説明

てんかんおよび他のCNS障害の処置のための、NMDAレセプターアンタゴニストと抗てんかん薬との組み合わせ

本発明は、被験体にNMDAレセプターアンタゴニストと抗てんかん薬(AED)とを含有する組み合わせを投与することによって、CNS関連障害(例えば、てんかん、痙攣障害、発作障害、および疼痛)を処置するための方法および組成物に関する。NMDAレセプターアンタゴニスト、AEDまたは両薬剤は、各々の治療上の利益を最大限にする一方で各々の所望されない副作用を低下させる、制御放出形態または持続放出形態で提供され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、CNS関連状態(例えば、てんかん、発作(seizure)障害、および痙攣障害)を処置するための組み合わせおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
てんかんは、集団の約0.5%〜1.0%で発症する状態であり、再発性、無熱性発作(unprovoked seizure)によって特徴付けられる脳障害である。これらの発作の間の、大脳のニューロンの過剰な、および/または過同期的な異常な活動は、重篤な脳損傷を引き起こし得るので、てんかんと診断される患者は、代表的には直ちに処置される。
【0003】
てんかん、ならびに他の発作障害および痙攣障害は、代表的に、種々の薬物(ナトリウムチャネルインヒビター、カルシウムチャネルインヒビター、カルボニックアンヒドラーゼインヒビター、GABA調節因子、ベンゾジアゼピン、およびグルタミン酸放出インヒビターが挙げられる)で処置される。しかし、これらの状態の処置のために利用可能な多くの治療様式は、代表的に、緩徐な効果および重篤な消耗性の副作用を伴う。これらの副作用としては、例えば、中枢神経系(CNS)活動の低調(例えば、疲労、傾眠、および認知上の問題)、異常視覚、皮膚の発疹、および肝不全が挙げられ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、てんかん、発作障害、疼痛、および抑うつ障害を処置するための組成物および処方物が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
一般に、本発明は、CNS関連状態(例えば、てんかん、痙攣障害、発作障害、および疼痛)の処置を必要とする被験体にNMDAレセプターアンタゴニストと抗てんかん薬(AED)とを含有する組み合わせを投与することによって、そのCNS関連状態を処置するための方法および組成物を提供する。本明細書において記載される組み合わせの投与は、CNS関連状態に伴う症状またはCNS関連状態から生じる症状(例えば、てんかん、頭痛、疼痛、ニューロパシー、大脳虚血、痴呆、運動障害、多発性硬化症、および精神障害が挙げられる)の軽減および防止をもたらす。
【0006】
NMDAレセプターアンタゴニスト、AEDまたは両薬剤は、各々の治療上の利益を最大限にする一方で各々の所望されない副作用を低下させる、即時放出成分を含むかまたは含まない、制御放出形態または持続放出形態で提供され得る。これらの薬物が、制御放出成分または持続放出成分の利益なしで、経口形態で提供される場合、これらは、数分から数時間の時間をかけて放出されて、体液へと移送される。
【0007】
NMDAレセプターアンタゴニスト、AEDまたは両薬剤は、代表的に被験体に投与される量と同様の量で投与され得る。必要に応じて、NMDAレセプターアンタゴニスト、AEDまたは両薬剤の量は、代表的に被験体に投与される量より多い量、もしくはより少ない量で投与され得る。例えば、患者の応答に(有害な効果を含め)正の影響を及ぼすために必要なメマンチンの量は、本明細書において記載される改善された処方を用いずに投与される代表的な10〜20mg/日ではなく、2.5〜80mg/日であり得る。より高用量の本発明のNMDAレセプターアンタゴニストが、非神経因性疼痛のような状態に対して利用され得る一方、AEDと組み合わされる場合、より低用量のNMDAレセプターアンタゴニストは、患者に治療効果を達成するのに十分であり得る。必要に応じて、NMDAレセプターアンタゴニストおよびAEDの両方の、単独療法として投与される場合の各薬剤の量に対してより低い量またはより減少した量が、単位投与において利用される。
【0008】
本明細書中で使用される場合、「C」とは、患者サンプルのような生物学的サンプル(例えば、血液、血清、および脳脊髄液)における、活性薬学的成分の濃度をいう。生物学的サンプルにおける薬物の濃度は、当該分野において公知の任意の標準的アッセイ法によって決定され得る。用語「Cmax」とは、生物学的サンプル中の所与の用量の薬物によって達成される最大濃度をいう。用語「Cmean」とは、長期にわたるサンプル中の薬物の平均濃度をいう。CmaxおよびCmeanはさらに、薬物の投与に対する特定の時間をいうために定義され得る。特定の患者サンプル型において最大濃度(「Cmax」)に達するために必要な時間は、「Tmax」と称される。薬剤の組み合わせは、長期にわたる活性薬剤の濃度の割合の変動性を低下させ、したがって治療利益を最大限しながら、副作用を最小限にする処方で、投与される。
【0009】
所望される場合、非用量増大性の、1日2回または1日1回の形態で、投薬形態が提供される。このような場合、時間の関数としての濃度変化(dC/dT)が、薬物を用量増大する必要性を低下または排除するように変更されるように、濃度の傾斜(またはTmax効果)が低下され得る。dC/dTの低下は、例えば、相対的に比例する様式でTmaxを増加させることによって達成され得る。したがって、Tmax値の2倍の増加は、dC/dTを約1/2に減少させ得る。したがって、NMDAレセプターアンタゴニストは、即時放出(いわゆる、IR)投薬形態に対して大きく減少したdC/dTで、それに伴ってTmaxを遅延させた状態で、放出されるように提供され得る。薬学的組成物は、24時間、16時間、8時間、4時間、2時間、または少なくとも1時間までのTmaxのシフトを提供するように処方され得る。それに伴うdC/dTの減少は、約0.05倍、約0.10倍、約0.25倍、約0.5倍、または少なくとも0.8倍であり得る。特定の実施形態において、これは、NMDAレセプターアンタゴニスト、AEDまたは両方の、30%未満、50%未満、75%未満、90%未満または95%未満を、このような投与の1時間以内に、循環中または神経系中に放出することによって達成される。
【0010】
組み合わせにおける2つの薬剤の濃度の比は、「Cratio」と称される。これは、薬物の組み合わせが、放出、循環系もしくはCNSへ移送、代謝、および排出される場合に増減し得る。本発明の目的は、本明細書中において記載される組み合わせについてのCratioを安定化させることである。望ましくは、Cratioは、長期にわたって変化せず、その対応する変動「Cratio.var」は、ほぼ0である。
【0011】
したがって、本発明は、各薬剤の別々の投与に伴う有害な作用を減少させるための用量最適化または放出の改変のための、組み合わせの処方物に特徴を有する。NMDAレセプターアンタゴニストとAEDとの組み合わせは、以下に記載されるように、相加的または相乗的な応答をもたらし得る。
【0012】
したがって、一局面において、本発明は、NMDAレセプターアンタゴニスト、抗てんかん薬(AED)である第二の薬剤、および必要に応じて薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物を提供する。いくつかの実施形態において、NMDAレセプターアンタゴニストまたは第二の薬剤のうちの少なくとも1つは、持続放出投薬形態で提供される。
【0013】
本発明のさらなる局面において、NMDAレセプターアンタゴニストおよびAEDは、単一の薬学的組成物として処方される。NMDAレセプターアンタゴニスト、AEDまたは両薬剤は、制御放出処方物として提供され得る。
【0014】
別の局面において、本発明は、CNS関連状態を予防または処置する方法に特徴を有する。この方法は、このような方法を必要とする被験体に、治療有効量の、NMDAレセプターアンタゴニストと、AEDである第二の薬剤とを含む、組合せを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この組み合わせ中の上記NMDAレセプターアンタゴニストまたは上記第二の薬剤のうちの少なくとも1つは、持続放出投薬形態で提供される。
【0015】
所望される場合、NMDAレセプターアンタゴニストは、同量のアンタゴニストの即時放出(IR)処方物について観察される速度よりも遅い速度で、被験体サンプル中に放出される。この放出速度は、0〜Tmaxの期間内での規定される期間にわたるdC/dTとして、IR処方物に対して測定される。このdC/dT速度は、IR処方物の速度に対して約80%未満である。いくつかの実施形態において、このdC/dT速度は、IR処方物の速度に対して約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満である。同様に、AEDもまた、同量のIR処方物について観察される速度よりも遅い速度で、患者サンプル中に放出され得る。この放出速度は、0〜Tmaxの期間内での規定される期間にわたるdC/dTとして、IR処方物に対して測定される。このdC/dT速度は、IR処方物の速度に対して約80%未満(例えば、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満)である。
