薬液容器
【課題】従来とは異なる構成とすることで、使用者に対して注意を促して誤用が防止できる薬液容器の提供。
【解決手段】薬液容器1は、薬液2が収容される中空状の収容部3と、収容部3に首部4を介して連接される蓋部5とを備え、それらが板状のベース6に形成されている。首部4は、ベース6の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されている。首部4と蓋部5との間は、破断可能に連接されており、この連接部とベース6の左右両端辺との間が、ベース6の右端部を残して、線状の薄肉部14で接続されている。従って、摘み部15が、薄肉部14が形成されていないベース6の右端部を支点として、左側から上方へ引き上げられることで、摘み部15が薄肉部14に沿って切り離されると共に、蓋部5が首部4から破断されて開封される。
【解決手段】薬液容器1は、薬液2が収容される中空状の収容部3と、収容部3に首部4を介して連接される蓋部5とを備え、それらが板状のベース6に形成されている。首部4は、ベース6の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されている。首部4と蓋部5との間は、破断可能に連接されており、この連接部とベース6の左右両端辺との間が、ベース6の右端部を残して、線状の薄肉部14で接続されている。従って、摘み部15が、薄肉部14が形成されていないベース6の右端部を支点として、左側から上方へ引き上げられることで、摘み部15が薄肉部14に沿って切り離されると共に、蓋部5が首部4から破断されて開封される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に薬液が封入される使い捨ての薬液容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は先に、下記特許文献1に開示される薬液容器を提案している。この薬液容器では、容器本体(1)と摘み部(2)とが破断可能に連接されており、容器本体(1)に対して摘み部(2)をねじることで、容器本体(1)から摘み部(2)が切り離されて開封される。ここで、括弧書きの符号は、下記特許文献1中における符号である。
【0003】
通常、従来のねじって開封する薬液容器内には、点眼に用いられる薬液が封入されている場合が多い。従って、使用者は、点眼液とは異なる薬液が封入されている場合にも、薬液容器の構成から、点眼液が封入されていると勘違いしてしまうおそれがあり、誤用のおそれがあった。たとえば、従来の薬液容器では、ネブライザーに用いられる吸入液が封入されている場合であっても、点眼液が封入されていると勘違いして点眼してしまうおそれがあった。
【0004】
また、通常、薬液容器には、内部に封入された薬液の種類が表示されている。しかしながら、それでも、薬液容器の構成から、点眼液が封入されていると思い込んでしまうおそれがあり、誤用のおそれがあった。これは、従来のねじって開封する薬液容器内には、点眼液が封入されているものだというイメージが、使用者の中に強くあるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−83115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来とは異なる構成とすることで、使用者に対して注意を促して誤用が防止できる薬液容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、薬液が収容される中空状の収容部と、この収容部と連続される首部を介して前記収容部に連接される蓋部とが、板状のベースに形成されており、前記首部が前記ベースの左右方向中央部とずれた位置に配置され、前記首部と前記蓋部との間が破断可能に連接され、この連接部と前記ベースの左右両端辺との間が、前記ベースの内、前記首部が配置された側の一端部を残して、線状の薄肉部で接続されていることを特徴とする薬液容器である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、首部は、ベースの左右方向中央部から、左右方向一端側または他端側へずれた位置に配置される。また、首部と蓋部との間は、破断可能に連接され、この連接部とベースの左右両端辺との間は、線状の薄肉部で接続され、薄肉部は、ベースの内、首部が配置された側の一端部を残して形成されている。従って、使用者に対して、点眼液が封入された従来の薬液容器とは構成が異なることを認識させ、容器内に封入された薬液が、点眼液とは異なる種類の薬液であることを注意喚起することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記ベースは、前記薄肉部より上部が、前記首部と前記蓋部とを切り離す際の摘み部とされており、前記摘み部は、前記ベースの左右方向一端部を残して切り離された後、前記ベースの板面に対して倒された状態で位置決め可能とされたことを特徴とする請求項1に記載の薬液容器である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、切り離された摘み部を位置決め可能とすることで、薬液を滴下する際に、摘み部が邪魔にならない。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記摘み部は、左右方向他端側の端面が幅広に形成されており、左右方向一端側へ押し込まれて開封されることを特徴とする請求項2に記載の薬液容器である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、摘み部の左右方向他端側の端面を左右方向一端側へ指で押し込むことで、摘み部が左右方向一端部を支点として回動しつつ開封される。摘み部は、左右方向他端側の端面が幅広に形成されているため、前述した開封が容易に行える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の薬液容器によれば、従来とは異なる構成とすることで、使用者に対して注意を促して誤用を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の薬液容器の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の薬液容器の平面図である。
【図3】図1におけるIII−III断面図である。
【図4】図1の薬液容器の斜視図であり、開封した状態を示している。
【図5】本発明の薬液容器の変形例を示す正面図である。
【図6】図5の薬液容器の平面図である。
【図7】図5の薬液容器の縦断面図である。
【図8】図5の薬液容器の上部拡大斜視図であり、開封した状態を示している。
【図9】図5の薬液容器の上部拡大斜視図であり、摘み部が位置決めされた状態を示している。
【図10】本発明の薬液容器の別の変形例を示す一部を省略した図であり、(a)は正面図、(b)は開封した状態を示す正面図である。
【図11】図10の薬液容器の一部を省略した斜視図であり、摘み部が位置決めされた状態を示している。
