アクチュエータ素子およびシート状アクチュエータ
【課題】小型でかつストロークが大きくとれ、適用に制限がないアクチュエータ素子を提供すること。
【解決手段】アクチュエータ素子10は、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなり、電圧が印加されることにより変位する変位子11ならびに変位子11に電圧を印加するための電極12、13とを有する素子本体14と、変位子11の変位によって面外方向に変位する変位伝達部15とを具備する。
【解決手段】アクチュエータ素子10は、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなり、電圧が印加されることにより変位する変位子11ならびに変位子11に電圧を印加するための電極12、13とを有する素子本体14と、変位子11の変位によって面外方向に変位する変位伝達部15とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ素子およびそれを用いたシート状アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造においては、ポリシリコン膜やメタル膜の成膜、フォトリソグラフィによるパターン形成、エッチング、プローブ装置による電気的特性の検査等、半導体ウエハの状態で行う処理が多数存在している。
【0003】
半導体ウエハは、生産性向上の観点から大口径化が進み、直径450mmのものが検討されている。一方、半導体素子は益々微細化が求められている。微細化に対応するためには半導体ウエハにおける均一な処理が必要であるが、半導体ウエハの大口径化にともない、反り等の変形が生じやすく水平面を得難いため、均一な処理が困難となる。
【0004】
このようなことから、例えば、半導体ウエハの載置台等に、半導体ウエハ等の変形を矯正したり、そのような変形に追従するようなアクチュエータを用いることが考えられる。
【0005】
また、半導体素子の製造装置においては、部材の高さ合わせや圧力調整等のため、小型のアクチュエータが要求される。
【0006】
従来、小型アクチュエータとしては、小型モータを用いたものがあるが、上記用途に適用できる程度に小型化したものは実現困難である。これに対して、小型化可能なアクチュエータとして圧電セラミックスからなるアクチュエータがあるが、十分なストロークをとれないという問題がある。
【0007】
また、有機材料を用いたアクチュエータも提案されているが(特許文献1〜3)、適用が制限され、上記用途に十分適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−228542号公報
【特許文献2】特開2008−252958号公報
【特許文献3】特開2009−33944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、小型でかつストロークが大きくとれ、適用に制限がないアクチュエータ素子を提供しようとするものである。
また、基板を支持する際に基板の変形を矯正することや、基板の変形に追従することや、部材の位置合わせ等が可能なシート状アクチュエータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなり、電圧が印加されることにより変位する変位子、および前記変位子に電圧を印加するための電極を有する素子本体と、前記変位子の変位によって面外方向に変位する変位伝達部とを具備することを特徴とするアクチュエータ素子を提供する。
【0011】
本発明の第2の観点は、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなり、電圧が印加されることにより変位する変位子、および前記変位子に電圧を印加するための電極を有する素子本体が、扁平状の容器に平面状に複数配置され、さらに前記複数の素子本体の各変位子の変位によって面外方向に変位する共通の変位伝達部を有することを特徴とするシート状アクチュエータを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、変位子が有機材料であるため、電圧印加による変形が大きく、ストロークを大きくとることができる。また、アクチュエータ素子は変位子に電極を形成した簡単な構成であるから小型化することができる。このため、高密度配置することができる。また、空気中でも安定に動作させることができ、適用の制限は存在しない。
【0013】
また、本発明のシート状アクチュエータは、上記アクチュエータ素子の素子本体が扁平状の容器に平面状に複数配置され、さらに前記複数の素子本体の各変位子の変位によって面外方向に変位する共通の変位伝達部を有するが、素子本体は小型で簡易な構造であるから高密度配置可能であり、しかもストロークが大きいため、これを複数配置することにより、半導体ウエハのような大面積の基板の位置調節シートまたはギャップ調節シート等として極めて適したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータ素子を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータ素子の動作を説明するための概略図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るアクチュエータ素子を示す概略断面図およびその変位子を単純化して示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るアクチュエータ素子の変位子の変位の状態を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るシート状圧力センサを示す平面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るシート状圧力センサの一部を示す断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るシート状圧力センサを示す平面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係るシート状圧力センサの一部を示す断面図である。
【図9】上記第1の実施形態または第2の実施形態のアクチュエータ素子を荷重調節部材として用いたプローブ装置の一例を示す断面図である。
【図10】図9のプローブ装置の連結部材の上面付近の平面図である。
【図11】図9のプローブ装置における電極パッドの位置変位Sと、接触体と電極パッドとの接触荷重として発生する荷重Fとの関係を示すグラフである。
【図12】フォーカスリングのギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたプラズマエッチング装置の載置台を示す断面図である。
【図13】図12の載置台に用いられたシート状アクチュエータを示す平面図である。
【図14】載置台におけるウエハの形状を矯正する形状矯正シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたプラズマエッチング装置の載置台を示す断面図である。
【図15】図14の載置台に用いられたシート状アクチュエータを示す平面図である。
【図16】ギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたベーク装置の加熱部を示す断面図である。
【図17】図16の加熱部に用いられたシート状アクチュエータを示す平面図である。
【図18】本発明のアクチュエータ素子を適用した、ウエハ塗布・現像装置においてウエハの搬送に用いられるウエハチャックを示す平面図および側面図である。
【図19】本発明のシート状アクチュエータを適用したMEMSパターンウエハのチャックを示す側面図、それに用いられたシート状アクチュエータの平面図、穴スペーサの平面図、チャック部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータ素子を示す概略断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るアクチュエータ素子10は、電気駆動型ポリマーである、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなる板状の変位子11ならびに変位子11の両面に設けられた変位子11に給電するための電極12および13からなる素子本体14と、変位子11を覆うように設けられ、変位子11の変位によって面外方向(面に垂直な方向)に変位する変位伝達部15とを有している。
【0018】
変位子11は紙面の奥行き方向に主面が形成された板状をなし、電圧が印加されていない時には図1の二点鎖線で示すように水平状態であるが、電極12および13を介して制御電圧が印加されることにより、実線で示すように先端が一方側に曲がるように、図1では上方に曲がるように変位して変位伝達部15を面外方向、図では上方に変位させる。
【0019】
変位伝達部15は、弾性を有する材料、例えばポリイミド等の樹脂からなり、変位子11に電圧が印加されておらず変位子11が水平状態のときは平坦な状態であるが、電圧印加により変位子11が変位した際には、その変位に応じて面外方向、図1では上方に変位する。そして、電圧が解除されて変位子11が水平状態に戻った際には、元の平坦な状態に戻る。このような変位伝達部15としては上記ポリイミド樹脂がパーティクルを発生し難いことから好ましい。
【0020】
変位伝達部15は素子本体14を収容する容器16の一部として構成されており、容器16はCuやAl等の金属、または樹脂等の柔らかい材料からなる固定板17に固定されている。
【0021】
一対の電極12および13は一方が正極、他方が負極であり、これらには制御配線18が接続されている。制御配線18としては、CuやAl等の金属、またはPEDOT/PSS等の導電性樹脂が用いられる。そして、この制御配線18を介して電極12および13間に所定の制御電圧が印加される。
【0022】
変位子11を構成するシリコーンを含むエラストマーとしては、DVPDMS(α,ω-divinyl-polydimethylsiloxane)とPMHS(poly methyl hydrogen siloxane)とを架橋反応させることにより生成されるポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)を用いることができる。
【0023】
また、イオン液体としては、イミダゾリウム塩、ピペリジニウム塩、ピリジニウム化合物、ピロリジニウム塩等を用いることができる。好ましくは、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート([EMI][BF4]:1-Ethyl-3-methylimidazolium Tetrafluoroborate)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート([BMI][BF4]:1-Butyl-3-methylimidazolium Tetrafluoroborate)、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート([HMI][BF4]:1-Hexyl-3-methylimidazolium Tetrafluoroborate)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム2−(2−メトキシエトキシ)−エチルスルファート([EMI][MEES]:1-Ethyl-3-methylimidazolium 2-(2-methoxyethoxy)ethyl sulfate)、 1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスフォニル)イミド([EMI][TFSI]:1-Ethyl-3-methylimidazolium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスフォニル)イミド([BMP][TFSI]:1-Butyl-1-methylpyrrolidinium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)が挙げられる。
【0024】
また、上記以外に用いることが可能なイオン液体としては、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Cyclohexyltrimethylammonium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Methyltri-n-octylammonium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、テトラブチルアンモニウムブロミド(Tetrabutylammonium Bromide)、テトラブチルアンモニウムクロリド(Tetrabutylammonium Chloride)、テトラブチルホスホニウムブロミド(Tetrabutylphosphonium Bromide)、トリブチル(2-メトキシエチル)ホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Tributyl(2-methoxyethyl)phosphonium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Triethylsulfonium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、1,3-ジメチルイミダゾリウムクロリド(1,3-Dimethylimidazolium Chloride)、1,3-ジメチルイミダゾリウムジメチルホスファート(1,3-DimethylimidazoliumDimethyl Phosphate)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロリド(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Chloride)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Hexafluorophosphate)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムポリエチレングリコールヘキサデシルエーテルスルファート被覆リパーゼ(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Polyethylene Glycol Hexadecyl Ether Sulfate coated