説明

優れたTCCを有するポリマー−セラミック複合材料

コンデンサを形成するのに使用するためのポリマー−セラミック複合材料であり、この材料は、約−55℃〜約125℃の範囲内の温度変化に応じて静電容量温度係数(TCC)の非常に小さい変化を示す。具体的には、これらのコンデンサ材料は、所望の温度範囲内における温度変化に応じて、約−5%〜約+5%の範囲にあるTCCの変化を有する。本発明の複合材料は、ポリマー成分と強誘電性セラミック粒子とのブレンドを含み、このポリマー成分には、少なくとも1種のエポキシ含有ポリマー、およびエポキシ反応性基を有する少なくとも1種のポリマーが含まれる。本発明のポリマー−セラミック複合材料は、優れた機械特性、例えば改良された引きはがし強さおよび脆性の無さなど、電気特性、例えば高い誘電率など、ならびに改良された加工特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサおよびプリント回路板の分野に関する。特に、本発明は、コンデンサおよびプリント回路板を形成するのに使用するためのポリマー−セラミック複合材料に関する。本発明の複合材料は、温度変化に応じた静電容量温度係数(TCC)の小さい変化を示すだけでなく、他の望ましい特性をも示す。
【背景技術】
【0002】
中央処理装置(CPU)の回路設計において、操作速度の増加達成が追求されるにつれて、集積回路の性能がより一層重要になる。これらの集積回路を取り付けるプリント回路板の回路設計も非常に重要である。
【0003】
コンデンサは、プリント回路板および他の超小型電子デバイスの共通の素子である。コンデンサは、このようなデバイスの操作電源を安定化するために使用される。静電容量は、コンデンサのエネルギー貯蔵能力の目安である。コンデンサは、回路に静電容量をもたらし、また第一に電気エネルギーを貯蔵し、直流電流を遮り、または交流電流を許容するように機能する。典型的には、コンデンサは、銅箔などの2つの導電性金属層間にサンドイッチ状にはさまれた誘電体材料を含む。一般に、この誘電体材料は、接着剤層を介して積層によって、または蒸着によって導電性金属層に結合されている。
【0004】
これまで、プリント回路板の表面上に配置されたコンデンサが一般的となっている。コンデンサを小型化する最近の取組みでは、高誘電率を有する誘電体セラミック材料の使用や、あるいは誘電体セラミック層の厚さを薄くすることが知られている。静電容量は、先ずコンデンサ層の形状および大きさ、ならびに絶縁材料の誘電率によって決まる。1つの知られている配置において、薄い両面銅張り積層体を含む「埋込み」コンデンサが、積層された回路板層内に形成され、優れた特性をもたらしている。このような埋込みコンデンサを有するプリント回路板は、他の目的のための回路板表面積を最大にして、シグナル伝達速度増加を達成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高い静電容量密度を有するコンデンサが、特に望ましい。誘電体材料の静電容量密度は、セラミック材料の添加によって増大させることができる。しかし、誘電体材料中にセラミックフィラー材料を多く装填すると、しばしば、脆く、かつ非常に低い機械特性および加工特性を有する複合体がもたらされる。このような高静電容量密度の材料が、温度変化による大きな静電容量変化を示すことも知られている。さらに、高誘電率を有する材料が、温度変化に敏感であることも知られている。静電容量のこのような温度依存性を有する材料は、高い「静電容量温度係数(temperature coefficient of capacitance)」(TCC)を有することが知られている。ある材料のTTCは、特定の温度範囲にわたるその材料の静電容量における最大の変化を示している。従来の誘電体複合コンデンサ材料では、約−55℃〜約125℃の温度範囲にわたって±15%〜±10%の小さいTCC変化を有するものが開発されている。しかし、プリント回路板の分野では、約−55℃〜約125℃の範囲内の温度変化に応じて、約−5%〜約+5%の範囲の、また好ましくは約−0.5%〜約+0.5%の非常に小さい範囲のTCC変化を有するコンデンサ材料、特に埋込みコンデンサ材料を開発する必要性が存在している。本発明は、この目標を達成する独特のポリマー−セラミック複合材料を提供する。さらに、本発明の複合材料は、優れた機械特性例えば良好な引きはがし強さおよび脆性の無さなど、電気特性例えば高い誘電率など、ならびに加工特性例えば混合が容易であることなどを有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリマー成分と強誘電性セラミック粒子との混合物を含み、前記ポリマー成分が、前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で少なくとも1種のエポキシ含有ポリマーと、前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で、複数のエポキシ反応性基を有する少なくとも1種のポリマーとを含む複合材料であって、約−55℃〜約125℃の範囲内にある温度変化に応じて、約−5%〜約+5%の静電容量温度係数の変化を示す複合材料を提供する。
