説明

X線診断装置及び画像再構成処理装置

【課題】 X線診断装置の3次元イメージングにおいて、拍動による位置ズレアーチファクトの低減を、撮影時間の延長及び造影剤量の増加を回避して、実現すること。
【解決手段】 X線診断装置は、略C形アーム102と、略C形アームの回転支持機構と、略C形アームに搭載されるX線管2と、略C形アームに搭載されるX線検出器5と、略C形アームの回転期間中に収集された複数の2次元画像を記憶する記憶部12と、収集した複数の2次元画像に基づいて複数の心位相にそれぞれ対応する複数の第1の3次元画像を再構成する第1再構成処理部19と、複数の第1の3次元画像に基づいて複数の心位相にそれぞれ対応する複数の位置ズレ量を計算する位置ズレ量計算部21と、計算された位置ズレ量を用いて複数の2次元画像に基づいて位置ズレが低減された単一の第2の3次元画像を再構成する第2再構成処理部20とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略C形アームを備えた回転撮影の可能なX線診断装置及び画像再構成処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年心臓病が年々増え、日本人の死亡率で第二位になっている。その中でも冠状動脈に狭窄が発生するケースが多い。狭窄治療には外科的手術と内科的治療とがある。内科的治療の事故は、カテーテル、ガイドワイヤーなどのデバイスを狭窄部に通すステージで起こり易い。狭窄部の詳細な形状を術中に把握することが要求される。しかし治療中はX線造影像しか見ることができず、その詳細な構造を知る手段はない。
【0003】
近年、回転撮影により収集された複数の2次元画像に基づいて3次元画像を再構成する技術が開発されている。
【0004】
冠状動脈は心臓と同期して非常に高速に運動する。従って冠状動脈の動きを補正することは難しい。心臓の動きには再現性が低い。拡張期と次の拡張期では心臓の位置が若干変化する。X線コンピュータ断層撮影装置は、例えば0.4秒という高速回転によりデータ収集を行っているので、心臓の位置の変化によるモーションアーチファクトは少ない。しかし、X線診断装置では高速回転はできないのでモーションアーチファクトは比較的多い。
【0005】
このような現状に対し、冠状動脈及び冠状動脈におけるステントの3次元イメージングが注目されている。インターベンション中にそれを得るには2次元で動き補正を行い再構成する方法と、心電同期のもとで回転撮影を複数回行い、それらのデータを用いて再構成する方法がある。
【0006】
2次元での動き補正は血管の重なり、ショートニングなどによって困難な場合がある。一方、心電同期撮影は複数回の回転撮影を実施するため、長時間の撮影が必要となり造影剤量も増える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−288164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、X線診断装置の3次元イメージングにおいて、拍動による位置ズレアーチファクトの低減を、撮影時間の延長及び造影剤量の増加を回避して、実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面は、略C形アームと、略C形アームの回転支持機構と、略C形アームに搭載されるX線管と、略C形アームに搭載されるX線検出器と、略C形アームの回転期間中に収集された複数の2次元画像を記憶する記憶部と、収集した複数の2次元画像に基づいて複数の心位相にそれぞれ対応する複数の第1の3次元画像を再構成する第1再構成処理部と、複数の第1の3次元画像に基づいて複数の心位相にそれぞれ対応する複数の位置ズレ量を計算する位置ズレ量計算部と、計算された位置ズレ量を用いて複数の2次元画像に基づいて位置ズレが低減された単一の第2の3次元画像を再構成する第2再構成処理部とを具備するX線診断装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、X線診断装置の3次元イメージングにおいて、拍動による位置ズレアーチファクトの低減を、撮影時間の延長及び造影剤量の増加を回避して、実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るX線診断装置の構成を示す図である。
【図2】図2は図1のガントリの構造を示す図である。
【図3】図3は本実施形態の動作を示す流れ図である。
【図4】図4は図3の逐次近似的再構成処理S13の補足図である。
【図5】図5は図3の解析的再構成処理S16の補足図である。
