説明

W/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料

【課題】内水相に高濃度の電解質を配合しても、長期にわたり経時安定性が良好なこのW/O/W型乳化物を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)不飽和結合を含んでいても良い炭素数6〜22の直鎖、およびまたは分岐のアルキル基を持つアルキル化多糖類、(B)リン脂質、(C)イオン性界面活性剤を配合した水相に、W/O型乳化物を乳化・分散することで、内水相に高濃度の電解質を配合しても長期にわたり経時安定性が良好なW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料に関し、更に詳しくはW/O/W型乳化物の内水相に高濃度の電解質を配合しても長期にわたり経時安定性が良好であることを特徴とするW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
W/O/W型乳化物は、水(W)滴粒子を内部に閉じこめた油(O)滴粒子が外水相(W)中に分散している乳化物である。内水相や油相に種々の有効成分を配合したり、2種の水溶性有効成分をそれぞれ接触させることなく配合するができるため、食品をはじめ、医薬品、化粧品等の分野において盛んに検討されている。化粧品分野においては、有効成分の徐放、水溶性物質の安定配合、W/O乳化物の保湿性とO/W乳化物の使用感の両立、塗布時に転相するようなみずみずしい使用感を付与する目的で利用されることがある。
【0003】
しかしながらW/O/W型乳化物は、内水相と外水相の合一、W/O乳化物の凝集・合一、内水相同士の合一・巨大化を引き起こしやすい。従って、長期間にわたってその形態を保持することが困難であることから、経時安定性の向上が大きな課題となっている。
【0004】
このような問題に対し、これまでに様々な検討がなされている。例えば、外水相に水溶性増粘剤として多糖類を配合する方法(特許文献1)、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを用いてW/O乳化物を外水相中に分散させる方法(特許文献2、3)、内部に水相を有する小胞体を水性分散媒に分散させるときに、浸透圧調整剤を添加する方法(特許文献4)、特定のベントナイトや金属石鹸を用いてW/O乳化物を調製したのち、N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩や水性ノニオン性界面活性剤を用いてW/O/Wを調製する方法(特許文献5、6)、安定なW/O乳化物の界面膜を強化するためにポリグリセリン縮合リシノール酸エステルやリシノール酸自己縮合物の糖類エステルを界面活性剤として利用する方法(特許文献7、8)などが開示されている。しかしながら、W/O/W型乳化物の内水相に高濃度の電解質を配合する場合、長期にわたるW/O/W型乳化物の経時安定性は必ずしも十分ではなかった。
【0005】
一方、本発明者らは、「生体に対して安全で、しかも環境適合性に優れた」脱ポリオキシエチレン系の乳化機能と増粘性能を併せ持ち、経時安定性に優れたO/W乳化物を調製しうる乳化剤組成物として、(A)不飽和結合を含んでいても良い炭素数6〜22の直鎖、及び/又は分岐のアルキル基を持つアルキル化多糖類、(B)リン脂質、(C)イオン性界面活性剤、及びそれを含有するO/W乳化剤組成物を提案した(特許文献9)。本発明者らは、このO/W乳化剤組成物の応用研究を進める中で、高濃度の電解質を配合しても長期にわたる経時安定性が極めて良好なO/W乳化物が得られること、また、このO/W乳化剤組成物をW/O/W型乳化物の外水相に利用することで、内水相及び/又は外水相に高濃度の電解質を配合しても長期にわたり経時安定性が良好なW/O/W型乳化物が得られることを見出した。
【0006】
なお、高分子多糖体と脂肪酸エステルを利用してはいるが、リン脂質は利用されていないW/O/W型の動物用ワクチンが開示されているが、この中では高濃度の電解質を配合した場合の経時安定性については言及していない(特許文献10、11)。
【特許文献1】特開昭58−183611号公報
【特許文献2】特開平11−33391号公報
【特許文献3】特開2002−275029
【特許文献4】特開2002−187834
【特許文献5】特開昭59−127646号公報
【特許文献6】特開昭60−193529号公報
【特許文献7】特開昭59−56324号公報
【特許文献8】特開2000−292269
【特許文献9】特開2005−179241
【特許文献10】特開2001−39891
【特許文献11】特開2003−128578
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
内水相に高濃度の電解質を配合しても、長期にわたり経時安定性が良好なW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはこれらの問題を解決すべく鋭意研究した結果、(A)不飽和結合を含んでいても良い炭素数6〜22の直鎖、およびまたは分岐のアルキル基を持つアルキル化多糖類、(B)リン脂質、及び、(C)イオン性界面活性剤を配合した水相に、W/O型乳化物を乳化・分散することで、内水相に高濃度の電解質を配合した場合でも長期にわたり経時安定性が良好なこのW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
