説明

low−k誘電体含有半導体デバイスのためのアンダーフィルシーラントとして有用な硬化性樹脂組成物

本発明は、半導体チップが半田電気的相互接続を介して回路上に直接搭載される、フリップチップ(「FC」)アンダーフィルシーラントに有用な硬化性樹脂組成物に関する。同様に、本組成物は、回路基板半導体デバイス、例えばチップサイズまたはチップスケールパッケージ(「CSP」)、ボールグリッドアレイ(「BGA」)、ランドグリッドアレイ(「LGA」)など(その各々は半導体チップ、例えば大規模集積回路(「LSI」)を有する)をキャリア基板上に搭載するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップが半田電気的相互接続を介して回路上に直接搭載される、フリップチップ(「FC」)アンダーフィルシーラントに有用な硬化性樹脂組成物に関する。同様に、本組成物は、回路基板半導体デバイス、例えばチップサイズまたはチップスケールパッケージ(「CSP」)、ボールグリッドアレイ(「BGA」)、ランドグリッドアレイ(「LGA」)など(その各々は半導体チップ、例えば大規模集積回路(「LSI」)を有する)をキャリア基板上に搭載するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
低誘電率(「low−k」)誘電性材料(または、層間誘電体層「ILD」)は、高度集積回路の製造の将来の発展において重要な役割を果たし続けており、それによってサブ0.18ミクロン製造プロセスにおける銅の相互接続の利用を可能にしている。low−k ILDは、集積回路の製造において、その周囲から銅の相互接続を絶縁し、確実に相互接続間のクロストークをより少なくするために使用されている。クロストークは、回路において誤作動を引き起こすため、集積回路製造において一般的な問題である。クロストークは、集積回路のサイズが縮小するのに伴って、より顕著になってきている。集積回路製造において使用される従来の層間材料の誘電率は、通常、>3.0の範囲にある。しかしながら、1つのチップに対して入力/出力の密度が増加し続けるのに伴って、クロストークの懸念が増大する。
【0003】
したがって、約2.5未満の誘電率を有するlow−k ILDは、更により高密度の集積回路の効率を最大にする集積回路設計の重要な側面の一つである。そのような材料の1つは、Black Diamondとして知られており、Applied Materials社から商業的に入手可能である。
【0004】
当該産業分野では、low−k ILDを使用した0.09ミクロン、さらには0.065ミクロンのチップ製造プロセスの動向を示す発表が報告されている。しかしながら、チップ製造業者が許容できるパッケージレベルの信頼性の達成に取り組むため、この点に関する発展は現在まで妨げられてきた。
【0005】
当該産業分野では、集積回路のための高性能の材料(セラミックから複合材料へと変化している)を求め続けているため、より計算能力が高く、ピッチがより微細で、半田ボールの配置密度がより高く、半田ボール自体の直径がより小さく、また、鉛含有半田から鉛フリー半田へと変換することによってリフロー温度がより高く、歪みや衝撃による応力がより大きいが、本質的により脆弱である(絶えず厚さが低減されていることによる)半導体チップが、従来よりも、現在設計される半導体パッケージにおいて見られる。
【0006】
従来の市販のアンダーフィルシーラント材料、例えば低熱膨張係数(「CTE」)で高弾性率であるエポキシベースのアンダーフィルシーラント材料は、脆弱なlow−k ILDに対する損傷を防ぐのに必要な、パッケージの応力に対する保護を提供することが出来ないようである。low−k ILDは、本質的に脆弱であり、一般的に、従来のILD材料、例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、フッ化シリコンガラスなどよりも弱く、脆く、結果として、熱サイクルの間に誘発された応力によって割れや亀裂が発生してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、高度な用途に好適な電子パッケージング材料、例えば、low−k ILDと共に使用するのに適合しており、ILDの亀裂・破壊につながる内部パッケージ応力を低減させる、FCアンダーフィルシーラント材料に有用な熱硬化性組成物を提供することが望ましい。さらに、そのような熱硬化性樹脂組成物を用いて組み立てられた電子パッケージを提供すること、そのような物理的特性が向上した電子パッケージを製造する方法を提供すること、および、弾性率およびCTEが低減された物理的特性プロファイルを有し、それは、そのような組成物を、半導体パッケージングにおける高応力のFCアンダーフィルシーラント用途に対して特に魅力的にする熱硬化性樹脂組成物を提供する方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、本発明は、例えば、以下に記載されるように、電子パッケージにおける内部パッケージ応力を低減させる。