【図6】図6は図3の注目点計算処理S14における特定心位相の注目点の計算処理の補足図である。
【図7】図7は図3の注目点計算処理S14における他の心位相の注目点の計算処理の補足図である。
【図8】図8は図3の解析的再構成処理S16における逆投影での軌跡補正に関する補足図である。
【図9】図9は本実施形態の変形例による動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の処理手順の概要としては次の通りである。
1)被検体の心電図測定を伴って、Cアームを回転しながら撮影を繰り返す。
2)逐次近似的再構成法により、複数の心位相にそれぞれ対応する比較的ラフな複数の3次元画像(3Dボリューム)を再構成する。
3)比較的ラフな3次元画像上で解剖学的に同一な点(注目点)の実空間上での位置を計算する(位置ズレ計算)。
4−1)位置ズレに従った逆投影軌跡の補正を伴って、解析的再構成処理により、複数の心位相にそれぞれ対応する比較的ファインな複数の3次元画像を再構成する。
【0013】
上記4−1)処理は次の4−2)処理及び4−3)処理にリプレース可能である。
【0014】
4−2)解析的再構成処理により、複数の心位相にそれぞれ対応する比較的ファインな複数の3次元画像を再構成する。
【0015】
4−3)位置ズレに従ってシフトした複数の3次元画像を合成する。
【0016】
本実施形態の変形例による処理手順の概要としては次の通りである。
1)被検体の心電図測定を伴って、Cアームを回転しながら撮影を繰り返す。
2)逐次近似的再構成法又はフィルタードバックプロジェクション法により、複数の心位相にそれぞれ対応する複数の3次元画像(3Dボリューム)を再構成する。
3)3次元画像上で解剖学的に同一な点(注目点)の実空間上での位置を計算する(位置ズレ計算)。
4)フィルタードバックプロジェクション法により、複数の心位相にそれぞれ対応する複数の3次元画像を再構成する。
【0017】
5)位置ズレに従って複数の3次元画像をシフトする。
【0018】
6)バイアスシフトパターンを変えながら、複数の3次元画像を合成して、複数の合成画像を発生する。バイアスシフトパターンとは、複数の心拍位相に対する位置ズレの推定値のセットをいう。位置ズレの推定値は、XYZの各軸に関して、−3ピクセルから+3ピクセルの範囲で1ピクセルずつ変化される。次の7)処理では実質的に、位置ズレが最も少ないバイアスシフトパターンに対応する合成画像が選択される。
【0019】
7)複数の合成画像から、位置ズレの最も少ない合成画像を最終的な画像として選択する(ファインな位置補正)。各心拍位相の再構成画像は、投影データ数が少なく、しかも360°分の投影データが揃っていない、つまり不完全投影データから再構成される。投影データの不完全さは、アーチファクトを発生させる。アーチファクトは、プラス側とマイナス側とに発生する。プラス側アーチファクトとマイナス側アーチファクトとは、再構成中心からほぼ放射状に交互に発生する。プラス側アーチファクトとマイナス側アーチファクトとが表れる位置は、心臓の拍動の影響により少しずつ移動する。従って位置ズレの程度は、合成画像におけるマイナスの再構成値の総和に表れる。マイナスの再構成値の総和が最も少ない合成画像が、位置ズレが最も少ない最終的な3次元画像として選択される。なお、再構成値は、CT値、吸収係数値、一定の係数を乗算した吸収係数値のいずれでもよい。
【0020】
図1、図2に示すように、本実施形態に係るX線診断装置のガントリ1は、図示しない高電圧発生器から高電圧の印加を受けてコーン形のX線を発生するX線管2を、被検体を透過したX線を検出する2次元の典型的にはFPD(Flat Panel Ditector)としてのX線検出器5とともに保持するC形アーム102を有する。図示しないデータ収集部11は、X線検出器5を介して2次元の投影画像(以下単に2次元画像という)のデータを収集する。2次元画像のデータは画像メモリ12に記憶される。
【0021】
C形アーム102は、天井吊りアーム101とともに図示しない支持機構を構成する。支持機構には電動機を装備しており、制御部の制御に従ってC形アーム102を定速で回転することができる。図3に示す工程S11の回転撮影に際しては、C形アーム102は定速で回転され、それとともにX線を連続的に発生させ、そしてデータ収集部11を介して一定周期で繰り返し2次元画像データを収集する。例えば、患者の周りを200°の角度範囲を回転しながら、例えば1°間隔でデータ収集を繰り返すことにより、200°分のビューピッチが1°の200フレームの2次元画像を収集する。画像メモリ12に、データ収集部11で収集された複数の2次元画像のデータが記憶される。複数の2次元画像各々には、心電計(ECG)3からの心電波形に基づく各撮影時の心位相のデータが関連付けられる。
