説明

はんだ供給装置および半導体装置の製造方法

【課題】はんだの塗布後にはんだを押しつぶす別工程を行うことなく、半導体チップの接合面に一様に濡れる所望形状のはんだを、はんだの塗布と同時に形成できるようにする。
【解決手段】基板2の一面上に、はんだ4を配置し、はんだ4の上に半導体チップ1を搭載し、はんだ4を介して半導体チップ1を基板2に接合するときに、はんだ4を基板2の一面に配置するはんだ供給装置であって、はんだ4を溶融させる溶融部20と、はんだ4を基板2の一面に配置したときの当該はんだ4の形状に対応する空間形状をなすキャビティ31を有する型30と、溶融部20にて溶融したはんだ4を型30のキャビティ31へ充填するノズル40とを備えており、型30を基板2の一面に接触させた状態でキャビティ31に溶融したはんだ4の充填を行うことにより、基板2の一面上にて、はんだ4を、キャビティ31の空間形状に対応した形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップを基板に搭載し、はんだ付けするときに用いられるはんだ供給装置、および、半導体チップを基板にはんだ付けする半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の一般的なはんだ供給工程では、糸状のはんだを導出するノズルを備えたはんだ供給装置を用い、基板の一面上に、はんだを供給し、基板上で溶融させる。その後、チップ搭載工程では、その溶融したはんだの上に半導体チップを搭載し、溶融したはんだを押しつぶすことで、チップ全体にはんだを濡れ広げて、半導体チップを基板に接合し、半導体装置を完成させる。
【0003】
ここで、図4は、従来の典型的なはんだ供給工程およびチップ搭載工程を示す工程図である。図4において、(a)ははんだ供給工程を示す概略断面図、(b)ははんだ供給後のはんだ4を基板2の一面上からみたときの概略平面図、(c)はチップ搭載工程を示す概略断面図、(d)はチップ搭載後の接合構造体の概略断面図、(e)は同構造体の概略平面図である。
【0004】
図4(a)に示されるように、はんだ供給装置のノズルJ1から、基板2の一面上、ここでは基板2の一面に設けられた導体3上に、糸状のはんだ4を供給する。このとき、固体のはんだ4を基板2上で溶かして塗布するために、図4(b)に示されるように、塗布後のはんだ4の形状が円形になっていた。
【0005】
その後、チップ搭載工程では、図4(c)に示されるように、マウント装置100で、その溶融したはんだ4の上に半導体チップ1を搭載し、溶融したはんだ4を押しつぶすことで、チップ全体にはんだ4を濡れ広げるようにする。
【0006】
この半導体チップ1を搭載したとき、図4(d)、(e)に示されるように、はんだ4は同心円状に広がり、チップ角部にてはんだ4が濡れないという問題が発生していた。この問題については、たとえば、半導体チップの接合面に、はんだの不濡れが発生することで、半導体チップ上のワイヤボンディングにおいて、接続信頼性の低下が懸念される。
【0007】
そこで、これを回避するために、従来では、塗布したはんだを、別の治具を用いてチップ搭載の前に押しつぶして、半導体チップと同形状の濡れやすい形状まで押し広げるという別工程を必要としていた。
【0008】
一方、従来では、特許文献1のように、はんだを溶融させ、溶融状態のはんだを基板上に塗布して供給する方法が提案されている。また、特許文献2では、固体はんだを加熱部で溶融させて所定量のはんだを得て、これを基板に塗布する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−323467号公報
【特許文献2】特開2006−179534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1、2のような方法では、溶融したはんだを、その状態のまま、基板上に塗布するために、はんだの形状は、やはり円形になり、はんだの濡れ性を向上させることはできない。また、溶融はんだの塗布時には、はんだが飛び散ったりするなどの不具合も想定される。
【0011】
