説明

アクリル酸エステル及びヒドロキシ化合物、該アクリル酸エステルの(共)重合体、それを用いた電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】良好なラジカル重合性と電荷輸送性を有し、成膜性や他のモノマーとの相溶性、耐摩耗特性に優れ且つ電気的特性が良好で且つ白斑点等による画像欠陥が少ない長寿命な電子写真感光体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される連鎖重合性化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアクリル酸エステル化合物及びヒドロキシ化合物、該アクリル酸エステルの重合体及び共重合体に関する。該アクリル酸エステル化合物はラジカル重合性と電荷輸送機能(ホール輸送性)を併せ持ち、重合により熱可塑性樹脂あるいは架橋硬化樹脂を形成することが可能であり、得られた樹脂が電荷輸送機能を発現することで有機EL、有機電子写真感光体、有機TFT、有機太陽電池等への安定な有機デバイス用半導体膜形成材料として有用である。また、該ヒドロキシ化合物は、前記アクリル酸エステル化合物の前駆体をはじめ、各種樹脂材料合成のための中間体として有用である。
さらに、本発明は、該アクリル酸エステルの(共)重合体を用い、繰返し使用時の耐摩耗性が極めて高く、画像欠陥の少ない高画質画像を長期間に亘って形成することができる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電荷輸送機能を樹脂に持たせる方法としては、電荷輸送性材料をバインダー樹脂中に分散させる方法が最も一般的であり、特に、電子写真感光体では広くから使用されている。しかしながら、電荷輸送機能部の機械的強度や耐熱性を上げるためには、電荷輸送性材料とバインダー樹脂を一体化させることが有利であり、近年、そのような取り組みが行われてきた。それらの中で、電荷輸送性構造体に連鎖重合性基を持たせた電荷輸送性モノマー及びその重合体が提案されている。例えば、特許文献1(特許第3164426号公報)には、トリフェニルアミン骨格を有するアクリル酸エステル類及びその重合体が開示されており、特許文献2、3(特開2000−066424号公報、特開2000−206716号公報)等には、二つ以上の連鎖重合性基を有する電荷輸送性モノマーの電子写真感光体への応用例が示され、多数の電荷輸送性モノマーが提案されている。中でも架橋性の良好なアクリル酸エステル系化合物が多数開示されている。一方、電荷輸送性を表す移動度では、単純なトリフェニルアミン構造よりも共役系の拡大したアミノビフェニル構造体やアミノ置換スチルベン構造体が高い移動度を示すことが知られており、上記電荷輸送性モノマーの内、これらの構造を有した物は、特に有用な材料である。これらの連鎖重合性モノマーを使用し、十分に架橋密度の高い3次元架橋膜を形成すれば、傷の付きにくい高硬度な膜や耐熱性の高い膜が得られ、各種有機半導体素子の耐久性向上に役立てることができる。しかしながら、架橋密度を上げることで本来必要とされる電荷輸送性が低下する傾向が見られ、十分な架橋密度の形成と良好な電荷輸送特性を満足するものは、これまで提案された多数の電荷輸送性モノマーにても達成できていない。
【0003】
近年、有機感光体(OPC)は良好な性能、様々な利点から、無機感光体に換わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。この理由としては、例えば(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、等が挙げられる。一方、最近画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、電荷輸送層が低分子電荷輸送物質と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を挙げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。 このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。そこで、耐摩耗性の改良が行われてきた。
(1)電荷輸送層に硬化性バインダーを用いたもの(例えば、特許文献4参照。)
(2)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(例えば、特許文献5参照。)
(3)電荷輸送層に無機フィラーを分散させたもの(例えば、特許文献6参照。)
(4)多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させたもの(例えば特許文献7参照)。
(5)炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送材及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けたもの(例えば、特許文献8参照。)
(6)同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有させたもの(例えば、特許文献9、10参照。)
【0004】
これらの改良により耐摩耗性は従来品に比べて向上したが新たな問題が生じてきている。従来の感光体は、表面に異物付着や傷等が生じても摩耗によりリフェースされ、いつまでも画像欠陥を引きずることは無かったが、耐摩耗性の改良された感光体は、一度表面に強固な異物付着や傷が発生するといつまでもその状態が残り、画像欠陥を出しつづける。この様に画像欠陥を発生しやすい問題があった。特に近年は高画質化及び省エネルギー化の要望からトナーの粒径が小さく、軟化温度が低くなっており、その流動性を確保するためにシリカ等の無機微粒子をトナー中に添加することが良く行われる様になってきている。このシリカ粒子が現像過程でOPC表面に刺さる場合が有り、その周囲にトナーのワックス成分等が堆積して現像できなくなり、白斑点状の画像欠陥が発生する問題が生じている。
【0005】
また、従来知られている前記特許文献7に記載されている四百数十種類の連鎖重合性モノマーでは、高度なレベルで高い耐摩耗性と残留電位の発生が小さい電気特性とを両立させることができなかった。その原因としては、架橋性が不十分であることが考えられる。そのためには連鎖重合性基の含有割合を上げる必要があり、連鎖重合性基を多官能化したり電荷輸送性構造の分子量を小さくしたりすることが必要であるが、良好な電荷輸送性を発現する構造の低分子量化には限度があり現実的な方法ではない。一方で連鎖重合性基の多官能化は含有割合を上げるには有効であるが、硬化後の電荷輸送性が悪くなってしまう。この原因は明らかではないが、電荷輸送性構造部の分子運動が何箇所も架橋されることで拘束されて自由に動ける範囲が小さくなり、電荷のホッピング移動性を低下させてしまうためと推定される。このように、連鎖重合成モノマーで十分満足のいくものは未だに得られていないのが現状である。
【0006】
また、近年は高画質化及び省エネルギー化の要望からトナーの粒径が小さく、軟化温度が低くなっており、その流動性を確保するためにシリカ等の無機微粒子をトナー中に添加することが良く行われる様になってきている。このシリカ粒子が現像過程でOPC表面に刺さる場合が有り、その周囲にトナーのワックス成分等が堆積して現像できなくなり、白斑点状の画像欠陥が発生する問題が生じている。また近年のさらなる高画質化、高耐久化に伴い耐摩耗性や残留電位蓄積性をより高度なレベルで両立させる必要が生じている。
【0007】
【特許文献1】特許第3164426号公報
【特許文献2】特開2000−066424号公報
【特許文献3】特開2000−206716号公報
【特許文献4】特開昭56−48637号公報
【特許文献5】特開昭64−1728号公報
【特許文献6】特開平4−281461号公報
【特許文献7】特許第3262488号
【特許文献8】特許第3194392号
【特許文献9】特開2000−66425号公報
【特許文献10】特開2004−212959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、良好なラジカル重合性と電荷輸送性を有し、成膜性や他のモノマーとの相溶性にも優れ、高密度な架橋膜形成が可能であり、高密度な架橋膜形成時にも優れた電荷輸送性を示すアクリル酸エステル化合物を提供することにある。また、そのための有用な製造中間体を提供することにある。
また、本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、耐摩耗特性に優れ且つ電気的特性が良好で且つ白斑点等による画像欠陥が少ない長寿命な電子写真感光体を提供することである。また、その白斑点画像欠陥の少ない長寿命感光体を使用し、長期間にわたり高画質化を実現した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、前記一般式(1)〜一般式(5)で表わされるアクリル酸エステル化合物が提供され、また、それらの製造中間体としても有用な前記一般式(6)〜一般式(8)で表わされるヒドロキシ化合物が提供され、さらに、該アクリル酸エステルの(共)重合体を用い、耐摩耗特性に優れ且つ電気的特性が良好で且つ白斑点等による画像欠陥が少ない長寿命な電子写真感光体が提供される。
即ち、上記課題は、本発明の(1)〜(5)の「アクリル酸エステル化合物」及び(6)〜(8)の「フェノール化合物」により達成され、また、本発明者らによる鋭意検討の結果、(9)〜(23)の「電子写真感光体」、「画像形成方法」及び「画像形成装置」により上記目的が達成されることを見出した。
(1)「下記一般式(1)で表される連鎖重合性化合物;
【0010】
【化1】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)」
(2)「下記一般式(2)で表わされるアクリル酸エステル化合物であることを特徴とする前記第(1)項に記載の連鎖重合性化合物;
【0011】
【化2】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Z環、Z環は環状構造を形成する置換基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)」
(3)「下記一般式(3)で表わされるアクリル酸エステル化合物であることを特徴とする前記第(2)項に記載の連鎖重合性化合物;
【0012】
【化3】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)」
(4)「下記一般式(4)で表されるアクリル酸エステル化合物であることを特徴とする前記第(3)項に記載の連鎖重合性化合物;
【0013】
【化4】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキル基、芳香族炭化水素基、複素環基、あるいはそれらを組み合わせた一価基を表す。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表す。q、rは0〜4の整数を表す。)」
(5)「下記一般式(5)で表されるアクリル酸エステル化合物であることを特徴とする前記第(3)項に記載の連鎖重合性化合物;
【0014】
【化5】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表す。q、rは0〜4の整数を表す。)」
(6)「下記一般式(6)で表されることを特徴とするヒドロキシ化合物;
【0015】
【化6】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表わす。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表わす。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)」
(7)「下記一般式(7)で表されることを特徴とする前記第(6)項に記載のヒドロキシ化合物;
【0016】
【化7】