【0022】
フィルタリング部13及びアフィン変換部14は、高周波強調フィルタリング、画像拡大・移動などを行うアフィン変換等の前処理を、2次元画像に対してかける。ルックアップテーブル(LUT)15は、表示対象画像の階調を変換する。3次元画像処理部16は、表示対象の3次元画像データを、投影処理を含むボリュームレンダリング処理により2次元表示画像に変換する機能を有する。
【0023】
2次元画像処理部22は、画像メモリ12に記憶された2次元画像について、造影前後の対応ビューアングルの2次元画像を差分して造影血管を強調する差分処理、同様に造影画像だけを用いて造影血管を強調する背景抑制処理、濃度ムラ補正処理を施す。図3に示す工程S12の背景抑制処理としては、例えば各2次元画像に対し、ローパスフィルタをかけた画像を作成し、フィルタ画像から、もとの対応するフレーム画像を差分することにより得られる。なお差分対象は、各フレームを中心に約心電周期1周期分を加算平均したデータに対して実施しても良い。また既存の背景差分処理を適用しても良い。
【0024】
逐次近似的3次元再構成処理部19は、図3に示す工程S13において、背景抑制処理等を受けたビューアングル(撮影角度)の異なる複数の2次元画像のデータに基づいて、ART法やマップEM法などの逐次近似的3次元再構成処理により、データ収集範囲全体を対象として、図4に示すように複数の心位相にそれぞれ対応する複数の比較的ラフな3次元画像のデータ(ボリュームデータともいう)を再構成する。データ収集範囲は、X線管2からの全方向へのX線束に内接する円筒に既定される。
【0025】
本実施形態では、逐次近似的3次元再構成処理部19は、複数の心位相にそれぞれ対応する複数の3次元画像のデータを再構成する。
【0026】
具体的には、背景抑制処理されたデータは、以下の数式(1)を逐次近似的に最適化される。
E=|Hft-gt|2+a|ft|2 … (1)
ここでHは投影マトリックスである。ftはある心位相tでの再構成画像の各ボクセルを列ベクトルに整列させたものである。gtはある心位相tでの背景差分処理された投影データを各ピクセル、フレームの順に列ベクトルに整列させたものである。ここでEを最小化するftを求めることにより再構成が完了する。この処理はN個の心位相tに対して繰り返される。それによりN個の3次元画像のデータが作成される。なおここでは再構成法としてノイズ抑制効果のある方法(式1)を説明しているが、当該発明はそれに限定されず、他の逐次近似的再構成法(MAP-EM、TVなど)を用いても良い。
【0027】
位置ズレ検出部21は、図3の工程S14において、逐次近似的3次元再構成処理部19により再構成された複数の心位相にそれぞれ対応する複数の比較的ラフな3次元画像各々から、解剖学的に略同一の部位(注目点)の実空間上の位置(3次元座標)を特定する。特定された複数の注目点の一を基準として、基準位置に対するN−1個の注目点に関する補正ベクトルが計算される。
【0028】
実際には、図6に示すように、再構成されたN個の3次元画像から、予め決められた1つの心位相の3次元画像(基準画像)が選択される。基準画像は3次元画像処理部16でボリュームレンダリング処理を受ける。ボリュームレンダリング画像が表示部18に表示される。オペレータは図示しないマウスのような入力装置で注目領域の中心(注目点)を指定する。典型的には、注目領域は造影血管であり、指定する注目点は狭窄部や血管分岐部などの特徴的な部位である。指定された注目点の座標は注目領域同定部23に送られる。注目点に対応するボリュームレンダリング処理上の投影軌跡が特定される。投影軌跡と、造影血管部との交点が同定される。交点を中心とした局所範囲内の血管分岐が初期的注目点として特定される。
【0029】
再構成されたN個の3次元画像のデータと初期的注目点の座標データは位置ズレ検出部21に送られる。位置ズレ検出部21は、図7に示すように、初期的注目点に対応する心位相に隣接する他の心位相の3次元画像上で、初期的注目点を中心とした所定範囲を探索することにより同じ血管部の注目領域を抽出し、その注目領域の中心を、当該心位相の注目点として特定する。この処理が心位相全てで繰り返される。隣の心位相を対象として同様に注目領域を特定し、その中心を当該隣の心位相の新たな注目点として特定し、順次注目点を全ての心位相について特定していく。位置ズレ検出部21では、全ての心位相の注目点の座標を同じ座標に整合させるための補正ベクトルを計算する。典型的には、拡張末期の心位相の注目点の座標に、他の心位相の注目点の座標を揃えるように補正ベクトルを計算する。
