説明

X線アンギオ撮影装置

【課題】造影前後の画像から血管の3次元画像を生成するX線アンギオ撮影装置において、3次元の血管画像とともに高精細の組織の3次元画像を発生する。
【解決手段】X線アンギオ撮影装置は、略C形のアーム60と、アーム支持機構と、アーム回転駆動部22と、アームに搭載されるX線管12と、アームに搭載されるX線検出器14と、造影後の複数のコントラスト画像の角度間隔が、造影前の複数のマスク画像の角度間隔よりも広くなるように回転駆動部を制御する回転コントローラ23と、コントラスト画像とマスク画像との差分画像に基づいて第1の3次元画像を再構成し、マスク画像に対して感度補正をして感度補正されたマスク画像に基づいて3次元の非血管画像を表す第2の3次元画像を再構成する再構成部34と、画像を表示する表示部37とを具備し、表示部は合成画像表示状態、第1、第2の3次元画像表示状態を切り替えて表示可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影前後の画像から血管の3次元画像を発生するX線アンギオ撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部の血管走行は非常に複雑であり、特に動脈瘤のある症例では動脈瘤のネックが確認できる最適観察角度を決定するため、またネックとドームの関係や動脈瘤と親血管/近くの細かい血管などとの関係を把握するため、3D−DSA(3次元のディジタル・サブトラクション・アンギオグラフィ)を撮影することが多い。
【0003】
3D−DSAでは、X線管等を患者の回りを回転しながら撮影を繰り返すことで撮影方向の異なる複数の画像を造影剤注入の前と後とでそれぞれ収集する。一般的に、造影剤注入前に収集した血管が造影されていない2次元の投影画像をマスク画像と称し、造影剤注入後に収集した血管が造影されている2次元の投影画像をコントラスト画像と称する。撮影方向をそろえて注入前後の画像を引き算することで、造影された血管部分を主に抽出する。そして血管部分が抽出された画像を3次元再構成処理により血管の精細な3次元画像を生成する方法である。この3次元画像を3D−DSA像と呼ぶ。3D−DSA収集やその元となった技術である回転DSAは、同じ角度同士をサブトラクションして観察したり、再構成したりする技術であるが故に、必ずマスク画像とコントラスト画像とは同じ角度間隔で収集される。
【0004】
X線アンギオ撮影装置を用いて、400〜500フレーム等の多数の投影画像を収集し、その多数の投影画像から3次元画像を再構成することにより軟部組織の視認性を向上させる方法が提案されている。しかし400フレーム以上の投影画像を収集するには、X線検出器側の収集レートの制限のもとでアームをゆっくり回す必要がある。
【0005】
しかしゆっくり回すと、必然的に使用造影剤量が増加する。そこで血管系の疾患の診断時は、臨床上は投影画像数を少なくして撮影しており、必然的に軟部組織の視認性が劣化してしまう。

【特許文献1】特開2004−171283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、造影前後の画像から血管の3次元画像を生成するX線アンギオ撮影装置において、3次元の血管画像とともに高精細の組織の3次元画像を発生することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面に係るX線アンギオ撮影装置は、略C形アームと、前記略C形アームを回転自在に支持する支持機構と、前記略C形アームの回転を駆動する回転駆動部と、前記略C形アームに搭載されるX線管と、前記X線管に対向する向きで前記略C形アームに搭載されるX線検出器と、造影後の複数のコントラスト画像の角度間隔が、造影前の複数のマスク画像の角度間隔の2倍又はそれを越える整数倍になるように、前記回転駆動部を制御する回転制御部と、前記コントラスト画像と前記マスク画像との差分画像に基づいて第1の3次元画像を再構成するとともに、前記マスク画像に対して感度補正をして感度補正されたマスク画像に基づいて3次元の非血管画像を表す第2の3次元画像を再構成する再構成部と、前記第1、第2の3次元画像の合成画像を表示する表示部とを具備し、前記表示部は、合成画像表示状態、第1の3次元画像表示状態、第2の3次元画像表示状態を切り替えて表示可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、造影前後の画像から血管の3次元画像を生成するX線アンギオ撮影装置において、3次元の血管画像とともに高精細の組織の3次元画像を発生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を参照して本発明に係るX線アンギオ撮影装置を好ましい実施形態により説明する。
