説明

アシストグリップの取付け構造

【課題】 広い取付けスペースを必要とすることなく、乗員が身体を支えるのに十分な支持強度を備える一方、所定値以上の衝撃荷重が作用した際は、乗員の頭部への影響を回避または軽減し得ることが可能なアシストグリップの取付け構造を提供する。
【解決手段】 車両の略上下方向に立設するピラー(1)上に配置され、把持部(2c)の両側に前記ピラーへの固定部(2a,2b)を備え、該両側の固定部のうち、一方の固定部(2a)が他方の固定部(2b)より車両上下方向における上方に位置するように前記ピラーに取付けてなるアシストグリップの取付け構造において、前記上方の固定部(2a)が固定される部分(4c)のピラー板厚を、下方の固定部(2b)が固定される部分(4d)のピラー板厚よりも厚くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体構造に関する。特にワンボックスカーやトラックのような、フロントピラーにアシストグリップが装備されている自動車のアシストグリップの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車室内側の開口部周辺には、乗員が把持できる様、種々のアシストグリップが取り付けられている。例えば、走行時の車体の揺れに対して乗員が身体を支える事が出来る様、車室内のルーフ側部などにアシストグリップが取り付けられる。
【0003】
このようなアシストグリップは、身体を支えるのに十分な支持強度が要求される一方、所定値以上の衝撃荷重が作用した際は、乗員の頭部への影響を回避または軽減し得ることも必要とされる。そこで、衝撃吸収部を備えた支持メンバを介して車体にアシストグリップを取り付けることにより、上記の2つの要求を可能とする技術が公開されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、トラックやワンボックスカーのようなフロアが高い自動車へ乗り込む時の補助用具としてアシストグリップを設ける場合、非特許文献1(図7)に示すようにアシストグリップ72をフロントピラー71などのピラー類に取付ける場合が多く、特に、フロントピラー71はドライバーの視界確保のために細くするのが望ましいため、前記特許文献1のような支持メンバを設けるスペースを確保できない場合があった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−150999号公報
【非特許文献1】山海堂発行「自動車工学全書、第13巻、乗用車の車体」、第168頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、広い取付けスペースを必要とすることなく、乗員が身体を支えるのに十分な支持強度を備える一方、所定値以上の衝撃荷重が作用した際は、乗員の頭部への影響を回避または軽減し得ることが可能なアシストグリップの取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決すべく検討した結果、アシストグリップの取付けにおいて、把持部両側の固定強度に差を設け、所定値以上の衝撃荷重が作用した際に、一方の固定部で集中的に変形や破損が起こるように誘導することで、より狭いスペースで必要とする衝撃吸収効果が得られるという知見を得た。
【0008】
即ち、本発明は、車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備え、該両側の固定部のうち、一方の固定部が他方の固定部より車両上下方向における上方に位置するように前記ピラーに取付けてなるアシストグリップの取付け構造において、前記上方の固定部が固定される部分のピラー板厚を、前記下方の固定部が固定される部分のピラー板厚よりも厚くした。
【0009】
また、本発明は、車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備えたアシストグリップの取付け構造において、前記ピラーの室内側上側の板厚を下側の板厚よりも厚くすると共に、前記アシストグリップの一方の固定部を前記ピラーの上側板厚部に固定し、他方の固定部を前記上側板厚部よりも板厚が薄い下側板厚部に固定した。
【0010】