Lipase)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Tetrafluoroborate)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-Butyl-3-methylimidazolium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(1-Butyl-3-methylimidazolium Bromide)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(1-Butyl-3-methylimidazolium Chloride)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Butyl-3-methylimidazolium Hexafluorophosphate)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド(1-Butyl-3-methylimidazolium Iodide)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(1-Butyl-3-methylimidazolium Tetrachloroferrate)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート(1-Butyl-3-methylimidazolium Trifluoromethanesulfonate)、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-Ethyl-2,3-dimethylimidazolium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(1-Ethyl-3-methylimidazolium Bromide)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(1-Ethyl-3-methylimidazolium Chloride)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド(1-Ethyl-3-methylimidazolium Dicyanamide)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルスルファート(1-Ethyl-3-methylimidazolium Ethyl Sulfate)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Ethyl-3-methylimidazolium Hexafluorophosphate)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム硫酸水素塩(1-Ethyl-3-methylimidazolium Hydrogen Sulfate)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド(1-Ethyl-3-methylimidazolium Iodide)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホン酸塩(1-Ethyl-3-methylimidazolium Methanesulfonate)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(1-Ethyl-3-methylimidazolium Tetrachloroferrate)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート(1-Ethyl-3-methylimidazolium Trifluoromethanesulfonate)、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(1-Hexyl-3-methylimidazolium Bromide)、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(1-Hexyl-3-methylimidazolium Chloride)、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Hexyl-3-methylimidazolium Hexafluorophosphate)、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムブロミド(1-Methyl-3-n-octylimidazolium Bromide)、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムクロリド(1-Methyl-3-n-octylimidazolium Chloride)、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Methyl-3-n-octylimidazolium Hexafluorophosphate)、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムヨージド(1-Methyl-3-propylimidazolium Iodide)、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムブロミド(1-Butyl-1-methylpiperidinium Bromide)、1-ブチル-3-メチルピリジニウムブロミド(1-Butyl-3-methylpyridinium Bromide)、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド(1-Butyl-4-methylpyridinium Bromide)、1-ブチル-4-メチルピリジニウムクロリド(1-Butyl-4-methylpyridinium Chloride)、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート(1-Butyl-4-methylpyridinium Hexafluorophosphate)、1-ブチルピリジニウムブロミド(1-Butylpyridinium Bromide)、1-ブチルピリジニウムクロリド(1-Butylpyridinium Chloride)、1-ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート(1-Butylpyridinium Hexafluorophosphate)、1-エチル-3-(ヒドロキシメチル)ピリジニウムエチルスルファート(1-Ethyl-3-(hydroxymethyl)pyridinium Ethyl Sulfate)、1-エチル-3-メチルピリジニウムエチルスルファート(1-Ethyl-3-methylpyridinium Ethyl Sulfate)、1-エチルピリジニウムブロミド(1-Ethylpyridinium Bromide)、1-エチルピリジニウムクロリド(1-Ethylpyridinium Chloride)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムブロミド(1-Butyl-1-methylpyrrolidinium Bromide)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムクロリド(1-Butyl-1-methylpyrrolidinium Chloride)等が挙げられる。
【0025】
この変位子11の製造方法としては、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体とを例えばイオン液体が40重量%になるように混合し混合液を生成し、この混合液を、所望の形状の型に流し込み、真空脱気を行い、例えば150℃で30分の加熱処理を行った後、型を取り除く方法が例示される。
【0026】
電極12および13は、素子本体11の変形に追従可能な柔軟な材料であることが好ましく、例えば金のスパッタリングにより形成することができる。また、金以外の材料としては、Al、Cu、Pt、カーボンナノチューブ、PEDOT/PSS等の導電性高分子、銀グリース等を好適に用いることができる。
【0027】
次に、このように構成されるアクチュエータ素子10の動作について説明する。
図2(a)は電極12および13に電圧が印加されていない場合の変位子11の状態であり、変位子11においては、シリコーンを含むエラストマーにイオン液体の+成分と−成分が均一に分散している。図2(b)は電極12および13の間に電圧が印加された場合の変位子11の状態であり、イオン液体における+成分は負極である電極13に引き寄せられ、−成分は正極である電極12に引き寄せられ、イオン液体に分極が生じる。これにより、変位子11の中で成分の偏りが形成され、変位子11が変形することによって変位が生ずる。また変位子11を2個使い、変位子11の長さ方向にその2個の変位子11を直列に並べ、対向する中央部の端部同士を上方へ屈曲させれば、その変位力を増加することもできる。
【0028】
本実施形態のアクチュエータ素子10は、変位子11が有機材料であるため、電圧印加による変形が大きく、ストロークを大きくとることができる。また、アクチュエータ素子10は変位子11に電極12および13を形成した簡単な構成であるから小型化することができる。このため、高密度配置することができる。また、空気中でも安定に動作させることができ、適用の制限は存在しない。
【0029】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3は本発明の第2の実施形態に係るアクチュエータ素子を示す概略断面図である。
【0030】
図3(a)に示すように、本実施形態に係るアクチュエータ素子10′は、電気駆動型ポリマーである、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなる板状の変位子11′ならびに変位子11′の上下面に設けられた変位子11′に給電するための電極12′および13′からなる素子本体14′と、変位子11′を覆うように設けられ、変位子11′の変位によって面外方向(面に垂直な方向)に変位する変位伝達部15′とを有している。
【0031】
変位子11′は、長手方向に沿って交互に折返す折り紙構造を有しており、電圧が印加されていない時には折りたたまれた状態であり、変位伝達部15の表面は、図中二点鎖線で示すように平坦であるが、電極12′および13′介して制御電圧が印加されることにより、一方向、図では上方に変位して、図示の状態となり、変位伝達部15′を面外方向(上方)に変位させる。なお、変位子11′を単純化した構造を図3(b)に示す。
【0032】
変位伝達部15′は、変位伝達部15と同様、弾性を有する材料、例えばポリイミド等の樹脂からなり、変位子11′に電圧が印加されておらず変位子11′が折りたたまれた状態のときは平坦な状態であるが、電圧印加により変位子11′が変位した際には、その変位に応じて面外方向、図3では上方に変位する。そして、電圧が解除されて変位子11′が折りたたまれた状態に戻った際には、元の平坦な状態に戻る。
【0033】
変位伝達部15′は素子本体14′を収容する容器16′の一部として構成されており、容器16′はCuやAl等の金属、または樹脂等の柔らかい材料からなる固定板17′に固定されている。
【0034】
一対の電極12′および13′は一方が正極、他方が負極であり、これらには制御配線18′が接続されている。そして、この制御配線18′を介して電極12′および13′間に所定の制御電圧が印加される。
【0035】
次に、このように構成されるアクチュエータ素子10′の動作について説明する。
図4(a)は電極12′および13′に電圧が印加されていない場合の変位子11′の状態であり、変位子11′は折りたたまれた状態である。この状態から電極12′および13′の間に電圧を印加すると、第1の実施形態で説明したように分極が生じて変位子11′の中で成分の偏りが形成され、変位子11′が変形することによって、図4(b)に示すように、一方向(図では上方)に変位が生ずる。
本実施形態のアクチュエータ素子10′は、第1の実施形態と同様、変位子11′が有機材料であるため、電圧印加による変形が大きく、ストロークを大きくとることができる。また、空気中でも安定に動作させることができ、適用の制限は存在しない。
【0036】
また、変位子11′は折りたたまれた状態から伸びた状態に変位するので第1の実施形態よりも大きなストロークをとることができる。また、変位子11′は直線的に変位するので、第1の実施形態よりもフットプリントを小さくすることができ、より小型にすることができる。このため、第1の実施形態のアクチュエータ素子よりも高密度配置が可能となる。
【0037】
<第3の実施形態>
本実施形態は、複数のアクチュエータ素子を複数備えたシート状アクチュエータについて示す。図5は本発明の第3の実施形態に係るシート状を示す平面図、図6はその一部を示す断面図である。
【0038】
このシート状アクチュエータ20は、弾性を有する材料、例えばポリイミド等の樹脂からなる扁平形状の容器21の中に、上記第1の実施形態の素子本体14を平面状に高密度に複数配し、これら素子本体14の下面を容器21の内面に貼り付け、この容器21を例えば、Al、Cu等の金属からなる固定板23に固定して構成される。そして、容器21の上面が複数のアクチュエータ素子10の共通の変位伝達部25となる。
【0039】
各アクチュエータ素子10の電極12および13からは制御配線18が延びており、全てのアクチュエータ素子10からの制御配線18がコントローラ31へと延び、コントローラ31に制御電源32が接続されている。コントローラ31は図示せぬセンサ等から動作分布指示が入力され、その指示に基づいてコントローラ31が複数のアクチュエータ素子10に所定の制御電圧を印加し、共通の変位伝達部25に所望の高さ分布が形成される。
【0040】
上述したようにアクチュエータ素子10は小型で簡易な構造を有しているため、高密度配置可能であり、しかもストロークが大きいため、これを複数配置してなる本実施形態のシート状アクチュエータ20は、半導体ウエハのような大面積の基板の位置調節シートまたはギャップ調節シート等として極めて適したものとなる。
【0041】
<第4の実施形態>
本実施形態も、第3の実施形態と同様、複数のアクチュエータ素子を複数備えたシート状アクチュエータについて示す。図7は本発明の第4の実施形態に係るシート状アクチュエータを示す平面図、図8はその一部を示す断面図である。
【0042】
