説明

めっき皮膜−ポリイミド積層体及びその製造方法

【解決手段】表面にカルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基を有するポリイミドの該表面を、互いに離間する分子鎖両末端にアミノ基を各々一つ以上有する有機アミン化合物を含有する水溶液で表面処理することにより、カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基と、有機アミン化合物の一方の末端のアミノ基とを反応させて、カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基をアミン化合物分子で修飾し、次いで、金属を含む活性化溶液で触媒化処理することにより、アミン化合物分子の他方の末端のアミノ基に金属触媒を付与し、次いで、金属触媒を核として無電解めっきして無電解めっき皮膜を形成することによりめっき皮膜−ポリイミド積層体を製造する。
【効果】ポリイミド上に、ポリイミド表面のラフネスを増加させることなく、平坦性の高いめっき皮膜を密着性よく積層しためっき皮膜−ポリイミド積層体を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板のベース基材として用いられる屈曲性に優れた有機絶縁材料であるポリイミド上に、ポリイミド表面のラフネスを増加させることなく、密着性よくめっき皮膜を積層しためっき皮膜−ポリイミド積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化や高機能化により、実装配線材料の微細化に対応したフレキシブルプリント配線板用材料の高性能化への要求が高まっている。配線層の微細化、薄膜化に対応するためには、ラフネスを少なくして成膜しなくてはならない。これまでには、ポリイミドにUVランプを照射することで、C−C結合、C−O結合などを切断し、マイクロアンカーを形成させ、絶縁層の表面に数10nmのラフネスを形成させて、ナノアンカー効果を利用する方法や、Pd触媒核を固定後、めっき法により金属薄膜を成膜する方法が検討されている。
【0003】
後者の方法としては、例えば、強アルカリを用いてポリイミドのイミド結合を開裂させ、内部にPdイオンを浸透させ、その後、還元によりポリイミド表層に無電解めっきのためのPd触媒化層を形成し、無電解めっき処理する方法がある。この方法では、形成後に熱処理を行うことで、再度イミド結合を形成させることができるため、結果としてポリイミド上に安定した無電解めっき用の触媒核が形成される反面、薄膜化の阻害となる数10〜200nmの金属−ポリイミドコンポジット層が形成されてしまう。また、強アルカリによる前処理も必要である。また、ポリイミド表面を酸素アッシングすることで水酸基を形成し、その後にシランカップリング剤をポリイミド上に塗布して、アミノ基を形成後に触媒化して無電解めっき処理する方法もある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−54357号公報
【特許文献2】特開2002−226972号公報
【特許文献3】特開2002−84049号公報
【特許文献4】特開平10−245444号公報
【特許文献5】特開2001−168496号公報
【特許文献6】特開2000−261128号公報
【特許文献7】特開2003−158373号公報
【特許文献8】特開昭49−52252号公報
【特許文献9】特開昭52−32943号公報
【特許文献10】特開昭63−111199号公報
【特許文献11】特開平9−104839号公報
【特許文献12】特開2003−327905号公報
【特許文献13】特開2003−327907号公報
【特許文献14】特開2005−162954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレキシブルプリント配線板の微細加工のためには、フレキシブルプリント配線板を形成する配線層自体の薄膜化とその表面の平坦性の向上が要求される一方で、配線層の平坦化のために導体である配線層を積層する樹脂等の絶縁体の表面を平坦化すると、配線層と絶縁体との界面での接着力が低下するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ポリイミド上に、ポリイミド表面のラフネスを増加させることなく、平坦性の高いめっき皮膜を密着性よく積層しためっき皮膜−ポリイミド積層体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電着ポリイミドは、その成膜機構から分子内に多数のカルボキシル基を持つために、一般的なポリイミドに比べてカルボキシル基による表面反応を期待できることから、本発明者は、カルボキシル基を反応活性点に使用したポリイミドの活性化処理を検討した。
【0008】
そして、本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、電着ポリイミドなどの、表面にカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を有するポリイミドの表面を、
互いに離間する分子鎖両末端にアミノ基を各々一つ以上有する有機アミン化合物を含有する水溶液で表面処理することにより、カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基と、有機アミン化合物の一方の末端のアミノ基とを反応させて、カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基を上記アミン化合物分子で修飾し、
次いで、金属を含む活性化溶液で触媒化処理することにより、アミン化合物分子の他方の末端のアミノ基に金属触媒を付与し、
次いで、金属触媒を核として無電解めっきして無電解めっき皮膜を形成することにより、ポリイミド表面のラフネスを増加させることなく、ポリイミド上に、平坦性の高いめっき皮膜が密着性よく積層しためっき皮膜−ポリイミド積層体が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は下記めっき皮膜−ポリイミド積層体及びめっき皮膜−ポリイミド積層体の製造方法を提供する。
[1]表面にカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を有するポリイミド上に、めっき皮膜が積層されためっき皮膜−ポリイミド積層体であって、