いずれにせよ、従来では、半導体チップの接合面に一様に濡れる所望形状のはんだを適切に形成できないという問題、たとえば塗布後のはんだ形状が円形でチップ角まではんだが濡れないという問題に対して、塗布したはんだを、後工程で別途押しつぶすことなく、はんだ塗布と同時に完成できるものはなかった。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、はんだの塗布後にはんだを押しつぶす別工程を行うことなく、半導体チップの接合面に一様に濡れる所望形状のはんだを、はんだの塗布と同時に形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、基板(2)の一面上に、はんだ(4)を配置し、はんだ(4)の上に半導体チップ(1)を搭載し、はんだ(4)を介して半導体チップ(1)を基板(2)に接合するときに、はんだ(4)を基板(2)の一面に配置するはんだ供給装置であって、はんだ(4)を溶融させる溶融部(20)と、はんだ(4)を基板(2)の一面に配置したときの当該はんだ(4)の形状に対応する空間形状をなすキャビティ(31)を有する型(30)と、溶融部(20)にて溶融したはんだ(4)を型(30)のキャビティ(31)へ充填するノズル(40)とを備えており、型(30)を基板(2)の一面に接触させた状態でキャビティ(31)に溶融したはんだ(4)の充填を行うことにより、基板(2)の一面上にて、はんだ(4)を、キャビティ(31)の空間形状に対応した形状に形成することを特徴とする。
【0014】
それによれば、型(30)のキャビティ(31)を、はんだ(4)の狙いの配置形状に対応する空間形状をなすものとし、溶融したはんだ(4)をそのまま型(30)のキャビティ(31)に充填して、キャビティ(31)の空間形状をなすはんだ(4)を、基板(2)の一面上に形成できる。
【0015】
そのため、はんだの塗布後にはんだを押しつぶす別工程を行うことなく、半導体チップ(1)の接合面に一様に濡れる所望形状のはんだ(4)を、はんだ(4)の塗布と同時に形成することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のはんだ供給装置において、半導体チップ(1)は矩形板状をなすものであり、キャビティ(31)は、半導体チップ(1)の中心部に相当する部位に交差部を有し、この交差部から半導体チップ(1)の四隅に相当する部位に向かって延びる部分を有する平面十字形状のものであることを特徴としている。
【0017】
それによれば、矩形板状の典型的な半導体チップ(1)に対して、適切な形状のはんだ(4)を形成できる。
【0018】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のはんだ供給装置において、溶融部(20)、型(30)、ノズル(40)のうち溶融したはんだ(4)と接触する部位は、ダイヤモンドコーティングされていることを特徴としている。
【0019】
それによれば、装置内における溶融したはんだ(4)の流れを良くすることができ、また、はんだ(4)からの型(30)の取り外しが容易になる。
【0020】
請求項4に記載の発明では、基板(2)の一面上に、はんだ(4)を配置し、はんだ(4)の上に半導体チップ(1)を搭載し、はんだ(4)を介して半導体チップ(1)を基板(2)に接合してなる半導体装置の製造方法において、はんだ(4)を基板(2)の一面に配置するはんだ供給工程では、はんだ(4)を基板(2)の一面に配置したときの当該はんだ(4)の形状に対応する空間形状をなすキャビティ(31)を有する型(30)を用い、型(30)を基板(2)の一面に接触させた状態で、キャビティ(31)に溶融したはんだ(4)を充填することにより、基板(2)の一面上にて、はんだ(4)を、キャビティ(31)の空間形状に対応した形状に形成することを特徴とする。
【0021】
それによれば、型(30)のキャビティ(31)を、はんだ(4)の狙いの配置形状に対応する空間形状をなすものとし、溶融したはんだ(4)をそのまま型(30)のキャビティ(31)に充填して、キャビティ(31)の空間形状をなすはんだ(4)を、基板(2)の一面上に形成できるため、はんだの塗布後にはんだを押しつぶす別工程を行うことなく、半導体チップ(1)の接合面に一様に濡れる所望形状のはんだ(4)を、はんだ(4)の塗布と同時に形成することができる。
【0022】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係るはんだ供給装置の概略断面図である。
【図2】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るはんだ供給装置の概略断面図である。
【図4】従来の典型的なはんだ供給工程およびチップ搭載工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0025】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るはんだ供給装置S1の概略断面構成を示す図であり、図1(b)は(a)中の一点鎖線A−Aに沿った概略断面図、図1(c)は(a)中の一点鎖線B−Bに沿った概略断面図である。