更に、本発明は、車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備えたアシストグリップの取付け構造において、前記ピラーの室内側の板厚が変化する境界線を設定し、該境界線の車両上下方向における上側のピラーの板厚を下側の板厚よりも厚くすると共に、前記アシストグリップの両側の固定部の間に前記境界線が位置するように前記アシストグリップを前記ピラーに固定した。
【0011】
また、本発明は、車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備え、該両側の固定部のうち、一方の固定部が他方の固定部より車両上下方向における上方に位置するように前記ピラーに取付けてなるアシストグリップの取付け構造において、前記上方の固定部が固定される部分のピラー板材を、前記下方の固定部が固定される部分のピラー板材よりも高強度とした。
【0012】
更に、本発明は、車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備えたアシストグリップの取付け構造において、前記ピラーの室内側の板強度が変化する境界線を設定し、該境界線の車両上下方向における上側のピラー板材を下側の板材よりも高強度とすると共に、前記アシストグリップの両側の固定部の間に前記境界線が位置するように前記アシストグリップを前記ピラーに固定した。
【0013】
また、本発明において、前記両側の固定部のうち、上方の固定部寄りに前記境界線が位置するようにアシストグリップをピラーに固定した取付け構造を採用した。更に、本発明において、前記ピラーはフロントガラスに隣接するフロントピラーであって、該フロントピラーの下側よりも板厚が厚いかまたは高強度の上側部分に、ルーフサイド側またはルーフ前側の構造部材への接合部を設けた。
【0014】
更に、本発明において、前記ピラーは、板厚の違う鋼板を溶接してからプレス成形するか、または、圧延時にロールの隙間を変化させて鋼板の厚みを作り分けることにより、車両上下方向における上側の板厚を下側の板厚よりも厚くした。また、強度の違う鋼板を溶接してからプレス成形することにより、車両上下方向における上側の板材を下側の板材よりも高強度となるようにした。
【発明の効果】
【0015】
上述の如く、本発明に係るアシストグリップの取付け構造は、車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備え、該両側の固定部のうち、一方の固定部が他方の固定部より車両上下方向における上方に位置するように前記ピラーに取付けてなるアシストグリップの取付け構造において、前記上方の固定部が固定される部分のピラー板厚を、前記下方の固定部が固定される部分のピラー板厚よりも厚くしたので、上方の固定部によりアシストグリップを使用した際の剛性感を向上でき、乗員が身体を支えるのに十分な支持強度を確保することができる一方、所定値以上の衝撃荷重が作用した際は、下方が変形して上方の固定部を中心にアシストグリップが回転して衝撃を吸収する為、乗員の頭部への影響を回避または軽減し得ることが可能となる。
【0016】
また、衝突時などの特殊な事態により乗員がアシストグリップを握った状態でどちらかの固定部が破損する場合、上方の固定部が破損すると、乗員が把持している把持部より下方の固定部を中心にアシストグリップが大きく回転するため、乗員の体勢も大きく変化し、バランスを崩しやすくなる虞があるが、下方の固定部が破損する場合は、把持部よりも上方の固定部を中心にアシストグリップが若干振れるのみの回転となる為、乗員は容易に体勢を保つ事ができる。
【0017】
以上の効果は、車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備えたアシストグリップの取付け構造において、前記ピラーの室内側上側の板厚を下側の板厚よりも厚くすると共に、前記アシストグリップの一方の固定部を前記ピラーの上側板厚部に固定し、他方の固定部を前記上側板厚部よりも板厚が薄い下側板厚部に固定した構成、または、前記ピラーの室内側の板厚が変化する境界線を設定し、該境界線の車両上下方向における上側のピラーの板厚を下側の板厚よりも厚くすると共に、前記アシストグリップの両側の固定部の間に前記境界線が位置するように前記アシストグリップを前記ピラーに固定した構成、または、車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備え、該両側の固定部のうち、一方の固定部が他方の固定部より車両上下方向における上方に位置するように前