図1に示すように、X線アンギオ撮影装置は、X線撮影機構10を有する。X線撮影機構10は、図2に示すように、X線管12とX線検出器14とを有する。X線検出器14は、イメージインテンシファイア15とTVカメラ16とから構成される。または、検出器14は、マトリクス状に配列された半導体検出素子を有するフラットパネルディテクタ(FPD:平面型X線検出器)で構成される。X線管12は、検出器14とともに、互いに対向する向きでC形アーム60に搭載される。寝台の天板50上の被検体Pは、X線管12と検出器14との間に配置される。C形アーム60は、天井ベース63から吊り下げられる支柱64に支持される。C形アーム60は、直交3軸A,B,Cに関して回転可能である。回転駆動部22は支柱64の内部に収容される。回転駆動部22は、C形アーム60を矢印A,Bに個別に回転するための2つの動力源を有する。
【0010】
X線アンギオ撮影装置は、X線撮影機構10とともに、システムコントローラ20、カメラコントローラ21、回転コントローラ23、第1画像メモリ24、第2画像メモリ25、感度補正部26、対応画像選択部19、サブトラクション部27、体厚同定部28、散乱線補正部29、ビームハードニング補正部30、高周波強調フィルタリングなどを行うフィルタリング部31、画像拡大移動などを行うアフィン変換部32、画像合成部33、3次元再構成部34、3次元画像処理部35、D/A変換部36、表示部37を有する。第1の画像メモリ24は、造影前に撮影された複数のマスク画像に関するデータを記憶するために設けられている。第2の画像メモリ25は、造影後に撮影された複数のコントラスト画像に関するデータを記憶するために設けられている。対応画像選択部26は、造影後に撮影された撮影方向の異なる複数のコントラスト画像各々に対して同じ又は最も近い撮影方向で撮影された造影前のマスク画像を選択する。サブトラクション部27は、複数のコントラスト画像と、対応画像選択部26で選択された複数のマスク画像とを同じ又は最も近い撮影角度どうしで差分(引き算)することにより、撮影角度の相違する複数の差分画像を発生する。3次元再構成部34は、複数の差分画像に基づいて血管の3次元画像を再構成する。また、3次元再構成部34は、複数のマスク画像に基づいて骨及び軟部組織を有する非血管の3次元画像を再構成する。体厚同定部28は、3次元再構成部34で再構成された骨及び軟部組織等の非血管の3次元画像に基づいて、マスク画像各々の画素ごとに、そのX線軌跡上の骨領域の厚さと軟部組織の領域の厚さとをそれぞれ同定する。
【0011】
ビームハードニング補正部30は推定した軟部組織の厚さ、もしくは軟部組織の厚さ及び骨領域の厚さに基づいて、マスク画像に対しビームハードニング補正を行う。散乱線補正部29は、軟部組織の厚さ、もしくは軟部組織の厚さ及び骨領域の厚さに基づいて、元の又はビームハードニング補正を受けたマスク画像に対して散乱線補正を行う。3次元再構成部34は、ビームハードニング補正及び散乱線補正を受けた複数のマスク画像に基づいて高精細の非血管3次元画像を再構成する。画像合成部33は、3次元再構成部34で発生された血管の3次元画像と非血管の3次元画像とを合成する。合成した3次元画像には血管の画像情報と、非血管の画像情報が区別して管理されている。合成された3次元画像は3次元画像処理部35に送られ、陰面消去を考慮したサーフェイスレンダリングプロセッシング等により、表示のための2D合成画像を発生する。合成画像は、それ単独で、もしくは合成画像の断面画像と一緒にD/A変換機36を介して表示部37に表示される。
【0012】
