説明

アダプタ装置、データ伝送システム

【課題】メモリカードからのデータ読出および/または書込を効率的に実行する。
【解決手段】本発明のアダプタ装置は、複数の通信速度でメモリカード200と通信して、その応答の有無を検出することで、メモリカード200の種別を判定する機能をもつ。通信速度設定部322は、メモリカード200との間で複数の通信速度を設定する機能をもち、応答判定部328は、種別判定信号に対する応答があったか否かを判定する。種別判定部330は、通信速度設定部322により設定された通信速度と、その通信速度で送信された種別判定信号に対する応答の有無から、メモリカード200の種別を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリカードなどの記憶媒体を装着することができるアダプタ装置に関し、さらにホスト装置がアダプタ装置を介して記憶媒体に対してデータの読出および/または書込を実行するデータ伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
集積技術などの急速な進歩により、各種の情報処理装置のハードウェアスペックが短いサイクルで大幅にリニューアルされるのが一般となっている。特にゲーム業界では、その流れが顕著であり、ゲームアプリケーションを実行するだけでなく、通常のパーソナルコンピュータに匹敵する多様なアプリケーション処理機能を有するゲーム装置の登場も期待されている。このようなゲーム装置は、様々な場面においてユーザの生活に密接に結びついた利用態様が想定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ゲーム装置やパーソナルコンピュータなどの情報処理装置では、データを保存するために外部記憶媒体であるメモリカードなどが利用されることがある。従前の機種にはメモリカードのスロットが存在していたにもかかわらず、新機種にメモリカードのスロットが搭載されないような場合、新機種においても従前の機種でセーブしていたデータを使えるようにするために、メモリカードのデータを新機種の情報処理装置に転送できるアダプタ装置の開発が望まれる。
【0004】
クロック周波数などのプロトコル仕様の異なる複数種類のメモリカードが存在する場合、情報処理装置は、各種のメモリカードに対して、データの読出および/または書込を実行できることが好ましい。また、データの転送処理は効率的に短時間で実行されることが好ましい。
【0005】
そこで本発明は、メモリカードなどの記憶媒体に対してデータの読出および/または書込を効果的に実行する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のアダプタ装置は、記憶媒体の端子と電気的に接続するための第1コネクタと、ホスト装置と電気的に接続するための第2コネクタと、記憶媒体とホスト装置との間のデータ転送を制御する処理部とを備え、処理部は、複数の通信速度で記憶媒体と通信して、その応答の有無を検出することで、記憶媒体の種別を周期的に判定する機能をもつ。
【0007】
本発明の別の態様もまた、アダプタ装置である。この装置は、記憶媒体の端子と電気的に接続するためのコネクタと、ホスト装置と通信する通信部と、記憶媒体とホスト装置との間のデータ転送を制御する処理部とを備え、処理部は、複数の通信速度で記憶媒体と通信して、その応答の有無を検出することで、記憶媒体の種別を周期的に判定する機能をもつ。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、データ伝送システムである。このデータ伝送システムは、アダプタ装置に装着された記憶媒体に対してデータの読出および/または書込を実行する機能をもつホスト装置を備える。ホスト装置は、接続している外部端末がアダプタ装置であることが判定されたときに、アダプタ装置に対して、記憶媒体に関する情報の送信を要求する媒体情報要求部を有する。アダプタ装置は、ホスト装置から情報送信要求を受け付ける受付部と、少なくとも1つの通信速度で記憶媒体と通信してその応答の有無を検出し、応答があった場合には装着されている記憶媒体の種別を判定し、複数の通信速度での通信に対して応答がなかった場合には記憶媒体が未装着であることを判定する判定処理を所定の周期で実行する判定処理部とを有する。判定処理部は、受付部において情報送信要求を受け付けた後、判定処理結果をホスト装置に送出する。
【0009】