上記カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基が、互いに離間する分子鎖両末端にアミノ基を各々一つ以上有する有機アミン化合物の一方の末端のアミノ基との反応により修飾され、かつ上記アミン化合物分子の他方の末端のアミノ基に金属触媒が付与されて、上記めっき皮膜として金属触媒を核として成膜された無電解めっき皮膜が積層されてなることを特徴とするめっき皮膜−ポリイミド積層体。
[2]上記ポリイミドが、電着ポリイミドであることを特徴とする[1]記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体。
[3]上記電着ポリイミドが、カルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を分子構造内に有するポリイミド前駆体及びアニオン性ポリイミドから選ばれるポリイミド化合物の水溶液又は水と有機溶媒との混合溶媒溶液であるポリイミド電着液から、電着にて成膜したポリイミド薄膜であることを特徴とする[2]記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体。
[4]上記ポリイミドが、カルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を分子構造内に有するポリイミド前駆体及びアニオン性ポリイミドから選ばれるポリイミド化合物の水溶液又は水と有機溶媒との混合溶媒溶液を基材上に塗布し、加熱することにより成膜したポリイミド薄膜であることを特徴とする[1]記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体。
[5]上記有機アミン化合物が、炭素数2以上のアルキルポリアミン化合物であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体。
[6]ポリイミド上に、めっき皮膜が積層されためっき皮膜−ポリイミド積層体を製造する方法であって、
表面にカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を有するポリイミドの該表面を、
互いに離間する分子鎖両末端にアミノ基を各々一つ以上有する有機アミン化合物を含有する水溶液で表面処理することにより、上記カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基と、上記有機アミン化合物の一方の末端のアミノ基とを反応させて、上記カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基を上記アミン化合物分子で修飾し、
次いで、金属を含む活性化溶液で触媒化処理することにより、上記アミン化合物分子の他方の末端のアミノ基に金属触媒を付与し、
次いで、上記金属触媒を核として無電解めっきして無電解めっき皮膜を形成することを特徴とするめっき皮膜−ポリイミド積層体の製造方法。
[7]上記ポリイミドが、電着ポリイミドであることを特徴とする[6]記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体の製造方法。
[8]上記電着ポリイミドが、カルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を分子構造内に有するポリイミド前駆体及びアニオン性ポリイミドから選ばれるポリイミド化合物の水溶液又は水と有機溶媒との混合溶媒溶液であるポリイミド電着液から、電着にて成膜したポリイミド薄膜であることを特徴とする[7]記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体の製造方法。
[9]上記ポリイミドが、カルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を分子構造内に有するポリイミド前駆体及びアニオン性ポリイミドから選ばれるポリイミド化合物の水溶液又は水と有機溶媒との混合溶媒溶液を基材上に塗布し、加熱することにより成膜したポリイミド薄膜であることを特徴とする[6]記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体の製造方法。
[10]上記有機アミン化合物が、炭素数2以上のアルキルポリアミン化合物であることを特徴とする[6]乃至[9]のいずれかに記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体の製造方法。
【0010】
ポリイミド内部にイオン性の分子が存在すると絶縁特性、誘電率が悪くなるが、本発明においては、ポリイミドの表面に有機アミン化合物を導入するため、ポリイミド内部にイオン性の分子が存在しない。また、ポリイミド表面を荒らすことがないので、ラフネスも極めて低いものとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリイミド上に、ポリイミド表面のラフネスを増加させることなく、平坦性の高いめっき皮膜を密着性よく積層しためっき皮膜−ポリイミド積層体を提供することができる。
【0012】
また、本発明の製造方法によれば、めっき皮膜−ポリイミド積層体を、水系の浸漬処理のみで、短時間の浸漬時間でポリイミド上に配線層となるめっき皮膜を成膜して製造することが可能であり、また高価な薬剤を使用しなくても成膜が可能で、高温での熱処理が必要でないなど、従来法に比べて簡便かつ低コストで、平坦、かつ密着性の高いめっき皮膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のめっき皮膜−ポリイミド積層体は、表面にカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を有するポリイミド上に、めっき皮膜が積層されためっき皮膜−ポリイミド積層体であり、カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基が、互いに離間する分子鎖両末端にアミノ基を各々一つ以上有する有機アミン化合物の一方の末端のアミノ基との反応により修飾され、かつアミン化合物分子の他方の末端のアミノ基に金属触媒が付与されて、めっき皮膜として金属触媒を核として成膜された無電解めっき皮膜が積層されてなるものである。
【0014】
具体的には、図1に示されるような、ポリイミド1上に、有機アミン化合物2と金属触媒3を介して無電解めっき皮膜4が積層された構造のものが挙げられる。