【0007】
本発明はさらに、ポリマー成分と強誘電性セラミック粉末との混合物を含み、前記ポリマー成分が、前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で少なくとも1種のエポキシ含有ポリマーと、前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で、複数のエポキシ反応性基を有する少なくとも1種のポリマーとを含む複合材料であって、前記強誘電性セラミック粉末が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、またはこれらの組合せを含み、前記エポキシ含有ポリマーが、フェノールノボラックエポキシ、ビスフェノールAもしくはビスフェノールF由来の、脂肪族もしくは芳香族炭化水素主鎖を有するエポキシ、ブタジエン−アクリル変性エポキシ、またはこれらの組合せを含み、前記複数のエポキシ反応性基を有するポリマーが、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルブチラール、ポリエーテルスルホン、反応性ポリエステル、またはこれらの組合せを含み、また、約−55℃〜約125℃の範囲内にある温度変化に応じて、約−5%〜約+5%の静電容量温度係数(TCC)の変化を示す複合材料を提供する。
【0008】
本発明はなおさらに、コンデンサを形成する方法であって、a)ポリマー成分および強誘電性セラミック粒子の混合物を含み、前記ポリマー成分が、前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で少なくとも1種のエポキシ含有ポリマー、および前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で、複数のエポキシ反応性基を有する少なくとも1種のポリマーを含む複合材料であって、約−55℃〜約125℃の範囲内にある温度変化に応じて、約−5%〜約+5%の静電容量温度係数の変化を示す複合材料を提供するステップと、b)前記複合材料の層を、第一の導電性層と第2の導電性層の間に付着させるステップと、を含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非常に小さい範囲のTCC変化を有するコンデンサ材料を提供することができる。さらに、本発明の複合材料は、優れた機械特性、電気特性、ならびに加工特性例えば混合が容易であることなどを有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の複合材料のある配合物(formulation)のTCC特性を図示するグラフである。図中に示した配合物は、約−55℃〜約125℃の範囲内にある温度変化に応じて、約−5%〜約+5%のTCC変化を示す。
【図2】本発明の複合材料のある配合物のTCC特性を図示するグラフである。図中に示した配合物は、約−55℃〜約125℃の範囲内にある温度変化に応じて、約−2.5〜約+2.5%のTCC変化を示す。
【図3】本発明の複合材料のある配合物のTCC特性を図示するグラフである。図中に示した配合物は、約−55℃〜約125℃の範囲内にある温度変化に応じて、約−0.5%〜約+0.5%のTCC変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の複合材料は、ポリマー成分と強誘電性セラミック粒子とのブレンドを含む。本発明のポリマー成分は、少なくとも1種のエポキシ含有ポリマーと、複数のエポキシ反応性基を有する少なくとも1種のポリマーとを含む。
【0012】
このエポキシ含有ポリマーは、ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%、より好ましくは約20重量%〜約80重量%、また最も好ましくは約45重量%〜約55重量%の量で、ポリマー成分中に存在することが好ましい。適切なエポキシ含有ポリマーの例には、非限定的に、フェノールノボラックエポキシ、ビスフェノールAもしくはビスフェノールF由来の、脂肪族もしくは芳香族炭化水素主鎖を有するエポキシ、ブタジエン−アクリル変性エポキシ、またはこれらの組合せが含まれる。