このシート状アクチュエータ20′は、弾性を有する材料、例えばポリイミド等の樹脂からなる扁平形状の容器21′の中に、上記第2の実施形態の素子本体14′を平面状に高密度に複数配し、これら素子本体14′の下面を容器21′の内面に貼り付け、この容器21′を例えば、Al、Cu等の金属からなる固定板23に固定して構成される。そして、容器21′の上面が複数のアクチュエータ素子10′の共通の変位伝達部25′となる。
【0043】
各アクチュエータ素子10′の電極12′および13′からは制御配線18′が延びており、全てのアクチュエータ素子10′からの制御配線18′が、第3の実施形態と同様、コントローラ31へと延び、コントローラ31に制御電源32が接続されている。コントローラ31は図示せぬセンサ等から動作分布指示が入力され、その指示に基づいてコントローラ31が複数のアクチュエータ素子10′に所定の制御電圧を印加し、共通の変位伝達部25′に所望の高さ分布が形成される。
【0044】
上述したようにアクチュエータ素子10′は小型で簡易な構造を有しているため、高密度配置可能であり、しかもストロークが大きいため、これを複数配置してなる本実施形態のシート状アクチュエータ20′は、半導体ウエハのような大面積の基板の位置調節シートまたはギャップ調節シートとして極めて適したものとなる。
【0045】
<応用例>
以下、上記実施形態のアクチュエータ素子、シート状アクチュエータの応用例について説明する。
【0046】
(プローブ装置への応用例)
図9は、上記第1の実施形態または第2の実施形態のアクチュエータ素子を荷重調節部材として用いたプローブ装置の一例を示す断面図、図10は図9のプローブ装置の連結部材の上面付近の平面図である。
プローブ装置40は、半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)の電気的特性を検査するためのものであり、プローブカード41と、被検査体としてのウエハWを載置する載置台42とを有している。プローブカード41は、載置台42の上方に配置されている。
【0047】
プローブカード41は、全体が略円盤状に形成されている。プローブカード41は、検査時にウエハWの電極パッドUに接触する接触子(プローブ)90を下面で支持する支持板51の上面側に設けられ、接触子90に検査用の電気信号を送る回路基板52とを有している。
【0048】
回路基板52は、略円盤状に形成され、図示しないテスタに電気的に接続されている。回路基板52の内部には、接触子90との間で検査用の電気信号を伝送するための電子回路が実装されている。テスタからの検査用の電気信号は、回路基板52の電子回路を介して接触子90に送受信される。回路基板52の下面には、接続端子52aが配置されている。
【0049】
回路基板52の上面側には、回路基板52を補強する補強部材53が設けられている。補強部材53は、回路基板52の上側に平行に配置された本体部53aと、本体部53aの外周部から下方に延び、回路基板52の外周部を固定する固定部53bを有し、固定部53bは、回路基板52の内側に突出するとともに、外側に延びており、固定部53bの外周部は、図示しないホルダに保持されている。
【0050】
回路基板52の上面には、連結部材54が回路基板52と平行に設けられている。連結部材54は、回路基板52よりも小径の略円盤状をなし、補強部材53の固定部53bの内側に設けられている。なお、連結部材54は、回路基板52の上面に接することにより、回路基板52の平面度を矯正する機能も有している。
【0051】
連結部材54の外周部の下面には、支持板51と連結部材54とを連結し一体化するための連結体55が固定されている。連結体55は、鉛直方向に延び、支持板51の外周部の複数箇所、例えば4箇所に設けられている。
【0052】
連結体55は、回路基板52を厚さ方向に貫通し、下端部が支持板51の外周部の外方位置まで到達しており、連結体55の下部に形成された2箇所設けられた突出部55aにより支持板51が保持されている。なお、下方の突出部55aは、板バネであってもよい。この場合、支持板51の外周部を下から保持しながら、支持板51を回路基板52に押しつけて、支持板51と回路基板52との電気的な接触を維持できる。
【0053】
連結部材54の上面の中央部には、図10に示すように、複数、例えば3本のボルト56が設けられている。ボルト56の上端部は、図9に示すように、連結部材54の上面の中央部に形成された凹部54aに係止されている。ボルト56は回路基板52を厚さ方向に貫通し、その下端部は支持板51の上面に固定されている。したがって、連結体55とボルト56によって、支持板51と連結部材54が連結されている。
【0054】
連結部材54の上面には、接触子90と電極パッドUとの接触荷重を一定に維持する荷重調整部材としての本実施形態のアクチュエータ素子10または10′が設けられている。アクチュエータ素子10または10′は、図10に示すように、複数、例えば3個設けられている。アクチュエータ素子10は平面視において、連結部材54の中心を円心とする同一円周上に等間隔に配置されている。アクチュエータ素子10または10′の上面は補強部材53の本体部53aに当接している。アクチュエータ素子10または10′は、一定方向に一定の推力を発生させることができ、荷重の作用点に関わらず当該荷重を一定に発生させることができる。
【0055】
凹部54aには、荷重測定器63が設けられ、これによりアクチュエータ素子10または10′にかかる荷重が測定される。荷重測定器63はコントローラ60に接続されている。コントローラ60は制御電源61およびアクチュエータ10または10′にも接続されている。そして、コントローラ60は、荷重測定器63からの信号に基づいて、アクチュエータ10または10′へ供給する制御電圧を制御してアクチュエータ素子10または10′の推力を変位位置(変位量)にかかわらず一定に制御する。したがって、検査時に接触子90が電極パッドUに接触する際にも、その接触荷重を所定の荷重に保つことができる。すなわち、コントローラ60により、荷重測定器63の測定結果に基づいて、制御電源61からアクチュエータ素子10または10′に供給する電圧を制御することによって、たとえ接触子90と電極パッドUとが異なる高さで接触した場合でも、接触子90と電極パッドUとの接触荷重が一定になるように制御される。アクチュエータ素子10または10′の個数は、3個に限定されないが、3個以上が好ましい。
【0056】
連結部材54の外周部には弾性部材としての板バネ64が設けられている。板バネ64の一端は連結部材54の外周部に固定され、他端は補強部材53の固定部53bに固定されており、円周方向に複数、例えば3個、好ましくは等間隔に配置されている。これら板バネ64により支持板51の水平方向の位置が固定される。
【0057】
支持板51は、載置台42と対向し、かつ回路基板52と平行になるように配置されている。支持板51は、略方盤状に形成されており、その上面には、複数の接続端子51aが設けられている。接続端子51aは、回路基板52の接続端子52aに対応するように配置されている。
【0058】
支持板51の接続端子51aと、接続端子51aに対応する回路基板52の接続端子52aとの間には、これらの間の電気的導通をとるための中間部材70が複数設けられている。複数の中間部材70は、支持板51の上面内において均一に配置されている。また、各中間部材70は、それぞれが独立して鉛直方向に伸縮するように形成されており、したがって、例えば接触子90と電極パッドUが異なる高さで接触した場合でも、これら中間部材70が接触子90と電極パッドとの接触荷重の面内分布を均一にするように作用する。
【0059】
支持板51の下面には、上面の接続端子51aより狭いピッチで接触子90が設けられている。下面の接触子90は接続端子51aに対応して同数設けられ、対応する接続端子51aと接触子90とは支持板51の内部の配線により接続されている。すなわち、支持板51は、回路基板52の接続端子52aのピッチを変換するピッチ変換基板として機能する。
【0060】
載置台42は、XYZ移動機構43により水平方向および鉛直方向に移動自在に構成されており、駆動機構44によりXYZ移動機構43を駆動させることにより、載置台42に載置されたウエハWを三次元移動して精密なアライメントを行えるようになっている。
【0061】
なお、本例の場合、アクチュエータ素子10または10′に要求されるスペックを例示すると以下のようになる。アクチュエータ素子の設置位置:外径φ100mm、アクチュエータ素子の厚さ:5mm以下±50%、駆動力:各点20kgf/cm2、動作温度:室温±20℃、動作速度:sec〜minオーダーで動作すること。これらスペックは、上記第1および第2の実施形態のアクチュエータ素子で十分満たし得る。
【0062】
次に、このような構成のプローブ装置40によって実際にウエハWの電気特性を検査する際の動作について説明する。
図11は、電極パッドUの位置変位Sと、接触子90と電極パッドUとの接触荷重として発生する荷重Fとの関係を示すグラフである。なお、図11中の発生荷重F1は、例えば接触子90、支持板51、連結部材54、連結体55等の移動可能な部材の重さ、中間部材70の初期荷重の総和となる。まず、ウエハWが載置台42上に保持されると、載置台42が上昇し、ウエハWの各電極パッドUが接触子90に接触する。この接触の瞬間における電極パッドUの位置変位Sと発生荷重Fとの関係が、図11の点Aとなる。
【0063】
さらに電極パッドUが上昇すると、接触子90は、下から上方向に作用する力により鉛直方向に圧縮される。そして、電極パッドUの位置変位がS1に達するまで、すなわち所定の発生荷重F1に達するまでは、発生荷重Fは接触子90の圧縮により吸収される。したがって、この場合、電極パッドUが上昇しても支持板51は上昇しない。また、この間の電極パッドUの位置変位Sと発生荷重Fとの関係が、図11に示す点A−B間となる。
【0064】
さらに電極パッドUを所定位置であるS2に達するように上昇させる。このとき、発生荷重Fは、支持板51を介して中間部材70に伝達されるとともに、支持板51、連結体55および連結部材54を介してアクチュエータ素子10または10′に伝達される。このとき、支持板51、連結体55および連結部材54は上昇する。このとき、コントローラ60により、荷重測定器63の測定結果に基づいて、制御電源61からアクチュエータ素子10または10′に供給する電圧を制御することによって、接触子90と電極パッドUとの接触荷重が一定になるように作用するので、電極パッドUの位置変位SがS1からS2に変位する間、発生荷重FをF1に維持することができる。
【0065】
そして、このように接触荷重を一定に保った状態で、回路基板52から検査用の電気信号が中間部材70、支持体51の接続端子51a、および接触子90を順に通ってウエハW上の各電極パッドUに送られて、ウエハW上の回路の電気的特性が検査される。
【0066】
従来のプローブ装置では、プローブカードが載置台と平行設置されていない、または載置台の平面度が悪い場合には、複数の接触子と電極パッドが異なる高さで接触し、接触荷重面内分布を均一にできず、接触不良となることがあり、また、支持板の水平方向の移動を規制しないと接触子が電極パッドと適切に接触できず、接触不良となることがあったが、このようにアクチュエータ素子を用いることにより接触荷重の面内分布を均一に制御し、接触荷重を一定に制御することができるので、接触不良をなくすことができる。
【0067】
出願人は先に、アクチュエータ素子の代わりにバネを用いて接触荷重を一定にする手法を提案したが、バネの付勢力は、圧縮長さによって異なるので、接触荷重は厳密には一定にならず、電極パッドの位置変位が大きくなるほど大きくなる傾向にある(図11のB−C′)。これに対しアクチュエータ素子10または10′を用いることにより、図11に示すように、接触荷重を一定にすることができるのである。
【0068】
(プラズマエッチング装置への応用例)
(1)フォーカスリングへの応用例
ここでは、プラズマエッチング装置の載置台において、ウエハの周囲に配置されるフォーカスリングのギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いた例を示す。
【0069】
プラズマエッチング装置は、チャンバ内に、下部電極として機能するウエハを載置する載置台と、載置台と対向する上部電極とを配置し、上部電極または下部電極に高周波電力を印加してこれらの間に高周波電界を形成し、この高周波電界で形成された処理ガスのプラズマにより載置台に載置されたウエハにエッチング加工を施すものである。
【0070】
図12は、フォーカスリングのギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたプラズマエッチング装置の載置台を示す断面図である。
載置台140は、チャンバの底部に絶縁板を介して設けられ、小径の上段部142aと大径の下段部142bを有する段付き円柱状をなす載置台本体142を有している。小径の上段部142aの上面にはクーロン力等の静電力によりウエハWを吸着する静電チャック144が設けられている。
【0071】
上段部142aの周囲には、エッチング均一性を向上させるための円環状をなすフォーカスリング146がその表面をウエハ表面と同じ高さになるように設けられている。フォーカスリング146は、エッチング対象がシリコンの場合にはシリコン製であり、エッチング対象が酸化膜の場合には酸化シリコン製である。
【0072】
フォーカスリング146と下段部142bの表面との間には、第3の実施形態または第4の実施形態と同様の基本構造を有する円環状のシート状アクチュエータ148が設けられている。シート状アクチュエータ148は、ギャップ調整シートとして機能し、例えば図13に示すように4分割されて駆動制御が行われる。一括して駆動制御を行うようにしてもよい。
【0073】
載置台本体142の内部には、冷媒室150が設けられている。この冷媒室150には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給され、冷媒の温度によってウエハWの処理温度を制御することができるようになっている。また、図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン152を介して静電チャック144の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0074】
均一なエッチングを実現するためには、フォーカスリング146の表面高さをウエハW表面と同一になるようにする必要があるが、従来から、エッチングの際のプラズマによるスパッタリング等によりフォーカスリング146の表面が削れ、エッチングの径方向均一性が悪くなるという問題が顕在化している。
【0075】
そこで、本例では、第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータ148をギャップ調整シートとしてフォーカスリング146の下に設け、このシート状アクチュエータ148により、プラズマによるスパッタリングで削れた分だけフォーカスリング146を上昇させるようにする。