記ピラーに取付けてなるアシストグリップの取付け構造において、前記上方の固定部が固定される部分のピラー板材を、前記下方の固定部が固定される部分のピラー板材よりも高強度とした構成、または、車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備えたアシストグリップの取付け構造において、前記ピラーの室内側の板強度が変化する境界線を設定し、該境界線の車両上下方向における上側のピラー板材を下側の板材よりも高強度とすると共に、前記アシストグリップの両側の固定部の間に前記境界線が位置するように前記アシストグリップを前記ピラーに固定した構成によっても同様に得られる。
【0018】
また、上述した各構成においては、板厚を変える、あるいは、板材の強度を変えるという方法で、アシストグリップの上下の取付け強度を変化させているため、従来のようなスペースを要する支持ブラケット等を必要とする事が無く、ピラーを細く保つことができる。このため、乗員の視界も充分に確保できる。
【0019】
また、前記ピラーの室内側の板厚が変化する境界線の車両上下方向における上側のピラーの板厚を下側の板厚よりも厚くすると共に、前記両側の固定部のうち、上方の固定部寄りに前記境界線が位置するようにアシストグリップをピラーに固定した構成を採用することにより、板厚の厚い部分が必要最小限となり材料の節約と車重の軽減に寄与できる。
【0020】
更に、前記ピラーはフロントガラスに隣接するフロントピラーであって、該フロントピラーの下側よりも板厚が厚いかまたは高強度の上側部分に、ルーフサイド側またはルーフ前側の構造部材への接合部を設けたので、衝突時に座屈が生じやすい当該箇所の強度を向上でき、フロントピラー上部における座屈を生じさせる事無く、フロントピラーに加わる荷重をサイドルーフに伝達させることができ、キャビンの変形抑制に寄与できる。
【0021】
前記ピラーは、板厚の違う鋼板を溶接してからプレス成形するか、または、圧延時にロールの隙間を変化させて鋼板の厚みを作り分けることにより、車両上下方向における上側の板厚を下側の板厚よりも厚くしたものであるので、生産性が良好であると共に、接合部の強度、寸法精度、見栄えの向上などを可能とすることができる。また、前記ピラーを、強度の違う鋼板を溶接してからプレス成形することにより、車両上下方向における上側の板強度を下側の板強度よりも高強度としたものとした場合にも、上記同様、生産性が良好であると共に、接合部の強度、寸法精度、見栄えの向上などを可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るアシストグリップの取付け構造を採用したフロントピラー1を室内側から見た図であり、図1ではフロントピラー1は内装材を取除いた状態で示されている。
【0023】
アシストグリップ2は、フロントガラス12と車体側部のドアガラスの間に位置するフロントピラー1の長さ方向に沿うように取り付けられ、図6に示すように、把持部2cの上下両端にフロントピラー1への固定部2a、2bを備えている。
【0024】
フロントピラー1は、車両後方に傾斜した形状に形成され、上方の端部1aはルーフサイドの構造部材(図4に示すサイドルーフインナー3等)に連結され、この上方端部1aのやや手前の上縁部に図示しないルーフの前側の構造部材への連結部1bを設けている。一方、下方端部1cは車両側部前方を構成する図示しないフロントドアヒンジ部の構造部材に連結される。
【0025】
フロントピラー1の室内側を構成するフロントピラーインナー4には、前述のアシストグリップ2を固定する上方の固定部4aおよび下方の固定部4bを設け、この固定部4aと固定部4bの間に、フロントピラーインナー4の板厚が変化する境界線Pを設けている。この境界線Pを境に、フロントピラーインナー4の板厚は変化し、上側部分4cの板厚が下側部分4dの板厚よりも厚くなるようにしている。従って、アシストグリップ2の上方の固定部2aは板厚が厚い上側部分4cに固定され、下方の固定部2bは板厚が薄い下側部分4dに固定される。
【0026】
また、ルーフサイドの構造部材に連結される上端部1a、およびルーフの前側の構造部材への連結部1bも、前記上方の固定部4aとともに、板厚が厚い上側部分4cに配置される。厚い板厚を確保する必要があるのは、固定部4aまでで良い為、境界線Pはできるだけ固定部4a寄りに設けるのが材料節約の点で好ましい。
【0027】