(A)〜(C)を必須成分として含有するに水相に、高濃度の電解質を含む各種W/O型乳化物を乳化・分散したW/O/W型乳化物の長期安定性試験を実施したところ、いずれもその効果が顕著であった。(A)〜(C)成分の組合せに関する詳細な作用機構は明らかではないが、(A)〜(C)を必須成分として含有する水相に、各種W/O型乳化物を乳化及び/又は分散したW/O/W型乳化物は、内水相に高濃度の電解質を長期にわたり安定に配合ならしめるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いる(A)成分のアルキル化多糖類としては、セルロース、海藻、種子、樹液、果実、微生物産生物から得られる多糖類をアルキル化した物を用いることができる。
【0011】
具体的にはアルギン酸、カラギーナン、寒天、ファーセラン、グアーガム、クインシード、コンニャクマンナン、タマリンドガム、タラガム、デキストリン、デンプン、アラビアガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、ガッティガム、トラガカントガム、キサンタンガム、ペクチン、セルロース等多糖類のアルキル化物を用いることができる。
【0012】
更には、該多糖類の変性物をアルキル化して用いることができる。具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロースエーテルのアルキル化物が挙げられる。
【0013】
本発明で使用する(A)成分のアルキル化多糖類は、該多糖類、及びまたはそれらの変性物のアルキルグリセリルエーテル化物であることが特に好ましい。アルキルグリセリルエーテル化は、製造方法が単純で、副生物が少ないことから、本発明のアルキル化多糖類を製造する際に、特に好ましい方法である。
【0014】
本発明の(A)成分としては、炭素数1〜3のアルキル基、及びまたは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するセルロースエーテルを、不飽和結合を含んでいても良い炭素数6〜22の直鎖、及び/又は分岐のアルキル基を持つアルキルグリセリルエーテル化したものが、極めて良好な乳化力と増粘作用を発揮することから特に好ましい。
【0015】
これらアルキルグリセリルエーテル化セルロースの製造方法は公知であり、例えば、特開平3−12401に開示されている。すなわち、前述した水溶性セルロースエーテルに、カセイソーダ等のアルカリ剤の存在下、アルキル化剤であるアルキルグリシジルエーテルを添加し、50〜80℃で数時間混合・反応させた後、アルカリ剤を中和し、必要応じて洗浄、乾燥することで得ることができる。
【0016】
ここでいうアルキルグリシジルエーテルとしては、不飽和あるいは分岐構造でも良い炭素数6〜22のアルキル基を有するものが好適に使用できる。具体的には、ベヘニルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、イソステアリルグリシジルエーテル、オレイルグリシジルエーテル、セチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0017】
本発明のアルキル化多糖類のアルキル化率は、構成グルコース単位当たり0.001〜1モル、好ましくは0.001〜0.5モル、更に好ましくは0.001〜0.1モルである。
【0018】
本発明で使用する(B)成分のリン脂質としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン等のレシチン類、これらのレシチン類を酵素処理によりモノアシル体としたリゾレシチン及びまたは水素添加リゾレシチン、ヒドロキシル化したヒドロキシレシチン等を挙げることができる。これらは、原料となる卵黄油や植物油を含む粗製レシチンでも良く、脱油・脱色精製した精製レシチンであっても良い。
【0019】
更には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸等のレシチン中のリン脂質分画物もそれぞれ単品及びまたは混合して使用することができる。
【0020】
本発明には、水素添加大豆レシチンが、乳化力と酸化安定性の面で特に好ましい。
【0021】
本発明で使用する(C)成分のイオン性界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤:脂肪酸セッケン、α―アシルスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルアリルスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキル硫酸、POEアルキルエーテル硫酸、アルキルアミド硫酸、アルキルリン酸、POEアルキルリン酸、アルキルアミドリン酸、アルキロイルアルキルタウリン、N−アシルアミノ酸、POEアルキルエーテルカルボン酸、