次に本実施形態の動作を図3を参照して説明する。C形アーム60は駆動部22のモーターで高速にプロペラのように回転することができる。この回転により被検体の周り180度以上の角度を短時間で回転することができる。撮影工程S11において、造影剤注入前に、図4に例示するように、C形アーム60が基準位置から回転され、撮影方向がLAOからRAOに変化されながら、一定時間間隔で撮影が繰り返される。カメラコントローラ21により一定の周期でX線検出器14からマスク画像信号が繰り返し読み出される。連続する対のマスク画像の撮影角度間隔が、例えば0.5度になるように、回転コントローラ23は回転駆動部22を制御して、C形アーム60の回転速度を調整する。典型的には、200度の範囲で400枚(フレーム)のマスク画像(IM、n=1、2、…400)のデータが0.5度間隔で収集されるように、C型アーム60の回転速度を15度/秒に、検出器の画像読み出しレートを30フレーム/秒に調整される。なお検出器の読み出しがさらに高速にできるのであれば、C型アーム60の回転速度を30度/秒に、検出器の画像読み出しレートを60フレーム/秒に調整しても良い。400枚(フレーム)のマスク画像のデータは、それぞれの撮影角度のデータを関連付けられて第1画像メモリ24に記憶される。また、マスク画像の撮影終了後に、C形アーム60が基準位置まで最高速度でリターンされる。
【0013】
造影剤注入後、適当な待機時間経過後に、C形アーム60が基準位置から回転され、撮影方向がLAOからRAOに変化されながら、一定時間間隔で撮影が繰り返され、カメラコントローラ21により一定の周期でX線検出器14からコントラスト画像信号が繰り返し読み出される。連続する対のコントラスト画像の撮影角度間隔が、マスク撮影時の撮影角度間隔の2倍又はそれを超えるように、例えば1度になるように、回転コントローラ23は回転駆動部22を制御して、C形アーム60の回転速度を調整する。典型的には、200度の範囲で200枚(フレーム)のコントラスト画像(IC、N=1、2、…200)のデータが1度間隔で収集されるように、例えばC形アーム60の回転速度は30度/秒に、検出器の画像読み出しレートは30フレーム/秒に調整される。なお検出器の読み出しがさらに高速にできるのであれば、C型アーム60の回転速度を60度/秒に、検出器の画像読み出しレートを60フレーム/秒に調整しても良い。200枚(フレーム)のコントラスト画像のデータは、それぞれの撮影角度のデータを関連付けられて第2画像メモリ25に記憶される。マスク画像の撮影時間は例えば14秒であり、それに対しコントラスト画像の撮影時間はその1/2の短縮される。
【0014】
撮影終了後、対応画像選択部19において、200枚のコントラスト画像(IC)の各々に対して撮影角度が同じ200枚のマスク画像(IM)が400枚の中から選択される(S12)。200枚のコントラスト画像(IC)と、選択された200枚のマスク画像(IM)とは同じ撮影角度どうしで引き算される(S13)。S13で発生された200枚の差分画像に基づいて3次元再構成部34で3次元画像が再構成される(S14)。この3次元画像は、造影されていない骨や軟部組織等の主に非血管部位が除去され、造影部位として主に血管形態を表しているので血管3次元画像と称し、後述する骨や軟部組織の形態を主に表す非血管3次元画像と区別する。
【0015】
なお、再構成方法の一例としては、ここではFeldkamp等によって提案されたフィルタードバックプロジェクション法の場合を示すと、200枚のDSA画像に対して例えばShepp & LoganやRamachandranのような適当なコンボリューションフィルターをかける。次に逆投影演算を行うことにより再構成データが得られる。ここで再構成領域は、X線管12の全方向へのX線束に内接する円筒として定義される。この円筒内は、例えば検出器14の一検出素子の幅に投影される再構成領域中心部での長さdで3次元的に離散化され、離散点のデータの再構成像を得る必要がある。但しここでは離散間隔の一例を示したが、これは装置等によって違うこともあるので、基本的には装置によって定義された離散間隔を用いれば良い。
【0016】
再構成された画像は、3次元画像表示部に転送され、例えばボリュームレンダリングなどの方法により3次元的に表示される(S15)。
【0017】
この3次元血管像の生成及び表示処理S12乃至S15の処理と並行して、又は当該処理に前後して、高精細の3次元非血管像の生成及び表示処理S16乃至S18が行われる。3次元非血管像の生成は、収集した全ての400枚のマスク画像(IM)により行われる。まず、400枚のマスク画像(IM)に対して感度補正部26において感度補正が行われる(S16)。感度補正処理は、予め均一ファントムを撮影することにより取得され感度補正部26内の記憶部に保持されている検出器14に関する検出面内における感度の空間分布を表す投影画像をマスク画像(IM)各々からサブトラクションすることにより行われる。なお、感度補正された400枚のマスク画像を、便宜上、P(θ,i,j)と表す。θは撮影時の回転角を表し、(i,j)は2次元位置を表す。この感度補正された400枚のマスク画像P(θ,i,j)に基づいて3次元の非血管画像が再構成される(S17)。この高精細の3次元の非血管画像の再構成にあたっては、ビームハードニング補正及び散乱線補正が行われる。