【0015】
このようなめっき皮膜−ポリイミド積層体は、表面にカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を有するポリイミドの該表面を、互いに離間する分子鎖両末端にアミノ基を各々一つ以上有する有機アミン化合物を含有する水溶液で表面処理することにより、上記カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基と、上記有機アミン化合物の一方の末端のアミノ基とを反応させて、上記カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基を上記アミン化合物分子で修飾し、次いで、金属を含む活性化溶液で触媒化処理することにより、上記アミン化合物分子の他方の末端のアミノ基に金属触媒を付与し、次いで、上記金属触媒を核として無電解めっきして無電解めっき皮膜を形成することにより製造することができる。
【0016】
本発明におけるポリイミドは、表面にカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を有するものであればよく、特に限定されないが、このようなものとしては、例えば電着によって形成したポリイミド薄膜が好適である。電着ポリイミドは、その成膜機構から分子内に多数のカルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基を持つために、一般的なポリイミドに比べてカルボキシル基による表面反応を利用したカルボキシル基の修飾に有利である。
【0017】
電着塗装法として知られている電着法により成膜した電着ポリイミド薄膜は、カルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+を分子構造内に有するポリイミド前駆体及びアニオン性ポリイミドから選ばれるポリイミド化合物の水溶液又は水と有機溶媒との混合溶媒溶液を電着液(電着用組成物)として、この電着液に浸漬した被着物上に電着により成膜することができる。上記カルボキシル誘導基のR+としては、不対電子を有する原子構造を有する有機カチオン基、特に不対電子を有する窒素を分子中に含む有機カチオン基が望ましい。例えば、三級アミン系が好ましく、トリエチルアミン系[(CH3CH23+]、トリメチルアミン系[(CH33+]、トリエタノールアミン系[(CH2OHCH23+、(CH2OHCH22HN+、(CH2OHCH2)H2+]などが挙げられる。また、アニリン系[C67+]なども用いることができる。また、イオン化傾向が高いLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Fr+等の無機カチオンも好ましい。このような電着液としては、電着によるポリイミド薄膜の成膜に用いられる公知の電着液を用いることができる。
【0018】
ポリイミド電着液としては、例えば、特開昭49−52252号公報(特許文献8)、特開昭52−32943号公報(特許文献9)、特開昭63−111199号公報(特許文献10)等に記載されているポリイミド前駆体を用いるもの、例えば、ポリアミック酸を、水、又は水と極性有機溶媒等の有機溶媒とに溶解させた溶液を電着液として用いるものが挙げられる。
【0019】
また、アニオン性ポリイミド、例えば、特開平9−104839号公報(特許文献11)等に記載されているランダム共重合アニオン性ポリイミドを用いるもの、特開2003−327905号公報(特許文献12)、特開2003−327907号公報(特許文献13)等に記載されているブロック共重合ポリイミドを用いる電着液を挙げることもできるが、得られる電着ポリイミド膜の密着性が良好となる観点から、ブロック共重合アニオン性ポリイミドを用いるものが特に好ましい。
【0020】
この電着液としては、ジアミンと酸二無水物との反応生成物からなるランダム共重合アニオン性ポリイミド又はブロック共重合アニオン性ポリイミドを含むものが挙げられる。
【0021】
上記ジアミンとしては、芳香族ジアミンを含むことが好ましく、芳香族ジアミンとしては、o−,m−,p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、ジアミノジュレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、ベンジジン、4,4’−ジアミノターフェニル、4,4’−ジアミノクォーターフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ビス(アニリノ)エタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノトルエン、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス−(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス{4−(p−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)ジフェニルスルホン、2,2−ビス{4−(p−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。また、2,6−ジアミノピリジンなどの芳香族ジアミン以外のジアミンを含んでいてもよい。2,6−ジアミノピリジンを含むポリイミドは、分子内に酸基と塩基とを持ち、ポリマー相互作用によって、良好なポリイミド薄膜を成膜する。更には、水に対する親和性を増し、水溶性電着液として安定となり、得られた電着膜が平滑で緻密になる利点がある。
【0022】
また、酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、4,4’−{2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン}ビス(1,2−ベンゼンジカルボン酸無水物)、9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0023】