【0016】
本発明の上記の局面の全てにおいて、所望される場合、薬学的組成物におけるNMDAレセプターアンタゴニストの少なくとも50%、少なくとも90%、少なくとも95%または本質的に全ては、制御放出投薬形態で提供され得る。いくつかの実施形態において、このNMDAレセプターアンタゴニストの少なくとも99%は、この薬学的組成物の被験体への導入の1時間後に、持続放出投薬形態のままである。このNMDAレセプターアンタゴニストは、このNMDAレセプターアンタゴニストが被験体に導入された約2時間後から、少なくとも8時間後まで、少なくとも12時間後まで、少なくとも16時間後まで、少なくとも24時間後まで、約1.6、約1.5、約1.4、約1.3またはそれ未満のCmax/Cmeanを有し得る。
【0017】
本発明の上記の局面の全てにおいて、第二の薬剤がまた、制御放出投薬形態で提供され得る。したがって、AEDの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または本質的に全てが、制御放出投薬処方物として提供され得る。このように提供される場合、この第二の薬剤は、この第二の薬剤が被験体に導入された約2時間後から、少なくとも6時間後まで、少なくとも8時間後まで、少なくとも12時間後まで、少なくとも16時間後まで、少なくとも24時間後まで、約1.6、約1.5、約1.4、約1.3、またはそれ未満のCmax/Cmeanを有する。
【0018】
必要に応じて、NMDAレセプターアンタゴニスト、AEDまたは両薬剤のCratio.varは、この薬剤が定常状態に達した後において、または投与後の最初の24時間の間、100%未満(例えば、70%未満、50%未満、30%未満、20%未満、または10%未満)である。いくつかの実施形態において、Cratio.varは、同じ活性薬学的成分のIR投与に対して、投与後の最初の4時間、最初の6時間、最初の8時間、または最初の12時間にわたって、約90%未満(例えば、約75%未満または50%未満)である。
【0019】
本発明に従って処置され得るCNS関連状態は、例えば、本明細書において記載される組み合わせおよび方法を使用して処置され得る発作関連状態(例えば、てんかん、発作障害、急性疼痛、慢性疼痛、慢性神経因性疼痛)であり得る。他のCNS関連状態としては、てんかん、発作障害、またはこのような障害に関連する症状の任意の形態が挙げられる。てんかん状態としては、以下が挙げられる:複雑部分てんかん、単純部分てんかん(simple partial)、二次性全身てんかんを伴う部分てんかん(partials with secondary generalization)、全身てんかん(アプサンス、大発作(強直性間代性)、強直性、無緊張性、ミオクローヌス、新生児痙攣、および乳児痙攣を含む)。さらなる特定のてんかん症候群は、若年性間代性筋痙攣性てんかん、レノックス−ガストー、側頭葉内側(mesial temporal lobe)てんかん、夜行性前頭葉てんかん、精神遅滞を伴う進行性てんかん、および進行性ミオクローヌスてんかんである。
【0020】
本発明の組み合わせはまた、以下を含む他の障害の処置および予防のために有用である:頭痛、脳血管疾患、運動ニューロン疾患、痴呆、神経変性疾患、脳卒中、運動障害、失調性症候群、交感神経系の障害、頭部神経障害、ミエロパシー(myelopethies)、外傷性脳傷害および外傷性脊髄傷害、放射線脳傷害、多発性硬化症、髄膜炎後症候群(post−menengitis syndrome)、プリオン病(prion diseases)、脊髄炎、神経根炎、ニューロパシー、疼痛症候群、軸索性脳損傷、脳症、慢性疲労症候群、精神障害、ならびに薬物依存。
【0021】
本発明の上記の局面の全てにおいて、NMDAレセプターアンタゴニストは、以下のアミノアダマンチン誘導体であり得る:メマンチン(1−アミノ−3,5−ジメチルアダマンタン)、リマンタジン(1−(1−アミノエチル)アダマンタン)、またはアマンタジン(1−アミノ−アダマンタン)であり得る。第二の薬剤は、GABAトランスアミナーゼ(transmaminase)インヒビター、GABA再(取り込み)インヒビター、カルボニックアンヒドラーゼインヒビター、ベンゾジアゼピン、またはナトリウムチャネルインヒビターであり得る。あるいは、第二の薬剤は、以下であり得る:γ−ビニルGABA、β−アラニン、塩酸グバシン、ニペコ酸、塩酸リルゾール、SKF 89976A塩酸塩、(S)−SNAP 5114、TACA、チアガビン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、フェニトイン、ゾニサミド、クロナゼパム、エトスクシミド、エトトイン、フェルバメート、ギャバペンチン、ラモトリジン、レベチラセタム、ロレクレゾール、メタルビタール、オキサジナン−ジオン(oxazinane−dione)、フェノバルビトン、フェノバルビタール、プリミドン、トルガビド、トピラメート、バルプロミド、またはゾニサミド。あるいは、第二の薬剤は、以下である:アヘン麻薬剤(例えば、モルフィン、コデイン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、ヒドロコドン、オキシコドン、メペリジン、プロポキシフェン、トラマドール、ブトルファノール、ブプレノルフィン、およびフェンタニル)、非ステロイド性抗炎症剤(例えば、アセトアミノフェン、ケトロラク(ketoralac)、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキサン、インドメタシン、ピロキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、およびアセチルサリチル酸)、麻酔薬(例えば、プロカイン、リドカイン、テトラカイン、ブピバカイン、プリロカイン、メピバカイン、クロロプロカイン、ロピバカイン、ジブカイン、エチドカイン、およびベンゾカイン)。したがって、NMDAレセプターアンタゴニストは、メマンチンであり得、一方第二の薬剤は、オキシカルバゼピン、ギャバペンチン、ラモトリジン、トピラメート、バルプロ酸、ゾニサミド、またはビガバトリンであり得る。
【0022】
好ましい実施形態において、メマンチンは、トピラメートと組み合わせられ、そしてこの組み合わせは、慢性侵害受容痛を処置するために使用される。
【0023】
NMDAレセプターアンタゴニスト、第二の薬剤または両薬剤は、経口送達、非経口送達、直腸送達、口腔送達、経皮パッチ送達、経鼻送達、局所送達、部分局所(subtopical)送達、経上皮送達、皮下送達、または吸入送達のために処方され得る。したがって、本明細書において記載される薬剤は、懸濁液、カプセル、錠剤、坐剤、ローション、パッチ、またはデバイス(例えば、皮下に埋め込み可能な、送達デバイスまたは吸入ポンプ)として処方され得る。所望される場合、NMDAアンタゴニストおよびAEDは、単一の組成物中で混合され得る。あるいは、この2つの薬剤は、別々の処方物で、連続的に、または互いに1時間以内、2時間以内、3時間以内、6時間以内、12時間以内、または24時間以内に送達される。別々に投与される場合、この2つの薬剤は、同じ投与経路または異なる投与経路によって、1日3回、1日2回、1日1回、またはさらに、2日に1回、投与され得る。
【0024】
必要に応じて、NMDAレセプターアンタゴニストおよび第二の薬剤は、単位投薬形態で提供される。
【0025】
所望される場合、薬学的組成中のNMDAレセプターアンタゴニストの量は、このNMDAレセプターアンタゴニストが第二の薬剤の非存在下で投与される場合にCNS関連状態の処置に対して同じ治療効果を得るために単位投与において必要とされるNMDAレセプターアンタゴニストの量よりも、少ない。あるいは、薬学的組成物中の第二の薬剤の量は、この第二の薬剤がNMDAレセプターアンタゴニストの非存在下で投与される場合にCNS関連状態の処置に対して同じ治療効果を得るために単位投与において必要とされる第二の薬剤の量よりも、少ない。必要に応じて、NMDAレセプターアンタゴニストは、NMDAレセプターアンタゴニストが第二の薬剤の非存在下でヒト被験体に投与される場合に、この被験体に対して毒性である用量で薬学的組成物中に存在する。所望される場合、第二の薬剤は、第二の薬剤がNMDAレセプターアンタゴニストの非存在下でヒト被験体に投与される場合に、この被験体に対して毒性である用量で薬学的組成物中に存在する。
【0026】
