説明

アイレス針の穴加工装置および穴加工方法

【課題】 針材の中心とレーザー光の光軸との位置合わせを正確にでき、細い針材でも正確に穴明けが可能なアイレス針の穴加工装置と穴加工方法を提供する。
【解決手段】 複数の針材1を一列に並べてテーブル21上に載置し、複数本の針材1の元端面をカメラ25で撮影し、撮影画像から加工対象となる針材1を求め、針材の中心位置を求める。そして、レーザー発振機26のレーザーの光軸と、加工対象となる針材1の元端面の中心位置とを一致させ、レーザーによって所定の深さの穴1cを明ける。その後複数の針材を移動し、カメラの画像から複数の針材のうち次の加工対象となる針材1を求め、針材の元端面の画像から元端面の中心位置を求め、複数の針材を移動してレーザー発振機のレーザーの光軸と、加工対象となる元端面の中心位置とを一致させる工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手術用の縫合針であるアイレス針に、レーザー光で穴明けする装置と、穴明け方法とに関し、特に、細い径のアイレス針に適した技術に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術に使用されるアイレス針では、その元端面から針の長さ方向に沿って穴を明け、ここに縫合糸を挿入してカシメて固定している。穴明け方法としては、従来からレーザー光を使用する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、上記穴明け作業は、手作業で行われるもので、能率が上がらず、コスト高にもなっていた。
【0004】
この問題を解決するものとして、特許文献2が提案されている。以下に図を用いてこの従来例を説明する。
【0005】
図6は、湾曲が付与される前の真直なアイレス針の斜視図である。このアイレス針Aは、手術用の縫合針であり、外科用、眼科用等の用途によってそれぞれ異なった形状、直径、長さを有するものである。同図に示すようにこのアイレス針Aは、針材1の先端1aが鋭利に尖っており、元端面1bには、軸方向に沿って穴1cが穿設されている。この穴1cに図示しない縫合糸が挿入され、カシメて固定され、さらに所定の湾曲が付与されることになる。図示したアイレス針は、断面形状が円形であるが、目的に応じて、三角形、台形或いは扁平な形状などに形成される。
【0006】
図7は、従来の穴明け加工装置の構成を示す図である。穴加工される前の複数の針材1は、容器2内に元端面1bを上にして収容され、テーブル3上に載置されている。
【0007】
テーブル3は、X軸駆動モータ4、Y軸駆動モータ5及びZ軸駆動モータ6によって、相互に直交する3軸方向に独立して移動可能である。X軸駆動モータ4、Y軸駆動モータ5及びZ軸駆動モータ6は、ボールネジなどの高精度で移動できるものでテーブル3を移動する。
【0008】
レーザー発振装置7は、針材1の元端面1bに穴加工を行うためのレーザー光8を発振する装置である。レーザー発振装置7によって発振されたレーザー光8は、ダイクロイックミラー9によって図の下方に進み、レンズ10によって集光されて針材1の元端面1bに照射され、穴1cを明けるのである。
【0009】
針材1の集合体Bは、ダイクロイックミラー9の後方に設けられたCCDなどの光電変換素子を使用したカメラ11により撮影される。
【0010】
図8は、カメラ11で撮影した針材1の集合体Bの画像の一部である。コンピュータなどを利用した画像処理装置で、各針材1の中心位置を求め、X軸駆動モータ4、Y軸駆動モータ5によってレーザー光の光軸8aと針材1の中心を一致させ、レーザー光を照射して穴を明ける。穴を明ける順番は、たとえば、針材1d→針材1e→針材1fというようになる。
【特許文献1】実公昭56−37918
【特許文献2】特公平3−33437
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献2の穴明け方法には、次のような問題がある。まず、カメラ11は、針材1の集合体B全体の撮影をするので、針材1本を撮影する画素数が少なくなり、中心位置を特定する精度が低下する。また、X軸駆動モータ4、Y軸駆動モータ5によって加工対象となる針材1の中心を、レーザー光の光軸8aに合わせるのだが、図8の針材1d、針材1e、針材1fに示すように、針材1は、X軸又はY軸に沿って一直線に並ぶことはできない。そのため、加工対象となる針材1の中心を、レーザー光の光軸8aに合わせる際に、X軸駆動モータ4もY軸駆動モータ5も、一方向の移動だけでなく、逆方向にも移動することが起こる。たとえば、Y軸方向の移動について、針材1d→針材1e→針材1fのように移動する場合を検討すると、針材1d→針材1eのときと、針材1e→針材1fのときとは逆方向に移動することになる。X軸方向についても、どこかで同様のことが起こることは容易に理解できるであろう。