上側部分4cの板厚を下側部分4dよりも厚くする方法としては、板厚の違う鋼板をレーザー溶接やプラズマ溶接で接合してからプレス成形する、いわゆるテーラードウェルドブランク工法や、圧延時にロールの隙間を適宜調整して鋼板の厚みを作り分ける、いわゆるテーラードロールドブランク工法が好適である。また、図5に示すように、フロントピラーインナー4を上側部材4eと下側部材4fとに分割し、上側部材4eを下側部材4fより板厚の厚い鋼板で成形した後、それらをスポット溶接等で接合しても良い。テーラードウェルドブランクやテーラードロールドブランクのような一体ものとした場合、分割した二部材を成形後に接合する場合と比較して、剛性面でより好ましい。
【0028】
次に、図2に上方の固定部4aでのA−A断面、および図3に下方の固定部4bでのB−B断面を示す。各図において、フロントピラー1は、室外側の意匠面を構成する比較的形成が容易な薄い板厚で形成されたフロントピラーアウター5と、室内側に配置されるフロントピラーインナー4により閉断面形状に形成され、このフロントピラーアウター5とフロントピラーインナー4の間に補強部材としてフロントピラーアウター5よりも板厚の厚いフロントピラーリンフォース6が挟持されている。
【0029】
フロントピラーリンフォース6はフロントピラーアウター5に略沿う形状に形成され、フロントピラーアウター5寄りに一定の間隔をおいて配置されており、フロントピラーインナー4とフロントピラーリンフォース6により閉断面を有する略筒状の空間13が形成される。また、フロントピラーインナー4の室内側はフロントピラートリム11で覆われ、フロントピラートリム11の車両前方側の縁部はフロントウィンドウ12に臨む様に配置される。
【0030】
そして、フロントピラーインナー4の板厚の厚い上側部分4cには、上方の固定部4aに対応する位置の裏面(閉断面側の内面)に、ウェルドナット7が配置され、板厚の薄い下側部分4dには、下方の固定部4bに対応する位置の裏面(閉断面側の内面)にはウェルドナット8を配置している。また、フロントピラーインナー4の上記各固定部4c,4dの周囲は室内側に膨出し、その裏面にウェルドナット7,8を設けるスペースを確保している。
【0031】
アシストグリップ2には適度な強度を有するとともに乗員保護のため適度な弾性を有する樹脂が使用され、その内部にはアシストグリップ2に必要な支持強度を付与する芯金2dが通っており、該芯金2dの両端部はアシストグリップ2の上下の固定部2a,2bに連なっている。そして、アシストグリップ2の上方の固定部2aは、フロントピラーインナー4の板厚の厚い上側部分4cに固定したウェルドナット7に、スクリュー9などの締結部材で強固に締結される。また、アシストグリップ2の下方の固定部2bは、フロントピラーインナー4の板厚の薄い下側部分4dに固定したウェルドナット8に、スクリュー10などの締結部材で強固に締結される。
【0032】
次に、上記実施形態に基づく作用および効果について述べる。
【0033】
アシストグリップ2は、図1に示したようにフロントピラー1の長さ方向に沿うように取り付けられているため、フロアの高い自動車へ乗り込む際や、走行時の車体の揺れに対して身体を支える際に乗員がアシストグリップ2を把持した場合、下方の固定部2bよりも上方の固定部2aに荷重が大きくかかることになる。
【0034】
上記実施形態のアシストグリップ2においては、フロントピラー1の上側部分4cの板厚を下側部分4dの板厚よりも増やし、板厚が厚い箇所(4c)にアシストグリップ2の上方の固定部2aを固定し、板厚が薄い箇所(4d)に下方の固定部2bを固定することにより、荷重が大きくかかる上方の固定部2aによりアシストグリップ2を把持した際における剛性感が得られ、乗員が身体を支えるのに十分な支持強度を確保することができる。
【0035】
一方、アシストグリップ2に室内側から所定値以上の衝撃荷重が作用した際は、下方の固定部2bを固定した板厚が薄い固定箇所(下側部分4d)が変形して衝撃を吸収する為、乗員の頭部への影響を回避または軽減し得ることが可能となる。
【0036】
また、何らかの特殊な事態により、通常の使用時を越える負荷がアシストグリップにかかった場合、上方の固定部2aが破損すると、乗員が把持している把持部2cより下方の固定部2bを中心にアシストグリップ2が大きく回転するため、乗員の体勢も大きく変化し、バランスを崩しやすくなる虞がある。しかし、上記実施形態のアシストグリップ2では、板厚が薄い箇所(4d)に固定された下方の固定部2bが先に破損することになり、この場合には、把持部2cよりも上方の固定部2aを中心にアシストグリップ2が若干振れるのみの回転となる為、乗員は容易に体勢を保つ事ができる。