【図12】本発明の薬液容器のさらに別の変形例を示す正面図であり、開封した後に摘み部を折り返した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1から図3は、本発明の薬液容器の一実施例を示す図であり、図1は正面図、図2は平面図、図3は図1におけるIII−III断面図である。また、図4は、本実施例の薬液容器の斜視図であり、開封した状態を示している。
【0016】
本実施例の薬液容器1は、薬液2が収容される中空状の収容部3と、収容部3と連続される首部4を介して収容部3と連接される蓋部5とを備え、それらが板状のベース6に形成されている。本実施例の薬液容器1は、透明とされ、上下長さが約70〜約90mm、左右幅が約11mmに形成されている。なお、薬液容器1は、上下長さが約60mm〜約120mm、左右幅が約10mm〜約30mmに形成されればよく、前述した大きさに限定されるものではない。
【0017】
本実施例の薬液容器1は、樹脂管(パリソン)がブロー成形により一体的に成形されたものであり、その内部に薬液が充填、密封されている。かかる薬液容器はいわゆるブロー・フィル・シールシステム(BFSシステム)と称される、容器の成形と薬液の充填、密封を同時に行なうシステムにより製造される。かかるBFSシステムでは、パリソンを金型で挟んだ状態で空気を吹き込んで金型壁面に樹脂を密着させることにより容器を成形する手段(本明細書では、かかる手段を「ダイレクトブロー成形」と呼ぶ)、または金型の各所に孔径0.3mm程度の細孔を設け、この細孔を通じて金型とパリソンの間の隙間を吸引して真空若しくは減圧状態にして金型壁面に樹脂を密着させることにより容器を成形する手段(本明細書では、かかる手段を「吸引成形」と呼ぶ)を単独で若しくは組み合わせることにより薬液容器が製造される。一般的には、大型〜中型の薬液容器を製造する場合には、ダイレクトブロー成形が主として用いられ、小型の薬液容器を製造する場合には、吸引成形が主として用いられる。
【0018】
本実施例の薬液容器1は、低密度ポリエチレンからなるパリソンが上述した吸引成形により一体的に成形されたものである。薬液容器1の原料樹脂は、通常の薬液容器に使用される熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではないが、成形の容易性、製造コスト等を考慮すると、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等を使用することが好ましい。また、これらの原料樹脂は単層でも多層でも使用することができる。
【0019】
収容部3は、上方へ開口した略楕円形の筒状に形成されている。収容部3の上端部は、テーパ状に絞られており、上方へ行くに従って縮径して形成されている。その際、正面視において、右側の傾斜辺7が、左側の傾斜辺8より傾斜が急に形成されている。これにより、収容部3の上端部開口は、収容部3の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されている。収容部3の底面は、下方へ膨出した緩やかな略球面状に形成されている。なお、収容部3は、薬液2の滴下の便宜を考慮して、薄肉で押圧変形可能に形成されることが好ましい。収容部3内に封入される薬液2は、例えば、ネブライザーに用いられる吸入液とされる。
【0020】
首部4は、略円筒状とされ、その軸線を上下方向に沿って配置されている。首部4の周側壁の上部は、径方向外側へ断面略三角形状に膨出して形成されている。これにより、首部4の周側壁の上端部は、径方向外側へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜部9とされている。首部4は、収容部3の上端部から上方へ突出するように、収容部3と連続している。この際、首部4の内穴は、収容部3の上端部開口を介して、収容部3と連通されている。従って、首部4は、収容部3の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されている。
【0021】
蓋部5は、下方へ開口した略短円筒状に形成されており、下端部には、径方向内側へ延出して円環状の水平部10が形成されている。蓋部5は、首部4の上端部開口を閉塞するように、首部4に連接されている。具体的には、蓋部5の水平部10の内周縁部と、首部4の傾斜部9の上端部とが連接されており、水平部10と傾斜部9とで断面略V字状の溝11が形成されている。この溝11の最深部は、その他の箇所と比較して十分に薄肉状に形成されている。そのため、溝11を構成する水平部10と傾斜部9とは、容易に切り離すことができる。すなわち、蓋部5と首部4との間は、破断可能に連接されている。
【0022】
ベース6は、上下方向が長手方向とされる略長方形の板状に形成されている。このベース6内に、前述した収容部3、首部4および蓋部5からなる容器部分が、ベース6から前方および後方へ膨出するように形成されている。この際、首部4は、ベース6の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されている。図示例では、前記容器部分は、ベース6の上下方向中央部より若干上部側に形成されている。ベース6は、容器部分よりも上部側と下部側の領域とが、それぞれ前後方向に厚く形成されている。本実施例では、それらの上部側の厚板部12および下部側の厚板部13は、中空状に形成されているが、中実状に形成してもよい。
【0023】
図示例では、厚板部12は、厚板部13よりも上下長さが短く形成されているが、これに限定されるものではない。たとえば、厚板部12の上下長さを長く形成すると共に、厚板部13の上下長さを短く形成して、図示例とは逆に、厚板部12を厚板部13よりも上下方向に長く形成してもよい。厚板部12を上下方向に長く形成することで、後述する摘み部が持ち易くなり、容器1を開封し易くなる。
【0024】
ベース6には、線状の薄肉部14,14が形成されており、その薄肉部14,14によって、ベース6の左右両端辺と、首部4と蓋部5との連接部との間が、ベース6の内、首部4が配置された側の一端部を残して接続されている。本実施例では、一方の薄肉部14は、ベース6の左端辺における首部4よりも下方の位置から、首部4の下端部にかけて直線状に形成され、そこからは、首部4の外周壁に沿って溝11の最深部にかけて形成されている。他方の薄肉部14は、ベース6の右端辺における首部4の下端部と略同一高さ位置から、首部4の外周壁に沿って溝11の最深部にかけて形成されている。この際、他方の薄肉部14は、ベース6の右端部を残して形成されている。なお、薄肉部14の幅は、通常0.1〜1.5mmの範囲が好ましい。
【0025】
ベース6は、薄肉部14より上部が、首部4と蓋部5とを切り離す際の摘み部15とされている。そのため、摘み部15は、薄肉部14に沿って切り離すことができる。この摘み部15は、前述した上部側の厚板部12を有している。図3に示すとおり、厚板部12は、その前面および後面が、上下方向中央部が凹んだ緩やかな縦断面略円弧状に形成されているため、指で摘まみ易い。なお、摘み部15の下端部の前面および後面には、突起物16が形成されている。この突起物16は、成形時に薄肉部14を形成するために、余剰した樹脂を逃がした結果形成された突起状の肉溜まりである。
【0026】