【0012】
テーブル3の移動はボールネジを使用し、数μm乃至数百μmの単位で正確な移動ができるが、逆方向に移動する際は、バックラッシュの分だけの誤差が生じることになる。この誤差により、レーザー光の光軸と針材1の中心とがずれ、針材1の中心からずれた位置に穴が明けられるという問題が起こる。特に、針材1が細くなると、この誤差の影響が大きくなり、針材1の径が200μm以下の針材では、上記の穴明け方法では、正確に穴を明けることができない。
【0013】
本発明は、このような問題を解決しようとするもので、針材の中心とレーザ光の光軸との位置合わせを正確にでき、200μm以下の細い針材でも正確に穴明けが可能なアイレス針の穴加工装置および穴加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の問題を解決するために本発明のアイレス針の穴加工装置は、棒状の針材を、複数本平行に揃え、かつ、各元端面を揃えて一列に配置するための載置面を備えたテーブルと、該テーブルを直線的に移動させる移動装置と、一列に配置された針材の一部となる複数本の針材の元端面を撮影するカメラと、前記元端面と対向して配置され前記針材と平行な光軸のレーザー光を発するレーザー発振機と、前記カメラの撮影画像から加工対象となる針材を求め、該針材の元端面の画像から該元端面の中心位置を求める画像処理手段と、該画像処理手段が求めた元端面の中心位置と前記レーザー発振機が照射するレーザー光の光軸とが重なるように前記移動装置を駆動する制御部と、を有することを特徴としている。
【0015】
前記移動装置によるテーブルの移動方向と、前記針材の配置された方向とが平行になるように調整する調整機構を有する構成としたり、前記画像処理手段による前記加工対象となる針材が、穴の明けられた針材がない場合は、移動方向における最先端の針材であり、既に穴の明けられた針材がある場合は、最後に明けられた針材の隣の針材である構成としたり、前記複数の針材を移動する場合、前記移動装置が、まず、一本の針材の直径分だけ前記テーブルを移動し、その後、加工対象となる針材の元端面の中心と、レーザー光の光軸とのずれ分を移動する構成としたり、前記画像処理手段が、次の加工対象となる針材を決定するとともにその針材の中心位置を求め、前記移動装置が、前記複数の針材を移動して次の加工対象となる針材の中心位置と、前記レーザー光の光軸とを一致させる構成にしたりすることができる。
【0016】
上記の問題を解決するために本発明のアイレス針の穴加工方法は、複数の棒状の針材を平行に揃え、かつ、各元端面を揃えて一列に並べ、テーブル上に載置する工程と、一列に配置された針材の一部となる複数本の針材の元端面をカメラで撮影する工程と、撮影画像から加工対象となる針材を求め、該針材の元端面の画像から該元端面の中心位置を求める工程と、前記元端面と対向して配置され前記針材と平行な光線を照射するレーザー発振機のレーザーの光軸と、前記加工対象となる針材の元端面の中心位置とを、前記テーブルを移動させることで一致させる工程と、レーザーによって前記元端面から針材の長さ方向に沿って所定の深さの穴を明ける工程と、以後針材が無くなるまで、カメラの撮影画像から複数の針材のうち次の加工対象となる針材を求める工程と、該針材の元端面の画像から該元端面の中心位置を求め、前記テーブルを移動して前記レーザー発振機のレーザーの光軸と、前記加工対象となる元端面の中心位置とを一致させ穴を明ける工程とを繰り返すことを特徴としている。
【0017】
前記複数の棒状の針材をテーブル上に載置した後、該テーブルを直線的に移動させる移動方向と前記針材の配置された方向とが平行になるように調整する構成としたり、前記複数の棒状の針材を平行に揃えて一列に並べ、テーブル上に載置する工程に先だって、複数の棒状の針材を平行に揃えて一列に並べ、テープ類に固定してから全針材の端部を切断して元端面を形成する工程を有する構成としたり、前記加工対象となる針材の求め方が、穴の明けられた針材がない場合は、移動方向の最先端の針材とし、穴の明けられた針材がある場合は、最後に明けられた針材の隣の針材とする構成としたり、前記テーブルを移動して複数の針材を移動する場合、まず、一本の針材の直径分だけ移動し、その後、元端面の中心とレーザー光の光軸とのずれ分を移動する構成としたり、前記テーブルを移動して複数の針材を移動する場合、まず、カメラの撮影画像から次の加工対象となる針材を決定するとともにその針材の中心位置を求め、該中心位置と、前記レーザー光の光軸とが一致するように前記複数の針材を移動させる構成としたりすることができる。
