される内因的に分泌されるタンパク質の産生をもたらす[He他、Mol.Endocrinol.(1999)、13:537〜545]。従って、sFlt1は、循環しているVEGFと結合し、VEGFと、その内因性受容体との相互作用を妨げることによって、循環しているVEGFに拮抗することができる。sFlt1はまた、胎盤増殖因子(PlGF)(これは、主に胎盤において産生されるVEGFファミリーの別のメンバーであり、同様にまた、VEGF−Bとして知られている別のVEGFファミリーメンバーである)と結合し、これに拮抗する。
【0004】
VEGFは、腫瘍形成および固形腫瘍の転移を含めて、数多くの病理学的状態における血管形成の重要な媒介因子である。VEGF/VEGF受容体経路の数多くの阻害剤(例えば、VEGFについて特異的なモノクローナル抗体)が、抗血管形成機構を介して腫瘍の成長を妨げることが示されている[Kim他、Nature(1993)、362(6423):841〜4]。
【0005】
子癇前症は、妊娠の最も一般的で、危険な、予測できない合併症であり、世界中で、母体、胎児および新生児の死亡率の主要な原因の1つである。子癇前症の原因は依然として不明であるが、主たる原因は、母体の内皮機能不全、代謝における変化、および、炎症を引き起こすホルモンまたは化学的作用因を放出することを胎盤に行わせる胎盤への不適切な血液供給であると思われる[Drife JO,Magowan(編)、Clinical Obstetrics and Gynecology、第39章、367頁〜370頁]。結果として、これらは、母親におけるタンパク尿を伴う高血圧症を、損なわれた胎盤血流、胎児成長制限、および、結果としての胎児の酸化的ストレスと一緒に引き起こす。
【0006】
妊娠期間中、循環sFlt1の主要な供給源は胎盤であり、ほんの少量が他の組織によって(例えば、内皮細胞および単球によって)産生される。近年の研究では、sFlt−1の胎盤発現および血清レベルが、正常な妊娠と比較して、循環している遊離VEGFおよび遊離PlGFの低下したレベルと併せて、子癇前症の妊娠ではアップレギュレーションされるという発見が裏付けられている[Maynard他、J.Clin.Invest.(2003)、111:649〜658]。sFlt1の増大、及びそれに続く遊離PlGFおよび遊離VEGFの低下が、臨床的疾患の発症の数週間前に現れることが見出され、また、重篤な子癇前症および早期発症の子癇前症ではより顕著であるようである[Levine他、N.Engl.J.Med.(2004)、350:672〜683]。分娩後、sFlt−1のレベルが正常な妊娠および子癇前症の妊娠の両方において劇的に低下する[Maynard他、上掲]。従って、過剰なsFlt1は、VEGFおよびPlGFを中和することによって、子癇前症での母体の症候群の病理発生において非常に重要な役割を果たしているかもしれない。
【0007】
Lam他[Lam他、Hypertension(2005)、46(5):1077〜85]は、循環している血管形成タンパク質(例えば、PlGF)または抗血管形成タンパク質(例えば、sFLt−1)を、子癇前症を予測するための診断およびスクリーニングのツールとして妊婦の血液および尿において測定することの可能性を検討している。Lam他は、異なるトリメスターにおける様々なsFlt−1カットオフ値について、オッズ比、感度および特異性を調べている。Lam他は、高いsFLt−1レベルと、子癇前症の危険性および存在との間における強い相関を記載する。さらに、Lam他は、sFLt−1のレベルが高くなるほど、sFLt−1のレベルにより、子癇前症が予測され得るという結論を得ている。
【0008】
PCT公開番号WO2006/069373は、妊娠における子癇前症および高血圧障害を診断するための方法、組成物およびキットを開示する。より具体的には、WO2006/069373は、子癇前症または子癇前症に対する素因を、妊婦の尿サンプルにおける血管形成因子(具体的には、VEGF、PlGFおよびsFlt−1)のレベルをモニターすることによって評価することを教示する。WO2006/069373は、sFLt−1のレベルが高くなるほど、sFLt−1のレベルにより、子癇前症が予測され得ることを教示する。さらに、WO2006/069373によれば、子癇前症には、PlGFの尿中濃度における著しい低下およびVEGFの尿中濃度における著しい増大が伴う。
【0009】
米国特許出願公開第20050148040号は、妊娠性障害(例えば、妊娠性糖尿病、子癇前症および妊娠性高血圧)を、特異的なバイオマーカーを使用してスクリーニングするための方法および組成物を開示する。教示されるバイオマーカーは、インスリン抵抗性バイオマーカー[例えば、性ホルモン結合性グロブリン(SHBG)]、および、sFlt−1を含む血管形成バイオマーカーである。より具体的には、2つの経路における変化、すなわち、インスリン抵抗性(例えば、SHBGの低い血清レベルによって立証されるようなインスリン抵抗性)および血管形成(例えば、低いPlGFまたは高いsFLt1によって立証されるような血管形成)における変化を、これらが組み合わされたとき、妊娠性障害を予測するために使用することができる。
【0010】
米国特許出願公開第20050025762号は、子癇前症および子癇を診断および処置するための方法を開示する。米国特許出願公開第20050025762号は、VEGFまたはPlGFのレベルを増大させる化合物(例えば、ニコチン、アデノシン)を使用して、また、sFlt−1のレベルを低下させる化合物(例えば、精製されたsFlt−1抗体、sFlt−1の抗原結合フラグメント、小さい干渉RNA、または、二本鎖RNA)、例えば、sFlt−1と結合し、増殖因子が結合することを阻止する化合物(例えば、化学化合物、ポリペプチド、ペプチド、抗体)などを使用して、子癇前症および子癇を処置または防止することを教示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、タンパク質BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)によって決定されるとき、少なくとも70%の相同性を配列番号4に対して有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドが提供される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離されたポリペプチドはVEGFと結合することができる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離されたポリペプチドは可溶性である。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離されたポリペプチドは、配列番号4に示される通りである。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離されたポリペプチドは、配列番号2に示される通りである。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離されたポリペプチドはさらに、そのアミノ酸配列に結合された異種アミノ酸配列を含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、異種アミノ酸配列は、免疫グロブリン、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、絨毛性性腺刺激ホルモン(CGβ)由来のカルボキシ末端ペプチド(CTP)、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)からなる群から選択される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離されたポリペプチドは非タンパク質性成分に結合される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非タンパク質性成分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)(SMA)、およびジビニルエーテル・無水マレイン酸コポリマー(DIVEMA)からなる群から選択される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、単離されたポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド(ただし、単離されたポリヌクレオチドはゲノムのFlt1ではない)が提供される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単離されたポリヌクレオチドはmRNAまたはcDNAである。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、配列番号1または配列番号3に示されるような単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、シス作用する調節エレメントに機能的に結合された前記核酸配列を含む核酸構築物が提供される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、配列番号9に対してではなく、前記単離されたポリヌクレオチドに対して特異的にハイブリダイゼーションすることができる核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、配列番号10に対してではなく、前記単離されたポリペプチドに対して特異的に結合する抗原認識ドメインを含む単離された抗体が提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、前記単離されたポリペプチドと、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、前記単離されたポリヌクレオチドと、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、前記抗体と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、前記単離されたポリヌクレオチドと、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、VEGF関連の医学的状態を処置するために特定される医薬品の製造のための、sFlt−1(配列番号9または配列番号10)ではなく、sFlt−14(配列番号1または配列番号2)の活性および/または発現を調節することができる作用因の使用が提供される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、VEGF関連の医学的状態には、VEGFの低下した活性および/または発現が伴い、調節することは、sFlt−14をダウンレギュレーションすることを含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、VEGF関連の医学的状態には、VEGFの過度な活性および/または発現が伴い、調節することは、sFlt−14をアップレギュレーションすることを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、VEGF関連の医学的状態は、子癇前症、妊娠性糖尿病、妊娠性高血圧、胎児成長制限(FGR)、胎児アルコール症候群(FAS)、ガン、角膜血管新生、および高血圧からなる群から選択される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、作用因は前記抗体を含む。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、作用因は前記単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、作用因は前記単離されたポリペプチドを含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、作用因は前記単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、生物学的サンプルにおけるsFlt−14(配列番号2)を検出する方法が提供され、この場合、この方法は、(a)生物学的サンプルを前記抗体と接触させ、その結果、sFlt−14および前記抗体が複合体を形成するようにすること、および(b)複合体の存在またはレベルを測定し、それにより、生物学的サンプルにおけるsFlt−14を検出することを含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、生物学的サンプルにおけるsFlt−14(配列番号1)を検出する方法が提供され、この場合、この方法は、(a)生物学的サンプルを前記単離されたポリヌクレオチドと接触させ、その結果、ハイブリダイゼーション複合体を形成するようにすること、および(b)複合体の存在またはレベルを測定し、それにより、生物学的サンプルにおけるsFlt−14を検出することを含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、測定することが、PCR、リアルタイムPCR、RT−PCR、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、ノーザンブロットおよびインシトゥーハイブリダイゼーションからなる群から選択される方法によって行われる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、sFlt−1(配列番号9または配列番号10)ではなく、sFlt−14(配列番号1または配列番号2)を認識することができる作用因を使用して、sFlt−14(配列番号1または配列番号2)の発現レベルを対象の生物学的サンプルにおいて検出することを含む、母体または胎児のストレスに関連する妊娠関連の医学的状態をその必要性のある対象において診断する方法が提供され、ただし、この場合、所定の閾値を超えるsFlt−14の発現レベルにより、母体または胎児のストレスに関連する妊娠関連の医学的状態が示される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態における1つの局面によれば、sFlt−14(配列番号1または配列番号2)の発現レベルを生物学的サンプルにおいて検出することを含む、母体または胎児のストレスに関連する妊娠関連の医学的状態をその必要性のある対象において診断する方法が提供され、ただし、この場合、生物学的サンプルは妊娠第13週以降の生物学的サンプルであり、また、所定の閾値を超えるsFlt−14の発現レベルにより、母体または胎児のストレスに関連する妊娠関連の医学的状態が示される。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、状態は、子癇前症、妊娠性糖尿病、妊娠性高血圧、胎児成長制限(FGR)および胎児アルコール症候群(FAS)からなる群から選択される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは、尿サンプル、血液サンプル、血清サンプル、胎盤生検物、絨毛膜絨毛サンプル、および羊水サンプルからなる群から選択される。
【0045】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0046】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、FLT−1の完全な膜貫通型受容体(上段)、周知の可溶性のsFlt1変化体(中段)、および、本発明の新規なsFlt−14変化体(下段)の概略図である。矢印は翻訳開始点(ATG)および停止点(STOP)を示す。エキソンが、暗い数字付きボックスによって示され、第13イントロンおよび第14イントロンが、明るい数字付きボックスによって示される。
【図2A】図2Aは、新規なsFLt−14イソ型の特有なcDNA配列を示す。配列がヒトの子癇前症胎盤から3’RACEによってクローン化された。示された配列は第14エキソンの開始部の近くから始まり、ポリAテールとともに終わる。斜字体の文字は、第14エキソンおよび第14イントロンに由来するコード領域を表す。停止コドンが太字で表される。下線部の配列は、3’UTRにおいて重なるAlu反復である。
【図2B】図2Bは、上記に現れる配列(図2A)によるblast検索の後でのUCSCゲノムブラウザーから取られたウインドウを示す。検索により、上記配列において見出されるスプライシングパターンと類似するスプライシングパターンを有する3つのEST(AI188382、N47911およびAA035437)が突き止められた。
【図3】図3Aは、そのmRNAから推定されるようなsFlt−14のアミノ酸配列を示す。元の読み枠が保たれ、sFlt−1および膜貫通型Fltの既知の翻訳開始点から始まっていた。(sFlt−1とではなく)全長の膜貫通型受容体と共通して両者により有されるアミノ酸には、下線が付される。(第14イントロンに由来する)本発明の変化体sFlt−14においてのみ見出される特有な28個のアミノ酸が太字で示される。図3Bは、sFlt−1と、sFlt−14とを区別する特異的なポリクローナル抗体を作製するために合成されたペプチドの配列を示す。注目すべきことに、CESSはsFlt−14に特有であるのに対して、CHFKは、タンパク質サイズの分析との併用でのみ、これらの選択的にスプライシングされたイソ型を区別することができる。
【図4】図4A〜図4Bは、全長型膜受容体Flt、sFlt−1(これはまた、sFlt−13と呼ばれる)、および、新規なsFlt−14の種々の細胞タイプにおける相対的存在量を示す写真である。図4Aは、内皮細胞(左側カラム)、正常な胎盤(中央カラム)および子癇前症の胎盤(右側カラム)における全長型受容体Flt、ならびに、その2つの選択的スプライシング変化体のsFlt−1およびsFlt−14の発現を示す。RNAブロットを、3つすべてに共通する細胞外配列を検出するプローブとハイブリダイゼーションさせた(それぞれが、サイズにかかわらず、等しい強度のバンドをもたらした)。注目すべきことに、内皮細胞は全長型受容体およびsFlt1を優先的に産生し、これに対して、胎盤は主にsFlt−14を産生する。しかしながら、sFlt−14の劇的なアップレギュレーションが子癇前症の胎盤において示される;図4Bは、内皮細胞(EC)の初代培養物、および、ヒトの伏在静脈から単離された血管平滑筋細胞(VSMC)におけるsFlt−1およびsFlt−14の発現を示す。注目すべきことに、sFlt1およびsFlt−14がECおよびVSMCによってそれぞれもっぱら発現される。図4A〜図4Bの下段パネルは、負荷コントロールとして使用された28S RNAおよび18S RNAの発現を表す。
【図5】図5A〜図5Dは、子癇前症胎盤の関連においてsFlt−14のmRNA発現およびタンパク質発現を示す写真である。図5A〜図5Bは、特異的なCESS抗体を使用するsFlt−14タンパク質の免疫組織化学的検出を示す;図5C〜図5Dは、sFlt−14発現細胞を特定する(第14イントロン由来の)sFlt−14特異的プローブ)によるインシトゥーハイブリダイゼーションを示す。注目すべきは、子癇前症胎盤の合胞体性結節におけるsFlt−14のmRNAおよびタンパク質の大量の発現である。
【図6】図6は、CESS抗体またはFlt1抗体を用いた正常な満期胎盤におけるsFlt−14タンパク質の免疫沈殿を示すウエスタン免疫ブロット画像である。
【図7】図7は、sFlt−14の質量分析法による同定を示す(配列番号16〜配列番号19)。