ジアミンと酸二無水物との反応生成物からなるランダム共重合アニオン性ポリイミド又はブロック共重合アニオン性ポリイミドでアニオンになる基は、テトラカルボン酸二無水物成分が有していてもよいが、アニオン性基を有するジアミンをジアミン成分の1つとして用いることも好ましい。ポリイミドの耐熱性、被電着物との密着性、重合度向上のため、このようなアニオン性基含有ジアミンは、芳香族ジアミンであることが好ましい。アニオン基はカルボキシル基が望ましく、ジアミノカルボン酸が好ましい。このようなアニオン性基含有芳香族ジアミンの例として、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノフェニル酢酸、2,5−ジアミノテレフタル酸、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジアミノパラトルイル酸、3,5−ジアミノ−2−ナフタレンカルボン酸、1,4−ジアミノ−2−ナフタレンカルボン酸等の芳香族ジアミノカルボン酸を挙げることができ、3,5−ジアミノ安息香酸が特に好ましい。このようなアニオン性基含有芳香族ジアミンは、単独で用いることもできるし、複数種類を組み合わせて用いることもできる。また、アニオン基を有さないジアミンと組み合わせてもよい。
【0024】
ランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドは、これらのジアミンと酸二無水物とをほぼ等量用いて、加熱、脱水することにより得られる。ブロック共重合アニオン性ポリイミドの場合は、逐次添加反応によって製造され、第一段階で、酸二無水物とジアミンからポリイミドオリゴマーとし、第二段階で、更に酸二無水物及び/又はジアミンを添加して、重縮合してブロック共重合アニオン性ポリイミドとする。本発明において、ランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドの分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値)は50,000〜100,000、特に60,000〜80,000が好適である。
【0025】
このランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドは、通常、塩基性化合物で中和したものとして電着液に用いられる。この塩基性化合物としては、N−ジメチルエタノール、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリンが用いられるが、N−ジメチルエタノールやN−メチルモルホリンが好適である。中和剤(塩基性化合物)の使用量はポリイミドが溶液中で溶解または安定に分散する程度であって、通常は化学量論中和量の30モル%以上、特に30〜200モル%であることが好ましい。また、電着液中の中和されたポリイミドの固形分濃度は5〜15質量%であることが好ましい。
【0026】
一方、電着液の溶媒としては、水と有機溶媒とが用いられ、有機溶媒としては、このランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドを溶解する水溶性極性有機溶媒、例えば、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、テトラヒドロチオフェン−1,1−オキシド等が用いられる。好ましくは毒性の少ないN−メチルピロリドン、テトラヒドロチオフェン−1,1−オキシドが好ましい。これら水溶性極性有機溶媒は、上述したブロック共重合アニオン性ポリイミドを製造する際の反応溶媒として用いたものでもよい。
【0027】
また、電着液に含まれる有機溶媒としては、ランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドを溶解する油溶性溶媒を用いてもよい。油溶性溶媒は、電着後の被着物に析出したポリイミド樹脂のフロー性を高め、塗膜の平滑性を向上させる点で効果がある。またその結果として、電着液の貯蔵安定性を高めることができる。ここで油溶性溶媒とは、実質的に水に不溶性か又は難溶性の有機溶媒を意味する。ランダム共重合アニオン性ポリイミド及びブロック共重合アニオン性ポリイミドを溶解する油溶性溶媒としては、1−アセトナフトン、アセトフェノン、ベンジルアセトン、メチルアセトフェノン、ジメチルアセトフェノン、プロピオフェノン、バレロフェノン、アニソール、安息香酸メチル、安息香酸ベンジルなどが挙げられる。
【0028】
更に、電着液に含まれる有機溶媒としては、フェニル基、フルフリル基又はナフチル基を有するアルコール等のポリイミドに対する貧溶媒を併用することが好ましく、このようなものとしては、例えばベンジルアルコール、置換ベンジルアルコール、フルフリルアルコールなどを挙げることができる。
【0029】
電着液中の溶媒の濃度は85〜95質量%であるが、有機溶媒の濃度は15〜85質量%、特に20〜70質量%であり、溶媒として水を併用する場合、これと上述した中和されたポリイミドの固形分濃度との残部が水の濃度となる。なお、上記油溶性溶媒を用いる場合、電着液中の油溶性溶媒の濃度は10〜30質量%であることが好ましく、また、上記ポリイミドに対する貧溶媒を用いる場合、電着液中の貧溶媒の濃度は5〜15質量%であることが好ましい。電着液のpHは、ほぼ中性乃至弱塩基性(例えばpH=7〜9、好ましくは7.5〜8)であることが好ましい。
【0030】
上述した電着液としては、株式会社ピーアイ技術研究所製の可溶型ブロック共重合ポリイミド電着液Q−EDシリーズ(例えば、Q−ED−21−129、Q−ED−x−069等)などの市販品を用いることができる。
【0031】
電着条件は、従来公知の条件をそのまま採用することができる。例えば、ランダム共重合アニオン性ポリイミド又はブロック共重合アニオン性ポリイミドを用いる場合、導電性被着物を温度15〜35℃にて電着液に浸漬し、陰極としてCu、Pt等の電極を用い、電圧20〜400V、好ましくは50〜200Vで、通電時間30秒〜10分間、好ましくは1〜5分間通電することにより導電性被着物の表面に溶媒を含むポリイミド薄膜が成膜される。
【0032】
更に、洗浄、風乾後、90〜220℃、好ましくは90〜180℃で、10分〜2時間、好ましく30分〜1時間加熱して溶媒を揮発させることにより乾燥され、固化したポリイミド薄膜が得られる。また、溶媒を揮発させ乾燥させる方法としては、基材を減圧雰囲気に置いてもよい。このときの圧力は1/2気圧以下、処理時間としては30分以上が望ましい。更に、加熱処理と減圧雰囲気に置くことを組み合わせても別途に実施してもよい。電着ポリイミド薄膜の膜厚は、特に限定されないが、通常1〜100μmである。
【0033】
この場合、ポリイミド薄膜が成膜される基材(電着における被着物)は、電着時には陽極となる(導電性を有する)ものが挙げられ、例えば、Cu、Ag、Au、Ni等の金属が挙げられる。