アルキルスルホコハク酸、アルキルスルホ酢酸、アシルイセチオン酸、アシル化加水分解コラーゲンペプチド、パーフルオロアルキルリン酸、サポニン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、ステロール類の硫酸エステル、ステロール類のリン酸エステル及びまたはそれらのアリカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミン、アルキルアミン、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0022】
カチオン性界面活性剤:塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セトステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベヘニン酸アミドプロピルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラノリン誘導体第四級アンモニウム等が挙げられる。また、脂肪酸アミドジアルキルアミン等の第3級アミン及びその塩も挙げられる。
【0023】
両性界面活性剤:カルボキシベタイン型、アミドベタイン型、スルホベタイン型、ヒドロキシスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型、ホスホベタイン型、アミノカルボン酸塩型、イミダゾリン誘導体型等が挙げられる。
【0024】
(A)〜(C)成分の組成比については、質量比で下記のとおりである。
(A)/(C)=99.9/0.1〜90/10
(A)/(B)=99.9/0.1〜30/70
(A)+(C)/(B)=99.9/0.1〜30/70
好ましくは、
(A)/(C)=99.5/0.5〜90/10
(A)/(B)=99/1〜30/70
(A)+(C)/(B)=99/1〜30/70
更に好ましくは、
(A)/(C)=99/1〜93/7
(A)/(B)=90/10〜40/60
(A)+(C)/(B)=90/10〜40/60
【0025】
本発明のW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料の調製時に配合できるW/O型乳化物としては、用途、剤型、配合目的等によって異なり、特に限定されるものではないが、一般的には、乳化剤としてHLB12程度までの親油性界面活性剤、例えば、ポリリシノール酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ジグルセリル、POE(2)セチルエーテル、POE(1)POP(8)セチルエーテル、モノイソステアリン酸ソルビタンなどを利用する方法、アミノ酸ゲル乳化法、アルキルグリセリルエーテル、多価アルコール、水で形成されるゲルを利用する方法、有機変性粘土鉱物を利用する方法などを用いることができる。
【0026】
有機変性粘土鉱物を利用したW/O用乳化剤としては、市販品として、NIKKOL ニコムルス WO(有機変性粘土鉱物、シリコーン系乳化剤、環状シリコーンよりなるW/O乳化剤、日光ケミカルズ社製)やNIKKOL ニコムルス WO−NS(有機変性粘土鉱物、ポリグリセリン脂肪酸エステルよりなるW/O乳化剤、日光ケミカルズ社製)などがあげられる。これらを用いることで、油のゲル化剤やワックス成分を配合しなくても、多量の油分を配合しても極めて安定なW/O型乳化物を調製することができる。
【0027】
本発明のW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料の内水相及び/又は外水相に配合する塩としては、用途、剤型、配合目的等によって異なり、特に限定されるものではないが、無機塩、水溶性有効成分などを用いることができるほか、無機成分が溶出してしまうような粉体なども安定に配合することができる。
【0028】
具体的には塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、海塩、海藻抽出物に含まれる無機塩や、ピロリドンカルボン酸ナトリウムなどの有機物の塩、アミノ酸類、角層に存在し水分を保持する働きをもつ水溶性物質(NMF成分(アミノ酸類、ピロリドンカルボン酸、有機酸、尿素、無機塩などからなる))、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸硫酸ニナトリウム等のビタミンC誘導体などを用いることができる。
【0029】
さらに、本発明のW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料の内水相には、水相に配合しにくい(塩以外の)水溶性有効成分も安定に配合することができる。
【0030】
具体的にはアスコルビン酸、アルブチン、コウジ酸、カテキンやリンゴタンニンなどの着色しやすい成分などを用いることができる。
【0031】
本発明のW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料の内水相に配合する塩の配合量は、用途、剤型、配合目的等によって異なり、特に限定されるものではないが、一般的には、全量中0.01〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5.0質量%である。