(式中、Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表わす。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表わす。Rは置換基を有しても良いアルキル基、芳香族炭化水素基、複素環基、あるいはそれらを組み合わせた一価基を表わす。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表わす。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表わす。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表わす。q、rは0〜4の整数を表わす。)」
(8)「下記一般式(8)で表されることを特徴とする前記第(6)に記載のヒドロキシ化合物;
【0017】
【化8】

(式中、Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表わす。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表わす。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表わす。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表わす。q、rは0〜4の整数を表わす。)」
(9)「導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも下記の成分Aを連鎖重合させて得られる硬化物を含有することを特徴とする電子写真感光体;
成分A:下記一般式(1)で表される連鎖重合性モノマー
【0018】
【化9】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)」
(10)「導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも下記の成分A、成分Bの混合物を連鎖重合させて得られる硬化物を含有することを特徴とする電子写真感光体;
成分A:下記一般式(1)で表される連鎖重合性モノマー
成分B:連鎖重合性基を分子内に3個以上有し成分Aでない連鎖重合性モノマー
【0019】
【化10】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)」
(11)「導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも下記の成分A、成分B、成分Cの混合物を連鎖重合させて得られる硬化物を含有することを特徴とする電子写真感光体;
成分A:下記一般式(1)で表される連鎖重合性モノマー
成分B:連鎖重合性基を分子内に3個以上有し成分Aでない連鎖重合性モノマー
成分C:光重合開始剤
【0020】
【化11】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)」
(12)「前記成分A及び/又は成分Bの連鎖重合性基が、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする前記第(9)項乃至第(11)項の何れかに記載の電子写真感光体」
(13)「前記一般式(1)で表わされる連鎖重合性モノマー(成分A)が、下記一般式(2)で表されるアクリル酸エステルモノマーであることを特徴とする前記第(9)項乃至第(12)項の何れかに記載の電子写真感光体;
【0021】
【化12】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Z環、Z環は環状構造を形成する置換基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)」
(14)「前記一般式(2)で表わされるアクリル酸エステルモノマーが、下記一般式(3)で表わされるアクリル酸エステルモノマーであることを特徴とする前記第(13)項に記載の電子写真感光体;
【0022】
【化13】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)」
(15)「前記一般式(3)で表わされるアクリル酸エステルモノマーが、下記一般式(4)で表わされるアクリル酸エステルモノマーであることを特徴とする前記第(14)項に記載の電子写真感光体;
【0023】
【化14】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキル基、芳香族炭化水素基、複素環基、あるいはそれらを組み合わせた一価基を表す。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表す。q、rは0〜4の整数を表す。)」
(16)「前記一般式(3)で表わされるアクリル酸エステルモノマーが、下記一般式(5)で表わされるアクリル酸エステルモノマーであることを特徴とする前記第(14)項に記載の電子写真感光体;
【0024】
【化15】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表す。q、rは0〜4の整数を表す。)」
(17)「導電性支持体上に少なくとも単層の感光層を有する電子写真感光体であることを特徴とする前記第(9)項乃至第(16)項の何れかに記載の電子写真感光体」
(18)「導電性支持体上に少なくとも電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層した電子写真感光体であることを特徴とする前記第(9)項乃至第(16)項の何れかに記載の電子写真感光体」
(19)「導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層を順次積層した電子写真感光体であって、該架橋型電荷輸送層が少なくとも下記の成分Aを連鎖重合させて得られる硬化物を含有することを特徴とする前記第(9)項乃至第(18)項の何れかに記載の電子写真感光体;
成分A:下記一般式(1)で表される連鎖重合性モノマー
【0025】
【化16】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)」
(20)「導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体であって、該感光層が少なくとも下記の成分Aを含有することを特徴とする前記第(9)項乃至第(19)項の何れかに記載の電子写真感光体;
成分A:下記一般式(1)で表される連鎖重合性モノマー
【0026】
【化17】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)」
(21)「前記第(9)項乃至第(20)項の何れかに記載の電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写が繰り返し行われることを特徴とする画像形成方法」
(22)「少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段、及び前記第(9)項乃至第(20)項の何れかに記載の電子写真感光体を具備してなることを特徴とする画像形成装置」
(23)「少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、及び転写手段の1つと、前記第(9)項乃至第(20)項の何れかに記載の電子写真感光体を具備してなることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ」
【発明の効果】
【0027】
以下の詳細且つ具体的な説明より明らかなように、本発明の連鎖重合性化合物(成分A)、特にアクリル酸エステル化合物は、良好なラジカル重合性と電荷輸送性を有し、成膜性や他のモノマーとの相溶性にも優れるため、UV照射や重合開始剤の使用により容易に高密度な架橋膜形成が可能であり、そのような高密度架橋条件下でも良好な電荷輸送特性を示すため、各種有機半導体デバイスを提供するための材料として極めて有効であるという優れた効果を奏する。また、本発明によれば、少なくとも前記成分Aを連鎖重合させて得られる硬化物を含有する電子写真感光体とすることで耐摩耗特性且つ電気的特性が共に良好な電子写真感光体にあって、白斑点による画像欠陥が少ない長寿命感光体を提供することが可能である。上記のような優れた特性を有する感光体を短時間で容易に製造することができるために安価に市場に提供することができる。従って、この感光体を用いることにより、長期間にわたり高画質化を実現した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することができるという極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、前記アクリル酸エステル、及びこれを特定の連鎖重合性モノマーとして連鎖重合させて得られる硬化物を含有した電子写真感光体及びその硬化物を使用した画像形成方法、画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジを基本としている。ここで言う連鎖重合性モノマーは電荷輸送性機能を発現する構造と連鎖重合性の構造を併せ持っており、重合して得られる硬化物は電荷輸送性膜として機能する。
【0029】
我々は、高密度な連鎖重合性と電荷輸送性を両立できる新たな連鎖重合性モノマーを検討した結果、前記一般式(1)で表される化合物を使用して得られる硬化物が高密度な連鎖重合性と良好な電荷輸送性を両立するのに有効であることを見出し本発明とした。
従来の多官能性電荷輸送性モノマーを使用した場合は、硬化時の歪が大きくなり、クラック等のひびが生じる問題や多官能にもかかわらず硬化性に不足を生じる問題が発生したが、本発明における特定連鎖重合性モノマーの硬化では、クラック等の発生もなく十分に架橋硬化した均一な膜が得られる。また、高密度な電荷輸送性硬化膜の形成が可能となったことで、膜強度が十分に高くなり、シリカ微粒子等非常に硬度の高いトナー中の外添剤が感光体に刺さることを防止し、白斑点等の画像欠陥を減らすことができるようになった。
また、高密度な架橋硬化膜の実現には前記成分Aの連鎖重合性モノマーを用いることにより達成される。より好ましくは成分Aに、成分Bである連鎖重合性基を分子内に3個以上有する連鎖重合性モノマーを混合することが好ましい。また、連鎖重合開始には従来公知の種々の方法、例えば、熱、光、放射線による重合が適用できるが、光重合開始剤を添加して光照射により短時間で硬化させることで架橋密度の高い機械的強度に優れる感光体が得られる。
高密度な連鎖重合性と良好な電荷輸送性が両立している理由は現時点では明らかになっていないが、本発明の成分A中における特定複素環構造が高い分子平面性を有しているため、分子間のパッキングが良好になり、その結果、高密度な連鎖重合性と良好な電荷輸送性が両立した電子写真感光体が得られると考えられる。
【0030】
次に各構成成分について説明する。まず、成分Aについて説明する。
成分Aは、前記一般式(1)で表される連鎖重合性モノマーである。
ここで、本発明において連鎖重合とは、高分子体の生成反応を大きく連鎖重合と逐次重合に分けた場合の前者の重合反応形態を示し、例えばその形態が主にラジカル又はイオンなどの中間体を経由して反応が進行する不飽和重合、開環重合、異性化重合などを意味する。前記不飽和重合とは、ラジカルやイオンなどによって不飽和基、例えばC=C、C≡C、C=O、C=N、C≡Nなどが重合する反応を意味する。前記開環重合とは、炭素環や複素環からなる歪みを有した不安定な環状構造が触媒の作用等で活性化され、開環すると同時に重合を繰り返して鎖状高分子物を生成する反応のことを意味する。
本発明で用いられる連鎖重合性官能基としては、連鎖重合が可能な官能基であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、不飽和重合が可能な官能基である不飽和重合性官能基、開環重合が可能な官能基である開環重合性官能基が好ましい。
前記不飽和重合性官能基は、C=C、C≡C、C=O、C=N、C≡Nなどのような不飽和基を少なくとも一以上有する官能基であれば特に限定されないが、C=Cを有するものが一般的であり、本発明に用いられる不飽和重合性官能基としてはC=Cを有するものが好ましい。前記C=Cを有する不飽和重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基などが挙げられる。1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の(式1)で表される官能基が挙げられる。
【0031】
【化18】