【0009】
半導体パッケージにおける応力の低減は、低弾性率と低CTEとを組み合わせることによって達成される。これらの物理的特性は、FCアンダーフィルシーラント材料において現在まで得られていなかった。今までは。
【0010】
本発明は、室温での弾性率が6,000〜10,000MPaの範囲内、例えば約7000MPaおよび約9000MPaであり、CTE α1が7〜20ppmの範囲内、例えば約10ppmおよび約20ppmであることによって、low−k ILDを用いて組み立てられた半導体パッケージ内に発生する内部応力を顕著に低減することができる熱硬化性樹脂組成物を提供する。硬化可能であり、例えば、温度が2〜5分間、240〜260℃の範囲に達する鉛フリー半田リフロープロファイルに耐えることができるFCアンダーフィルシーラント材料における、この物理的特性の組み合わせは、半導体パッケージング産業が現在直面している重大な課題の1つを克服することが期待できる。
【0011】
これらの性能特性は、例えば、
銅の電気的相互接続および少なくとも1層のlow−k ILDを有する半導体チップが使用され、
大きなサイズ、典型的には側面が2.5cmよりも大きいサイズの半導体チップ、
現在の基準厚さの約350ミクロンのものと比較して比較的薄く、例えば100ミクロン未満である半導体チップが使用され、
現在の基準ボンドライン厚さ(「BLT」)の75ミクロンのものと比較して比較的薄く、例えば20ミクロン未満であるアンダーフィル層が使用される
半導体デバイスパッケージング技術において、特に重要である。
【0012】
銅の相互接続および少なくとも1層のlow−k ILDを有する半導体チップが使用される場合、この性能特性によって、組み立てられた半導体デバイスにおける信頼性が向上する(すなわち、ILDにおける亀裂が防止される)。より具体的には、フリップチップパッケージにおいて、銅の相互接続および少なくとも1層のlow−k ILDから構成されている半導体チップにアンダーフィルシーラントが接触するときに、この性能特性によって信頼性が向上する。このように、半導体デバイスに対する応力は、大部分がアンダーフィルシーラントによって吸収され、したがってlow−k ILDが保護される。
【0013】
加えて、半導体パッケージでlow−k ILDが使用されていても、使用されていなくても、本発明はまた、非常に薄い半導体チップ(例えば、100ミクロン未満)、および、半導体チップと回路基板との間に20ミクロン未満のアンダーフィルボンドラインを有する半導体パッケージに対して、注目される利益および利点を付与する。
【0014】
したがって、本発明は、1つの態様において、構成成分が、エポキシ樹脂成分、シラン変性エポキシ、および硬化剤(シアネートエステルまたは芳香族アミンであってよい)を、任意選択の触媒と共に含む熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、少なくとも1層のlow−k ILDを含むアンダーフィル半導体デバイスの信頼性を改善する方法を提供する。この方法のステップは、
銅の電気的相互接続および少なくとも1層のlow−k ILDを含む半導体チップと、
この半導体チップが電気的相互接続される表面に、電気接点パッドを有するキャリア基板
を含む半導体デバイスを準備するステップ;
半導体チップの電気的相互接続された表面とキャリア基板との間に、熱硬化性アンダーフィル組成物を供給して、半導体デバイスアセンブリを形成するステップ;および
半導体デバイスアセンブリを、熱硬化性アンダーフィル組成物を硬化するのに十分な高温条件に曝露するステップ
を含む。上記の熱硬化性アンダーフィル組成物は、エポキシ樹脂成分、シラン変性エポキシ、および硬化剤(シアネートエステルまたは芳香族アミンであってよい)を、任意選択の触媒と共に含む。
【0016】
1つの実施形態では、半導体チップおよびキャリア基板が結合された後、熱硬化性アンダーフィル組成物がディスペンシングによって供給され、その間の間隙に充填されて、半導体デバイスが形成される。
【0017】
別の実施形態では、熱硬化性アンダーフィル組成物は、半導体チップおよびキャリア基板の一方または両方の、電気的相互接続する表面の少なくとも一部にディスペンシングによって供給され、次に、半導体チップおよびキャリア基板が結合されて、半導体デバイスが形成される。
【0018】
この態様において、半導体デバイスは、また、フリップチップアセンブリとして提供され、
銅の電気的相互接続および少なくとも1層のlow−k ILDを含む半導体チップと、
この半導体チップが電気的相互接続される表面に、電気接点パッドを有する回路基板と、
