説明

アダプタソケット

【課題】 実装されるICソケットの交換が容易であり、且つそれ自体の交換も容易であり、さらに電気的特性を損なうことなく、且つ低背化が実現可能なアダプタソケットを提供する。
【解決手段】 第1の絶縁基板、該第1の絶縁基板の下に配置される第2の絶縁基板及び複数の接触子を備え、前記複数の接触子は、前記第1の絶縁基板と前記第2の絶縁基板との間にコイルバネを介して上下動可能に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICパッケージなどの半導体デバイスを搭載するICソケットをテストボード等に対して交換可能なアダプタソケットに関し、より詳細には、ICソケットの交換を容易にするとともに、アダプタソケット自身の交換も可能とするアダプタソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICパッケージのような半導体デバイスを、電気的テストやバーンインテストなどを行いスクリーニングする場合、テストボードやバーンインボードのようなプリント配線板に配設された半導体デバイス用ソケット(「ICソケット」ともいう。)を介して、半導体デバイスとプリント配線板との電気的接続を行なっている。
【0003】
ところで、ICソケットの接続端子は、従来、テストボード等のプリント配線板に設けられたスルーホールを介して半田付けされるのが普通であった。このため、寿命により使用ができなくなったICソケットを交換するとき、テストボードのようなプリント配線板も同時に交換される。
【0004】
しかしながら、当該テストボードのようなプリント配線板は、ICソケットに比べて、高価であり、かつ寿命も長い。したがって、このような高価で寿命の長いプリント配線板をICソケット交換の都度交換する、すなわち廃棄するという無駄をなくすため、ICソケットとプリント配線板との間に介在させ、ICソケットのみを交換できるようにしたアダプタソケットが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、このようなアダプタソケットのコンタクト形状としては、特許文献2ないし4に開示されるように、丸ピンタイプや薄板を打ち抜き、曲げ加工を施して作成されるものが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特許第3246219号公報
【特許文献2】特許第2967507号公報
【特許文献3】特開平5−326090号公報
【特許文献4】実開平6−72169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまで提案されてきたアダプタソケットは、使用形態として、テストボード等のプリント配線板に設けられたスルーホールを介して半田付けにより実装される。したがって、ICソケットの場合と同様、アダプタソケット自体の寿命による交換やメンテナンスあるいは別のテストボードに移し変えることが困難な状況にある。また、半導体デバイスのテストを行なう際、試験槽や搬送時のラックなどにテストボードを一定間隔に重ねて使用されるケースがあり、アダプタソケットを用いてICソケットをテストボードに実装した場合、テストボードの全高が高くなり、従来の試験装置を利用できなくなる場合が生じる。
【0008】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、実装されるICソケットの交換が容易であり、且つそれ自体の交換も容易であり、さらに電気的特性を損なうことなく、且つ低背化が実現可能なアダプタソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るアダプタソケットは、第1の絶縁基板、該第1の絶縁基板の下に配置される第2の絶縁基板及び複数の接触子を備え、前記複数の接触子は、前記第1の絶縁基板と前記第2の絶縁基板との間にコイルバネを介して上下動可能に配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るアダプタソケットは、より具体的には、前記接触子が、一対の接点部、一対の弾性変形部、幅広の鍔部及び端子部を含み、前記コイルバネが、幅広の鍔部を介して前記接触子を下方に付勢し、前記第1の絶縁基板には、前記接触子の一対の接点部が配置されるスリットが形成されている構成を備えていてもよいし、前記接触子は、幅広の1つの接点部及び一対の弾性変形可能な脚部を含み、前記コイルバネは、前記幅広の1つの接点部を介して前記接触子を上方に付勢し、前記コイルバネの下方はテーパ部を含む密着巻き部を備えている構成であってもよい。