本発明のさらに別の態様もまた、データ伝送システムである。このデータ伝送システムは、アダプタ装置に装着された記憶媒体に対してデータの読出および/または書込を実行する機能をもつホスト装置を備えたデータ伝送システムであって、ホスト装置は、記憶媒体に対してデータの読出を指示する読出制御部を有する。アダプタ装置は、ホスト装置から読出指示を受け付ける受付部と、読出指示に対応付けられた複数のコマンドを保持する保持部と、記憶媒体に、保持部に保持された複数のコマンドを順次送出するコマンド実行部とを有する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアダプタ装置およびデータ伝送システムによると、メモリカードなどの記憶媒体に対してデータの読出および/または書込を効果的に実行する技術を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施例にかかるゲームシステムの使用環境を示す。ゲームシステム1は、メモリカード200を装着するアダプタ装置100と、アダプタ装置100を介してメモリカード200に対してデータの読出および/または書込を実行する機能をもつゲーム装置10と、ゲーム装置10における処理結果を出力する出力装置20とを備える。出力装置20は、画像を出力する画像出力部と音声を出力する音声出力部とを有するテレビであってよい。
【0013】
ゲーム装置10は、ゲームアプリケーションを処理して、ゲームアプリケーションの処理結果を示す画像信号および音声信号を生成する情報処理装置である。なお、本実施例に示す技術は、ゲームアプリケーションに限らず、他の種類のアプリケーションを実行する処理装置を備えたシステムにおいても実現できる。ゲーム装置10は、複数のUSB(Universal Serial Bus)ポート12a、12b、12c、12d(以下、代表する場合は、「USBポート12」とよぶ)を有して構成される。
【0014】
アダプタ装置100は、前面に挿入口102を設けられ、背面にUSBポートを設けられる。開口部が挿入口102から連続して背面側に向かって形成され、開口部には、メモリカード200の端子に接続するコネクタが形成される。メモリカード200が、その端子を挿入端として挿入口102から開口部に挿入されると、メモリカード200の端子と開口部におけるコネクタとが電気的に接続される。
【0015】
アダプタ装置100とゲーム装置10は、USBケーブル30の両端の端子がアダプタ装置100背面のUSBポートとゲーム装置10のUSBポート12に差し込まれることで接続される。アダプタ装置100は、メモリカード200との通信プロトコルと、USBの通信プロトコルとを変換する機能をもち、メモリカード200とゲーム装置10との間でのデータの読出および/または書込を可能とさせる。ゲームシステム1において、ゲーム装置10は親機(ホスト)として動作し、アダプタ装置100は子機(ノード)として動作する。
【0016】
たとえばゲームシステム1において、ゲーム装置10は、ハードウェアスペックをリニューアルした新機種であり、メモリカード200は、それ以前の機種において使用されていた外部記憶媒体であってよい。メモリカード200には、ゲームのセーブデータが記憶されていて、ゲーム装置10は、ハードディスクなどの大容量記憶装置にメモリカード200のデータを転送することで、ユーザは、ゲームアプリケーションを従前の機種でセーブした状態から再開できる。
【0017】
ゲームシステム1において、ゲーム装置10とアダプタ装置100とがUSBケーブル30により接続されているが、他のバス規格をサポートするケーブルで接続されてもよく、また無線LAN(Local Area Network)などで無線接続されてもよい。いずれのインタフェースであっても、アダプタ装置100は、メモリカード200とゲーム装置10との間の通信を可能とするように、それぞれの通信プロトコルをサポートして変換する役割を果たす。
【0018】
また、ゲームシステム1では、外部記憶媒体として薄型のメモリカード200を示したが、他の形状の記憶媒体であってもよい。また、記憶媒体の種類としてはフラッシュメモリが代表的であるが、他の種類の媒体であってもよい。
【0019】
図1には、ゲームアプリケーションを実行するゲームシステム1を示したが、他のアプリケーションを実行するシステムであってもよい。本実施例では、アダプタ装置100に装着された記憶媒体に対してデータの読出および/または書込を実行する機能をもつホスト装置を備えたデータ伝送システムが提供され、このデータ伝送システムの一例としてゲームシステム1が示されている。