【0034】
また、本発明においては、ポリイミドとして、カルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を分子構造内に有するポリイミド前駆体及びアニオン性ポリイミドから選ばれるポリイミド化合物の水溶液又は水と有機溶媒との混合溶媒溶液、即ち、上述したポリイミド電着液(電着組成物)を基材上に塗布し、加熱することにより成膜したポリイミド薄膜を用いることもできる。この場合、カルボキシル誘導基を含まないもの(カルボキシル基のみのもの)を用いることや、ポリイミド化合物中のカルボキシル誘導基を酸処理により全てカルボキシル基としてから用いることは、後述する有機アミン化合物との反応性が向上する点で有利である。
【0035】
このポリイミド薄膜も、表面にカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を有することから、一般的なポリイミドに比べてカルボキシル基による表面反応を利用したカルボキシル基の修飾に有利である。
【0036】
この場合、基材は導電性を有するものに限られず、種々の材質のものが挙げられ、具体的には、Cu、Ag、Au、Ni等の導電性金属、Si等の非導電性金属、セラミックス、有機樹脂などが挙げられる。
【0037】
基材への塗布は、スピンコート等公知の手法を適用できる。また、加熱は、通常60〜350℃、特に90〜300℃で、1分〜3時間、特に3分〜1時間程度である。なお、直接高温で熱処理を行うと、平滑性が劣化することがあるので多段ステップで加熱した方がよい。また、基材へポリイミド電着液を塗布する前に、密着性を更に向上させるために、基材を予めシランカップリング剤により処理してもよい。
【0038】
次に、ポリイミド表面を、有機アミン化合物を含有する水溶液で表面処理することにより、ポリイミド表面上のカルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基と、有機アミン化合物のアミノ基とを反応させて、カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基をアミン化合物分子で修飾する。
【0039】
有機アミン化合物としては、互いに離間する分子鎖両末端にアミノ基を各々一つ以上有する有機アミン化合物を用いる。この場合、一方の末端のアミノ基は、上述したカルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基と反応して結合し、
−COO-+NH3−
又は、これが脱水した
−CO−NH−
で示される構造を形成するものと考えられ、この構造が、密着性の向上に寄与するものと考えられる。一方、他方の末端のアミノ基には、後述する触媒化処理において、アミノ基が金属イオンを錯化して触媒が付与される。
【0040】
このような有機アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等のアルキルジアミン、ジエチレントリアミン等の好ましくは炭素数2以上、好ましくは2〜5のアルキルポリアミン化合物を挙げることができる。アミノ基は、互いに離間する分子鎖両末端にアミノ基を各々一つ以上有していればよく、アミノ基を3個以上有する場合は、上記分子鎖両末端以外のアミノ基は、分子鎖末端に位置していても、分子鎖末端以外に位置していてもよい、
【0041】
この表面処理は、有機アミン化合物を含有する水溶液中にポリイミドを浸漬させるなどの方法で接触させればよい。有機アミン化合物水溶液中の有機アミン化合物の濃度は0.001〜10mol/L、特に0.01〜1mol/Lとすることができる。浸漬は、有機アミン化合物の濃度にもよるが、室温(例えば20℃)〜90℃で、5秒〜30分、特に1〜10分とすることができる。表面処理後、必要により水洗により過剰の有機アミン化合物を除去すればよい。
【0042】
次に、金属を含む活性化溶液で触媒化処理(活性化処理)することにより、アミン化合物分子のカルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基と反応していない他方の末端のアミノ基に金属触媒を付与する。この触媒化は、Au、Ni、Pd、Ag、Cuなど後述する無電解めっきを行うための触媒となるものならば、いずれの金属を用いてもよいが、通常、活性の高いPd、Agが用いられ、Pdが一般的である。このような触媒化処理に用いられる活性化溶液は、市販の活性化溶液を用いることができ、例えば、浸漬処理等の方法で、アミノ基に対する触媒化処理の公知の条件で処理することができる。また、必要に応じて、触媒化処理後に、ジメチルアミンボラン水溶液等のアクセラレーション処理液に浸漬することによりアクセラレーション処理を施してもよい。なお、触媒化処理後及びアクセラレーション処理後は、いずれも水洗により過剰の触媒化溶液、アクセラレーション処理液を除去すればよい。
【0043】
次に、金属触媒を核として無電解めっき皮膜が積層される。この無電解めっきには従来公知の無電解めっき浴を用いることができ、例えば、無電解NiPめっき浴や無電解NiBめっき浴を用いて無電解ニッケル皮膜、無電解Cuめっきを用いて無電解Cuめっき薄膜を形成することが可能である。なお、無電解めっき皮膜の膜厚は、適宜設定されるが、通常20nm〜5μmである。また、無電解めっき皮膜上に、電気めっきにより更に電気めっき皮膜を形成することも可能である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
真空蒸着法により厚さ20nmのTi層と厚さ100nmのAu層が順に積層されたシリコン基板上を、10容量%硫酸水溶液中で揺動させながら60秒間浸漬することにより酸洗浄を施し、水洗した。
【0046】
次に、酸洗浄を施した基板に、以下の前処理(プレディップ1及び2)を施した。
プレディップ1:市販の電着液用希釈液(株式会社ピーアイ技術研究所製)中で揺動させながら15秒間浸漬。
プレディップ2:市販の電着液(株式会社ピーアイ技術研究所製 Q−ED−x−069)中で揺動させながら15秒間浸漬。
【0047】
次に、上記前処理を施した基板を市販の電着液(株式会社ピーアイ技術研究所製 Q−ED−x−069)に室温で浸漬し、対極をPt線とし、回転ディスク電極製膜装置(RDE)を用い、印加電圧60V(電圧制御)、通電時間5分として、Au層(被電着面積8mmφ)上にポリイミド薄膜(厚さ50μm)を電着した。
