説明

アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物

【課題】アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法の提供。当該製造方法によって得られるアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の提供。
【解決手段】アスタキサンチン及びシクロデキストリンをホモジナイザーによって混合する工程を含む、アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法に関する。また、この製造方法で製造されたアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスタキサンチンはヘマトコッカスから得られるカロチノイド系の天然色素であり、βカロチンの10倍、トコフェロールの1000倍という高い抗酸化活性を有することが知られている。アスタキサンチンはその抗酸化活性によって、生活習慣病や認知症等の原因となる活性酸素を強力に抑え、また、脳や目の細胞に直接届き、抗酸化活性を発揮できるという、他の抗酸化成分には見られない力を有することが知られている。
近年、アスタキサンチンの高い抗酸化活性を利用することによって体内の過剰な活性酸素を抑え、シミやしわの改善、白内障、動脈硬化や心臓病等の予防、免疫力強化やがんの予防等へ役立てることに期待が寄せられている。また、アスタキサンチンは体内に取り込まれると、その一部が一定条件下においてビタミンAに変化することから、目の機能維持、肌のかさつき防止や風邪等の感染症の予防等のビタミンAとしての効果を利用することにも期待が寄せられている。
【0003】
アスタキサンチンはこのように有用な物質であるが、不安定であるため分解され易いという問題があった。そこで、アスタキサンチンを安定に保つために、有機溶媒を用いてアスタキサンチンとシクロデキストリンとを混合することで、アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物を得る方法が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、この方法で得られるアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物は、製造工程においてジクロロメタン等の有機溶媒を用いることから、有機溶媒の残存が心配され、飲食品等に利用できないという問題があった。そこで、本発明者らは有機溶媒を用いないアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法を見出し、飲食品、健康食品等に安全に利用できるアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物を得た。
【特許文献1】特開2002−348275号公報
【特許文献2】特開2002−348276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法の提供を課題とする。また、この製造方法で製造されたアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、アスタキサンチン及びシクロデキストリンをホモジナイザーによって混合することで、有機溶媒を用いなくてもアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の製造方法においては、さらにトコフェロールをともに混合することで、より抗酸化活性が高いアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物を製造することもできる。
本発明で得られるアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物は、アスタキサンチン単体の場合と比べて吸収率、安定性が高く、またトコフェロールを組み合わせることによって抗酸化活性が向上している。また、製造工程において有機溶媒を用いていないことから、飲食品等に安全に利用することができる。
【0006】
すなわち、本発明は次の(1)〜(10)のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法等に関する。
(1)アスタキサンチン及びシクロデキストリンをホモジナイザーによって混合する工程を含む、アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法。
(2)トコフェロールをともに混合する工程を含む、上記(1)に記載のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法。
(3)アスタキサンチンがアスタキサンチン遊離体又はアスタキサンチンオイルである上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)シクロデキストリンがαシクロデキストリン、βシクロデキストリン又はγシクロデキストリンのいずれかである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかの方法で製造されたアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物。
(6)上記(5)に記載のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物を有効成分として含む飲食品。