【0020】
図2(a)は、アダプタ装置100の前面側の外観構成を示す。アダプタ装置100の前面には、メモリカード200を挿入する挿入口102が設けられ、アダプタ装置100の筐体内部には、メモリカード200を収容する開口部104と、収容されたメモリカード200の端子と電気的に接続するメモリカードコネクタ106とが設けられる。
【0021】
図2(b)は、アダプタ装置100の背面側の外観構成を示す。アダプタ装置100の背面には、USBケーブル30の端子が差し込まれるUSBポート108が設けられる。USBポート108には、USBケーブル30の端子と接続するUSBコネクタ110が設けられる。
【0022】
図3は、アダプタ装置100のハードウェア構成を示す。アダプタ装置100は、2本の電源線(VBUS,GND(図示省略))で供給される5V電圧を3.5Vに降圧するレギュレータ112と、メモリカード200とゲーム装置10との間のデータ転送を制御するマイクロコンピュータ300を備える。マイクロコンピュータ300およびメモリカード200は、レギュレータ112で生成される3.5V電圧により駆動される。SWC線は、メモリカード200への電源供給の制御線であり、たとえばゲーム装置10がサスペンド状態に入ったときには、消費電流削減のためメモリカード200への電源供給を停止する。
【0023】
マイクロコンピュータ300は、CPU(Central Processing Unit)を含んだ処理部として機能し、またゲーム装置10およびメモリカード200のそれぞれとの入出力インタフェースやメモリを有して構成される。本実施例において、マイクロコンピュータ300は、複数の通信速度でメモリカード200と通信して、その応答の有無を検出することで、メモリカード200の種別を判定する機能をもつ。ゲーム装置10とマイクロコンピュータ300の間では、2本の差動信号線(D+,D−)でデータの転送が行われる。
【0024】
DTR線は、マイクロコンピュータ300がメモリカード200にデータ転送を要求する制御線である。SCK線は、DTR線からの制御信号により定められるデータ転送期間中のデータ転送タイミングを定める制御線である。SCK線で供給されるクロックに同期して、マイクロコンピュータ300は、メモリカード200に対してTXD線でデータを送信し、また、メモリカード200は、マイクロコンピュータ300に対してRXD線でデータを送信する。TXD線およびRXD線は、データを転送するための信号線である。メモリカード200は、マイクロコンピュータ300からの信号を受信すると、受信したことを示すACK信号をDSR線で返信する。
【0025】
本実施例のゲームシステム1では、アダプタ装置100に対して複数種類のメモリカード200が装着される可能性が存在するケースを想定する。たとえば、ゲーム装置のハードウェアスペックが数年ごとにバージョンアップして、複数世代のゲーム装置が世の中に流通しているような場合に、それぞれの世代のゲーム装置の通信速度(ボーレート)に合わせて、メモリカードが作製されていたようなケースである。そのため、アダプタ装置100がメモリカード200と通信するためには、そのメモリカード200の種別を判定して通信特性を認識した上で、そのメモリカード200の通信特性に合わせた通信を行う必要がある。
【0026】
図4は、アダプタ装置100とメモリカード200の間の通信のタイミングチャートを示す。DTR線で供給される制御信号がオン(ハイからロー)になると、アダプタ装置100とメモリカード200との間で通信可能な状態となり、SCK線で供給されるクロックに同期して、アダプタ装置100はメモリカード200にTXD線で信号を送り、メモリカード200はアダプタ装置100にRXD線で信号を送る。メモリカード200は、アダプタ装置100からの信号を受信すると、DSR線でACK信号を返信する。
【0027】
図4のタイミングチャートに示す通信を可能とするためには、上記したように、アダプタ装置100が、メモリカード200の種別を判定して、通信速度を含めた通信プロトコルを知る必要がある。以下に、アダプタ装置100がメモリカード200の種別を判定して、メモリカード200との間で効率的なデータ転送処理を実現する構成を示す。
【0028】