【0018】
図5に高精細の3次元の非血管画像の再構成処理S17の詳細な処理手順を示している。まず、感度補正された全400枚又はそれらから回転角度に関して一定間隔で離散的に抽出した例えば200枚又は100枚程度のマスク画像P(θ,i,j)から、予備的な3次元の非血管画像が3次元再構成部34において再構成される(S17−1)。この予備的な3次元非血管画像は、その画像自体を読影等のために観察する目的を有するものではなく、後述の体厚同定のための画像であるので、上述のように全400枚の一部分を用いて再構成しても良いし、後述のS17−5の再構成処理よりも再構成マトリクスを少なくて良い。
【0019】
次に体厚同定部28において、予備的な3次元非血管画像に対し閾値処理が施され、骨部と軟組織部、背景領域が分離され、そしてマスク画像ごと、さらに各マスク画像の画素ごとに、X線軌跡上の骨部の厚みB(θ,i,j)と軟部組織の厚みT(θ,i,j)とが計算される(S17−2)。
【0020】
続いて、厚みデータB(θ,i,j)、T(θ,i,j)、マスク画像P(θ,i,j)は、ビームハードニング補正部30に送られる。ビームハードニング補正部30では、先ずは計算結果を元に2次元の補正テーブルを参照し、マスク画像ごと、さらに各マスク画像の画素ごとにその画素値が以下のように補正される(S17−3)。
(θ,i,j)=P(θ,i,j)+C(B,T) (1)
ここでP(θ,i,j)はビームハードニング補正されたマスク画像、C(B,T)は骨部の厚みと軟部組織の厚みとに応じた補正値である。B(θ,i,j)、T(θ,i,j)はそれぞれ骨、軟部組織の厚みで、これらの厚み毎に補正値が決まる。この補正テーブルは、予め実験的に求められ、ビームハードニング補正部30の記憶部に保持される。図6に、軟部組織の厚みTと補正値Cとの対応を、骨部の厚みB(図6ではB0(骨厚ゼロ),B1(骨厚1cm),B2(骨厚2cm)の3種類を例示している)ごとに例示している。このグラフの離散値が補正テーブルとして保持される。補正テーブルでは、骨部の厚みBと軟部組織の厚みTとを入力として、補正値Cを出力とするよう構成される。実際には、計算された骨部の厚みBと軟部組織の厚みTとに近似する複数の補正値候補から補間により補正値が計算される。
【0021】
次に、ビームハードニング補正を受けたマスク画像P(θ,i,j)は、計算された厚みデータB(θ,i,j)、T(θ,i,j)とともに、散乱線補正部29に送られ、散乱線補正を受ける(S17−4)。散乱線の補正では、やはり骨と軟組織との厚みを利用し、2次元の補正テーブルを参照してマスク画像ごと、さらに各マスク画像の画素ごとにその画素値が以下のように補正される。
(θ,i,j)=P(θ,i,j)×S(B,T) (2)
ここでP(θ,i,j)は、ビームハードニング補正とともに散乱線補正を受けたマスク画像、S(B,T)は、散乱線の含有率γによって決まる散乱線補正係数(1−γ)を示し、これは骨部の厚みB、軟部組織の厚みTで決まる(周辺部の骨、軟組織の厚みはほぼ一定と仮定した場合)。この補正テーブルも、実験的に求められ、散乱線補正部29の記憶部に保持される。図7に、軟部組織の厚みTと補正値Sとの対応を、骨部の厚みB(B0(骨厚ゼロ),B1(骨厚1cm),B2(骨厚2cm)の3種類を例示している)ごとに例示している。このグラフの離散値が補正テーブルとして保持される。補正テーブルでは、骨部の厚みBと軟部組織の厚みTとを入力として、散乱線補正係数Sを出力とするよう構成される。実際には、計算された骨部の厚みBと軟部組織の厚みTとに近似する複数の散乱線補正係数候補から補間により散乱線補正係数Sが計算される。なおここでは再構成画像を用いたビームハードニング補正法、散乱線補正法の例を示した。しかし本発明はこれに限定されることなく、例えば一方もしくは両方を投影データのみから補正する方法を用いても良い。このような方法では、一度非血管画像の再構成を行う必要はないため、計算時間が短縮できると言うメリットがある。一方このような方法では投影データに寄与する吸収物質を軟部組織として仮定して補正を行う方法が一般的であるが、頭部などの骨の寄与が大きい部分では補正が適切に行われないと言うデメリットもある。
【0022】