(7)上記(5)に記載のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物を成分として含み、粉末、顆粒、タブレット、ハードカプセル、ソフトカプセル、又は飲料のような液状形態である健康補助食品、特定保健用食品、栄養機能食品、特定用途食品等の健康食品。
(8)アスタキサンチンとトコフェロールのシクロデキストリン包接化合物。
(9)上記(8)に記載のアスタキサンチンとトコフェロールのシクロデキストリン包接化合物を有効成分として含む飲食品。
(10)上記(8)に記載のアスタキサンチンとトコフェロールのシクロデキストリン包接化合物を成分として含み、粉末、顆粒、タブレット、ハードカプセル、ソフトカプセル、又は飲料のような液状形態である健康補助食品、特定保健用食品、栄養機能食品、特定用途食品等の健康食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法によって得られるアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物は、生体への吸収率、安定性及び抗酸化活性が高く、かつ安全性が高いことから、飲食品、健康食品、医薬品等に有効に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の「アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法」は、アスタキサンチンとシクロデキストリンをホモジナイザーによって混合する工程を含む、いずれの製造方法も該当する。ホモジナイザーを用いて混合する工程を経ることによって、有機溶媒を用いないでも、アスタキサンチンの包接化合物を得ることができる。
本発明の製造方法において、「混合する」とは、アスタキサンチンとシクロデキストリンを混ぜ合わすことをいい、例えば溶媒中で攪拌すること等が挙げられる。この「混合する」工程を経ることによって、アスタキサンチンをシクロデキストリンに包接することができる。
本発明の「製造方法」には、例えば、アスタキサンチンをビーカーに入れ、脱イオン水を添加し、さらにシクロデキストリンを加え、ホモジナイザーを用いて混合する工程を含むもの等が挙げられる。そして、この工程によって得られた乳化液を凍結乾燥機、定温真空乾燥機、流動乾燥機やスプレードライヤー等を用いて粉末化することで、アスタキサンチン−シクロデキストリン包接化合物を製造することができる。
【0009】
本発明の製造方法においては、さらにトコフェロールをともに混合する工程を含むことができる。この「トコフェロールをともに混合する」とは、トコフェロールをアスタキサンチン、シクロデキストリンとともにホモジナイザーによって混合することをいう。この「混合する」工程を経ることによって、アスタキサンチンとトコフェロールをシクロデキストリンに包接することができる。
トコフェロールをともに混合する工程を含む、本発明の「製造方法」には、例えば、アスタキサンチンとトコフェロールをビーカーに入れ、脱イオン水を添加し、さらにシクロデキストリンを加え、ホモジナイザーを用いて混合する工程を含むもの等が挙げられる。この工程によって得られた乳化液を上記と同様の方法で粉末化することで、アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物(トコフェロール含有)を製造することができる。
【0010】
本発明の製造方法にあたり、アスタキサンチンとシクロデキストリンの混合には、有機溶媒以外の溶媒を用いることができる。この溶媒は、製造されたアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物を食品等に利用する際に残存等が問題ならないものであればいずれのものも用いることができ、特に水や脱イオン水を用いることが好ましい。
【0011】
本発明の製造方法において、アスタキサンチンとシクロデキストリンの混合に用いるホモジナイザーは、いずれのものも用いることができ、ホモジナイザー(ULTRA−TURRAX T25:IKA)等が挙げられる。
【0012】
本発明のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造に用いるアスタキサンチンは、アスタキサンチンの遊離体、アスタキサンチンエステル体、アスタキサンチンオイル等、いずれのものも用いることができる。一般的に知られている抽出方法によって、ヘマトコッカス微細藻類より独自に抽出したものや、ASTOTS−10O(武田紙器株式会社)(アスタキサンチン含量:約10〜14%)又はASTOTS−S(武田紙器株式会社)(アスタキサンチン含量:20〜22%)等の市販のものを用いることもできる。
【0013】
本発明のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造に用いるシクロデキストリンは、天然型シクロデキストリン、修飾型シクロデキストリンのいずれのものも用いることができ、これらの混合物を用いることもできる。このうちαシクロデキストリン、βシクロデキストリン又はγシクロデキストリンを用いることが好ましく、特にγシクロデキストリンを用いることが好ましい。γシクロデキストリンとして、例えば、CAVAMAX W8 Food(ワッカーケミカルコーポレーション)等の市販のものを用いることもできる。
【0014】
本発明のトコフェロールをともに含むアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造に用いるトコフェロールは、いずれのものも用いることができるが、例えば、ミックストコフェロールBK−801(備前化成株式会社)(α−トコフェロール:12%,総トコフェロール:80%)等の市販のものを用いることもできる。