【0032】
(A)〜(C)成分の混合物を調製する際は、ヒーター及び温度調節器の付いた撹拌機に(A)〜(C)成分を一度に量り込み、50℃〜130℃で撹拌混合すれば良い。撹拌機は、パドル撹拌機、ホモミキサー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、ロールミル等が使用できる。その際に、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、カービトール類などの水溶性溶剤、及びまたは流動パラフィン、2−エチルヘキシルパルミテート、セチル2−エチルヘキサノエート、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリド、オリーブ油等の液状油を使用することで、ペースト状の組成物とすることができる。更には、高級アルコール等の高油点物を混合することでワックス状とすることができ、フレーカー等でフレーク状に成形することもできる。
【0033】
(A)〜(C)成分を用いて、本発明のW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料を調製する際は、(A)〜(C)成分の混合物として、W/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料中に0.1〜30.0%質量、好ましくは、0.5〜20.0%質量、より好ましくは、1.0〜15.0%質量配合する。
【0034】
(A)〜(C)成分を用いて、本発明のW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料を調製する際は、パドルミキサー、ホモミキサー等の通常の乳化装置が使用できる。調製法は、(A)〜(C)成分を含む水相を50℃〜80℃に保持しながらホモミキサー等で撹拌したものを30℃〜35℃に冷却し、予め調製しておいたW/O型乳化物をパドルミキサー等で攪拌しながら添加する方法などが挙げられる。
【0035】
本発明のW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料には、油性成分、高級アルコール、脂肪酸、活性成分、保湿成分、抗菌成分、粘度調製剤、色素等を併用することができる。
【0036】
油性成分としては、一般に化粧品に使用される油性成分なら、いずれも、好適に使用できる。具体的には、スクワラン、オリーブスクワラン、流動パラフィン等の炭化水素類、オリーブ油、ホホバ油等の植物油、牛脂等の動物油、ミツロウ、カルナバロウ、ラノリン、キャンデリラロウ等のロウ類、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリンエステル、ミリスチン酸イソプロピルエステル、2−エチルヘキサン酸セチルエステル等のエステル類、ジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、環状メチルポリシロキサン等のシリコーン類等が挙げられる。
【0037】
高級アルコールとしては、イソオクタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、コレステロール等が挙げられる。
【0038】
脂肪酸としては、オクタン酸、イソオクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0039】
活性成分としては、具体的には、美白成分である、アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル、アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウムアスコルビン酸グルコシド等のビタミンC誘導体、アルブチン、コウジ酸等、また、抗酸化成分であるビタミンE及びその誘導体又はカテキン等のポリフェノール類、カロチノイド等、また、抗炎症成分である、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン、ビタミンA、ビタミンD、ニコチン酸アミド類、パントテン酸カルシウム、アラントイン、γ−オリザノール等、また、皮膚栄養剤である、ビタミンE、γ−リノレン酸等が好適に使用できる。
【0040】
保湿成分としては、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ソルビトール、ソルビタン、ペンタエリスリトール、キシリトール等の多価アルコール類、キトサン、ヒアルロン酸等の多糖類、ピロリドンカルボン酸等のアミノ酸類等が挙げられる。同様に、セラミド類、スフィンゴ脂質類も好適に使用できる。
【0041】
抗菌、防腐成分としては、エタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0042】
粘度調製剤、外観調製剤としては、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子、高級脂肪酸エチレングリコールエステル等のパール剤等が挙げられる。
【0043】