【0013】
複数のエポキシ反応性基を有するポリマーは、ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%、より好ましくは約20重量%〜約80重量%、また最も好ましくは約45重量%〜約55重量%の量で存在することが好ましい。エポキシ反応性基の例には、非限定的に、アミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、および活性水素基が含まれる。複数のエポキシ反応性基を有するポリマーに適した材料の例には、非限定的に、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルブチラール、ポリエーテルスルホン、反応性ポリエステル、またはこれらの組合せが含まれる。好ましい実施形態において、複数のエポキシ反応性基を有するポリマーは、複数のヒドロキシル基を有する反応性ポリエステルを含む。
【0014】
本発明の複合材料のポリマー成分は、本複合材料の重量に対して約10重量%〜約99.5重量%、より好ましくは本複合材料の重量に対して約20重量%〜約95重量%、また最も好ましくは本複合材料の重量に対して約40重量%〜約90重量%の範囲にある量で存在することが好ましい。このポリマー成分は、室温において固体の形態で存在することが好ましい。
【0015】
強誘電性セラミック粒子は、本発明の複合材料において誘電体、または電気絶縁体の役割を果たす。適切な強誘電性セラミック粒子の例には、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、またはこれらの組合せが含まれる。強誘電性セラミック粒子は、約0.1μm〜約2μm、より好ましくは約0.5μm〜約1μmの範囲にあることが好ましい粒径を有する。強誘電性セラミック粒子は、粉末の形態で存在することが好ましい。粉末とは、約10μ以下の平均直径を有する固体粒子と定義される。ある実施形態において、チタン酸ストロンチウムの平均粒径は、約0.85μm〜約0.95μmの範囲にある。ある実施形態において、チタン酸バリウムの平均粒径は、約0.55μm〜約0.60μmである。強誘電性セラミック粒子は、本複合材料の重量に対して約0.5重量%〜約90重量%、より好ましくは本複合材料の重量に対して約5重量%〜約80重量%、また最も好ましくは本複合材料の重量に対して約10重量%〜約60重量%の範囲にある量で存在することが好ましい。本発明のある実施形態の正確な構成の例は、以下の表1の配合物A〜Kならびに実施例において示される。
【0016】
本発明の複合材料は、さらなる成分または添加剤、例えば従来の硬化剤、分散剤、混合剤、促進剤、硬膜剤(hardeners)、触媒、溶媒などを、場合によって含むことができる。適切な硬化剤の例には、非限定的に、ジアミン、多塩基酸および酸無水物が含まれる。適切な分散剤の例には、非限定的に、シラン、チタン酸ネオアルコキシ、ジルコニウム酸ネオアルコキシ、および酸基を有するコポリマーが含まれる。適切な触媒の例には、非限定的に、イミダゾールおよびトリフェニルホスフィン(TPP)が含まれる。適切な市販触媒の一例は、日本国香川の四国化成工業株式会社から市販されている触媒(商品名Curezol)である。適切な硬膜剤の例には、非限定的に、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)およびフェニレンジアミンが含まれる。適切な溶媒の例には、非限定的に、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、シクロヘキサノン(CyH)およびこれらの組合せが含まれる。ある実施形態において、本発明の複合材料は、少なくとも1種の溶媒を、複合材料全体の約60重量%が固形分の状態で存在するような十分な量で含む。
【0017】
本発明の複合材料は、当技術分野において知られている任意の適切な組合せ手段、例えば混合、ブレンドなどによって形成することができる。好ましい実施形態において、ポリマー材料および強誘電性セラミック粒子は、一緒にブレンドされて、実質的に均一な複合材料混合物を形成する。この複合材料混合物を、任意の適切な所望の形状に成形することができ、また硬化させて複合材料層などとすることができる。ある実施形態において、この複合材料層は、約4μm〜約100μm、好ましくは約8μm〜約50μm、より好ましくは約10μm〜約35μmの範囲にある厚さを有する。
【0018】