【0048】
電着後、ポリイミド薄膜を成膜した基板を、市販の電着液用希釈液(株式会社ピーアイ技術研究所製)中で揺動させながら15秒間浸漬し、その後、90℃で30分間、大気中で加熱乾燥し、更に、1日間真空乾燥した。
【0049】
次に、得られたポリイミド薄膜を水洗し、表1に示される有機アミン化合物を含む表面処理液(水溶液)に、表1に示される条件で浸漬してポリイミド薄膜の表面を処理し、水洗した。
【0050】
【表1】

【0051】
次に、表面処理後の基板を、表2に示される活性化溶液(水溶液)に、表2に示される条件で浸漬して触媒化処理を施して水洗し、更に、表3に示されるアクセラレーション処理液(水溶液)に、表3に示される条件で浸漬してアクセラレーション処理を施して水洗した。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
次に、アクセラレーション処理後のポリイミド薄膜に、無電解NiPめっき浴(ニムデンHDX(上村工業株式会社製))を用い、表4に示される条件で無電解NiPめっきして、無電解NiPめっき皮膜(膜厚0.1μm)を成膜した。めっき皮膜の成膜後、水洗後、乾燥して、めっき皮膜−ポリイミド積層体を得た。
【0055】
【表4】

【0056】
得られた無電解ニッケルめっき皮膜の密着性を下記剥離試験により、平坦性を目視により評価した。
【0057】
剥離試験:成膜後、ピンセットや指で軽くこすって剥離がないものを良好とした。
【0058】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0059】
[実施例2]
アクセラレーション処理後のポリイミド薄膜への無電解めっきとして、表5に示される無電解NiBめっき浴を用い、表5に示される条件で無電解NiBめっきして、無電解NiBめっき皮膜(膜厚0.1μm)を成膜した以外は実施例1と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0060】
【表5】

【0061】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0062】
[実施例3]
ポリイミド薄膜の成膜後の乾燥(加熱乾燥及び真空乾燥)を、90℃で30分間の大気中の加熱乾燥と、これに続く180℃で30分間の大気中の加熱乾燥とした以外は、実施例1と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0063】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0064】
[実施例4]
ポリイミド薄膜の成膜後の乾燥(加熱乾燥及び真空乾燥)を、90℃で30分間の大気中の加熱乾燥と、これに続く180℃で30分間の大気中の加熱乾燥とした以外は、実施例2と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0065】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0066】
[実施例5]
シリコン基板を、シランカップリング剤(Q−AM−CP02 株式会社ピーアイ技術研究所製)をスピンコートし、90℃で、5分加熱することによりシランカップリング剤処理を施した。
【0067】
次に、シランカップリング剤処理を施した基板に、カルボキシル誘導基を含まない(カルボキシル基のみを含む)ポリイミド(Q−ED−x−069のポリイミドワニス)を10%含むN−メチルピロリドンを溶媒とする電着ポリイミド溶液をスピンコートした。
【0068】
スピンコート後、基板を、90℃で30分間、大気中で加熱乾燥し、更に、1日間真空乾燥して、ポリイミド薄膜を成膜した。
【0069】
次に、得られたポリイミド薄膜を水洗し、表1に示される有機アミン化合物を含む表面処理液に、表1に示される条件で浸漬してポリイミド薄膜の表面を処理し、水洗した。
【0070】
次に、表面処理後の基板を、表2に示される活性化溶液に、表2に示される条件で浸漬して触媒化処理を施して水洗し、更に、表3に示されるアクセラレーション処理液に、表3に示される条件で浸漬してアクセラレーション処理を施して水洗した。
【0071】
次に、アクセラレーション処理後のポリイミド薄膜に、無電解NiPめっき浴(ニムデンHDX(上村工業株式会社製))を用い、表4に示される条件で無電解NiPめっきして、無電解NiPめっき皮膜(膜厚0.1μm)を成膜した。めっき皮膜の成膜後、水洗後、乾燥して、めっき皮膜−ポリイミド積層体を得た。
【0072】
得られた無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性を実施例1と同様の方法により評価した。
【0073】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0074】
[実施例6]
アクセラレーション処理後のポリイミド薄膜への無電解めっきとして、表5に示される無電解NiBめっき浴を用い、表5に示される条件で無電解NiBめっきして、無電解NiBめっき皮膜(膜厚0.1μm)を成膜した以外は実施例5と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0075】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0076】
[実施例7]
アクセラレーション処理後のポリイミド薄膜への無電解めっきとして、表6に示される無電解NiPめっき浴を用い、表6に示される条件で無電解NiPめっきして、無電解NiPめっき皮膜(膜厚0.1μm)を成膜した以外は実施例5と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0077】
【表6】

【0078】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0079】
[実施例8]
ポリイミド薄膜の成膜後の乾燥(加熱乾燥及び真空乾燥)を、90℃で30分間の大気中の加熱乾燥と、これに続く180℃で30分間の大気中の加熱乾燥とした以外は、実施例5と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0080】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0081】
[実施例9]