【0076】
このシート状アクチュエータ148は、300mmウエハの場合には、例えば内径が300mm、外径が500mm(または350mm)であり、厚さが2mm以下で可変分が±50%以上、動作温度が80〜200℃でできるだけ熱伝導率が高いこと(例えば1W/mK)が要求される。また、酸化膜用のエッチング装置の場合には耐圧が3000V、ポリシリコンエッチング用のエッチング装置の場合には最大1000Vである。これらの仕様は、上記第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータであれば十分に満たすものである。
【0077】
(2)載置台への応用例
ここでは、プラズマエッチング装置の載置台において、ウエハの下に形状矯正シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いた例を示す。
図14は、載置台におけるウエハの形状を矯正する形状矯正シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたプラズマエッチング装置の載置台を示す断面図である。
【0078】
この載置台160は、基本構造は上記載置台140と同じであるから同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。この載置台160は、静電チャック144とウエハWの間に、第3の実施形態または第4の実施形態と同様の基本構造を有する円盤状のシート状アクチュエータ162が設けられている。また、フォーカスリング146の下にはシート状アクチュエータ148は設けられていないが、設けてもよい。
【0079】
シート状アクチュエータ162は、ウエハWの反りや歪みを矯正して水平に戻すために用いられるものであり、図15の平面図に示すように、アクチュエータ素子10または10′が例えば4cm2毎に高密度で配置される。
【0080】
均一なエッチングを実現するためには、ウエハWの反りや歪み等の変形が存在せず、ウエハWが水平になっていることが重要であるが、現実のウエハWには反りや歪みが少なからず存在するため、エッチング均一性が十分でない場合も生じる。
【0081】
そこで、本例では、第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータ162をウエハWの形状矯正シートとしてウエハWと静電チャック144との間に設け、このシート状アクチュエータ162により、ウエハWを水平面に戻し、エッチング均一性を向上させる。
【0082】
このシート状アクチュエータ162は、ウエハWとほぼ同じ大きさを有する。また、厚さが2mm以下で可変分が±50%以上、動作温度が80〜200℃でできるだけ熱伝導率が高いことが好ましい。また、酸化膜用のエッチング装置の場合には耐圧が3000V、ポリシリコンエッチング用のエッチング装置の場合には最大1000Vである。これらの仕様は、上記第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータであれば十分に満たすものである。
【0083】
(フォトレジスト塗布・現像装置のベーク装置への応用例)
ここでは、フォトレジスト塗布・現像装置のベーク装置において、ウエハのギャップを調整するギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いた例を示す。
図16は、ギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたベーク装置の加熱部を示す断面図である。加熱部170は、水平面保持のためのベース板172と、その上に設けられたギャップ調整シートとして用いられるシート状アクチュエータ174と、その上に設けられたフィルム状ヒータ176とを有し、フィルム状ヒータ176の上には複数のウエハ支持ピン(プロキシミティピン)178が設けられている。そしてウエハ支持ピン178上にウエハが載置されるようになっている。
【0084】
シート状アクチュエータ174は、基本構造が第3の実施形態のシート状アクチュエータ20または第4の実施形態のシート状アクチュエータ20′と同様であり、ウエハWとシート状ヒータ176とのギャップが一定となるようにギャップ調整してウエハWの温度を均一に保つためのものであり、アクチュエータ素子10または10′が図17の平面図に示すように区画され、14〜32cm2毎(300mmウエハでは30〜50区画)に配置される。
【0085】
このようなベーク装置においては、従来から、ウエハの反りや歪みのため、ウエハが載置される熱板とウエハとのギャップが不均一になり、ウエハを均一に加熱することができず、ウエハ面内での温度のばらつきが生じるという問題がある。
【0086】
そこで、本例では、第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータ174をシート状ヒータ176の下に設け、ウエハWの変形に対応してギャップが均一になるようにシート状アクチュエータ174の各アクチュエータ素子10または10′を駆動させる。これによりウエハ温度の面内均一性は極めて高いものとなる。このときのシート状アクチュエータ174によるギャップ調整は、ウエハW裏面温度の複数の位置の温度を測定する複数の熱電対を設け、その温度が均一になるように、各アクチュエータ素子10または10′を駆動させることにより行う。熱電対を設ける代わりに、熱電対パターンを印刷したセンサを別途用意し、これを用いて温度測定を行ってもよい。
【0087】
このシート状アクチュエータ174は、ウエハとほぼ同じ大きさを有する。また、ウエハがφ450mmの場合には、調整ギャップ高さは0.4mm以上必要である。動作温度は室温〜180℃(または室温〜250℃、または室温〜300℃)である。これらの仕様は、上記第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータであれば十分に満たすものである。
【0088】
なお、塗布・現像装置には冷却装置があり、この冷却装置も冷却板に支持ピンを介してウエハを載置するものであるから、ベーク装置の場合と同様、冷却板とウエハとの間に同様な構成のシート状アクチュエータを用いてギャップ調整を行うことにより、所望のウエハ温度の均一性を確保することができる。
【0089】
(ウエハチャックへの応用例)
ここでは、ウエハ塗布・現像装置においてウエハの搬送に用いられるウエハチャックに本発明のアクチュエータ素子を適用した例について説明する。図18(a)はこのようなウエハチャックを示す平面図、図18(b)はその側面図である。このウエハチャック180は、一対のウエハ保持アーム182を有し、これらウエハ保持アーム182によりウエハを挟むことによりウエハを保持する。
【0090】
ウエハ保持アームは、全体が耐摩耗性樹脂からなり、ウエハWに沿った円弧状をなす本体部184と、本体部184の両側から内側に突出し、ウエハWが載置されるウエハ載置部186と、本体部の中央にウエハWのエッジを保持するように設けられたエッジホルダ188とを有する。そして、このエッジホルダ188としてアクチュエータ素子10または10′を用いる。そして、一対のウエハ保持アーム182でウエハWを挟持した際に、エッジホルダ188を構成するアクチュエータ素子10または10′をウエハWのエッジに向けて突出させる。このとき、アクチュエータ素子10または10′はウエハWを柔らかく保持できるので、パーティクル等の発生がなくしかも安定してウエハWを固定することができる。
【0091】
従来は、この種のウエハチャックは、ウエハ搬送時に水平方向に数十G、垂直で1Gという大きな加速度がおよぼされ、ウエハが外れやすいという課題があったが、アクチュエータ素子10または10′を用いることにより、大口径のウエハでも外れずに安定して保持することができる。
【0092】
このエッジホルダ188に用いられるアクチュエータ素子10または10′は、動作温度が室温〜100℃であり、動作速度は数十msecが要求されるが、この仕様は十分に満足することができる。
【0093】
(MEMSパターンウエハのチャックへの応用例)
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路を一つのウエハ等の上に集積化したデバイスであるが、MEMSパターンが形成されたウエハは、ウエハ全面でチャックすることができず、ウエハ搬送の際に搬送アームに置いただけの状態で搬送せざるを得ず、ウエハが外れやすいという問題がある。
【0094】
本例では、本発明のシート状アクチュエータを用いて、ウエハを吸着できるようにした搬送アームを実現する。
【0095】
図19(a)に示すように、本例の搬送アーム190は、第3の実施形態または第4の実施形態と同じ基本構造を有するシート状アクチュエータ192と、その上に設けられた穴スペーサ194とを有し、穴スペーサ194の上にMEMSパターンウエハWが載置される。シート状アクチュエータ192は、図19(b)に示すように、ウエハのパターンに応じて例えば1cm2毎に区画Sが形成され、区画S毎にアクチュエータ素子10または10′が設けられている。また、穴スペーサ194は、図19(c)に示すように、シート状アクチュエータ192に対応して例えば1cm2毎に区画Sが形成され、所定の区画Sに穴195が形成されている。穴は予め決められた区画Sに設けられていてもよいし、各区画S毎に穴は設けられていて選択的にアクチュエータ素子10または10′をON−OFF制御してもよい。そして、穴スペーサ194の穴195を有する区画Sにおいて、図19(d)に示すように、ウエハWが載置された後、アクチュエータ素子10または10′を駆動させて真空空間Vの体積を膨張させることにより、つまり穴195の直下の薄くなったシート状アクチュエータ192の部分を下側に突き出すように動作させて、穴195を介してウエハWが真空吸着される。同様な動作を、穴195が形成された複数の区画Sで行うことによりウエハWを吸着固定することができる。これによりMEMSパターンウエハを安定して高速に搬送することができる。
【0096】
この場合のアクチュエータ素子は、動作温度が−40〜150℃、ON/OFF動作速度が1sec以下であり、上記実施形態のアクチュエータ素子10、10′であれば十分満たすものである。
【0097】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、アクチュエータ素子の変位子として、板状のもの、および折り紙状のものを用いたが、これに限るものではない。また、変位伝達部としてアクチュエータ素子を収容する容器の一部を用いたが、これに限るものではない。さらに、上記応用例はあくまでも例示であり、本発明はこのような例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0098】
10、10′…アクチュエータ素子
11、11′…変位子
12、13、12′、13′…電極
14、14′…素子本体
15、15′…変位伝達部
16、16′…容器
17、17′…固定板
18、18′…制御配線
20、20′…シート状アクチュエータ
21、21′…容器
23、23′…固定板
25、25′…変位伝達部
31…コントローラ
32…制御電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ素子およびそれを用いたシート状アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造においては、ポリシリコン膜やメタル膜の成膜、フォトリソグラフィによるパターン形成、エッチング、プローブ装置による電気的特性の検査等、半導体ウエハの状態で行う処理が多数存在している。
【0003】
半導体ウエハは、生産性向上の観点から大口径化が進み、直径450mmのものが検討されている。一方、半導体素子は益々微細化が求められている。微細化に対応するためには半導体ウエハにおける均一な処理が必要であるが、半導体ウエハの大口径化にともない、反り等の変形が生じやすく水平面を得難いため、均一な処理が困難となる。
【0004】
このようなことから、例えば、半導体ウエハの載置台等に、半導体ウエハ等の変形を矯正したり、そのような変形に追従するようなアクチュエータを用いることが考えられる。
【0005】
また、半導体素子の製造装置においては、部材の高さ合わせや圧力調整等のため、小型のアクチュエータが要求される。
【0006】
従来、小型アクチュエータとしては、小型モータを用いたものがあるが、上記用途に適用できる程度に小型化したものは実現困難である。これに対して、小型化可能なアクチュエータとして圧電セラミックスからなるアクチュエータがあるが、十分なストロークをとれないという問題がある。
【0007】
また、有機材料を用いたアクチュエータも提案されているが(特許文献1〜3)、適用が制限され、上記用途に十分適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−228542号公報
【特許文献2】特開2008−252958号公報
【特許文献3】特開2009−33944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、小型でかつストロークが大きくとれ、適用に制限がないアクチュエータ素子を提供しようとするものである。
また、基板を支持する際に基板の変形を矯正することや、基板の変形に追従することや、部材の位置合わせ等が可能なシート状アクチュエータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなり、電圧が印加されることにより変位する変位子、および前記変位子に電圧を印加するための電極を有する素子本体と、前記変位子の変位によって面外方向に変位する変位伝達部とを具備することを特徴とするアクチュエータ素子を提供する。
【0011】
本発明の第2の観点は、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなり、電圧が印加されることにより変位する変位子、および前記変位子に電圧を印加するための電極を有する素子本体が、扁平状の容器に平面状に複数配置され、さらに前記複数の素子本体の各変位子の変位によって面外方向に変位する共通の変位伝達部を有することを特徴とするシート状アクチュエータを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、変位子が有機材料であるため、電圧印加による変形が大きく、ストロークを大きくとることができる。また、アクチュエータ素子は変位子に電極を形成した簡単な構成であるから小型化することができる。このため、高密度配置することができる。また、空気中でも安定に動作させることができ、適用の制限は存在しない。
【0013】