【0018】
針材は、テーブル上に一列に並べられ、カメラでその内の数本の撮影をする。カメラの画像から、加工対象となる針材を特定し、その針材の中心位置を画像内に求める。次に、テーブルを移動することで複数の針材を移動し、加工対象となる針材の中心位置とレーザー光の光軸とを一致させ、レーザーを照射して穴明け加工をする。
【0019】
次に、テーブルを移動し、カメラの撮影画像から次の加工対象となる針材を求め、以下同様に繰り返して最後の針材まで穴明けをして完了する。
【0020】
複数の棒状の針材を平行に揃えて一列に並べ、テープ類に固定してから全針材の端部を切断して元端面を形成するようにすると、元端面の向きを揃えることができ、画像解析がし易くなる。
【0021】
次の針材の穴加工をする場合、まず、一本の針材の直径分だけ移動し、その後、元端面の中心とレーザー光の光軸とのずれ分を移動する構成とすれば、移動を速やかに行うことができる。あるいは、カメラの撮影画像から次の加工対象となる針材を決定するとともにその針材の中心位置を求め、この中心位置とレーザー光の光軸とを合わせるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、一列に配置された針材の一部となる複数本の針材の元端面をカメラで撮影するので、針材1本当たりの画素数を増加でき、中心位置を正確に求めることができる。また、本発明によれば、複数の針材の移動は、移動装置のみでテーブルを直線的に移動することで行うことができ構成が簡単になる。本発明の場合は、テーブルの移動は、一方向だけで、逆方向には移動しないので、バックラッシュの影響を排除して、ボールネジ本来の高精度の位置決めが可能となる。その結果、200μm以下の細い針材についても、正確な穴明けが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1は本発明のアイレス針の穴加工装置の構成を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−Aから見た図である。これらの図に示すように本発明の穴加工装置は、テーブル21と、テーブル21をX軸方向に進退させる移動装置22a、Y軸方向に進退させる副移動装置22b、及びZ軸方向に進退させる補助移動装置22cと、移動装置22aの移動方向(X軸)と複数の針材1が配置されている方向とを平行にする調整装置23とを有する。調整装置23は、制御部30で制御してもよいが、手動であってもよい。移動装置22aと副移動装置22b及び補助移動装置22cには、ボールネジを使用し、高精度の位置決めができるようになっている。針材1は、100〜200本が整然と一列に配置され、上下をテープ29で挟まれた状態で図示しないクランプなどの適当な手段でテーブル21上に固定されている。テープ29としては、薄くて針材1を仮止めできるものがよく、たとえば、粘着テープを使用することができる。また、図示の実施例では針材1の上下にテープを設けたが、上又は下のいずれか一方でもよい。各針材1は、X軸方向に直線的に並べられ、図1(a)の下方に元端面1bを向けており、各針材1の中心位置は、テーブル21の上面から一定の高さに揃うことになる。図示の針材1はこの後先端を鋭利にする加工をするが、先端を鋭利に加工した後、この穴明け加工をしてもよい。
【0025】
従来の針材1の集合体Bは、各針材の元端面の向きは、バラバラであった。そのため、画像の鮮明さに欠け、解析しにくいという問題があった。本発明では、針材1を従来と同じく、所定の長さに切断したものを用意し、元端面を揃えてテープ29で固定してもよい。しかし、その場合は、元端面の向きがバラバラになる。この問題を解決する方法として、針材1を所定の長さより長めにし、冶具またはテープ29で固定してから、余分な部分を一括して切断する方法がある。このようにすると、各針材1の元端面1bの向きが揃い、カメラで撮影したとき鮮明な画像を得ることができ、画像解析がやりやすくなる。
【0026】
テーブル21上の元端面1bと対向するようにカメラ25が配置され、これと直交するようにレーザー発振機26が配置されている。符号27aはレーザー光を反射し可視光を透過するダイクロイックミラーで、符号28はレンズである。これらカメラ25、レーザー発振機26及びダイクロイックミラー27a、レンズ28は、従来例で説明したものと同じものであり、配置も同じになっている。
【0027】
図1(a)に仮想線で示すのは、カメラ25とレーザー発振機26を入れ替えた例を示すものである。実線のものと仮想線のもののうちいずれか一方を使用すればよい。仮想線に示す場合もダイクロイックミラー27bを使用しているが、実線に示すダイクロイックミラー27aは可視光を透過させ、レーザー光を反射し、仮想線のダイクロイックミラー27bは、逆に可視光を反射し、レーザー光を透過するものとなる。