【図8】図8は、子癇前症被験者の血清サンプルおよび胎盤サンプルにおけるsFlt−14タンパク質の発現レベルを示すウエスタン免疫ブロット画像である。タンパク質の検出を、特異的なsFlt−14抗体(CESS、これは配列番号5に対して向けられる)を使用して行った。
【図9】図9A〜図9Bは、妊娠の経過期間中におけるsFltタンパク質の特徴づけを示す。図9Aは、正常な妊娠の異なる時点の期間中におけるsFlt−1およびsFlt−14のRNA発現を例示する;図9Bは、正常な妊娠の異なる時点の期間中におけるこれら2つのsFlt1イソ型(sFlt−1およびsFlt−14)の比率の定量を示す:第9週〜第11週、第13週および第39週。
【図10】図10A〜図10Bは、VEGF受容体としてのsFlt−14を示す。図10Aは、細胞画分(c)または培地(m)からの組換えsFlt−14タンパク質および組換えsFlt−1タンパク質を示す。sFlt−14が細胞画分および培地において115Kdおよび130Kdでそれぞれ突き止められる。sFlt−1が細胞画分および培地において100Kdおよび120Kdでそれぞれ突き止められる;図10Bは、VEGFが(ブタ大動脈内皮細胞の成長培地を加えることによる)VEGF−R2の添加の前にsFlt−1またはsFlt−14とプレインキュベーションされたVEGF阻害アッセイを示す。VEGF−R2のリン酸化レベルを添加sFlt−14/VEGF比率または添加sFlt−1/VEGF比率の関数として測定した。注目すべきことに、VEGF−R2リン酸化のほぼ完全な阻害が1:1のsFlt−14/VEGF比率において既に明白であった。
【図11】図11A〜図11Bは、ヒトの角膜切片におけるsFlt−14の発現を示す。図11Aは、特異的な抗体(配列番号5に対して向けられるCESS)を使用するsFlt−14の免疫組織化学を示す;図11Bは、免疫前血清を使用するコントロールの免疫組織化学を示す。注目すべきことに、sFlt−14が角膜上皮において容易に認められた。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、VEGF関連の医学的状態を診断および処置するための単離されたポリペプチド、ならびに、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0049】
本発明の原理および操作は、図面および付随する説明を参照してより良く理解されることができる。
【0050】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。また、本明細書中において用いられる表現法および用語法は説明のためであって、限定として見なされるべきでないことを理解しなければならない。
【0051】
可溶性のVEGF受容体sFlt−1は、循環しているVEGFおよびPlGFと特異的に結合し、これらに拮抗するので、子癇前症の主原因として以前から予想されており、そのようなものとして、この状態のマーカーとして、また、この状態を処置するための標的として示唆されていた[Maynard他、上掲;Levine他、上掲]。これらの知見は、臨床的ツール(例えば、可溶性のVEGF受容体および非可溶性のVEGF受容体がともに有する配列に向けられた抗体およびオリゴヌクレオチドなど)の使用に基づいていた。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を実行に移しているとき、本発明者らは新規なVEGF受容体変化体を特定している。この変化体は可溶性で、分泌され、特有なアミノ酸配列(配列番号4)を含み、子癇前症の期間中に発現される。sFlt−14のこの特有な配列(配列番号4または配列番号3)に対して特異的に向けられた抗体またはオリゴヌクレオチドを使用して、本発明者らは、子癇前症において非常に発現されるのは、sFlt−1ではなく、むしろ、sFlt−14であること(上記)を示すことができた。これらの結果からは、sFlt−14の臨床的価値が、何ら疑いの余地もなく証明される。
【0053】
下記の実施例の節において例示されるように、本発明の新規なsFlt−14(配列番号1および配列番号2)は、第14イントロンの読み過しにより得られる特有な28個のアミノ酸の配列(配列番号4、実施例1および図1を参照のこと)を含むことによって、全長の膜貫通型受容体Flt1、および、既知のsFlt1とは異なる。この新規なsFlt−14受容体は胎盤において発現され、子癇前症の胎盤において非常にアップレギュレーションされる(実施例3および図4Aを参照のこと)。そのうえ、本明細書中に示される結果は、合胞体性結節内の栄養膜細胞がsFlt−14を産生することを例示する(実施例4および図5A〜図5D)。従って、sFlt−14は子癇前症またはその素因の有益な指標を提供する。さらに、sFlt−14は、VEGFRリガンド(例えば、VEGF)に拮抗する際において機能するので、sFlt−14のレベルを調節すること(例えば、ダウンレギュレーションまたはアップレギュレーションすること)は、VEGF関連の状態(過度な血管形成、例えば、ガンおよび血管新生角膜)の処置における強力なツールとして役立ち得る。
【0054】
従って、本発明の1つの局面によれば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約87%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約93%、少なくとも約95%またはそれ以上の同一性または相同性、例えば、100%の同一性または相同性を配列番号4に対して有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド(ただし、単離されたポリヌクレオチドはゲノムのFlt1ではない)が提供される。
【0055】
本明細書中で使用される表現「単離されたポリヌクレオチド」は、RNA配列、相補的ポリヌクレオチド配列(Cdna)および/または複合ポリヌクレオチド配列(例えば、上記の組合せ)の形態で単離および提供される一本鎖または二本鎖の核酸配列を示す。
【0056】
本明細書中で使用される表現「相補的ポリヌクレオチド配列」は、逆転写酵素または任意の他のRNA依存性DNAポリメラーゼを使用するメッセンジャーRNAの逆転写から生じる配列を示す。そのような配列は続いて、DNA依存性DNAポリメラーゼを使用してインビボまたはインビトロで増幅され得る。
【0057】
本明細書中で使用される表現「複合ポリヌクレオチド配列」は、少なくとも一部が相補的であり、かつ、少なくとも一部がゲノム性である配列を示す。複合配列は、本発明のポリペプチドをコードするために要求されるいくつかのエキソン配列、ならびに、その間に介在するいくつかのイントロン配列を含むことができる。イントロン配列は、他の遺伝子のものを含めて、任意の供給源のものが可能であり、典型的には、保存されたスプライシングシグナル配列を含む。そのようなイントロン配列はさらに、シス作用する発現調節エレメント(これについては本明細書中下記において詳しくさらに説明される)を含むことができる。
【0058】
本発明のこの局面の1つの例示的な実施形態によれば、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドによってコードされる単離されたポリペプチドはVEGFRリガンドと結合することができる。そのようなリガンドの例には、限定されないが、VEGF(VEGF−A(GeneBankアクセション番号NP_001020537)、VEGF−B(GeneBankアクセション番号NP_003368))および胎盤増殖因子(PlGF、GeneBankアクセション番号NP_002623)が含まれる。
【0059】
1つの例示的な実施形態によれば、ポリペプチドの結合は、約10−9M〜10−12Mの範囲にあることが予想される。
【0060】
本発明のこの局面の1つの例示的な実施形態によれば、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号1に示される通りである。注目すべきことに、本発明のいくつかの実施形態のポリヌクレオチド配列の天然に存在する形態はゲノムFlt1のスプライス変化体であることが示唆される。ゲノムFlt1の例が、ヒトのゲノムFlt1については、GeneBankアクセション番号NC_000013.9領域:相補体(27773790〜27967232)GI:51511729において、また、チンパンジーのゲノムFlt1については、GeneBankアクセション番号NC_006480.2領域:相補体(27975879〜28168596)GI:114795054において示される(エキソン/イントロン編成を示す図1を参照のこと)。
【0061】
本明細書中で使用される表現「スプライス変化体」は、VEGF受容体遺伝子から転写されるRNAの代替形態を示す。スプライス変化が、天然には、転写されたRNA分子の内部の選択的スプライシング部位の使用により生じるか、または、それほど一般的ではないが、別々に転写されたRNA分子の間において生じ、従って、スプライス変化は、同じ遺伝子から転写されたいくつかの異なるmRNAをもたらすことがある。スプライス変化体は、イントロンの包含、エキソンの除外、または、両者の組合せに起因する変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする場合がある。スプライス変化体の用語はまた、本明細書中では、遺伝子から転写されたmRNAのスプライス変化体によってコードされるポリペプチドを示すために示される。
【0062】
代替実施形態によれば、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、配列番号3に示される通りである。
【0063】
本明細書中上記に記載される配列のホモログもまた本発明によって想定されることが理解される。従って、本発明のこの局面のポリヌクレオチドは、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約87%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約93%、少なくとも約95%またはそれ以上の同一性または相同性、例えば、100%の同一性または相同性を、設定省略時のパラメーターを使用する、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のBlastNソフトウエアを使用して決定されたとき、配列番号1または配列番号3に対して有する核酸配列を有することができる。
【0064】
従って、本発明は、本明細書中上記で記載される核酸配列、そのフラグメント、それとのハイブリダイゼーションが可能な配列、それとの相同性を有する配列、類似するポリペプチドを異なるコドン使用頻度によりコードする配列、ランダムであろうとも、または、標的化された様式であろうとも、天然に存在するか、または、人為的に導入されたかによらず、変異(例えば、1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、挿入または置換など)によって特徴づけられる変化した配列を包含する。
【0065】
本発明のポリヌクレオチド配列は、以前には特定されていないポリペプチドをコードするので、本発明はまた、本明細書中上記で記載される様々な単離されたポリヌクレオチドおよびそのそれぞれの核酸フラグメントによってコードされる様々な新規なポリペプチドまたはその一部分を包含する。
【0066】
従って、本発明の別の局面によれば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約87%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約93%、少なくとも約95%またはそれ以上の相同性、例えば、100%の相同性を、タンパク質BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)によって決定されるとき、配列番号4に対して有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドが提供される。
【0067】
1つの例示的な実施形態において、単離されたポリペプチドは、配列番号2または配列番号4に示される通りである。
【0068】
本発明はまた、上記で記載されるポリペプチド、および、ランダムであろうとも、または、標的化された様式であろうとも、天然に存在するか、または、人為的に導入されたかによらず、変異(例えば、1つまたは複数のアミノ酸の欠失、挿入または置換など)を有するポリペプチドの様々なフラグメント(例えば、特異的な抗原性決定基ほどに短いフラグメント、例えば、配列番号4などに由来する少なくとも約6個のアミノ酸、少なくとも約8個のアミノ酸、少なくとも約10個のアミノ酸、少なくとも約20個のアミノ酸など)を包含する。これらのフラグメントは、本発明の単離されたポリペプチドに対する抗体産生を誘発するために使用することができる。
【0069】
本明細書中で使用される用語「単離されたポリペプチド」は、単離された、天然のペプチド(分解産物または合成的に合成されたペプチドまたは組換えペプチドのいずれか)、およびペプチド模倣体(典型的には合成的に合成されたペプチド)、ならびにペプチドアナログであるペプトイドおよびセミペプトイドを包含し、これらは、例えば、ペプチドを体内でより安定化させる修飾、またはペプチドの細胞浸透能力を高める修飾を有しうる。そのような修飾には、限定されないが、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合の修飾(CH−NH、CH−S、CH−S=O、O=C−NH、CH−O、CH−CH、S=C−NH、CH=CHまたはCF=CHを含むが、これらに限定されない)、骨格の修飾、および残基の修飾が含まれる。ペプチド模倣体化合物を調製するための方法はこの分野では十分に知られており、例えば、Ramsden,C.A.編(1992),Quantitative Drug Design,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon Pressに具体的に記載される(これは、全体が本明細書中に示されるように参考として組み込まれる)。この点のさらなる詳細は、本明細書の下記に示される。
【0070】
ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)は、例えば、N−メチル化結合(−N(CH)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH−)、α−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは任意のアルキル(例えば、メチル)である)、カルバ結合(−CH−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH−CO−)(式中、Rは、炭素原子において自然界で示される「通常」の側鎖である)によって置換することができる。これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合の任意のところに存在することができ、そして同時に数カ所(2カ所〜3カ所)においてさえ存在することができる。
【0071】
天然の芳香族アミノ酸(Trp、TyrおよびPhe)は、テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(TIC)、ナフチレンアミン(Nol)、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体、またはo−メチル−Tyrなどの合成された非天然型の酸に置換されることができる。
【0072】
上述のことに加えて、本発明のポリペプチドはまた、1個以上の修飾されたアミノ酸または1個以上の非アミノ酸モノマー(例えば脂肪酸、複合体炭水化物など)も含むことができる。
【0073】
用語「アミノ酸」には、20個の天然に存在するアミノ酸;生体内で多くの場合には翻訳後修飾されたそのようなアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンを含む);および他の非通常型アミノ酸(2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンを含むが、これらに限定されない)が含まれることが理解される。さらに、用語「アミノ酸」には、D−アミノ酸およびL−アミノ酸の両方が含まれる。
【0074】
従って、本発明のポリペプチドは、短い長さのもの、典型的には、長さが、5アミノ酸〜10アミノ酸、10アミノ酸〜20アミノ酸、20アミノ酸〜50アミノ酸、50アミノ酸〜100アミノ酸のもの、および、より長いもの、例えば、長さが、100アミノ酸〜200アミノ酸、200アミノ酸〜300アミノ酸、300アミノ酸〜400アミノ酸、400アミノ酸〜500アミノ酸、500アミノ酸〜600アミノ酸、600アミノ酸〜733アミノ酸のものが可能である。
【0075】
模倣技術を、天然に存在するポリペプチド(例えば、配列番号2)と比較して、少なくとも1つの改変された特徴を有するために操作され、一方で、目的とする生物学的活性(例えば、VEGF結合および抗体結合など)を維持するペプチドを作製するために使用することができる。
【0076】
ペプチド模倣体の作製を、当該技術分野では周知の様々な方法を使用して行うことができ、そのような方法には、例えば、ディスプレイ技術が含まれる。
【0077】
従って、本発明では、複数のディスプレイビヒクル(例えば、ファージ、ウイルスまたは細菌など)を含み、それぞれが、sFlt−14の単離されたポリペプチド配列(例えば、配列番号2および配列番号4)に由来する少なくとも5個の連続するアミノ酸、少なくとも7個の連続するアミノ酸、少なくとも11個の連続するアミノ酸、少なくとも15個の連続するアミノ酸、少なくとも20個の連続するアミノ酸、少なくとも25個の連続するアミノ酸を呈示するディスプレイライブラリーが意図される。
【0078】
ペプチド模倣体はまた、計算生物学を使用して発見することができる。
【0079】
本発明の1つの実施形態によれば、単離されたポリペプチドは可溶性である。
【0080】
本明細書中で使用される用語「可溶性(の)」は、本発明の分子が、実質的な凝集を伴うことなく、生理学的な水溶液(約7のpH)に溶解することができること(例えば、100μg/mlを超える水性媒体での溶解性レベル)を示す。従って、可溶性のsFlt−14は、好ましくは、疎水性の膜貫通ドメインを有しないことが容易に理解される。
【0081】
可溶性であるので、本発明のポリペプチドは分泌され得る。下記の実施例の節において示されるように、本発明者らは、(sFlt−1ではなく)sFlt−14が、子癇前症被験者の血清において見出される可溶性の受容体であることを初めて明らかにしている(実施例7および実施例8)。従って、sFlt−14は子癇前症被験者の循環における主要なVEGF受容体である。
【0082】
本発明のペプチドは好ましくは線状形態で利用される。だが、環化がペプチドの特性を大きく妨害しない場合には、ペプチドの環状形態もまた利用され得ることが理解される。
【0083】
本発明のペプチドは、ペプチド合成の分野における当業者に既知の任意の技術によって合成されることができる。固相ペプチド合成については、多くの技術の要約が、Stewart,J.M.およびYoung,J.D.(1963)「Solid Phase Peptide Synthesis」W.H.Freeman Co.(San Francisco)に、また、Meienhofer,J.(1973)「Hormonal Proteins and Peptides」第2巻、46頁、Academic Press(New York)に見出されうる。古典的な溶液合成の概括については、Schroder,G.およびLupke,K.(1965)The Peptides、第1巻、Academic Press(New York)を参照のこと。