この半導体チップと回路基板との間にアンダーフィル組成物と
を含む。ここでもまた、アンダーフィル組成物は、エポキシ樹脂成分、シラン変性エポキシ、および硬化剤(シアネートエステルまたは芳香族アミンであってよい)を、任意選択の触媒と共に含む。
【0019】
半導体デバイスアセンブリは、また、チップスケールパッケージとして提供され、
銅の電気的相互接続および少なくとも1層のlow−k ILDを有する半導体チップを含み、キャリア基板が電気的に接続される半導体デバイスと、
この半導体デバイスが電気的相互接続される表面に、電気接点パッドを有する回路基板と、
この半導体チップと回路基板との間にアンダーフィル組成物と
を含む。ここでもまた、アンダーフィル組成物は、エポキシ樹脂成分、シラン変性エポキシ、および硬化剤(シアネートエステルまたは芳香族アミンであってよい)を、任意選択の触媒と共に含む。
【0020】
集積回路アセンブリを組み立てる方法も提供され、その方法のステップは、
集積回路チップを準備するステップ;
集積回路チップをキャリア基板と接続し、結合したアセンブリを形成するステップ;および
そのようにして形成された結合したアセンブリを、電気接点を与え、熱硬化性アンダーフィル組成物を硬化するのに十分な高温条件に曝露して、それによって集積回路チップをキャリア基板に接合して電気的相互接続を設けるステップ
を含む。
【0021】
これらの実施形態および態様において、電気伝導性材料は半田、例えば以下の半田合金の1つであることができる。Sn(63):Pb(37)、Pb(95):Sn(5)、Sn:Ag(3.5):Cu(0.5)、およびSn:Ag(3.3):Cu(0.7)、または銅柱および半田相互接続の組み合わせ。
【0022】
現在の基準厚さの約350ミクロンのものと比較して比較的薄く、例えば100ミクロン未満である半導体チップが使用される場合、この性能特性によって、組み立てられた半導体デバイスにおける信頼性が向上する(すなわち、low−k ILDまたは半導体チップそれ自体における亀裂が防止される)。
【0023】
より具体的には、フリップチップパッケージにおいて、アンダーフィルシーラントはダイの応力を緩和するように意図されているため、low−k ILD(1層または複数層)がパッケージで使用されていても、使用されていなくても、この性能特性によって信頼性が向上する。また、ワイヤ接合ダイパッケージにおいては、ダイ接着剤はダイの応力を緩和するように意図されているため、low−k ILD(1層または複数層)がパッケージで使用されていても、使用されていなくても、また、積層ダイアセンブリが使用されていても、使用されていなくても、この性能特性によって信頼性が向上する。
【0024】
現在の基準BLTの50ミクロンのものと比較して比較的薄く、例えば20ミクロン未満であるチップ接着層が使用される場合、この性能特性によって、組み立てられた半導体デバイスにおける信頼性が向上する(すなわち、全体的なパッケージ応力が低減し、チップ接着層の破壊における亀裂が防止される)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の0.130μmのlow−kダイ構造の分離した構成要素、および物理的寸法を示す。
【図2】本発明の範囲内の熱硬化性組成物(サンプル番号16〜20)および一連の対照組成物(サンプル番号1〜15)の、室温における弾性率−CTE曲線(グラフ)を示す。
【図3】本明細書に記載されたシラン変性エポキシを調製することができる合成スキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記の通り、特にエポキシ成分を含む。エポキシ成分の例を以下に記載する。
【0027】
例えば、エポキシ成分は、2種以上の異なるビスフェノール系エポキシの組み合わせを含むことができる。これらのビスフェノール系エポキシは、ビスフェノールAエポキシ、ビスフェノールFエポキシ、またはビスフェノールS、またはそれらの組み合わせから選択することができる。さらに、同じ種類の樹脂(例えば、A、F、またはS)の中の2種以上の異なるビスフェノールエポキシを使用してもよい。
【0028】
本発明において使用するのに望ましいビスフェノールエポキシの商業的に入手可能な例として、ビスフェノールF型エポキシ(例えば、日本化薬株式会社製のRE−404−S、大日本インキ化学工業株式会社製のEPICLON 830(RE1801)、830S(RE1815)、830A(RE1826)および830W、Resolution社製のRSL 1738およびYL−983U)、ならびにビスフェノールA型エポキシ(例えば、Resolution社製のYL−979および980)が挙げられる。
【0029】