【0011】
また、前記接触子は、金属板をプレス加工により打ち抜かれることで作製されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアダプタソケットは、上記構成を備えることで、構造が簡単であるにも拘らず、電気的信頼性が高く、ICソケットの交換が容易であるばかりでなく、アダプタソケット自体の交換も容易である。さらに、アダプタソケットの低背化が可能であり、且つ製造し易く、製造コストも安価で済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るアダプタソケットの詳細につき図面を参照して説明する。
【0014】
最初に、本発明に係るアダプタソケットを用いて、半導体デバイス用ソケットをテストボードに装着する全体構成について説明する。図1には、ICソケット及びアダプタソケットがテストボードに実装された概略側面図が示されている。
【0015】
図1において、1は、半導体デバイス用ソケット(以下、「ICソケット」という。)である。ICソケット1は、図1に示されるように、例えば、ボルトのような固定金具を用いて、本発明に係るアダプタソケット40をICソケット1とプリント配線板50との間に挟んで、プリント配線板としてのテストボード50上に交換可能に実装され得る。あるいは、ICソケット1は、予めテストボード50に交換可能に取り付けられた本発明に係るアダプタソケット40に上方から差し込むことでテストボード50上に実装され得る。
【0016】
図1に示されるICソケット1は、ソケットカバー10、半導体デバイスが装着される装着部(不図示)を有するソケット本体20、及び該ソケット本体20に設けられている複数のコンタクト30とからなる。コンタクト30は、上方において装着される半導体デバイスと電気的に接触し、下方においてアダプタソケット40のアダプタソケット用コンタクト45の接触子46と電気的に接触する。図1に示されるICソケット1は、いわゆるオープントップ型ICソケットとして知られている。
【0017】
なお、ソケットカバー10は、ソケット本体20に対して上下動可能に取り付けられている。このソケットカバー10の上下動を利用することにより、半導体デバイスがソケット本体20に装着される。
【0018】
アダプタソケット40は、以下に詳細に述べるが、基本的に、絶縁部材と、該絶縁部材に設けられた、コイルバネのような弾性部材により付勢される複数のコンタクトとを含んでいる。アダプタソケット40は、図1のように組み立てられることにより、ICソケット1とテストボード50を電気的に接続する。結果として、ICソケット1に搭載された半導体デバイスとテストボードとを電気的に接続することになる。
【0019】
なお、本発明に係るアダプタソケット40は、装着されるICソケット1として図に示されるようなオープントップ型ICソケットに限られるものではない。
【0020】
また、ICソケット1のコンタクト30は、装着される半導体デバイスに適したコンタクトであれば、どのような形状であってもよく、例えば、半導体デバイスの外部接点を挟持させて電気的に接触するものや、半導体デバイスの外部接点に突き当てることにより電気的に接触するものでもよく、要は、装着される半導体デバイスと電気的に接触される接触部材であればよい。
【0021】
(第1実施例)
図2ないし5に、本発明に係るアダプタソケットの第1実施例が示されている。図2は、アダプタソケットの上面図である。図3は、図2に示すアダプタソケットの概略断面図であり、(a)は、図2のアダプタソケットのX−X断面図であり、(b)は、(a)の要部拡大断面図である。図4は、図2に示すアダプタソケットの概略断面図であり、(a)は、図2のアダプタソケットのY−Y断面図であり、(b)は、(a)の要部拡大断面図である。図5は、図2のアダプタソケットに用いられるコンタクトの拡大斜視図である。
【0022】
本実施例に係るアダプタソケット40は、概略、第1の絶縁基板41、第2の絶縁基板42、固定用カバー43、及びICソケット1のコンタクト30とテストボード50の外部端子を電気的に接続するための複数のアダプタソケット用コンタクト45を含んでいる。
【0023】
第1の絶縁基板41は、上から見て略正方形をなす天板部41a及び該天板部41aと段部をなすように天板部41aの下方に位置し、天板部41aの全周を囲むフランジ部41bを備えている。
【0024】