(ただし、式中、Xは、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、−CON(R)−基(Rは、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表わす。)、またはスルフィド基を表わす。)
これらの置換基の具体例としては、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
また、1,1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の(式2)で表される官能基が挙げられる。
【0032】
【化19】

(ただし、式中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR基(Rは、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、または−CONR1011(R10およびR11は水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表わし、互いに同一または異なっていてもよい。)、また、Xは上記(式1)のXと同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表わす。ただし、Y、Xの少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。)
【0033】
これらの置換基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。なお、これらX、X、Yが有していても良い置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。これらの連鎖重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を使用することで短時間に十分硬化された平滑な膜の作製が可能となる。
【0034】
前記連鎖重合性官能基としては、上述したように開環重合性官能基を用いることもできる。該開環重合性官能基としては、炭素環や複素環からなる歪みを有した不安定な環状構造を少なくとも1つ有する官能基であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、基本的にはイオンが活性種として作用するものが大部分である。本発明に用いられる開環重合性官能基としては、例えば、環状カルボニル、オキシランなどが挙げられる。
連鎖重合性官能基を2個以上有する場合、連鎖重合性官能基は同一でも異なっても良い。
したがって、本発明の連鎖重合性化合物は、下記一般式(1)で表される連鎖重合性化合物である。
【0035】
【化20】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【0036】
上記一般式(1)において、Arの具体例としては、メチレン、1,1−エチレン、1,2−エチレン、α、α´−1,4−キシリレン等のアルキレン基、1,2−フェニレン、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、4,4´−ビフェニレン等の芳香族炭化水素二価基、1,4−チエニレン等の複素環二価基、あるいはこれらを組み合わせた二価基を挙げることができ、置換基を有していても良い。その置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、4−トリルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の置換アミノ基、フェニル基、4−トリル基、2−ナフチル基等の芳香族炭化水素基、2−フリル基、2−チエニル基等の複素環基を挙げることが出来る。Xの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。また、Xと窒素原子とで形成する環状構造の具体例は下記一般式(A−1)〜(A−16)を挙げることができる。X、Xの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の芳香族炭化水素二価基、上述の複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。Zの具体例としては、上述の連鎖重合性基を挙げることができる。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。
【0037】
【化21】

【0038】
これら一般式(1)で表わされる化合物は、下記一般式(2)で表わされるアクリル酸エステル化合物であることが好ましい。
【0039】
【化22】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Z環、Z環は環状構造を形成する置換基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【0040】
一般式(2)において、R、Rの具体例としては水素原子、メチル基を挙げることが出来る。Arの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の芳香族炭化水素二価基、上述の複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を挙げることができ、置換基を有していても良い。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。Xの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。X、Xの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の芳香族炭化水素二価基、上述の複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。Z環、Z環の具体例としては、フェニレン環、ナフタレン環を挙げることができる。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。
【0041】
さらに、下記一般式(3)で表わされるアクリル酸エステル化合物であることが、より好ましい。
【0042】
【化23】

【0043】
一般式(3)におけるR、Rは水素原子あるいはメチル基を表す。水素原子とメチル基では、ラジカル重合性に違いが生まれるので、使用環境により適宜選択して使用される。RとRは同一でも異なっても良い。Arの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の芳香族炭化水素二価基、上述の複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせたニ価基を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。Xの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。X、Xの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の芳香族炭化水素二価基、上述の複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせたニ価基、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。
【0044】
また、上記一般式(3)で表わされるアクリル酸エステル化合物は、次の一般式(4)で表されるアクリル酸エステル化合物、および、一般式(5)で表されるアクリル酸エステル化合物を典型例として包含する。
【0045】
【化24】

【0046】
一般式(4)においてR、Rは水素原子あるいはメチル基を表す。水素原子とメチル基では、ラジカル重合性に違いが生まれるので、使用環境により適宜選択して使用される。RとRは同一でも異なっても良い。Rの具体例としては、上述のアルキレン基、ビニレン基、上述の芳香族炭化水素二価基、上述の複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせたニ価基を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。Rの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の芳香族炭化水素二価基、上述の複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせたニ価基を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。Rの具体例としては、上述のアルキル基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基、あるいはそれらを組み合わせた一価基を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。R、Rの具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、ハロゲン原子を挙げることができる。Xの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。X、Xの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の芳香族炭化水素二価基、上述の複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせたニ価基、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。
【0047】
【化25】

【0048】
一般式(5)においてR、R水素原子あるいはメチル基を表す。水素原子とメチル基では、ラジカル重合性に違いが生まれるので、使用環境により適宜選択して使用される。RとRは同一でも異なっても良い。Rの具体例としては、上述のアルキレン基、ビニレン基、上述の芳香族炭化水素二価基、上述の複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせたニ価基を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。R、Rの具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、ハロゲン原子を挙げることができる。Xの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。X、Xの具体例としては、上述のアルキレン基、上述の芳香族炭化水素二価基、上述の複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせたニ価基、酸素原子、硫黄原子を挙げることができ、置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、上述のアルキル基、上述のアルコキシ基、上述のアリールオキシ基、上述のアルキルチオ基、上述のハロゲン原子、上述の置換アミノ基、上述の芳香族炭化水素基、上述の複素環基を挙げることができる。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表す。q、rは0〜4の整数を表す。
【0049】
また、本発明は、次の一般式(6)で表されるフェノール化合物、一般式(7)で表されるフェノール化合物、及び一般式(8)で表されるフェノール化合物に係る。
【0050】
【化26】

【0051】
【化27】

【0052】
【化28】


一般式(6)〜(8)における各置換基の具体例は、一般式(2)〜(5)のアクリル酸エステル化合物における各置換基と同じものを挙げることができる。
これらヒドロキシ化合物は、一般式(2)、一般式(3)で表わされるアクリル酸エステル化合物の前駆体をはじめ、各種樹脂材料合成のための中間体として有用である。
【0053】
下記に本発明のアクリル酸エステルの具体的な例示化合物(B−01)〜(B−37)を記すが、何らこれらに限定されるものではない。
【0054】
【化29】