以上のような構成の薬液容器1は、摘み部15が、薄肉部14が形成されていないベース6の右端部を支点として、左側から上方へ引き上げられることで、摘み部15が薄肉部14に沿って切り離されると共に、蓋部5が首部4から破断されて開封される。すなわち、摘み部15の厚板部12を摘まんで、図1における時計方向へ回動させることで、容器1を開封することができる。前述したように、摘み部15の厚板部12を上下方向に長く形成することで、厚板部12が摘まみ易くなり、摘み部15を回動し易くなる。なお、摘み部15の時計方向への回動は、厚板部12を右側に押し込んでなすこともできる。
【0027】
容器1を開封する際、薬液2の収容部3を持って開封すると、収容部3を不意に押圧してしまい、薬液2が飛び出るおそれがある。しかしながら、本実施例では、ベース6の下部側に厚板部13が形成されており、この厚板部13を持って開封することで、薬液2が不意に飛び出るのを防止することができる。
【0028】
このようにして、本実施例の薬液容器1は、ねじって開封する従来の容器とは、開封するための構成が全く異なっている。言い換えれば、本実施例の薬液容器1は、首部4がベース6の左右方向中央部から右側にずれて配置されると共に、摘み部15の右端部が切り離せないようにされているため、従来の容器のように、ねじ切って開封することができない。従って、本実施例の薬液容器1は、使用者に対して、従来の容器とは異なるものであるという印象を与えることができる。
【0029】
通常、ねじ切って開封する従来の容器は、点眼に用いられる薬液の容器として使用されている。従って、本実施例における吸入液が封入されている場合にも、使用者は、点眼液が封入されていると勘違いしてしまうおそれがあり、点眼してしまうおそれがあった。しかしながら、本実施例の薬液容器1は、従来の容器とは開封する構成が全く異なるため、使用者に対して、内部に封入された薬液2を確認するように注意を促して、誤用を防止することができる。
【0030】
図5から図7は、本発明の薬液容器の変形例を示す図であり、図5は正面図、図6は平面図、図7は縦断面図である。また、図8および図9は、本変形例の薬液容器の上部拡大斜視図であり、図8は開封した状態、図9は摘み部が位置決めされた状態を示している。本変形例の薬液容器1も、基本的には前記実施例と同様の構成である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0031】
本変形例の薬液容器1では、摘み部15の厚板部12の左方側端面17が、幅広に形成されている。具体的には、摘み部15の厚板部12の前面および後面が、右端部から左方へ行くに従って外方へ傾斜して形成されている。厚板部12の左方側端面17は、緩やかな傾斜面とされている。具体的には、厚板部12の左方側端面17は、前後方向中央部から前後方向外側へ行くに従って、緩やかに右方へ傾斜して形成されている。これにより、厚板部12の左方側端面17は、平面視において、緩やかな三角形状に形成されている。
【0032】
従って、一方の手で持った状態で、もう一方の手で摘み部15の厚板部12の左方側端面17を右側へ押し込んで、図5における時計方向へ回動させることで、容器1を開封することができる。このようにして、本変形例では、摘み部15の厚板部12の左方側端面17が幅広に形成されているため、左方側端面17を押し込んで開封し易い。なお、摘み部15の時計方向への回動は、摘み部15の厚板部12を摘まんで、左側から上方へ引き上げることでなすこともできるのはもちろんである。
【0033】
本変形例の薬液容器1では、収容部3の前方側上端部に、正面視略三角形状の凹部18が形成されている。図8に示すように、凹部18は、段差状に形成され、略矩形状の底面19と、底面19の右側に形成される略三角形状の立上り面20と、底面19の後側に形成される略三角形状の立上り面21とから構成されている。そして、ベース6の右端部を残して切り離された摘み部15は、ベース6の前方側へねじられ、左側の下端部が凹部18の右側の立上り面20に接触して外側へ弾性変形しつつ、凹部18内に押し込まれて固定される。このようにして、摘み部15は、ベース6の板面に対して倒された状態で位置決めすることができる。これにより、薬液2を滴下する際に、摘み部15が邪魔にならず、滴下し易い。
【0034】
図10は、本発明の薬液容器の別の変形例を示す一部を省略した図であり、(a)は正面図、(b)は開封した状態を示す正面図である。また、図11は、図10の薬液容器の一部を省略した斜視図であり、摘み部が位置決めされた状態を示している。本変形例の薬液容器1も、基本的には前記実施例と同様の構成である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0035】
本変形例の薬液容器1では、図10(a)に示すように、一方の薄肉部14は、溝11の左側の最深部から首部4の上下方向略中央部まで、首部4の外周壁に沿って形成され、そこからは、ベース6の左端辺にかけて略S字状に形成されている。具体的には、首部4の上下方向略中央部からベース6の左端辺に近づくように下方へ傾斜した後、下方へ若干延出し、そこから収容部3に近づくように下方へ傾斜した後、ベース6の左端辺に近づくように下方へ傾斜し、さらに、そこからベース6の左端辺にかけて上方へ傾斜して形成されている。
【0036】
他方の薄肉部14は、溝11の右側の最深部から首部4の上下方向略中央部まで、首部4の外周壁に沿って形成され、そこからは、首部4から離れるように下方へ若干傾斜した後、下方へ延出して形成されている。この下方への延出部22は、首部4の右側のベース6において、左右方向略中央部に形成されている。このようにして、溝11の最深部とベース6の右端辺との間が、ベース6の右端部を残して、他方の薄肉部14で接続されている。
【0037】
ところで、摘み部15の左右の下端部の前面および後面には、突起物16が形成されている。この突起物16は、成形時に薄肉部14を形成するために、余剰した樹脂を逃がした結果形成された突起状の肉溜まりである。
【0038】
本変形例の薬液容器1によれば、薄肉部14が形成されていないベース6の右端部を支点として、摘み部15を図10における時計方向へ回動させることで、摘み部15が薄肉部14に沿って切り離されると共に、蓋部5が首部4から破断されて開封される。これにより、収容部3の左側のベース6に、左斜め上方へ開口した凹部23が形成される。そして、切り離された摘み部15は、図11に示すように、ベース6の前方側へねじられた状態で、左側の下端部24が凹部23にはめ込まれて、ベース6に固定される。
【0039】
このようにして、開封する際に、一方の薄肉部14に沿って切り離されることで、摘み部15の左側下端部に係合部24が形成される一方、ベース6に被係合部(凹部)23が形成される。そして、摘み部15がベース6の板面に対して倒された状態で、係合部24と被係合部23とが係合されることで、摘み部15が位置決めされる。
【0040】