第1絶縁基板41の天板部41aには、装着されるICソケット1(図1参照)のコンタクト30の外部端子に対応してマトリックス状(格子状)に配置される挿入孔41dが形成される。該挿入孔41dの上方は、上方に向かって開く円錐面41cが形成されていることが好ましい。この円錐面41cにより、ICソケット1のコンタクト30の外部端子が挿入孔41d内に円滑に案内される。挿入孔41cの下方は、アダプタソケット用コンタクト45の接触子(以下、単に、「接触子」という。)46上端の接点部46aが配置され得るように、スリット41eが形成されている。該スリット41eは、例えば、図3(b)、図4(b)に示されるように、横1列に配置される複数の挿入孔41d(図2参照)に共通するように形成されることが好ましい。スリット41eの幅s(図4(b)参照)は、接触子46の厚さt(図5参照)より若干大きい。スリット41eをこのように形成することで、個々の挿入孔41dに対応してスリットを形成するより製造が容易であるばかりでなく、接触子46の長手軸周りの回転を阻止し、接点部46aの開閉に支障をきたすことがない。なお、スリット41eは、さらに、接触子46の接点部46aの導入を容易にするために、下方に向かって拡開する傾斜面41fを備えていることが好ましい。
【0025】
また、第1絶縁基板41のフランジ部41bには、適宜の位置(本実施例では、4箇所)に、下方に向かって位置決めピン41gが突出形成されている。
【0026】
第2の絶縁基板42は、上から見てICソケット1の底面外郭と略同じ大きさの略正方形の基板本体42aよりなる。基板本体42aの中央部には、第1の絶縁基板41に設けられたマトリックス状に配置される挿入孔41dに対応してマトリックス状に配置される複数の貫通孔42cが形成される。貫通孔42c内には、接触子46が配置される。貫通孔42cの下方、すなわち、プリント配線板50側は、接触子46の端子部46dが通過できる程度に縮径された小径孔42dとして形成されている。したがって、貫通孔42cは、図3(b)に示されるように、下方において、段部42eを形成している。
【0027】
第2の絶縁基板42には、また、その基板本体42aの上面に、第1の絶縁基板41のフランジ部41bを収容する、上から見てその外郭が正方形状の凹部42bが、マトリックス状に配置された複数の貫通孔42cを取り囲むように形成されている。凹部42bの底面には、第1の絶縁基板41のフランジ部41bに形成されている位置決めピン41gを受け入れる位置決め孔(不図示)がさらに形成されている。凹部42bの深さは、フランジ部41bが収容されたとき、フランジ部41bの上面と基板本体42aの上面が面一となるように設定される。第2の絶縁基板42には、さらに、凹部42bの外側の適宜の位置に固定ネジ用孔(本実施例では、4箇所)42f、及びアダプタソケット40をICソケット1とともにテストボード50に装着するための、あるいはアダプタソケット40のみをテストボード50に装着するためのボルト孔(本実施例では、4箇所;不図示)が形成されている。
【0028】
固定用カバー43は、上から見て第2の絶縁基板42と同じ大きさの略正方形の形状を有し、中央部に第1の絶縁基板41の天板部41aより若干大きい略正方形の開口43aを有する。固定用カバー43には、ねじ切りされた固定用ネジ孔43b(本実施例では、4箇所)が、第2絶縁基板42の固定用ネジ孔42fに対応して形成されている。固定用カバー43により、第1の絶縁基板41が第2の絶縁基板42に固定され、アダプタソケット40を構成する。このとき、固定用カバー43の開口43a内に、第1の絶縁基板41の天板部41aが収容され、図3(a)に示されるように、固定用カバー43の上面と天板部41aの上面とが略面一になることが好ましい。また、固定用カバー43にも、アダプタソケット40をICソケット1とともにテストボード50に装着するための、あるいはアダプタソケット40のみをテストボード50に装着するためのボルト孔(本実施例では、4箇所;不図示)が形成されている。さらに、固定用カバー43上面には、ICソケット1との位置決め孔43c(本実施例では、2箇所)が形成されている。なお、固定用カバー43は、アダプタソケット40を強化する意味から金属製であることが好ましいが、これに限られるものではない。また、本実施例では、第1の絶縁基板41と固定用カバー43を別部材として構成しているが、1つの部材として構成してもよい。この場合、当該部材は、絶縁材料からなり、上から見て第2の絶縁基板42と同じ形状をとることは明白である。
【0029】
アダプタソケット用コンタクト45を構成する接触子46が、図5に示される。アダプタソケット用コンタクト45は、ICソケット1とテストボード50との間を電気的に接続する接触子46及び該接触子46を下方に付勢するコイルバネ48とを含んでいる。
