説明

ろう付け炉

【課題】 ろう付け用雰囲気炉の前後に配置されるシール室(予熱室及び徐冷室)の長さを短尺なものとし、雰囲気の遮断効果を高め、かつ従来のようなメタル製等の垂れ幕状カーテン等の存在による被加熱物の損傷を防止する。
【解決手段】 雰囲気炉を循環するコンベアベルト上に所定の間隔を置いて該ベルトの進行方向と直交するように鉄鋼又はグラファイトからなる構造物を立設配置すると共に、雰囲気炉の前後両側に設けられるシール室(予熱室及び徐冷室)の天井および左右両側壁からは上記構造物と摺接し得る可撓性のシール部材を室内に向けて突出するように設けてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水冷室より絶えず雰囲気ガスが送られ、かつトンネル状のその中をコンベアベルトが循環して駆動される種類のろう付け用の雰囲気炉等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種類の雰囲気炉によって、アルミニウム製の被加熱物のろう付けが行なわれるが、炉内雰囲気を如何に良好に保ち得るかが問題であり、従来では水冷室等の外部から炉内の加熱室にもたらされた炉雰囲気をシール室で遮断する方法が採られてきた。
【0003】
かかるシール室が一般的に炉の前後一方は被加熱物の入り口、他方は出口に設けられ、被加熱物の通行を許すとともに炉雰囲気を遮断しなければならず、シール室は長尺なものとならざるを得なかった。更に、シール室の全部の開口をうめるメタル製等の複数の垂れ幕状のほかは考えられなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、雰囲気炉の前後に設けられるシール室の長さを従来よりも短尺化し、メタル製の垂れ幕状物によって被加熱物に傷が付くことを防止し、またコンベアベルトの被加熱物に取付ける冶具を不要にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被加熱物を予熱するための予熱室と、該予熱室において予熱された被加熱物を加熱ろう付けする加熱室と、該加熱室において加熱された被加熱物を徐冷する徐冷室と、上記被加熱物を上記予熱室、加熱室、徐冷室内へと搬送するコンベアベルトとを備え、上記各室に雰囲気ガスが充填されたろう付け用雰囲気炉において、上記予熱室内及び徐冷室内には雰囲気ガスの流出を防止する可撓性のシール部材が設けられ、上記コンベアベルト上には上記被加熱物が載置されるべき所定の間隔を置いて構造物が該ベルトの長さ全長にわたり複数立設され、該コンベアベルトが駆動される際に上記複数の構造物が上記可撓性シール部材に摺接するように構成したことを特徴とする雰囲気炉に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、雰囲気ガス(N)の使用量がほぼ半分となるので(例えば30m/Hrが15m/Hrになる)、シール室の長さを半分にすることができる。また、被加熱物を搬送するのに冶具なしでよいため、被加熱物に冶具を取付ける手間もなくなる。
【0007】
しかも、重量がある冶具を加熱しないため、省エネルギーとなり、しかも従来のように垂れ幕状物によって被加熱物に傷が付く心配もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1はろう付け炉である連続雰囲気炉の側面説明図であり、図2は出口側から見た予熱室(及び徐冷室)の正面図である。
【0009】
図1において、1は被加熱物である例えばアルミニウム製熱交換器であり、このアルミニウム製熱交換器のろう付けすべき部分には、例えば融点が540℃のフッ素化合物からなるフラックスと、融点が585℃のろう材が塗布されている。9は被加熱物1を搬送するコンベアベルトであって、例えば鉄鋼又はグラファイトからなる。
【0010】
連続雰囲気炉8は、図1に示すように、被加熱物1が搬送される搬送方向(図1中、符号11の矢印で示す方向)から見て、従動装置2、予熱室(シール室)3、加熱室4、水冷室5、徐冷室(シール室)6、ベルト駆動装置7が配されている。上記予熱室3、加熱室4、水冷室5、徐冷室6内には、雰囲気ガスである窒素ガスが充填されており、これらの各室をコンベアベルト9が走行通過する。
【0011】
コンベアベルト9は従動装置2およびベルト駆動装置7によって予熱室3から徐冷室6までの間を被加熱物1が通過するように循環している。
【0012】
コンベアベルト9上には、好適には該ベルト9と同一の材料(例えば鉄鋼又はグラファイトなど)からなり、ベルト搬送方向11と直交する向きに所定の間隔を置いて多数の方形板状の構造物12が立設固定されている。該構造物12は、被加熱物1よりも高くて広い面積を有し、互いに被加熱物1の間合いに相応して所定の間隔10を置いてベルト9の全長にわたって起立配置されている。
【0013】