【0037】
また、上記実施形態のアシストグリップ2においては、取付け部分(4c,4d)の板厚を異ならせるという方法でアシストグリップ2の上下の取付け強度を異ならせ、下方の変形を誘導することにより衝撃を吸収する構成としているため、従来のように支持ブラケット等を設けるスペースを別途必要とする事が無く、スペース的な制約のあるフロントピラー1への実施に最適である。
【0038】
また、上記実施形態のアシストグリップ2においては、アシストグリップ2の上方の固定部2aを固定したフロントピラーインナー4の上側部分4cの板厚が厚く、該上側部分4cに、サイドルーフへの接合部(上端部1a)およびルーフの前側の構造部材への接合部(連結部1b)を配置させているため、図4に示すように、衝突時に座屈が生じやすい箇所Xの強度を向上させることができる。従って、フロントピラー上部における座屈が生じにくく、フロントピラー1に加わる荷重をサイドルーフに伝達させ、キャビンの変形抑制に寄与することができる。
【0039】
尚、上記各実施形態のアシストグリップ2においては、フロントピラーインナー4の板厚が変化する上側部分4cと下側部分4dの境界線Pが、フロントピラー1のほぼ幅方向に配向された直線である場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、境界線Pの方向や、形状は本発明の範囲内において変更可能である。また、板厚が変化する上側部分4cと下側部分4dの間や固定部4a,4b以外の部位に、それらと板厚の異なる部分が存在しても構わない。更に、図示例では車両右側のフロントピラー1について示したが、本発明は車両左側のフロントピラーは勿論、フロントピラー以外のピラーにも適用可能である。
【0040】
上記実施形態のアシストグリップ2においては、取付け部分(4c,4d)の板厚を異ならせることでアシストグリップ2の上下の取付け強度を異ならせる構成について述べたが、取付け部分(4c,4d)の材質を異ならせアシストグリップ2の上下の取付け強度を異ならせる構成とすることもできる。
【0041】
例えば、図1における境界線Pを境に、フロントピラーインナー4の材質を変化させ、上側部分(4c)の鋼板が下側部分(4d)の鋼板よりも高強度となるようにすることで、上方の固定部2aによりアシストグリップ2に剛性感、支持強度を向上する一方、衝撃荷重作用時の下側部分4dの変形による衝撃吸収、乗員の頭部保護など、先に述べた実施形態と同様の効果が期待できる。但し、車重の軽減には下側部分4dの板厚を薄くする構成が有利である。また、上側部分4c、下側部分4dの材質と同時に板厚を異ならせることもできる。
【0042】
上側部分4cと下側部分4dの材質及び強度を変化させる方法としては、先述したテーラードウェルドブランク工法を適用できる。即ち、材質及び強度が異なる鋼板をレーザー溶接やプラズマ溶接で接合してからプレス成形すれば良い。通常、自動車のボディに使用する鋼板(高張力鋼、通称ハイテン)は引張り強度により区別されるが、塑性変形などに対する強度もこれに準じるので、引張り強度を基準にして所望する衝撃吸収性能や支持強度に応じて材質を選定することができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係るアシストグリップ取付け構造を採用したフロントピラーを示す室内側側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】フロントピラーとサイドルーフの関係を示す室内側側面図である。
【図5】本発明の変形例におけるフロントピラーを示す室内側側面図である。
【図6】アシストグリップを示す斜視図である。
【図7】アシストグリップをフロントピラーに取り付けた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 フロントピラー
1a 端部
1b 連結部
1c 下端部
2 アシストグリップ
2a 固定部(上側)
2b 固定部(下側)
2c 把持部
2d 芯金
3 サイドルーフインナー
4 フロントピラーインナー
4a 固定部(上側)
4b 固定部(下側)
4c 上側部分(上側板厚部)