【0030】
接触子46は、導電性の金属板をプレス加工により縦長のU字状に打ち抜かれることで作製される。該接触子46は、一対の接点部46a、一対の接点部46aを開閉可能とする一対の弾性変形部46b、幅広の鍔部46c、及びプリント配線板としてのテストボード50の外部端子に電気的に接触する端子部46dを含んでいる。接触子46は、鍔部46c上方に載置されるコイルバネ48とともにアダプタソケット用コンタクト45を構成し、第2の絶縁基板42の貫通孔42c内に配置される。鍔部46cの幅wは、配置される第2の絶縁部材42の貫通孔42cの径より若干小さく、該貫通孔42cの下方に形成される小径孔42dの直径より大きく、また、コイルバネ48の外径より若干大きく設定される。
【0031】
接触子46は、アダプタソケット40が組み立てられたとき、コイルバネ48により鍔部46cを介して下方に向かって付勢される。このとき、鍔部46cが貫通孔42内の段部42eに当接し、接触子46の飛び出しが阻止される。この状態で、端子部46dは、小径孔42dを通って第2の絶縁基板42の底面から突出するように設定される。具体的には、以下のようにして設定される。すなわち、アダプタソケット40がプリント配線板としてのテストボード50に装着されたとき、端子部46dの突出量分だけ接触子46が上方に移動し、それによりコイルバネ48がこの突出量分圧縮されるのであるから、この端子部46dの第2の絶縁基板42の底面からの突出量とコイルバネ48のバネ定数により、端子部46dとテストボード50の外部接点との接触圧が決定される。
【0032】
なお、コイルバネ48は、アダプタソケット40が組み立てられたとき、予め圧縮された状態、すなわち、予め加圧された状態(プリロード)にあることがより好ましい。この場合、接触圧は、プリロード分の圧力が加えられる。このように構成することで、接触子46の端子部46dの突出量に対してコイルバネ48の圧縮量が大きく取れるため、接触子46、第2の絶縁基板42又はコイルバネ48の製造バラツキによる接触圧への影響を軽減することができる。
【0033】
以上のことから、望ましい接触圧及びコイルバネ48のバネ定数が定まれば、端子部46dの突出量が定まることになる。また、アダプタソケット40がテストボード50に装着されるとき、上述したように接触子46の端子部46dの突出量分上方に移動することを考慮すれば、端子部46の接点部46aが位置する第1の絶縁部材41のスリット41eの深さは、この突出量より若干大きく設定すればよいことが理解されるであろう。
【0034】
本実施例におけるアダプタソケット用コンタクト45の接触子46は、また、一対の接点部46aの開閉によりICソケット1のコンタクト30の外部端子を挟持するように構成されているので、ICソケット1の装着時、接触子46自身は上下に移動することがない。それにより、接触子46を小さくすることができるとともに、接触子46の上下の移動分を省略できるので、結果として、アダプタソケット用コンタクト45の高さを小さくでき、ひいては、アダプタソケット40の高さを低く抑えることが可能となる。
【0035】
アダプタソケット用コンタクト45を構成する弾性部材としてのコイルバネ48は、上述したように、接触子46を下方に付勢するものであり、その外径は、該接触子46の鍔部46cの幅wより若干小さく、第1の絶縁部材41の天板部41aに形成されるスリット41eの幅sより大きく設定される。したがって、アダプタソケット40が組み立てられたとき、コイルバネ48は、その上端が第1の絶縁部材41の天板部41aの底面に、その下端が接触子46の鍔部46aに当接し、結果として、該接触子46を下方に向けて付勢することになる。
【0036】
ここで、本実施例におけるアダプタソケット40の組み立て及び最終的にICソケット1が装着されるまでの工程について簡単に説明する。
【0037】
最初に、第2の絶縁部材42の貫通孔42c内に、アダプタソケット用コンタクト45を挿入する。続いて、第1の絶縁部材41を、そのフランジ部41bが第2の絶縁部材42の凹部42b内に収納されるように、第2の絶縁部材42の上に積み重ねる。このとき、第1の絶縁部材41のフランジ41bの位置決めピン41gが第2の絶縁部材42の凹部42に形成されている位置決め孔(不図示)に嵌まり込むことで、第1の絶縁部材41の天板部41aに形成されている挿入孔41dと第2の絶縁基板42に形成されている貫通孔42cとの中心の位置合わせが行なわれる。それに伴って、接触子46の接点部46aは、第1の絶縁部材41の天板部41a下方に延びるスリット41e内に導入される。続いて、固定用カバー43を、その開口43a内に第1の絶縁部材41の天板部41aが収容されるように、第2の絶縁部材42の上に積み重ねる。このとき、第1の絶縁基板41は、第2の絶縁基板42と固定用カバー43との間に挟持されることになる。最後に、第2の絶縁基板42に設けられている固定ネジ用孔42f及び対応して固定用カバー43に設けられている固定用ネジ孔43bを介して、皿ネジのような固定金具60を用いて固定されることで、アダプタソケット40単体の組立が完了する。