【0055】
【化30】

【0056】
【化31】

【0057】
【化32】

【0058】
【化33】

【0059】
【化34】

【0060】
前記一般式(1)〜(5)で表わされる連鎖重合性化合物、特にアクリル酸エステル化合物は、新規物質であり、例えば以下の製造法により容易に合成することができる。
【0061】
(ヒドロキシ化合物の合成)
【0062】
【化35】

上記に示す化合物(C−1)より化合物(C−2)を得る工程は、脱メチル化によるヒドロキシ化合物を得る工程であり、従来知られている方法を用いることでヒドロキシ化合物が合成できる。すなわち、濃塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、トリフルオロ酢酸、ピリジン塩酸塩、ヨウ化マグネシウムエーテラート、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素等の酸を用いる方法、あるいは水酸化カリウム、グリニャール試薬、ナトリウム−ブタノール、リチウム−ビフェニル、ヨウ化リチウム−コリジン、リチウムジフェニルフォスフィド−THF、ナトリウムチオラート−DMFなどの塩基、あるいは有機金属試薬による方法がある。これらの方法の中では、特に三臭化ホウ素、ナトリウムチオラート−DMFを用いた方法が有効であるが、本発明の中間体であるヒドロキシ化合物を得るための合成方法は、これらに限定されるものではない。
【0063】
(アクリル化合物、あるいはメタクリル化合物の合成)
【0064】
【化36】

上記に示す化合物(C−2)より化合物(C−3)を得る工程はアクリル化、あるいはメタクリル化工程であり、従来のエステル化と同様にして合成できる。すなわち、アルコール誘導体にアクリル酸、あるいはメタクリル酸、またはこれらカルボン酸のエステル化合物、酸ハロゲン化物、酸無水物を作用させる。例えば、ヒドロキシ化合物とアクリル酸とをp−トルエンスルフォン酸等のエステル化触媒と共に有機溶媒中で脱水しながら加熱撹拌することで合成できる。また、ヒドロキシ化合物とアクリル酸クロリドとを有機溶媒中アルカリ存在下で反応させることでも容易に合成できる。このとき用いられるアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ、またはその水溶液、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系塩基を使用することができる。反応に用いられる有機溶媒としては、トルエン等の炭化水素系溶媒やテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒や酢酸エチル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が使用できる。
【0065】
(エポキシ化合物の合成)
【0066】
【化37】

上記に示す化合物(C−2)より化合物(C−4)を得る工程、あるいは化合物(C−4)より化合物(C−5)を得る工程はエポキシ化工程であり、従来のエポキシ化と同様にして合成できる。すなわち、ヒドロキシ化合物へクロロメチルオキシラン、あるいはブロモメチルオキシランを反応させる方法、あるいはオレフィン化合物へ有機過酸を反応させる方法などである。この時に用いる有機過酸としては過安息香酸、メタクロロ過安息香酸、モノペルオキシフタル酸、過酢酸などが挙げられる。
【0067】
次に、成分Bについて説明する。
連鎖重合性基を分子内に3個以上有する連鎖重合性モノマーとしては、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、且つ連鎖重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。
連鎖重合性官能基としては、上述した成分Aと同様の連鎖重合性官能基が挙げられる。これらの連鎖重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、連鎖重合性官能基を3個以上有する単量体中の連鎖重合性官能基は、同一でも異なっても良い。
連鎖重合性基を分子内に3個以上有する連鎖重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。すなわち、本発明において使用する上記連鎖重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(以降、TMPTAと略記する)、トリメチロールプロパントリメタクリレートトリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以降、EO変性と略記する)トリアクリレート、トリメチロールプロパプロピレンオキシ変性(以降、PO変性と略記する)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(以降、PETTAと略記する)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以降、DPHAと略記する)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(以降、DTMPTAと略記する)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2 ,2,5,5−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上の連鎖重合性モノマーとしては、感光層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、感光層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示した連鎖重合性モノマー等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。
また連鎖重合性基を分子内に3個以上有する連鎖重合性モノマーの成分割合は、硬化物全量に対し5〜80重量%、より好ましくは10〜70重量%であり、実質的には、塗工液固形分中の連鎖重合性基を分子内に3個以上有する連鎖重合性モノマーの割合に依存する。モノマー成分が5重量%未満では感光層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されないことが予想される。また、80重量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い本感光体の感光層の膜厚も異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると10〜70重量%の範囲が最も好ましい。
【0068】
次に、成分Cについて説明する。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、等のアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、等のベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物等が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の好ましい含有量は、連鎖重合性を有する総含有物100重量部に対して0.5〜40重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
【0069】
次に、硬化物の形成方法に付いて説明する。
本発明で使用される硬化物は、少なくとも成分A、あるいは成分Aと成分B、あるいは成分Aと成分Bと成分Cを含む塗工液を作製し、その塗工液を感光体表面に塗工した後、連鎖重合させて形成される。成分Aと成分Bと成分Cの場合は、光重合開始剤の吸収波長に応じた光照射を行ない、重合させることで形成される。
【0070】
塗工液は、重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。この時に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
【0071】
また成分Aは硬化物の電荷輸送性能を付与するために重要で、成分Aは硬化物に対し好ましくは20〜90重量%、更に好ましくは30〜80重量%である。この成分が20重量%未満では電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また、90重量%を超えると成分Bの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き目的の特性が発揮しにくくなる。
【0072】
塗工液には成分A、成分B、成分C以外に塗工時の粘度調整、感光層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能や2官能の連鎖重合性モノマー及び連鎖重合性オリゴマーを併用することができる。これらの連鎖重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。1官能の連鎖モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー等が挙げられる。2官能の連鎖重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチル等のポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。連鎖重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。但し、1官能及び2官能の連鎖重合性モノマーや連鎖重合性オリゴマーを多量に含有させると硬化物の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、特性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、成分A100重量部に対し50重量部以下、より好ましくは30重量部以下に制限される。
【0073】
更に、塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、連鎖反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、より好ましくは10%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
【0074】
塗工液を塗布後、場合によっては乾燥工程を入れ、光照射等により硬化を行なう。光照射としては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、連鎖重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm以上、2000mW/cm以下が好ましく、50mW/cm未満では硬化反応に時間を要する。2000mW/cmより強いと反応の進行が不均一となり、架橋型電荷輸送層表面に局部的な皺の発生や多数の未反応残基、反応停止末端等が生じる。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜剥がれの原因となる。また、光照射時に窒素置換をして酸素による重合阻害を防止すること、あるいは連続した光照射を行っても良く、間欠的に複数回に分けて照射してもよい。光照射の類似手段として電子線照射を用いることもできる。しかしながら、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから光のエネルギーを用いたものが好ましい。
光照射量が多いほど硬化物のゲル分率が上がり、より不溶不融の状態になる。本発明の目的を達成するためには、このゲル分率が95%以上であることが好ましい。ゲル分率は、硬化物をテトラヒドロフランのような溶解性の高い有機溶媒中に5日間浸漬し、重量減少量を測定することで見ることができる。
【0075】
【数1】