本発明の重要な特徴は、本複合材料が、約−55℃〜約125℃の範囲内にある温度変化に応じて、約−5%〜約+5%の静電容量温度係数(TCC)の変化を好ましく示す点である。本発明の複合材料のTCC変化が、この温度範囲内の変化に応じて、約−4%〜約+4%の範囲内にあることがより好ましく、またこの温度範囲内の温度変化に応じて、約−2.5%〜約+2.5%の範囲内にあることがより一層好ましい。最も好ましい実施形態において、本発明の複合材料のTCCの変化は、約−55℃〜約125℃の範囲内にある温度変化に応じて、約−0.5%〜約+0.5%の範囲にある。以下の表2は、配合物A〜Kにおいて本発明の材料の静電容量温度係数(TCC)特性を示し、これらはまた図1〜3において図示され、実施例において詳細に記述されている。表2のデータは、−55℃〜125℃の範囲内にある温度における配合物A〜Kの静電容量変化パーセント(ΔTCC)を示す。
【0019】
本発明の複合材料は、優れた誘電率(DK)および1MHzにおける誘電正接(dissipation factor)(DF)をも有している。配合物A〜Kの本発明の材料のDKおよびDF特性はまた、以下の表2中に示される。本発明の複合材料は、誘電率(DK)は、好ましくは約2.5〜約50、より好ましくは約5〜約50、より一層好ましくは約10〜約40、また最も好ましくは約15〜約30を有する。誘電正接(DF)は、コンデンサの電力損失の目安であり、この場合DF=2ΠfRC×100%(式中、Rはコンデンサの等価直列抵抗であり、fは周波数であり、またCは静電容量である。)である。誘電正接は、周波数および温度により変動する。本発明の材料の誘電正接(DF)は、好ましくは1MHzにおいて約0.003〜約0.03、より好ましくは約0.004〜約0.02、また最も好ましくは約0.005〜約0.015の範囲にある。
【0020】
本発明の複合材料は、コンデンサ、プリント回路板、電子デバイスなどの形成におけるなど、様々な用途において使用することができる。ある実施形態において、本発明は、導電性層と、その導電性層上の本発明の複合材料の層とを備える物品を提供する。このような物品は、コンデンサ、本発明のコンデンサを備えるプリント回路板、本発明のコンデンサを備える電子デバイス、本発明のプリント回路板を備える電子デバイスなどを含むことができる。本発明の一実施形態には、第一の導電性層と、第二の導電性層と、この第一の導電性層および第二の導電性層の間に付着された本発明の複合材料の層とを備えるコンデンサが含まれる。この複合材料層は、それぞれの導電性層の表面に直接付着させることが好ましい。他の実施形態には、その第一の導電性層上に本発明の複合材料の層を有する、第一の導電性層を備えた第一の物品と、その第二の導電性層上に本発明の複合材料層を有する、第二の導電性層を備えた第二の物品とを備え、その第一および第二の物品が、それらの物品の複合材料の層が互いに接触しているように、互いに付着されているコンデンサが含まれる。
【0021】
導電性層は、当技術分野においてよく知られている。導電性層の例には、非限定的に、金属箔などの金属層が含まれる。このような導電性層に適した材料の例には、非限定的に、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄ニッケル合金、またはこれらの組合せが含まれる。好ましい材料は銅を含む。2つ以上の導電性層が存在する場合、それぞれの層の材料は独立に選択され、同一の材料を備えることもでき、または異なった材料を備えることもできる。この導電性層は、約3μm〜約100μm、より好ましくは約5μm〜約70μm、また最も好ましくは約10μm〜約35μmの範囲にある厚さを有することが好ましい。上述したように、この複合材料層は、約4μm〜約100μm、より好ましくは約8μm〜約50μm、また最も好ましくは約10μm〜約35μmの範囲にある厚さを有することが好ましい。
【0022】
本発明の目的のため、指定されない限り、用語「適用する(applying)」または「付着させる(attaching)」は、1つの層を次の層に堆積させる、付加する、または結合する任意のよく知られている方法であって、非限定的に、被覆、浸漬、噴霧、スパッタリング、積層、蒸着、電着、めっき、印刷、真空蒸着、および同時的もしくは順次的いずれかによるこれらの組合せを含む方法を指す。ある実施形態において、この複合材料層は、被覆により導電性層上に適用される。ある実施形態において、2つ以上の材料の付着は、コンデンサ積層体を形成するなどのために、積層によって行われる。積層は、選択した材料に適した温度、圧力および時間で行われることが好ましい。ある実施形態において、積層は、約150℃〜約310℃、より好ましくは約160℃〜約200℃の温度におけるプレスで行うことができる。積層は、約30分間〜約120分間、好ましくは約40分〜約80分間行うことができる。このプレスは、少なくとも水銀70cm(28インチ)の真空下で、かつ約3.5kgf/cm(50psi)〜約28kgf/cm(400psi)、好ましくは約4.9kgf/cm(70psi)〜約14kgf/cm(200psi)の圧力を保持することが好ましい。積層のほかに、任意の従来知られている硬化方法により、硬化を行うことができる。ある実施形態において、硬化ステップは、本複合材料を約93℃(200°F)〜約316℃(600°F)の温度に約1〜約120分間掛けることによって行うことができる。