【0038】
このようにして組み立てられたアダプタソケット40は、さらに、ボルトのような固定金具70を用いて、図2、図3(a)に示されるように、テストボード50に装着される。このとき、接触子46は、上述したように、端子部46dの突出量分上方に移動し、接点部46aは、第1の絶縁基板41のスリット41e内を上昇し、第1の絶縁基板41の天板部41aに該接点部46aに対応して形成されている挿入孔41dの略真下に位置するとともに、端子部46dは、テストボード50の対応する外部接点と所定の接触圧で電気的に接触する。
【0039】
次に、ICソケット1を装着するために、アダプタソケット40の固定用カバー43に設けられているICソケット1との位置決め孔43cにICソケット1の位置決めピン(不図示)を合わせるとともに、第1の絶縁部材41の天板部41aに形成されている挿入孔41d内に、ICソケット1のコンタクト30のピン状の外部端子を挿入する。ICソケット1のコンタクト30のピン状の外部端子は、接触子46の一対の接点部46a間に入り込み、一対の弾性変形部46bを変形させ、それにより、一対の接点部43aに挟持される。結果として、ICソケット1に搭載された半導体デバイスがテストボード50に電気的に接続されることになる。なお、ICソケット1は、アダプタソケット40をテストボード50に装着するときに用いたボルトのような固定金具70を利用してテストボード50に対して固定するようにしてもよい。
【0040】
本実施例におけるアダプタソケットは、上述したように容易に組み立てることができるので各部品の交換も容易である。また、アダプタソケットの接触子をプレス加工により簡単に作製することができる。さらに、ICソケットの外部端子が一対の接点部間に差し込める長さが確保できればよいので、アダプタソケットの接触子の長さを短くできる。それにより、アダプタソケットの低背化が可能となるとともに、コンタクトが短くできることで、電流が流れるコンタクトの電路長(本実施例では、接触子の長さ)も短くなり、したがって、比較的大きな電流を流すことが可能となる。また、一対の弾性変形部あるいはコイルバネの反発力により端子間の接触力を得るように構成されているので、安定した電気的接触力を得ることが可能となり、電気的信頼性を損なうことがない。また、アダプタソケットとプリント配線板としてのテストボートとの間の電気的接触も半田付けによらないので、アダプタソケット自体の交換も容易に行うことが可能となる。さらに、アダプタソケットへのICソケットの装着も容易である。
【0041】
(第2実施例)
図6、7に、本発明に係るアダプタソケットの第2実施例が示されている。図6は、本実施例に係るアダプタソケットの図3(b)と同様の要部拡大断面図である。図7は、本実施例に係るアダプタソケットに用いられるコンタクトの拡大斜視図であり、(a)は、プランジャを示し、(b)は、端子部としてのコイルバネユニットを示す。
【0042】
本実施例は、上記第1実施例のアダプタソケットと比べて、用いられるコンタクトの構成が大きく異なり、それに伴って、第1の絶縁基板の構造が若干異なる。
【0043】
本実施例におけるアダプタソケット80は、概略、第1の絶縁基板81、第2の絶縁基板82、及びアダプタソケット用コンタクト85を含んでいる。
【0044】
第1の絶縁基板81は、上から見て、ICソケット(不図示)の底面外郭と略同じ大きさの略正方形をなしている。第1の絶縁基板81上方には、上記第1の実施例と同様に、ICソケットのコンタクトの外部端子が挿入されるマトリックス状に配列されている複数の挿入孔81a及び各挿入孔81aの上端には上に向かって拡開する円錐面81bが形成されている。本実施例では、第1の絶縁基板81には、さらに、各挿入孔81aに続いて、下方に向かってアダプタソケット用コンタクト85を収容する第1の収容孔81cが開けられている。なお、挿入孔81aの径は、第1の収容孔81cの径より小さく設定される。それにより、アダプタソケット用コンタクト85が上方に飛び出すことが阻止される。