別に規定されない場合、本明細書において使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において記載される方法および材料と類似または等価な方法および材料が、本発明の実施および試験において使用され得るが、適切な方法および材料は、以下に記載される。本明細書において記述される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が、本明細書において参考として援用される。矛盾する場合は、本明細書(定義を含む)が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は、ただの説明であり、限定することを意図しない。全ての部およびパーセンテージは、別に特定されない限り、重量によるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、CNS関連状態(例えば、てんかん、頭痛、急性疼痛、慢性疼痛、ニューロパシー、脳虚血、痴呆、運動障害、多発性硬化症、および精神障害が挙げられる)を処置または予防するための方法および組成物を提供する。組み合わせは、NMDAレセプターアンタゴニストである第一の成分および抗てんかん薬(AED)である第二の成分を含む。この組み合わせは、処置されるべきCNS関連状態に関連する症状が、軽減されるか、または予防されるか、あるいはCNS関連状態の進行が減速するように、投与される。望ましくは、これらの2つの薬剤のいずれか、またはさらに、両薬剤は、持続放出のために処方され、それによって、治療的に有効であるために十分に高いが、被験体におけるいずれかの成分の過剰なレベルに伴う有害事象を回避するために十分に低い、所望の期間にわたる濃度および最適な濃度比を提供する。
【0028】
(NMDAレセプターアンタゴニスト)
任意のNMDAレセプターアンタゴニストは、本発明の方法および組成物に使用され得る(特に、本発明の組み合わせにおいて使用される場合に非毒性であるNMDAレセプターアンタゴニスト)。用語「非毒性」は、相対的な感覚で使用され、ヒトへの投与に関して米国食品医薬品局(「FDA」)によって承認されているか、または確立された規制基準および実施に沿って、ヒトもしくは動物への投与に関してFDAもしくはいずれかの国の同様の監督官庁による承認が可能な、任意の物質を示すことを意図される。
【0029】
NMDAレセプターアンタゴニストは、アミノアダマンタン化合物であり得る。この化合物としては、例えば、メマンチン(1−アミノ−3,5−ジメチルアタマンタン)、リマンタジン(1−(1−アミノエチル)アダマンタン)、アマンタジン(1−アミノ−アダマンタン)、およびそれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。メマンチンは、例えば、米国特許第3,391,142号、同第5,891,885号、同第5,919,826号、および同第6,187,338号に記載されている。アマンタジンは、例えば、U.S.P.N.3,152,180、同5,891,885、同5,919,826,および、同6,187,338に記載されている。さらなるアミノアダマンタン化合物は、例えば、米国特許第4,346,112号、同第5,061,703号、同第5,334,618号、同第6,444,702号、同第6,620,845号、および同第6,662,845号に記載されている。これらの特許の全ては、本明細書によって参考として援用される。
【0030】
利用され得るさらなるNMDAレセプターアンタゴニストとしては、例えば、以下が挙げられる:ケタミン、エリプロデイル、イフェンプロジル、ジゾシルピン、ネラメキサン、レマセミド、イアモトリジン(iamotrigine)、リルゾール、アプチガネル、フェンシクリジン、フルピルチン、セルフォテル(celfotel)、フェルバメート、スペルミン、スペルミジン、レベモパミル、デキストロメトルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)およびその代謝産物、デキストロルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)、それらの薬学的に受容可能な塩もしくはエステル、または前述のいずれかの代謝前駆体。
【0031】
NMDAレセプターアンタゴニストは、即時放出(いわゆる、IR)投薬形態に対して、顕著に低下したdC/dTで(付随するTmaxの遅延を伴って)放出されるように、提供され得る。薬学的組成物は、24時間まで、16時間まで、8時間まで、4時間まで、2時間まで、または少なくとも1時間までのTmaxのシフトを提供するように処方され得る。付随するdC/dTの低下は、約0.05倍、約0.10倍、約0.25倍、約0.5倍、または少なくとも0.8倍までであり得る。さらに、NMDAレセプターアンタゴニストは、NMDAレセプターアンタゴニストが被験体に導入された後、約2時間〜少なくとも8時間の間、約2以下のCmax/Cmeanを生じる速度で放出されるように提供され得る。薬学的組成物は、1mg/日と80mg/日との間、5mg/日と40mg/日との間、または10mg/日と20mg/日との間の範囲の量でメマンチンを提供するように;25mg/日と500mg/日との間、25mg/日と300mg/日との間、または100mg/日と300mg/日との間の範囲の量でアダマンチンを提供するように;1〜5000mg/日、1〜1000mg/日、および100〜800mg/日、または200〜500mg/日の範囲の量でデキストロメトルファンを提供するように、処方され得る。小児用投与は、代表的に、成人に対して決定された量より少ない。
【0032】
表1は、メマンチン、アマンタジン、およびリマンタジンの例示的薬物動態特性(例えば、TmaxおよびT1/2)を示す。
【0033】
(表1 選択されたNMDArアンタゴニストについての、ヒトにおける薬物動態およびTox)
【0034】
【表1】

(抗てんかん薬(AED))
適切な抗てんかん剤としては、例えば、ナトリウムチャネルを阻害する薬剤、GABAレセプターを調節する薬剤、またはカルシウム電流もしくはTカレント(T current)を減少させる薬剤が挙げられる。例示的な抗てんかん剤は、以下である:GABAトランスアミナーゼインヒビター(例えば、γ−ビニルGABA(例えば、Schechterら,Neurology 34:182−186,1984に記載))、GABA再(取り込み)インヒビター(例えば、β−アラニン、塩酸グバシン、ニペコ酸、塩酸リルゾール、SKF 89976A塩酸塩、(S)−SNAP 5114、TACA、チアガビン)、およびナトリウムチャネルインヒビター(例えば、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、フェニトイン、ゾニサミド)である。他の例示的なAEDは、クロナゼパム、エトスクシミド、エトトイン、フェルバメート、ギャバペンチン、ラモトリジン、レベチラセタム、ロセクレゾール、メタルビタール、オキサジナン−ジオン、フェノバルビトン、フェノバルビタール、プリミドン、トルガビド、トピラメート、およびバルプロミドである。
【0035】
組み合わせ中におけるオキシカルバゼピンの用量は、代表的に、成人においては、約400mg/日と約1600mg/日との間での範囲であるか、または約1000mg/日と1400mg/日の間の範囲であり、そして小児においては、約10mg/kg/日と30mg/日との間であるか、または約15mg/kg/日と25mg/日との間の範囲である。組み合わせ中におけるゾニサミドの用量は、代表的に、成人においては、約50mg/日と約400mg/日との間での範囲であるか、または約200mg/日と300mg/日の間の範囲であり、そして小児においては、約2mg/kg/日と8mg/日との間の範囲であるか、または約4mg/kg/日と6mg/日との間の範囲である。組み合わせ中におけるギャバペンチンの用量は、代表的に、成人においては、約600mg/日と約3200mg/日との間の範囲であるか、または約1800mg/日と2800mg/日の間の範囲であり、そして小児においては、約20mg/kg/日と60mg/日との間の範囲であるか、または約30mg/kg/日と50mg/日との間の範囲である。組み合わせ中におけるビガバトリンの用量は、代表的に、成人においては、約750mg/日〜約3000mg/日の間の範囲であるか、または約1000mg/日と2000mg/日との間の範囲であり、そして小児においては、約50mg/kg/日〜150mg/日の間の範囲であり、そして約75mg/kg/日と100mg/日との間の範囲である。
【0036】
NMDAレセプターアンタゴニストまたはAEDの用量はまた、医師用卓上参考書(physician desk reference)を使用して決定され得る。
【0037】
(表2 選択されたAEDについてのヒトにおける薬物動態)
【0038】
【表2】

本明細書において開示される特定の組み合わせに加えて、第一のNMDArアンタゴニストと抗てんかん剤から作られる組み合わせは、選択されたNMDArアンタゴニストと1つ以上の抗てんかん剤との試験組み合わせの、てんかんの症状を減少させる能力を、試験によって同定され得る。好ましい組み合わせは、各薬剤が別個に試験された場合に同じ抗てんかん効果を得るために必要とされる同量のNMDAレセプターアンタゴニストおよび/または抗てんかん剤に対して、NMDAレセプターアンタゴニストおよび/または抗てんかん剤のより低い治療有効量を示す組み合わせである。
【0039】
NMDAレセプターアンタゴニストおよびAEDの量および割合は、治療利益を最大限にし、かつ毒性もしくは安全上の懸念を最小限にするために、都合よく変化する。NMDAレセプターアンタゴニストは、その通常の有効量の20%〜200%の間の範囲に及び得、そしてAEDは、その通常の有効量の20%と200%との間の範囲に及び得る。正確な割合は、処置されるべき状態に従って変動し得る。一例において、メマンチンの量は、2.5mg/日と40mg/日との間の範囲に及び、そしてトピラメートの量は、25mg/日と200mg/日との間の範囲に及ぶ。