【0015】
本発明の「アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物」は、本発明の製造方法によって得られるアスタキサンチンをシクロデキストリンで包接した化合物のことをいい、さらにトコフェロールをシクロデキストリンで包接した化合物を含有する化合物も含まれる。
本発明の「アスタキサンチンとトコフェロールのシクロデキストリン包接化合物」は、アスタキサンチンとトコフェロールをシクロデキストリンに包接しているものであればいずれのものであってもよく、また、アスタキサンチンがシクロデキストリンに包接されたものとトコフェロールがシクロデキストリンに包接されたものを混合した状態のものであってもよい。本発明の「アスタキサンチンとトコフェロールのシクロデキストリン包接化合物」には、本発明の製造方法によって得られるトコフェロールを含有した「アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物」も含まれ、また、混錬法等の従来用いられている方法によって得られるものも含まれる。
本発明の「アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物」又は「アスタキサンチンとトコフェロールのシクロデキストリン包接化合物」は、製造工程において有機溶媒を用いていないことから、飲食品、医薬品等に安全に用いることができる。
【0016】
本発明のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物は飲食品や健康食品に含有させることができる。本発明の「飲食品」には、通常食品、健康食品等が挙げられ、「健康食品」として、健康補助食品、特定保健用食品、栄養機能食品、特定用途食品等が挙げられる。これらの飲食品や健康食品の形態は、粉末、顆粒、タブレット、ハードカプセル、ソフトカプセル、又は飲料のような液状が可能である。
【0017】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法
1.試薬
1)アスタキサンチン
ASTOTS−10Oを用いた。
2)シクロデキストリン
γシクロデキストリンとしてCAVAMAX W8 Foodを用いた。
3)トコフェロール
ミックストコフェロールBK−801を用いた。
【0019】
2.包接化合物の調製
1)アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物
ASTOTS−10O 20gを500mLビーカーへ量り取り、脱気した脱イオン水を150mL添加した。このビーカーにCAVAMAX W8 Food 85gを加え、ホモジナイザー(ULTRA−TURRAX T25:IKA)を用い、10,000−12,000rpmにて30分間攪拌した。得られた乳化液を凍結乾燥機、定温真空乾燥機、流動乾燥機、スプレードライヤー等を用いて粉末化することで、アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物が得られた。この包接化合物はアスタキサンチンを約2.7%含有した。
【0020】
2)アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物(トコフェロール含有)
ASTOTS−10O 30gとミックストコフェロールBK−801 2.7gを500mLビーカーへ量り取り、脱気した脱イオン水を200mL添加した。このビーカーにCAVAMAX W8 Food 104gを加え、上記と同じホモジナイザーを用い、10,000−12,000rpmにて30分間攪拌した。得られた乳化液を凍結乾燥機、定温真空乾燥機、スプレードライヤー等を用いて粉末化することで、アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物が得られた。この包接化合物はアスタキサンチンを約2%含有した。
【実施例2】
【0021】
アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の検討
実施例1と同様の製造方法によって製造されたアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の吸収率、安定性及び抗酸化活性を検討した。
【0022】
<試験1:吸収率の検討>
1.試料
1)アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物(トコフェロール含有)
ASTOTS−10O 20%、CAVAMAX W8 Food 72.6%、ミックストコフェロールBK−801 7.4%を用い、実施例1の製造方法によってアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物(トコフェロール含有)を製造した。この包接化合物はアスタキサンチンを2.5%含有している。
2)1%パウダー従来品(以下、SPW401とする)
アスタキサンチンを5%含有するオイル(ASTOTS−5O:武田紙器株式会社)20.2 %、β−シクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所)50.6%、ゼラチン(ゼラチン SGC微粉:新田ゼラチン株式会社)14.7%、カゼインナトリウム(乳由来)(ハプロ:日本新薬株式会社)7.8%、ミックストコフェロール(トコミックス500:甘糖化学産業株式会社)3.7%、レシチン(大豆由来)(SLP−ホワイトNG:辻製油株式会社)1.0%、二酸化珪素(サイロページ 720:富士シリシア化学株式会社)1.0%、CMCナトリウム(セロゲン F:第一工業製薬株式会社)1.0%、を原料とし、これをホモジナイザーで混合・乳化し、スプレードライヤーで噴霧乾燥したもので、ヘマトコッカス藻色素製剤20.2%、β−シクロデキストリン50.6%、ゼラチン14.7%、カゼインナトリウム(乳由来)7.8%、ミックストコフェロール3.7%、レシチン(大豆由来)1.0%、二酸化珪素1.0%、CMCナトリウム1.0%を含有している。