ポリイミド薄膜の成膜後の乾燥(加熱乾燥及び真空乾燥)を、90℃で30分間の大気中の加熱乾燥と、これに続く180℃で30分間の大気中の加熱乾燥とした以外は、実施例6と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0082】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0083】
[実施例10]
シリコン基板を、シランカップリング剤(Q−AM−CP02 株式会社ピーアイ技術研究所製)をスピンコートし、90℃で、5分加熱することによりシランカップリング剤処理を施した。
【0084】
次に、シランカップリング剤処理を施した基板に、市販の電着液(株式会社ピーアイ技術研究所製 Q−ED−x−069)をスピンコートした。
【0085】
スピンコート後、基板を、90℃で30分間、大気中で加熱乾燥し、更に、1日間真空乾燥して、ポリイミド薄膜を成膜した。
【0086】
次に、得られたポリイミド薄膜を水洗し、表1に示される有機アミン化合物を含む表面処理液に、表1に示される条件で浸漬してポリイミド薄膜の表面を処理し、水洗した。
【0087】
次に、表面処理後の基板を、表2に示される活性化溶液に、表2に示される条件で浸漬して触媒化処理を施して水洗し、更に、表3に示されるアクセラレーション処理液に、表3に示される条件で浸漬してアクセラレーション処理を施して水洗した。
【0088】
次に、アクセラレーション処理後のポリイミド薄膜に、無電解NiPめっき浴(ニムデンHDX(上村工業株式会社製))を用い、表4に示される条件で無電解NiPめっきして、無電解NiPめっき皮膜(膜厚0.1μm)を成膜した。めっき皮膜の成膜後、水洗後、乾燥して、めっき皮膜−ポリイミド積層体を得た。
【0089】
得られた無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性を実施例1と同様の方法により評価した。
【0090】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0091】
[実施例11]
アクセラレーション処理後のポリイミド薄膜への無電解めっきとして、表5に示される無電解NiBめっき浴を用い、表5に示される条件で無電解NiBめっきして、無電解NiBめっき皮膜(膜厚0.1μm)を成膜した以外は実施例10と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0092】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0093】
[実施例12]
アクセラレーション処理後のポリイミド薄膜への無電解めっきとして、表6に示される無電解NiPめっき浴を用い、表6に示される条件で無電解NiPめっきして、無電解NiPめっき皮膜(膜厚0.1μm)を成膜した以外は実施例10と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0094】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0095】
[実施例13]
ポリイミド薄膜の成膜後の乾燥(加熱乾燥及び真空乾燥)を、90℃で30分間の大気中の加熱乾燥と、これに続く180℃で30分間の大気中の加熱乾燥とした以外は、実施例10と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0096】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0097】
[実施例14]
ポリイミド薄膜の成膜後の乾燥(加熱乾燥及び真空乾燥)を、90℃で30分間の大気中の加熱乾燥と、これに続く180℃で30分間の大気中の加熱乾燥とした以外は、実施例11と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0098】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜の密着性及び平坦性のいずれも良好であった。
【0099】
[比較例1]
ポリイミド薄膜成膜後の、有機アミン化合物を含む表面処理液による表面処理を実施しなかった以外は実施例2と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を製造しようとしたが、無電解めっき皮膜が析出しなかった。
【0100】
[比較例2]
ポリイミド薄膜成膜後の、有機アミン化合物を含む表面処理液による表面処理を実施しなかった以外は実施例5と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を製造しようとしたが、無電解めっき皮膜が析出しなかった。
【0101】
[比較例3]
ポリイミド薄膜成膜後の、有機アミン化合物を含む表面処理液による表面処理を実施しなかった以外は実施例6と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を製造しようとしたが、無電解めっき皮膜が析出しなかった。
【0102】
[比較例4]
ポリイミド薄膜成膜後の、有機アミン化合物を含む表面処理液による表面処理を実施しなかった以外は実施例11と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を製造しようとしたが、無電解めっき皮膜が析出しなかった。
【0103】
[比較例5]
ポリイミド薄膜成膜後の、有機アミン化合物を含む表面処理液による表面処理を実施しなかった以外は実施例12と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を製造しようとしたが、無電解めっき皮膜が析出しなかった。
【0104】
[比較例6]
ポリイミド薄膜成膜後の、有機アミン化合物を含む表面処理液による表面処理を、表7に示されるアルカリ処理液(水溶液)を用いた表7に示される条件でのアルカリ処理に変えた以外は、実施例5と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0105】
【表7】

【0106】
その結果、無電解ニッケルめっき反応はほとんど起きず、皮膜は連続膜にならず、安定した析出が得られなかった。
【0107】
[比較例7]