【0084】
一般に、ペプチド合成方法は、1つ以上のアミノ酸または好適に保護されたアミノ酸を成長中のペプチド鎖に逐次付加することを含む。通常、最初のアミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかが、好適な保護基によって保護される。保護または誘導体化されたアミノ酸は、その後、好適に保護された相補的な(アミノまたはカルボキシル)基を有する配列内の次のアミノ酸を、アミド連結を形成するために好適な条件のもとで加えることによって、不活性な固体担体に結合されることできるか、または、溶液中で利用されることができる。その後、保護基が、この新しく付加されたアミノ酸残基から除かれ、その後、次のアミノ酸(好適に保護されたアミノ酸)が加えられ、以降、同様に繰り返され;伝統的には、このプロセスはさらに洗浄工程を伴う。所望されるアミノ酸のすべてが適切な配列で連結された後、いずれかの残留する保護基(および何らかの固体担体)が、最終的なペプチド化合物を得るために、逐次的または同時に除かれる。この一般的な手順の簡便な変性によって、2つ以上のアミノ酸を一度に、例えば、保護されたトリペプチドを適切に保護されたジペプチドに(キラル中心をラセミ化させない条件のもとで)カップリングして、脱保護後にペンタペプチドを形成することなどによって、成長中の鎖に付加することが可能である。
【0085】
ペプチド合成のさらなる記載が米国特許第6472505号に開示される。本発明のペプチド化合物を調製する好ましい方法は、固相担体を利用する固相ペプチド合成を含む。大規模なペプチド合成がAndersson Biopolymers、2000、55(3):227〜50によって記載される。
【0086】
大量の本発明のペプチドが要求される場合に、本発明のポリペプチドは、組換え技術を使用して生成されることができる。そのような組換え技術は、Bitterら(1987)、Methods in Enzymol.153:516〜544;Studierら(1990)、Methods in Enzymol.185:60〜89;Brissonら(1984)、Nature、310:511〜514;Takamatsuら(1987)、EMBO J.6:307〜311;Coruzziら(1984)、EMBO J.3:1671〜1680;Brogliら(1984)、Science、224:838〜843;Gurleyら(1986)、Mol.Cell.Biol.6:559〜565;ならびに、Weissbach&Weissbach、1988、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、NY、第VIII節、421頁〜463頁によって記載される。
【0087】
簡単に記載すると、場合により読み枠を一致させて、異種アミノ酸配列(例えば、本明細書中下記においてさらに記載されるように、免疫グロブリン配列)をコードする核酸配列に融合され、また、(本明細書中下記において詳しく説明されるような)調節エレメント(例えば、プロモーターなど)の転写制御下に置かれる本発明の単離されたポリヌクレオチド(例えば、配列番号1、配列番号3)を含む発現構築物(すなわち、発現ベクター)が宿主細胞に導入される。
【0088】
哺乳動物細胞における発現については、pRK5系ベクター[Schall他、Cell、61:361〜370(1990)]およびCDM8系ベクター[Seed、Nature、329:840(1989)]を使用することができる。
【0089】
発現構築物を宿主細胞に導入する様々な方法が当該技術分野では周知であり、これらの方法には、エレクトロポレーション、リポフェクションおよび化学的形質転換(例えば、リン酸カルシウム)が含まれる。
【0090】
「形質転換された」細胞は、核酸配列によってコードされるポリペプチドの発現を可能にする好適な条件のもとで培養される。
【0091】
所定の期間の後、発現されたキメラ分子が細胞または細胞培養物から回収され、精製が組換えポリヌクレオチドの最終的使用に従って行われる。
【0092】
利用された宿主/ベクター系に依存して、構成的なプロモーターおよび誘導可能なプロモーター、転写エンハンサーエレメントおよび転写ターミネーターなどを含む数多くの好適な転写エレメントおよび翻訳エレメントのいずれかを発現ベクターにおいて使用することができる[例えば、Bitter他(1987)、Methods in Enzymol.、153:516〜544を参照のこと]。
【0093】
(キメラ体をコードする)挿入されたコード配列の転写および翻訳のための必要なエレメントを含有すること以外に、本発明の発現構築物はまた、発現された融合タンパク質の安定性、産生、精製、収率または毒性を最適化するために操作された配列を含むことができる。
【0094】
様々な原核生物細胞または真核生物細胞を、融合タンパク質をコードする配列を発現させるための宿主−発現システムとして使用することができる。これらには、微生物、例えば、キメラなコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、組換えプラスミドDNA発現ベクターまたは組換えコスミドDNA発現ベクターにより形質転換される細菌など;キメラなコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターにより形質転換される酵母;キメラなコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)により感染させられるか、または、キメラなコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミドなど)により形質転換される植物細胞システムが含まれるが、これらに限定されない。哺乳動物発現システムが、好ましくは、本発明のキメラ体を発現させるために使用される。
【0095】
分子を発現させるための宿主細胞株の選択は、主として、発現ベクターに依存する。真核生物発現システムが好ましい(例えば、哺乳動物および昆虫)。これは、真核生物発現システムは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)を可能にするからである。別の考慮事項が、要求されるタンパク質の量である。多くの場合、ミリグラム量を一過性のトランスフェクションによって産生させることができる。例えば、アデノウイルスEIAにより形質転換された293ヒト胚性腎臓細胞株を、効率的な発現を可能にするためにリン酸カルシウム法の改変法によってpRK5系ベクターにより一過性にトランスフェクションすることができる。CDM8系ベクターを、COS細胞をDEAE−デキストラン法によってトランスフェクションするために使用することができる[Aruffo他、Cell、61:1303〜1313(1990);Zettmeissl他、DNA Cell Biol.US、9:347〜353(1990)]。より多くの量のタンパク質が所望されるならば、分子を宿主細胞株の安定的なトランスフェクションの後で発現させることができる。分子のN末端における疎水性リーダー配列の存在は、トランスフェクションされた細胞による分子のプロセシングおよび分泌を確実にすることが理解される。
【0096】
細菌宿主システムまたは酵母宿主システムの使用は、製造費用を削減するために好ましい場合があることが理解される。しかしながら、細菌宿主システムはタンパク質のグリコシル化機構を有しないので、産生後のグリコシル化が必要となる場合がある。
【0097】
どのような場合でも、形質転換された細胞は、多量の組換えポリペプチドの発現を可能にする効果的な条件のもとで培養される。効果的な培養条件には、タンパク質の産生を可能にする効果的な培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が含まれるが、これらに限定されない。効果的な培地は、細胞が、本発明の組換えキメラ分子を産生するために培養される任意の培地を示す。そのような培地には、典型的には、資化可能な炭素源、窒素源およびリン酸源、ならびに、適切な塩、ミネラル、金属および他の栄養分(例えば、ビタミンなど)を有する水溶液が含まれる。本発明の細胞は、従来の発酵バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュおよびペトリ皿において培養することができる。培養は、組換え細胞について適切な温度、pHおよび酸素含量で行うことができる。そのような培養条件は当業者の専門的知識の範囲内である。
【0098】
産生のために使用されるベクターおよび宿主の系に依存して、本発明の得られたタンパク質は組換え細胞の内部に留まり得るか、あるいは、発酵培地中に分泌され得るか、あるいは、2つの細胞膜の間の空間(例えば、大腸菌におけるペリプラズム空間)に分泌され得るか、あるいは、細胞膜またはウイルス膜の外側表面に保持され得る。
【0099】
培養での所定の時間の後、組換えタンパク質の回収が行われる。
【0100】
本発明の分子は、好ましくは、「実質的に純粋な」形態で回収される。本明細書中で使用される「実質的に純粋な」は、本明細書中下記において記載される適用におけるタンパク質の効果的な使用を可能にする純度を示す。
【0101】
述べられたように、本発明のこの局面の単離されたポリペプチドはさらに、異種アミノ酸配列を含むことができる。
【0102】
本明細書中で使用される表現「異種アミノ酸配列」は、天然に存在するsFlt−14(配列番号2)のアミノ酸配列の一部を形成しないアミノ酸配列を示す。この配列は、好ましくは、溶解性を本発明のこの実施形態の分子に与え、また、好ましくは、血清におけるキメラ分子の半減期を増大させる。
【0103】
異種アミノ酸配列は一般には、本発明の単離されたポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に局在化される。
【0104】
1つまたは複数の異種アミノ酸配列を本発明のsFlt−14アミノ酸配列にコンジュゲート化することができる。融合タンパク質構築物において一般に使用される異種アミノ酸配列の例には、免疫グロブリン、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、絨毛性性腺刺激ホルモン(CGβ)由来のカルボキシ末端ペプチド(CTP)、および、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)が含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
異種配列と、sFlt−14アミノ酸配列との間における融合(コンジュゲート化)の正確な部位は重要ではなく、最適な部位を、ポリペプチドの機能性(例えば、VEGF結合)が維持される限り、日常的な実験によって求めることができる。リガンド結合を評価する様々な方法が当該技術分野では周知である(例えば、放射能標識されたリガンドを結合アッセイにおいて使用すること、または、ELISA)。
【0106】
加えて、または、代替として、本明細書中上記で述べられたように、本発明の単離されたポリペプチドを非タンパク質性成分に結合させることができる。
【0107】
従って、本発明の実施形態では、単離されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドが非タンパク質性成分に結合させられることが提供される。
【0108】
そのようなコンジュゲート分子は非常に安定であり(おそらくは非タンパク質性成分によってもたらされる立体的障害のために、インビボでのタンパク質分解活性に対して抵抗性であり)、また、本明細書中下記においてさらに記載されるように、安価で、非常に効率である一般的な固相合成法を使用して製造することができる。しかしながら、組換え技術が依然として使用され得ること、従って、組換えペプチド生成物はインビトロ修飾(例えば、PEG化)を受けることが理解される。
【0109】
本明細書中で使用される表現「非タンパク質性成分」は、上記のsFlt−14アミノ酸配列に結合させられる、ペプチド結合したアミノ酸を含まない分子を示す。1つの実施形態によれば、本発明のこの局面の非タンパク質性成分はポリマーまたはコポリマー(合成または天然)である。本発明の非タンパク質性成分の限定されない例には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ジビニルエーテル・無水マレイン酸コポリマー(DIVEMA;例えば、Kaneda Y他、1997、Biochem.Biophys.Res.Commun.、239:160〜5を参照のこと)、および、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)(SMA;例えば、Mu Y他、1999、Biochem Biophys Res Commun.、255:75〜9を参照のこと)が含まれる。
【0110】
そのような非タンパク質性成分のコンジュゲート化は本発明のこの局面のポリペプチドに安定性(例えば、プロテアーゼ活性に対する抵抗性)および/または溶解性(例えば、生物学的流体(例えば、血液、消化液など)における溶解性)を与え、一方で、その生物学的活性を保ち、かつ、その半減期を長くする。そのようなコンジュゲート化は、特に、短い半減期および血液からの迅速なクリアランスを示す治療タンパク質の場合には好都合である。コンジュゲート化されたタンパク質の血漿中における増大した半減期は、(その糸球体ろ過を制限する)タンパク質コンジュゲートの増大したサイズ、および、ポリマーの立体的障害に起因する低下したタンパク質分解から生じる。一般には、ペプチドあたり結合されるポリマー鎖が多くなるほど、半減期の延長が大きくなる。しかしながら、様々な対策が、本発明のsFlt−14アミノ酸配列の特異的な活性(例えば、sFlt−14がVEGFに結合すること)を低下させないために取られる。非タンパク質成分をアミノ酸配列にコンジュゲート化する様々な方法が、(例えば、Veronese FM、Biomaterials、第22(5)巻、2001、405頁〜417頁(13)、Elsevier Publishing;および、Haruhiko Kamada他、2000、Cancer Research、60:6416〜6420に記載されるように)当該技術分野では周知である(これらは参照により全体が本明細書中に組み込まれる)。
【0111】
従って、本発明者らは、可溶性で、分泌される新規なVEGFR変化体を発見している。この変化体は子癇前症被験者の血清および胎盤において発現され、そのようなものとして、その検出は、例えば、子癇前症の診断などにおいて臨床的に有益であり得る。
【0112】
従って、本発明のさらに別の局面のいくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルにおけるsFlt−14(例えば、配列番号2)を検出する方法(インビボ検出を含む)が提供される。
【0113】
典型的には、この方法は、sFlt−14のレベル、存在または比率(例えば、他のFlt−1イソ型(例えば、図9Bに示されるようにsFlt−1)に関する比率)を求めることによって行われる。
【0114】
本発明のこの局面のいくつかの実施形態によれば、この方法は、生物学的サンプルを、sFlt−14の単離されたポリペプチド(例えば、配列番号2)と特異的に結合し、配列番号10には結合しない抗原認識ドメインを含む抗体と接触させ、その結果、sFlt−14および抗体が複合体を形成するようにすること、および、複合体の存在またはレベルを測定し、それにより、生物学的サンプルにおけるsFlt−14を検出することを含む。
【0115】
本明細書中で使用される「生物学的サンプル」は、sFlt−14が存在し得る生物学的材料を示し、例えば、細胞、組織(例えば、胎盤、絨毛膜絨毛サンプル、固形腫瘍)、ならびに、流体、例えば、羊水、血液、血清、血漿、リンパ液、胆汁液、尿、唾液、喀痰、滑液、精液、涙液、脳脊髄液、気管支肺胞洗浄液、腹水、膿および馴化培地などを示す。生物学的サンプルは母体のサンプルまたは胎児のサンプルである。生物学的サンプルはエクスビボまたはインビトロで分析することができるが、生物学的サンプルはまた、被験者の身体から回収されることなく分析することができる。
【0116】
(下記の実施例の節において)実施例8および図9A〜図9Bに示されるように、sFlt−14が妊娠の第13週からもっぱら発現される。従って、sFlt−14のレベルまたは存在の分析がこの週よりも前に行われるとき、特異的な抗体またはオリゴヌクレオチドが好ましくは用いられる。第13週以降では、様々なFlt−1変化体の共通配列領域に向けられた抗体またはオリゴヌクレオチドの使用もまた意図され得る。
【0117】
従って、本発明のこの局面のいくつかの実施形態の抗体はアミノ酸配列CELYTSTSPSSSSSS(配列番号5)に対して向けさせることができる。このペプチドは、配列番号10に示されるように、他のFltポリペプチドには存在しない(すなわち、膜貫通型sFlt−1および可溶性sFlt−1には存在しない)、sFlt−14の特有な28個のアミノ酸の配列(配列番号4)に由来するアミノ酸を含む。代替として、抗体は、アミノ酸配列CHANGVPEPQITWFK(配列番号6)に対して向けさせることができる。このペプチドは、sFlt−1によってではなく、sFlt−14および膜貫通型Flt−1によって共通して有されるアミノ酸配列(配列番号10)に由来するアミノ酸を含む。逆に、抗体は、共通のアミノ酸配列および特有なアミノ酸配列の両方を含む架橋領域に対して向けさせることができる。抗体を向けさせることができる1つの例示的な架橋領域がHKIQQEPELYTSTS(配列番号15)である。様々な対策が、Flt−1またはその可溶性形態に対してではなく、sFlt−14に対して特異的である抗体を選択するために取られる。
【0118】
抗体作製のために選ばれる具体的なペプチドは、好ましくは、免疫原性であるように(すなわち、抗体応答を刺激することができるように)選択される。ペプチドの免疫原性を試験するための様々なパラメーターが当該技術分野では周知であり、これらには、異物性(foreginess)、分子サイズ、化学的組成および異種性、ならびに、抗原プロセシングおよび抗原提示に対する感受性が含まれるが、これらに限定されない。様々な配列分析ソフトウエアアプリケーションが当該技術分野では知られており、これらは、免疫原性指標を、例えば、Jameson−Wolfアルゴリズムに従って提供する。例には、Sciprot(www.asiaonline.net.hk/〜twcbio/DOCS/1/scPrtein.htmから入手可能)およびMacvector(www.accelrys.com/products/macvector/から入手可能)、ならびに、広く利用されているGCGパッケージ(Genetics Computer Group、Wisconsin)が含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
用語「抗体」は、完全な抗体分子、ならびに、標的ポリペプチドの抗原性部分と結合することができるその機能的フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)およびFvなど)を示す。これらの機能的な抗体フラグメントは本発明の好ましい実施形態を構成し、下記のように定義される:
(1)Fab、これは、抗体分子の一価の抗原結合性フラグメントを含有するフラグメントであり、完全な抗体を酵素パパインで消化して、無傷の軽鎖と、1つの重鎖の一部分とを生じさせることによって作製することができる;
(2)Fab’、これは、完全な抗体をペプシンで処理し、続いて、還元して、無傷の軽鎖と、重鎖の一部分とを生じさせることによって得ることができる、抗体分子のフラグメントである;2つのFab’フラグメントが1分子の抗体分子について得られる;