【0040】
本明細書において開示される特定の組み合わせに加えて、NMDAレセプターアンタゴニスト(例えば、アミノアダマンタン化合物)とAEDとから作られた組み合わせは、試験組み合わせの、発作関連状態または疼痛関連状態の症状を減少させる能力を試験することによって同定され得る(実施例1および2を参照のこと)。
【0041】
特定の範囲については、医師または他の適切な医療従事者は、代表的に、所与の患者に対して、その患者の性別、年齢、体重、病理学的状態、および他のパラメータに従って、最良の投薬量を決定する。いくつかの症例では、患者を処置するために、薬のパッケージ挿入物に記述されている範囲外の投薬量を使用することが必要であり得る。これらの症例は、処方する医師または獣医にとって明らかである。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明の組み合わせは、治療レベルを達成する一方、即時放出処方物に通常伴う衰弱性の副作用を最小限にする。さらに、ピーク血漿レベルを得るための時間の遅れ、および潜在的に、治療的に有効な血漿レベルにある時間が長期であることの結果として、投薬頻度は、例えば、1日1回または2回の投薬に減少され得、これによって、患者のコンプライアンスおよび指示順守度が上昇する。
【0043】
したがって、本発明の組み合わせは、NMDAレセプターアンタゴニストおよびAEDを、両薬剤の効力を改善し、かつ所望されない副作用を回避する組み合わせで投与することを可能にする。例えば、NMDAレセプターアンタゴニストの投与に伴う精神および認知の欠損を含む副作用は、Tmaxをより長期にシフトさせ、それによって薬物のdC/dTを低下させる制御放出法の使用を介して、重症度および頻度が減少され得る。薬物のdC/dTの低下は、Tmaxを増加させるだけでなく、Tmaxにおける薬物濃度を低下させ、Cmax/Cmean比を低下させて、所与の時間にわたって、処置されるべき被験体により一定な量の薬物を提供し、そして投与に伴う有害事象を減少させる。同様に、やはり制御放出法を介して、AEDの使用に伴う副作用の重症度および頻度が減少され得る。
【0044】
特定の実施形態において、上記組み合わせは、相加的効果を提供する。この相加性は、活性薬剤を組み合わせることによって、制御放出技術を必要とすることなく達成される。他の実施形態において、特に、併用される活性薬物成分の薬物動態プロフィールが同様でない場合、制御放出処方物は、活性薬剤の薬物動態を最適化して、長期にわたるCratioの変動性を低下させる。規定される期間にわたるCratio変動性の低下は、その時間にわたるそれらの薬剤の効果の協調を可能にし、組み合わせの有効性を最大限にする。Cratio変動性(「Cratio.var」)は、所与の期間にわたって得られる一連のCratioの標準偏差を、それらのCratioの平均で割り、100%を乗算したものとして定義される。図2A〜2Eおよび表3で示されるように、制御放出処方物のCratioは、任意の有意な期間(投与直後および定常状態を含む)にわたる同じ薬剤の組み合わせのIR投与よりも一定している。これは、本発明の制御放出処方物の、IR投与と比較してより低いCratio.varによって証明される。図2Dおよび2Eに含まれるデータを、以下の表にまとめる。
【0045】
(表3 即時放出(IR)投与および制御放出(CR)処方物におけるメマンチンラモトリジンCratioデータ)
【0046】
【表3】

(投与様式)
本発明の組み合わせは、局所様式もしくは全身様式のいずれかで、またはデポー形式もしくは徐放形式のいずれかで、投与され得る。好ましい実施形態において、NMDAレセプターアンタゴニスト、AEDまたは両薬剤は、(本明細書において記載されるような)制御された持続放出を提供するように処方され得る。例えば、NMDAレセプターアンタゴニスト、AEDまたは両方の制御放出を提供する薬学的組成物は、所望の薬剤(単数もしくは複数)と、被験体に投与される場合に、個々の薬剤を特定の期間、目標の速度で放出させる1種以上のさらなる成分とを組み合わせることによって、調製され得る。これらの薬剤は、好ましくは、経口形態、経皮形態または鼻腔内形態で送達され得る。
【0047】
上記2つの成分は、好ましくは、組み合わせ中の第一および第二の成分からの所望の効果を提供する様式で投与される。必要に応じて、この第一および第二の薬剤は、被験体に導入される前に、単一の処方物に混合される。この組み合わせは、都合良くは、適切な量の第一および第二の薬剤を含む単位用量に細分され得る。単位投薬形態は、例えば、カプセルまたは錠剤そのものであり得るか、または適切な数のこのような組成物の梱包された形態であり得る。単位投薬形態中の活性成分の量は、処置されるべき条件の特定の必要性に従って、変動し得るかまたは調節され得る。
【0048】
あるいは、組み合わせ中のNMDAレセプターアンタゴニストおよびAEDは、それらが被験体に導入される後まで混合されなくともよい。したがって、用語「組み合わせ」は、NMDAレセプターアンタゴニストおよびAEDが別々の処方物中に提供されて、順次投与される実施形態を包含する。例えば、NMDAレセプターアンタゴニストとAEDとは、互いに、2日以内、1日以内、18時間以内、12時間以内、1時間以内、半時間以内、15分以内、またはそれ未満の時間内で、別々に被験体に投与され得る。各薬剤は、被験体に別々に投与される複数の単一のカプセルまたは錠剤で提供され得る。あるいは、NMDAレセプターアンタゴニストとAEDとは、薬学的組成物中で互いに分離され、したがって、それらは、この薬学的組成物が被験体に導入された後まで混合されない。この混合は、被験体への投与直前に起こっても、被験体へのこの組み合わせの投与のずっと前に起こってもよい。
【0049】
所望される場合、NMDAレセプターアンタゴニストとAEDとは、他の治療様式(例えば、薬物処置レジメン、外科的処置レジメン、または他の介入処置レジメン)とともに被験体に投与され得る。この組み合わせが非薬物処置を含む場合、この非薬物処置は、組合せと他の治療様式との共作用からの有益な効果が達成される限り、任意の適切な時間に実行され得る。例えば、適切な場合、この有益な効果は、治療剤の投与から非薬物処置が一時的に除かれる場合(おそらく、数日または数週間まで)でも、なお達成される。
【0050】
(特定の投与経路のための処方物)
組み合わせは、特定の送達の型に対して最適化されている薬学的組成物として提供され得る。例えば、経口送達のための薬学的組成物は、当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアを使用して処方される。このキャリアは、組み合わせ中の薬剤が、例えば、被験体による経口摂取のための錠剤、丸剤、カプセル、溶液、懸濁液、徐放性処方物;粉末、液体、またはゲルとして処方されることを可能にする。
【0051】
あるいは、本発明の組成物は、多くのストラテジー(米国特許第5,186,938号、同第6,183,770号、同第4,861,800号、およびWO 89/09051に記載されるものが挙げられる)を介して経皮的に投与され得る。パッチの形態の組み合わせの薬物を提供することは、これらの薬剤が比較的高い皮膚流動性を有することを考慮すると、特に有用である。
【0052】
NMDAレセプターアンタゴニストおよび/または第二の薬剤の組み合わせを含む薬学的組成物はまた、加圧パック(噴霧器)から、または乾燥粉末吸入器からのエアロゾルスプレー調製物で送達され得る。噴霧器において使用され得る適切な噴霧剤としては、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、および二酸化炭素が挙げられる。投薬量は、加圧エアロゾルの場合、規定された量の化合物を送達するための弁を提供することによって決定され得る。
【0053】
吸入またはガス注入のための組成物としては、薬学的に受容可能な水性溶媒もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物中の溶液および懸濁液、ならびに粉末が挙げられる。液体組成物もしくは固体組成物は、上記のような、適切な薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。好ましくは、この組成物は局所作用および全身性作用のための、経口経路、鼻腔内経路、または呼吸経路によって投与される。好ましくは無菌の薬学的に受容可能な溶媒中の組成物は、不活性ガスの使用によって噴霧され得る。噴霧された溶液は、噴霧器から直接的に吸い込まれ得るか、または噴霧器は、フェイスマスク、テント、または間欠性の陽圧呼吸器に取り付けられ得る。溶液、懸濁液、または粉末組成物は、適切な様式で処方物を送達するデバイスから、好ましくは経口的もしくは経鼻的に、投与され得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、例えば、組成物は、CNSへの嗅覚経路を通って活性薬剤の移送を可能にする吸入によるのではなく、篩板へと、鼻腔内的に投与され得、そして全身投与を減少させる。この投与経路のために一般的に使用されるデバイスは、米国特許第6,715,485号に包含される。この経路を介して送達された組成物は、CNS用量の増加、または特定の薬物に関連する全身性の毒性の危険性を低下させる、総身体負荷量の低下を可能にし得る。