図5は、ゲーム装置10およびマイクロコンピュータ300の内部構成を示す。ゲーム装置10は、ホスト側処理部40および通信部52を備え、ホスト側処理部40は、USB制御部42、媒体情報要求部44、媒体情報取得部46、データ読出/書込制御部48および画像処理部50を有する。これらの機能は、CPU、メモリ、メモリにロードされたプログラムなどによって実現され、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。プログラムは、ゲーム装置10に内蔵されていてもよい。したがってこれらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者に理解されるところである。
【0029】
マイクロコンピュータ300は、アダプタ側処理部310、通信部312、314を備え、アダプタ側処理部310は、受付部316、制御部318、判定処理部320、コマンド実行部340、転送部342および保持部344を有する。判定処理部320は、通信速度設定部322、判定信号送出部324、応答信号取得部326、応答判定部328、種別判定部330および媒体情報送出部332を有する。制御部318は、マイクロコンピュータ300における処理を統括的に管理する。既述したように、マイクロコンピュータ300は、CPU、メモリ、通信インタフェースなどによって構成され、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。これらの機能はメモリにロードされたプログラムによって実現されてもよい。
【0030】
ゲーム装置10の通信部52と、マイクロコンピュータ300の通信部312とは、USBケーブル30によってUSB規格で接続される。また、マイクロコンピュータ300の通信部314は、メモリカード200と所定の通信規格で接続される。各通信部52、312、314は、接続先に対して信号を送信する送信部および信号を受信する受信部として機能する。なお、以下の説明において、通信部以外の構成が信号(データ)を送信または受信する旨の記載は、実際には、通信部を介して送信または受信されることを意味している。
【0031】
(1)ゲーム装置10およびアダプタ装置100間の接続検出処理
ゲーム装置10とアダプタ装置100とがUSBケーブル30により接続されると、ホスト側処理部40におけるUSB制御部42が、USB規格に準拠した初期化処理を実行する。
【0032】
USB制御部42は、アダプタ装置100が接続されたことを検出すると、ディスクリプタ情報の読出要求をアダプタ装置100に送信する。受付部316がディスクリプタ読出要求を受け付けると、制御部318が、保持部344からディスクリプタ情報を読み出し、ゲーム装置10に送信する。USB規格において、ディスクリプタは、ノード端末の特性や属性などを含んだ情報を指し、デバイスディスクリプタ、コンフィグレーションディスクリプタ、インタフェースディスクリプタ、エンドポイントディスクリプタなどの種類がある。USB制御部42がディスクリプタ情報を取得すると、接続しているノード端末がアダプタ装置100であることが判定され、ゲーム装置10とアダプタ装置100との間で通信を開始できる。
【0033】
(2)記憶媒体の種別判定処理
ゲーム装置10とアダプタ装置100との間で通信が可能になると、媒体情報要求部44は、アダプタ装置100に対して、記憶媒体に関する情報の送信を要求する。媒体情報要求部44は、USB制御部42によりアダプタ装置100との間の通信が可能となった直後に、この情報送信要求をアダプタ装置100に送信する。これにより、アダプタ装置100に記憶媒体が装着されている場合には、媒体情報取得部46が、装着されていることを示す情報を取得することで、たとえば出力装置20の画面に、記憶媒体が接続されていることを示す情報(アイコン)を表示できる。また、アダプタ装置100に記憶媒体が装着されていない場合には、媒体情報取得部46が、装着されていないことを示す情報を取得することで、出力装置20の画面に、そのようなアイコンを表示させない。このように、ゲーム装置10とアダプタ装置100との通信を開始した直後に、媒体情報取得部46が、記憶媒体の存在の有無を示す情報を取得できることで、出力装置20の画面に記憶媒体が存在していることを示す情報をすぐに表示できる。
【0034】
ゲーム装置10から電源が供給されると、制御部318は、判定処理部320に、記憶媒体の種別判定処理を開始させる。記憶媒体の種別判定処理では、判定処理部320が、少なくとも1つの通信速度でメモリカード200と通信してその応答の有無を検出し、応答があった場合には装着されているメモリカード200の種別を判定し、複数の通信速度での通信に対して応答がなかった場合にはメモリカード200が未装着であることを判定する。この判定処理は、電源供給を受けた時点から、所定の周期で繰り返し実行され、判定処理結果は保持部344に保持される。