(3)(Fab’)、これは、完全な抗体を、その後の還元を伴うことなく、酵素ペプシンで処理することによって得ることができる、抗体のフラグメントである;(Fab’)は、2つのジスルフィド結合によってつながれた2つのFab’フラグメントの二量体である;
(4)Fv、これは、2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作されたフラグメントとして定義される;および
(5)単鎖抗体(「SCA」)、これは、例えば、米国特許第4946778号に記載されるような遺伝子融合された単鎖分子として、好適なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子である。
【0120】
このような抗体フラグメントを作製する方法が当技術分野では周知である(例えば、本明細書中に参考として組み込まれる、HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1988を参照のこと)。
【0121】
血清免疫グロブリン抗体(ポリクローナル抗血清)またはその反応性部分の精製を、当業者に既知である様々な方法によって達成することができ、そのような方法には、硫酸アンモニウムまたは硫酸ナトリウムによる沈殿化、それに続く、生理的食塩水に対する透析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーまたは免疫アフィニティークロマトグラフィー、ならびに、ゲルろ過、ゾーン電気泳動などが含まれる(Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(第2版、104頁〜126頁、1986年、Orland、Fla.、Academic Press)を参照のこと)。正常な生理学的条件のもとでは、様々な抗体が、血漿および他の体液、ならびに、特定の細胞の膜において見出され、また、B細胞として示されるタイプのリンパ球またはその機能的等価体によって産生される。IgGクラスの抗体は、ジスルフィド結合によって連結された4つのポリペプチド鎖から構成される。無傷のIgG分子の4つの鎖は、H鎖と呼ばれる2つの同一の重鎖、および、L鎖と呼ばれる2つの同一の軽鎖である。さらなるクラスには、IgD、IgE、IgA、IgMおよび関連したタンパク質が含まれる。
【0122】
モノクローナル抗体の作製および選抜のための様々な方法が、例えば、総説(例えば、TramontanoおよびSchloeder、Methods in Enzymolozy、178、551〜568、1989など)においてまとめられるように、当該技術分野では周知である。本発明のsFlt−14ポリペプチド(またはそのフラグメント)は、抗体をインビトロで作製するために使用することができる。より好ましくは、本発明のsFlt−14ポリペプチドは、抗体をインビボで誘発するために使用される。一般には、好適な宿主動物が本発明のsFlt−14ポリペプチドにより免疫化される。好都合には、使用される動物宿主は同系交配系統のマウスである。動物は典型的には、生理学的に許容され得るビヒクルにおける本発明のsFlt−14ポリペプチドの溶液と、免疫原に対する高まった免疫応答を達成する任意の好適なアジュバントとを含む混合物により免疫化される。例として、最初の免疫化を好都合には、本発明のsFlt−14ポリペプチドの溶液と、フロイント完全アジュバントとの混合物により達成することができ、この場合、混合物は油中水型エマルションの形態で調製される。典型的には、免疫化は、筋肉内に、皮内に、皮下に、腹腔内に、肉趾内に、または、任意の適切な投与経路によって動物に施される。免疫原の免疫化スケジュールは、必要に応じて適合化することができるが、通例的には、より穏和なアジュバント(例えば、フロイント不完全アジュバントなど)を使用する数回のその後の免疫化または二次的な免疫化を伴う。抗体力価およびsFlt−14ポリペプチドに対する結合の特異性を、例として、放射免疫アッセイまたは酵素結合免疫吸着アッセイ(これはELISAアッセイとして知られている)を含めて、何らかの便利な方法によって免疫化スケジュールの期間中に求めることができる。好適な抗体力価が達成されたとき、免疫化動物からの様々な抗体産生リンパ球が得られ、これらは、当該技術分野で周知のように培養され、選抜され、クローン化される。典型的には、リンパ球を免疫化動物の脾臓から多数得ることができるが、リンパ球はまた、循環、リンパ節または他のリンパ系器官からも回収することができる。リンパ球はその後、当該技術分野では周知のように、ハイブリドーマを得るために、任意の好適なミエローマ細胞株と融合される。代替として、リンパ球はまた、培養で成長するように刺激することができ、その後、これらのリンパ球を、確立されたプロトコルに従って、ウイルス、化学剤または核酸(例えば、ガン遺伝子など)にさらすことを含めて、当該技術分野で周知の方法によって不死化することができる。融合後、ハイブリドーマは、例えば、マルチウエルプレートにおいて、好適な培養条件のもとで培養され、培養上清が、選ばれたハプテンを認識する抗体を含有する培養物を特定するためにスクリーニングされる。本発明のsFlt−14ポリペプチドを認識する抗体を分泌するハイブリドーマが、適切な培養条件のもとで、限界希釈によってクローン化され、拡大培養される。モノクローナル抗体が精製され、免疫グロブリンのタイプおよび結合親和性に関して特徴づけされる。
【0123】
本発明による抗体フラグメントは、抗体のタンパク質分解的加水分解によって、あるいは、フラグメントをコードするDNAの大腸菌細胞または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養または他のタンパク質発現システム)における発現によって調製することができる。
【0124】
抗体フラグメントは、従来の方法による全長抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体フラグメントを、F(ab’)と呼ばれる5Sフラグメントを提供するためにペプシンによる抗体の酵素的切断によって製造することができる。このフラグメントはさらに、チオール還元剤、および、場合により、ジスルフィド連結の切断から生じるスルフヒドリル基のための保護基を使用してさらに切断して、3.5SのFab’一価フラグメントを生じさせることができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素的切断により、2つの一価のFab’フラグメントと、1つのFcフラグメントとが直接に生じる。これらの方法が、例えば、Goldenbergの米国特許第4036945号および同第4331647号、ならびに、それらに含まれる参考文献に記載される(これらの特許は本明細書によりその全体が参考として組み込まれる)。Porter,R.R.[Biochem.J.、73:119〜126(1959)]もまた参照のこと。フラグメントが、無傷の抗体によって認識される抗原に結合する限り、抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成するための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、あるいは、他の酵素的技術、化学的技術または遺伝学的技術などもまた使用することができる。
【0125】
FvフラグメントはV鎖およびV鎖の会合を含む。この会合は、Inbar他[Proc.Nat’l Acad.Sci.USA、69:2659〜62(1972)]に記載されるように非共有結合性である場合がある。あるいは、可変鎖を分子間ジスルフィド結合によって連結することができ、または、化学試薬(例えば、グルタルアルデヒドなど)によって架橋することができる。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによってつながれたV鎖およびV鎖を含む。このような単鎖の抗原結合タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドによってつながれたVドメインおよびVドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。そのような構造遺伝子は発現ベクターに挿入され、続いて、発現ベクターが宿主細胞(例えば、大腸菌など)に導入される。組換え宿主細胞により、リンカーペプチドが2つのVドメインを架橋する単一ポリペプチド鎖が合成される。scFvを製造する方法が、例えば、WhitlowおよびFilpula、Methods、2:97〜105(1991);Bird他、Science、242:423〜426(1988);Pack他、Bio/Technology、11:1271〜77(1993);およびLadner他、米国特許第4946778号によって記載される(これらの全ては本明細書によりその全体が参考として組み込まれる)。
【0126】
抗体フラグメントの別の形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。様々なCDRペプチド(「最小認識ユニット」)を、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、可変領域を抗体産生細胞のRNAから合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用して調製される。例えば、LarrickおよびFry[Methods、2:106〜10(1991)]を参照のこと。
【0127】
非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えば、抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)または他の抗原結合性の部分配列など)のキメラ分子である。ヒト化抗体には、レシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望する特異性、親和性および能力を有する例えば、マウス、ラット、ウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体において、または、移入されたCDR配列もしくはフレームワーク配列においてそれらのいずれにも見出されない残基を含む場合がある。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、かつ、フレームワーク領域(FR)のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域である少なくとも1つ(典型的には2つ)の可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体はまた、場合により、免疫グロブリンの定常領域(Fc)の一部分を少なくとも含み、典型的には、ヒト免疫グロブリンのそのような一部分を少なくとも含む[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593〜596(1992)]。
【0128】
非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が当該分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からヒト化抗体に導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、インポート残基と呼ばれ、そのようなインポート残基は、典型的には、インポート可変ドメインから選ばれる。ヒト化は本質的には、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに使用することによって、Winterおよび共同研究者らの方法に従って行うことができる[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜327(1988);Verhoeyen他、Science、239:1534〜1536(1988)]。従って、そのようなヒト化抗体は、無傷のヒト可変ドメインの実質的に一部が非ヒト種由来の対応する配列によって置換されているキメラ抗体である(米国特許第4816567号)。実際には、ヒト化抗体は典型的には、一部のCDR残基と、可能であれば、一部のFR残基とが、齧歯類抗体における類似部位に由来する残基によって置換されるヒト抗体である。
【0129】
ヒト抗体はまた、当該技術分野で既知の様々な技術を使用して製造することができ、そのような技術には、ファージ呈示ライブラリー[HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marks他、J.Mol.Biol.、222:581(1991)]が含まれる。Cole他およびBoerner他の技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用することができる(Cole他、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁(1985);およびBoerner他、J.Immunol.、147(1):86〜95(1991))。同様に、ヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリンの遺伝子座をトランスジェニック動物(例えば、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているマウス)に導入することによって作製することができる。抗原による攻撃を受けたとき、ヒト抗体の産生が認められ、これは、遺伝子再配置、組み立ておよび抗体レパートリーを含めて、すべての点でヒトにおいて見られ得る抗体産生と非常に類似する。この方法が、例えば、米国特許第5545807号、同第5545806号、同第5569825号、同第5625126号、同第5633425号および同第5661016号において、また、下記の科学的刊行物において記載される:Marks他、Bio/Technology、10;779〜783(1992);Lonberg他、Nature、368:856〜859(1994);Morrison、Nature、368:812〜13(1994);Fishwild他、Nature Biotechnology、14、845〜51(1996);Neuberger、Nature Biotechnology、14:826(1996);LonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.、13、65〜93(1995)。
【0130】
従って、抗体を、免疫複合体を形成するように生物学的サンプルと接触させることができる。複合体のレベルおよび存在の検出を、当該技術分野では周知の方法を使用して行うことができる。そのような方法の例には、ウエスタンブロット分析、放射免疫アッセイ(RIA)分析、蛍光活性化細胞分取(FACS)分析および免疫組織化学的分析が含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
代替として、sFlt−14の検出がポリヌクレオチドレベルである場合がある。この目的を達成するために、サンプルは、ハイブリダイゼーション複合体を形成するように、sFlt−1(配列番号9)に対してではなく、sFlt−14(配列番号1または配列番号3)に対して、または、架橋配列(例えば、配列番号8に示されるような架橋配列)に対して特異的に結合する核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド)と接触させられる。
【0132】
十分な時間のインキュベーションの後、複合体の存在またはレベルが測定され、それにより、生物学的サンプルにおけるsFlt−14を検出する。
【0133】
例えば、他のFlt−1ポリヌクレオチド(例えば、膜固定のFlt−1および可溶性のFlt−1)、例えば、sFlt−1(配列番号9)などに対してではなく、sFlt−14ポリヌクレオチドに対して特異的である配列に結合することができるオリゴヌクレオチドを使用することができる。そのような配列が、単離されたポリヌクレオチドの非翻訳領域またはオープンリーディングフレームに存在し得る。
【0134】
本明細書中で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)またはそれらの模倣体の一本鎖または二本鎖のオリゴマーまたはポリマーを示す。この用語は、天然に存在する塩基、糖および共有結合性ヌクレオチド間連結(例えば、バックボーン)から構成されるオリゴヌクレオチド、ならびに、天然に存在するそれぞれの部分と同様に機能する、天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。
【0135】
本明細書中で使用される表現「特異的にハイブリダイズすることができる」は、RNA:RNA分子、RNA:DNA分子、および/またはDNA:DNA分子のような二重鎖分子を形成することを示す。
【0136】
本発明の教示に従って設計されるオリゴヌクレオチドは、酵素的合成または固相合成のような、この分野で知られている任意のオリゴヌクレオチド合成方法に従って作製されることができる。固相合成を実行するための設備および試薬が、例えば、Applied Biosystemsから市販されている。そのような合成のための任意の他の手段もまた用いることができる:オリゴヌクレオチドの実際の合成は十分に当業者の能力の範囲内であり、例えば、Sambrook,J.およびRussell,D.W.(2001)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」;Ausubel,R.M.ら編(1994,1989)「Current Protocols in Molecular Biology」第I巻〜第III巻、John Wiley and Sons、バルチモア、メリーランド;Perbal,B.(1988)「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley&Sons、ニューヨーク;およびGait,M.J.編(1984)「Oligonucleotide Synthesis」に詳しく記載されるような確立された方法論によって成し遂げることができ、固相化学(例えば、シアノエチルホスホルアミダイト)、それに続く脱保護、脱塩および精製(例えば、自動化されたトリチル−オン法またはHPLCによる精製)を利用して成し遂げることができる。
【0137】
本発明のオリゴヌクレオチドは、本明細書において上に記載される配列改変と特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも17塩基、少なくとも18塩基、少なくとも19塩基、少なくとも20塩基、少なくとも22塩基、少なくとも25塩基、少なくとも30塩基または少なくとも40塩基のものである。
【0138】
生物学的サンプルにおいて目的のDNAまたはRNAの検出を可能にするハイブリダイゼーションに基づくアッセイは、オリゴヌクレオチドの使用に依存し、そのようなオリゴヌクレオチドは、10、15、20、または30〜100ヌクレオチド長、好ましくは10〜50のヌクレオチド長、より好ましくは40〜50ヌクレオチド長であることができる。
【0139】