【0045】
第2の絶縁基板82は、上から見て第1の絶縁基板81と同じ外郭(正方形)をなしており、第1の絶縁基板81に開けられている第1の収容孔81cに対応する複数の第2の収容孔82aが形成されている。第2の収容孔82aの下方は、小径孔82bが形成され、それにより、アダプタソケット用コンタクト85が下方に飛び出すことが阻止される。したがって、第1の絶縁基板81と第2の絶縁基板82とが組み立てられ、アダプタソケットを構成するとき、第1の収容孔81cと第2の収容孔82aとでアダプタソケット用コンタクト85を収容する室が形成される。
【0046】
本実施例におけるアダプタソケット用コンタクト85は、図7(a)、(b)に示されるように、接触子としてのプランジャ86とコイルバネユニット87とを含んでいる。
【0047】
接触子としてのプランジャ86は、導電性の金属板をプレス加工により縦長の逆U字形状に打ち抜かれることで作成される。プランジャ86は、幅広の接点部86a、一対の弾性脚部86bを備えている。幅広の接点部86aは、上面を、ICソケットのコンタクトの外部端子と接触する接触面86dとする。本実施例では、これに限られるものではないが、円弧状の面として形成されている。この接触面86dは、ICソケットのコンタクトの外部端子との接触面を大きく取れ、それにより確実に電気的に接触し得るように形成されることが好ましい。幅広の接点部86aと一対の脚部86bとの接続部には段部86eが形成され、該段部86eにおいて、コイルバネユニット87の上端が当接する。幅広の接点部86aの幅w2は、第1の収容孔81cの径より若干小さく設定されている。また、一対の弾性脚部86bの先端は、丸く形成される。さらに、各弾性脚部86bの先端は、外側に突出する凸部86cが設けられていることが好ましい。
【0048】
コイルバネユニット87は、接触子としてのプランジャ86を上方に付勢するコイルバネ部88及びコイルバネ部88の下方に密着巻き部89を備える。コイルバネ部88の外径は、プランジャ86の接点部の幅w2より若干小さく、内径は、プランジャ86の一対の脚部86bを収容できるように設定される。また、密着巻き部89は、下方に向かって先細状に形成されるテーパ部89aを備えている。密着巻き部89のテーパ部89aの下端は、テストボード50の外部端子と接触する端子部89bを構成する。コイルバネユニット87の密着巻き部89の先端である端子部89bは、第2の絶縁部材82の第2の収容孔82a内に収容されたとき、小径孔82を貫通してアダプタソケット80の底面から若干突出する様に設定されることが好ましい。したがって、アダプタソケット80が組み立てられ、テストボード50に装着されたとき、アダプタソケット用コンタクト85は、その先端である端子部89bがテストボード50により押し込められ、コイルバネ部88が変形し、反発力が蓄えられた状態を維持する。その結果、プランジャ86の移動量(押し下げ量)が小さくても所定の接触圧を得ることが可能となる。したがって、アダプタソケット用コンタクト85を小さくすることができ、ひいては、アダプタソケット80の高さを低くすることが可能となる。
【0049】
本実施例におけるアダプタソケット用コンタクト85の接触子としてのプランジャ86は、ICソケットのコンタクトの外部端子が第1の絶縁基板81の挿入孔81aを通って挿入され、ICソケットのコンタクトの外部端子がプランジャ86の接触面86dに接触することで、下方に押し下げられる。それにより、コイルバネユニット87のコイルバネ部88が弾性変形し、その反発力でICソケットのコンタクトの外部端子とプランジャ86の接点部86後の間、及び密着巻き部89の端子部89bとテストボード50の外部端子との間に所定の接触圧を得ることができる。さらに、プランジャ86が押し下げられた時、一対の脚部86b先端がテーパ部89a内面に接触し、一対の脚部86bが閉じる方向に弾性変形し、その反発力により、プランジャ86とコイルバネユニット87との間においても所定の接触圧を得ることができる。
【0050】
アダプタソケットの組み立て、アダプタソケットのテストボードへの装着及びICソケットのアダプタソケットへの装着は第1実施例と略同じであるのでここでは省略する。
【0051】