【0035】
受付部316が情報送信要求を受け付けると、制御部318は、判定処理部320に、情報送信要求を受けた時点の判定処理結果をゲーム装置10に送信させる。送信される判定処理結果は、情報送信要求を受信する直前に保持部344に保持されているものであってもよく、また情報送信要求を受信した直後に判定処理された結果であってもよい。なお判定処理部320は、情報送信要求を受けた時点の判定結果をゲーム装置10に送信した後は、メモリカード200の装着状態の変化を検出したときにのみ、その検出結果をゲーム装置10に送信するようにする。装着状態に変化がある場合とは、たとえば装着していたメモリカード200が抜かれたり、また、メモリカード200が装着された場合である。
【0036】
記憶媒体の1周期の種別判定処理を具体的に説明する。なお、種別判定処理の実行周期は、たとえば100m秒であり、種別判定にかかる時間は、たとえば数m秒から数十m秒程度である。
【0037】
まず、通信速度設定部322が、メモリカード200との間の通信速度を設定する。通信速度設定部322は、通信速度として第1通信速度と第2通信速度を設定する機能を有している。第1通信速度は、第2通信速度よりも速いものとする。通信部314は、通信速度設定部322により設定された通信速度で、メモリカード200との間の通信を行う。判定信号送出部324が、所期の種別判定信号を通信部314に送出すると、通信部314が、種別判定信号を、設定された通信速度でメモリカード200に送信する。
【0038】
図4に示したように、メモリカード200は、TXD線経由で送信される信号を受信すると、DSR線からACK信号をアダプタ装置100に返信する。応答信号取得部326は、メモリカード200からの応答(ACK)信号を取得する機能をもつ。このとき、メモリカード200がTXD線で送信された信号を受信できなければ、当然のことながら応答信号を返信できない。メモリカード200が高速通信を可能とする仕様をもつ場合に、低速で送信される種別判定信号に応答できる可能性はあるが、低速通信しかできない仕様の場合には、高速で送信される種別判定信号に応答することはできない。判定処理部320は、この通信特性を利用して、簡易な構成でメモリカード200の媒体種別を判定する。
【0039】
応答判定部328は、応答信号取得部326において応答信号を取得したか否かを判定する。種別判定部330は、応答判定部328における判定結果により、メモリカード200の種別を判定する。具体的に種別判定部330は、通信速度設定部322により設定された通信速度と、その通信速度で送信された種別判定信号に対する応答の有無から、メモリカード200の種別を特定する。
【0040】
図6は、媒体種別の判定処理のフローチャートである。まず通信速度設定部322が、通信速度を第1通信速度に設定して、通信部314が、第1通信速度で種別判定信号を送信する(S10)。応答判定部328は、応答信号取得部326において応答信号が取得されるか否かを監視し(S12)、応答があった場合は(S12のY)、種別判定部330が、メモリカード200の種別を第1タイプと判定する(S18)。メモリカード200の第1タイプは、高速通信を可能とするメモリカードである。種別判定部330によりメモリカード200の種別が第1タイプと特定されると、通信速度設定部322は、メモリカード200との間の通信速度を第1通信速度に固定して、以後の通信処理を通信部314に実行させる。
【0041】
応答がなかった場合は(S12のN)、通信速度設定部322が、通信速度を第1通信速度よりも遅い第2通信速度に切り替えて設定し、通信部314が、第2通信速度で種別判定信号を送信する(S14)。応答判定部328は、応答信号取得部326において応答信号が取得されるか否かを監視し(S16)、応答があった場合は(S16のY)、種別判定部330が、メモリカード200の種別を第2タイプと判定する(S20)。メモリカード200の第2タイプは、低速での通信しかできないメモリカードである。種別判定部330によりメモリカード200の種別が第2タイプと特定されると、通信速度設定部322は、メモリカード200との間の通信速度を第2通信速度に固定して、以後の通信処理を通信部314に実行させる。一方、応答がなかった場合は(S16のN)、種別判定部330が、メモリカード200がメモリカードコネクタ106に接続されていないことを判定する(S22)。このように、応答判定部328が、通信速度設定部322により設定された全ての通信速度で送信した種別判定信号に対する応答がなかったことを判定した場合、種別判定部330は、メモリカード200が未装着であることを判定する。