ゲル分率95%以上の硬化物を形成するためには、10J/cm以上の積算照射エネルギーを照射することが望ましく、より好ましくはゲル分率97%以上まで硬化させることが望ましい。ゲル分率を上げることで、さらにシリカ等の刺さりを防止できる。この場合、20J/cm以上の積算照射エネルギーを照射することが望ましい。
光照射により硬化させた後、80℃〜150℃でアニールを行ない、電子写真感光体として使用される。アニール時間は1分〜60分が好ましい。
【0076】
次に、電子写真感光体の構成について説明する。
本発明の電子写真感光体は、前記硬化物を含有することを特徴としている。その構成に制限はないが、成分Aの好ましい連鎖重合性モノマーとして挙げた一般式(1)の化合物特性がホール輸送性のため、導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層を順に積層した感光体の電荷輸送層に前記硬化物を適用することが好ましい。特に、前記硬化物を架橋型電荷輸送層として、感光層の上に更に積層した感光体構成として適用する場合、硬化反応条件による制約が少なくなるので更に好ましい。また、前記硬化物は単層の感光体に適用することもできる。
感光層中に連鎖重合性モノマーが未硬化で残留しても、成分Aの好ましい連鎖重合性モノマーとして挙げた一般式(1)の化合物特性がホール輸送性のため、電気特性を劣化させることはない。
【0077】
次に、本発明の電子写真感光体の層構成について、図1〜図5に基づいて説明する。尚、図1〜図5は、電子写真感光体の断面図である。
図1に示す態様においては、導電性支持体(31)上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層(33)が設けられている。
図2に示す態様においては、導電性支持体(31)上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(35)と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層(37)とが、感光層として積層された構成をとっている。
図3に示す態様においては、導電性支持体(31)上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層(33)が設けられ、更に感光層表面に架橋型電荷輸送層(39)が設けられている。
図4に示す態様においては、導電性支持体(31)上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(35)、次に電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層(37)とが感光層として積層された構成をとっており、更に電荷輸送層上に架橋型電荷輸送層(39)が設けられている。
図5に示す態様においては、導電性支持体(31)上に、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層(37)、次に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(35)が感光層として積層された構成をとっており、更に電荷発生層上に架橋型電荷輸送層(39)が設けられている。
【0078】
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体(31)として用いることができる。この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体(31)として用いることができる。
【0079】
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0080】
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体(31)として良好に用いることができる。
【0081】
電荷発生層(35)は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0082】
電荷発生層(35)に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
【0083】
前者の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293 号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。また、後者の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
【0084】
また、電荷発生層(35)には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。電荷発生層(35)に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0085】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0086】
電荷発生層(35)を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することによって形成できる。また、必要に応じてジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、より好ましくは0 .05 〜2μmである。
【0087】
電荷輸送層(37)は電荷輸送機能を有する層で、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層(35)上に塗布、乾燥することにより形成させる。電荷輸送物質としては、前記電荷発生層(35)で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。特に高分子電荷輸送物質を用いることにより、架橋型電荷輸送層(39)塗工時の下層の溶解性を低減でき、とりわけ有用である。
【0088】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。電荷輸送層(37)の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層(35)と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層(37)の下層部分の形成には電荷発生層(35)と同様な塗工法が可能である。
【0089】
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。電荷輸送層(37)に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。電荷輸送層(37)に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。電荷輸送層(37)の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、10〜30μm程度がより好ましい。このようにして形成された電荷輸送層(37)上に、前述の硬化性塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、光照射の外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋型電荷輸送層(39)が形成される。
【0090】
次に、感光層(33)について述べる。感光層(33)は、電荷発生物質と電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0091】
結着樹脂としては、先に電荷輸送層(37)で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層(35)で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂に対する電荷発生物質の量は5〜40重量%が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量%が好ましく、さらに好ましくは50〜150重量%である。
【0092】
感光層(33)は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。感光層(33)の膜厚は、5〜35μm程度が適当である。
【0093】
本発明の感光体においては、電荷輸送層(37)と架橋型電荷輸送層(39)及び感光層(33)と架橋型電荷輸送層(39)の間に、架橋型電荷輸送層への電荷輸送層成分混入を抑える又は両層間の接着性を改善する目的で中間層を設けることが可能である。このため、中間層としては架橋型電荷輸送層塗工液に対し不溶性または難溶性であるものが適しており、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としてはポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく一般に用いられる塗工法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が好ましい。
【0094】
本発明の感光体においては、導電性支持体(31)と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、アルミナを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やシリカ、酸化スズ、酸化チタン、ITO、セリア等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが好ましい。
【0095】
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、架橋型電荷輸送層(39)、電荷輸送層(37)、電荷発生層(35)、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。本発明に用いることができる酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5 −t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類等のフェノール系化合物、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン等のパラフェニレンジアミン系化合物、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン等のハイドロキノン系化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート等の有機硫黄系化合物、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン等の有機燐系化合物が挙げられる。これらの化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
【0096】
本発明の架橋型電荷輸送層(39)の膜厚は、好ましくは1μm以上、10μm以下、より好ましくは3μm以上、10μm以下である。10μmより厚い場合、クラックや膜剥がれが発生しやすくなり、光開始剤の光開裂による連鎖重合開始が深部で起こりにくくなるため、架橋密度の高い膜を形成することができにくくなる。一方、連鎖重合がラジカルで進行する場合、酸素阻害を受けやすく、大気に接した表面では酸素によるラジカルトラップの影響で架橋が進まないことや、不均一になりやすい。この影響が顕著に現れるのは表層1μm以下で、この膜厚以下の架橋型電荷輸送層(39)は耐摩耗性の低下や不均一な摩耗が起こりやすい。また、架橋型電荷輸送層(39)塗工時において下層の電荷輸送層(37)成分の混入が生ずる。架橋型電荷輸送層(39)の塗布膜厚が薄いと層全体に混入物が拡がり、硬化反応の阻害や架橋密度の低下をもたらす。これらの理由から、本発明の架橋型電荷輸送層(39)は1μm以上の膜厚で高密度な架橋体を形成でき、白斑点防止になる。また、繰り返しの使用において摩耗による膜厚減少は、局部的な帯電性や感度変動を起しやすく、長寿命化の観点から架橋型電荷輸送層(39)の膜厚を3μm以上にすることが望ましい。
【0097】
次に図面に基づき、本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、連鎖重合により三次元に架橋硬化された繰返し使用時の耐摩耗性に優れた架橋型電荷輸送層を表面に有する画像欠陥の少ない高画質を維持しつづける電子写真感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法ならびに画像形成装置である。場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
【0098】
図6は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ3が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。特に本発明の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような帯電手段からの近接放電により感光体組成物が分解する様な帯電手段を用いた場合に特に有効である。ここで言う接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。
【0099】
次に、均一に帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0100】
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0101】
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行うために転写前チャージャ7を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0102】
次に、転写体(9)を感光体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行うためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
【0103】
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。
【0104】
図7にプロセスカートリッジの一例を示す。画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(16)を内蔵し、他に帯電手段(17)、現像手段(20)、転写手段(図示せず)、クリーニング手段(18)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
【0105】
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンタ、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
【実施例】
【0106】
以下に、合成例を含む実施例を示し、本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら合成例、実施例に限定されるものではない。
【0107】
[合成実施例]
[合成例1]:2−ヒドロキシ−N−(4−ジ−p−トリルアミノビフェニル−4’−イル)フェノチアジンの合成
攪拌装置、温度計、冷却管をつけた反応容器に、2−メトキシ−N−(4−ジ−p−トリルアミノビフェニル−4’−イル)フェノチアジン3.62g、塩化メチレン50mlを入れ、氷冷下で三臭化ホウ素の塩化メチレン溶液7.0mlを滴下し、更に同温度で1時間反応を行ない、更に室温まで昇温して1時間反応を行った。その後、反応液を氷水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン単独)で精製して目的物を得た。収量2.79g。
【0108】
[合成例2]:例示化合物(B−17):2−アクリルオキシ−N−(4−ジ−p−トリルアミノビフェニル−4’−イル)フェノチアジンの合成
攪拌装置、温度計、冷却管、滴下漏斗をつけた反応容器に、2−ヒドロキシ−N−(4−ジ−p−トリルアミノビフェニル−4’−イル)フェノチアジン2.60g、トリエチルアミン0.70g、テトラヒドロフラン50mlを入れ、室温で攪拌した。そこへ塩化アクリロイル0.55ml、テトラヒドロフラン2.0mlの混合液を滴下した。1時間後、反応を停止し、反応液を氷水へ注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン/トルエン=2/3)により精製して目的物を得た。収量2.46g。IRスペクトルをIRデータNo.1(図8)に示す。
【0109】
[合成例3]:2−ヒドロキシ−N−[1−(4−ジ−p−トリルアミノ)ビニル−4―フェニル]フェノチアジンの合成
攪拌装置、温度計、冷却管をつけた反応容器に、2−メトキシ−N−[1−(4−ジ−p−トリルアミノ)ビニル−4―フェニル]フェノチアジン2.09g、ナトリウムエタンチオレート0.88g、N,N−ジメチルホルムアミド50mlを入れ、アルゴンガス中、135℃で加熱攪拌した。4時間後反応を停止し、反応液を氷水に注ぎ込み、濃塩酸を加えてpH=5に調整した。酢酸エチルで有機成分を抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/酢酸エチル=19/1)で精製して目的物を得た。収量1.51g。
【0110】
[合成例4]:例示化合物(B−25):2−アクリルオキシ−N−[1−(4−ジ−p−トリルアミノ)ビニル−4―フェニル]フェノチアジンの合成
攪拌装置、温度計、冷却管、滴下漏斗をつけた反応容器に、2−ヒドロキシ−N−[1−(4−ジ−p−トリルアミノ)ビニル−4―フェニル]フェノチアジン1.39g、トリエチルアミン0.36g、テトラヒドロフラン40mlを入れ、室温で攪拌した。そこへ塩化アクリロイル0.25ml、テトラヒドロフラン2.0mlの混合液を滴下した。2時間後、反応を停止し、反応液を氷水へ注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン単独)により精製して目的物を得た。収量1.49g。IRスペクトルをIRデータNo.2(図9)に示す。
【0111】
[合成例5]:例示化合物(B−34):2−オキシラノキシ−N−(4−ジ−p−トリルアミノビフェニル−4’−イル)フェノチアジンの合成
攪拌装置、温度計、冷却管、滴下漏斗をつけた反応容器に、2−ヒドロキシ−N−(4−ジ−p−トリルアミノビフェニル−4’−イル)フェノチアジン2.60g、炭酸カリウム0.96g、クロロメチルオキシラン0.51g、N,N−ジメチルホルムアミド50mlを入れ、60℃で攪拌した。3時間後、反応を停止し、反応液を氷水へ注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン/トルエン=2/3)により精製して目的物を得た。収量2.20g。
【0112】
[感光体実施例]
【0113】
(架橋性評価)
アルミ板上に下記塗工液3種をブレード塗工し、指触乾燥後、下記条件にて紫外線を照射し、それぞれ厚さ5μmの硬化膜を作製した。得られた硬化膜をテトラヒドロフランに7日間浸漬し、溶出量を測定した。
〔塗工液〕
塗工液A:例示化合物(B−17) 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート 10部
重合開始剤 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1部
テトラヒドロフラン 84部
塗工液B:例示化合物(B−17)の代わりに、例示化合物(B−12)を使用する以外は塗工液Aと同様。
塗工液C:例示化合物(B−17)の代わりに、例示化合物(B−25)を使用する以外は塗工液Aと同様。
〔UV照射条件〕
ランプ:メタルハライドランプ 160W/cm
照射距離 120mm
照射強度 500mW/cm
照射時間 60秒
〔溶出量試験結果〕
塗工液 溶出量(重量%)
実施例1 A 1
実施例2 B 1
実施例3 C 1
以上のように、本発明のアクリル酸エステル化合物は優れた架橋性を有している。
【0114】
(電荷輸送性評価)
アルミ板上に下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、0.3μmの下引き層、0.3μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
〔下引き層用塗工液〕
ポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製) 2部
メタノール 49部
ブタノール 49部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式(F−1)で示されるビスアゾ顔料 2.5部
ポリビニルブチラール(XYHL:UCC社製) 0.5部
シクロヘキサノン 200部
メチルエチルケトン 80部
【0115】
【化38】