【0055】
他の投与様式に適切なさらなる処方物としては、直腸カプセルまたは坐剤が挙げられる。坐剤については、伝統的な結合剤およびキャリアとしては、例えば、ポリアルキレングリコールもしくはトリグリセリドが挙げられる;このような坐剤は、0.5%〜10%(好ましくは1%〜2%)の範囲で活性成分を含む混合物から形成され得る。
【0056】
組み合わせは、必要に応じて、継続的な長期送達を提供する管での送達のため(例えば、30日まで、60日まで、90日まで、180日まで、または1年までの送達のため)に処方され得る。例えば、この管は、生体適合性材料(例えば、チタン)中に提供され得る。長期送達処方物は、慢性状態を有する被験体において、改善された患者のコンプライアンスを確実にするために、および組み合わせの安定性を増強するために、特に有用である。
【0057】
継続的な長期送達のための処方物は、例えば、米国特許第6,797,283号、同第6,764,697号、同第6,635,268号、および同第6,648,083号において提供されている。
【0058】
所望される場合、組み合わせは、キットの形態で提供され得る。このキットは、このキットを使用するための指示書をさらに備え得る。いくつかの実施形態において、キットは、1つ以上の容器中にNMDAレセプターアンタゴニストを備え、そして別個に、1つ以上の容器中に、AEDを備える。他の実施形態において、このキットは、1つ以上の容器中において混合されているNMDAレセプターアンタゴニストとAEDとの組み合わせを提供する。このキットは、発作または疼痛関連の状態を処置するための、治療有効量の薬物を備える。
【0059】
NMDAレセプターアンタゴニスト、AEDまたは両薬剤は、制御された持続放出形態で提供され得る。一例において、少なくとも50%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに99%を超えるNMDAレセプターアンタゴニストが、持続放出投薬形態で提供される。放出プロフィールは、すなわち、所望の時間にわたるNMDAレセプターアンタゴニストまたはAEDの放出の長さは、都合良くは、所与の急性もしくは慢性定常状態血清濃度プロフィールを達成するための所望の時間範囲についてのCmax/Cmeanを計算することによって、所与の時間に対して決定され得る。したがって、被験体(例えば、ヒトのような哺乳動物)に対する投与において、NMDAレセプターアンタゴニストは、このような投与の約1時間後、1.5時間後、2時間後から、少なくとも6時間後、少なくとも8時間後、少なくとも9時間後、少なくとも12時間後、少なくとも18時間後、少なくとも21時間後、少なくとも24時間後に、約2.5、2、1.5、または1.0のCmax/Cmeanを有する。所望される場合、NMDAレセプターアンタゴニストの放出は、単相性または多相性(例えば、二相性)であり得る。さらに、AEDは、被験体への投与の約1時間後、1.5時間後、2時間後から、少なくとも6時間後、少なくとも8時間後、少なくとも9時間後、少なくとも12時間後、少なくとも18時間後、少なくとも21時間後、少なくとも24時間後に、約2.5、約2、約1.5、約1.0のCmax/Cmeanを有する持続放出組成物として処方され得る。当業者は、NMDAレセプターアンタゴニストおよびAED、ならびに当該分野で公知の処方方法もしくは下記の処方方法を使用して、所望の放出プロフィールを有する組み合せを調製し得る。
【0060】
表1および表2に示されるように、上記薬物分類の両方の薬物動態特性は、約3時間〜60時間超で変動する。したがって本発明の一局面は、急性投与および慢性投与の両方についての最適な治療的利益のために、長期(好ましくは、8時間〜24時間)にわたってほぼ一定の濃度プロフィールを達成し、それによって両成分を一定の比率および時間に維持する適切な処方物を選択することである。
【0061】
好ましいCratio.var値は、約100%、約70%、約50%、約30%、約20%、約10%未満である。好ましいCratio.var値は、投与後最初の4時間、6時間、8時間、12時間にわたって、同じ活性薬学的成分のIR投与の値の約10%、約20%、約30%、約50%、約75%、または約90%未満である。
【0062】
この一定な計測可能なプロフィールを送達する処方物はまた、多様な吸収速度および/もしくは排出半減期を有する薬物についての、急性の比率から所望の慢性の比率までの単相性の勾配を達成することを可能にする。この型の組成物、およびこれらの組成物を用いて患者を処置する方法は、本発明の実施形態である。以下のように、所望の放出プロフィールを達成するための種々の方法が存在する。
【0063】
第一の成分、第二の成分または両成分が持続放出処方物中に提供される組み合せを調製するための適切な方法としては、米国特許第4,606,909号(本明細書によって参考として援用される)に記載される方法が挙げられる。この参考文献は、複数の個別にコーティングもしくはマイクロカプセル化された単位が、動物の胃の中でのこの処方物(例えば、丸剤もしくは錠剤)の崩壊によって利用可能になる、制御放出複数単位処方物を記載する(例えば、第3段第26行〜第5段第10行、および第6段第29〜第9段第16行を参照のこと)。これらの個別にコーティングもしくはマイクロカプセル化された単位の各々は、多少溶けにくい活性物質の粒子を含む、断面が実質的に均一なコアを含む。このコアは、胃の条件に実質的に耐性であるが小腸内に行き渡る条件下では侵食され得るコーティングで、覆われている。
【0064】
組み合わせは、あるいは、例えば米国特許第4,769,027号に開示される方法を使用して処方され得る。したがって、持続放出処方物は、NMDAレセプターアンタゴニストを含む水浸透性のポリマーマトリックスでコーティングされ得、次に、内部に水溶性の粒子状の孔形成材料を分散させた水透過性のフィルムでさらにコーティングされ得る、薬学的に受容可能な材料(例えば、糖/デンプン、塩、および蝋)の小球を含む。
【0065】
この組み合わせの一方または両方の成分は、さらに、米国特許第4,897,268号に記載されるように調製され得る。この特許は、生体適合性の、生分解性マイクロカプセル送達システムに関する。したがって、NMDAレセプターアンタゴニストは、ある量のメマンチンを、例えば、種々の速度で生分解する種々のコポリマー賦形剤中に個別にマイクロカプセル化することによって得られる自由流動性球状粒子のブレンドを含む組成物として処方され得、したがって、所定の速度で循環中にメマンチンを放出する。これらの粒子の量は、コポリマー賦形剤が、コア活性成分が投与後迅速に放出させ、したがって初期の間に活性成分を送達するような量であり得る。粒子の第二の量は、このような型の賦形剤が、マイクロカプセル化された成分の送達が、初期量の送達の低下し始めるときに開始するような量である。成分の第三の量は、さらに異なる賦形剤でマイクロカプセル化され得、第二の量の送達が低下し始める時に送達開始する、る。送達の速度は、例えば、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)カプセル化におけるラクチド/グリコリド比を変動させることによって変更され得る。使用され得る他のポリマーとしては、ポリアセタールポリマー、ポリオルトエステル、ポリエステルアミド、ポリカプロラクトンおよびこれらのコポリマー、ポリカーボネート、ポリヒドロキシブテレートおよびこれらのコポリマー、ポリマレアミド、コポリアキサレート(copolyaxalate)、ならびに多糖類が挙げられる。
【0066】
あるいは、組み合わせは、米国特許第5,395,626号に記載されるように調製され得る。この特許は、多層の制御放出薬物投薬形態に特徴を有する。この投薬形態は、複数のコーティングされた粒子を含み、この粒子の各々は、NMDAレセプターアンタゴニストおよび/またはAEDを含むコアの周囲に複数の層を有する。これによって、コアおよび少なくとも1つの他の薬物活性層を含む薬物は、制御放出障壁層でさらにコーティングされ、それによって、この多層コーティング粒子から、少なくとも2層の水溶性薬物の制御放出層を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される組み合わせの第一の成分および第二の成分は、単一または別個の薬学的組成物内に提供される。「薬学的または薬理学的に受容可能」とは、必要に応じて動物またはヒトに投与された場合に、有害反応、アレルギー性反応、または他の都合の悪い反応を生じない分子実体および組成物を包含する。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および因子の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒体または因子が活性成分と非適合性である場合を除いて、治療組成物においてその使用が企図される。補足的な活性成分がまた、この組成物に組み込まれ得る。「薬学的に受容可能な塩」は、酸付加塩を含み、これは、例えば塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸によって形成される。遊離カルボキシル基によって形成される塩はまた、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から得られ得る。