短い核酸(200bpより短い長さ、例えば、17〜40bp長)のハイブリダイゼーションは、所望のストリンジェンシーにより調節されることができる、以下の例示的なハイブリダイゼーションプロトコルを用いて行うことができる:(i)6×SSCおよび1%SDSまたは3M TMACI、0.01Mリン酸ナトリウム(pH6.8)、1mM EDTA(pH7.6)、0.5%SDS、100μg/ml変性サケ精子DNA、および0.1%脱脂粉乳のハイブリダイゼーション溶液、Tを1〜1.5℃下回るハイブリダイゼーション温度、3M TMACI、0.01Mリン酸ナトリウム(pH6.8)、1mM EDTA(pH7.6)および0.5% SDSのTを1〜1.5℃下回る温度の最終洗浄溶液;(ii)6×SSCおよび0.1% SDSまたは3M TMACI、0.01Mリン酸ナトリウム(pH6.8)、1mM EDTA(pH7.6)、0.5% SDS、100μg/ml変性サケ精子DNAおよび0.1%脱脂粉乳のハイブリダイゼーション溶液、Tを2〜2.5℃下回るハイブリダイゼーション温度、3M TMACI、0.01Mリン酸ナトリウム(pH6.8)、1mM EDTA(pH7.6)および0.5% SDSのTを1〜1.5℃下回る温度の洗浄溶液、6×SSCの最終洗浄溶液、および22℃での最終洗浄;(iii)6×SSCおよび1% SDSまたは3M TMACI、0.01Mリン酸ナトリウム(pH6.8)、1mM EDTA(pH7.6)、0.5%SDS,100μg/ml変性サケ精子DNA、および0.1%脱脂粉乳のハイブリダイゼーション溶液、ハイブリダイゼーション温度。
【0140】
ハイブリッド二本鎖の検出は、多くの方法によって実行されることができる。典型的には、ハイブリダイゼーション二本鎖は、ハイブリダイズしていない核酸から分離され、次いで二本鎖に結合された標識が検出される。そのような標識は、放射能標識、蛍光標識、生物学的標識、酵素タグ、または当該分野において標準的に使用される標識を示す。標識は、生物学的サンプル(標的)に由来するオリゴヌクレオチドプローブまたは核酸のいずれかと結合体化されることができる。
【0141】
例えば、本発明のオリゴヌクレオチドは、合成後、ビオチニル化dNTPまたはrNTPを組み込むことによって、または類似の手段(例えば、ビオチンのソラレン誘導体をRNAに光架橋すること)によって、その後の標識されたストレプトアビジン(例えば、フィコエリトリン結合体化ストレプトアビジン)またはその等価物の添加によって標識されることができる。あるいは、蛍光標識されたオリゴヌクレオチドプローブが使用されるとき、フルオレセイン、リサミン、フィコエリトリン、ローダミン(Perkin Elmer Cetus)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX(Amersham)および他のもの[Krickaら(1992)、Academic Press,San Diego,Califを参照のこと]がオリゴヌクレオチドに結合されることができる。
【0142】
伝統的なハイブリダイゼーションアッセイは、PCR分析、RT−PCR分析、RNase保護分析、インシトゥーハイブリダイゼーション分析、プライマー伸長分析、ノーザンブロット分析、およびドットブロット分析を含む(本明細書の下記の実施例の節を参照のこと)。
【0143】
sFlt−14の検出はまた、抗体またはオリゴヌクレオチドの使用を含まない他の方法によって行われ得ることが理解される。時にはより面倒であるとしても、これらの方法には、分子量に基づく特定、および、質量分析法が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
sFlt−14を検出する上記の方法は、ほとんどの場合、母体または胎児のストレスに関連する妊娠関連の医学的状態を診断するために所望されることが理解される。
【0145】
本明細書中で使用される用語「診断」は、疾患または症状を分類すること、そのような疾患の重篤度を決定すること、疾患の進行をモニターすること、治療療法の有効性をモニターすること、疾患の結果および/または回復の見込みを予測すること(予知する)ことを示す。
【0146】
本明細書中で使用される表現「母体または胎児のストレスに関連する妊娠関連の医学的状態」は、sFlt−14のアップレギュレーションに関連する、胎児の母親における臨床的症状が存在する疾患または症候群を示す。妊娠はどの段階または期であってもよい。そのような医学的状態には、何らかの高血圧性障害;子癇前症、子癇、軽度の子癇前症、慢性的高血圧、EPH妊娠中毒症、妊娠性高血圧、混合型子癇前症(慢性的高血圧、慢性腎障害または狼瘡に重なる子癇前症を含む)、HELLP症候群(溶血、上昇した肝臓酵素、低い血小板数)または腎障害が含まれ得る。そのような医学的状態にはまた、妊娠性糖尿病、胎児成長制限(FGR)および胎児アルコール症候群(FAS)が含まれ得る。
【0147】
本明細書中で使用される表現「母体または胎児のストレス」は、母親または胎児が、妊娠に関係づけられる合併症を発症する危険性がある何らかの状態を示す。胎児のストレスには、不十分な栄養供給および胎児成長の中断が含まれるが、これらに限定されない。母体のストレスには、高血圧および糖尿病が含まれるが、これらに限定されない。胎児および母体のストレスは胎児の発達および脳機能に影響を及ぼすことがあり、また、早産および緊急出産(例えば、帝王切開)に関連づけられる妊娠結果における著しい役割を果たす。
【0148】
本明細書中で使用される表現「その必要性のある対象」は哺乳動物対象を示し、好ましくはヒト対象(例えば、妊婦または胎児)を示す。
【0149】
本発明が妊婦に関連して記載されるが、本明細書中に記載される方法はまた、高血圧性障害を妊娠期間中に発症する非妊娠女性に対する危険性を評価するために利用することができる。
【0150】
本明細書中上記で述べられたように、本発明者らは、sFlt−14が子癇前症において著しくアップレギュレーションされることを示している(実施例3および図4A〜図4Bを参照のこと)。さらに、本発明者らは、この新規なVEGFR変化体(sFlt−14)が妊娠早期(第9週)から発現され、第2トリメスター(第13週)から現れる優勢なVEGFRであることを示している(実施例8および図9A〜図9Bを参照のこと)。従って、本発明者らは、妊娠関連の医学的状態を処置するためにsFlt−14をダウンレギュレーションすることができる作用因の使用を想定する。加えて、本発明者らは、この新規な変化体が、VEGFの結合に対してVEGFRと競合すること(実施例9および図10Bを参照のこと)、および、そのようなものとして、この新規な変化体の調節がVEGF関連の医学的状態の処置のために非常に重要であることを首尾よく示している。
【0151】
本明細書中で使用される「VEGF関連の医学的状態」は、発症または進行が、本明細書中上記で記載されるようなVEGFRリガンドの低下した活性または発現、あるいは、過度な活性または発現に依存する疾患、障害または状態を示す。
【0152】
従って、本発明のいくつかの実施形態によれば、VEGFの低下した活性および/または発現が存在するVEGF関連の医学的状態を処置する方法が提供される。この方法は、その必要性のある対象に、sFlt−14をダウンレギュレーションすることができる作用因の治療効果的な量を投与し、それにより、対象におけるVEGF関連の医学的状態を処置することを含む。
【0153】
VEGFの低下した活性および/または発現に関連する医学的状態の例には、子癇前症、妊娠性糖尿病、妊娠性高血圧、胎児成長制限(FGR)、胎児アルコール症候群(FAS)、および高血圧が含まれるが、これらに限定されない。
【0154】
本明細書中で使用される「処置する」は、医学的状態の有害な影響を防止すること、治療すること、逆戻りさせること、弱めること、緩和すること、最小限に抑えること、抑制すること、または、停止させることを示す。
【0155】
そのような作用因の例には、上記の抗体およびポリヌクレオチド(例えば、sFlt−1とではなく、sFlt−14と特異的に結合し、これを阻害することができる抗体およびポリヌクレオチド)が含まれる。
【0156】
例えば、本発明のこの局面の作用因は、sFlt−14ポリペプチドを産生する細胞(例えば、栄養膜)に影響を及ぼすことによってsFlt−14の活性および/または発現を低下させることができる(すなわち、sFlt−14をダウンレギュレーションすることができる)場合がある。
【0157】
従って、本発明の、sFlt−14をダウンレギュレーションすることができる作用因は、sFlt−14ポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドに対して(例えば、生理学的条件のもとで細胞内において)特異的にハイブリダイゼーションすることができるオリゴヌクレオチドである。そのようなオリゴヌクレオチドが本明細書中上記で記載されている。
【0158】
オリゴヌクレオチドを広範囲の様々な細胞タイプに効率的に送達するために使用することができる様々な送達戦略が当該技術分野では周知である[例えば、Luft J Mol Med、76:75〜6(1998);Kronenwett他、Blood、91:852〜62(1998);Rajur他、Bioconjug Chem、8:935〜40(1997);Lavigne他、Biochem Biophys Res Commun、237:566〜71(1997);および、Aoki他(1997)、Biochem Biophys Res Commun、231:540〜5(1997)を参照のこと]。
【0159】
sFlt−14ポリペプチドの発現をダウンレギュレーションすることができるオリゴヌクレオチド作用因の一例が、小さい干渉性RNA(siRNA)分子である。RNA干渉は2段階のプロセスである。開始段階と呼ばれる最初の段階の期間中において、投入されたdsRNAが、おそらくは、(直接に導入されたか、あるいは、発現ベクター、カセットまたはウイルスを介して導入された)dsRNAをATP依存的様式で切断するダイサー(dsRNA特異的リボヌクレアーゼのRNaseIIIファミリーのメンバー)の作用によって21ヌクレオチド〜23ヌクレオチド(nt)の小さい干渉性RNA(siRNA)に消化される。連続する切断事象により、RNAが、それぞれの鎖が2ヌクレオチドの3’突出端を有する19bp〜21bpの二重鎖(siRNA)に分解される[HutvagnerおよびZamore、Curr.Opin.Genetics and Development、12:225〜232(2002);および、Bernstein、Nature、409:363〜366(2001)]。
【0160】
エフェクター段階において、siRNA二重鎖がヌクレアーゼ複合体に結合して、RNA誘導によるサイレンシング複合体(RISC)を形成する。siRNA二重鎖のATP依存的な巻き戻しがRISCの活性化のために要求される。活性なRISCはその後、塩基対形成する相互作用によって相同的な転写物を標的とし、mRNAをsiRNAの3’末端から12ヌクレオチドのフラグメントに切断する[HutvagnerおよびZamore、Curr.Opin.Genetics and Development、12:225〜232(2002);Hammond他(2001)、Nat.Rev.Gen.、2:110〜119(2001);および、Sharp、Genes.Dev.、15:485〜90(2001)]。切断機構は依然として解明されなければならないが、研究により、それぞれのRISCが、1つだけのsiRNAと、RNaseとを含有することが示される[HutvagnerおよびZamore、Curr.Opin.Genetics and Development、12:225〜232(2002)]。
【0161】
RNAiの効力が顕著であるために、RNAi経路内での増幅段階が示唆されている。増幅が、より多くのsiRNAを生じさせる、投入されたdsRNAのコピーによって、または、形成されたsiRNAの複製によって生じ得る。代替として、または、加えて、増幅がRISCの多数のターンオーバー事象によって行われ得る[Hammond他(2001)、Nat.Rev.Gen.、2:110〜119(2001);Sharp、Genes.Dev.、15:485〜90(2001);HutvagnerおよびZamore、Curr.Opin.Genetics and Development、12:225〜232(2002)]。RNAiに関するさらなる情報については、下記の総説を参照のこと:Tuschl ChemBiochem.、2:239〜245(2001);Cullen、Nat.Immunol.、3:597〜599(2002);および、Brantl Biochem.Biophys.Act.、1575:15〜25(2002)。
【0162】
本発明との使用のために好適なRNAi分子の合成を下記のように行うことができる:最初に、sFlt−14ポリヌクレオチド配列標的がAAジヌクレオチド配列について下流に向かって走査される。それぞれのAAと、その3’側の隣接する19ヌクレオチドとの存在が、可能性のあるsiRNA標的部位として記録される。
【0163】
次いで、可能性のある標的部位が、何らかの配列アラインメントソフトウエアを使用して、例えば、NCBIサーバー(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)から入手可能なBLASTソフトウエアなどを使用して適切なゲノムデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)に対して比較される。他のコード配列に対する有意な相同性を示す推定される標的部位が除かれる。
【0164】
資格を有する標的配列が、siRNA合成のためのテンプレートとして選択される。好ましい配列は、低いG/C含有量を含むものである。これらは、G/C含有量が55%を超えるものと比較して、遺伝子サイレンシングを媒介することにおいてより効果的であることが証明されているからである。いくつかの標的部位が、好ましくは、評価のために、標的遺伝子の長さに沿って選択される。選択されたsiRNAのより良い評価のために、陰性のコントロールが、好ましくは、組合せで使用される。陰性のコントロールsiRNAは、好ましくは、siRNAと同じヌクレオチド組成を含むが、ゲノムに対する有意な相同性を有していない。従って、siRNAのスクランブルヌクレオチド配列が好ましくは使用されるが、何らかの他の遺伝子に対する有意な相同性を少しも示さないものとする。
【0165】
sFlt−14の発現をダウンレギュレーションするために使用することができる他の核酸作用因には、そのコードポリヌクレオチドを特異的に切断することができるDNAzyme分子が含まれるが、これに限定されない。DNAzymeは、一本鎖の標的配列および二本鎖の標的配列の両方を切断することができる一本鎖ポリヌクレオチドである(Breaker,R.P.およびJoyce,G.、Chemistry and Biology、1995、2:655;Santoro,S.W.&Joyce,G.F.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1997、94:4262);そのコードポリヌクレオチドを特異的に切断することができるリボザイム分子。様々なリボザイムが、目的とするタンパク質をコードするmRNAの切断による遺伝子発現の配列特異的な阻害のためにますます使用されている[Welch他、Curr Opin Biotechnol.、9:486〜96(1998)]。様々なリボザイムを、いずれかの特定の標的RNAを切断するために設計することができることにより、リボザイムは基礎研究および治療的適用の両方における有益なツールになっている;三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)。この十年間において、研究により、二本鎖のらせんDNAにおけるポリプリン/ポリピリミジン領域を配列特異的な様式で認識し、これに結合することができるTFOを設計することができることが示されている。従って、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列を標的とすることができ、それにより、本発明のポリペプチドをダウンレギュレーションすることができる。
【0166】
sFlt−14のダウンレギュレーションはタンパク質レベルでもまた行うことができる。
【0167】
従って、本発明のポリペプチドをダウンレギュレーションすることができる作用因の別の一例が、sFlt−14またはそのホモログと特異的に結合することができ、好ましくは、その活性部位に対して特異的に結合することができ、それにより、その機能を妨げることができる抗体または抗体フラグメントである。そのような抗体を作製する方法が本明細書中上記で記載される。
【0168】
用いられる作用因にかかわらず、sFlt−14の活性および/または発現(ならびに間接的にはVEGFの活性または発現)に対する作用因の影響を、分子生物学、生化学または細胞生物学での周知の技術を使用して求めることができる。特異的なアッセイが研究者の特定の必要性および専門的知識に従って選択される。
【0169】
本明細書中上記で述べられたように、可溶性のVEGF受容体がVEGFと結合し、VEGFの活性に拮抗する。実際、本発明者らはさらに、sFlt−14がVEGFに拮抗することを示している(実施例9および図10B)。
【0170】
従って、本発明のいくつかの実施形態によれば、VEGFの過度な活性および/または発現が存在するVEGF関連の医学的状態を処置する方法が提供される(そのような過度な活性または発現は、多くの場合、過度な血管形成をもたらす)。この方法は、その必要性のある対象に、sFlt−14をアップレギュレーションすることができる作用因の治療効果的な量を投与し、それにより、対象におけるVEGF関連の医学的状態を処置することを含む。
【0171】
VEGFの過度な活性および/または発現に関連する医学的状態の例には、ガン、眼の障害(例えば、角膜の血管新生など)、多嚢胞性卵巣疾患および子宮内膜症が含まれるが、これらに限定されない。
【0172】
そのようなものとして、本発明では、VEGF関連の状態(例えば、ガン)の処置のために利用することができる、VEGF活性に拮抗し、それにより、血管形成を低下させるための新規なsFlt−14の使用が想定される。
【0173】
本明細書中で使用される用語「血管形成」は、血管の生成または発達を示す。
【0174】
本明細書中で使用される用語「ガン」は、転移を含む何らかの腫瘍疾患を示す。ガンの例には、ガン腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病が含まれるが、これらに限定されない。ガン性疾患の具体的な例には、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:骨髄性白血病、例えば、慢性骨髄性白血病、成熟化を伴う急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、増大した好塩基球を伴う急性非リンパ性白血病、急性単球性白血病、好酸球増加症を伴う急性骨髄単球性白血病など;悪性リンパ腫、例えば、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫など;リンパ性白血病、例えば、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病など;骨髄増殖性疾患、例えば、固形腫瘍、良性髄膜腫、唾液腺混合腫瘍、結腸腺腫;腺ガン、例えば、小細胞肺ガン、腎臓、子宮、前立腺、膀胱、卵巣、結腸、肉腫、脂肪肉腫、粘液様、滑膜肉腫、横紋筋肉腫(胞巣型)、骨外性粘液様軟骨肉腫、ユーイング腫瘍など;その他、これには、精巣および卵巣の未分化胚細胞腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、子宮内膜ガン、悪性メラノーマ、中皮腫、乳房、皮膚、前立腺および卵巣が含まれる。
【0175】
本明細書中で使用される表現「血管新生角膜」は、角膜に血管が分布する異常な病理学的状態を示す。
【0176】