【0042】
先に第2通信速度よりも速い第1通信速度で種別判定信号を送信する(S10)ことで、この媒体種別判定処理の時間を短縮できる可能性がある。たとえば、第2通信速度による送信を先に行うと、第1タイプおよび第2タイプの双方のメモリカードが、種別判定信号に応答する可能性がある。そのため、第2通信速度による媒体種別判定処理では、メモリカード200が装着されていることは判明するものの、そのメモリカード200がいずれのタイプであるかを特定することはできない。したがって、第1通信速度による媒体種別判定処理を先に実行することで、装着されたメモリカードが第1タイプの場合に、すぐに特定することができ、第2通信速度による媒体種別判定処理を実行しないで済む利点がある。
【0043】
以上の媒体種別判定処理は、制御部318により所定の周期(たとえば100m秒)で実行される。媒体情報送出部332は、種別判定部330による判定結果をゲーム装置10に送信する。なお媒体情報送出部332は、ゲーム装置10から情報送信要求を受けた時点の判定結果をゲーム装置10に送信した後は、メモリカード200の装着状態に変化が生じたときに限って、種別判定部330による判定結果をゲーム装置10に送信する。これにより、ゲーム装置10とアダプタ装置100との間で転送するデータ量を少なくすることができる。媒体情報送出部332より送信された情報は、媒体情報取得部46により取得される。媒体情報取得部46は、装着されているメモリカード200の種類を画像処理部50に通知し、画像処理部50は、どのタイプのメモリカード200が装着されているかを示すアイコンを出力装置20に表示する。
【0044】
媒体情報要求部44は、情報送信要求を1度送信した後は、同じアダプタ装置100に対して情報送信要求を送信しなくてよい。これにより、ホスト側処理部40は、メモリカード200の装着状態に変化があったときだけ媒体情報を取得でき、余計な信号のやりとりをマイクロコンピュータ300との間でしなくてすむため、処理負荷を軽減できる。
【0045】
なお、制御部318は、メモリカード200とゲーム装置10との間で通信が行われている間は、媒体種別判定処理を実行しない。制御部318は、メモリカード200とゲーム装置10との間の通信状況を監視し、たとえば連続して100m秒の無通信期間がある場合には、通信していないと判断して、媒体種別判定処理を実行する。一方、無通信期間が100m秒に満たない場合には、通信速度設定部322により設定した通信速度で、メモリカード200とアダプタ装置100の間の通信を継続して実行させる。ここで、メモリカード200とアダプタ装置100との間の通信が行われている状態とは、たとえばメモリカード200のデータをアダプタ装置100に転送しているような状態である。以下に、メモリカード200からのデータ読出処理について説明する。
【0046】
(3)メモリカード200からのデータ読出処理
データ読出/書込制御部48が、メモリカード200に対してデータの読出および/または書込を制御する。データ転送は、ページと呼ばれる所定のデータ単位(ブロック)で実行されるが、ページを読み出すときには、複数のコマンドを用意する必要がある。
【0047】
図7(a)は、ページを読み出すときに必要なBlock_Readコマンドセットの一例を示す。Read_Startコマンドは、メモリカード200のアドレスを指定するコマンドであり、Page_Readコマンドは、指定したアドレスからデータを読み出すコマンドであり、Read_Endコマンドは、ページ読出処理の終了を指示するコマンドである。この例では、ページリードを実行させるために、7つのコマンドが必要となる。
【0048】
データ読出/書込制御部48がメモリカード200からページを読み出す際、図7(a)に示すように7つのコマンドをUSBケーブル30を介して送信すると、コマンドの転送に時間がかかるという問題がある。そこでゲームシステム1では、保持部344が、Block_Readコマンドセットを予め保持しておき、データ読出/書込制御部48は、1つのBlock_Readコマンドをアダプタ装置100に送れば、アダプタ装置100がページリード処理を実行できるように構成した。
【0049】