【0023】
本発明はさらに、コンデンサを形成する方法であって、(a)上述の複合材料を提供するステップと、(b)この複合材料の層を、第一の導電性層と第2の導電性層の間に付着させるステップとを含む方法に関する。この複合材料層は、それぞれの導電性層の表面に直接付着させることが好ましい。
【0024】
このようなコンデンサ形成は、様々なやり方で行うことができる。いくつかの実施形態において、本発明の複合材料の層を、導電性層上に適用することにより物品が形成される。ある実施形態において、上記の付着ステップ(b)は、i)第一の導電性層と、その第一の導電性層上の本複合材料の層とを備える第一の物品(article)を形成するステップと、ii)第二の導電性層と、その第二の導電性層上の本複合材料層とを備える第二の物品を形成するステップと、iii)第一の物品の複合材料層が第二の物品の複合材料層と接触しているように、第一の物品および第二の物品を一緒に結合するステップとを含む。場合によって、好ましくはステップiii)は、第一の物品と第二の物品とを一緒に積層するステップ、および/または複合材料層を硬化させるステップを含む。適切な導電性層材料、ならびに積層および硬化に関する詳細は、上記に提供している。得られたコンデンサ構造は、金属−複合材料−複合材料−金属の配列を有する。
【0025】
他の実施形態において、付着ステップ(b)は、i)複合材料の層を第一の導電性層上に適用するステップと、ii)第一の導電性層上にある複合材料の層の表面上に、第二の導電性層を適用するステップと、iii)場合によって、第一の導電性層と、複合材料の層と、第二の導電性層とを一緒に積層するステップ、および/またはその複合材料の層を硬化させるステップとを含む。得られたコンデンサ構造は、金属−複合材料−金属の配列を有する。
【0026】
さらに他の実施形態において、付着ステップ(b)は、i)本複合材料の層を第一の導電性層上に適用するステップと、次いで、ii)その複合材料の層を硬化させるステップと、次いで、iii)スパッタリングにより、前記第一の導電性層が適用された面とは反対側の面にある前記複合材料の表面上に、第二の導電性層を形成するステップとを含む。得られたコンデンサ構造は、やはり金属−複合材料−金属の配列を有する。さらに、本発明のコンデンサを形成した後で、知られているエッチング技術を使用して、その導電性層において回路パターンを作り出すこともできる。
【0027】
本発明のポリマー−セラミック複合材料により形成したコンデンサは、上述の望ましいTCC、DKおよびDF特性のほかに、いくつかの望ましい特性を呈する。例えば、本発明のポリマー−セラミック複合材料により銅箔などの導電性層上に形成されたコンデンサは、0.5kN/m以上の、好ましくは1kN/m以上の良好な90度引きはがし強さを好ましく示す。その上、本発明のコンデンサは、約288℃のはんだ温度で非常に高い熱安定性を示す。一実施形態において、本発明のコンデンサ積層体は、銅箔上に本発明のポリマー−セラミック複合材料を含むように形成されており、この場合本複合材料はポリマー成分20重量%および強誘電性セラミック粒子80重量%を含有する。この実施形態のコンデンサ積層体は、288℃におけるはんだフロート試験10回に合格する。
【0028】
本発明はさらに、上記方法により形成したコンデンサをプリント回路板中に組み込むステップを含む、プリント回路板形成方法を提供する。本発明のさらなる実施形態には、非限定的に、本発明のコンデンサを備えるプリント回路板、本発明のプリント回路板を備える電子デバイス、本発明のコンデンサを備える電子デバイスなどの形成が含まれる。
【0029】
下記の非限定的実施例は、本発明を例証する役割を果たす。本発明の構成要素についての割合の変動および要素の代替は、当業者には明らかなものであり、本発明の範囲内にあることは、理解されるであろう。
【0030】