大日本インキ化学工業株式会社から商業的に入手可能である上記のビスフェノールエポキシは、ビスフェノールAエポキシをベースにする従来のエポキシよりも非常に低い粘度を有する、液体の希釈されていないエピクロロヒドリン−ビスフェノールFエポキシとして推奨され、液体ビスフェノールAエポキシと同様の物理的特性を有する。ビスフェノールFエポキシは、ビスフェノールAエポキシよりも低い粘度を有するが、他の全ての物理的特性はこの2つの種類のエポキシの間で同じであり、これは、より低い粘度を与え、したがって高速で流動するアンダーフィルシーラント材料を与える。これら4種類のビスフェノールFエポキシのEEW(エポキシ当量)は、165〜180の間である。25℃での粘度は、(粘度の上限が4,000cpsであるRE1801を除いて)3,000〜4,500cpsの間である。加水分解性塩素の含有量は、RE1815および830Wでは200ppm、RE1826では100ppmと報告されている。
【0030】
Resolution社から商業的に入手可能である上記のビスフェノールエポキシは、塩素含有量が低い液体のエポキシとして推奨される。このビスフェノールAエポキシは、EEW(g/当量)が180〜195の間であり、25℃での粘度が100〜250cpsの間である。YL−979の総塩素含有量は500〜700ppmの間と報告されており、YL−980の総塩素含有量は100〜300ppmの間と報告されている。このビスフェノールFエポキシは、EEW(g/当量)が165〜180の間であり、25℃での粘度が30〜60cpsの間である。RSL−1738の総塩素含有量は500〜700ppmの間と報告されており、YL−983Uの総塩素含有量は150〜350ppmの間と報告されている。
【0031】
ビスフェノールエポキシの他に、他のエポキシ化合物が本発明のエポキシ成分の範囲内に包含される。例えば、脂環式エポキシ、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカーボネートが使用される。また、粘度を調整するために、および/または、Tgを低くするために、単官能性、2官能性、または多官能性の反応性希釈剤、例えばブチルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、またはポリプロピレングリコールグリシジルエーテルも使用される。
【0032】
本発明において使用するのに適したエポキシとして、フェノール系化合物のポリグリシジル誘導体、例えば、EPON 828、EPON 1001、EPON 1009、およびEPON 1031等のEPONの商品名でResolution社から商業的に入手可能であるもの;Dow Chemical社製のDER 331、DER 332、DER 334、およびDER 542;日本化薬株式会社製のBREN−Sも挙げられる。他の適したエポキシとして、ポリオール等から調製されるポリエポキシド、およびフェノールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体が挙げられ、後者は例えばDow Chemical社製のDEN 431、DEN 438、およびDEN 439が挙げられる。クレゾール類似体も、ARALDITE ECN 1235、ARALDITE ECN 1273、ARALDITE ECN 1299等のARALDITEの商品名でCiba Specialty Chemicals社から商業的に入手可能である。SU−8は、Resolution社から入手可能であるビスフェノールA型のエポキシノボラックである。アミン、アミノアルコール、およびポリカルボン酸のポリグリシジル付加物も本発明において有用であり、その商業的に入手可能である樹脂として、F.I.C社製のGLYAMINE 135、GLYAMINE 125、およびGLYAMINE 115;Ciba Specialty Chemicals社製のARALDITE MY−720、ARALDITE 0500、およびARALDITE 0510;ならびに、Sherwin−Williams社製のPGA−X、およびPGA−Cが挙げられる。
【0033】
本発明において使用するのに適した単官能性エポキシ共反応性希釈剤として、エポキシ成分よりも粘度が低いもの、通常は約250cps未満のものが挙げられる。
【0034】
単官能性エポキシ共反応性希釈剤は、約6〜約28個の炭素原子のアルキル基(その例として、C6〜28アルキルグリシジルエーテル、C6〜28脂肪酸グリシジルエステル、およびC6〜28アルキルフェノールグリシジルエーテルが挙げられる)を有するエポキシ基を有するべきである。
【0035】
そのような単官能性エポキシ共反応性希釈剤を含有する場合、そのような共反応性希釈剤は、組成物の総重量をベースにして、約5重量%から約15重量%まで、例えば約8重量%から約12重量%までの量で使用されるべきである。
【0036】
エポキシ成分は、約10重量%〜約95重量%、望ましくは約20重量%〜約80重量%の範囲、例えば約60重量%の量で組成物中に存在すべきである。