また、本発明のシート状アクチュエータは、上記アクチュエータ素子の素子本体が扁平状の容器に平面状に複数配置され、さらに前記複数の素子本体の各変位子の変位によって面外方向に変位する共通の変位伝達部を有するが、素子本体は小型で簡易な構造であるから高密度配置可能であり、しかもストロークが大きいため、これを複数配置することにより、半導体ウエハのような大面積の基板の位置調節シートまたはギャップ調節シート等として極めて適したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータ素子を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータ素子の動作を説明するための概略図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るアクチュエータ素子を示す概略断面図およびその変位子を単純化して示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るアクチュエータ素子の変位子の変位の状態を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るシート状圧力センサを示す平面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るシート状圧力センサの一部を示す断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るシート状圧力センサを示す平面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係るシート状圧力センサの一部を示す断面図である。
【図9】上記第1の実施形態または第2の実施形態のアクチュエータ素子を荷重調節部材として用いたプローブ装置の一例を示す断面図である。
【図10】図9のプローブ装置の連結部材の上面付近の平面図である。
【図11】図9のプローブ装置における電極パッドの位置変位Sと、接触体と電極パッドとの接触荷重として発生する荷重Fとの関係を示すグラフである。
【図12】フォーカスリングのギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたプラズマエッチング装置の載置台を示す断面図である。
【図13】図12の載置台に用いられたシート状アクチュエータを示す平面図である。
【図14】載置台におけるウエハの形状を矯正する形状矯正シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたプラズマエッチング装置の載置台を示す断面図である。
【図15】図14の載置台に用いられたシート状アクチュエータを示す平面図である。
【図16】ギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたベーク装置の加熱部を示す断面図である。
【図17】図16の加熱部に用いられたシート状アクチュエータを示す平面図である。
【図18】本発明のアクチュエータ素子を適用した、ウエハ塗布・現像装置においてウエハの搬送に用いられるウエハチャックを示す平面図および側面図である。
【図19】本発明のシート状アクチュエータを適用したMEMSパターンウエハのチャックを示す側面図、それに用いられたシート状アクチュエータの平面図、穴スペーサの平面図、チャック部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータ素子を示す概略断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るアクチュエータ素子10は、電気駆動型ポリマーである、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなる板状の変位子11ならびに変位子11の両面に設けられた変位子11に給電するための電極12および13からなる素子本体14と、変位子11を覆うように設けられ、変位子11の変位によって面外方向(面に垂直な方向)に変位する変位伝達部15とを有している。
【0018】
変位子11は紙面の奥行き方向に主面が形成された板状をなし、電圧が印加されていない時には図1の二点鎖線で示すように水平状態であるが、電極12および13を介して制御電圧が印加されることにより、実線で示すように先端が一方側に曲がるように、図1では上方に曲がるように変位して変位伝達部15を面外方向、図では上方に変位させる。
【0019】
変位伝達部15は、弾性を有する材料、例えばポリイミド等の樹脂からなり、変位子11に電圧が印加されておらず変位子11が水平状態のときは平坦な状態であるが、電圧印加により変位子11が変位した際には、その変位に応じて面外方向、図1では上方に変位する。そして、電圧が解除されて変位子11が水平状態に戻った際には、元の平坦な状態に戻る。このような変位伝達部15としては上記ポリイミド樹脂がパーティクルを発生し難いことから好ましい。
【0020】
変位伝達部15は素子本体14を収容する容器16の一部として構成されており、容器16はCuやAl等の金属、または樹脂等の柔らかい材料からなる固定板17に固定されている。
【0021】
一対の電極12および13は一方が正極、他方が負極であり、これらには制御配線18が接続されている。制御配線18としては、CuやAl等の金属、またはPEDOT/PSS等の導電性樹脂が用いられる。そして、この制御配線18を介して電極12および13間に所定の制御電圧が印加される。
【0022】
変位子11を構成するシリコーンを含むエラストマーとしては、DVPDMS(α,ω-divinyl-polydimethylsiloxane)とPMHS(poly methyl hydrogen siloxane)とを架橋反応させることにより生成されるポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)を用いることができる。
【0023】
また、イオン液体としては、イミダゾリウム塩、ピペリジニウム塩、ピリジニウム化合物、ピロリジニウム塩等を用いることができる。好ましくは、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート([EMI][BF4]:1-Ethyl-3-methylimidazolium Tetrafluoroborate)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート([BMI][BF4]:1-Butyl-3-methylimidazolium Tetrafluoroborate)、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート([HMI][BF4]:1-Hexyl-3-methylimidazolium Tetrafluoroborate)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム2−(2−メトキシエトキシ)−エチルスルファート([EMI][MEES]:1-Ethyl-3-methylimidazolium 2-(2-methoxyethoxy)ethyl sulfate)、 1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスフォニル)イミド([EMI][TFSI]:1-Ethyl-3-methylimidazolium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスフォニル)イミド([BMP][TFSI]:1-Butyl-1-methylpyrrolidinium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)が挙げられる。
【0024】
また、上記以外に用いることが可能なイオン液体としては、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Cyclohexyltrimethylammonium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Methyltri-n-octylammonium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、テトラブチルアンモニウムブロミド(Tetrabutylammonium Bromide)、テトラブチルアンモニウムクロリド(Tetrabutylammonium Chloride)、テトラブチルホスホニウムブロミド(Tetrabutylphosphonium Bromide)、トリブチル(2-メトキシエチル)ホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Tributyl(2-methoxyethyl)phosphonium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Triethylsulfonium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、1,3-ジメチルイミダゾリウムクロリド(1,3-Dimethylimidazolium Chloride)、1,3-ジメチルイミダゾリウムジメチルホスファート(1,3-DimethylimidazoliumDimethyl Phosphate)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロリド(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Chloride)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Hexafluorophosphate)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムポリエチレングリコールヘキサデシルエーテルスルファート被覆リパーゼ(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Polyethylene Glycol Hexadecyl Ether Sulfate coated Lipase)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Tetrafluoroborate)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-Butyl-3-methylimidazolium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(1-Butyl-3-methylimidazolium Bromide)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(1-Butyl-3-methylimidazolium Chloride)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Butyl-3-methylimidazolium Hexafluorophosphate)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド(1-Butyl-3-methylimidazolium Iodide)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(1-Butyl-3-methylimidazolium Tetrachloroferrate)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート(1-Butyl-3-methylimidazolium Trifluoromethanesulfonate)、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-Ethyl-2,3-dimethylimidazolium Bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(1-Ethyl-3-methylimidazolium Bromide)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(1-Ethyl-3-methylimidazolium Chloride)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド(1-Ethyl-3-methylimidazolium Dicyanamide)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルスルファート(1-Ethyl-3-methylimidazolium Ethyl Sulfate)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Ethyl-3-methylimidazolium Hexafluorophosphate)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム硫酸水素塩(1-Ethyl-3-methylimidazolium Hydrogen Sulfate)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド(1-Ethyl-3-methylimidazolium Iodide)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホン酸塩(1-Ethyl-3-methylimidazolium Methanesulfonate)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(1-Ethyl-3-methylimidazolium Tetrachloroferrate)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート(1-Ethyl-3-methylimidazolium Trifluoromethanesulfonate)、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(1-Hexyl-3-methylimidazolium Bromide)、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(1-Hexyl-3-methylimidazolium