4d 下側部分(下側板厚部)
4e 上側部材
4f 下側部材
5 フロントピラーアウター
6 フロントピラーレインフォース
7,8 ウェルドナット
9,10 スクリュー
11 フロントピラートリム
12 フロンドウィンドウ
13 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備え、該両側の固定部のうち、一方の固定部が他方の固定部より車両上下方向における上方に位置するように前記ピラーに取付けてなるアシストグリップの取付け構造において、前記上方の固定部が固定される部分のピラー板厚を、前記下方の固定部が固定される部分のピラー板厚よりも厚くしたことを特徴とするアシストグリップの取付け構造。
【請求項2】
車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備えたアシストグリップの取付け構造において、前記ピラーの室内側上側の板厚を下側の板厚よりも厚くすると共に、前記アシストグリップの一方の固定部を前記ピラーの上側板厚部に固定し、他方の固定部を前記上側板厚部よりも板厚が薄い下側板厚部に固定したことを特徴とするアシストグリップの取付け構造。
【請求項3】
車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備えたアシストグリップの取付け構造において、前記ピラーの室内側の板厚が変化する境界線を設定し、該境界線の車両上下方向における上側のピラーの板厚を下側の板厚よりも厚くすると共に、前記アシストグリップの両側の固定部の間に前記境界線が位置するように前記アシストグリップを前記ピラーに固定したことを特徴とするアシストグリップの取付け構造。
【請求項4】
車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備え、該両側の固定部のうち、一方の固定部が他方の固定部より車両上下方向における上方に位置するように前記ピラーに取付けてなるアシストグリップの取付け構造において、前記上方の固定部が固定される部分のピラー板材を、前記下方の固定部が固定される部分のピラー板材よりも高強度としたことを特徴とするアシストグリップの取付け構造。
【請求項5】
車両の略上下方向に立設するピラー上に配置され、把持部の両側に前記ピラーへの固定部を備えたアシストグリップの取付け構造において、前記ピラーの室内側の板強度が変化する境界線を設定し、該境界線の車両上下方向における上側のピラー板材を下側の板材よりも高強度とすると共に、前記アシストグリップの両側の固定部の間に前記境界線が位置するように前記アシストグリップを前記ピラーに固定したことを特徴とするアシストグリップの取付け構造。
【請求項6】
前記両側の固定部のうち、上方の固定部寄りに前記境界線が位置するようにアシストグリップをピラーに固定したことを特徴とする請求項3または5記載のアシストグリップの取付け構造。
【請求項7】
前記ピラーはフロントガラスに隣接するフロントピラーであって、該フロントピラーの下側よりも板厚が厚いかまたは高強度の上側部分に、ルーフサイド側またはルーフ前側の構造部材への接合部を設けたことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のアシストグリップの取付け構造。
【請求項8】
前記ピラーは、板厚の違う鋼板を溶接してからプレス成形するか、または、圧延時にロールの隙間を変化させて鋼板の厚みを作り分けることにより、車両上下方向における上側の板厚を下側の板厚よりも厚くしたものであることを特徴とする請求項2、3、6、7のいずれかに記載のアシストグリップの取付け構造。
【請求項9】
前記ピラーは、強度の違う鋼板を溶接してからプレス成形することにより、車両上下方向における上側の板材を下側の板材よりも高強度としたものであることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のアシストグリップの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−55420(P2007−55420A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242648(P2005−242648)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】