【0026】
なお、図1(a)は、本実施形態のはんだ供給装置S1により、基板2の一面の導体3上にはんだ4を供給している状態を示しており、同図中、固体状態のはんだ4には斜線ハッチング、溶融状態のはんだ4には点ハッチングを施している。
【0027】
また、図2は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図であり、(a)は、はんだ供給工程を示す概略断面図、(b)は(a)における導体3上のはんだ4の平面図、(c)はチップ搭載工程を示す概略断面図、(d)は(c)における導体3上のはんだ4の平面図、(e)は半導体チップ1の搭載完了後の状態を示す概略断面図、(f)は(e)における導体3上のはんだ4の平面図である。
【0028】
このはんだ供給装置S1は、図2に示されるように、基板2の一面の導体3上に、はんだ4を配置し、はんだ4の上に半導体チップ1を搭載し、はんだ4を介して半導体チップ1を基板2の導体3に接合してなる半導体装置を製造するときに、用いられる。具体的には、図2(a)に示される、はんだ4を基板2の一面の導体3上に配置するはんだ供給工程に用いられるものである。
【0029】
ここで、半導体チップ1としては、一般的なシリコン半導体などよりなるICチップなどが挙げられる。典型的には、上記した図4同様、本実施形態の半導体チップ1は矩形板状のものである。
【0030】
また、基板2としては、特に限定されるものではないが、プリント基板やセラミック基板などが挙げられ、また、単層基板でも多層基板でもよい。さらには、基板2としてはリードフレームなどであってもよい。
【0031】
基板2の一面上の導体3としては、Cu、Ag、Al、W、Moなどの導体材料よりなる膜が挙げられる。このような導体3は、メッキやペーストの塗布・硬化などにより形成されるものである。
【0032】
はんだ供給装置S1は、大きくは、固体のはんだ4が通る固体はんだ供給部10、固体のはんだ4を溶融する溶融部20、溶融したはんだ4を型30に導くノズル40、および溶融したはんだ4を所望の形状に形成する型30を備えて構成されている。これら各部10〜40はステンレスなどの耐熱性の金属を用い、切削等の一般的な金属加工により形成されている。
【0033】
固体はんだ供給部10は、固体のはんだ4、ここでは糸はんだ4が通る孔11を有する。具体的には、固体はんだ供給部10は柱状をなし、孔11は、その内部にて軸方向に延びて貫通する貫通孔とされている。そして、固体のはんだ4は、この孔11を通って溶融部20に送られるようになっている。
【0034】
具体的には、図1において、固体はんだ供給部10の上方に図示しないリールがあり、このリールに糸はんだが巻き取られている。そして、このリールが必要量回転することで、固体のはんだ4が溶融部20に送られるようになっており、この固体のはんだ4の送り量により、溶融するはんだ4の量、すなわち、はんだ4の塗布量を必要量に制御することができるようになっている。
【0035】
また、固体はんだ供給部10の孔11には、窒素や水素、または窒素と水素の混合ガス(N+H)などの還元性ガスが流れており、固体のはんだ4の酸化を防止するようにしている。
【0036】
具体的には、還元性ガスを孔11内部に流通させるための図示しない出入り口が設けられており、還元性ガスのボンベなどからポンプによって送られる当該還元性ガスが、当該入口から孔11を流れ当該出口から出ていく、というように流れる。なお、このガスは、溶融したはんだ4をその圧力によって、基板2上まで押し出す役割もする。
【0037】
固体はんだ供給部11の下端、すなわち固体はんだ供給部11の基板2側の端部には、断熱材50を介して、ノズル40が取り付けられている。このノズル40には溶融部20が内蔵されている。ここで、ノズル40は、図示しないが、締結や係止などの結合手段により、固体はんだ供給部10に対して取り付け・取り外し可能に接続されている。
【0038】
断熱材50は、たとえばアルミナなどのセラミックよりなるものであり、ノズル40と固体はんだ供給部10との断熱を行うものである。それにより、ノズル40に一体化された溶融部20の熱によって固体はんだ供給部10内の固体のはんだ4が溶融されない構造とされている。
【0039】
ノズル40は、柱状をなすものであり、ここでは円柱状をなす。ここで、ともに柱状をなすノズル40と固体はんだ供給部10とは互いの軸が一致する同軸の状態で接続されている。そして、固体のはんだ4を溶融させる溶融部20は、このノズル40の軸部分、つまり、ノズル40内部の中心部に設けられている。
【0040】