第1実施形態:以下の表1は、本発明の複合材料配合物A〜Kを示す。配合物Aは対照材料としての役割を果たし、全て本発明のポリマー成分で構成される。配合物B〜Kは、本発明の複合材料に関して、ポリマー成分と、強誘電性セラミック粒子との種々の組合せを含む。表1において、チタン酸ストロンチウムは用語「ST」により略記され、またチタン酸バリウムは用語「BT」により略記され、それらの平均粒子直径、およびそれらの重量(グラムによる)が後に続いている。
【0031】
【表1】

【0032】
表2は、本発明の複合材料配合物A〜Kの特性を示す。具体的には、表2は、配合物A〜KのDKおよびDF特性、ならびに−55℃〜125℃の範囲内にある温度におけるそれぞれの配合物の静電容量変化パーセント(ΔTCC)を示す。TCCに関する表2のデータは、図1〜3においてグラフとして示される。
【0033】
【表2】

【0034】
本発明の複合材料には、ポリマー成分と強誘電性セラミック粒子とのブレンドが含まれる。これらの実施例のポリマー成分は、重量割合75:25で、以下の組成物1を組成物2とブレンドすることにより形成した。
【0035】
組成物1:フェノールおよび芳香族炭化水素のエポキシ化コポリマーを9.0gと、エラストマー強化エポキシ化フェノールノボラックを28gと、ビスフェノールFエポキシを7.2gと、エポキシと重合可能な官能基を有するポリエステル(トルエン中65%)を74.8gと、ポリビニルブチラールを6.8gと、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを0.5gと、メチルエチルケトン80%およびジメチルホルムアミド20%の溶媒混合物を123.9gと、を混合した組成物。
【0036】
組成物2:フェノールおよび芳香族炭化水素のエポキシ化コポリマーを20gと、エポキシポリマー−オキシラン、2,2’−[[1−[4−[1−メチル−1−[4−[(オキシラニルメトキシ)フェニル]エチル]フェニル]エチレデン]ビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビスを15gと、ビスフェノールAエポキシを15gと、ポリエーテルスルホンを48gと、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールを0.30gと、ジアミノジフェニルスルホンを1.5gと、トリフェニルホスフィンを0.20gと、メチルエチルケトン23%、シクロヘキサン62%およびジメチルホルムアミド15%の溶媒混合物を150gと、を混合した組成物。
【0037】
実施例1(配合物A):表1の配合物Aは、得られたポリマー成分100gを含有する。
【0038】
実施例2(配合物B):配合物Bによる本発明の複合材料は、表1に示したように、前記ポリマー成分ブレンド20gを、チタン酸ストロンチウム(85μm粒子)80gおよび分散剤0.12gとブレンドすることにより形成した。
【0039】
配合物Bは、表2に示したように、DK28、および1MHzにおけるDF0.003を示し、また、−55℃で2.6%および125℃で−3.4%の静電容量温度係数における変化を示した。
【0040】
実施例3(配合物C):配合物Cによる本発明の複合材料は、表1に示したように、実施例1のポリマー成分ブレンド22gを、チタン酸バリウム78gおよび分散剤0.11gとブレンドすることにより形成した。
【0041】
配合物Cは、表2に示したように、DK21、および1MHzにおけるDF0.009を示し、また−55℃で−4.5%および125℃で4.8%の静電容量温度係数における変化を示した。
【0042】
実施例4(配合物D):配合物Dによる本発明の複合材料は、表1に示したように、実施例1のポリマー成分ブレンド45gを、チタン酸ストロンチウム(95μm粒子)33g、チタン酸バリウム22gおよび分散剤0.11gとブレンドすることにより形成した。
【0043】
配合物Dは、表2に示したように、DK8、および1MHzにおけるDF0.004を示し、また−55℃で−0.7%および125℃で0.2%の静電容量温度係数における変化を示した。
【0044】
実施例5(配合物E):配合物Eによる本発明の複合材料は、表1に示したように、実施例1のポリマー成分ブレンド30gを、チタン酸ストロンチウム(95μm粒子)42g、チタン酸バリウム28gおよび分散剤0.06gとブレンドすることにより形成した。
【0045】
配合物Eは、表2に示したように、DK12、および1MHzにおけるDF0.007を示し、また−55℃で−0.3%および125℃で−0.6%の静電容量温度係数における変化を示した。
【0046】
実施例6(配合物F):配合物Fによる本発明の複合材料は、表1に示したように、実施例1のポリマー成分ブレンド22gを、チタン酸ストロンチウム(95μm粒子)23.4g、チタン酸バリウム54.6gおよび分散剤0.11gとブレンドすることにより形成した。