Chloride)、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Hexyl-3-methylimidazolium Hexafluorophosphate)、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムブロミド(1-Methyl-3-n-octylimidazolium Bromide)、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムクロリド(1-Methyl-3-n-octylimidazolium Chloride)、1-メチル-3-n-オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Methyl-3-n-octylimidazolium Hexafluorophosphate)、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムヨージド(1-Methyl-3-propylimidazolium Iodide)、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムブロミド(1-Butyl-1-methylpiperidinium Bromide)、1-ブチル-3-メチルピリジニウムブロミド(1-Butyl-3-methylpyridinium Bromide)、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド(1-Butyl-4-methylpyridinium Bromide)、1-ブチル-4-メチルピリジニウムクロリド(1-Butyl-4-methylpyridinium Chloride)、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート(1-Butyl-4-methylpyridinium Hexafluorophosphate)、1-ブチルピリジニウムブロミド(1-Butylpyridinium Bromide)、1-ブチルピリジニウムクロリド(1-Butylpyridinium Chloride)、1-ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート(1-Butylpyridinium Hexafluorophosphate)、1-エチル-3-(ヒドロキシメチル)ピリジニウムエチルスルファート(1-Ethyl-3-(hydroxymethyl)pyridinium Ethyl Sulfate)、1-エチル-3-メチルピリジニウムエチルスルファート(1-Ethyl-3-methylpyridinium Ethyl Sulfate)、1-エチルピリジニウムブロミド(1-Ethylpyridinium Bromide)、1-エチルピリジニウムクロリド(1-Ethylpyridinium Chloride)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムブロミド(1-Butyl-1-methylpyrrolidinium Bromide)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムクロリド(1-Butyl-1-methylpyrrolidinium Chloride)等が挙げられる。
【0025】
この変位子11の製造方法としては、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体とを例えばイオン液体が40重量%になるように混合し混合液を生成し、この混合液を、所望の形状の型に流し込み、真空脱気を行い、例えば150℃で30分の加熱処理を行った後、型を取り除く方法が例示される。
【0026】
電極12および13は、素子本体11の変形に追従可能な柔軟な材料であることが好ましく、例えば金のスパッタリングにより形成することができる。また、金以外の材料としては、Al、Cu、Pt、カーボンナノチューブ、PEDOT/PSS等の導電性高分子、銀グリース等を好適に用いることができる。
【0027】
次に、このように構成されるアクチュエータ素子10の動作について説明する。
図2(a)は電極12および13に電圧が印加されていない場合の変位子11の状態であり、変位子11においては、シリコーンを含むエラストマーにイオン液体の+成分と−成分が均一に分散している。図2(b)は電極12および13の間に電圧が印加された場合の変位子11の状態であり、イオン液体における+成分は負極である電極13に引き寄せられ、−成分は正極である電極12に引き寄せられ、イオン液体に分極が生じる。これにより、変位子11の中で成分の偏りが形成され、変位子11が変形することによって変位が生ずる。また変位子11を2個使い、変位子11の長さ方向にその2個の変位子11を直列に並べ、対向する中央部の端部同士を上方へ屈曲させれば、その変位力を増加することもできる。
【0028】
本実施形態のアクチュエータ素子10は、変位子11が有機材料であるため、電圧印加による変形が大きく、ストロークを大きくとることができる。また、アクチュエータ素子10は変位子11に電極12および13を形成した簡単な構成であるから小型化することができる。このため、高密度配置することができる。また、空気中でも安定に動作させることができ、適用の制限は存在しない。
【0029】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3は本発明の第2の実施形態に係るアクチュエータ素子を示す概略断面図である。
【0030】
図3(a)に示すように、本実施形態に係るアクチュエータ素子10′は、電気駆動型ポリマーである、シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなる板状の変位子11′ならびに変位子11′の上下面に設けられた変位子11′に給電するための電極12′および13′からなる素子本体14′と、変位子11′を覆うように設けられ、変位子11′の変位によって面外方向(面に垂直な方向)に変位する変位伝達部15′とを有している。
【0031】
変位子11′は、長手方向に沿って交互に折返す折り紙構造を有しており、電圧が印加されていない時には折りたたまれた状態であり、変位伝達部15の表面は、図中二点鎖線で示すように平坦であるが、電極12′および13′介して制御電圧が印加されることにより、一方向、図では上方に変位して、図示の状態となり、変位伝達部15′を面外方向(上方)に変位させる。なお、変位子11′を単純化した構造を図3(b)に示す。
【0032】
変位伝達部15′は、変位伝達部15と同様、弾性を有する材料、例えばポリイミド等の樹脂からなり、変位子11′に電圧が印加されておらず変位子11′が折りたたまれた状態のときは平坦な状態であるが、電圧印加により変位子11′が変位した際には、その変位に応じて面外方向、図3では上方に変位する。そして、電圧が解除されて変位子11′が折りたたまれた状態に戻った際には、元の平坦な状態に戻る。
【0033】
変位伝達部15′は素子本体14′を収容する容器16′の一部として構成されており、容器16′はCuやAl等の金属、または樹脂等の柔らかい材料からなる固定板17′に固定されている。
【0034】
一対の電極12′および13′は一方が正極、他方が負極であり、これらには制御配線18′が接続されている。そして、この制御配線18′を介して電極12′および13′間に所定の制御電圧が印加される。
【0035】
次に、このように構成されるアクチュエータ素子10′の動作について説明する。
図4(a)は電極12′および13′に電圧が印加されていない場合の変位子11′の状態であり、変位子11′は折りたたまれた状態である。この状態から電極12′および13′の間に電圧を印加すると、第1の実施形態で説明したように分極が生じて変位子11′の中で成分の偏りが形成され、変位子11′が変形することによって、図4(b)に示すように、一方向(図では上方)に変位が生ずる。
本実施形態のアクチュエータ素子10′は、第1の実施形態と同様、変位子11′が有機材料であるため、電圧印加による変形が大きく、ストロークを大きくとることができる。また、空気中でも安定に動作させることができ、適用の制限は存在しない。
【0036】
また、変位子11′は折りたたまれた状態から伸びた状態に変位するので第1の実施形態よりも大きなストロークをとることができる。また、変位子11′は直線的に変位するので、第1の実施形態よりもフットプリントを小さくすることができ、より小型にすることができる。このため、第1の実施形態のアクチュエータ素子よりも高密度配置が可能となる。
【0037】
<第3の実施形態>
本実施形態は、複数のアクチュエータ素子を複数備えたシート状アクチュエータについて示す。図5は本発明の第3の実施形態に係るシート状を示す平面図、図6はその一部を示す断面図である。
【0038】
このシート状アクチュエータ20は、弾性を有する材料、例えばポリイミド等の樹脂からなる扁平形状の容器21の中に、上記第1の実施形態の素子本体14を平面状に高密度に複数配し、これら素子本体14の下面を容器21の内面に貼り付け、この容器21を例えば、Al、Cu等の金属からなる固定板23に固定して構成される。そして、容器21の上面が複数のアクチュエータ素子10の共通の変位伝達部25となる。
【0039】
各アクチュエータ素子10の電極12および13からは制御配線18が延びており、全てのアクチュエータ素子10からの制御配線18がコントローラ31へと延び、コントローラ31に制御電源32が接続されている。コントローラ31は図示せぬセンサ等から動作分布指示が入力され、その指示に基づいてコントローラ31が複数のアクチュエータ素子10に所定の制御電圧を印加し、共通の変位伝達部25に所望の高さ分布が形成される。
【0040】
上述したようにアクチュエータ素子10は小型で簡易な構造を有しているため、高密度配置可能であり、しかもストロークが大きいため、これを複数配置してなる本実施形態のシート状アクチュエータ20は、半導体ウエハのような大面積の基板の位置調節シートまたはギャップ調節シート等として極めて適したものとなる。
【0041】
<第4の実施形態>
本実施形態も、第3の実施形態と同様、複数のアクチュエータ素子を複数備えたシート状アクチュエータについて示す。図7は本発明の第4の実施形態に係るシート状アクチュエータを示す平面図、図8はその一部を示す断面図である。
【0042】
このシート状アクチュエータ20′は、弾性を有する材料、例えばポリイミド等の樹脂からなる扁平形状の容器21′の中に、上記第2の実施形態の素子本体14′を平面状に高密度に複数配し、これら素子本体14′の下面を容器21′の内面に貼り付け、この容器21′を例えば、Al、Cu等の金属からなる固定板23に固定して構成される。そして、容器21′の上面が複数のアクチュエータ素子10′の共通の変位伝達部25′となる。
【0043】
各アクチュエータ素子10′の電極12′および13′からは制御配線18′が延びており、全てのアクチュエータ素子10′からの制御配線18′が、第3の実施形態と同様、コントローラ31へと延び、コントローラ31に制御電源32が接続されている。コントローラ31は図示せぬセンサ等から動作分布指示が入力され、その指示に基づいてコントローラ31が複数のアクチュエータ素子10′に所定の制御電圧を印加し、共通の変位伝達部25′に所望の高さ分布が形成される。
【0044】
上述したようにアクチュエータ素子10′は小型で簡易な構造を有しているため、高密度配置可能であり、しかもストロークが大きいため、これを複数配置してなる本実施形態のシート状アクチュエータ20′は、半導体ウエハのような大面積の基板の位置調節シートまたはギャップ調節シートとして極めて適したものとなる。
【0045】
<応用例>
以下、上記実施形態のアクチュエータ素子、シート状アクチュエータの応用例について説明する。
【0046】
(プローブ装置への応用例)
図9は、上記第1の実施形態または第2の実施形態のアクチュエータ素子を荷重調節部材として用いたプローブ装置の一例を示す断面図、図10は図9のプローブ装置の連結部材の上面付近の平面図である。
プローブ装置40は、半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)の電気的特性を検査するためのものであり、プローブカード41と、被検査体としてのウエハWを載置する載置台42とを有している。プローブカード41は、載置台42の上方に配置されている。
【0047】
プローブカード41は、全体が略円盤状に形成されている。プローブカード41は、検査時にウエハWの電極パッドUに接触する接触子(プローブ)90を下面で支持する支持板51の上面側に設けられ、接触子90に検査用の電気信号を送る回路基板52とを有している。
【0048】
回路基板52は、略円盤状に形成され、図示しないテスタに電気的に接続されている。回路基板52の内部には、接触子90との間で検査用の電気信号を伝送するための電子回路が実装されている。テスタからの検査用の電気信号は、回路基板52の電子回路を介して接触子90に送受信される。回路基板52の下面には、接続端子52aが配置されている。
【0049】
回路基板52の上面側には、回路基板52を補強する補強部材53が設けられている。補強部材53は、回路基板52の上側に平行に配置された本体部53aと、本体部53aの外周部から下方に延び、回路基板52の外周部を固定する固定部53bを有し、固定部53bは、回路基板52の内側に突出するとともに、外側に延びており、固定部53bの外周部は、図示しないホルダに保持されている。
【0050】
回路基板52の上面には、連結部材54が回路基板52と平行に設けられている。連結部材54は、回路基板52よりも小径の略円盤状をなし、補強部材53の固定部53bの内側に設けられている。なお、連結部材54は、回路基板52の上面に接することにより、回路基板52の平面度を矯正する機能も有している。
【0051】
連結部材54の外周部の下面には、支持板51と連結部材54とを連結し一体化するための連結体55が固定されている。連結体55は、鉛直方向に延び、支持板51の外周部の複数箇所、例えば4箇所に設けられている。
【0052】
連結体55は、回路基板52を厚さ方向に貫通し、下端部が支持板51の外周部の外方位置まで到達しており、連結体55の下部に形成された2箇所設けられた突出部55aにより支持板51が保持されている。なお、下方の突出部55aは、板バネであってもよい。この場合、支持板51の外周部を下から保持しながら、支持板51を回路基板52に押しつけて、支持板51と回路基板52との電気的な接触を維持できる。
【0053】
連結部材54の上面の中央部には、図10に示すように、複数、例えば3本のボルト56が設けられている。ボルト56の上端部は、図9に示すように、連結部材54の上面の中央部に形成された凹部54aに係止されている。ボルト56は回路基板52を厚さ方向に貫通し、その下端部は支持板51の上面に固定されている。したがって、連結体55とボルト56によって、支持板51と連結部材54が連結されている。