ビームハードニング補正とともに散乱線補正を受けた400枚のマスク画像P(θ,i,j)に基づいて3次元再構成部34において高精細の3次元非血管画像が再構成される(S17−5)。再構成された高精細の3次元非血管画像は、画像合成部33に転送される。なお、転送画像は、画像合成を行う対象画像であることを付帯情報に明示しており、付帯情報にこの情報がある場合は画像合成部33において、S17で再構成した3次元非血管画像は、S14で再構成した3次元血管画像と合成される(S19)。合成された画像は3次元画像処理部35でボリュームレンダリングなどの方法で2次元画像に構成され、表示部37に表示される(S20)。また合成された3次元画像の断面図(アキシャル、コロナル、サジタル画像など)も同時に表示部37に表示される(S20)。非血管3次元画像と血管3次元画像とを合成表示する際、それぞれの異なるボリュームを表示する色を変化させて、非血管系と血管との位置関係を分かり易く表示すると同時に、切り替えスイッチを押すことによりそれぞれを単独でも表示する。切り替えスイッチは合成表示、血管表示、非血管表示の3モードを切り替えることができ、このスイッチは3次元画像処理像用と断面図用のスイッチが独立に存在する。また合成表示時に血管像と非血管像との重み付けを制御するスライダーも3次元画像処理像用と断面図用のスイッチが独立に存在する。その作用は、例えばスライダーを中心では両方とも表示し、左側に動かすと非血管部の重みが1〜0まで変化して、段々非血管部の表示が薄くなる。逆に右側に動かすと血管部の重みが1〜0まで変化して、段々血管部の表示が薄くなる。なおそれぞれのボリュームの表示条件(色、光学的パラメータ、ウインドウレベル/ウインドウ幅など)は個々に変更することができる。さらにそれぞれのボリュームに対し、別々にカッティングなどの処理ができる。
【0023】
このように、コントラスト画像収集期には粗い角度間隔でコントラスト画像を収集し、マスク画像収集期には細かい角度間隔でマスク画像を収集する。これら2種の画像を用い、2種類の再構成を別々に行う。一つはマスク画像だけを用いた非血管画像の再構成、もう一つはマスク画像とコントラスト画像を用いたDSAによる血管画像の再構成である。これにより血管構造観察とともに、高精細の非血管画像を取得して軟部組織の視認性を上げることができる。また従来の軟部組織の視認性を上げる方法では、血管情報と軟部組織、骨組織などを同時に描出する方法であり、心臓のポンプ機能による造影剤の流量の変化や、造影剤の注入タイミングなどに起因するアーチファクトの影響を大きく受けていたが、本発明では血管情報と非血管情報を別々に再構成するため、非血管情報が血管に起因するアーチファクトの影響を受けず、その結果従来法に比較して血管部、非血管部ともに画質が向上する。また検出器の画像読み出しレートがかなり制限される現状においては、従来法では非血管情報を細かく描出するには長時間の撮影が必要となるが、現実的にはそのような長時間造影剤を流し続けることは患者の大きな負担となってしまう。その結果血管情報を必要とする場面では短時間での収集が必要となり、非血管情報は精度良く描出することができなかった。しかし本発明では撮影時、非血管情報撮影時はゆっくり時間をかけて、血管情報撮影時には速く短時間で画像を収集するため、血管構造観察とともに、高精細め非血管画像を同時に取得することができる。最終的にこれらの画像を合成することにより、双方の情報を融合してみることができる。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係るX線アンギオ撮影装置の構成図。
【図2】図1のX線撮影機構の外観図。
【図3】本実施形態の処理手順を示す図。
【図4】図3の撮影工程S11の補足説明図。
【図5】図3の3次元非血管像の再構成工程S17の詳細な処理手順を示す図。
【図6】図1のビームハードニング補正部の保持する補正値例を示す図。
【図7】図1の散乱線補正部の保持する補正値例を示す図。
【符号の説明】
【0026】
10…X線撮影機構、12…X線管、14…X線検出器、20…システムコントローラ、21…カメラコントーラ、22…回転駆動部、23…回転コントローラ、24…第1画像メモリ、25…第2画像メモリ、26…感度補正部、27…サブトラクション部、28…体厚同定部、29…散乱線補正部、30…ビームハードニング補正部、31…フィルタリング部、32…アフィン変換部、33…画像合成部、34…3次元再構成部、35…3次元画像処理部、36…D/A変換部、37…表示部、60…C形アーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略C形アームと、