血管形成が役割を果たす他の医学的状態、疾患および疾患プロセスを、本発明の教示に従って処置することができる。これらには、糖尿病網膜症、血管新生緑内障、リウマチ様関節炎および血管腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
VEGF関連の状態(例えば、ガンまたは角膜の血管新生)を処置するために使用することができる、本発明のポリペプチドをアップレギュレーションすることができる作用因は、本発明の単離されたポリペプチドそれ自体またはポリヌクレオチドを含む。
【0178】
従って、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書中下記で記載されるいずれかの好適な投与様式を用いて対象に投与することができる(すなわち、インビボ遺伝子治療)。代替として、核酸構築物が、必要に応じて適切な遺伝子送達ビヒクル/方法(トランスフェクション、形質導入、相同的組換えなど)および発現システムにより好適な細胞に導入され、その後、改変された細胞が培養で拡大され、個体に戻される(すなわち、エクスビボ遺伝子治療)。
【0179】
そのようなポリヌクレオチド配列は典型的には、組換えポリペプチドの発現を可能にするための発現ベクターに挿入される。本発明の発現ベクターは、このベクターを、真核生物における複製および組み込みのために好適にするさらなる配列、または、原核生物における複製および組み込みのために好適にするさらなる配列、または、好ましくは両者における複製および組み込みのために好適にするさらなる配列(例えば、シャトルベクター)を含む。典型的なクローニングベクターは、転写開始配列および翻訳開始配列(例えば、プロモーター、エンハンサー)、ならびに、転写ターミネーターおよび翻訳ターミネーター(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含有する。
【0180】
本発明のポリヌクレオチドの細胞発現を可能にするために、本発明の核酸構築物はさらに、少なくとも1つのシス作用する調節エレメントを含む。本明細書中で使用される表現「シス作用する調節エレメント」は、トランス作用する調節因子と結合し、その下流側に位置するコード配列の転写を調節するポリヌクレオチド配列(好ましくは、プロモーター)を示す。
【0181】
任意の好適なプロモーター配列を本発明の核酸構築物によって使用することができる。
【0182】
好ましくは、本発明の核酸構築物によって利用されるプロモーターは、形質転換された特定の細胞集団において活性である。細胞タイプ特異的および/または組織特異的なプロモーターの例には、肝臓特異的であるアルブミンなどのプロモーター[Pinkert他(1987)、Genes Dev.、1:268〜277]、リンパ系特異的プロモーター[Calame他(1988)、Adv.Immunol.、43:235〜275]、具体的には、T細胞受容体のプロモーター[Winoto他(1989)、EMBO J.、8:729〜733]および免疫グロブリンのプロモーター[Banerji他(1983)、Cell、33729〜740];ニューロン特異的プロモーター、例えば、ニューロフィラメントプロモーター[Byrne他(1989)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:5473〜5477]、膵臓特異的プロモーター[Edlunch他(1985)、Science、230:912〜916]または乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター(米国特許第4873316号および欧州特許出願公開第264166号)など)が含まれる。本発明の核酸構築物はさらに、プロモーター配列に隣接して存在することができるか、または、プロモーター配列から遠位に存在することができ、かつ、プロモーター配列からの転写をアップレギュレーションすることにおいて機能し得るエンハンサーを含むことができる。
【0183】
本発明の核酸構築物はさらに、適切な選択マーカーおよび/または複製起点を含むことができる。例えば、利用される核酸構築物はシャトルベクターである場合があり、この場合、シャトルベクターは、大腸菌(この場合、構築物は適切な選択マーカーおよび複製起点を含む)において増殖することができ、かつ、細胞における増殖のための適合性、または、選ばれた遺伝子および組織における組込みのための適合性を有し得る。本発明による構築物は、例えば、プラスミド、バクミド、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体が可能である。
【0184】
既に記載されたエレメントに加えて、本発明の発現ベクターは典型的には、クローン化された核酸の発現レベルを増大させるために意図されるか、または、組換えDNAを保有する細胞の特定を容易にするために意図される他の特殊化されたエレメントを含有することができる。例えば、数多くの動物ウイルスが、許容の細胞タイプにおけるウイルスゲノムの染色体外での複製を促進させるDNA配列を含有する。これらのウイルスレプリコンを有するプラスミドは、適切な因子が、プラスミドにおいて運ばれる遺伝子、または、宿主細胞のゲノムとともに運ばれる遺伝子のいずれかによって提供される限り、エピソームとして複製される。
【0185】
ベクターは真核生物のレプリコンを含む場合があり、または含まない場合がある。真核生物のレプリコンが存在するならば、ベクターは、適切な選択マーカーを使用して真核生物細胞において増幅可能である。ベクターが真核生物のレプリコンを含まないならば、エピソームとしての増幅ができない。その代わり、組換えDNAは、操作された細胞のゲノムに融合し、操作された細胞において、プロモーターが、所望される核酸の発現を行わせる。
【0186】
哺乳動物発現ベクターの例には、pcDNA3、pcDNA3.1(+/−)、pGL3、pZeoSV2(+/−)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81(これらはInvitrogenから入手可能である)、pCI(これはPromegaから入手可能である)、pMbac、pPbac、pBK−RSVおよびpBK−CMV(これらはStrategeneから入手可能である)、pTRES(これはClontechから入手可能である)、ならびに、それらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0187】
真核生物ウイルス(例えば、レトロウイルスなど)に由来する調節エレメントを含有する発現ベクターもまた使用することができる。SV40のベクターには、pSVT7およびpMT2が含まれる。ウシ乳頭腫ウイルスに由来するベクターには、pBV−1MTHAが含まれ、エプスタイン・バールウイルスに由来するベクターには、pHEBOおよびp2O5が含まれる。他の例示的ベクターには、タンパク質の発現を、真核生物細胞における発現のために効果的であることが示されるSV−40初期プロモーター、SV−40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーターまたは他のプロモーターの指揮下で可能にするpMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMANneo−5、バキュロウイルスpDSVEおよび任意の他のベクターが含まれる。
【0188】
組換えウイルスベクターはまた、本発明のポリヌクレオチドを合成するために使用することができる。ウイルスは、多くの場合には宿主の防御機構を回避するように進化してきた非常に特殊化された感染性因子である。典型的には、ウイルスは特定の細胞タイプに感染し、特定の細胞タイプにおいて増殖する。ウイルスベクターの標的化特異性では、その天然の特異性が、所定の細胞タイプを特異的に標的化し、それにより、組換え遺伝子を感染細胞に導入するために利用される。骨髄細胞を、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)を使用して標的化することができる。
【0189】
現在好ましいインビボ核酸移入技術には、ウイルス構築物または非ウイルス構築物(例えば、アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスIウイルスまたはアデノ関連ウイルス(AAV)など)によるトランスフェクション、および、脂質に基づくシステムが含まれる。遺伝子の脂質媒介による移入のための有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPEおよびDC−Cholなどである[Tonkinson他、Cancer Investigation、14(1):54〜65(1996)]。遺伝子治療において使用される最も好ましい構築物はウイルスであり、最も好ましくは、アデノウイルス、AAV、レンチウイルスまたはレトロウイルスである。ウイルス構築物(例えば、レトロウイルス構築物など)は、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサー、または、遺伝子座を規定する要素、あるいは、遺伝子発現を他の手段(例えば、メッセンジャーの選択的スプライシング、核RNA輸出または翻訳後修飾など)によって制御する他の要素を含む。そのようなベクター構築物はまた、ウイルス構築物に既に存在しない限り、パッケージングシグナル、長末端反復(LTR)またはその一部、ならびに、使用されたウイルスに対して適切なプラス鎖およびマイナス鎖のプライマー結合部位を含む。加えて、そのような構築物は、典型的には、構築物が置かれている宿主細胞からペプチドを分泌させるためのシグナル配列を含む。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は、哺乳動物のシグナル配列、または、本発明のポリペプチド変化体のシグナル配列である。場合により、構築物はまた、ポリアデニル化を導くシグナル、ならびに、1つ以上の制限部位、および、翻訳終結配列を含むことができる。例として、そのような構築物は典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、および、3’LTRまたはその一部分を含む。非ウイルスである他のベクターを使用することができる(例えば、カチオン性脂質、ポリリシンおよびデンドリマーなど)。
【0190】
様々な方法を、本発明の発現ベクターを細胞に導入するために使用することができる。そのような方法が、Sambrook他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1989、1992);Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、Baltimore、Md.(1989);Chang他、Somatic Gene Therapy、CRC Press、Ann Arbor、Mich.(1995);Vega他、Gene Targeting、CRC Press、Ann Arbor、Mich.(1995);Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses、Butterworths、Boston Mass.(1988);および、Gilboa他[Biotechniques、4(6):504〜512、1986]において一般的に記載され、そのような方法には、例えば、組換えウイルスベクターによる安定的トランスフェクションまたは一過性トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーションおよび感染が含まれる。加えて、陽性/陰性の選択方法については米国特許第5464764号および同第5487992号を参照のこと。
【0191】
ウイルス感染による核酸の導入は、より大きなトランスフェクション効率をウイルスの感染性のために得ることができるので、他の方法(例えば、リポフェクションおよびエレクトロポレーションなど)を上回る利点をいくつか提供する。
【0192】
sFlt−14ポリペプチドの発現および/または機能をアップレギュレーションすることにより、典型的には、低下したVEGF活性がもたらされることが理解される。
【0193】
上記で記載された本発明の薬剤は、それ自体で、または、それが医薬的に許容され得るキャリアと混合される医薬組成物の一部として個体に与えることができる。
【0194】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0195】
本明細書中において、用語「有効成分(活性成分)」は、生物学的効果を担う単離されたポリペプチド、単離されたポリヌクレオチド、または抗体調製物を示す。
【0196】
以降、交換可能に使用されうる表現「生理学的に許容され得るキャリア」および表現「医薬的に許容され得るキャリア」は、生物に対する著しい刺激を生じさせず、投与された化合物の生物学的な活性および性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に含まれる。医薬的に許容され得るキャリア中に含まれる成分の1つは、例えばポリエチレングリコール(PEG)、有機媒体および水性媒体の両方における広範囲の溶解度特性を有している生体適合性ポリマーであることができる(Mutter他(1979))。
【0197】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0198】
薬物の配合および投与のための様々な技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出され得る(これは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0199】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸管送達または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれ得る。
【0200】
あるいは、例えば、患者の身体の特定領域に直接的に調製物の注射をすることによって、全身的な方法よりも局所的に調製物を投与しうる。
【0201】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0202】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用され得る調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容され得るキャリアを使用して従来の様式で配合することできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0203】
注射の場合、本発明の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な生理的食塩緩衝液など)において配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透されるバリヤーに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0204】
経口投与の場合、化合物は、活性化合物をこの分野で広く知られている医薬的に許容され得るキャリアと組み合わせることによって容易に配合され得る。そのようなキャリアは、本発明の化合物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して、作製することができる。好適な賦形剤には、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーがある。所望する場合には、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0205】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料を、活性化合物の量を明らかにするために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
【0206】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分を好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。また、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0207】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0208】
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位が、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定され得る。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0209】
本明細書中に記載される調製物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合することができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、また、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0210】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態での活性調製物の水溶液が含まれる。また、有効成分の懸濁物を適切な油性または水性の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0211】
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン非含有水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態にすることができる。
【0212】
本発明の調製物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0213】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、その意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果的な量は、治療されている対象の病状を予防、緩和あるいは改善するために効果的であるか、または、治療されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分の量を意味する。
【0214】
治療効果的な量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0215】
本発明の方法において使用される任意の調製物について、治療効果的な量または用量は、最初はインビトロでアッセイおよび細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、用量は動物モデルにおいて配合することが可能であり、そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0216】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における、インビトロで標準的な薬学的手法によって、明らかにすることができる。これらのインビトロでの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用に対する投薬量範囲を決定するために使用することができる。投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(Fingl他、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1p.1参照)。