【0116】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050:帝人化成社製)
電荷輸送性モノマー 10部
テトラヒドロフラン 80部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF−50−100CS:信越化学工業社製)
上記組成の電荷輸送性モノマーに本発明の例示化合物(B−17)、(B−12)、(B−25)を使用した場合、並びに下記構造のアクリル化合物(G−01)、(G−03)、(G−09)、(G−05)、(G−06)、(G−07)、(G−08)をそれぞれこの順に使用した場合の感光体を作製(したがって、アクリル化合物(G−02)、(G−04)はここでは不使用)した。得られた感光体について、市販の静電複写紙試験装置[(株)川口電機製作所製EPA−8200型]を用いて暗所で−6kVのコロナ放電により−800Vに帯電せしめた後、タングステンランプ光を感光体表面での照度が4.5luxになるように照射して、電位が 1/2になるまでの時間(秒)を求め、半減露光量E1/2(lux・sec)を算出した。また、露光30秒後の残留電位(−V)を求めた。その結果を以下の表1に示す。
【0117】
【化39】

【0118】
【化40】

【0119】
【化41】

【0120】
【化42】

【0121】
【化43】

【0122】
【化44】

【0123】
【化45】


【0124】
【化46】

【0125】
【化47】

【0126】
【表1】

【0127】
以上のように、電荷輸送性を感光体の感度(半減露光量が小さいほど感度が良い)と残留電位(小さいほど電荷のトラップが無い)から見ると本発明のアクリル酸エステル化合物は良好な電荷輸送性を示すことが分かる。
【0128】
[実施例8]
φ30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μm の電荷発生層、18μmの電荷輸送層を形成した。この電荷輸送層上に下記組成の架橋型電荷輸送層用塗工液をスプレー塗工し、20分自然乾燥した後、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:110mm、照射強度:750mW/cm、照射時間:240秒の条件で光照射を行なうことにより塗布膜を硬化させた。更に130℃で20分乾燥を加え5.0μmの架橋型電荷輸送層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂 6部
(大日本インキ化学工業製:ベッコゾール1307−60−EL)
メラミン樹脂) 4部
(大日本インキ化学工業製:スーパーベッカミンG−821−60
酸化チタン(石原産業製:タイペークCR−50) 40部
メチルエチルケトン 50部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記式(F−1)で示されるビスアゾ顔料 2.5部
【0129】
【化48】

ポリビニルブチラール(UCC製:XYHL) 0.5部
シクロヘキサノン 200部
メチルエチルケトン 80部
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(帝人化成製:パンライトTS−2050)
下記式(F−2)で示される低分子電荷輸送物質 7部
【0130】
【化49】

テトラヒドロフラン 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(信越化学工業製:KF50−100CS)
〔架橋型電荷輸送層用塗工液〕
成分A:例示化合物(B−17) 10部
成分B:トリメチロールプロパントリアクリレート 10部
(日本化薬製:KAYARAD TMPTA、分子量:296、官能基数3 官能、
分子量/官能基数=99)
成分C:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 1部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製:イルガキュア184)
テトラヒドロフラン 100部
【0131】
[実施例9]〜[実施例15]
実施例8の成分Aを表3に記載の例示化合物に代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。架橋型電荷輸送層の膜厚はすべて5.0μmであった。
【0132】
[比較例9]
実施例8における成分Aを下記化合物(G−01)に代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0133】
【化50】

【0134】
[比較例10]
実施例8における成分Aを下記化合物(G−02)に代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0135】
【化51】

【0136】
[比較例11]
実施例8における成分Aを下記化合物(G−03)に代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0137】
【化52】

【0138】
[比較例12]
実施例8における成分Aを下記化合物(G−04)に代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0139】
【化53】

【0140】
[比較例13]
実施例8における成分Aを下記化合物(G−05)に代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0141】
【化54】

【0142】
[比較例14]
実施例8における成分Aを下記化合物(G−06)に代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0143】
【化55】

【0144】
〔比較例15〕
実施例8における成分Aを下記化合物(G−07)に代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0145】
【化56】

【0146】
[比較例16]
実施例8における成分Aを下記化合物(G−08)に代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0147】
【化57】

【0148】
比較例9〜16で作製した架橋型電荷輸送層の膜厚もすべて5.0μmであった。
【0149】
上記実施例7の感光体と比較例8の感光体について、自社製の静電特性評価装置を用いて暗所で−6kVのコロナ放電により−800Vに帯電せしめた後、655nmの半導体レーザーを感光体表面での照度が7.2μW/cmになるように照射して、電位が1/2になるまでの時間(秒)を求め、半減露光量E1/2(μJ/cm)を算出した。また、露光30秒後の残留電位(V)を求めた。その結果を以下の表2に示す。
【0150】
【表2】