本発明のW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料には、その特性を損なわない範囲でノニオン性界面活性剤を併用することが出来る。好ましいノニオン性界面活性剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POE脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、POE・POP共重合体、POE・POPアルキルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンラウリン酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の技術範囲がこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
<アルキル化多糖類の製造>
窒素導入装置、温度調節器、還流コンデンサー、滴下ロート、パドル形状の撹拌装置を持つステンレス製5リッター反応装置に、多糖類の300gを仕込み、そこに2Lのイソプロパノールを添加した。窒素気流下、室温で1時間撹拌し、下記に示す多糖類4種類それぞれをイソプロパノールに分散させた。その分散液に同条件下で、48%水酸化ナトリウム溶液(50g)を添加し、更に30分撹拌した。次いてそこにステアリルグリシジルエーテル10gを滴下し、還流下6時間撹拌を行なった。反応終了後、冷却し、固形物をろ過により取出した。取出した固形物を2リッターのイソプロパノールで3回、更に、精製水で洗浄液のpHがpH試験紙で中性を示すまで洗浄し乾燥してアルキル化多糖類1〜4を得た。なお、原料の多糖類は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、グアーガム、バレイショデキストリンを使用した。
アルキル化多糖類1:ステアリルグリセリルエーテル化ヒドロキシプロピルメチルセルロース
アルキル化多糖類2:ステアリルグリセリルエーテル化メチルセルロース
アルキル化多糖類3:ステアリルグリセリルエーテル化グアーガム
アルキル化多糖類4:ステアリルグリセリルエーテル化バレイショデキストリン
【0046】
<(A)〜(C)成分の混合物の製造例>
温度調節器、窒素導入装置、パドル形状の撹拌装置を持つステンレス製10リッター撹拌機に、表1に示す処方の原料を全量で5Kgになるように仕込み、窒素封入下、70〜80℃、200回/分の撹拌速度で2時間撹拌した。更に、同撹拌速度で撹拌しながら冷却し、系の温度が40℃になったところで撹拌を中止し混合物を取り出し、表1に示す本発明品において必須成分とする(A)〜(C)成分の混合物1〜6と比較成分の混合物1〜4を得た。得られた混合物は、淡褐色ペーストであった。表中の数値は、質量%を表す。
【表1】

【0047】
<W/O/W型乳化物の調製>
表2に示すO/W型乳化物、及び、本発明品において必須成分とする(A)〜(C)成分の混合物1〜6及び比較成分の混合物1〜4を用いて、表3に示す発明品1〜6及び比較品1〜4のW/O/W型乳化物を調製した。表中の数値は、質量%を表す。
【0048】
<W/O/W型乳化物の安定性>
調製直後、45℃(ヤマト科学社製恒温槽、45℃±2℃)で3ヶ月保管した乳化物の安定性を評価した。判定は100mlの透明ガラス容器中に保存したW/O/W型乳化物を顕微鏡観察することで行なった。
【0049】
<W/O/W型乳化物の導電率>
調製直後、45℃で3ヶ月保管したW/O/W型乳化物の22℃における導電率をデジタル式電気伝導度計CM−50D(竹村電気製作所製)を用いて測定した。
【0050】
<結果>
表3に示すように、W/O/W型乳化物のうち本発明品において必須成分とする(A)〜(C)成分の混合物を使用した発明品1〜6は、45℃で3ヶ月保管した後においても、調製直後と同等の多相が確認され、内水相と外水相の合一などは確認されなかった。また、導電率についても、調製直後と45℃で3ヶ月保管後の間で変化はほとんどおこらなかった。しかしながら、比較成分の混合物を使用した比較品1〜4は、調製直後は本発明品において必須成分とする(A)〜(C)成分の混合物を使用した発明品と同等に多相が確認され、また同程度の導電率が示していたが、45℃で3ヶ月保管後では、すべての調製物において多相が確認されず、また、導電率も著しく増加していることが確認された。
従って、本発明品において必須成分とする(A)〜(C)成分の混合物を使用したW/O/W型乳化物は、内水相に多量の電解質を配合しても経時安定性が良好であることが示唆された。
【表2】

【表3】

【0051】
次に実際のW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料の応用例を実施例2〜9に挙げる。但し、これら実施例だけに限定されるものではない。なお配合量は質量%で示す。
【実施例2】
【0052】
W/O/W型乳化物
(A相)
POE(10)硬化ヒマシ油 2.0%
酢酸トコフェロール 0.3
流動パラフィン 3.0
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 5.0
シクロメチコン 1.0
防腐剤 適量
(B相)
1,3−ブチレングリコール 2.0
グリセリン 2.0
PCAナトリウム 1.0