具体的には、本変形例では、係合部24は、摘み部15の左側下端部に、右方へ略三角形状に突出して形成される。この係合部24は、右方へ行くに従って下方へ傾斜した傾斜部25を有している。一方、被係合部23は、前述したように、左斜め上方へ開口した凹形状に形成される。この被係合部23は、左方へ行くに従って上方へ傾斜した傾斜部26を有している。従って、開封後、摘み部15がベース6の板面に対して倒された状態で、係合部24の傾斜部25と被係合部23の傾斜部26とが接触することで、係合部24と被係合部23とが係合される。このようにして、摘み部15は、ベース6の板面に対して倒された状態で位置決めすることができる。これにより、薬液2を滴下する際に、摘み部15が邪魔にならず、滴下し易い。
【0041】
さらに、本変形例では、一方の薄肉部14に沿って切り離されることで、摘み部15に被係合部23への係合部がもう一つ形成される。この係合部27は、蓋部5と前記係合部24との間に、摘み部15の内側縁部から右方へ略三角形状に突出して形成される。係合部27は、右方へ行くに従って下方へ傾斜した傾斜部28を有している。これは、首部4の上部において、前記傾斜部9よりも下側が、傾斜部9の下端部から下方へ行くに従って先細りとなる略逆円錐台形状に形成されるためである。従って、開封後、摘み部15がベース6の板面に対して倒された状態で、係合部27の傾斜部28と被係合部23の傾斜部26とが接触することで、係合部27と被係合部23とが係合される。このようにして、摘み部15は、ベース6の板面に対して倒された状態で位置決めすることができる。
【0042】
本発明の薬液容器は、前記実施例や前記変形例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例において、摘み部15の厚板部12の左方側端面を幅広に形成してもよい。この場合、片手で持った状態で、厚板部12の左方側端面を右側へ指で押し込んで、図1における時計方向へ回動させることで、容器1を開封することができる。そして、そのまま片手で薬液2を滴下することができる。すなわち、容器1の開封から薬液2の滴下までを片手で容易に行うことができる。また、前記実施例において、収容部3の前方側上端部に凹部18を形成して、摘み部15を位置決め可能としてもよい。
【0043】
また、前記実施例では、首部4は、収容部3の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されると共に、ベース6の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されたが、これとは逆に、収容部3の左右方向中央部から左側へずれた位置に配置されると共に、ベース6の左右方向中央部から左側へずれた位置に配置してもよい。この場合、ベース6の左右両端辺と、首部4と蓋部5との連接部との間が、ベース6の左端部を残して、線状の薄肉部14で接続されている。従って、摘み部15を図1における反時計方向へ回動させることで、容器1を開封することができる。
【0044】
図5に示す変形例においても、同様にして、摘み部15を図5における反時計方向へ回動させることで、容器1を開封できる構成としてもよい。この場合、摘み部15の厚板部12の右方側端面が、幅広に形成される。これにより、厚板部12の右方側端面を左側へ指で押し込んで、図5における反時計方向へ回動させることで、容器1を開封することができる。また、図10に示す変形例においても、同様にして、摘み部15を図10における反時計方向へ回動させることで、容器1を開封できる構成としてもよい。
【0045】
図5に示す変形例では、凹部18は、収容部3の前方側上端部に形成されたが、収容部3の後方側上端部に形成してもよい。この場合、摘み部15は、ベース6の右端部を残して切り離された後、ベース6の板面に対して後方側へ倒された状態で、位置決めすることができる。また、図10に示す変形例において、ベース6の板面に対して後方側へ倒した状態で、位置決めしてもよい。
【0046】
前記実施例や前記変形例の薬液容器1は、線状の薄肉部を介して、左右方向に複数連接することができる。このようにすれば、多数の薬液容器1を同時に製造することができ、また携帯にも都合が良い。薬液容器1を複数連接する場合には、それぞれの薬液容器1を同一寸法に形成して、薬液容器1の左右側面に破断可能な薄肉部を設けるようにすると、全体が矩形となり、機能性、デザイン性に優れたものとすることができる。
【0047】
図12は、本発明の薬液容器のさらに別の変形例を示す正面図であり、開封した後に摘み部を折り返した状態を示している。この図に示すように、本変形例の薬液容器1では、ベース6における収容部3よりも下側の領域よりも、摘み部15が長く形成されており、摘み部15は、開封後に折り返されて、収容部3の右側に配置された状態において、薬液容器1の下端部よりも下方へ延出する長さに形成されている。従って、摘み部15が短い場合、摘み部15が収容部3の右側に配置された状態を維持できるように持ちながら、薬液を滴下しにくいが、本変形例によれば、摘み部15が薬液容器1の下端部よりも下方へ延出されるので、前記状態を維持しながら滴下し易い。その他の構成は、図10に示す変形例と同様のため、説明は省略する。
【0048】
本変形例では、摘み部15は、収容部3の右側に配置されるよう折り返されたが、摘み部15が収容部3と重なるように折り返してもよい。この場合においても、摘み部15が薬液容器1の下端部よりも下方へ延出されるので、摘み部15が収容部3に重ねられた状態を維持できるように持ちながら、薬液を滴下し易い。ところで、本変形例では、摘み部15は、開封後に折り返された際、薬液容器1の下端部よりも下方へ延出する長さとされたが、これに限定されるものではなく、収容部3の下端部より下方へ延出する長さであればよい。
【0049】
また、前記実施例や前記変形例では、薬液容器1の首部4は、略円筒状とされ、周側壁の上部が断面略三角形状に膨出して形成されたが、この断面略三角形状部のみとしてもよい。すなわち、首部4は、収容部3の上端部から上方へ行くに従って拡径した後、上方へ行くに従って縮径した形状とされる。このように構成することで、収容部3の上端部における液溜まりをより減らすことができ、開封時の薬液の飛び散りをより効果的に防止することができる。また、収容部3は、前記実施例や前記変形例の構成に限定されるものではなく、適宜変更可能とされる。
【0050】
さらに、前記実施例や前記変形例のように、薬液容器1は、摘み部15を回動させることで開封することが好ましいが、これに限定されるものではなく、たとえば、摘み部15をねじることによって開封することもできる。この場合においても、薄肉部14が形成されない箇所があるため、摘み部15がねじ切れることがない。
【符号の説明】
【0051】
1 薬液容器
2 薬液
3 収容部
4 首部
5 蓋部
6 ベース
14 薄肉部
15 摘み部
17 端面
18 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に薬液が封入される使い捨ての薬液容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は先に、下記特許文献1に開示される薬液容器を提案している。この薬液容器では、容器本体(1)と摘み部(2)とが破断可能に連接されており、容器本体(1)に対して摘み部(2)をねじることで、容器本体(1)から摘み部(2)が切り離されて開封される。ここで、括弧書きの符号は、下記特許文献1中における符号である。