【0054】
連結部材54の上面には、接触子90と電極パッドUとの接触荷重を一定に維持する荷重調整部材としての本実施形態のアクチュエータ素子10または10′が設けられている。アクチュエータ素子10または10′は、図10に示すように、複数、例えば3個設けられている。アクチュエータ素子10は平面視において、連結部材54の中心を円心とする同一円周上に等間隔に配置されている。アクチュエータ素子10または10′の上面は補強部材53の本体部53aに当接している。アクチュエータ素子10または10′は、一定方向に一定の推力を発生させることができ、荷重の作用点に関わらず当該荷重を一定に発生させることができる。
【0055】
凹部54aには、荷重測定器63が設けられ、これによりアクチュエータ素子10または10′にかかる荷重が測定される。荷重測定器63はコントローラ60に接続されている。コントローラ60は制御電源61およびアクチュエータ10または10′にも接続されている。そして、コントローラ60は、荷重測定器63からの信号に基づいて、アクチュエータ10または10′へ供給する制御電圧を制御してアクチュエータ素子10または10′の推力を変位位置(変位量)にかかわらず一定に制御する。したがって、検査時に接触子90が電極パッドUに接触する際にも、その接触荷重を所定の荷重に保つことができる。すなわち、コントローラ60により、荷重測定器63の測定結果に基づいて、制御電源61からアクチュエータ素子10または10′に供給する電圧を制御することによって、たとえ接触子90と電極パッドUとが異なる高さで接触した場合でも、接触子90と電極パッドUとの接触荷重が一定になるように制御される。アクチュエータ素子10または10′の個数は、3個に限定されないが、3個以上が好ましい。
【0056】
連結部材54の外周部には弾性部材としての板バネ64が設けられている。板バネ64の一端は連結部材54の外周部に固定され、他端は補強部材53の固定部53bに固定されており、円周方向に複数、例えば3個、好ましくは等間隔に配置されている。これら板バネ64により支持板51の水平方向の位置が固定される。
【0057】
支持板51は、載置台42と対向し、かつ回路基板52と平行になるように配置されている。支持板51は、略方盤状に形成されており、その上面には、複数の接続端子51aが設けられている。接続端子51aは、回路基板52の接続端子52aに対応するように配置されている。
【0058】
支持板51の接続端子51aと、接続端子51aに対応する回路基板52の接続端子52aとの間には、これらの間の電気的導通をとるための中間部材70が複数設けられている。複数の中間部材70は、支持板51の上面内において均一に配置されている。また、各中間部材70は、それぞれが独立して鉛直方向に伸縮するように形成されており、したがって、例えば接触子90と電極パッドUが異なる高さで接触した場合でも、これら中間部材70が接触子90と電極パッドとの接触荷重の面内分布を均一にするように作用する。
【0059】
支持板51の下面には、上面の接続端子51aより狭いピッチで接触子90が設けられている。下面の接触子90は接続端子51aに対応して同数設けられ、対応する接続端子51aと接触子90とは支持板51の内部の配線により接続されている。すなわち、支持板51は、回路基板52の接続端子52aのピッチを変換するピッチ変換基板として機能する。
【0060】
載置台42は、XYZ移動機構43により水平方向および鉛直方向に移動自在に構成されており、駆動機構44によりXYZ移動機構43を駆動させることにより、載置台42に載置されたウエハWを三次元移動して精密なアライメントを行えるようになっている。
【0061】
なお、本例の場合、アクチュエータ素子10または10′に要求されるスペックを例示すると以下のようになる。アクチュエータ素子の設置位置:外径φ100mm、アクチュエータ素子の厚さ:5mm以下±50%、駆動力:各点20kgf/cm2、動作温度:室温±20℃、動作速度:sec〜minオーダーで動作すること。これらスペックは、上記第1および第2の実施形態のアクチュエータ素子で十分満たし得る。
【0062】
次に、このような構成のプローブ装置40によって実際にウエハWの電気特性を検査する際の動作について説明する。
図11は、電極パッドUの位置変位Sと、接触子90と電極パッドUとの接触荷重として発生する荷重Fとの関係を示すグラフである。なお、図11中の発生荷重F1は、例えば接触子90、支持板51、連結部材54、連結体55等の移動可能な部材の重さ、中間部材70の初期荷重の総和となる。まず、ウエハWが載置台42上に保持されると、載置台42が上昇し、ウエハWの各電極パッドUが接触子90に接触する。この接触の瞬間における電極パッドUの位置変位Sと発生荷重Fとの関係が、図11の点Aとなる。
【0063】
さらに電極パッドUが上昇すると、接触子90は、下から上方向に作用する力により鉛直方向に圧縮される。そして、電極パッドUの位置変位がS1に達するまで、すなわち所定の発生荷重F1に達するまでは、発生荷重Fは接触子90の圧縮により吸収される。したがって、この場合、電極パッドUが上昇しても支持板51は上昇しない。また、この間の電極パッドUの位置変位Sと発生荷重Fとの関係が、図11に示す点A−B間となる。
【0064】
さらに電極パッドUを所定位置であるS2に達するように上昇させる。このとき、発生荷重Fは、支持板51を介して中間部材70に伝達されるとともに、支持板51、連結体55および連結部材54を介してアクチュエータ素子10または10′に伝達される。このとき、支持板51、連結体55および連結部材54は上昇する。このとき、コントローラ60により、荷重測定器63の測定結果に基づいて、制御電源61からアクチュエータ素子10または10′に供給する電圧を制御することによって、接触子90と電極パッドUとの接触荷重が一定になるように作用するので、電極パッドUの位置変位SがS1からS2に変位する間、発生荷重FをF1に維持することができる。
【0065】
そして、このように接触荷重を一定に保った状態で、回路基板52から検査用の電気信号が中間部材70、支持体51の接続端子51a、および接触子90を順に通ってウエハW上の各電極パッドUに送られて、ウエハW上の回路の電気的特性が検査される。
【0066】
従来のプローブ装置では、プローブカードが載置台と平行設置されていない、または載置台の平面度が悪い場合には、複数の接触子と電極パッドが異なる高さで接触し、接触荷重面内分布を均一にできず、接触不良となることがあり、また、支持板の水平方向の移動を規制しないと接触子が電極パッドと適切に接触できず、接触不良となることがあったが、このようにアクチュエータ素子を用いることにより接触荷重の面内分布を均一に制御し、接触荷重を一定に制御することができるので、接触不良をなくすことができる。
【0067】
出願人は先に、アクチュエータ素子の代わりにバネを用いて接触荷重を一定にする手法を提案したが、バネの付勢力は、圧縮長さによって異なるので、接触荷重は厳密には一定にならず、電極パッドの位置変位が大きくなるほど大きくなる傾向にある(図11のB−C′)。これに対しアクチュエータ素子10または10′を用いることにより、図11に示すように、接触荷重を一定にすることができるのである。
【0068】
(プラズマエッチング装置への応用例)
(1)フォーカスリングへの応用例
ここでは、プラズマエッチング装置の載置台において、ウエハの周囲に配置されるフォーカスリングのギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いた例を示す。
【0069】
プラズマエッチング装置は、チャンバ内に、下部電極として機能するウエハを載置する載置台と、載置台と対向する上部電極とを配置し、上部電極または下部電極に高周波電力を印加してこれらの間に高周波電界を形成し、この高周波電界で形成された処理ガスのプラズマにより載置台に載置されたウエハにエッチング加工を施すものである。
【0070】
図12は、フォーカスリングのギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたプラズマエッチング装置の載置台を示す断面図である。
載置台140は、チャンバの底部に絶縁板を介して設けられ、小径の上段部142aと大径の下段部142bを有する段付き円柱状をなす載置台本体142を有している。小径の上段部142aの上面にはクーロン力等の静電力によりウエハWを吸着する静電チャック144が設けられている。
【0071】
上段部142aの周囲には、エッチング均一性を向上させるための円環状をなすフォーカスリング146がその表面をウエハ表面と同じ高さになるように設けられている。フォーカスリング146は、エッチング対象がシリコンの場合にはシリコン製であり、エッチング対象が酸化膜の場合には酸化シリコン製である。
【0072】
フォーカスリング146と下段部142bの表面との間には、第3の実施形態または第4の実施形態と同様の基本構造を有する円環状のシート状アクチュエータ148が設けられている。シート状アクチュエータ148は、ギャップ調整シートとして機能し、例えば図13に示すように4分割されて駆動制御が行われる。一括して駆動制御を行うようにしてもよい。
【0073】
載置台本体142の内部には、冷媒室150が設けられている。この冷媒室150には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給され、冷媒の温度によってウエハWの処理温度を制御することができるようになっている。また、図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン152を介して静電チャック144の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0074】
均一なエッチングを実現するためには、フォーカスリング146の表面高さをウエハW表面と同一になるようにする必要があるが、従来から、エッチングの際のプラズマによるスパッタリング等によりフォーカスリング146の表面が削れ、エッチングの径方向均一性が悪くなるという問題が顕在化している。
【0075】
そこで、本例では、第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータ148をギャップ調整シートとしてフォーカスリング146の下に設け、このシート状アクチュエータ148により、プラズマによるスパッタリングで削れた分だけフォーカスリング146を上昇させるようにする。
【0076】
このシート状アクチュエータ148は、300mmウエハの場合には、例えば内径が300mm、外径が500mm(または350mm)であり、厚さが2mm以下で可変分が±50%以上、動作温度が80〜200℃でできるだけ熱伝導率が高いこと(例えば1W/mK)が要求される。また、酸化膜用のエッチング装置の場合には耐圧が3000V、ポリシリコンエッチング用のエッチング装置の場合には最大1000Vである。これらの仕様は、上記第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータであれば十分に満たすものである。
【0077】
(2)載置台への応用例
ここでは、プラズマエッチング装置の載置台において、ウエハの下に形状矯正シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いた例を示す。
図14は、載置台におけるウエハの形状を矯正する形状矯正シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたプラズマエッチング装置の載置台を示す断面図である。
【0078】
この載置台160は、基本構造は上記載置台140と同じであるから同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。この載置台160は、静電チャック144とウエハWの間に、第3の実施形態または第4の実施形態と同様の基本構造を有する円盤状のシート状アクチュエータ162が設けられている。また、フォーカスリング146の下にはシート状アクチュエータ148は設けられていないが、設けてもよい。
【0079】
シート状アクチュエータ162は、ウエハWの反りや歪みを矯正して水平に戻すために用いられるものであり、図15の平面図に示すように、アクチュエータ素子10または10′が例えば4cm2毎に高密度で配置される。
【0080】
均一なエッチングを実現するためには、ウエハWの反りや歪み等の変形が存在せず、ウエハWが水平になっていることが重要であるが、現実のウエハWには反りや歪みが少なからず存在するため、エッチング均一性が十分でない場合も生じる。
【0081】
そこで、本例では、第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータ162をウエハWの形状矯正シートとしてウエハWと静電チャック144との間に設け、このシート状アクチュエータ162により、ウエハWを水平面に戻し、エッチング均一性を向上させる。
【0082】
このシート状アクチュエータ162は、ウエハWとほぼ同じ大きさを有する。また、厚さが2mm以下で可変分が±50%以上、動作温度が80〜200℃でできるだけ熱伝導率が高いことが好ましい。また、酸化膜用のエッチング装置の場合には耐圧が3000V、ポリシリコンエッチング用のエッチング装置の場合には最大1000Vである。これらの仕様は、上記第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータであれば十分に満たすものである。
【0083】
(フォトレジスト塗布・現像装置のベーク装置への応用例)
ここでは、フォトレジスト塗布・現像装置のベーク装置において、ウエハのギャップを調整するギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いた例を示す。
図16は、ギャップ調整シートとして本発明のシート状アクチュエータを用いたベーク装置の加熱部を示す断面図である。加熱部170は、水平面保持のためのベース板172と、その上に設けられたギャップ調整シートとして用いられるシート状アクチュエータ174と、その上に設けられたフィルム状ヒータ176とを有し、フィルム状ヒータ176の上には複数のウエハ支持ピン(プロキシミティピン)178が設けられている。そしてウエハ支持ピン178上にウエハが載置されるようになっている。
【0084】
シート状アクチュエータ174は、基本構造が第3の実施形態のシート状アクチュエータ20または第4の実施形態のシート状アクチュエータ20′と同様であり、ウエハWとシート状ヒータ176とのギャップが一定となるようにギャップ調整してウエハWの温度を均一に保つためのものであり、アクチュエータ素子10または10′が図17の平面図に示すように区画され、14〜32cm2毎(300mmウエハでは30〜50区画)に配置される。