【0217】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行うことができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0218】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている患者、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0219】
適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の調製物を含む医薬組成物はまた、適切な容器に入れられ、指示される状態の処置のために標識されて調製されることができる。
【0220】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパックなど)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。
【0221】
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、sFlt−14をコードする多くの関連するポリペプチドおよびポリヌクレオチドが開発されることが予想され、従って、sFlt−14をコードするポリペプチドおよびポリヌクレオチドの用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を生得的に包含することが意図される。
【0222】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0223】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。この用語は、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0224】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0225】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0226】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0227】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0228】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0229】
用語「処置する(treating)」は、状態の進行を排除すること、実質的に阻害、遅延、または後退させること、状態の臨床的または審美的な症状を実質的に改善すること、または状態の臨床的または審美的な症状の出現を実質的に予防することを含む。
【0230】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の各種の特徴は、別個にまたは適切なサブコンビネーションで、または本発明の他の実施形態において好適に提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0231】
本明細書の上記に詳述され、かつ添付の特許請求の範囲において特許請求される本発明の種々の実施形態および側面は、以下の実施例に実験的裏付けを見出す。
【実施例】
【0232】
上記説明とともに、以下の実施例を参照する。これらの実施例は、本発明のいくつかの実施形態を非限定的な様式で例示する。
【0233】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技術は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻(1994)Ausubel,R.M.編;Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、米国ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);利用可能な免疫アッセイ法は、特許と科学文献に広範囲にわたって記載されており、例えば:米国特許の第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらの文献の全ては、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0234】
(実施例1)
新規なsFlt−14の配列
材料および実験手順
RNA
胎盤組織をPolytronホモジナイザーによりホモジネートし、その後、TRI Reagent(Sigma)での総RNA抽出を製造者のプロトコルに従って行った。細胞を集め、RNAをTRI Reagent中で抽出した。
【0235】
RACE
cDNA末端の迅速な増幅を、BD SMART(商標)RACE cDNA増幅キットを使用して行った。子癇前症の胎盤RNAに基づく3’RACEを、5’プライマーとして使用されるFLT1の第14エキソンの開始部から選ばれたプライマー:CCTCCTGCGAAACCTCAGTG(配列番号12)、および、RACEキットと一緒に供給される3’プライマー:AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTAC(T)30VN(配列番号11)とともに使用した。
【0236】
結果
図1〜図3に例示されるように、本発明の新規なsFlt1は、全長の膜貫通型受容体Flt1、および、既知のsFlt1とは、下記の3つの側面で異なる:
1)sFlt−14は、(明るい着色によって特徴づけられる)図1から明らかなように、(第13イントロンに由来する)sFlt−1に特有な31個のアミノ酸を含まない。
2)sFlt−14は、sFlt−1に存在しないRNA配列、同様にまた、アミノ酸領域を含有する。アミノ酸配列は、第14エキソンに由来するアミノ酸(これらはまた、全長の膜貫通型受容体にも存在する;図1を参照のこと)、同様にまた、第14イントロンに由来する特有なアミノ酸配列(これは明るい着色によって特徴づけられる;図1を参照のこと)を含む。図3Aに示されるように、この特有な配列は、第14イントロンに由来する28個のアミノ酸の領域を含む。
3)図2Aに示されるように、sFlt−14はまた、その3’−UTR内に含有されるAluエレメントを含む特有な調節配列、すなわち、全体が第14イントロンに由来する3’−UTRを含有する。
【0237】
さらに、図2Aに例示されるように、新規なsFlt−14に特有であるcDNA配列は、全長の膜貫通型Flt1または可溶性のsFlt−1のいずれかに由来するcDNAに存在しない配列を含む。データベースによる検索では、この特有な転写物のフラグメントのみが特定されたデータベースに寄託されているEST配列がいくつか明らかにされた(図2B)。しかしながら、Fltのこの選択的スプライシングされた配列変化(すなわち、本発明のsFlt−14)は、発表された文献にはこれまで言及されておらず、ましてや、何らかの組織または病理との関連も言及されていなかった。
【0238】
(実施例2)
sFlt−14特異的抗体の作製
材料および実験手順
sFlt−14特異的ポリクローナル抗体の作製
ポリクローナル抗体を、Sigma−Aldrichのプロトコルに記載されるように作製した。簡単に記載すると、抗sFlt−14血清を作製するために、sFlt−14に由来する2つのペプチドを合成し(CHFK(配列番号6)およびCESS(配列番号5))、ウサギに注射した。それぞれのペプチドについての3回の注射を行った。このとき、1ヶ月の期間を注射と注射との間で保った。この手順が終了したとき、ウサギの血清をsFlt−14の反応性について評価した。
【0239】
結果
2つの短いペプチドを、本発明の新規なsFlt−14を以前に記載されたsFlt−1から区別するアミノ酸配列から作製した。図3Bに例示されるように、第14エキソンに由来した、CHFK(配列番号6)と呼ばれる第1のペプチドは、sFlt−1には含まれないが、全長の膜貫通型受容体には存在する。CESS(配列番号5)と呼ばれる第2のペプチドは、新規なsFlt−14に対してのみ特有な配列に由来した(膜貫通型Flt−1またはsFlt−1のいずれにも含まれない)。これら2つのペプチドを、本明細書中上記の実験の説明に記載されるようにポリクローナル抗体を誘発させるために使用した。
【0240】
作製されたポリクローナル抗体は、新規なsFLt−14と、以前に記載されたsFlt−1とを区別することができる。
【0241】
(実施例3)
種々の細胞における膜貫通型Flt−1、sFlt−1およびsFlt−14の相対的存在量
材料および実験手順
細胞
細胞を得て、Gluzman他[Glutzman他、Biochem Biophys Res Commun、(2007)、359:263〜8]において以前に記載されたように培養した。
【0242】
RNA
正常な胎盤組織および子癇前症の胎盤組織をPolytronホモジナイザーによりホモジネートし、その後、TRI Reagent(Sigma)での総RNA抽出を製造者のプロトコルに従って行った。細胞を集め、RNAをTRI Reagent中で抽出した。
【0243】
ノーザンブロッティング
総RNA(5μg〜20μg)をホルムアルデヒド−アガロース(1%)変性ゲルによって分離し、正荷電のナイロンメンブランに毛細管溶出によってブロッティングした。RNAをUV架橋し(1200j/m2)、メンブランを0.1%メチレンブルーにより染色して、等しい負荷および転写を保証した。ブロットをrediprimeキット(Amersham)によって32P標識のプローブと一晩ハイブリダイゼーションした。ブロットを60℃での30分間の(2xSSC、1%SDSによる)2回の洗浄に供し、その後、ブロットをMS高感度フィルム(Kodak)に感光させた。FLT1転写物の異なる領域に由来する3つの異なるプローブを、様々なFLT1イソ型の検出を可能にするために使用した:1)イソ型のすべてを検出するための細胞外コード領域;2)sFLT−14を検出するための第14イントロン領域;および3)sFLT1を検出するための第13イントロン領域。
【0244】
結果
図4に例示されるように、HUVEC、正常な胎盤および子癇前症の胎盤から得られたRNAがRNAブロットにおいて分離され、これらを、(バンド位置によって区別された)Flt−1、sFlt−1およびsFlt−14に共通するプローブとハイブリダイゼーションさせた。
【0245】
結果から明白であるように、VEGF受容体を発現する「従来の」細胞として知られている内皮細胞では、優勢な可溶性FltがsFlt−1である(これはまた、本明細書中ではsFlt−13と呼ばれる)。際立って対照的に、胎盤では、優勢な可溶性受容体が本発明の新規なsFlt−14である。それぞれのスプライス変化体の正体をさらに、sFlt1およびsFlt−14について特異的なプローブによる再プロービングによって確認した(データは示されず)。
【0246】
同様に、内皮細胞と、血管平滑筋細胞との間での比較では、内皮細胞はsFlt−1を優勢に発現するのに対して、血管平滑筋細胞は新規なsFlt−14を優勢に発現することが示される(図4B)。sFlt−14はまた、栄養膜および樹状細胞に存在する、唯一のFltイソ型とまではいかないが、優勢なFltイソ型として明らかにされている(データは示されず)。まとめると、これらの結果は、sFlt−14は内皮細胞特異的でないと見なすことができ、これに対して、sFlt1は、内皮細胞に存在する変化体であると見なすことができることを示している。
【0247】
全長型受容体、または、代わりとして、可溶性受容体(どちらかの変化体)を生じさせる選択的スプライシングは互いに相容れないので、下記のことが生じることに留意することは重要である:sFlt1が(例えば、内皮細胞によって)生じる場合、可溶性Flt1受容体に対する膜貫通Flt1受容体の比率は高い。対照的に、sFlt−14を生じさせる選択的スプライシング様式では、sFlt14が膜貫通Flt1受容体を上回って優勢であることが許される。このことは、プロVEGFシグナル伝達から抗VEGFシグナル伝達への正味の移行を生じさせ、発現細胞をVEGFに対して非応答性にする。
【0248】
(実施例4)
子癇前症の胎盤におけるsFlt−14のインシトゥーでのタンパク質検出およびmRNA検出
材料および実験手順
インシトゥーハイブリダイゼーション
胎盤のパラフィン包埋切片を、Motro他[Motro他、PNAS、1990、87(8)、3092〜6]によって以前に記載されたように、sFlt−14の第14イントロン領域から選ばれたS35リボプローブ(配列番号13)とハイブリダイゼーションさせた。
【0249】
免疫組織化学
1:100の希釈度でのsFlt−14特異的なウサギポリクローナル抗体をパラフィン包埋の胎盤切片に対して使用した。抗原回復を、25mMクエン酸塩緩衝液(pH=6.0)を使用して行った。抗体は、sFLT−14タンパク質のC末端に由来するペプチドに対して、すなわち、CELYTSTSPSSSSSS(CESS抗体、配列番号5)に対して向けられた。
【0250】
結果
図5A〜図5Bは、胎盤切片におけるsFlt−14タンパク質の免疫組織化学的検出において例示されるように、sFlt−14の特有な区域(第14イントロンのアミノ酸)に対して特異的に向けられたCESS抗体の大きな価値を明らかにする。同様に、図5C〜図5Dは、(この特有な第14イントロン配列に対して相補的である)特有なmRNAプローブは、特異的なプローブによる胎盤切片のインシトゥーハイブリダイゼーションによって例示されるように、sFlt−14のmRNAを特異的に検出するために重要であることを明らかにする。CESS抗体または上記プローブは全長型受容体Fltおよび可溶性受容体Flt−1と交差反応せず、その結果、これらの試薬は新規なsFlt−14について真に限定的であることを強調しなければならない。
【0251】
図5A〜図5Dはまた、これらの結果により、疾患に冒された胎盤におけるどの細胞が可溶性受容体を産生するかが初めて特定されるので、(既知のsFlt1を使用して特定されなかった細胞が初めて特定されるので)、病原性プロセスに対する機構的な手がかりをいくつか提供する。これらの知見では、合胞体性結節内の栄養膜細胞が可溶性sFlt−14を産生することが例示される。これらの結果は、合胞体性結節が、正常な妊娠と比較して、子癇前症でははるかにより多く存在するという事実と一致しており、変性性胎盤の顕著な特徴である。
【0252】
(実施例5)
正常な満期胎盤におけるsFlt−14の発現
材料および実験手順
ウエスタンブロッティング
3つの正常な満期胎盤をホモジネートし、2つの群に分けた:群1)は免疫前クリーニング処理に供され、群2)はクリーニング処理に供されなかった。クリーニング処理(これは、サンプルを、検出工程においてCESS血清の無関係な抗体と相互作用するかもしれないタンパク質を除いて清浄化するために使用される)は、20μlのウサギ免疫前血清との3時間のインキュベーション、その後、プロテインAビーズ(P3391、Sigma)の添加、一晩のインキュベーションおよび沈殿化を含んでいた。非クリーニング化処理は、ウサギ免疫前血清の添加を除いて同じであった。
【0253】
それぞれのサンプル(クリーニングまたは非クリーニング)を2つの異なる免疫沈殿に分けた:CESS抗体による一方、および、FLT11抗体(V4262、Sigma)によるもう一方。沈殿物を6%アクリルアミドゲルに負荷し、電気泳動し、メンブランに転写し、CESS抗体により検出した。
【0254】
結果
図6に明瞭に例示されるように、sFLT14タンパク質のサイズはおよそ110Kdである。sFLT14タンパク質が、Flt−1の細胞外ドメインを標的とするFLT11抗体によって沈殿させられ、新規なsFlt−14のC末端を特異的に標的とするCESS抗体によって可視化され、このことから、可溶性Flt1の新規な変化体の存在が確認される。これらの結果はまた、特有なCESSエピトープが、Flt1の細胞外結合ドメインを含むスプライス変化体の不可欠な一部であることを証明した。
【0255】
(実施例6)
sFLT14の質量分析法による特定
材料および実験手順
質量分析法
子癇前症の胎盤をタンパク質溶解緩衝液においてホモジネートし、(サンプルを、CESS血清の無関係な抗体と相互作用するかもしれないタンパク質を除いて清浄化するために)20μlのウサギ免疫前血清と3時間インキュベーションした。プロテインAビーズ(P3391、Sigma)を一晩のインキュベーションのために加え、沈殿させた。15μlのCESS抗体をクリーニング後のホモジネートに加え、3時間インキュベーションし、その後、プロテインAビーズを加え、さらに一晩インキュベーションした。ビーズを沈殿させ、洗浄し、サンプル緩衝液とともに煮沸した。サンプルを6%アクリルアミドゲルに負荷し、電気泳動した。ゲルをクーマシーブルーにより染色し、バンドが現れるまで脱染色した。110Kdのバンドを質量分析法による分析のために切り出した。バンドをトリプシンによって消化し、DECA/LCQでのLC−MS/MSによって分析し、ヒト、マウス、ラット、ウシおよびウサギのnrデータベースに対してPep−MinerおよびSequestソフトウエアによって特定した。
【0256】
結果
図7に示されるように、Flt1の明確な特定が、Flt1の細胞外ドメインから選ばれた3つのペプチドによって達成された。これらの結果は、Flt1の細胞外ドメインおよび新規なsFlt−14のC末端が同じ連続性であることを証明した。DQEAPYLLRペプチドの8個のアミノ酸(QEAPYLLRペプチド、配列番号19)が第14エキソンによってコードされ、このことは新規なC末端における第14エキソンの包含をさらに強化している。
【0257】
(実施例7)
子癇前症の被験者の血清におけるsFlt−14イソ型の存在
材料および実験手順
血清タンパク質の分析
PE被験者からの20mlの血清サンプルをFLT11被覆ビーズでの捕獲および溶出によって濃縮した。アフィニティー精製されたタンパク質をウエスタンブロッティングによって分析した。それに従って、タンパク質を6%アクリルアミドゲルで分離し、メンブランに電気泳動的に転写し、sFlt−14特異的なCESS抗体により免疫ブロットした。タンパク質の検出を、CESS抗体またはab9540抗体を使用して行った。
【0258】
結果
PE胎盤が、アップレギュレーションされたレベルのsFlt−14を発現することを例示する新規な結果(本明細書中上記の実施例3および実施例4)に従って、本発明の発明者らは、どのsFltイソ型がPE被験者の血清に蓄積するかを調べた。循環している可溶性受容体の特徴を特定するために、本発明の発明者らは子癇前症の血清試料を分析した。これを、sFltイソ型をFLT11細胞外抗体によりPE患者の血清からアフィニティー精製することによって行った。精製されたイソ型を、特異的なsFlt−14抗体(CESS抗体)を使用して胎盤のCESS免疫沈殿物の隣にウエスタンブロットした。図8に例示されるように、同じ2つのバンドがPE被験者の胎盤および血清において検出された。これら2つのタンパク質は以前にはsFlt−14タンパク質として特定されていた(実施例3、本明細書中上記)。さらに、PE被験者の血清において検出されたsFlt−14タンパク質は、sFlt−14発現プラスミド(本明細書中下記の実施例10を参照のこと)によりトランスフェクションされた細胞によって産生され、sFlt−14特異的な抗体により検出されるsFlt−14タンパク質とサイズにおいて同一である2つのバンドとして可視化された。ab9540細胞外標的化抗体を使用する第2の免疫ブロッティングでは、上記の2つとは異なるバンドを与えることができず(データは示されず)、従って、このことから、試験されたPE血清におけるsFlt−1の存在が排除された。このことは、sFlt−14が、PE被験者の循環における主要なVEGF受容体であることを示している。