【0003】
通常、従来のねじって開封する薬液容器内には、点眼に用いられる薬液が封入されている場合が多い。従って、使用者は、点眼液とは異なる薬液が封入されている場合にも、薬液容器の構成から、点眼液が封入されていると勘違いしてしまうおそれがあり、誤用のおそれがあった。たとえば、従来の薬液容器では、ネブライザーに用いられる吸入液が封入されている場合であっても、点眼液が封入されていると勘違いして点眼してしまうおそれがあった。
【0004】
また、通常、薬液容器には、内部に封入された薬液の種類が表示されている。しかしながら、それでも、薬液容器の構成から、点眼液が封入されていると思い込んでしまうおそれがあり、誤用のおそれがあった。これは、従来のねじって開封する薬液容器内には、点眼液が封入されているものだというイメージが、使用者の中に強くあるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−83115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来とは異なる構成とすることで、使用者に対して注意を促して誤用が防止できる薬液容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、薬液が収容される中空状の収容部と、この収容部と連続される首部を介して前記収容部に連接される蓋部とが、板状のベースに形成されており、前記首部が前記ベースの左右方向中央部とずれた位置に配置され、前記首部と前記蓋部との間が破断可能に連接され、この連接部と前記ベースの左右両端辺との間が、前記ベースの内、前記首部が配置された側の一端部を残して、線状の薄肉部で接続されていることを特徴とする薬液容器である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、首部は、ベースの左右方向中央部から、左右方向一端側または他端側へずれた位置に配置される。また、首部と蓋部との間は、破断可能に連接され、この連接部とベースの左右両端辺との間は、線状の薄肉部で接続され、薄肉部は、ベースの内、首部が配置された側の一端部を残して形成されている。従って、使用者に対して、点眼液が封入された従来の薬液容器とは構成が異なることを認識させ、容器内に封入された薬液が、点眼液とは異なる種類の薬液であることを注意喚起することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記ベースは、前記薄肉部より上部が、前記首部と前記蓋部とを切り離す際の摘み部とされており、前記摘み部は、前記ベースの左右方向一端部を残して切り離された後、前記ベースの板面に対して倒された状態で位置決め可能とされたことを特徴とする請求項1に記載の薬液容器である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、切り離された摘み部を位置決め可能とすることで、薬液を滴下する際に、摘み部が邪魔にならない。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記摘み部は、左右方向他端側の端面が幅広に形成されており、左右方向一端側へ押し込まれて開封されることを特徴とする請求項2に記載の薬液容器である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、摘み部の左右方向他端側の端面を左右方向一端側へ指で押し込むことで、摘み部が左右方向一端部を支点として回動しつつ開封される。摘み部は、左右方向他端側の端面が幅広に形成されているため、前述した開封が容易に行える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の薬液容器によれば、従来とは異なる構成とすることで、使用者に対して注意を促して誤用を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の薬液容器の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の薬液容器の平面図である。
【図3】図1におけるIII−III断面図である。
【図4】図1の薬液容器の斜視図であり、開封した状態を示している。
【図5】本発明の薬液容器の変形例を示す正面図である。
【図6】図5の薬液容器の平面図である。
【図7】図5の薬液容器の縦断面図である。
【図8】図5の薬液容器の上部拡大斜視図であり、開封した状態を示している。
【図9】図5の薬液容器の上部拡大斜視図であり、摘み部が位置決めされた状態を示している。
【図10】本発明の薬液容器の別の変形例を示す一部を省略した図であり、(a)は正面図、(b)は開封した状態を示す正面図である。
【図11】図10の薬液容器の一部を省略した斜視図であり、摘み部が位置決めされた状態を示している。
【図12】本発明の薬液容器のさらに別の変形例を示す正面図であり、開封した後に摘み部を折り返した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1から図3は、本発明の薬液容器の一実施例を示す図であり、図1は正面図、図2は平面図、図3は図1におけるIII−III断面図である。また、図4は、本実施例の薬液容器の斜視図であり、開封した状態を示している。
【0016】
本実施例の薬液容器1は、薬液2が収容される中空状の収容部3と、収容部3と連続される首部4を介して収容部3と連接される蓋部5とを備え、それらが板状のベース6に形成されている。本実施例の薬液容器1は、透明とされ、上下長さが約70〜約90mm、左右幅が約11mmに形成されている。なお、薬液容器1は、上下長さが約60mm〜約120mm、左右幅が約10mm〜約30mmに形成されればよく、前述した大きさに限定されるものではない。
【0017】
本実施例の薬液容器1は、樹脂管(パリソン)がブロー成形により一体的に成形されたものであり、その内部に薬液が充填、密封されている。かかる薬液容器はいわゆるブロー・フィル・シールシステム(BFSシステム)と称される、容器の成形と薬液の充填、密封を同時に行なうシステムにより製造される。かかるBFSシステムでは、パリソンを金型で挟んだ状態で空気を吹き込んで金型壁面に樹脂を密着させることにより容器を成形する手段(本明細書では、かかる手段を「ダイレクトブロー成形」と呼ぶ)、または金型の各所に孔径0.3mm程度の細孔を設け、この細孔を通じて金型とパリソンの間の隙間を吸引して真空若しくは減圧状態にして金型壁面に樹脂を密着させることにより容器を成形する手段(本明細書では、かかる手段を「吸引成形」と呼ぶ)を単独で若しくは組み合わせることにより薬液容器が製造される。一般的には、大型〜中型の薬液容器を製造する場合には、ダイレクトブロー成形が主として用いられ、小型の薬液容器を製造する場合には、吸引成形が主として用いられる。
【0018】
本実施例の薬液容器1は、低密度ポリエチレンからなるパリソンが上述した吸引成形により一体的に成形されたものである。薬液容器1の原料樹脂は、通常の薬液容器に使用される熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではないが、成形の容易性、製造コスト等を考慮すると、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等を使用することが好ましい。また、これらの原料樹脂は単層でも多層でも使用することができる。