【0151】
以上のように、本発明のアクリル酸エステル化合物は架橋後も良好な電荷輸送性を示すことが分かる。
【0152】
さらに、以上のようにして作製した実施例8〜15、比較例9〜16の電子写真感光体について、外観を目視で観察し、クラック、膜剥がれの有無を判断した。また、各架橋型電荷輸送層のゲル分率を求めた。ゲル分率は、アルミ支持体上に架橋型電荷輸送層塗工液を各実施例及び比較例と同様に直接塗工し、同じ条件で光照射および乾燥した膜を、テトラヒドロフランに25℃で5日間浸漬させ、ゲル分の重量残率より求めた。その結果を表3に示す。
【0153】
【表3】

【0154】
次に、実施例8〜15、比較例9〜16のうち、架橋型電荷輸送層形成時にクラックが発生した比較例13の感光体を除き、同様に作製したこれらの感光体及びシリカ外添剤入りトナーを用いて、A4サイズ5万枚の通紙試験を実施した。まず、前記感光体を電子写真装置用プロセスカートリッジに装着し、画像露光光源として655nmの半導体レーザーを用いたリコー製 imagio Neo 270 改造機にて初期暗部電位を−700Vに設定した。そして、初期と5万枚複写後の全層膜厚を測定し、その差から膜厚減少量を算出し、5万枚複写後の画像を観察し、ベタ画像部から白斑点の単位面積当りの個数を数えた。また、残留電位蓄積性を見るために初期と5万枚複写後の露光部電位(VL)を測定した。その結果を表4に示す。
【0155】
【表4】

【0156】
表4に示されるように、本発明の電子写真感光体は膜厚減少量から耐摩耗性が優れていることがわかり、白斑点数の結果から欠陥の少ない画像出力が可能であることがわかる。これらの一番の要因は、本発明で用いられる特定の成分Aによることは比較例との対比で明らかであり、本発明における成分Aを連鎖重合させて得られる硬化物を表面に有する電子写真感光体が優れた特性を有することを表している。実施例の硬化条件では、ゲル分率のデータから有機溶媒に対して実質的に不溶であると判断され、その条件下で優れた耐摩耗性や画像安定性を達成できていることを示している。
【0157】
[実施例16]
直径30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、及び感光層用塗工液を順次、塗布し、乾燥することにより、厚み3.5μmの下引き層、及び厚み15μmの感光層を形成した。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂 6部
(大日本インキ化学工業株式会社製:ベッコゾール1307−60−EL)
メラミン樹脂 4部
(大日本インキ化学工業株式会社製:スーパーベッカミンG−821−60)
酸化チタン(石原産業製:タイペークCR−50) 40部
メチルエチルケトン 50部
〔感光層用塗工液〕
X型無金属フタロシアニン 2部
(大日本インキ化学工業製:FastogenBlue8120B)
下記構造式で表わされるホール輸送物質 30部
【0158】
【化58】

下記構造式で表わされる電子輸送物質 18部
【0159】
【化59】

下記構造式で表わされる電子輸送物質 2部
【0160】
【化60】

ビスフェノールZポリカーボネート 50部
(帝人化成株式会社製:パンライトTS−2050)
テトラヒドロフラン 500部
【0161】
次に、得られた感光層上に下記組成の架橋型電荷輸送層用塗工液をスプレー塗工し、20分間自然乾燥した後、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:110mm、照射強度:750mW/cm、照射時間:240秒の条件で光照射を行い硬化させた。更に130℃で20分間乾燥し、厚み5.0μmの架橋型電荷輸送層を形成した。
〔架橋型電荷輸送層用塗工液〕
成分A:例示化合物(B−17) 10部
成分B:トリメチロールプロパントリアクリレート 10部
(日本化薬株式会社製:KAYARAD TMPTA、分子量=296、
官能基数=3官能、分子量/官能基数=99) 1部
成分C:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:イルガキュア184)
テトラヒドロフラン 124部
【0162】
[実施例17]〜[実施例23]
実施例16の成分Aを表5に記載の例示化合物に代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。架橋型電荷輸送層の膜厚はすべて5.0μmであった。
【0163】
[比較例17]〜[比較例24]
実施例16の成分Aを表5に記載の比較化合物に代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。架橋型電荷輸送層の膜厚はすべて5.0μmであった。
【0164】
以上のようにして作製した実施例16〜23、比較例17〜24の電子写真感光体について、外観を目視で観察し、クラック、膜剥がれの有無を判断した。また、各架橋型電荷輸送層のゲル分率を実施例8と同様の手法により求めた。その結果を表5に示す。
【0165】
【表5】

【0166】
次に、実施例16〜23、比較例17〜24のうち、架橋型電荷輸送層形成時にクラックが発生した比較例19の感光体を除き、同様に作製したこれらの感光体及びシリカ外添剤入りトナーを用いて、A4サイズ5万枚の通紙試験を実施した。まず、前記感光体を電子写真装置用プロセスカートリッジに装着し、画像露光光源として655nmの半導体レーザーを用いたリコー製 imagio Neo 270 改造機にて初期暗部電位を−700Vに設定した。そして、初期と5万枚複写後の全層膜厚を測定し、その差から膜厚減少量を算出し、5万枚複写後の画像を観察し、ベタ画像部から白斑点の単位面積当りの個数を数えた。また、残留電位蓄積性を見るために初期と5万枚複写後の露光部電位(VL)を測定した。その結果を表6に示す。
【0167】
【表6】

【0168】
[実施例24]
実施例8の成分Bを加えなかった他は同様にして電子写真感光体を作製した。架橋型電荷輸送層の膜厚は5.0μmであった。以上のようにして作製した感光体について、外観を目視で観察し、クラック、膜剥がれはなかった。また、架橋型電荷輸送層のゲル分率を実施例8と同様の手法により求めた。その結果、ゲル分率は93%であった。
【0169】
[実施例25]
実施例8の成分Cを加えなかった他は同様にして電子写真感光体を作製した。架橋型電荷輸送層の膜厚は5.0μmであった。以上のようにして作製した感光体について、外観を目視で観察し、クラック、膜剥がれはなかった。また、架橋型電荷輸送層のゲル分率を実施例8と同様の手法により求めた。その結果、ゲル分率は95%であった。
【0170】
[実施例26]
実施例8の成分B、成分Cを加えなかった他は同様にして電子写真感光体を作製した。架橋型電荷輸送層の膜厚は5.0μmであった。以上のようにして作製した感光体について、外観を目視で観察し、クラック、膜剥がれはなかった。また、架橋型電荷輸送層のゲル分率を実施例8と同様の手法により求めた。その結果、ゲル分率は89%であった。ゲル分率を求めるために架橋型電荷輸送層を浸漬したテトラヒドロフランを液体クロマトグラフィー質量分析法で分析したところ、例示化合物(B−17)の分子イオンピークm/Z=617が確認された。
【0171】
次に、実施例24〜26の感光体及びシリカ外添剤入りトナーを用いて、実施例8と同様の通紙試験、膜厚減少量の測定、ベタ画像部から白斑点の単位面積当りの個数、残留電位蓄積性を見るために初期と5万枚複写後の露光部電位(VL)を測定した。その結果を表7に示す。
【0172】
【表7】

【0173】
表7の結果から明らかなように、本発明の硬化物は、成分Bがなくても、成分Cがなくても良好な電子写真特性を有することがわかる。また、成分Aの未硬化物が残っていても、画像安定性、電気特性に問題はなかった。
【0174】
[実施例27]
直径30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、及び感光層用塗工液を順次、塗布し、乾燥することにより、厚み3.5μmの下引き層、及び厚み15μmの感光層を形成した。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂 6部
(大日本インキ化学工業株式会社製:ベッコゾール1307−60−EL)
メラミン樹脂 4部
(大日本インキ化学工業株式会社製:スーパーベッカミンG−821−60)
酸化チタン(石原産業製:タイペークCR−50) 40部
メチルエチルケトン 50部
〔感光層用塗工液〕
X型無金属フタロシアニン(大日本インキ化学工業製:FastogenBlue8120B) 2部
例示化合物(B−17) 30部
下記構造式で表わされる電子輸送物質 18部
【0175】
【化61】