【0023】
2.実験条件
1)SD系SPFラット(8週齢、雄)に被検液(以下、γCD包接品と示す)及び対照液(以下、従来品と示す)を、アスタキサンチン投与量として20mg/kgとなるように経口投与した。
2)投与後1,2,3,4,6,8,24h後に頸静脈より採血し、これを遠心分離し、血漿を採取した。
3)採取した血漿よりアスタキサンチンを抽出し、HPLC分析により各点における血漿中のアスタキサンチン濃度を算出した。
【0024】
3.結果
結果を、図1及び表1に示した。
図1に示されるように、最高血中濃度(Cmax)及び血中濃度−時間曲線下面積(AUC)ともγCD包接品の方が高くなった。
表1から示されるように、本発明の包接化合物にすることによって、最高血中濃度(Cmax)は、約1,43倍、血中濃度−時間曲線下面積(AUC)は、1.56倍上昇した。また、半減期の延長も確認された。
【0025】
【表1】

【0026】
<試験2:安定性の検討>
1.試料
試験1と同じ1)アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物(トコフェロール含有)、2)1%パウダー従来品(SPW401)を用いた。
【0027】
2.実施条件
上記1.で調整した試料を、少量ずつ遮光容器に分包した。これを冷凍(−10℃)・酸素雰囲気下又は室温を模した25℃・酸素雰囲気下におき、180日経過後までのアスタキサンチンの残存率を調べることで、アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の安定性を調べた。
【0028】
アスタキサンチン濃度測定方法
試料に含まれるアスタキサンチン濃度を次の手順で測定した。
1)試料約0.2gを50mLファルコンチューブに採取し、精秤した。
2)ジメチルスルホキシド(DMSO) 3mLを加え、完全に溶解させた。
3)蒸留水2mLを加え、よく攪拌した。
4)アセトン30mLを加え、激しく攪拌した。
5)硝子濾過器で吸引ろ過した。
6)残渣にアスタキサンチンが残存していた場合は2)〜5)を再度行った。
7)ろ液を100mLメスフラスコに移し、アセトンで定容、適宜希釈した。
8)分光光度計を用い、対照はアセトンとして、波長478nmの吸光度を測定した。
9)得られた吸光度から下記の計算式よりアスタキサンチン濃度を算出した。
[式]
アスタキサンチン濃度(wt.%)=(A×100×F×0.98)/(W×2200)
(A=吸光度、F=希釈倍率、W=試料重量)
【0029】
3.結果
図2に実験開始時の各試料中のアスタキサンチン濃度を100とした時の、各試料のアスタキサンチンの残存率を示した。
図2に示すように、アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物(トコフェロール含有)及びSPW401は各試料とも、冷凍(−10℃)・酸素雰囲気下では180日経過後でもアスタキサンチン残存率が約100%であった。一方、25℃・酸素雰囲気下における180日経過後のアスタキサンチン残存率は、SPW401は約39%であったのに対し、アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物では、約75%であった。
従って、25℃・酸素雰囲気下の保存安定性に大きな差が見られたことから、本発明のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物は、SPW401よりも、アスタキサンチンが劣化しやすい条件下において安定性を維持し得ることが確認された。
【0030】
<試験3:抗酸化活性の検討>
1.試薬
アスタキサンチンとしてASTOTS−Sを、トコフェロールとしてNOVATOL 1490(ADM)(α―トコフェロール:96%)を用いた。シクロデキストリン及びミックストコフェロールは実施例1と同じ物を用いた。
【0031】
2.試料の調製
上記と同じ試薬を用い、A〜Gの試料を調製した。
A.アスタキサンチン
ASTOTS−Sを用いた。
B.アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物
実施例1の製造方法によって製造したアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物(アスタキサンチン含量:1.96%)を用いた。
C.アスタキサンチンートコフェロール配合物
ASTOTS−SとミックストコフェロールBK−801を重量比 12:4.44の割合で配合したものを用いた。
D.アスタキサンチンーシクロデキストリンートコフェロール配合物
ASTOTS−S、CAVAMAX W8 Food及びミックストコフェロールBK−801を重量比 12:97.6:4.44の割合で配合した。
E.アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物(トコフェロール含有)
実施例1の製造方法によって製造したアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物(トコフェロール含有)(アスタキサンチン含量:2.4%)を用いた。
F.トコフェロール
NOVATOL 1490を用いた。