【0037】
シラン変性エポキシは、以下のもの等の物質の組成物である。
【0038】
成分(A)として、下記の構造で表されるエポキシ成分:
【0039】
【化1】

(式中、Yは存在しても存在しなくてもよく、Yが存在する場合、直接結合、CH、CH(CH、C=O、またはSであり、Rはここではアルキル、アルケニル、ヒドロキシ、カルボキシ、およびハロゲンであり、xはここでは1〜4である。)
【0040】
成分(B)として、下記の構造で表されるエポキシ官能化アルコキシシラン:
【0041】
【化2】

(式中、Rはオキシラン含有部分であり、Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ置換アルキル、アリール、またはアラルキル基である。)
【0042】
成分(C)として、成分(A)および成分(B)の反応生成物。
【0043】
そのようなシラン変性エポキシの1つの例は、芳香族エポキシ、例えばビスフェノールA、E、FまたはSエポキシ、またはビフェニルエポキシと、下記の構造で表されるエポキシシランとの反応生成物として形成される:
【0044】
【化3】

式中、Rは、オキシラン含有部分(その例として、2−(エトキシメチル)オキシラン、2−(プロポキシメチル)オキシラン、2−(メトキシメチル)オキシラン、および2−(3−メトキシプロピル)オキシランが挙げられる)であり、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ置換アルキル、アリール、またはアラルキル基である。1つの実施形態では、Rは2−(エトキシメチル)オキシランであり、Rはメチルである。
【0045】
シラン変性エポキシを調製するために使用される芳香族エポキシの理想的な構造として、以下のものが挙げられる。
【0046】
【化4】

式中、Yは存在しても存在しなくてもよく、Yが存在する場合、直接結合、CH、CH(CH、C=O、またはSであり、Rはここではアルキル、アルケニル、ヒドロキシ、カルボキシ、およびハロゲンであり、xはここでは1〜4である。当然、xが2〜4の場合、芳香族エポキシの炭素鎖が伸長したものも、この構造に包含されるものとして考えられる。
【0047】
例えば、芳香族エポキシの炭素鎖が伸長したものは、下記の構造で表すことができる。
【0048】
【化5】

【0049】
シラン変性エポキシは、また、芳香族エポキシ、エポキシシラン、および芳香族エポキシとエポキシシランとの反応生成物の組み合わせであってよい。反応生成物は、1:100〜100:1の重量比、例えば1:10〜10:1の重量比の芳香族エポキシおよびエポキシシランから調製することができる。
【0050】
触媒として、多くの種々の材料を、硬化が起こることが望ましい温度に応じて、使用することができる。例えば、約150℃〜約180℃の温度で硬化を達成するために、種々の他の材料を使用することができる。例えば、イミダゾールは芳香族アミン硬化剤と共に使用することができ、金属塩、例えば銅またはコバルトアセチルアセトネートはシアネートエステル硬化剤と共に使用することができる。
【0051】
触媒は、存在する場合、組成物の総重量の約0.05重量%〜約1重量%、望ましくは約0.1重量%〜約0.5重量%の範囲の量で存在すべきである。
【0052】
硬化剤として、シアネートエステルまたは芳香族アミンを使用することができる。シアネートエステルの例として、各々の分子に少なくとも1個のシアネートエステル基を有するアリール化合物が挙げられ、一般的に、式Ar(OCN)(式中、mは2〜5の整数であり、Arは芳香族基である。)で表すことができる。芳香族基Arは、少なくとも6個の炭素原子を含有すべきであり、例えば芳香族炭化水素、例えばベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレンなどから誘導されたものであることができる。芳香族基Arは、また、少なくとも2個の芳香環が架橋基によって結合した多核芳香族炭化水素から誘導されたものであることができる。また、ノボラック型フェノール樹脂から誘導される芳香族基、すなわち、これらのフェノール樹脂のシアネートエステルも挙げられる。芳香族基Arはまた、更に環が結合した、非反応性置換基を含有してもよい。
【0053】