下記構造式で表わされる電子輸送物質 2部
【0176】
【化62】

ビスフェノールZポリカーボネート 50部
(帝人化成株式会社製:パンライトTS−2050)
テトラヒドロフラン 500部
次に、得られた感光体を、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:110mm、照射強度:750mW/cm、照射時間:240秒の条件で光照射を行い硬化させた。更に130℃で20分間乾燥した。
次に、実施例27の感光体について、市販の静電複写紙試験装置[(株)川口電機製作所製EPA−8200型]を用いて暗所で+6kVのコロナ放電により+700Vに帯電せしめた後、タングステンランプ光を感光体表面での照度が4.5luxになるように照射して、電位が1/2になるまでの時間(秒)を求め、半減露光量E1/2(lux・sec)を算出した。また、露光30秒後の残留電位(V)を求めた。その結果、半減露光量は1.1lux・sec、残留電位は120Vと優れた特性を示した。
【0177】
[比較例25]
実施例27における例示化合物(B−17)を、比較化合物(G−01)に変更した他は実施例27と同様にして感光体を作製した。得られた感光体について、実施例27と同様に評価した結果、半減露光量は2.6lux・sec、残留電位は145Vであった。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明における電子写真感光体の層構成の一例を示す図面である。
【図2】本発明における電子写真感光体の層構成の他の一例を示す図面である。
【図3】本発明における電子写真感光体の層構成の他の一例を示す図面である。
【図4】本発明における電子写真感光体の層構成の他の一例を示す図面である。
【図5】本発明における電子写真感光体の層構成の他の一例を示す図面である。
【図6】本発明の電子写真プロセスの一例を説明するための概略図である。
【図7】プロセスカートリッジの一例を説明するための概略図である。
【図8】合成例2で得られた化合物のIRスペクトルデータを示した図である。
【図9】合成例4で得られた化合物のIRスペクトルデータを示した図である。
【符号の説明】
【0179】
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写体
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
16 感光体
17 帯電手段
18 クリーニング手段
19 画像露光部
20 現像手段
31 支持体
33 感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 架橋型電荷輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される連鎖重合性化合物。
【化1】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表わされるアクリル酸エステル化合物であることを特徴とする請求項1に記載の連鎖重合性化合物。
【化2】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Z環、Z環は環状構造を形成する置換基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【請求項3】
下記一般式(3)で表わされるアクリル酸エステル化合物であることを特徴とする請求項2に記載の連鎖重合性化合物。
【化3】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【請求項4】
下記一般式(4)で表されるアクリル酸エステル化合物であることを特徴とする請求項3に記載の連鎖重合性化合物。
【化4】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキル基、芳香族炭化水素基、複素環基、あるいはそれらを組み合わせた一価基を表す。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表す。q、rは0〜4の整数を表す。)
【請求項5】
下記一般式(5)で表されるアクリル酸エステル化合物であることを特徴とする請求項3に記載の連鎖重合性化合物。
【化5】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表す。q、rは0〜4の整数を表す。)
【請求項6】
下記一般式(6)で表されることを特徴とするヒドロキシ化合物。
【化6】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表わす。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表わす。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【請求項7】
下記一般式(7)で表されることを特徴とする請求項6に記載のヒドロキシ化合物。
【化7】

(式中、Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表わす。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表わす。Rは置換基を有しても良いアルキル基、芳香族炭化水素基、複素環基、あるいはそれらを組み合わせた一価基を表わす。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表わす。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表わす。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表わす。q、rは0〜4の整数を表わす。)
【請求項8】
下記一般式(8)で表されることを特徴とする請求項6に記載のヒドロキシ化合物。
【化8】

(式中、Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表わす。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表わす。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表わす。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表わす。q、rは0〜4の整数を表わす。)
【請求項9】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも下記の成分Aを連鎖重合させて得られる硬化物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
成分A:下記一般式(1)で表される連鎖重合性モノマー
【化9】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【請求項10】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも下記の成分A、成分Bの混合物を連鎖重合させて得られる硬化物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
成分A:下記一般式(1)で表される連鎖重合性モノマー
成分B:連鎖重合性基を分子内に3個以上有し成分Aでない連鎖重合性モノマー
【化10】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【請求項11】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも下記の成分A、成分B、成分Cの混合物を連鎖重合させて得られる硬化物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
成分A:下記一般式(1)で表される連鎖重合性モノマー
成分B:連鎖重合性基を分子内に3個以上有し成分Aでない連鎖重合性モノマー
成分C:光重合開始剤
【化11】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【請求項12】
前記成分A及び/又は成分Bの連鎖重合性基が、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項13】
前記一般式(1)で表わされる連鎖重合性モノマー(成分A)が、下記一般式(2)で表されるアクリル酸エステルモノマーであることを特徴とする請求項9乃至12の何れかに記載の電子写真感光体。
【化12】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Z環、Z環は環状構造を形成する置換基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【請求項14】
前記一般式(2)で表わされるアクリル酸エステルモノマーが、下記一般式(3)で表わされるアクリル酸エステルモノマーであることを特徴とする請求項13に記載の電子写真感光体。
【化13】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【請求項15】
前記一般式(3)で表わされるアクリル酸エステルモノマーが、下記一般式(4)で表わされるアクリル酸エステルモノマーであることを特徴とする請求項14に記載の電子写真感光体。
【化14】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキル基、芳香族炭化水素基、複素環基、あるいはそれらを組み合わせた一価基を表す。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表す。q、rは0〜4の整数を表す。)
【請求項16】
前記一般式(3)で表わされるアクリル酸エステルモノマーが、下記一般式(5)で表わされるアクリル酸エステルモノマーであることを特徴とする請求項14に記載の電子写真感光体。
【化15】

(式中、R、Rはそれぞれ水素原子またはメチル基を表す。Rは置換基を有しても良いアルキレン基、ビニレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。R、Rはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表す。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。pは0または1を表し、p=0の場合は単結合を表す。q、rは0〜4の整数を表す。)
【請求項17】
導電性支持体上に少なくとも単層の感光層を有する電子写真感光体であることを特徴とする請求項9乃至16の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項18】
導電性支持体上に少なくとも電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層した電子写真感光体であることを特徴とする請求項9乃至16の何れかに記載の電子写真感光体。
【請求項19】
導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層を順次積層した電子写真感光体であって、該架橋型電荷輸送層が少なくとも下記の成分Aを連鎖重合させて得られる硬化物を含有することを特徴とする請求項9乃至18の何れかに記載の電子写真感光体。
成分A:下記一般式(1)で表される連鎖重合性モノマー
【化16】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【請求項20】
導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体であって、該感光層が少なくとも下記の成分Aを含有することを特徴とする請求項9乃至19の何れかに記載の電子写真感光体。
成分A:下記一般式(1)で表される連鎖重合性モノマー
【化17】

(式中、Arは置換基を有しても良いアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基を表す。Xは置換基を有しても良いアルキレン基、置換アミノ基、酸素原子、硫黄原子を表し、Xと窒素原子は環状構造を形成する。X、Xは置換基を有してもよいアルキレン基、芳香族炭化水素二価基、複素環二価基、あるいはそれらを組み合わせた二価基、酸素原子、硫黄原子を表す。Zは連鎖重合性基を表す。m、nは0〜2の整数を表し、少なくとも何れか一方は1以上を有する。)
【請求項21】
請求項9乃至20の何れかに記載の電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写が繰り返し行われることを特徴とする画像形成方法。
【請求項22】
少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段、及び請求項9乃至20の何れかに記載の電子写真感光体を具備してなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項23】
少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、及び転写手段の1つと、請求項9乃至20の何れかに記載の電子写真感光体を具備してなることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−1827(P2008−1827A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173713(P2006−173713)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】