【0068】
薬学的組成物または薬理学的組成物の調製は、本開示を考慮すれば、当業者に公知である。処方および投与のための一般的技術は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版」(Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA)に見出される。錠剤、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、糖剤、ゲル、スラリー、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、およびエアロゾルは、このような処方物の例である。
【0069】
例として、当該分野で公知のさらなる方法を使用して、持続放出性経口処方物が調製され得る。例えば、活性薬学的成分のいずれかまたは両方の適切な持続放出形態は、マトリックス錠剤組成物であり得る。適切なマトリックス形成材料としては、例えば、以下が挙げられる:蝋(例えば、カルナウバ蝋、蜜蝋、パラフィンワックス、セレシン(ceresine)、シェラックワックス、脂肪酸、および脂肪アルコール)、油、硬化油、または脂肪(例えば、硬化菜種油、ヒマシ油、牛脂、パーム油、およびダイズ油)、およびポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリエチレングリコール)。他の適切なマトリックス錠剤形成材料は、微結晶性セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース(他のキャリアおよび充填剤を含む)である。錠剤はまた、顆粒化、コーティングされた粉末、またはペレットを含み得る。錠剤はまた、多層であり得る。多層の錠剤は、活性成分が大きく異なる薬物動態プロフィールを有する場合、特に好ましい。必要に応じて、完成した錠剤は、コーティングされていてもされていなくてもよい。
【0070】
コーティング組成物は、代表的に、不溶性のマトリックスポリマー(コーティング組成物の約15重量%〜85重量%)、および水溶性材料(例えば、コーティング組成物の約15重量%〜85重量%)を含む。必要に応じて、腸溶性ポリマー(コーティング組成物の約1重量%〜99重量%)が使用され得るか、または含まれ得る。適切な水溶性材料としては、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール)、および糖(例えば、ラクトース、スクロース、フルクトース、マンニトールなど)のようなモノマー材料、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなど)、有機酸(例えば、フマル酸、コハク酸、乳酸および酒石酸)、ならびにこれらの混合物が挙げられる。適切な腸溶性ポリマーとしては、カルボキシル基を含有する、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタレート、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、シェラック、ゼイン、およびポリメタクリレートが挙げられる。
【0071】
コーティング組成物は、コーティングブレンドの特性(例えば、主成分もしくは成分の混合物のガラス遷移温度、またはコーティング組成物を適用するために使用される溶媒)に従って、可塑化され得る。適切な可塑化剤は、コーティング組成物の0重量%〜50重量%で添加され得、そして、例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸エステル、ポリエチレングリコール、グリセロール、アセチル化グリセリド、アセチル化クエン酸エステル、セバシン酸ジブチル、およびヒマシ油を含み得る。所望される場合、コーティング組成物は、充填剤を含み得る。充填剤の量は、コーティング組成物の総重量に基づいて1重量%〜約99重量%であり得、そして不溶性材料(例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、滑石、カオリン、アルミナ、デンプン、粉末セルロース、MCC、またはポラクリリンカリウム(polacrilin potassium))であり得る。
【0072】
コーティング組成物は、有機溶媒もしくは水性溶媒中の溶液もしくはラテックスとして、またはそれらの混合物として適用され得る。溶液が適用される場合、溶媒は、溶解された固体の総重量に基づいて、約25重量%〜約99重量%までの量で存在し得る。適切な溶媒は、水、低級アルコール、低級塩素化炭化水素、ケトン、またはそれらの混合物である。ラテックスが適用される場合、溶媒は、ラテックス中のポリマー材料の量に基づいて、約25重量%〜約97重量%までの量で存在する。溶媒は、主に水であり得る。
【0073】
本明細書において記載される薬学的組成物はまた、キャリア(例えば、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤)を含み得る。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および因子の使用は、当該分野で周知である。薬学的に受容可能な塩(例えば、鉱物塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩)、ならびに有機酸の塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、または安息香酸塩))もまた、この組成物に使用され得る。組成物はまた、液体(例えば、水、生理食塩水、グリセロール、およびエタノール)、ならびに浸潤剤、乳濁剤、またはpH緩衝化剤のような物質を含み得る。リポソーム(例えば、米国特許第5,422,120号、WO 95/13796、WO 91/14445またはEP 524,968 B1に記載されるもの)もまた、キャリアとして使用され得る。
【0074】
制御放出処方物を作製するためのさらなる方法は、例えば、米国特許第5,422,123号、同第5,601,845号、同第5,912,013号、および同第6,194,000号(これらの全ては、本明細書によって参考として援用される)に記載される。
【0075】
経皮パッチで送達するための調製は、当該分野で公知の方法を使用して行われ得る。この方法としては、例えば、米国特許第5,186,938号、および同第6,183,770号、同第4,861,800号、および同第4,284,444号で一般的に記載されているものが挙げられる。パッチは、多くのAEDに伴う吸収の問題に起因して、この場合に特に有用な実施形態である。パッチは、12時間、24時間、3日間、および7日間の期間にわたって皮膚透過性活性成分の放出を制御するために作製され得る。一例において、日量の2倍過剰のNMDAレセプターアンタゴニストが、AEDとともに不揮発性流体中に置かれる。本明細書において利用される薬剤の量を考慮すると、好ましい放出は、12時間〜72時間である。
【0076】
この形態の経皮調製物は、1%〜50%の活性成分を含む。本発明の組成物は、粘性の、不揮発性の液体の形態で提供される。好ましくは、組み合わせの両メンバーとも、少なくとも10−9モル/cm/時の皮膚透過速度を有する。少なくとも5%の活性物質が、24時間以内に皮膚を通って流入する。特定の処方物の皮膚を通る透過は、当該分野における標準的方法によって測定され得る(例えば、Franzら,J.Invest.Derm.64:194−195(1975))。
【0077】
いくつかの実施形態において、例えば、組成物は、活性成分を嗅覚経路を介してCNSへと移送することを可能にする吸入によるのではなく、鼻腔内的に脳へと送達され得、そして全身投与を減少させる。この投与経路のために一般的に使用されるデバイスは、米国特許第6,715,485号に包含される。この経路を介して送達される組成物は、CNS用量の増加、または特定の薬物に関連する全身性の毒性の危険性を低下させる、総身体負荷量の低下を可能にし得る。
【0078】
皮下埋め込みデバイスにおける送達のための薬学的組成物の調製は、当該分野で公知の方法(例えば、米国特許第3,992,518号、同第5,660,848号、および同第5,756,115号に記載される方法)を使用して実行され得る。
【0079】
(組み合わせによる処置に適切な適応)