【0019】
収容部3は、上方へ開口した略楕円形の筒状に形成されている。収容部3の上端部は、テーパ状に絞られており、上方へ行くに従って縮径して形成されている。その際、正面視において、右側の傾斜辺7が、左側の傾斜辺8より傾斜が急に形成されている。これにより、収容部3の上端部開口は、収容部3の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されている。収容部3の底面は、下方へ膨出した緩やかな略球面状に形成されている。なお、収容部3は、薬液2の滴下の便宜を考慮して、薄肉で押圧変形可能に形成されることが好ましい。収容部3内に封入される薬液2は、例えば、ネブライザーに用いられる吸入液とされる。
【0020】
首部4は、略円筒状とされ、その軸線を上下方向に沿って配置されている。首部4の周側壁の上部は、径方向外側へ断面略三角形状に膨出して形成されている。これにより、首部4の周側壁の上端部は、径方向外側へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜部9とされている。首部4は、収容部3の上端部から上方へ突出するように、収容部3と連続している。この際、首部4の内穴は、収容部3の上端部開口を介して、収容部3と連通されている。従って、首部4は、収容部3の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されている。
【0021】
蓋部5は、下方へ開口した略短円筒状に形成されており、下端部には、径方向内側へ延出して円環状の水平部10が形成されている。蓋部5は、首部4の上端部開口を閉塞するように、首部4に連接されている。具体的には、蓋部5の水平部10の内周縁部と、首部4の傾斜部9の上端部とが連接されており、水平部10と傾斜部9とで断面略V字状の溝11が形成されている。この溝11の最深部は、その他の箇所と比較して十分に薄肉状に形成されている。そのため、溝11を構成する水平部10と傾斜部9とは、容易に切り離すことができる。すなわち、蓋部5と首部4との間は、破断可能に連接されている。
【0022】
ベース6は、上下方向が長手方向とされる略長方形の板状に形成されている。このベース6内に、前述した収容部3、首部4および蓋部5からなる容器部分が、ベース6から前方および後方へ膨出するように形成されている。この際、首部4は、ベース6の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されている。図示例では、前記容器部分は、ベース6の上下方向中央部より若干上部側に形成されている。ベース6は、容器部分よりも上部側と下部側の領域とが、それぞれ前後方向に厚く形成されている。本実施例では、それらの上部側の厚板部12および下部側の厚板部13は、中空状に形成されているが、中実状に形成してもよい。
【0023】
図示例では、厚板部12は、厚板部13よりも上下長さが短く形成されているが、これに限定されるものではない。たとえば、厚板部12の上下長さを長く形成すると共に、厚板部13の上下長さを短く形成して、図示例とは逆に、厚板部12を厚板部13よりも上下方向に長く形成してもよい。厚板部12を上下方向に長く形成することで、後述する摘み部が持ち易くなり、容器1を開封し易くなる。
【0024】
ベース6には、線状の薄肉部14,14が形成されており、その薄肉部14,14によって、ベース6の左右両端辺と、首部4と蓋部5との連接部との間が、ベース6の内、首部4が配置された側の一端部を残して接続されている。本実施例では、一方の薄肉部14は、ベース6の左端辺における首部4よりも下方の位置から、首部4の下端部にかけて直線状に形成され、そこからは、首部4の外周壁に沿って溝11の最深部にかけて形成されている。他方の薄肉部14は、ベース6の右端辺における首部4の下端部と略同一高さ位置から、首部4の外周壁に沿って溝11の最深部にかけて形成されている。この際、他方の薄肉部14は、ベース6の右端部を残して形成されている。なお、薄肉部14の幅は、通常0.1〜1.5mmの範囲が好ましい。
【0025】
ベース6は、薄肉部14より上部が、首部4と蓋部5とを切り離す際の摘み部15とされている。そのため、摘み部15は、薄肉部14に沿って切り離すことができる。この摘み部15は、前述した上部側の厚板部12を有している。図3に示すとおり、厚板部12は、その前面および後面が、上下方向中央部が凹んだ緩やかな縦断面略円弧状に形成されているため、指で摘まみ易い。なお、摘み部15の下端部の前面および後面には、突起物16が形成されている。この突起物16は、成形時に薄肉部14を形成するために、余剰した樹脂を逃がした結果形成された突起状の肉溜まりである。
【0026】
以上のような構成の薬液容器1は、摘み部15が、薄肉部14が形成されていないベース6の右端部を支点として、左側から上方へ引き上げられることで、摘み部15が薄肉部14に沿って切り離されると共に、蓋部5が首部4から破断されて開封される。すなわち、摘み部15の厚板部12を摘まんで、図1における時計方向へ回動させることで、容器1を開封することができる。前述したように、摘み部15の厚板部12を上下方向に長く形成することで、厚板部12が摘まみ易くなり、摘み部15を回動し易くなる。なお、摘み部15の時計方向への回動は、厚板部12を右側に押し込んでなすこともできる。
【0027】
容器1を開封する際、薬液2の収容部3を持って開封すると、収容部3を不意に押圧してしまい、薬液2が飛び出るおそれがある。しかしながら、本実施例では、ベース6の下部側に厚板部13が形成されており、この厚板部13を持って開封することで、薬液2が不意に飛び出るのを防止することができる。
【0028】
このようにして、本実施例の薬液容器1は、ねじって開封する従来の容器とは、開封するための構成が全く異なっている。言い換えれば、本実施例の薬液容器1は、首部4がベース6の左右方向中央部から右側にずれて配置されると共に、摘み部15の右端部が切り離せないようにされているため、従来の容器のように、ねじ切って開封することができない。従って、本実施例の薬液容器1は、使用者に対して、従来の容器とは異なるものであるという印象を与えることができる。
【0029】
通常、ねじ切って開封する従来の容器は、点眼に用いられる薬液の容器として使用されている。従って、本実施例における吸入液が封入されている場合にも、使用者は、点眼液が封入されていると勘違いしてしまうおそれがあり、点眼してしまうおそれがあった。しかしながら、本実施例の薬液容器1は、従来の容器とは開封する構成が全く異なるため、使用者に対して、内部に封入された薬液2を確認するように注意を促して、誤用を防止することができる。
【0030】
図5から図7は、本発明の薬液容器の変形例を示す図であり、図5は正面図、図6は平面図、図7は縦断面図である。また、図8および図9は、本変形例の薬液容器の上部拡大斜視図であり、図8は開封した状態、図9は摘み部が位置決めされた状態を示している。本変形例の薬液容器1も、基本的には前記実施例と同様の構成である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0031】