リンゴタンニン 0.1
アスコルビン酸 0.3
精製水 20.0
(C相)
防腐剤 適量
本発明品において必須成分とする
(A)〜(C)成分の混合物No.1 4.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 残部
(調製方法)
B相成分を、加温溶解したA相成分に加えてホモミキサーで撹拌し、予めW/O型乳化物を調製しておく。C相を80℃に加温してホモミキサーで撹拌した後、パドル撹拌しながら冷却し35〜30℃まで冷却する。ホモミキサーで攪拌しながらW/O型乳化物を添加する。
【実施例3】
【0053】
W/O/W型乳化物(保湿用化粧料)
(A相)
POE(5)フィトステロール 2.0%
酢酸トコフェロール 0.3
オリーブスクワラン 3.0
マカダミアナッツ油 5.0
ジメチルポリシロキサン 1.0
ベヘニルアルコール 0.3
バチルアルコール 0.3
ステアリン酸 0.2
防腐剤 適量
(B相)
ジプロピレングリコール 2.0
グリセリン 2.0
THALITAN(加水分解アルギン、硫酸マグネシウム、
硫酸マンガンを含む水溶液) 5.0
精製水 20.0
(C相)
防腐剤 適量
本発明品において必須成分とする
(A)〜(C)成分の混合物No.2 10.0
PCAカリウム 1.0
精製水 残部
(調製方法)
B相成分を、加温溶解したA相成分に加えてホモミキサーで撹拌し、予めW/O型乳化物を調製しておく。C相を80℃に加温してホモミキサーで撹拌した後、パドル撹拌しながら冷却し35〜30℃まで冷却する。ホモミキサーで攪拌しながらW/O型乳化物を添加する。
【実施例4】
【0054】
W/O/W型乳化物(美白剤)
(A相)
ポリリシノイン酸ヘキサグリセリル 1.8%
モノイソステアリン酸ジグリセリル 1.5
水素添加大豆リン脂質 0.3
エチルヘキサン酸セチル 7.0
メチルフェニルポリシロキサン 5.0
防腐剤 適量
(B相)
1,3−ブチレングリコール 2.0
グリセリン 2.0
リン酸L−アスコルビルマグネシウム 3.0
クエン酸ナトリウム 1.0
EDTA−4Na 0.05
精製水 20.0
(C相)
防腐剤 適量
本発明品において必須成分とする
(A)〜(C)成分の混合物No.3 7.0
精製水 残部
(調製方法)
A相成分を60℃に加温溶解さてから室温まで冷却する。B相成分を、A相成分に加えてホモミキサーで撹拌し、予めW/O型乳化物を調製しておく。C相を80℃に加温してホモミキサーで撹拌した後、パドル撹拌しながら冷却し35〜30℃まで冷却する。ホモミキサーで攪拌しながらW/O型乳化物を添加する。
【実施例5】
【0055】
W/O/W型乳化物(老化防止用化粧料)
(A相)
POE(5)フィトステロール 1.0%
ポリリシノイン酸ヘキサグリセリル 0.5
水素添加レチノール 0.3
オリーブスクワラン 3.0
テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル 3.0
シクロメチコン 2.0
防腐剤 適量
(B相)
1,3−ブチレングリコール 2.0
グリセリン 2.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
エルゴチオネイン 0.2
精製水 20.0
(C相)
防腐剤 適量
本発明品において必須成分とする
(A)〜(C)成分の混合物No.3 4.0
PCAナトリウム 1.0
精製水 残部
(調製方法)
B相成分を、加温溶解したA相成分に加えてホモミキサーで撹拌し、予めW/O型乳化物を調製しておく。C相を80℃に加温してホモミキサーで撹拌した後、パドル撹拌しながら冷却し35〜30℃まで冷却する。ホモミキサーで攪拌しながらW/O型乳化物を添加する。
【実施例6】
【0056】
W/O/W型乳化物(美白用化粧料)
(A相)
ニコムルス WO(有機変性粘土鉱物、シリコーン系乳化剤、
環状シリコーンよりなるW/O乳化剤、日光ケミカルズ社製)
1.5%
エチルヘキサン酸セチル 1.0
オクチルドデカノール 1.0
ジメチエルポリシロキサン 3.0
シクロメチコン 3.0
防腐剤 適量
(B相)
ペンチレングリコール 4.0
グリセリン 2.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
アスコルビン酸硫酸二ナトリウム 3.0
精製水 20.0
(C相)
防腐剤 適量
本発明品において必須成分とする
(A)〜(C)成分の混合物No.5 5.0
Pheohydran P(加水分解アルギン、海水、
クロレラエキスの混合物) 3.0
精製水 残部
(調製方法)
B相成分を、A相成分に加えてホモミキサーで撹拌し、予めW/O型乳化物を調製しておく。C相を80℃に加温してホモミキサーで撹拌した後、パドル撹拌しながら冷却し35〜30℃まで冷却する。ホモミキサーで攪拌しながらW/O型乳化物を添加する。
【実施例7】
【0057】
W/O/W型乳化物(美白用化粧料)
(A相)
ニコムルス WO−NS(有機変性粘土鉱物、ポリグリセリン脂
肪酸エステルよりなるW/O乳化剤、日光ケミカルズ社製)
1.5%
酢酸トコフェロール 0.2
オリーブスクワラン 4.0
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 4.0