なお、カメラ25は、デジタルカメラであるが、動画を撮影するカメラを使用してもよい。
【0028】
図2は、カメラ25で撮影した撮影画像25aの例である。従来例のカメラ11は、針材1の集合体Bの全体を1枚の画像として撮影していた。そのため、針材1はX−Y平面内に散らばり、しかも、一本当たりの画素数が少なくなっていた。これに対し、本発明では、カメラ25は、一列に配列された針材1の内の数本(図2では4本)だけしか撮影していない。このようにすることで、針材1の一本当たりの画素数を大幅に増加させることができる。画素数が増加することによって、針材1の中心位置を高精度に特定することが可能となった。
【0029】
図2において、撮影画像25a内の点Oは固定された点で、レーザー光の光軸26aの位置を示す。また、複数の針材1は、全て同じ直径Dで、テーブル21上に一列に整列している。点C1〜C4は、画像ではなく、後述する画像処理装置で求めた各元端面1bの中心位置である。各針材1の元端面1b同士は、相互に密着している場合もあるが、多くはα1〜α3で示すように隙間ができている。
【0030】
図3は、本発明のアイレス針の穴加工装置のブロック図である。制御部30はコンピュータを主体としたもので、CPU、フラッシュメモリ、ハードディスクなどの記憶手段等を備え、キーボードなどの入力部32からの指示を受け、インストールされたプログラムにしたがって動作し、ディスプレイ33上に各種の画像を表示する。制御部30内には、画像処理手段31があり、ここで画像から加工対象となる針材1を選択し、その針材の中心位置を求めるなどの操作を行う。制御部30では、テーブル21を移動装置22a(X軸)、副移動装置22b(Y軸)、補助移動装置22c(Z軸)によってX、Y、Z軸方向に移動することができる。針材1は、X方向に配列されているので、加工対象となる針材1の中心位置とレーザー光の光軸26aとが重なるようにするには、移動装置22a(X軸)のみに指示をすればよい。副移動装置22b(Y軸)は、レーザーの焦点合わせなどの初期設定のときであり、手動で操作してもよい。補助移動装置22c(Z軸)は、移動装置22a(X軸)の移動方向の修正時に使用する程度である。
【0031】
図4(a)〜(f)は、針材に穴明け加工をする工程を説明する図で、図5は穴明け加工のフローチャートである。これらの図によって、本発明のアイレス針の穴明け加工方法を説明する。
【0032】
図4(a)に示すように、カメラ25は複数の針材1から先頭の数本(ここでは約3本)の撮影をし、この画像をディスプレイ33上に撮影画像25aを表示する(S101)。画像処理手段31では、撮影画像25aから、複数の針材1の各元端面の円形の輪郭を把握することで、複数の針材1を検知する。
【0033】
そして、どの針材1にも穴が明けられていないので、初めての穴明け作業であるとして、送り方向の最先端にある針材1(図4(a)では左端の針材1)を加工対象と決める(S103)。加工対象の針材1が決まったら、その針材1の元端面1bを形成する円弧の中心位置を求めることで、元端面1bの中心C1を求める(S105)。2番目と3番目の針材1についても、中心点C2、C3を求めることができるが、必須ではない。
【0034】
図4(a)では、先頭の針材の中心C1とレーザー光の光軸となる点Oとの間にはずれがある。そこで、画像処理手段31は、このずれの量を計算により求める。そして、制御部30が撮影画像25a上の距離から実際のテーブル21の移動距離を求め、移動装置23に指示を出す。移動装置23はテーブル21を与えられた量だけ移動して停止する(S107)。カメラ25で移動後の撮影をし、画像処理手段31で、中心C1と点Oとが図4(b)に示すように重なったことを確認する(S109)。もし、このとき重なっていなければ、上記の動作を繰り返すことになる。また、サイズにもよるがレーザー光の光軸となる点Oと針材の中心C1とのずれの許容差を±5画素などと範囲を設定しても構わない。
【0035】
本発明では、複数の針材1は、テーブル21上に一列に配列されている。したがって、中心C1と点Oとを重ねるには、移動装置22aでテーブル21をX軸方向に移動するだけでよく、通常は、副移動装置22bや補助移動装置22cを使用する必要はない。
【0036】