CNS関連状態(例えば、てんかん、発作障害、急性疼痛、慢性疼痛、慢性神経因性疼痛)を有するか、またはその危険を有する任意の被験体は、本明細書中において記載される組み合わせおよび方法を使用して処置され得る。てんかん状態としては、以下が挙げられる:複雑部分てんかん、単純部分てんかん、二次性全身てんかんを伴う部分てんかん、全身てんかん(アプサンス、大発作(強直性間代性)、強直性、無緊張性、ミオクローヌス、新生児痙攣、および乳児痙攣を含む)。さらなる特定のてんかん症候群は、若年性間代性筋痙攣性てんかん、レノックス−ガストー、側頭葉内側てんかん、夜行性前頭葉てんかん、精神遅滞を伴う進行性てんかん、および進行性ミオクローヌスてんかんである。本発明の組み合わせはまた、以下を含む他の障害の処置および予防のために有用である:頭痛(例えば、片頭痛、緊張性頭痛、および群発性頭痛)、脳血管疾患、運動ニューロン疾患(例えば、ALS、脊髄運動神経萎縮、テイ−サックス、サンドホフ病、家族性痙性対麻痺)、痴呆(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、前頭側頭痴呆、血管性痴呆、正常圧水頭症、HD、およびMCI)、神経変性疾患(例えば、家族性アルツハイマー病、プリオン関連の疾患、小脳性運動失調、フリードライヒ失調症(Friedrich’s ataxia)、SCA、ウィルソン病、RP、ALS、副腎脳白質ジストロフィ、メンケズ症候群(Menke’s Sx)、皮質下梗塞を伴う大脳常染色体優性動脈症(CADASIL)、脊髄性筋萎縮症、家族性ALS、筋ジストロフィ、シャルコー−マリー−ツース病、神経線維腫症、フォン・ヒッペル−リンダウ、脆弱X、痙性対麻痺、結節硬化症、およびワルデンベルグ症候群(Wardenburg syndrome))、脳卒中(例えば、血栓性、塞栓症、血栓塞栓性、出血性(hemmorhagic)、血管収縮性(venoconstrictive)、および静脈性)、運動障害(例えば、PD、失調症、良性本態性振せん、遅発性失調症、遅発性ジスキネジー、およびツレット症候群)、失調性症候群、交感神経系の障害(例えば、シャイ−ドレーガー、オリーブ橋小脳変性、線条体黒質変性、PD、HD、ギヤン−バレー、カウザルギー、複合限局性疼痛症候群(I型およびII型)、糖尿病性、およびアルコール性ニューロパシー)、頭部神経障害(例えば、三叉神経障害、三叉神経痛、メニエール症候群、舌咽神経痛(glossopharangela neuralgia)、嚥下困難、発声障害、および頭部神経麻痺)、ミエロパシー(myelopethies)、外傷性脳傷害および外傷性脊髄傷害、放射線脳傷害、多発性硬化症、髄膜炎後症候群、プリオン病、脊髄炎、神経根炎、ニューロパシー(例えば、ギヤン−バレー、異常蛋白血症を伴う糖尿病、トランスサイレチン誘発性ニューロパシー、HIVに伴うニューロパシー、ライム病に伴うニューロパシー、帯状疱疹に伴うニューロパシー、手根管症候群、足根管症候群、アミロイド誘発性ニューロパシー、らい性ニューロパシー、ベル麻痺、圧迫性ニューロパシー、サルコイドーシス誘発性ニューロパシー、頭側多発性神経炎、重金属誘発性ニューロパシー、遷移金属誘発性ニューロパシー、薬物誘発性ニューロパシー)、疼痛症候群(例えば、急性、慢性、神経因性、侵害受容性、中枢性、および炎症性)、軸索性脳損傷、脳症、慢性疲労症候群、精神障害(例えば、パニック症候群、全般性不安障害、全ての型の恐怖症候群、躁病、躁うつ病、軽躁、単極性うつ病、うつ病、ストレス障害、PTSD、身体表現性障害、人格障害、精神病、および統合失調症)、ならびに薬物依存(例えば、アルコール、精神刺激薬(例えば、クラック、コカイン、スピード、メタドン(meth))、オピオイド、およびニコチン)。これらの状態のいずれかが、本明細書において記載される方法および組成物を使用して処置され得る。
【0080】
組合せを用いた被験体の処置は、当該分野で公知の方法を使用してモニタリングされ得る。この組合せを使用した処置の効力は、好ましくは、被験体の症状を定量的な方法で(例えば、再発の頻度の減少、または症状の持続的悪化についての時間の延長に注目することによって)検査することによって評価される。首尾良い処置においては、被験体の状態は改善される(すなわち、再発の頻度が減少するか、または持続的進行までの時間が延長する)。
【0081】
本発明は、以下の非限定的実施例において説明される。
【実施例】
【0082】
(実施例1:最適な定常状態濃度比(Cratio,ss)を決定するためのインビボでの方法)
適切な発作モデル(例えば、マウス電気ショックモデル)において、メマンチンを用いた用量範囲研究を行い、ED50を決定する(約12μmである)。AED(例えば、トピラメート)に対するED50を、同様の様式で決定する(約5μmである)。等興奮(isobolic)実験は、これらの薬物を、それらのEDXXの分画を合わせて、ED100になるまで足す(すなわち、ED50:ED50、ED25:ED75など)。データのプロットを構築する。グラフ上でED50の点の間の直線下にある実験点は、相乗作用を示し、線上の点は相加的効果を示し、線より上の点は抑制性効果を示す。等興奮線からの最大偏差点が最適比である。これは、最適な定常状態比(Cratio,ss)であり、そしてこれを、成分の半減期に基づいて調整する。同様のプロトコルを多岐にわたる検証用動物モデルにおいて適用する。
【0083】
(実施例2:NMDAレセプターアンタゴニストとAEDとの組み合わせ)
本発明の組成物に関して、代表的な組み合わせの範囲および比を、以下に提供する。これらの範囲は、本明細書において記載される処方ストラテジーに基づく。
【0084】
(組み合わせ療法に関する成体の投薬量および比)
【0085】
【表4】

(実施例3:メマンチンおよびゾニサミドの放出プロフィール)
メマンチンとトピラメートとの組み合わせについて、放出の割合を以下の表に示す。累積分画は、処方物マトリックスから血清環境もしくは腸環境に放出された薬物物質の量である(例えば、米国特許第4,839,177号)。
【0086】
【表5】

(実施例4:メマンチンとトピラメートとの組み合わせを含む錠剤)
メマンチンおよびトピラメートの投与のための持続放出投薬形態を、3種の個別の区分として調製する。3種の個別の圧縮錠は、各々、異なる放出プロフィールを有し、続いてこの3種の錠剤をゼラチンカプセルへとカプセルに入れ、次いで閉鎖し、そしてこのカプセルを密封する。3種の錠剤の成分は、以下の通りである。
【0087】
【表6】

個々の薬物粒子、および他のコア成分の、流動床造粒機を使用して行われ得るような湿式造粒によって錠剤を調製するか、または成分混合物の直接的圧縮によって錠剤を調製する。錠剤1は、即時放出投薬形態であり、活性薬剤を投与後1〜2時間以内に放出する。これは、現在の投薬形態のdC/dT効果を回避するため、メマンチンを含まない。錠剤2および錠剤3は、従来のコーティング技術(例えば、噴霧コーティングなど)を使用して行われ得るように、遅延放出性コーティング材料によってコーティングされている。上記の表に列挙される特定の成分は、他の機能的に等価な成分に置き換えられ得る(例えば、希釈液、結合剤、潤滑剤、充填剤、コーティングなど)。
【0088】
患者へのカプセルの経口投与は、三相を有する放出プロフィールを生じる(実質的に即時である、第一の錠剤からのトピラメートの初期放出、主に投与の3時間〜5時間後に起こる、第二の錠剤からのメマンチンおよびトピラメートの放出、そして主に投与の7時間〜9時間後に起こる、第三の錠剤からのメマンチンおよびトピラメートの放出)。
【0089】
(実施例5:メマンチンとゾニサミドとの組み合わせを含むビーズ)
錠剤の代わりに薬物含有ビーズを使用することを除いて、実施例4の方法を繰り返す。不活性支持材料(例えば、ラクトース)を第一の(即時放出)パルスを提供する薬物でコーティングすることによって、ビーズの第一の分画を調製する。即時放出ビーズを、約3時間〜7時間を中心とする薬物放出を提供するのに十分な量の、腸溶性コーティング材料でコーティングすることによって、ビーズの第二の分画を調製する。ビーズの第一の分画のゾニサミド用量の半分を有する即時放出ビーズを、約7時間〜12時間を中心とする薬物放出を提供するのに十分な、大量の腸溶性コーティング材料でコーティングすることによって、ビーズの第三の分画を調製する。ビーズのこの3つの群は、実施例4におけるように、緩衝剤の存在下で、単一の錠剤へとカプセル化され得るかまたは圧縮され得る。あるいは、薬物コーティングラクトースビーズの代わりに、薬物粒子の3つの群が提供され、上記のようにコーティングされ得る。
【0090】
(実施例6:IRラモトリジン処方物のおよびCRラモトリジン処方物の放出プロフィール)
例示的なヒトPK放出プロフィールおよびCratioのグラフを、図2A〜2Eに示す。実施例5と同様に作製された2つの制御放出性組み合わせ生成物についての、現在市販されている製品であるIR投与物と比較した場合の放出プロフィールおよびCratioを示す。IR投与については、経口用量は、20mgメマンチンb.i.d.および200mgラモトリジンqdである。CR処方物1については、22.5mgメマンチンおよび50mgラモトリジンを、12時間にわたって一定速度で活性薬物を放出する制御放出経口送達処方物で提供する。CR処方物2は、メマンチン量が45mgであることのみ、CR処方物1と異なる。これらのCR生成物は、2つの活性成分について、ほぼ一定のCratioを維持し、計算されるCratio.varは、2時間〜24時間、および192時間〜240時間の範囲に及ぶ時間にわたって、23%および16%である。
【0091】
所望の放出プロフィールを達成することに加えて、この組み合わせ処方物は、より高用量のNMDArアンタゴニストを用いてさえ、dC/dTおよびCmax/Cmeanの好ましい低下を示し、したがって、本発明は、別の方法では必要となり得る段階的増加なしに、治療効果の増大のために、より大用量を提供し得る。さらに、増加した用量により、治療薬剤のより低頻度の投与が可能になる。