この溶融部20は、ノズル40の外部に設けられたヒータ21に電気的に接続されており、このヒータ21によって、はんだ4の溶融温度以上(たとえば200〜250℃)に加熱されることで、固体はんだ供給部10から送られてくる固体のはんだ4を溶融するものである。
【0041】
具体的には、溶融部20の上面は、固体はんだ供給部10の孔11の下端側開口部に臨んでおり、その開口部から送られてくる固体のはんだ4が、溶融部20の上面に接触し、そこで溶けて、溶融状態のはんだ4とされるようになっている。ここで、ヒータ21は、一般的な通電制御式のものであり、溶融部20に電流を流して、これを発熱させるものである。
【0042】
そして、ノズル40は、溶融部20にて溶融したはんだ4を、その下方にて基板2の導体3上に位置する型30へ送り、型30のキャビティ31へ充填するものである。そのために、ノズル40の内部において、溶融部20の周囲には、溶融部20の上面で溶けたはんだ4を型30まで送るためのノズル孔41が設けられている。
【0043】
このノズル孔41は、溶融部20の上面にて、固体はんだ供給部10の孔11の下端側開口部に連通し、溶融部20の下端部すなわちノズル40の下端部にて、型30のキャビティ31に連通するもので、ノズル40の軸方向を貫通する孔とされている。そして、溶融部20の上面にて溶融したはんだ4は、ノズル孔41をとおって型30のキャビティ31まで流れ落ちるようになっている。
【0044】
ここで、溶融部20の形状は、溶融したはんだ4が流れ落ちやすいように、中心部が高い凸形状になっている。具体的には、溶融部20の上面は、その中央部が上に凸となり周辺部に向かって低くなっている形状、ここでは円錐形状とされている。これにより、溶融部20の上面で溶融したはんだ4が、当該上面の周辺部へ流れやすくなる。
【0045】
そして、溶融したはんだ4は、当該周辺部からノズル孔41に流れ込んで、型30のキャビティ31へ導かれる。このとき、溶融部20の熱により、ノズル40がはんだ溶融温度以上に加熱されることで、ノズル孔41を通る溶融したはんだ4が適切に流れるようになっている。
【0046】
また、ノズル40の下端、すなわちノズル40の基板2側の端部には、型30が取り付けられている。この型30とノズル40との接続は、溶接、接着などによる接合でもよいし、締結や係止などによる取り付け・取り外し可能な接続でもよい。
【0047】
この型30は、はんだ4が基板2の一面(ここでは導体3上)に配置されたときの当該はんだ4の形状に対応する空間形状をなすキャビティ31を有する。つまり、キャビティ31の空間形状は、半導体チップ1の接合面にてはんだ4の不濡れ部を防止する所望の形状とされている。そして、基板2の一面に配置されたときのはんだ4の量や形状が狙いのものとなるように、キャビティ31の形状およびサイズが規定されている。
【0048】
具体的に、キャビティ31は、型30をノズル40側から基板2側へ貫通する貫通穴として構成されている。そして、このキャビティ31に、ノズル40のノズル孔41から送られてくる溶融したはんだ4が充填され、溶融したはんだ4が導体3上にて所望形状とされるようになっている。
【0049】
ここでは、図2に示される半導体チップ1は典型的な矩形板状をなすものであり、この典型的な半導体チップ1に対応して、キャビティ31は平面十字形状のものとされている(図1(c)参照)。
【0050】
具体的には、キャビティ31は、導体3上の半導体チップ1の搭載領域において半導体チップ1の中心部に相当する部位に交差部を有し、この交差部から半導体チップ1の四隅に相当する部位に向かって延びる部分を有する平面十字形状のものとされている。つまり、ここでは、キャビティ31の空間形状は、型30の厚さをその厚さとし、その開口形状すなわち平面形状が十字形をなすものである。
【0051】
また、型30のサイズは、基本的に導体3のサイズに合わせてあり、型30の厚さはたとえば1〜5mm程度とする。また、所望のはんだ量およびはんだ4の形状によって、キャビティ31の形状やサイズは適宜変更するべきである。
【0052】
なお、この場合、ノズル40は、そのノズル孔41がキャビティ31に連通してキャビティ31へ適切に溶融したはんだ4を流し込むことを必要とするものであるため、キャビティ31つまり型30を代えたときは、それに合わせたノズル40を必要とする。
【0053】
そこで、本実施形態では、上述したように、ノズル40と固体はんだ供給部10とを取り付け・取り外し可能とすることで、半導体チップ1の形状やサイズ等に応じて、ノズル40および型30を取りかえるようにする。
【0054】