そのようなシアネートエステルの例として、例えば、1,3−ジシアナトベンゼン;1,4−ジシアナトベンゼン;1,3,5−トリシアナトベンゼン;1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−または2,7−ジシアナトナフタレン;1,3,6−トリシアナトナフタレン;4,4’−ジシアナトビフェニル;ビス(4−シアナトフェニル)メタン、および3,3’,5,5’−テトラメチルビス(4−シアナトフェニル)メタン;2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−シアナトフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ジシアナトフェニル)プロパン;ビス(4−シアナトフェニル)エーテル;ビス(4−シアナトフェニル)スルフィド;2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン;トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト;トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート;ビス(3−クロロ−4−シアナトフェニル)メタン;シアネート化ノボラック;1,3−ビス[4−シアナトフェニル−1−(メチルエチリデン)]ベンゼン;および、シアネート化ビスフェノール末端ポリカーボネート、または他の熱可塑性オリゴマーが挙げられる。
【0054】
他のシアネートエステルとして、米国特許第4,477,629号明細書、および同第4,528,366号明細書に開示されているシアネート(ここで、その各々の開示は参照により本明細書に組み込まれる。);英国特許第1,305,702号明細書に開示されているシアネートエステル、および国際公開第85/02184号明細書に開示されているシアネートエステル(ここで、その各々の開示は参照により本明細書に組み込まれる。)が挙げられる。当然、本発明の組成物のイミダゾール成分の中で、これらのシアネートエステルの組み合わせが本発明で使用されることも望ましい。
【0055】
本発明において使用するのに特に望ましいシアネートエステルは、Ciba Specialty Chemicals(ニューヨーク、タリータウン)から、商品名「AROCY 366」(1,3−ビス[4−シアナトフェニル−1−(メチルエチリデン)]ベンゼン)で商業的に入手可能である。4つの他の望ましい「AROCY」シアネートエステルの構造は、以下の通りである。
【0056】
【化6】

【0057】
芳香族アミンの例として、3−アミノフェニルスルホン、4−アミノフェニルスルホン、および4,4−メチレンビス(o−エチルアニリン)が挙げられ、その後者は、商業的にはAcetocure MBOEAとして知られている。
【0058】
硬化剤は、樹脂組成物の10〜50%の量で存在すべきである。
【0059】
使用される場合、フィラー成分としては、多くの材料が有用である可能性がある。例えば、特に、結合、封止される半導体チップと基板との間の熱膨張係数(「CTE」)がより厳密に一致する場合、無機フィラーが有用であることがある。フィラーはCTEに影響を及ぼし、したがって、フィラーを使用して、硬化した材料の熱膨張を低減させ、それによって歪みを低減することができる。フィラー成分は、多くの場合、溶融球状シリカ等の強化用シリカを含有することがあり、処理されていなくても、その表面の化学的性質を変えるために処理されていてもよい。しかしながら、フィラー成分は、0.1〜50ミクロンの範囲の平均粒径分布を有する粒子を含有すべきである。そのような粒子の商業的に入手可能な例は、日本の龍森株式会社、または電気化学工業株式会社によって販売されている。さらに、ナノサイズのシリカ粉末、例えばNanoresins社(ドイツ)によって商品名「NANOPOX」で販売されているものを添加してもよい。NANOPOXフィラーは、Nanoresins社(ドイツ)から入手可能であり、約50重量%までの濃度の、エポキシ樹脂中の単分散シリカフィラー分散液である。NANOPOXフィラーは、通常、約5nm〜約80nmの粒径を有すると考えられている。
【0060】
Nanoresins社はまた、商品名「NANOPOX E」で材料を製造している。例えば、Nanoresins社は、NANOPOX Eブランド製品は、他の方法では封止することが困難な電子部品への完全な含浸を可能にし、低減された収縮および熱膨張、破壊靭性および弾性率など、広い範囲の機械的特性および熱的特性を有している、と報告している。下記の表1に、Nanoresin社が提供する、4種の注目されるNANOPOX E製品に関する情報を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
Nanoresins社は、NANOPOX Eブランド製品を使用することによって、エポキシ配合物において重要な特性を顕著に改善できることを報告している。例えば、
−従来の強化フィラーと比較して、配合物の粘度がより低いこと、
−沈降がないこと、
−破壊靭性、耐衝撃性、および弾性率が向上していること、
−耐引っかき性、および耐摩擦性が向上していること、
−収縮、および熱膨張が低減していること、
−多数の望ましい特性、例えば熱安定性、耐薬品性、ガラス転移温度、耐候性、および誘電特性が向上しているか、少なくともマイナスの効果が無いこと。