本変形例の薬液容器1では、摘み部15の厚板部12の左方側端面17が、幅広に形成されている。具体的には、摘み部15の厚板部12の前面および後面が、右端部から左方へ行くに従って外方へ傾斜して形成されている。厚板部12の左方側端面17は、緩やかな傾斜面とされている。具体的には、厚板部12の左方側端面17は、前後方向中央部から前後方向外側へ行くに従って、緩やかに右方へ傾斜して形成されている。これにより、厚板部12の左方側端面17は、平面視において、緩やかな三角形状に形成されている。
【0032】
従って、一方の手で持った状態で、もう一方の手で摘み部15の厚板部12の左方側端面17を右側へ押し込んで、図5における時計方向へ回動させることで、容器1を開封することができる。このようにして、本変形例では、摘み部15の厚板部12の左方側端面17が幅広に形成されているため、左方側端面17を押し込んで開封し易い。なお、摘み部15の時計方向への回動は、摘み部15の厚板部12を摘まんで、左側から上方へ引き上げることでなすこともできるのはもちろんである。
【0033】
本変形例の薬液容器1では、収容部3の前方側上端部に、正面視略三角形状の凹部18が形成されている。図8に示すように、凹部18は、段差状に形成され、略矩形状の底面19と、底面19の右側に形成される略三角形状の立上り面20と、底面19の後側に形成される略三角形状の立上り面21とから構成されている。そして、ベース6の右端部を残して切り離された摘み部15は、ベース6の前方側へねじられ、左側の下端部が凹部18の右側の立上り面20に接触して外側へ弾性変形しつつ、凹部18内に押し込まれて固定される。このようにして、摘み部15は、ベース6の板面に対して倒された状態で位置決めすることができる。これにより、薬液2を滴下する際に、摘み部15が邪魔にならず、滴下し易い。
【0034】
図10は、本発明の薬液容器の別の変形例を示す一部を省略した図であり、(a)は正面図、(b)は開封した状態を示す正面図である。また、図11は、図10の薬液容器の一部を省略した斜視図であり、摘み部が位置決めされた状態を示している。本変形例の薬液容器1も、基本的には前記実施例と同様の構成である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0035】
本変形例の薬液容器1では、図10(a)に示すように、一方の薄肉部14は、溝11の左側の最深部から首部4の上下方向略中央部まで、首部4の外周壁に沿って形成され、そこからは、ベース6の左端辺にかけて略S字状に形成されている。具体的には、首部4の上下方向略中央部からベース6の左端辺に近づくように下方へ傾斜した後、下方へ若干延出し、そこから収容部3に近づくように下方へ傾斜した後、ベース6の左端辺に近づくように下方へ傾斜し、さらに、そこからベース6の左端辺にかけて上方へ傾斜して形成されている。
【0036】
他方の薄肉部14は、溝11の右側の最深部から首部4の上下方向略中央部まで、首部4の外周壁に沿って形成され、そこからは、首部4から離れるように下方へ若干傾斜した後、下方へ延出して形成されている。この下方への延出部22は、首部4の右側のベース6において、左右方向略中央部に形成されている。このようにして、溝11の最深部とベース6の右端辺との間が、ベース6の右端部を残して、他方の薄肉部14で接続されている。
【0037】
ところで、摘み部15の左右の下端部の前面および後面には、突起物16が形成されている。この突起物16は、成形時に薄肉部14を形成するために、余剰した樹脂を逃がした結果形成された突起状の肉溜まりである。
【0038】
本変形例の薬液容器1によれば、薄肉部14が形成されていないベース6の右端部を支点として、摘み部15を図10における時計方向へ回動させることで、摘み部15が薄肉部14に沿って切り離されると共に、蓋部5が首部4から破断されて開封される。これにより、収容部3の左側のベース6に、左斜め上方へ開口した凹部23が形成される。そして、切り離された摘み部15は、図11に示すように、ベース6の前方側へねじられた状態で、左側の下端部24が凹部23にはめ込まれて、ベース6に固定される。
【0039】
このようにして、開封する際に、一方の薄肉部14に沿って切り離されることで、摘み部15の左側下端部に係合部24が形成される一方、ベース6に被係合部(凹部)23が形成される。そして、摘み部15がベース6の板面に対して倒された状態で、係合部24と被係合部23とが係合されることで、摘み部15が位置決めされる。
【0040】
具体的には、本変形例では、係合部24は、摘み部15の左側下端部に、右方へ略三角形状に突出して形成される。この係合部24は、右方へ行くに従って下方へ傾斜した傾斜部25を有している。一方、被係合部23は、前述したように、左斜め上方へ開口した凹形状に形成される。この被係合部23は、左方へ行くに従って上方へ傾斜した傾斜部26を有している。従って、開封後、摘み部15がベース6の板面に対して倒された状態で、係合部24の傾斜部25と被係合部23の傾斜部26とが接触することで、係合部24と被係合部23とが係合される。このようにして、摘み部15は、ベース6の板面に対して倒された状態で位置決めすることができる。これにより、薬液2を滴下する際に、摘み部15が邪魔にならず、滴下し易い。
【0041】
さらに、本変形例では、一方の薄肉部14に沿って切り離されることで、摘み部15に被係合部23への係合部がもう一つ形成される。この係合部27は、蓋部5と前記係合部24との間に、摘み部15の内側縁部から右方へ略三角形状に突出して形成される。係合部27は、右方へ行くに従って下方へ傾斜した傾斜部28を有している。これは、首部4の上部において、前記傾斜部9よりも下側が、傾斜部9の下端部から下方へ行くに従って先細りとなる略逆円錐台形状に形成されるためである。従って、開封後、摘み部15がベース6の板面に対して倒された状態で、係合部27の傾斜部28と被係合部23の傾斜部26とが接触することで、係合部27と被係合部23とが係合される。このようにして、摘み部15は、ベース6の板面に対して倒された状態で位置決めすることができる。
【0042】
本発明の薬液容器は、前記実施例や前記変形例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例において、摘み部15の厚板部12の左方側端面を幅広に形成してもよい。この場合、片手で持った状態で、厚板部12の左方側端面を右側へ指で押し込んで、図1における時計方向へ回動させることで、容器1を開封することができる。そして、そのまま片手で薬液2を滴下することができる。すなわち、容器1の開封から薬液2の滴下までを片手で容易に行うことができる。また、前記実施例において、収容部3の前方側上端部に凹部18を形成して、摘み部15を位置決め可能としてもよい。
【0043】