【0092】
【表7】

(実施例7:メマンチンおよびギャバペンチンの持続放出を提供するパッチ)
上記のように、NMDAアンタゴニストの持続放出処方物は、局所投与のために処方される。メマンチン経皮パッチ処方物は、例えば、米国特許第6,770,295号および同第6,746,689号において記載されるように、調製されている。
【0093】
接着性アクリル酸中の薬物の調製のため、5gのメマンチンおよび4gのギャバペンチンを、11gのエタノールに溶解し、この混合物を20gのDurotak 387−2287(National Starch & Chemical,U.S.A.)に添加する。この薬物ゲルを、コーティング機(例えば、RK Print Coat Instr.Ltd,Type KCC 202 control coater)を用いて、裏打ち膜(Scotchpak 1012;3M Corp.,U.S.A.)上にコーティングする。浸潤層の厚さは、400μmである。この薄層を、室温で20分間、次いで40℃で30分間乾燥させる。ポリエステル放出ライナーを、乾燥した薬物ゲル上に積層する。このシートをパッチへと切断し、使用するまで(袋にパックして)2℃〜8℃で保存する。このパッチ中のメマンチンの濃度は、5.6mg/cmと8mg/cmとの間の範囲であり、一方ギャバペンチンは、4.4mg/cmと6.5mg/cmとの間の範囲である。
【0094】
図3B〜3Eは、即時放出プロフィールと本実施例の予測される24時間プロフィールとを比較するグラフである。図3Fおよび図3Gは、長期にわたる、よりなだらかな反応として、制御放出パッチにおけるCratioの改善を示す。これらのグラフは、成分のほぼ一定な注入の利点、ならびに正確な定常状態比(Cratio,ss)を確立することの重要性、そして最適な治療効果を達成するように投薬形態濃度を改変することの重要性を示す。
【0095】
さらなる実施形態は、特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、NMDAレセプターアンタゴニストの制御放出がdC/dtの低下をもたらすことを示すグラフである。
【図2−1】図2Aは、IR投与についての24時間および10日間にわたるAPI濃度を示す、一連のグラフである。メマンチンは、20mg bid(Tmax 3時間、T1/2 60時間)で提供され、そしてラモトリジンは、200mg qd(Tmax 2時間、T1/2 12時間)で提供される。
【図2−2】図2Bは、CR処方物1についての24時間および10日間にわたるAPI濃度を示す、一連のグラフである。メマンチンは、22.5mg qd(Tmax 12時間、T1/2 60時間)で提供される一方、ラモトリジンは、50mg qd(Tmax 12時間、T1/2 12時間)で提供される。
【図2−3】図2Cは、CR処方物2についての24時間および10日間にわたるAPI濃度を示す、一連のグラフである。メマンチンは、45mg qd(Tmax 12時間、T1/2 60時間)で提供される一方、ラモトリジンは、50mg qd(Tmax 12時間、T1/2 12時間)で提供される。
【図2−4】図2Dは、IR投与およびCR処方物1についての、メマンチン濃度に対するラモトリジン濃度の比を示すグラフである。
【図2−5】図2Eは、IR投与およびCR処方物2についての、メマンチン濃度に対するラモトリジン濃度の比を示すグラフである。
【図3−1】図3Aは、IR、およびCR処方物としての、ギャバペンチンおよびメマンチンの薬物動態特性をまとめた表である。
【図3−2】図3B〜3Gは、IR、およびCR処方物としてのメマンチンとギャバペンチンの、PKプロフィールおよびCratioを示すグラフである。
【図3−3】図3B〜3Gは、IR、およびCR処方物としてのメマンチンとギャバペンチンの、PKプロフィールおよびCratioを示すグラフである。
【図3−4】図3B〜3Gは、IR、およびCR処方物としてのメマンチンとギャバペンチンの、PKプロフィールおよびCratioを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物であって、以下:
(a)NMDAレセプターアンタゴニスト;
(b)第二の薬剤;および
(c)薬学的に受容可能なキャリアを含有し、
ここで、該薬剤は抗てんかん薬(AED)であり、該NMDAレセプターアンタゴニストまたは該第二の薬剤のうちの少なくとも1つは、持続放出投薬形態で提供される、薬学的組成物。
【請求項2】
前記NMDAレセプターアンタゴニストが、IR処方物に対して約80%未満の速度のdC/dTを有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記NMDAレセプターアンタゴニストが、該NMDAレセプターアンタゴニストが被験体に導入された後、およそ2時間〜少なくとも12時間、およそ1.6以下のCmax/Cmeanを有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記NMDAレセプターアンタゴニストと前記第二のAEDとの相対的Cratio.varが、投与後2時間から12時間まで100%未満である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記NMDAレセプターアンタゴニストと前記第二のAEDとの相対的Cratio.varが、投与後2時間から12時間まで、対応するIR処方物の約70%未満である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記第二の薬剤が、GABAトランスアミナーゼインヒビター、GABA再(取り込み)インヒビター、カルボニックアンヒドラーゼインヒビター、ベンゾジアゼピン、またはナトリウムチャネルインヒビターである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記NMDAレセプターアンタゴニストが、メマンチンであり、そして前記第二の薬剤が、オキシカルバゼピン、ギャバペンチン、ラモトリジン、トピラメート、バルプロ酸、ゾニサミド、またはビガバトリンである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的組成物が、経口送達、経鼻送達、非経口送達、部分局所送達、経上皮送達、経皮パッチ送達、皮下送達、または吸入送達のために処方される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記薬学的組成物が、懸濁液、カプセル、錠剤、坐剤、ローション、またはパッチとして処方される、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記NMDAレセプターアンタゴニストが、メマンチンであり、前記第二の薬剤が、トピラメートである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
CNS関連状態を処置するための方法であって、該処置を必要とする被験体に、治療有効量のNMDAレセプターアンタゴニストと第二の薬剤とを含む組合せを投与する工程を包含し、ここで、該第二の薬剤はAEDであり、該NMDAレセプターアンタゴニストは、持続放出投薬形態で提供される、方法。
【請求項12】
前記CNS関連状態が、てんかん、発作障害、または痙攣障害である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記NMDAレセプターアンタゴニストおよび前記第二の薬剤が、同時に投与されるか、または連続的に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記NMDAレセプターアンタゴニストおよび前記第二の薬剤が、単一組成物として投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記CNS関連状態が、慢性侵害受容痛である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記NMDAレセプターアンタゴニストがメマンチンであり、そして前記第二の薬剤がトピラメートである、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【公表番号】特表2007−522248(P2007−522248A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553350(P2006−553350)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/004819
【国際公開番号】WO2005/079773
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(505357339)ニューロモレキュラー・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】NEUROMOLECULAR, INC.
【Fターム(参考)】