図7(b)は、保持部344において保持されるコマンドの対応表である。この対応表では、Block_Readコマンドに対して、Read_Startコマンド、5つのPage_Readコマンド、Read_Endコマンドがこの順に対応付けられている。
【0050】
データ読出/書込制御部48が、Block_Readコマンドにより、メモリカード200に対してデータのページ読出しを指示する。受付部316が、Block_Readコマンドを受け付けると、コマンド実行部340が、保持部344から図7(b)に示した対応表を参照して、Block_Readコマンドに対応付けられた7つのコマンドを読み出す。コマンド実行部340は、読み出した順にしたがって、各コマンドをメモリカード200に順次送出し、ページ読出処理を実行する。メモリカード200から読み出されたデータは、転送部342によりデータ読出/書込制御部48に転送される。このページ読出処理によると、ゲーム装置10からアダプタ装置100に1つのBlock_Readコマンドを送信するだけで、アダプタ装置100が複数のコマンドを実行することができ、ゲーム装置10からアダプタ装置100にコマンドセットを送信する必要がなく、データの転送時間を短縮できる。なお、このコマンドは、Block_Readコマンドに限らず、他の種類のコマンドに利用してもよい。
【0051】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0052】
たとえば、実施例では、記憶媒体の種別として2種類の場合を示したが、3種類以上であってもよい。また、記憶媒体の種別が複数存在する理由として、同種のゲーム装置10におけるバージョンの相違を示したが、異種の情報処理装置において複数種類の記憶媒体が存在することもある。また、実施例では、メモリカード200からのデータの読出について説明したが、データの書込についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例にかかるゲームシステムの使用環境を示す図である。
【図2】(a)はアダプタ装置の前面側の外観構成を示す図であり、(b)はアダプタ装置の背面側の外観構成を示す図である。
【図3】アダプタ装置のハードウェア構成を示す図である。
【図4】アダプタ装置とメモリカードの間の通信のタイミングチャートを示す図である。
【図5】ゲーム装置およびマイクロコンピュータの内部構成を示す図である。
【図6】媒体種別の判定処理のフローチャートである。
【図7】(a)はBlock_Readコマンドセットの一例を示す図であり、(b)は保持部において保持されるコマンドの対応表を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・ゲームシステム、10・・・ゲーム装置、12・・・USBポート、20・・・出力装置、30・・・USBケーブル、40・・・ホスト側処理部、42・・・USB制御部、44・・・媒体情報要求部、46・・・媒体情報取得部、48・・・データ読出/書込制御部、50・・・画像処理部、52・・・通信部、100・・・アダプタ装置、102・・・挿入口、104・・・開口部、106・・・メモリカードコネクタ、108・・・USBポート、110・・・USBコネクタ、112・・・レギュレータ、200・・・メモリカード、300・・・マイクロコンピュータ、310・・・アダプタ側処理部、312・・・通信部、314・・・通信部、316・・・受付部、318・・・制御部、320・・・判定処理部、322・・・通信速度設定部、324・・・判定信号送出部、326・・・応答信号取得部、328・・・応答判定部、330・・・種別判定部、332・・・媒体情報送出部、340・・・コマンド実行部、342・・・転送部、344・・・保持部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体の端子と電気的に接続するための第1コネクタと、
ホスト装置と電気的に接続するための第2コネクタと、
記憶媒体とホスト装置との間のデータ転送を制御する処理部と、を備えたアダプタ装置であって、
前記処理部は、複数の通信速度で記憶媒体と通信して、その応答の有無を検出することで、記憶媒体の種別を周期的に判定する機能をもつことを特徴とするアダプタ装置。
【請求項2】
記憶媒体の端子と電気的に接続するためのコネクタと、
ホスト装置と通信する通信部と、
記憶媒体とホスト装置との間のデータ転送を制御する処理部と、を備えたアダプタ装置であって、
前記処理部は、複数の通信速度で記憶媒体と通信して、その応答の有無を検出することで、記憶媒体の種別を周期的に判定する機能をもつことを特徴とするアダプタ装置。