G.トコフェロール包接化合物
実施例1の製造方法を参考に製造したトコフェロールーシクロデキストリン包接化合物(α―トコフェロール含量:14.4%)を用いた。
【0032】
2.実施条件
上記1.の各試料におけるアスタキサンチンの抗酸化活性に及ぼす効果を、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(以下、DPPHとする)によるラジカル消去活性試験法を用いて調べた。
【0033】
DPPHラジカル消去活性試験法
1)上記1.の各試料をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、アスタキサンチン濃度、或いはトコフェロール濃度が0.003〜0.035mMになるよう段階希釈した。
2)1)の各試料を1mLずつ取り、それぞれ0.2mM DPPHエタノール溶液 1mLに加え、ボルテックスミキサーで攪拌した。
3)室温・暗所で30分間静置し、吸光度計(UV mini−1240、島津製作所)を用いて525nmにおける吸光度を測定した。
4)コントロールとして、DPPHエタノール溶液 1mLにDMF溶液 1mLを加えたものを用い、ブランクとしてエタノール溶液 1mLに試料溶液 1mLを加えたものを用いて、同様に測定を行った。
5)得られた吸光度から下記の計算式よりDPPHラジカル消去活性を算出した。
[式]
ラジカル消去活性(%)=
[1−(試料溶液の吸光度−ブランクの吸光度)/コントロールの吸光度]×100
【0034】
3.結果
図3に0.2mMのDPPHラジカルを50%(つまり本検討では0.1μmol)消去するのに必要な抗酸化物質(アスタキサンチン(A〜E)、或いはトコフェロール(F〜G))のモル数を示した。図3に示すように、E.アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物(トコフェロール含有)は単にこれらを混ぜたD.の配合物よりも強い抗酸化活性を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物は、吸収率、安定性及び抗酸化活性が高く、かつ安全性が高いことから、本発明の包接化合物を用いることで、高い抗酸化活性を有し、美容や医薬においても有用な飲食品、医薬品等を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の吸収率を示した図である(実施例2の試験1)
【図2】アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の安定性を示した図である(実施例2の試験2)。
【図3】アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の抗酸化活性を示した図である(実施例2の試験3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチン及びシクロデキストリンをホモジナイザーによって混合する工程を含む、アスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法。
【請求項2】
トコフェロールをともに混合する工程を含む、請求項1に記載のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物の製造方法。
【請求項3】
アスタキサンチンがアスタキサンチン遊離体又はアスタキサンチンオイルである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
シクロデキストリンがαシクロデキストリン、βシクロデキストリン又はγシクロデキストリンのいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの方法で製造されたアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物。
【請求項6】
請求項5に記載のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物を有効成分として含む飲食品。
【請求項7】
請求項5に記載のアスタキサンチンーシクロデキストリン包接化合物を成分として含み、粉末、顆粒、タブレット、ハードカプセル、ソフトカプセル、又は飲料のような液状形態である健康補助食品、特定保健用食品、栄養機能食品、特定用途食品等の健康食品。
【請求項8】
アスタキサンチンとトコフェロールのシクロデキストリン包接化合物。
【請求項9】
請求項8に記載のアスタキサンチンとトコフェロールのシクロデキストリン包接化合物を有効成分として含む飲食品。
【請求項10】
請求項8に記載のアスタキサンチンとトコフェロールのシクロデキストリン包接化合物を成分として含み、粉末、顆粒、タブレット、ハードカプセル、ソフトカプセル、又は飲料のような液状形態である健康補助食品、特定保健用食品、栄養機能食品、特定用途食品等の健康食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−291150(P2008−291150A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139440(P2007−139440)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(503065302)株式会社シクロケム (22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(592171278)武田紙器株式会社 (3)
【Fターム(参考)】