【0047】
配合物Fは、表2に示したように、DK18、および1MHzにおけるDF0.008を示し、また−55℃で−2.4%および125℃で2.1%の静電容量温度係数における変化を示した。
【0048】
実施例7(配合物G):配合物Gによる本発明の複合材料は、表1に示したように、実施例1のポリマー成分ブレンド22gを、チタン酸ストロンチウム(95μm粒子)42.1g、チタン酸バリウム35.9gおよび分散剤0.08gとブレンドすることにより形成した。
【0049】
配合物Gは、表2に示したように、DK21、および1MHzにおけるDF0.005を示し、また−55℃で0.1%および125℃で−0.7%の静電容量温度係数における変化を示した。
【0050】
実施例8(配合物H):配合物Hによる本発明の複合材料は、表1に示したように、実施例1のポリマー成分ブレンド22gを、チタン酸ストロンチウム(95μm粒子)46.8g、チタン酸バリウム31.2gとブレンドすることにより形成した。
【0051】
配合物Hは、表2に示したように、DK22、および1MHzにおけるDF0.008を示し、また−55℃で−0.4%および125℃で0.2%の静電容量温度係数における変化を示した。
【0052】
実施例9(配合物I):配合物Iによる本発明の複合材料は、表1に示したように、実施例1のポリマー成分ブレンド22gを、チタン酸ストロンチウム(95μm粒子)54.6g、チタン酸バリウム23.4gおよび分散剤0.14gとブレンドすることにより形成した。
【0053】
配合物Iは、表2に示したように、DK21、および1MHzにおけるDF0.008を示し、また−55℃で−0.4%および125℃で0.2%の静電容量温度係数における変化を示した。
【0054】
実施例10(配合物J):配合物Jによる本発明の複合材料は、表1に示したように、実施例1のポリマー成分ブレンド20gを、チタン酸ストロンチウム(87μm粒子)48g、チタン酸バリウム32gおよび分散剤0.12gとブレンドすることにより形成した。
【0055】
配合物Jは、表2に示したように、DK25、および1MHzにおけるDF0.004を示し、また−55℃で0.3%および125℃で−0.4%の静電容量温度係数における変化を示した。
【0056】
実施例11(配合物K):配合物Kによる本発明の複合材料は、表1に示したように、実施例1のポリマー成分ブレンド20gを、チタン酸ストロンチウム(87μm粒子)43.2g、チタン酸バリウム36.8gおよび分散剤0.11gとブレンドすることにより形成した。
【0057】
配合物Kは、表2に示したように、DK27、および1MHzにおけるDF0.005を示し、また−55℃で−0.2%および125℃で0.1%の静電容量温度係数における変化を示した。
【0058】
本発明は、特に、好ましい実施形態を参照して示されかつ記述されているが、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、種々の変更および修正を行い得ることは当業者により容易に理解されるであろう。本特許請求範囲は、開示された実施形態、上記において考察された代替策、および全てのこれらとの同等物に及ぶと解釈されることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー成分と強誘電性セラミック粒子との混合物を含み、前記ポリマー成分が、前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で少なくとも1種のエポキシ含有ポリマーと、前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で、複数のエポキシ反応性基を有する少なくとも1種のポリマーとを含む複合材料であって、
約−55℃〜約125℃の範囲内にある温度変化に応じて、約−5%〜約+5%の静電容量温度係数の変化を示す複合材料。
【請求項2】
ポリマー成分と強誘電性セラミック粉末との混合物を含み、前記ポリマー成分が、前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で少なくとも1種のエポキシ含有ポリマーと、前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で、複数のエポキシ反応性基を有する少なくとも1種のポリマーとを含む複合材料であって、
前記強誘電性セラミック粉末が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、またはこれらの組合せを含み、