【0030】
解析的3次元再構成処理部20は、図3の工程S16において、2次元画像処理部22で濃度ムラ補正用の画像とサブトラクション(工程S15)をうけたビューアングルの異なる複数の2次元画像のデータに基づいて、フィルタドバックプロジェクション法、バックプロジェクションフィルタ法、重畳積分法、フーリエ変換法などのなどの解析的3次元再構成処理により、比較的ファインな3次元画像データを再構成する(図5参照)。ここでは、Feldkamp等によって提案された良好な画質を得ることができるフィルタドバックプロジェクション法が適用されるものとして説明する。
【0031】
Feldkamp法ではまず200枚のサブトラクション画像は、例えばShepp & LoganやRamachandranのような適当なコンボリューションフィルタリングを施される。次に解析的3次元再構成処理部20では、逆投影軌跡を各心位相の補正ベクトルに従ってシフトする。シフトされた逆投影軌跡に従って、逆投影処理が実施される。同様に心拍位相ごとに逆投影軌跡がそれぞれの心位相の補正ベクトルに従ってシフトされる。それらシフトされた逆投影軌跡に従って逆投影処理が実施される。それにより位置ズレが軽減された3次元画像が再構成される。
【0032】
一般的に再構成領域は、多方向のX線束に対する内接円筒に既定される。ここでは図5に示すように、術者によって指定された狭窄部の位置を中心とする一般的再構成領域より非常に狭い領域を再構成領域とする。この再構成領域は3cm×3cm×3cm程度の立方体、もしくはそれより小さい領域とするのが適当である。しかし狭窄部指定時におおよその範囲をその上で指定しても構わない。逆投影演算は一般的にはX線光学系によって定義される投影系に従って演算する。しかしここでは図8に示したように、動きを補正するような形で逆投影演算を行うことで動きを補正した再構成を行う。図8はマーカーの位置を再構成する例を示しているが、例えば術者に指定された位置が拡張期だったとし、現在位置が図8のように動いていると仮定する。本来なら現在位置を通るX線軌跡に従って逆投影されるべきであるが、しかし本来の位置は拡張期の位置なので、同じ注目点を通り、且つその軌跡は現在位置を通る軌跡と並行になるように逆投影演算する。注目点以外の位置ではほぼ近似仮定して、同様に補正する。
【0033】
なお、逆投影軌跡を補正ベクトルに従ってシフトした。しかし、心拍位相毎に再構成した複数の3次元画像を補正ベクトルに従って個々にシフトし、合成するものであってもよい。
【0034】
解析的手法で再構成された3次元画像は、3次元画像処理部16で例えばボリュームレンダリングなどの方法により表示用の画像に変換され表示部18に表示される。
【0035】
上記実施形態では、注目点として単一点を指定しているが、複数の点を指定しても構わない。指定された点から一定範囲内が再構成・表示される。
【0036】
また、上記実施形態では、注目点を指定しているが、例えば分岐情報などは保存しつつ、分解能を落とす処理を実施した上で、グローバルな位置ズレを同定し、それを順次分解能を向上させながら、細かい位置ズレ情報を同定しても良い。このような処理を行うことにより、対応点を指定する必要が無くなり、さらに全体を一度に再構成できると言うメリットがある。
【0037】
上記実施形態では、注目点を指定しているが、例えばGPS機能を持ったデバイスが注目領域の付近にあった場合、その情報を元に位置補正を行っても構わない。この場合デバイスの3次元情報が使えるので、わざわざトラッキングする必要はなくなる。
【0038】
図9には、本実施形態の変形例による処理手順を示している。図9と図3とで同じ符号は同じ工程であることを示している。まず、被検体の心電図測定を伴って、Cアームが回転期間中に撮影が繰り返される(S11)。背景抑制処理(S12)により処理された複数の投影画像から、逐次近似的再構成法又はフィルタードバックプロジェクション法により、複数の心位相にそれぞれ対応する複数の3次元画像(3Dボリューム)が再構成され(S13)、位相毎に位置ズレが同定される(S14)。
【0039】
3次元再構成処理部20により、濃度ムラ補正処理(S15)により処理された複数の投影画像から、フィルタードバックプロジェクション法により、複数の心位相にそれぞれ対応する複数の3次元画像が再構成される(S25)。3次元再構成処理部20又は他の位置補正処理部により、S14で同定した位置ズレに従って複数の3次元画像の位置を個々に補正する(S26)。
【0040】