また、前記実施例では、首部4は、収容部3の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されると共に、ベース6の左右方向中央部から右側へずれた位置に配置されたが、これとは逆に、収容部3の左右方向中央部から左側へずれた位置に配置されると共に、ベース6の左右方向中央部から左側へずれた位置に配置してもよい。この場合、ベース6の左右両端辺と、首部4と蓋部5との連接部との間が、ベース6の左端部を残して、線状の薄肉部14で接続されている。従って、摘み部15を図1における反時計方向へ回動させることで、容器1を開封することができる。
【0044】
図5に示す変形例においても、同様にして、摘み部15を図5における反時計方向へ回動させることで、容器1を開封できる構成としてもよい。この場合、摘み部15の厚板部12の右方側端面が、幅広に形成される。これにより、厚板部12の右方側端面を左側へ指で押し込んで、図5における反時計方向へ回動させることで、容器1を開封することができる。また、図10に示す変形例においても、同様にして、摘み部15を図10における反時計方向へ回動させることで、容器1を開封できる構成としてもよい。
【0045】
図5に示す変形例では、凹部18は、収容部3の前方側上端部に形成されたが、収容部3の後方側上端部に形成してもよい。この場合、摘み部15は、ベース6の右端部を残して切り離された後、ベース6の板面に対して後方側へ倒された状態で、位置決めすることができる。また、図10に示す変形例において、ベース6の板面に対して後方側へ倒した状態で、位置決めしてもよい。
【0046】
前記実施例や前記変形例の薬液容器1は、線状の薄肉部を介して、左右方向に複数連接することができる。このようにすれば、多数の薬液容器1を同時に製造することができ、また携帯にも都合が良い。薬液容器1を複数連接する場合には、それぞれの薬液容器1を同一寸法に形成して、薬液容器1の左右側面に破断可能な薄肉部を設けるようにすると、全体が矩形となり、機能性、デザイン性に優れたものとすることができる。
【0047】
図12は、本発明の薬液容器のさらに別の変形例を示す正面図であり、開封した後に摘み部を折り返した状態を示している。この図に示すように、本変形例の薬液容器1では、ベース6における収容部3よりも下側の領域よりも、摘み部15が長く形成されており、摘み部15は、開封後に折り返されて、収容部3の右側に配置された状態において、薬液容器1の下端部よりも下方へ延出する長さに形成されている。従って、摘み部15が短い場合、摘み部15が収容部3の右側に配置された状態を維持できるように持ちながら、薬液を滴下しにくいが、本変形例によれば、摘み部15が薬液容器1の下端部よりも下方へ延出されるので、前記状態を維持しながら滴下し易い。その他の構成は、図10に示す変形例と同様のため、説明は省略する。
【0048】
本変形例では、摘み部15は、収容部3の右側に配置されるよう折り返されたが、摘み部15が収容部3と重なるように折り返してもよい。この場合においても、摘み部15が薬液容器1の下端部よりも下方へ延出されるので、摘み部15が収容部3に重ねられた状態を維持できるように持ちながら、薬液を滴下し易い。ところで、本変形例では、摘み部15は、開封後に折り返された際、薬液容器1の下端部よりも下方へ延出する長さとされたが、これに限定されるものではなく、収容部3の下端部より下方へ延出する長さであればよい。
【0049】
また、前記実施例や前記変形例では、薬液容器1の首部4は、略円筒状とされ、周側壁の上部が断面略三角形状に膨出して形成されたが、この断面略三角形状部のみとしてもよい。すなわち、首部4は、収容部3の上端部から上方へ行くに従って拡径した後、上方へ行くに従って縮径した形状とされる。このように構成することで、収容部3の上端部における液溜まりをより減らすことができ、開封時の薬液の飛び散りをより効果的に防止することができる。また、収容部3は、前記実施例や前記変形例の構成に限定されるものではなく、適宜変更可能とされる。
【0050】
さらに、前記実施例や前記変形例のように、薬液容器1は、摘み部15を回動させることで開封することが好ましいが、これに限定されるものではなく、たとえば、摘み部15をねじることによって開封することもできる。この場合においても、薄肉部14が形成されない箇所があるため、摘み部15がねじ切れることがない。
【符号の説明】
【0051】
1 薬液容器
2 薬液
3 収容部
4 首部
5 蓋部
6 ベース
14 薄肉部
15 摘み部
17 端面
18 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収容される中空状の収容部と、この収容部と連続される首部を介して前記収容部に連接される蓋部とが、板状のベースに形成されており、
前記首部が前記ベースの左右方向中央部とずれた位置に配置され、
前記首部と前記蓋部との間が破断可能に連接され、この連接部と前記ベースの左右両端辺との間が、前記ベースの内、前記首部が配置された側の一端部を残して、線状の薄肉部で接続されている
ことを特徴とする薬液容器。
【請求項2】
前記ベースは、前記薄肉部より上部が、前記首部と前記蓋部とを切り離す際の摘み部とされており、
前記摘み部は、前記ベースの左右方向一端部を残して切り離された後、前記ベースの板面に対して倒された状態で位置決め可能とされた
ことを特徴とする請求項1に記載の薬液容器。
【請求項3】
前記摘み部は、左右方向他端側の端面が幅広に形成されており、左右方向一端側へ押し込まれて開封される
ことを特徴とする請求項2に記載の薬液容器。
【請求項1】
薬液が収容される中空状の収容部と、この収容部と連続される首部を介して前記収容部に連接される蓋部とが、板状のベースに形成されており、
前記首部が前記ベースの左右方向中央部とずれた位置に配置され、
前記首部と前記蓋部との間が破断可能に連接され、この連接部と前記ベースの左右両端辺との間が、前記ベースの内、前記首部が配置された側の一端部を残して、線状の薄肉部で接続されている
ことを特徴とする薬液容器。
【請求項2】
前記ベースは、前記薄肉部より上部が、前記首部と前記蓋部とを切り離す際の摘み部とされており、
前記摘み部は、前記ベースの左右方向一端部を残して切り離された後、前記ベースの板面に対して倒された状態で位置決め可能とされた
ことを特徴とする請求項1に記載の薬液容器。
【請求項3】
前記摘み部は、左右方向他端側の端面が幅広に形成されており、左右方向一端側へ押し込まれて開封される
ことを特徴とする請求項2に記載の薬液容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−66876(P2012−66876A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185003(P2011−185003)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(300047426)ファーマパック株式会社 (5)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(300047426)ファーマパック株式会社 (5)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】
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