前記エポキシ含有ポリマーが、フェノールノボラックエポキシ、ビスフェノールAもしくはビスフェノールF由来の、脂肪族もしくは芳香族炭化水素主鎖を有するエポキシ、ブタジエン−アクリル変性エポキシ、またはこれらの組合せを含み、
複数のエポキシ反応性基を有する前記ポリマーが、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルブチラール、ポリエーテルスルホン、反応性ポリエステル、またはこれらの組合せを含み、
また、約−55℃〜約125℃の範囲内にある温度変化に応じて、約−5%〜約+5%の静電容量温度係数(TCC)の変化を示す複合材料。
【請求項3】
第一の導電性層と、第二の導電性層と、前記第一の導電性層および前記第二の導電性層の間に付着された請求項1に記載の複合材料の層とを備えるコンデンサ。
【請求項4】
a)第一の導電性層と、前記第一の導電性層上に請求項1に記載の複合材料の層とを備える第一の物品(article)、ならびに、
b)第二の導電性層と、前記第二の導電性層上に請求項1に記載の複合材料の層とを備える第二の物品、を備え、
前記第一および第二の物品が、それらの物品の前記複合材料の層が互いに接触しているように、互いに付着されているコンデンサ。
【請求項5】
請求項3に記載のコンデンサを備えるプリント回路板。
【請求項6】
コンデンサを形成する方法であって、
a)ポリマー成分および強誘電性セラミック粒子の混合物を含み、前記ポリマー成分が、前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で少なくとも1種のエポキシ含有ポリマー、および前記ポリマー成分の重量に対して約5重量%〜約95重量%の量で、複数のエポキシ反応性基を有する少なくとも1種のポリマーを含む複合材料であって、約−55℃〜約125℃の範囲内にある温度変化に応じて、約−5%〜約+5%の静電容量温度係数の変化を示す複合材料を提供するステップと、
b)前記複合材料の層を、第一の導電性層と第2の導電性層の間に付着させるステップと、
を含む方法。
【請求項7】
前記付着させるステップ(b)が、
i)前記第一の導電性層と、前記第一の導電性層上の前記複合材料の層とを備える第一の物品を形成するステップと、
ii)前記第二の導電性層と、前記第二の導電性層上の前記複合材料の層とを備える第二の物品を形成するステップと、
iii)前記第一の物品の前記複合材料層が前記第二の物品の前記複合材料層と接触しているように、前記第一の物品と前記第二の物品とを一緒に結合するステップと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップiii)が、前記第一の物品と前記第二の物品とを一緒に積層するステップ、および/または前記複合材料層を硬化させるステップとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記付着させるステップ(b)が、
i)前記複合材料の層を第一の導電性層上に適用するステップと、
ii)前記第一の導電性層上にある前記複合材料の層の表面上に、第二の導電性層を適用するステップと、
iii)場合によって、前記第一の導電性層と、前記複合材料の層と、前記第二の導電性層とを一緒に積層するステップ、および/または前記複合材料の層を硬化させるステップと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記付着させるステップ(b)が、
i)前記複合材料の層を第一の導電性層上に適用するステップと、次いで、
ii)前記複合材料の層を硬化させるステップと、次いで、
iii)スパッタリングにより、前記第一の導電性層が適用された面とは反対側の面にある前記複合材料の表面上に、第二の導電性層を形成するステップと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法により形成したコンデンサをプリント回路板中に組み込むステップを含む、プリント回路板形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−539285(P2010−539285A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524905(P2010−524905)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/073291
【国際公開番号】WO2009/035815
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(501330466)オークミツイ,インク., (4)
【Fターム(参考)】