また、上述のように、本実施形態の溶融部20は、固体のはんだ4に熱を与えることにより固体のはんだ4を溶融させることに加えて、ノズル40をはんだ溶融温度以上に加熱してノズル孔41を通る溶融したはんだ4の溶融状態を適切に確保するが、さらに、型30もはんだ溶融温度以上に加熱することでキャビティ31内のはんだ4の溶融状態を確保する機能も有するものである。
【0055】
また、本実施形態のはんだ供給装置においては、溶融部20、型30、ノズル40のうち溶融したはんだ4と接触する部位は、ダイヤモンドコーティングされている。このダイヤモンドコーティングは、当該部位の表面にダイヤモンド粒子をスパッタなどで付着させるものである。
【0056】
具体的には、溶融部20の表面、型30におけるキャビティ31の内面、ノズル40におけるノズル孔41の内面に、ダイヤモンドコーティングが施される。このようなコーティングは、はんだ4に濡れずに、はんだ4が付着しにくいものであり、溶融したはんだ4の流れを良好に確保したり、はんだ4からの型30の取り外しを容易にするなどの効果が発揮される。
【0057】
また、このはんだ供給装置S1においては、上記各部10〜50の全体が一般的なアクチュエータなどにより、図1(a)中の上下方向、すなわち、基板2の一面に垂直方向に沿って基板2に対して近づく、または遠ざかるように移動するようになっている。
【0058】
次に、図2に示される本実施形態の半導体装置の製造方法について述べる。本実施形態の半導体装置は、基板2の一面の導体3上に、はんだ4を配置し、はんだ4の上に半導体チップ1を搭載し、はんだ4を介して半導体チップ1を基板2の導体3に接合してなるものである。
【0059】
まず、本製造方法では、図2(a)に示されるように、はんだ供給工程として、型30を基板2の一面の導体3に接触させた状態でキャビティ31に溶融したはんだ4の充填を行う。
【0060】
具体的には、型30を基板2の一面の導体3に接触させることで、貫通穴としてのキャビティ31における基板2側の開口部を、基板2の一面の導体3で閉塞する。それにより、キャビティ31と当該導体3とで区画された空間は、ノズル40のノズル孔41のみに連通した状態となる。
【0061】
そして、この状態で、具体的には、固体はんだ供給部10から、所定長さの固体のはんだ4を溶融部20に送り込み、溶融部20にて溶融させる。溶融したはんだ4は、ノズル40のノズル孔41を通って、型30のキャビティ31に充填される。それにより、基板2の一面すなわち導体3上にて、はんだ4を、キャビティ31の空間形状に対応した形状に形成することができる。
【0062】
ここでは、図2(b)に示されるように、導体3とキャビティ31とで囲まれた空間に充填されたはんだ4は、導体3上にて、キャビティ31の空間形状と同じく十字形状のものとなる。つまり、導体3上に配置されたはんだ4は、型30の厚さをその厚さとする平面十字形をなす。
【0063】
ここで、はんだ供給工程では、基板2は、基板2を支持する図示しない土台においてヒータ等によって加熱されている。なお、この基板2の加熱は必要に応じて行えばよく、基板2上にてキャビティ31全体に、はんだ4が確実に拡がるならば、無くてもよい。
【0064】
次に、この充填されたはんだ4から型30を取り外す。具体的には、図2(a)の状態から、はんだ供給装置S1型を基板2の上方に移動させ、型30を取り外す。なお、この型30を取り外すときは、はんだ4は溶融状態でもよいし、固化状態でもよい。
【0065】
いずれにせよ、キャビティ31の内面がはんだ4に濡れない表面処理、ここではダイヤモンドコーティングされているので、どちらの状態でもはんだ4から型30を容易に取り外すことができる。なお、固体状態のはんだ4から型30を取り外した場合、その後、半導体チップ1をはんだ4上に搭載した状態で、はんだ4をリフローさせれば、はんだ付けが行える。
【0066】
こうして、はんだ4を基板2の一面に配置するはんだ供給工程を行った後、図2(c)に示されるように、はんだ4の上に半導体チップ1を搭載するチップ搭載工程を行う。ここで、半導体チップ1を搭載するために用いるチップ搭載装置100は、一般的な方法と同様に、真空吸着によって半導体チップ1を吸着するとともに、吸引を停止して半導体チップ1を離脱させるものである。
【0067】
具体的には、チップ搭載装置100の先端部に半導体チップ1を吸引して保持しつつ、半導体チップ1を基板2の一面の導体3に対向させ、導体3に向かって降下させることにより、半導体チップ1の搭載を行うものである。
【0068】
また、チップ搭載装置100は、一般のものと同様、半導体チップ1を加熱するために、たとえば図示しない通電式のヒータなどによりチップ搭載装置100自身が加熱されるようになっている。