本実施例におけるアダプタソケットは、第1実施例と同様に、容易に組み立てることができるので各部品の交換も容易である。また、プランジャをプレス加工により簡単に作製することができる。さらに、ICソケットのコンタクトの外部端子との接触圧が確保できればよいので、アダプタソケット用コンタクトの長さを短くできる。それにより、アダプタソケットの低背化が可能となるとともに、コンタクトが短くできることで、電流が流れるコンタクトの電路長(本実施例では、プランジャの長さ+密着巻き部のテーパ部の一部)も短くなり、したがって、比較的大きな電流を流すことが可能となる。また、一対の脚部あるいはコイルバネの反発力により端子間の接触力を得るように構成されているので、安定した電気的接触力を得ることが可能となり、電気的信頼性を損なうことがない。また、アダプタソケットとプリント配線板としてのテストボートとの間の電気的接触も半田付けによらないので、アダプタソケット自体の交換も容易に行うことが可能となる。さらに、アダプタソケットへのICソケットの装着も容易である。
【0052】
以上、本明細書では、ICパッケージなどの半導体デバイスを搭載するICソケットに対して使用されるアダプタソケットとして説明したが、当該アダプタソケットは、SIP(Single Inline Package)、DIP(Dual Inline Package)、PGA(Pin Grid Array Package)などの半導体デバイスを直接搭載するソケットとしても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ICソケット及びアダプタソケットがテストボードに実装された概略側面図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るアダプタソケットの上面図である。
【図3】図2に示すアダプタソケットの概略断面図であり、(a)は、図2のアダプタソケットのX−X断面図であり、(b)は、(a)の要部拡大断面図である。
【図4】図2に示すアダプタソケットの概略断面図であり、(a)は、図2のアダプタソケットのY−Y断面図であり、(b)は、(a)の要部拡大断面図である。
【図5】図2のアダプタソケットに用いられるコンタクトの拡大斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係るアダプタソケットの図3(b)と同様の要部拡大断面図である。
【図7】図6のアダプタソケットに用いられるコンタクトの拡大斜視図であり、(a)は、プランジャを示し、(b)は、端子部としてのコイルバネユニットを示す。
【符号の説明】
【0054】
1 ICソケット
10 ソケットカバー
20 ソケット本体
30 ICソケットのコンタクト
40、80 アダプタソケット
41、81 第1の絶縁基板
42、82 第2の絶縁基板
45、85 アダプタソケット用コンタクト
46、86 接触子
48、88 コイルバネ
50 プリント配線板(テストボード)
60 固定具
70 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁基板、該第1の絶縁基板の下に配置される第2の絶縁基板及び複数の接触子を備え、
前記複数の接触子は、前記第1の絶縁基板と前記第2の絶縁基板との間にコイルバネを介して上下動可能に配置されていることを特徴とするアダプタソケット。
【請求項2】
前記接触子は、一対の接点部、一対の弾性変形部、幅広の鍔部及び端子部を含み、
前記コイルバネは、幅広の鍔部を介して前記接触子を下方に付勢し、
前記第1の絶縁基板には、前記接触子の一対の接点部が配置されるスリットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアダプタソケット。
【請求項3】
前記スリットは、複数組の前記接触子の一対の接点部を収容できることを特徴とする請求項2に記載のアダプタソケット。
【請求項4】
前記接触子は、幅広の1つの接点部及び一対の弾性変形可能な脚部を含み、
前記コイルバネは、前記幅広の1つの接点部を介して前記接触子を上方に付勢し、
前記コイルバネの下方はテーパ部を含む密着巻き部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のアダプタソケット。
【請求項5】
前記接触子は、金属板をプレス加工により打ち抜かれることで作製されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のアダプタソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−48576(P2007−48576A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231359(P2005−231359)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】