前記略C形アームを回転自在に支持する支持機構と、
前記略C形アームの回転を駆動する回転駆動部と、
前記略C形アームに搭載されるX線管と、
前記X線管に対向する向きで前記略C形アームに搭載されるX線検出器と、
造影後の複数のコントラスト画像の角度間隔が、造影前の複数のマスク画像の角度間隔の2倍又はそれを越えるように、前記回転駆動部を制御する回転制御部と、
前記コントラスト画像と前記マスク画像との差分画像に基づいて第1の3次元画像を再構成するとともに、前記マスク画像に対して感度補正をして感度補正されたマスク画像に基づいて3次元の非血管画像を表す第2の3次元画像を再構成する再構成部と、
前記第1、第2の3次元画像の合成画像を表示する表示部とを具備し、
前記表示部は、合成画像表示状態、第1の3次元画像表示状態、第2の3次元画像表示状態を切り替えて表示可能であることを特徴とするX線アンギオ撮影装置。
【請求項2】
略C形アームと、
前記略C形アームを回転自在に支持する支持機構と、
前記略C形アームの回転を駆動する回転駆動部と、
前記略C形アームに搭載されるX線管と、
前記X線管に対向する向きで前記略C形アームに搭載されるX線検出器と、
造影後の複数のコントラスト画像の角度間隔が、造影前の複数のマスク画像の角度間隔の2倍又はそれを越えるように、前記X線検出器の収集レートを制御する収集制御部と、
前記コントラスト画像と前記マスク画像との差分画像に基づいて第1の3次元画像を再構成とともに、前記マスク画像に対して感度補正をして感度補正されたマスク画像に基づいて3次元の非血管画像を表す第2の3次元画像を再構成する再構成部と、
前記第1、第2の3次元画像の合成画像を表示する表示部とを具備し、
前記表示部は、合成画像表示状態、第1の3次元画像表示状態、第2の3次元画像表示状態を切り替えて表示可能であることを特徴とするX線アンギオ撮影装置。
【請求項3】
略C形アームと、
前記略C形アームを回転自在に支持する支持機構と、
前記略C形アームの回転を駆動する回転駆動部と、
前記略C形アームに搭載されるX線管と、
前記X線管に対向する向きで前記略C形アームに搭載されるX線検出器と、
前記X線検出器の収集レートが一定のもとで造影後のコントラスト画像撮影時の回転速度を造影前のマスク画像撮影時の回転速度の2倍又はそれを越えるように前記回転駆動部を制御する回転制御部と、
前記コントラスト画像と前記マスク画像との差分画像に基づいて第1の3次元画像を再構成とともに、前記マスク画像に対して感度補正をして感度補正されたマスク画像に基づいて3次元の非血管画像を表す第2の3次元画像を再構成する再構成部と、
前記第1、第2の3次元画像の合成画像を表示する表示部とを具備し、
前記表示部は、合成画像表示状態、第1の3次元画像表示状態、第2の3次元画像表示状態を切り替えて表示可能であることを特徴とするX線アンギオ撮影装置。
【請求項4】
略C形アームと、
前記略C形アームを回転自在に支持する支持機構と、
前記略C形アームの回転を駆動する回転駆動部と、
前記略C形アームに搭載されるX線管と、
前記X線管に対向する向きで前記略C形アームに搭載されるX線検出器と、
造影前のマスク画像の撮影枚数が造影後のコントラスト画像の撮影枚数の2倍又はそれを越えるように、前記回転駆動部を制御する回転制御部と、
前記コントラスト画像と前記マスク画像との差分画像に基づいて第1の3次元画像を再構成とともに、前記マスク画像に対して感度補正をして感度補正されたマスク画像に基づいて3次元の非血管画像を表す第2の3次元画像を再構成する再構成部と、
前記第1、第2の3次元画像の合成画像を表示する表示部とを具備し、
前記表示部は、合成画像表示状態、第1の3次元画像表示状態、第2の3次元画像表示状態を切り替えて表示可能であることを特徴とするX線アンギオ撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196490(P2012−196490A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132347(P2012−132347)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【分割の表示】特願2005−326336(P2005−326336)の分割
【原出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】