【0085】
このようなベーク装置においては、従来から、ウエハの反りや歪みのため、ウエハが載置される熱板とウエハとのギャップが不均一になり、ウエハを均一に加熱することができず、ウエハ面内での温度のばらつきが生じるという問題がある。
【0086】
そこで、本例では、第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータ174をシート状ヒータ176の下に設け、ウエハWの変形に対応してギャップが均一になるようにシート状アクチュエータ174の各アクチュエータ素子10または10′を駆動させる。これによりウエハ温度の面内均一性は極めて高いものとなる。このときのシート状アクチュエータ174によるギャップ調整は、ウエハW裏面温度の複数の位置の温度を測定する複数の熱電対を設け、その温度が均一になるように、各アクチュエータ素子10または10′を駆動させることにより行う。熱電対を設ける代わりに、熱電対パターンを印刷したセンサを別途用意し、これを用いて温度測定を行ってもよい。
【0087】
このシート状アクチュエータ174は、ウエハとほぼ同じ大きさを有する。また、ウエハがφ450mmの場合には、調整ギャップ高さは0.4mm以上必要である。動作温度は室温〜180℃(または室温〜250℃、または室温〜300℃)である。これらの仕様は、上記第3の実施形態または第4の実施形態の基本構造を有するシート状アクチュエータであれば十分に満たすものである。
【0088】
なお、塗布・現像装置には冷却装置があり、この冷却装置も冷却板に支持ピンを介してウエハを載置するものであるから、ベーク装置の場合と同様、冷却板とウエハとの間に同様な構成のシート状アクチュエータを用いてギャップ調整を行うことにより、所望のウエハ温度の均一性を確保することができる。
【0089】
(ウエハチャックへの応用例)
ここでは、ウエハ塗布・現像装置においてウエハの搬送に用いられるウエハチャックに本発明のアクチュエータ素子を適用した例について説明する。図18(a)はこのようなウエハチャックを示す平面図、図18(b)はその側面図である。このウエハチャック180は、一対のウエハ保持アーム182を有し、これらウエハ保持アーム182によりウエハを挟むことによりウエハを保持する。
【0090】
ウエハ保持アームは、全体が耐摩耗性樹脂からなり、ウエハWに沿った円弧状をなす本体部184と、本体部184の両側から内側に突出し、ウエハWが載置されるウエハ載置部186と、本体部の中央にウエハWのエッジを保持するように設けられたエッジホルダ188とを有する。そして、このエッジホルダ188としてアクチュエータ素子10または10′を用いる。そして、一対のウエハ保持アーム182でウエハWを挟持した際に、エッジホルダ188を構成するアクチュエータ素子10または10′をウエハWのエッジに向けて突出させる。このとき、アクチュエータ素子10または10′はウエハWを柔らかく保持できるので、パーティクル等の発生がなくしかも安定してウエハWを固定することができる。
【0091】
従来は、この種のウエハチャックは、ウエハ搬送時に水平方向に数十G、垂直で1Gという大きな加速度がおよぼされ、ウエハが外れやすいという課題があったが、アクチュエータ素子10または10′を用いることにより、大口径のウエハでも外れずに安定して保持することができる。
【0092】
このエッジホルダ188に用いられるアクチュエータ素子10または10′は、動作温度が室温〜100℃であり、動作速度は数十msecが要求されるが、この仕様は十分に満足することができる。
【0093】
(MEMSパターンウエハのチャックへの応用例)
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路を一つのウエハ等の上に集積化したデバイスであるが、MEMSパターンが形成されたウエハは、ウエハ全面でチャックすることができず、ウエハ搬送の際に搬送アームに置いただけの状態で搬送せざるを得ず、ウエハが外れやすいという問題がある。
【0094】
本例では、本発明のシート状アクチュエータを用いて、ウエハを吸着できるようにした搬送アームを実現する。
【0095】
図19(a)に示すように、本例の搬送アーム190は、第3の実施形態または第4の実施形態と同じ基本構造を有するシート状アクチュエータ192と、その上に設けられた穴スペーサ194とを有し、穴スペーサ194の上にMEMSパターンウエハWが載置される。シート状アクチュエータ192は、図19(b)に示すように、ウエハのパターンに応じて例えば1cm2毎に区画Sが形成され、区画S毎にアクチュエータ素子10または10′が設けられている。また、穴スペーサ194は、図19(c)に示すように、シート状アクチュエータ192に対応して例えば1cm2毎に区画Sが形成され、所定の区画Sに穴195が形成されている。穴は予め決められた区画Sに設けられていてもよいし、各区画S毎に穴は設けられていて選択的にアクチュエータ素子10または10′をON−OFF制御してもよい。そして、穴スペーサ194の穴195を有する区画Sにおいて、図19(d)に示すように、ウエハWが載置された後、アクチュエータ素子10または10′を駆動させて真空空間Vの体積を膨張させることにより、つまり穴195の直下の薄くなったシート状アクチュエータ192の部分を下側に突き出すように動作させて、穴195を介してウエハWが真空吸着される。同様な動作を、穴195が形成された複数の区画Sで行うことによりウエハWを吸着固定することができる。これによりMEMSパターンウエハを安定して高速に搬送することができる。
【0096】
この場合のアクチュエータ素子は、動作温度が−40〜150℃、ON/OFF動作速度が1sec以下であり、上記実施形態のアクチュエータ素子10、10′であれば十分満たすものである。
【0097】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、アクチュエータ素子の変位子として、板状のもの、および折り紙状のものを用いたが、これに限るものではない。また、変位伝達部としてアクチュエータ素子を収容する容器の一部を用いたが、これに限るものではない。さらに、上記応用例はあくまでも例示であり、本発明はこのような例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0098】
10、10′…アクチュエータ素子
11、11′…変位子
12、13、12′、13′…電極
14、14′…素子本体
15、15′…変位伝達部
16、16′…容器
17、17′…固定板
18、18′…制御配線
20、20′…シート状アクチュエータ
21、21′…容器
23、23′…固定板
25、25′…変位伝達部
31…コントローラ
32…制御電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなり、電圧が印加されることにより変位する変位子、および前記変位子に電圧を印加するための電極を有する素子本体と、
前記変位子の変位によって面外方向に変位する変位伝達部と
を具備することを特徴とするアクチュエータ素子。
【請求項2】
前記変位子は板状をなし、電圧を印加することにより、一方側が曲がるように変位することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ素子。
【請求項3】
前記変位子は折り紙状をなし、電圧を印加することにより一方向に伸張することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ素子。
【請求項4】
基板上に形成された多数の電極パッドに接触子を接触させて電気特性を測定するプローブ装置において、前記電極パッドと接触子の接触荷重を一定に維持するための荷重調整部材として設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアクチュエータ素子。
【請求項5】
基板を一対の基板保持アームで保持して搬送する基板チャックにおいて、基板を挟むときに突出するように設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアクチュエータ素子。
【請求項6】
シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなり、電圧が印加されることにより変位する変位子、および前記変位子に電圧を印加するための電極を有する素子本体が、扁平状の容器に平面状に複数配置され、さらに前記複数の素子本体の各変位子の変位によって面外方向に変位する共通の変位伝達部を有することを特徴とするシート状アクチュエータ。
【請求項7】
前記変位子は板状をなし、電圧を印加することにより、一方側が曲がるように変位することを特徴とする請求項6に記載のシート状アクチュエータ。
【請求項8】
前記変位子は折り紙状をなし、電圧を印加することにより一方向に伸張することを特徴とする請求項6に記載のシート状アクチュエータ。
【請求項9】
プラズマエッチング装置の基板を載置する載置台において、基板の外周に設けられるフォーカスリングの下に設けられ、前記フォーカスリングがプラズマで削られた際に削られた分だけ前記フォーカスリングを上方に変位させることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシート状アクチュエータ。
【請求項10】
プラズマエッチング装置の基板を載置する載置台において、基板を支持するように設けられ、基板の変形を矯正するように変位することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシート状アクチュエータ。
【請求項11】
加熱部または冷却部を介して基板を加熱または冷却する装置において、基板と加熱部または冷却部との間のギャップが均一になるように変位することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシート状アクチュエータ。
【請求項12】
基板を吸着保持する基板チャックに用いられるシート状アクチュエータであって、穴を有するスペーサを介在させて基板が載置され、複数の領域においてアクチュエータ素子の変位子を変位させることにより、前記スペーサの穴を介して基板を真空チャックすることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシート状アクチュエータ。
【請求項1】
シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなり、電圧が印加されることにより変位する変位子、および前記変位子に電圧を印加するための電極を有する素子本体と、
前記変位子の変位によって面外方向に変位する変位伝達部と
を具備することを特徴とするアクチュエータ素子。
【請求項2】
前記変位子は板状をなし、電圧を印加することにより、一方側が曲がるように変位することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ素子。
【請求項3】
前記変位子は折り紙状をなし、電圧を印加することにより一方向に伸張することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ素子。
【請求項4】
基板上に形成された多数の電極パッドに接触子を接触させて電気特性を測定するプローブ装置において、前記電極パッドと接触子の接触荷重を一定に維持するための荷重調整部材として設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアクチュエータ素子。
【請求項5】
基板を一対の基板保持アームで保持して搬送する基板チャックにおいて、基板を挟むときに突出するように設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアクチュエータ素子。
【請求項6】
シリコーンを含むエラストマーとイオン液体との混合物からなり、電圧が印加されることにより変位する変位子、および前記変位子に電圧を印加するための電極を有する素子本体が、扁平状の容器に平面状に複数配置され、さらに前記複数の素子本体の各変位子の変位によって面外方向に変位する共通の変位伝達部を有することを特徴とするシート状アクチュエータ。
【請求項7】
前記変位子は板状をなし、電圧を印加することにより、一方側が曲がるように変位することを特徴とする請求項6に記載のシート状アクチュエータ。
【請求項8】
前記変位子は折り紙状をなし、電圧を印加することにより一方向に伸張することを特徴とする請求項6に記載のシート状アクチュエータ。
【請求項9】
プラズマエッチング装置の基板を載置する載置台において、基板の外周に設けられるフォーカスリングの下に設けられ、前記フォーカスリングがプラズマで削られた際に削られた分だけ前記フォーカスリングを上方に変位させることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシート状アクチュエータ。
【請求項10】
プラズマエッチング装置の基板を載置する載置台において、基板を支持するように設けられ、基板の変形を矯正するように変位することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシート状アクチュエータ。
【請求項11】
加熱部または冷却部を介して基板を加熱または冷却する装置において、基板と加熱部または冷却部との間のギャップが均一になるように変位することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシート状アクチュエータ。
【請求項12】
基板を吸着保持する基板チャックに用いられるシート状アクチュエータであって、穴を有するスペーサを介在させて基板が載置され、複数の領域においてアクチュエータ素子の変位子を変位させることにより、前記スペーサの穴を介して基板を真空チャックすることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のシート状アクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−101581(P2011−101581A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216675(P2010−216675)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(304023994)国立大学法人山梨大学 (223)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(304023994)国立大学法人山梨大学 (223)
【Fターム(参考)】
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