【0069】
それにより、チップ搭載時に、半導体チップ1の接合面へのはんだ4の濡れ性を向上させるために、必要に応じて、チップ搭載装置100におけるチップ吸着部である先端部も、はんだ溶融温度(たとえば200℃)以上に加熱しておくとよい。
【0070】
そして、チップ搭載工程にて、半導体チップ1の接合面をはんだ4に接触させ、半導体チップ1をはんだ4に押しつけていく。
【0071】
このとき、溶融したはんだ4は、キャビティ31の上記平面十字形状に一致した形状とされているので、当該はんだ4上に半導体チップ1を搭載したときに、はんだ4は半導体チップ4の接合面の四隅部すなわち全ての角部に濡れ、且つ、当該接合面の中央部から各辺部に向かって濡れ拡がる(図2(d)参照)。
【0072】
そして、最終的には、図2(f)に示されるように、はんだ4は半導体チップ1の接合面全体に濡れ拡がる。そして、この状態で、はんだ4を固化してやれば、図2(e)、(f)に示されるように、はんだ4を介して、半導体チップ1が基板2に接合され、本半導体装置のはんだ付け構成ができあがる。
【0073】
ところで、本実施形態によれば、型30のキャビティ31を、はんだ4の狙いの配置形状に対応する空間形状をなすものとし、溶融したはんだ4をそのまま型30のキャビティ31に充填して、キャビティ31の空間形状をなすはんだ4を、基板2の一面上に形成できる。
【0074】
そのため、本実施形態によれば、はんだ4の塗布後にはんだ4を押しつぶす別工程を行うことなく、半導体チップ1の接合面に一様に濡れる所望形状のはんだ4を、はんだ4の塗布と同時に形成することができる。
【0075】
なお、上記図示例では、矩形の接合面である半導体チップ1に対して上記平面十字形の開口部を有するキャビティ31としたが、キャビティ31の開口形状を半導体チップ1と同一形状に合わせてもよい。つまりキャビティ31を半導体チップ1と同じ平面矩形の開口形状としてもよい。
【0076】
しかし、チップ中央部およびチップ角部が確実に接合されれば、基本的には半導体チップ1の接合信頼性は確保されるので、それを考慮すると、本実施形態の上記十字形状のキャビティ31は、極力少ないはんだ4の量で、接続信頼性の確保を達成できる好ましい形状である。
【0077】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係るはんだ供給装置S2の概略断面構成を示す図である。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、溶融部20の構成が相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0078】
上記第1実施形態では、ノズル40に溶融部20が内蔵されていたが、図3に示されるように、本実施形態では、固体はんだ供給部10の一部すなわち下端側が溶融部20とされている。具体的には、固体はんだ供給部10の下端側の外側に、通電により発熱するニクロム線などよりなる熱線22が巻き付けられている。
【0079】
そして、この熱線22は、図示しない通電手段により発熱し、その内側の部分である固体はんだ供給部10の下端側、すなわち溶融部20を熱する。すると、この溶融部20の熱により、溶融部20内の孔11に位置する固体のはんだ4が溶けて、溶融状態となり、溶融したはんだ4とされる。
【0080】
そして、溶融部20にて溶融したはんだ4は、上記同様に溶融状態のまま、ノズル40のノズル孔41を通り、型30のキャビティ31に充填される。なお、図示しないが、上記熱線22は、ノズル40の外側にも巻き付けられており、それによりノズル40および型30がはんだ溶融温度以上に加熱され、ノズル40内の溶融したはんだ4の流れを良好に確保するようにしている。
【0081】
このように、本実施形態のはんだ供給装置S2およびそれを用いた半導体装置の製造方法によっても、上記第1実施形態と同様に、はんだ4の塗布後にはんだ4を押しつぶす別工程を行うことなく、半導体チップ1の接合面に一様に濡れる所望形状のはんだ4を、はんだ4の塗布と同時に形成することができる。
【0082】
なお、本実施形態のはんだ供給装置S2においては、ノズル40と固体はんだ供給装置10の下端側の溶融部20とが、上記同様、取り付け・取り外し可能に接続されることにより、半導体チップ1の形状やサイズに見合ったノズル40および型30を選択して使用することが可能とされている。
【0083】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、基板2の一面の導体3上にはんだ4を供給するものであったが、基板2の一面に、はんだ4を供給するものであれば上記各実施形態は採用することができ、上記導体3はなくてもよい。たとえば、基板2がリードフレームなどの場合には、そのリードフレームの面に直にはんだ4を供給することが行われる。