予熱室3の筒型開口部((トンネル状室内)13及び徐冷室6の筒型開口部(トンネル状室内)13には、予熱室3及び徐冷室6の天井からのれん状に垂下する薄板メタル製の可撓性のシール部材14aが設けられ、同じく該予熱室3、徐冷室6の側壁面からは筒型開口部(各室3,6内)13に向けて突出するように上記シール部材14aと同材質の可撓性シール部材14bが設けられており、これらシール部材14a及び14bはベルト9上に起立して該ベルト9と共に移動する上記各構造物12と摺接し、炉内の雰囲気ガスが外方へ逃げるのを極力遮断することができるようになっている。
【0014】
これら予熱室3及び徐冷室6の天井面及び側壁面から突出する可撓性シール部材14a及び14bは、予熱室3及び徐冷室6内の長さ方向(ベルト9の進行方向)の全長にわたり同一前後位置に所定間隔を置いて複数列設けられ、あるいは天井面からの可撓性シール部材14aと側壁面からの可撓性シール部材14bとは所定間隔を置いて交互に複数列設けられる。
【0015】
被加熱物1は、ベルト9上に起立する構造物12どうしの間となる部位10に冶具などを取付けることなく載置され、連続雰囲気炉8内に搬送される。被加熱物1の大きさに対し、各構造物12どうしの間隔10は充分広く、各構造物12の高さは被加熱物1よりも高いので、搬送時に可撓性シール部材14a、14bが被加熱物1と接触して傷がつくことを防止することができる。
【0016】
また、上記構造物12をベルト9上に設け、可撓性シール部材14a、14bと摺接させることによって雰囲気連続炉8内の炉内雰囲気を保つことができるので、予熱室3、徐冷室6の長さを従来用いられていた約半分の長さとし、使用したガスを従来使用していた30m/Hrから15m/Hrと半減したにもかかわらず、従来と同様のろう付け性を有するろう付けを行うことができた。
【0017】
なお、上述した実施の形態では、被加熱物1の高さよりも高い構造物12をベルト9上に設けた実施の形態について述べたが、構造物12と被加熱物1との間隔を充分にとれば、構造物12は被加熱物1よりも低くてもよい。
【0018】
また、本発明は、上述した連続雰囲気炉のみならず、間欠型の炉に適用することも可能である。
【0019】
また、上述した実施の形態において述べた被加熱物1、コンベアベルト9、構造物12、可撓性シール部材14の材質などは本発明を実施する上での好適な形態にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施するための好適な連続雰囲気炉の側面説明図である。
【図2】本発明に用いられる雰囲気炉の前後に配置されるシール室である予熱室及び徐冷室におけるンベアベルト上の構造物とこれと摺接する可撓性シール部材を示す説明的な正面図である。
【符号の説明】
【0021】
1−被加熱物(例えばアルミニウム製熱交換器)
2−従動装置
3−予熱室(シール室)
4−加熱室
5−水冷室
6−徐冷室(シール室)
7−ベルト駆動装置
8−連続雰囲気炉
9−コンベアベルト
10−構造物12どうしの間隔
11−ベルトの運行方向
12−構造物
13−筒形開口部(トンネル状室内)
14−可撓性シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を予熱するための予熱室と、該予熱室において予熱された被加熱物を加熱ろう付けする加熱室と、該加熱室において加熱された被加熱物を徐冷する徐冷室と、上記被加熱物を上記予熱室、加熱室、徐冷室内へと搬送するコンベアベルトとを備え、上記各室に雰囲気ガスが充填されたろう付け用雰囲気炉において、上記予熱室内及び徐冷室内には雰囲気ガスの流出を防止する可撓性のシール部材が設けられ、上記コンベアベルト上には上記被加熱物が載置されるべき所定の間隔を置いて構造物が多数立設され、該コンベアベルトの移動に伴って上記各構造物が上記可撓性シール部材に摺接するように構成したことを特徴とするろう付け炉。
【請求項2】
前記構造物は被加熱物よりも高くて広い面積を有する鉄鋼又はグラファイトからなる板状であり、前記コンベアベルト搬送方向と直交する向きに所定の間隔を置いてコンベアベルト上に多数起立固定されてなる請求項1記載のろう付け炉。
【請求項3】
前記予熱室及び徐冷室の室内には、それぞれその天井面及び左右両側壁面から前記可撓性シール部材がその室内の長さ方向に所定間隔を置いて同一前後位置に又は交互に複数列突出するように設けられてなる請求項1又は2記載のろう付け炉。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−334635(P2006−334635A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162102(P2005−162102)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000157072)関東冶金工業株式会社 (20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】