また、図4(a)において、中心C1が点Oの送り方向の後方にずれていることが重要である。移動装置22のバックラッシュの影響を避けるため、必ず、テーブル21を一方向(図4(a)に示す矢印方向)に移動して、中心C1と点Oとを重ねるようにする。もし、図4(a)において、中心C1が点Oの送り方向の前方にずれている場合は、移動装置22でテーブル21をずれ以上に大きく後退させ、中心C1が点Oの送り方向の後方になるようにしてから矢印方向に移動し、重ねるようにする。ただし、2本目の針材以降は、この操作は不要で、移動装置22はテーブル21を送り方向に送るだけでよい。
【0037】
中心C1と点Oとが図4(b)に示すように重なったことが確認できたら、レーザー発振機26から所定の出力のパルスを所定の時間照射する。これによって、図4(c)に示すように先頭の針材1に穴1cが明けられる(S111)。
【0038】
次に、移動装置22は、針材1の直径Dだけテーブル21を移動する(S113)。そして、S101に戻り、針材1の撮影をする。図4(d)は移動後の撮影画像25aである。この撮影画像25aでは、1本目の針材1に穴1cが穿設されているので、次の2本目の針材1を加工対象と認定する(S103)。そして、2本目の針材1の元端面1bの中心C2を求める(S105)。図4(c)に示すように、1本目の針材1と2本目の針材1との間にαの隙間があるので、2本目の中心C2と、点Oとの間にはαのずれができている。画像処理手段31でこの距離を求め、制御部30から移動装置22に指示がでて、テーブル21をαだけ移動する(S107)。このときの移動方向は、必ず、前回の直径D分だけ移動したのと同じ方向になる。したがって、バックラッシュの問題は生じない。また、S113の針材1の直径Dだけテーブル21を移動する工程は、決まった距離を移動させるので、高速で行うことができ、全体として位置決め時間を短縮することができる。
【0039】
2本目の針材1の中心C2と、点Oとが、図4(e)のように一致したのが確認されると(S109)、レーザー光が照射され、図4(f)に示すように2本目の針材1に穴1cが穿設される(S111)。この後、針材1の径Dだけ高速で移動し、S101に戻り、針材1が無くなるまで繰り返し穴明けを行って終了する。
【0040】
上記の移動の仕方の他に、以下に説明する方法を採用してもよい。S111で穴明けが終わったら、点線に示すようにS101に戻り、次の画像を撮影する。そして、次の加工対象となる針材を決め(S103)、その中心位置を求める(S105)。そして、新たな中心位置を画像で捉えて、その中心をレーザーの中心点Oへ移動させる(S107)。S109で一致を確認し、穴明けをする。この場合、テーブルの移動はS107の移動のみでよくなり、S113の移動は省略できることになる。
【0041】
上記の作業中、画像処理手段31で中心を求める場合、元端面の円弧の一部に何らかの原因で欠損があったり、穴明け加工時のスパッタが付着して円弧の一部が画像に表示されなかったりしても、残りの円弧部分から中心位置を求めることができる。前記の他に、正規化相関法を用いたパターンマッチング処理などの画像処理方法を用いても良い。
【0042】
上記の実施例では、針材1の断面形状が円形であったが、三角形、台形等、円形以外の場合でも同様に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のアイレス針の穴加工装置の構成を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−Aから見た図である。
【図2】カメラで撮影した撮影画像の例である。
【図3】本発明のアイレス針の穴加工装置のブロック図である。
【図4】(a)〜(f)は、針材に穴明け加工をする工程を説明する図である。
【図5】穴明け加工のフローチャートである。
【図6】湾曲が付与される前の真直なアイレス針の斜視図である。
【図7】従来の穴明け加工装置の構成を示す図である。
【図8】カメラで撮影した針材の集合体の画像の一部である。
【符号の説明】
【0044】
1 針材
1b 元端面
1c 穴
21 テーブル
22a 移動装置
25 カメラ
25a 撮影画像
26 レーザー発振機
26a レーザー光の光軸
27a、27b ダイクロイックミラー
28 レンズ
29 テープ
30 制御部
31 画像処理手段
32 入力部
33 ディスプレイ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の針材を、複数本平行に揃え、かつ、各元端面を揃えて一列に配置するための載置面を備えたテーブルと、該テーブルを直線的に移動させる移動装置と、一列に配置された針材の一部となる複数本の針材の元端面を撮影するカメラと、前記元端面と対向して配置され前記針材と平行な光軸のレーザー光を発するレーザー発振機と、前記カメラの撮影画像から加工対象となる針材を求め、該針材の元端面の画像から該元端面の中心位置を求める画像処理手段と、該画像処理手段が求めた元端面の中心位置と前記レーザー発振機が照射するレーザー光の光軸とが重なるように前記移動装置を駆動する制御部と、を有することを特徴とするアイレス針の穴加工装置。