【請求項3】
前記処理部は、
記憶媒体との間の通信速度を設定する通信速度設定部と、
設定された通信速度で記憶媒体に所期の信号を送信する送信部と、
前記所期の信号に対する応答があったか否かを判定する応答判定部と、
前記応答判定部における判定結果により、記憶媒体の種別または記憶媒体の未装着を判定する種別判定部と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のアダプタ装置。
【請求項4】
ホスト装置から、記憶媒体に関する情報の送信要求を受け付ける受付部をさらに備え、
前記処理部は、ホスト装置から情報送信要求を受けた時点の媒体種別の判定結果を前記ホスト装置に送信した後は、前記種別判定部が記憶媒体の装着状態の変化を検出したときに、その検出結果を前記ホスト装置に送信することを特徴とする請求項3に記載のアダプタ装置。
【請求項5】
前記通信速度設定部は、通信速度として第1通信速度と第2通信速度を設定する機能を有しており、
前記応答判定部が、第1通信速度で送信した所期の信号に対する応答がなかったことを判定した場合、前記通信速度設定部は、通信速度を第2通信速度に切り替えることを特徴とする請求項3または4に記載のアダプタ装置。
【請求項6】
前記応答判定部が、前記通信速度設定部により設定された全ての通信速度で送信した所期の信号に対する応答がなかったことを判定した場合、前記種別判定部は、記憶媒体が当該アダプタ装置に接続されていないことを判定することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のアダプタ装置。
【請求項7】
ホスト装置から、所期の指示を受け付ける受付部と、
前記所期の指示に対応付けられた複数のコマンドを保持する保持部と、
前記記憶媒体に、前記保持部に保持された複数のコマンドを順次送出するコマンド実行部とを有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のアダプタ装置。
【請求項8】
アダプタ装置に装着された記憶媒体に対してデータの読出および/または書込を実行する機能をもつホスト装置を備えたデータ伝送システムであって、
前記ホスト装置は、
接続している外部端末がアダプタ装置であることが判定されたときに、前記アダプタ装置に対して、記憶媒体に関する情報の送信を要求する媒体情報要求部を有し、
前記アダプタ装置は、
前記ホスト装置から情報送信要求を受け付ける受付部と、
少なくとも1つの通信速度で記憶媒体と通信してその応答の有無を検出し、応答があった場合には装着されている記憶媒体の種別を判定し、複数の通信速度での通信に対して応答がなかった場合には記憶媒体が未装着であることを判定する判定処理を所定の周期で実行する判定処理部とを有し、
前記判定処理部は、前記受付部において情報送信要求を受け付けた後、判定処理結果を前記ホスト装置に送出することを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項9】
前記判定処理部は、前記情報送信要求を受けた時点の判定処理結果を前記ホスト装置に送信した後は、記憶媒体の装着状態の変化を検出したときに、その検出結果を前記ホスト装置に送信することを特徴とする請求項8に記載のデータ伝送システム。
【請求項10】
アダプタ装置に装着された記憶媒体に対してデータの読出および/または書込を実行する機能をもつホスト装置を備えたデータ伝送システムであって、
前記ホスト装置は、
前記記憶媒体に対してデータの読出を指示する読出制御部を有し、
前記アダプタ装置は、
前記ホスト装置から読出指示を受け付ける受付部と、
前記読出指示に対応付けられた複数のコマンドを保持する保持部と、
前記記憶媒体に、前記保持部に保持された複数のコマンドを順次送出するコマンド実行部とを有することを特徴とするデータ伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−77359(P2008−77359A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255012(P2006−255012)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(395015319)株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (871)
【Fターム(参考)】