シクロメチコン 2.0
防腐剤 適量
(B相)
ペンチレングリコール 4.0
グリセリン 2.0
キサンタンガム 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
アルブチン 3.0
クエン酸 0.1
精製水 20.0
(C相)
防腐剤 適量
1,3−ブチレングリコール 3.0
本発明品において必須成分とする
(A)〜(C)成分の混合物No.6 4.0
グリシン亜鉛 0.1
精製水 残部
(調製方法)
B相成分を、A相成分に加えてホモミキサーで撹拌し、予めW/O型乳化物を調製しておく。C相を80℃に加温してホモミキサーで撹拌した後、パドル撹拌しながら冷却し35〜30℃まで冷却する。ホモミキサーで攪拌しながらW/O型乳化物を添加する。
【実施例8】
【0058】
W/O/W型乳化物(クリームファンデーション)
(A相)
ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル 1.5%
メチルポリシロキサン・セチルメチルポリシロキサン・ポリ
(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロ
キサン共重合体 0.2
ファンデーションパウダーベース(シリコーン処理)
8.0
オリーブスクワラン 1.0
リンゴ酸ジイソステアリル 3.0
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 2.0
シクロメチコン 5.0
防腐剤 適量
(B相)
ペンチレングリコール 4.0
グリセリン 2.0
ピロリドンカルボン酸ナトリウム 2.0
精製水 20.0
(C相)
防腐剤 適量
本発明品において必須成分とする
(A)〜(C)成分の混合物No.1 4.0
精製水 残部
(調製方法)
A相成分、B相成分を加温溶解する。B相成分を、A相成分に加えてホモミキサーで撹拌し、予めW/O型乳化物を調製しておく。C相を80℃に加温してホモミキサーで撹拌した後、パドル撹拌しながら冷却し35〜30℃まで冷却する。ホモミキサーで攪拌しながらW/O型乳化物を添加する。
【実施例9】
【0059】
W/O/W型乳化物(抗アクネ用乳液)
(A相)
パルミチン酸デキストリン 0.5%
流動パラフィン 10.0
固形パラフィン 1.0
ミツロウ 1.0
イソステアリン酸ジグリセリル 1.5
防腐剤 適量
(B相)
グリセリン 5.0
グルタミン酸ナトリウム 0.5
Phyco Anti−Acne(加水分解アルギン、
硫酸亜鉛を含む水溶液) 5.0
精製水 20.0
(C相)
防腐剤 適量
本発明品において必須成分とする
(A)〜(C)成分の混合物No.4 5.0
精製水 残部
(調製方法)
A相成分、B相成分を加温溶解する。B相成分を、A相成分に加えてホモミキサーで撹拌し、予めW/O型乳化物を調製しておく。C相を80℃に加温してホモミキサーで撹拌した後、パドル撹拌しながら冷却し35〜30℃まで冷却する。ホモミキサーで攪拌しながらW/O型乳化物を添加する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
W/O型乳化物を乳化・分散したW/O/W型乳化物において、その外水相に(A)不飽和結合を含んでいても良い炭素数6〜22の直鎖、およびまたは分岐のアルキル基を持つアルキル化多糖類、(B)リン脂質、(C)イオン性界面活性剤を必須成分として配合することで、内水相に高濃度の電解質を配合しても、長期にわたり経時安定性が良好なW/O/W型乳化物及び外用剤及び化粧料を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)、(B)及び(C)を必須成分として含有する水相に、W/O型乳化物を乳化及び/又は分散してなることを特徴とするW/O/W型乳化物。
(A)不飽和結合を含んでいても良い炭素数6〜22の直鎖、及び/又は分岐のアルキル基を持つアルキル化多糖類
(B)リン脂質
(C)イオン性界面活性剤
【請求項2】
上記W/O型乳化物が、有機変性粘土鉱物を必須成分として含むことを特徴とする請求項1に記載のW/O/W型乳化物。
【請求項3】
リン脂質が、水素添加大豆リン脂質であることを特徴とする請求項1又は2に記載のW/O/W型乳化物。
【請求項4】
いずれかの水相に、電解質及び/又は水溶性有効成分を配合したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のW/O/W型乳化物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のW/O/W型乳化物であることを特徴とする皮膚外用剤又は化粧料又は頭髪用化粧料。

【公開番号】特開2008−88104(P2008−88104A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270277(P2006−270277)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000226437)日光ケミカルズ株式会社 (60)
【出願人】(301068114)株式会社コスモステクニカルセンター (57)
【Fターム(参考)】