ポリイミド薄膜成膜後の、有機アミン化合物を含む表面処理液による表面処理を、表7に示されるアルカリ処理液を用いた表7に示される条件でのアルカリ処理に変えた以外は、実施例6と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0108】
その結果、無電解ニッケルめっき皮膜は不連続部分が多く,安定した析出が得られなかった。また、めっき薄膜の大部分は非常に薄く、金属光沢が得られなかった。
【0109】
[比較例8]
ポリイミド薄膜成膜後の、有機アミン化合物を含む表面処理液による表面処理を、表7に示されるアルカリ処理液を用いた表7に示される条件でのアルカリ処理に変えた以外は、実施例10と同様の方法でめっき皮膜−ポリイミド積層体を得、これを評価した。
【0110】
その結果、無電解ニッケルめっき反応はほとんど起きず、皮膜は連続膜にならず、安定した析出が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明のめっき皮膜−ポリイミド積層体の一例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0112】
1 ポリイミド
2 有機アミン化合物
3 金属触媒
4 無電解めっき皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を有するポリイミド上に、めっき皮膜が積層されためっき皮膜−ポリイミド積層体であって、
上記カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基が、互いに離間する分子鎖両末端にアミノ基を各々一つ以上有する有機アミン化合物の一方の末端のアミノ基との反応により修飾され、かつ上記アミン化合物分子の他方の末端のアミノ基に金属触媒が付与されて、上記めっき皮膜として金属触媒を核として成膜された無電解めっき皮膜が積層されてなることを特徴とするめっき皮膜−ポリイミド積層体。
【請求項2】
上記ポリイミドが、電着ポリイミドであることを特徴とする請求項1記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体。
【請求項3】
上記電着ポリイミドが、カルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を分子構造内に有するポリイミド前駆体及びアニオン性ポリイミドから選ばれるポリイミド化合物の水溶液又は水と有機溶媒との混合溶媒溶液であるポリイミド電着液から、電着にて成膜したポリイミド薄膜であることを特徴とする請求項2記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体。
【請求項4】
上記ポリイミドが、カルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を分子構造内に有するポリイミド前駆体及びアニオン性ポリイミドから選ばれるポリイミド化合物の水溶液又は水と有機溶媒との混合溶媒溶液を基材上に塗布し、加熱することにより成膜したポリイミド薄膜であることを特徴とする請求項1記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体。
【請求項5】
上記有機アミン化合物が、炭素数2以上のアルキルポリアミン化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体。
【請求項6】
ポリイミド上に、めっき皮膜が積層されためっき皮膜−ポリイミド積層体を製造する方法であって、
表面にカルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を有するポリイミドの該表面を、
互いに離間する分子鎖両末端にアミノ基を各々一つ以上有する有機アミン化合物を含有する水溶液で表面処理することにより、上記カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基と、上記有機アミン化合物の一方の末端のアミノ基とを反応させて、上記カルボキシル基及び/又はカルボキシル誘導基を上記アミン化合物分子で修飾し、
次いで、金属を含む活性化溶液で触媒化処理することにより、上記アミン化合物分子の他方の末端のアミノ基に金属触媒を付与し、
次いで、上記金属触媒を核として無電解めっきして無電解めっき皮膜を形成することを特徴とするめっき皮膜−ポリイミド積層体の製造方法。
【請求項7】
上記ポリイミドが、電着ポリイミドであることを特徴とする請求項6記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体の製造方法。
【請求項8】
上記電着ポリイミドが、カルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を分子構造内に有するポリイミド前駆体及びアニオン性ポリイミドから選ばれるポリイミド化合物の水溶液又は水と有機溶媒との混合溶媒溶液であるポリイミド電着液から、電着にて成膜したポリイミド薄膜であることを特徴とする請求項7記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体の製造方法。
【請求項9】
上記ポリイミドが、カルボキシル基(−COOH)及び/又はカルボキシル誘導基(−COO-+(R+は有機カチオン基又は無機カチオンを示す))を分子構造内に有するポリイミド前駆体及びアニオン性ポリイミドから選ばれるポリイミド化合物の水溶液又は水と有機溶媒との混合溶媒溶液を基材上に塗布し、加熱することにより成膜したポリイミド薄膜であることを特徴とする請求項6記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体の製造方法。
【請求項10】
上記有機アミン化合物が、炭素数2以上のアルキルポリアミン化合物であることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項記載のめっき皮膜−ポリイミド積層体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−202109(P2008−202109A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40640(P2007−40640)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(397025417)株式会社ピーアイ技術研究所 (50)
【Fターム(参考)】