【0259】
(実施例8)
sFLT−14は、妊娠の第2トリメスターから得られる唯一のsFLT1イソ型である
材料および実験手順
ノーザンブロッティング
総RNAを妊娠の異なる時点(妊娠の第9週〜第11週、第13週および第39週)でヒトの胎盤生検物から得た。それぞれのサンプルの10μg〜15μgのRNAをホルムアルデヒド−アガロース(1%)変性ゲルによって分離し、正荷電のナイロンメンブランに毛細管溶出によってブロットした。RNAをUV架橋し(1200j/m2)、メンブランを0.1%メチレンブルーにより染色して、等しい負荷および転写を保証した。ブロットをrediprimeキット(Amersham)によって32P標識のプローブと一晩ハイブリダイゼーションした。使用されたプローブ(配列番号14)は両方のイソ型の共有配列を標的とし、従って、それらの相対的な存在量を示すことができた。ブロットを60℃での30分間の(2xSSC、1%SDSによる)2回の洗浄に供し、その後、ブロットをMS高感度フィルム(Kodak)に感光させた。
【0260】
結果
妊娠の正常な経過の期間中におけるsFLT1イソ型のそれぞれの相対的寄与を特徴づけるために、RNAを妊娠の正常な経過の期間中における異なる時点でヒトの胎盤生検物から得て、両方のイソ型の共有配列を標的とする細胞外プローブをハイブリダイゼーションのために使用した(上記の材料および実験の節を参照のこと)。図9A〜図9Bに示されるように、妊娠の第9週〜第11週(第1トリメスター)が、sFlt−1イソ型およびsFlt−14イソ型の1:1の比率によって特徴づけられる。しかしながら、妊娠の第13週(第2トリメスターの始まり)では、sFlt−14が、胎盤において発現される、唯一のイソ型とまではいかないが、優勢なイソ型になる。さらに、第39週(第3トリメスター)では、sFlt−14が依然として唯一のイソ型である。妊娠の第2トリメスター以降からのsFLT−14のもっぱらの発現は、sFLT−14が子癇前症(通常的には、妊娠の第3トリメスターの期間中に生じる状態)において著しくアップレギュレーションされるという事実に対応する。
【0261】
(実施例9)
sFLT−14は強力なVEGF阻害剤である
材料および実験手順
Hela細胞における組換えsFlt1タンパク質および組換えsflt−14タンパク質の発現
両方の可溶性受容体イソ型(sFlt−14およびsFlt−1)のコード領域全体(それぞれ、配列番号1および配列番号9)を包含するcDNAをBluescript発現ベクターにサブクローン化し、T7ポリメラーゼを発現するヒトHela細胞にトランスフェクションした。20時間〜24時間の後、成長培地を採取し、細胞を集めた。分泌されたタンパク質および細胞と会合するタンパク質をFLT11抗体(V4262、Sigma)により免疫沈殿し、sFlt−1およびsFlt−14の両方の細胞外ドメインに対して向けられた抗体(Ab9540、Abcam)による免疫ブロッティングによって分析した。
【0262】
ELISA
成長培地中へのsFlt−1およびsFlt−14の分泌の分析を、DVR100(R&D Systems)を使用する、共通して有される細胞外エピトープに対して向けられたELISAを使用して行った。
【0263】
免疫沈殿およびウエスタンブロッティング
成長培地中へのsFlt−1およびsFlt−14の分泌をFLT11抗体による免疫沈殿によって分析し、ウエスタン免疫ブロッティングをab9540抗体により行った。ウエスタンブロッティングをさらに、実施例5に記載されるように行った。
【0264】
VEGF阻害アッセイ
高レベルのヒトVEGF−R2を発現するように操作されたブタ大動脈内皮(PAE)細胞を、Gera Neufeld教授(Technion、Haifa、イスラエル)から得た。細胞を10%FCS DMEM成長培地で成長させた。
【0265】
増大する量のsFlt−14またはsFlt−1(20ng/ml、40ng/ml、80ng/ml)を、PAE細胞の成長培地を加える前に一定量のVEGF(20ng/ml)とプレインキュベーションした。VEGF−R2のリン酸化レベルを添加sFlt−14/VEGF比率または添加sFlt−1/VEGF比率の関数として測定した。VEGF−R2のリン酸化の減少を、ホスホ−VEGF−R2を検出する抗体(Cell−signaling、Cat.#2478)を使用して求め、抗VEGF−R2抗体(Santa Cruz、Cat.SC−504)による免疫ブロッティングによって可視化された総VEGF−R2タンパク質に対して標準化した。
【0266】
結果
sFlt1およびsFlt−14は、質的に異なるタンパク質であるので(sFlt−14は、sFlt1には存在しない75個のアミノ酸を含有し、sFlt1は、sFlt−14には存在しない31個の高度に保存されたアミノ酸を含有するので)、本発明の発明者らは、sFlt−14が実際に、VEGFと特異的に結合し、VEGFに拮抗することができるVEGF受容体であることを明らかにすることを望んだ。
【0267】
この目的を達成するために、発明者らは、sFlt−14を発現するヒトHela細胞を作製し、また、比較のために、sFlt1を発現するHela細胞を作製した。(共通して有される細胞外エピトープに対して向けられた)ELISA分析は、それぞれの成長培地へのsFlt−1およびsFlt−14の分泌が同程度であったことを示している(100ng/ml〜200ng/mlの濃度が両方について検出された。データは示されず)。さらに、発明者らは、免疫反応性タンパク質の見かけの分子サイズ(それぞれ、130Kdおよび120Kd、図10A)によって明白であるように、免疫沈殿およびウエスタンブロットによって、それぞれの成長培地におけるsFlt−14またはsFlt−1のいずれかの互いに相容れない存在を確認した。
【0268】
sFlt−14がVEGFシグナル伝達を阻害するかを明らかにするために、増大する量のsFlt−14を、高レベルのヒトVEGF−R2を発現するように操作されたブタ大動脈内皮(PAE)細胞の成長培地を加える前に一定量のVEGF(20ng/ml)とプレインキュベーションした。VEGF−R2のリン酸化レベルを添加sFlt−14/VEGF比率の関数として測定した。図10Bに示されるように、VEGF−R2のリン酸化のほぼ完全な阻害が1:1のsFlt−14/VEGF比率において既に明白であった。逆に、この比率において、sFlt1はVEGF−R2のリン酸化を有意に阻害せず、実際には、より高いsFlt−1/VEGF比率においてのみVEGF−R2のリン酸化を阻害しただけであった。まとめると、これらの結果は、結論的には、sFlt−14がVEGFシグナル伝達の強力な阻害剤であり、sFlt−1よりも顕著に強力であることを示した。
【0269】
(実施例10)
sFlt−14がヒトの角膜において発現される
材料および実験手順
免疫組織化学
角膜切片を、病的状態のために取り出されたヒトの角膜から単離した。1:100の希釈度でのsFlt−14特異的なウサギポリクローナル抗体をパラフィン包埋の角膜切片に対して使用した。抗原回復を、25mMクエン酸塩緩衝液(pH=6.0)を使用して行った。抗体は、sFLT−14タンパク質のC末端に由来するペプチドに対して、すなわち、CELYTSTSPSSSSSS(CESS抗体、配列番号5)に対して向けられた。
【0270】
結果
sFlt−1は、sFlt−1が非常に重要な抗VEGF因子であるならば、角膜において大きな生理学的役割を果たし、これにより、角膜を無血管状態(明瞭な視覚のために絶対必要である状態)に保つことが広く知られている。哺乳動物では、sFlt−1が角膜上皮によって発現される。本発明の発明者らが、sFlt−14もまたヒト角膜において発現されるかを調べるために、特異的なsFlt−14抗体をヒトの角膜切片の免疫組織化学のために使用した。図11A〜図11Bから明らかであるように、sFlt−14が角膜上皮において非常に発現される。ヒト角膜上皮におけるsFlt−14の存在が、ヒト角膜から単離されたいくつかの上皮サンプルのsFlt−14のPCR分析によってさらに確認された(データは示されず)。
【0271】
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0272】
本明細書中で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定していると解釈されるべきではない。
【配列表フリーテキスト】
【0273】
配列番号3は、sFlt−14の特有の28アミノ酸ポリペプチド部分をコードする核酸配列である。
配列番号4は、sFlt−14の特有の28アミノ酸ポリペプチド部分である。
配列番号5は、特異的なsFlt−14抗体(CESS)を作成するのに使用される合成ペプチドである。
配列番号6は、非特異的なsFlt−14抗体(CHFK)を作成するのに使用される合成ペプチドである。
配列番号7は、エクソン14から開始してポリAテールまでのsFlt−14の部分である。
配列番号8は、sFlt−14特異的結合領域である。
配列番号11は、RACEキット3’オリゴヌクレオチドである。
配列番号13は、イントロン14特異的プローブである。
配列番号14は、両方のアイソフォームに特異的なsFLTプローブである。
配列番号15は、抗原結合領域である。
配列番号16は、質量分析で同定されたタンパク質である。
配列番号17〜19は、質量分析で配列決定されたペプチドである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)によって決定されるとき、少なくとも70%の相同性を配列番号4に対して有するアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項2】
VEGFと結合することができる、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項3】
可溶性である、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項4】
配列番号4に示される通りである、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項5】
配列番号2に示される通りである、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項6】
前記アミノ酸配列に結合された異種アミノ酸配列をさらに含む、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項7】
前記異種アミノ酸配列は、免疫グロブリン、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、絨毛性性腺刺激ホルモン(CGβ)由来のカルボキシ末端ペプチド(CTP)、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)からなる群から選択される、請求項6に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項8】
非タンパク質性成分に結合される、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項9】
前記非タンパク質性成分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)(SMA)、およびジビニルエーテル・無水マレイン酸コポリマー(DIVEMA)からなる群から選択される、請求項8に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の単離されたポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、前記単離されたポリヌクレオチドはゲノムのFlt1ではない、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
mRNAまたはcDNAである、請求項10に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号1または配列番号3に示されるような、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
シス作用する調節エレメントに機能的に結合された請求項10または12に記載の核酸配列を含む、核酸構築物。
【請求項14】
配列番号9に対してではなく、請求項10に記載の単離されたポリヌクレオチドに対して特異的にハイブリダイゼーションすることができる核酸配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項15】
配列番号10に対してではなく、請求項1に記載の単離されたポリペプチドに対して特異的に結合する抗原認識ドメインを含む、単離された抗体。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれかに記載の単離されたポリペプチドと、医薬的に許容され得るキャリアとを含む、医薬組成物。
【請求項17】
請求項10または12に記載の単離されたポリヌクレオチドと、医薬的に許容され得るキャリアとを含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項15に記載の抗体と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む、医薬組成物。
【請求項19】
請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチドと、医薬的に許容され得るキャリアとを含む、医薬組成物。
【請求項20】
VEGF関連の医学的状態を処置するために特定される医薬品の製造のための、sFlt−1(配列番号9または配列番号10)ではなく、sFlt−14(配列番号1または配列番号2)の活性および/または発現を調節することができる作用因の使用。
【請求項21】
前記VEGF関連の医学的状態には、VEGFの低下した活性および/または発現が伴い、前記調節することは、前記sFlt−14をダウンレギュレーションすることを含む、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記VEGF関連の医学的状態には、VEGFの過度な活性および/または発現が伴い、前記調節することは、前記sFlt−14をアップレギュレーションすることを含む、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記VEGF関連の医学的状態は、子癇前症、妊娠性糖尿病、妊娠性高血圧、胎児成長制限(FGR)、胎児アルコール症候群(FAS)、ガン、角膜血管新生、および高血圧からなる群から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項24】
前記作用因は請求項15に記載の抗体を含む、請求項20に記載の使用。
【請求項25】
前記作用因は請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、請求項20に記載の使用。
【請求項26】
前記作用因は請求項1〜3および5〜9のいずれかに記載の単離されたポリペプチドを含む、請求項20に記載の使用。
【請求項27】
前記作用因は請求項10または12に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、請求項20に記載の使用。
【請求項28】
生物学的サンプルにおけるsFlt−14(配列番号2)を検出する方法であって、
(a)生物学的サンプルを請求項15に記載の抗体と接触させ、その結果、sFlt−14および抗体が複合体を形成するようにすること、および
(b)前記複合体の存在またはレベルを測定し、それにより、生物学的サンプルにおけるsFlt−14を検出すること
を含む方法。
【請求項29】
生物学的サンプルにおけるsFlt−14(配列番号1)を検出する方法であって、
(a)生物学的サンプルを請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチドと接触させ、その結果、ハイブリダイゼーション複合体を形成するようにすること、および
(b)前記複合体の存在またはレベルを測定し、それにより、生物学的サンプルにおけるsFlt−14を検出すること
を含む方法。
【請求項30】
前記測定することが、PCR、リアルタイムPCR、RT−PCR、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、ノーザンブロット、およびインシトゥーハイブリダイゼーションからなる群から選択される方法によって行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
sFlt−1(配列番号9または配列番号10)ではなく、sFlt−14(配列番号1または配列番号2)を認識することができる作用因を使用して、sFlt−14(配列番号1または配列番号2)の発現レベルを対象の生物学的サンプルにおいて検出することを含む、母体または胎児のストレスに関連する妊娠関連の医学的状態をその必要性のある対象において診断する方法であって、所定の閾値を超える前記sFlt−14の発現レベルにより、母体または胎児のストレスに関連する妊娠関連の医学的状態が示される方法。
【請求項32】
sFlt−14(配列番号1または配列番号2)の発現レベルを生物学的サンプルにおいて検出することを含む、母体または胎児のストレスに関連する妊娠関連の医学的状態をその必要性のある対象において診断する方法であって、前記生物学的サンプルは妊娠第13週以降の生物学的サンプルであり、また、所定の閾値を超える前記sFlt−14の発現レベルにより、母体または胎児のストレスに関連する妊娠関連の医学的状態が示される方法。
【請求項33】
前記状態は、子癇前症、妊娠性糖尿病、妊娠性高血圧、胎児成長制限(FGR)、および胎児アルコール症候群(FAS)からなる群から選択される、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
生物学的サンプルは、尿サンプル、血液サンプル、血清サンプル、胎盤生検物、絨毛膜絨毛サンプル、および羊水サンプルからなる群から選択される、請求項28、29、31、および32のいずれかに記載の方法。

【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図7】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−512781(P2010−512781A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542395(P2009−542395)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001589
【国際公開番号】WO2008/075363
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(309038764)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム リミテッド (6)
【出願人】(500388981)ハダシット メディカル リサーチ サーヴィシーズ アンド ディヴェロップメント リミテッド (6)
【Fターム(参考)】