3次元再構成処理部20又は他の位置補正処理部により、補正された複数の3次元画像の合成処理が繰り返され、複数の合成画像が発生される(S27)。複数の合成画像は、それぞれ対応するバイアスシフトパターンが相違する。バイアスシフトパターンとは、複数の心拍位相に対する位置ズレの推定値のセットをいう。位置ズレの推定値は、XYZの各軸に関して、例えば−3ピクセルから+3ピクセルの範囲で1ピクセルずつ変化される。非常に膨大な数のバイアスシフトパターンにより、位置ズレの推定値が少しずつ異なった非常に膨大な数の合成画像が発生される。
【0041】
3次元再構成処理部20又は他の位置補正処理部により、位置ズレの推定値が少しずつ異なった非常に膨大な数の合成画像の中から、位置ズレが最も少ない単一の合成画像が選択される(S28)。これにより非常にファインな位置補正がなされる。各心拍位相の再構成画像は、投影データ数が少なく、しかも360°分の投影データが揃っていない、つまり不完全投影データから再構成される。投影データの不完全さは、アーチファクトを発生させる。アーチファクトは、プラス側とマイナス側とに発生する。プラス側アーチファクトとマイナス側アーチファクトとは、再構成中心からほぼ放射状に交互に発生する。プラス側アーチファクトとマイナス側アーチファクトとが表れる位置は、心臓の拍動の影響により少しずつ移動する。従って位置ズレの程度は、合成画像におけるマイナスの再構成値の総和に表れる。マイナスの再構成値の総和が最も低い、又はマイナスの再構成値の総和の絶対値が最も高い合成画像が、位置ズレが最も少ない最終的な3次元画像として選択される。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、略C形アームを備えた回転撮影の可能なX線診断装置及び画像再構成処理装置の分野に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0044】
1…ガントリ、2…X線管、3…心電計(ECG)、5…X線検出器、102…C形アーム、11…データ収集部、12…画像メモリ、13…フィルタリング部、14…アフィン変換部、15…ルックアップテーブル(LUT)、16…3次元画像処理部、19…逐次近似的3次元再構成処理部、20…解析的3次元再構成処理部、21…位置ズレ検出部、22…2次元画像処理部、23…注目領域同定部、101…天井吊りアーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略C形アームと、
前記略C形アームを回転自在に支持する支持機構と、
前記略C形アームの回転を駆動する回転駆動部と、
前記略C形アームに搭載されるX線管と、
前記略C形アームに搭載され、前記X線管に対向するX線検出器と、
前記略C形アームの回転期間中に前記X線管からX線を連続的又は断続的に発生させ、前記X線検出器でX線検出を繰り返すように前記X線管及び前記X線検出器を制御する制御部と
前記制御部による制御により発生された複数の2次元画像を記憶する記憶部と、
前記収集した複数の2次元画像に基づいて、複数の心位相にそれぞれ対応する複数の第1の3次元画像を再構成する第1再構成処理部と、
前記複数の第1の3次元画像に基づいて、前記複数の心位相にそれぞれ対応する複数の位置ズレ量を計算する位置ズレ量計算部と、
前記計算された位置ズレ量を用いて、前記収集した複数の2次元画像に基づいて位置ズレが低減された単一の第2の3次元画像を再構成する第2再構成処理部とを具備することを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記第2再構成処理部は、前記計算された位置ズレ量により投影軌跡の位置を補正し、前記補正された投影軌跡を用いて前記複数の2次元画像に基づいて前記第2の3次元画像を解析的再構成処理により再構成することを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記第2再構成処理部は、前記収集した複数の2次元画像に基づいて、複数の心位相にそれぞれ対応する複数の第3の3次元画像を再構成し、前記複数の第3の3次元画像を前記計算された位置ズレ量により補正し、前記補正された複数の第3の3次元画像を合成して前記第2の3次元画像を再構成することを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記第2再構成処理部は、前記収集した複数の2次元画像に基づいて、複数の心位相にそれぞれ対応する複数の第3の3次元画像を再構成し、前記複数の第3の3次元画像を前記計算された位置ズレ量により補正し、前記補正された複数の第3の3次元画像を複数のバイアスシフトパターンにより合成して複数の第4の3次元画像を再構成し、前記複数の第4の3次元画像から前