【請求項2】
前記移動装置によるテーブルの移動方向と、前記針材の配置された方向とが平行になるように調整する調整機構を有することを特徴とする、請求項1に記載のアイレス針の穴加工装置。
【請求項3】
前記画像処理手段による前記加工対象となる針材が、穴の明けられた針材がない場合は、移動方向における最先端の針材であり、既に穴の明けられた針材がある場合は、最後に明けられた針材の隣の針材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアイレス針の穴加工装置。
【請求項4】
前記複数の針材を移動する場合、前記移動装置が、まず、一本の針材の直径分だけ前記テーブルを移動し、その後、加工対象となる針材の元端面の中心と、レーザー光の光軸とのずれ分を移動することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアイレス針の穴加工装置。
【請求項5】
前記画像処理手段が、次の加工対象となる針材を決定するとともにその針材の中心位置を求め、前記移動装置が、前記複数の針材を移動して次の加工対象となる針材の中心位置と、前記レーザー光の光軸とを一致させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアイレス針の穴加工装置。
【請求項6】
複数の棒状の針材を平行に揃え、かつ、各元端面を揃えて一列に並べ、テーブル上に載置する工程と、一列に配置された針材の一部となる複数本の針材の元端面をカメラで撮影する工程と、撮影画像から加工対象となる針材を求め、該針材の元端面の画像から該元端面の中心位置を求める工程と、前記元端面と対向して配置され前記針材と平行な光線を照射するレーザー発振機のレーザーの光軸と、前記加工対象となる針材の元端面の中心位置とを、前記テーブルを移動させることで一致させる工程と、レーザーによって前記元端面から針材の長さ方向に沿って所定の深さの穴を明ける工程と、以後針材が無くなるまで、カメラの撮影画像から複数の針材のうち次の加工対象となる針材を求める工程と、該針材の元端面の画像から該元端面の中心位置を求め、前記テーブルを移動して前記レーザー発振機のレーザーの光軸と、前記加工対象となる元端面の中心位置とを一致させ穴を明ける工程とを繰り返すことを特徴とするアイレス針の穴加工方法。
【請求項7】
前記複数の棒状の針材をテーブル上に載置した後、該テーブルを直線的に移動させる移動方向と前記針材の配置された方向とが平行になるように調整することを特徴とする、請求項6に記載のアイレス針の穴加工装置。
【請求項8】
前記複数の棒状の針材を平行に揃えて一列に並べ、テーブル上に載置する工程に先だって、複数の棒状の針材を平行に揃えて一列に並べ、テープ類に固定してから全針材の端部を切断して元端面を形成する工程を有することを特徴とする請求項6又は7に記載のアイレス針の穴加工方法。
【請求項9】
前記加工対象となる針材の求め方が、穴の明けられた針材がない場合は、移動方向の最先端の針材とし、穴の明けられた針材がある場合は、最後に明けられた針材の隣の針材とすることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のアイレス針の穴加工方法。
【請求項10】
前記テーブルを移動して複数の針材を移動する場合、まず、一本の針材の直径分だけ移動し、その後、元端面の中心とレーザー光の光軸とのずれ分を移動することを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載のアイレス針の穴加工方法。
【請求項11】
前記テーブルを移動して複数の針材を移動する場合、まず、カメラの撮影画像から次の加工対象となる針材を決定するとともにその針材の中心位置を求め、該中心位置と、前記レーザー光の光軸とが一致するように前記テーブルを移動させることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載のアイレス針の穴加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−82647(P2010−82647A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253614(P2008−253614)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(390003229)マニー株式会社 (66)
【Fターム(参考)】