【0084】
また、固体状態のはんだ4としては、上記した糸状のもの、すなわち糸はんだに限定するものではなく、はんだボールを使用することも可能である。この場合、たとえば、はんだボールを、パチンコ玉の如く、固体はんだ供給部10の孔11に順次送りこむようにすればよい。
【0085】
また、上記した通り、型30のキャビティ31の形状は、搭載する半導体チップ1のサイズや形状によって変更されるものであり、上記図示例に限定されるものではないことはもちろんである。さらに、ノズル40のノズル孔41の配置形態も、キャビティ31の形状に対応して変更されるものであり、これも上記図示例に限定されるものではないことはもちろんである。
【0086】
また、上記したチップ搭載装置100は、上記はんだ供給装置S1、S2と一体化されたものであってもよい。なお、このような一体型の場合には、はんだ供給工程の前に半導体チップ1をチップ搭載装置に吸着しておく必要がある。
【0087】
このような一体型の場合、具体的には、はんだ供給装置とチップ搭載装置とを、図示しない電気式のアクチュエータなどに保持し、当該アクチュエータによって、同方向への一体的な移動と、各装置毎の独立した移動とを可能とすればよく、このようなことは、たとえば種々のアクチュエータを組み合わせることで容易に実現される。
【符号の説明】
【0088】
1 半導体チップ
2 基板
3 導体
4 はんだ
10 固体はんだ供給部
11 固体はんだ供給部の孔
20 溶融部
21 ヒータ
22 熱線
30 型
31 キャビティ
40 ノズル
41 ノズル孔
50 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2)の一面上に、はんだ(4)を配置し、前記はんだ(4)の上に半導体チップ(1)を搭載し、前記はんだ(4)を介して前記半導体チップ(1)を前記基板(2)に接合するときに、前記はんだ(4)を前記基板(2)の一面に配置するはんだ供給装置であって、
前記はんだ(4)を溶融させる溶融部(20)と、
前記はんだ(4)を前記基板(2)の一面に配置したときの当該はんだ(4)の形状に対応する空間形状をなすキャビティ(31)を有する型(30)と、
前記溶融部(20)にて溶融した前記はんだ(4)を前記型(30)の前記キャビティ(31)へ充填するノズル(40)とを備えており、
前記型(30)を前記基板(2)の一面に接触させた状態で前記キャビティ(31)に前記溶融した前記はんだ(4)の充填を行うことにより、前記基板(2)の一面上にて、前記はんだ(4)を、前記キャビティ(31)の空間形状に対応した形状に形成することを特徴とするはんだ供給装置。
【請求項2】
前記半導体チップ(1)は矩形板状をなすものであり、
前記キャビティ(31)は、前記半導体チップ(1)の中心部に相当する部位に交差部を有し、この交差部から前記半導体チップ(1)の四隅に相当する部位に向かって延びる部分を有する平面十字形状のものであることを特徴とする請求項1に記載のはんだ供給装置。
【請求項3】
前記溶融部(20)、前記型(30)、前記ノズル(40)のうち前記溶融した前記はんだ(4)と接触する部位は、ダイヤモンドコーティングされていることを特徴とする請求項1または2に記載のはんだ供給装置。
【請求項4】
基板(2)の一面上に、はんだ(4)を配置し、前記はんだ(4)の上に半導体チップ(1)を搭載し、前記はんだ(4)を介して前記半導体チップ(1)を前記基板(2)に接合してなる半導体装置の製造方法において、
前記はんだ(4)を前記基板(2)の一面に配置するはんだ供給工程では、前記はんだ(4)を前記基板(2)の一面に配置したときの当該はんだ(4)の形状に対応する空間形状をなすキャビティ(31)を有する型(30)を用い、
前記型(30)を前記基板(2)の一面に接触させた状態で、前記キャビティ(31)に溶融した前記はんだ(4)を充填することにより、前記基板(2)の一面上にて、前記はんだ(4)を、前記キャビティ(31)の空間形状に対応した形状に形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−238647(P2011−238647A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106274(P2010−106274)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】