記第2の3次元画像を選択することを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記バイアスシフトパターンは、複数の心位相に対する位置ズレの推定値のセットであることを特徴とする請求項4記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記第2再構成処理部は、前記複数の第4の3次元画像からマイナスの再構成値の総和が最も少ない第4の3次元画像を、前記第2の3次元画像として選択することを特徴とする請求項4記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記位置ズレ量計算部は、
前記複数の第1の3次元画像の中の任意の第1の3次元画像を対象として2次元のボリュームレンダリング画像を生成するボリュームレンダリング画像生成部と、
前記ボリュームレンダリング画像上で注目点を操作者が指定操作するための操作部と、
前記注目点の実空間上の3次元座標を計算する座標計算部と、
前記計算された3次元座標に基づいて前記第1の3次元画像各々について同一部位の注目点を特定する注目点特定部と、
前記複数の第1の3次元画像上での複数の注目点の実空間上の3次元座標を位置ズレ情報として記憶する記憶部とを有することを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記第2再構成処理部は、前記第1再構成処理部で再構成する領域より狭い領域を対象として、前記第2の3次元画像を再構成することを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記第1再構成処理部はマップEM法又はART法により前記第1の3次元画像を再構成し、前記第2再構成処理部はフィルタドバックプロジェクション法により前記第2の3次元画像を再構成することを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記第1、第2再構成処理部はフィルタドバックプロジェクション法により前記第1、第2の3次元画像を再構成することを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記収集した複数の2次元画像の背景を抑圧する2次元画像処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項12】
回転撮影により収集された複数の2次元画像を記憶する記憶部と、
前記収集した複数の2次元画像に基づいて、複数の心位相にそれぞれ対応する複数の第1の3次元画像を再構成する第1再構成処理部と、
前記複数の第1の3次元画像に基づいて、前記複数の心位相にそれぞれ対応する複数の位置ズレ量を計算する位置ズレ量計算部と、
前記計算された位置ズレ量を用いて、前記収集した複数の2次元画像に基づいて位置ズレが低減された単一の第2の3次元画像を再構成する第2再構成処理部とを具備することを特徴とする画像再構成処理装置。
【請求項13】
前記第2再構成処理部は、前記計算された位置ズレ量により投影軌跡の位置を補正し、前記補正された投影軌跡を用いて前記複数の2次元画像に基づいて前記第2の3次元画像を解析的再構成処理により再構成することを特徴とする請求項12記載の画像再構成処理装置。
【請求項14】
前記第2再構成処理部は、前記収集した複数の2次元画像に基づいて、複数の心位相にそれぞれ対応する複数の第3の3次元画像を再構成し、前記複数の第3の3次元画像を前記計算された位置ズレ量により補正し、前記補正された複数の第3の3次元画像を合成して前記第2の3次元画像を再構成することを特徴とする請求項12記載の画像再構成処理装置。
【請求項15】
前記第2再構成処理部は、前記収集した複数の2次元画像に基づいて、複数の心位相にそれぞれ対応する複数の第3の3次元画像を再構成し、前記複数の第3の3次元画像を前記計算された位置ズレ量により補正し、前記補正された複数の第3の3次元画像を複数のバイアスシフトパターンにより合成して複数の第4の3次元画像を再構成し、前記複数の第4の3次元画像から前記第2の3次元画像を選択することを特徴とする請求項12記載の画像再構成処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−259778(P2010−259778A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60440(P2010−60440)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】