【0063】
加工性は、それぞれのベース樹脂と比較して、実質的に変わらない。
【0064】
NANOPOX Eは、(ヒュームドシリカから知られているように)粘度の過度な増加によって加工性を低下させることなく、特性を上記のように改善することが望まれる、または必要である用途で使用される。用途の例は、封入材料および被覆剤である。粒径が小さく、凝集塊が存在しないために、NANOPOX Eが優れた含浸特性を有することを強調することは重要である。これによって、また、他の方法では封止することが困難な電子部品への完全な含浸を可能にする。
【0065】
製造業者によれば、NANOPOX Eブランド製品は、エポキシ樹脂マトリクス中のコロイダルシリカゾルである。分散相は、製造業者によれば、直径が50nm未満であり、極めて狭い粒径分布を有する、表面が改質された球形のSiOナノ粒子からなる。サイズが数ナノメーターでしかないこれらの球形粒子は、樹脂マトリクス中に凝集塊を含まずに分散している。製造業者によれば、これによって、SiO含有量が40重量%までの、非常に低い粘度の分散液が得られる。製造業者によって報告されている通り、ナノ粒子はケイ酸ナトリウム水溶液から化学的に合成される。粉末状のフィラーを溶解機、または高い剪断エネルギーを使用する他の装置を用いて分散するプロセスとは異なり、このプロセスにおいて、結合剤は損傷を受けない。
【0066】
フィラー成分として使用するのに望ましい他の材料として、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、シリカで被覆された窒化アルミニウム、窒化ホウ素、およびそれらの組み合わせから構成された、またはそれらを含有するものが挙げられる。
【0067】
フィラー成分は、使用される場合、組成物の約10重量%〜約80重量%、例えば約12重量%〜約60重量%の量で、望ましくは約15重量%〜約35重量%の範囲内の量で使用されるべきである。
【実施例】
【0068】
サンプル番号1〜20について、下記の表1a〜1b、および表2a〜2bに示す。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
本組成物は、それぞれ、溶解して均一な溶液が得られるまで、エポキシ構成要素をメカニカルミキサーで混合することによって調製した。次に、シリカフィラーを添加し、実質的に均一な濃度を有する粘性のペーストが得られるまで、室温で約30〜60分間、引き続き混合した。そのようにして形成したペーストは、次に、使用できるようになるまで容器に移した。
【0074】
オーブン中、175℃の温度で2時間、サンプルを硬化させた後、弾性率、ガラス転移温度、熱膨張係数などの機械的特性を測定した。
【0075】
これらのサンプルの物理的特性を表3a〜3b、および表4a〜4bに示す。
【0076】
【表6】

【0077】
【表7】

【0078】
【表8】

【0079】
【表9】

【0080】
対照組成物[サンプル番号1〜5(表1aおよび表3a)、ならびにサンプル番号6〜10(表1bおよび表3b)]の物理的特性[例えば、弾性率、熱膨張係数(「CTE」)αおよびα、ならびにガラス転移温度(「Tg」)]を、本発明の組成物[サンプル番号11〜15(表2aおよび表4a)、ならびにサンプル番号16〜20(表2bおよび表4b)]と比較する。上記の硬化したときの全ての組成物についての弾性率とCTEαの関数的関係を図3にグラフで示す。一般的に、サンプル番号11〜15および16〜20の弾性率の範囲は、サンプル番号1〜5および6〜10の弾性率の範囲と比較して低く、その一方で、CTEα(およびTg、さらに言えば)は同一の範囲内である。この低い弾性率と、低いCTEα(および、比較的高いTg)の組み合わせは、low−k IC超小型電子デバイスにおいて使用するための電子材料、例えばアンダーフィルシーラントにとって重要な物理的特性の組み合わせである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂成分、シラン変性エポキシ、硬化剤、シリカフィラー、および任意選択の触媒を含み、
前記硬化剤が、シアネートエステルまたは芳香族アミンであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
硬化したときに、6,000〜10,000MPaの範囲の弾性率、および7〜20ppmの範囲のCTE αを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1層のlow−k ILDを含む半導体デバイスの信頼性を改善する方法であって、
銅の電気的相互接続および少なくとも1層のlow−k ILDを含み、その表面に金属被覆を含む半導体チップと、
この半導体チップが、導電性材料によって、銅の電気的相互接続に電気的に相互接続される表面に、電気接点パッドを有するキャリア基板
を含む半導体デバイスを準備するステップ;
半導体チップの電気的相互接続された表面とキャリア基板との間に、熱硬化性アンダーフィル組成物を供給して、半導体デバイスアセンブリを形成するステップ;および
半導体デバイスアセンブリを、熱硬化性アンダーフィル組成物を硬化するのに十分な高温条件に曝露するステップ
を含み、
前記熱硬化性アンダーフィル組成物は、エポキシ樹脂成分、シラン変性エポキシ、シアネートエステルまたは芳香族アミンである硬化剤、および任意選択で触媒を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
半導体チップおよびキャリア基板が結合された後、熱硬化性アンダーフィル組成物がディスペンシングによって供給され、その間の間隙に充填されて、半導体デバイスが形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
熱硬化性アンダーフィル組成物が、半導体チップおよびキャリア基板の一方または両方の、電気的相互接続する表面の少なくとも一部にディスペンシングによって供給され、次に、半導体チップおよびキャリア基板が結合されて、半導体デバイスが形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリア基板が回路基板である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記導電性材料が半田である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記半田が、Sn(63):Pb(37)、Pb(95):Sn(5)、Sn:Ag(3.5):Cu(0.5)、およびSn:Ag(3.3):Cu(0.7)、または銅柱および半田相互接続からなる群から選択される、請求項3に記載の方法
【請求項9】
銅の電気的相互接続およびlow−k ILDを含み、その表面に金属被覆を含む半導体チップと、
この半導体チップが電気的相互接続される表面に、電気接点パッドを有する回路基板と、
この半導体チップと回路基板との間に熱硬化性アンダーフィル組成物と
を含み、
前記熱硬化性アンダーフィル組成物は、エポキシ樹脂成分、シラン変性エポキシ、シアネートエステルまたは芳香族アミンである硬化剤、および任意選択で触媒を含むことを特徴とする半導体デバイス。
【請求項10】
少なくとも1層のlow−k ILDと接触する銅の電気的相互接続、および、その表面に金属被覆を含む半導体チップを含み、キャリア基板が電気的に接続される半導体デバイスと、
この半導体デバイスが電気的相互接続される表面に、電気接点パッドを有する回路基板と、
この半導体デバイスと回路基板との間に熱硬化性アンダーフィル組成物と
を含み、
前記熱硬化性アンダーフィル組成物は、エポキシ樹脂成分、シラン変性エポキシ、シアネートエステルまたは芳香族アミンである硬化剤、および任意選択で触媒を含むことを特徴とする半導体デバイスアセンブリ。
【請求項11】
前記シラン変性エポキシが、
成分(A)として、下記の構造で表されるエポキシ成分:
【化1】

(式中、Yは存在しても存在しなくてもよく、Yが存在する場合、直接結合、CH、CH(CH、C=O、またはSであり、Rはここではアルキル、アルケニル、ヒドロキシ、カルボキシ、およびハロゲンであり、xはここでは1〜4である)、
成分(B)として、下記の構造で表されるエポキシ官能化アルコキシシラン:
【化2】

(式中、Rはオキシラン含有部分であり、Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ置換アルキル、アリール、またはアラルキル基である)、
および
成分(C)として、成分(A)および成分(B)の反応生成物
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
成分(C)が、1:100〜100:1の重量比の成分(A)および成分(B)から作製される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
成分(C)が、1:10〜10:1の重量比の成分(A)および成分(B)から作製される、請求項10に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−513015(P2013−513015A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543151(P2012−543151)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/058518
【国際公開番号】WO2011/071726
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】