説明

アブレシブ単結晶タービン翼

【課題】高い酸化安定性及び摩擦摩耗安定性によって際立つアブレシブ単結晶タービン翼を提供する。
【解決手段】翼端3を有し、且つ(ローターに対して)半径方向rに延びる単結晶基体4を備えた、タービン翼1の翼端3にエピタキシャル結合されている耐酸化性の中間コーティングの特定領域に、砥粒が埋め込まれた耐酸化性バインダー材料からなり、レーザ金属成形が適用された耐磨耗性、耐酸化性のコーティングを配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジニアリング科学及び材料科学の分野を扱う。本発明は、高い耐酸化性及び耐摩擦摩耗性を有するアブレシブ単結晶タービン翼(abrasive single-crystal turbine blade)並びにそのようなアブレシブ単結晶タービン翼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タービン内での漏れ損失の低減は、数十年来の集約的な技術革新の主題である。ガスタービンの運転中、ローターとケーシングとの相対運動は不可避である。結果生じるケーシング又は翼の摩耗により、シール作用がもはや働かなくなる。この問題の解決策として、熱シールド上の研磨除去可能な厚いコーティングと翼端のアブレシブ保護コーティングとの組み合わせが準備される。
【0003】
付加的なコーティングを翼端に適用するか又は該翼端の適した変性によって耐摩耗性を高める方法が、既に1970年代から公知である。同様に、そのような保護コーティングを、砥粒(炭化物、窒化物等)と耐酸化性材料との組み合わせによって、摩擦接触及び高温ガスによって引き起こされる酸化に対して同時に安定化させるための様々な方法が提案されている。しかしながら、提案された方法の多くは、製造の点で費用が掛かり、且つ煩雑でもあることから、商業的な使用を難しくしている。なかでもこれは、これらの方法を単結晶タービン翼に適用する場合にも該当する。この場合、基材の特別な単結晶微細構造によって製造プロセスに付加的な要求が課される。殊に、アブレシブ翼端の製造によって該タービン翼の基体が受ける影響は出来る限り小さくなくてはならない。これは該翼の基体との境界面の欠陥を回避することを含んでいる。
【0004】
それゆえ一般的に行われている対策の一つは、該翼端の摩耗保護を完全に省き、そして熱シールドに特別な多孔質セラミックラビングコーティング(rub-in coatings)を付与することである。それらの高い多孔性に基づき、これらは保護されていない翼端によってもある程度までラビングされ得る。しかしながら、この方法は相当の技術的な危険性を伴っている。なぜなら、該多孔質セラミックラビングコーティングは、緻密なコーティングと同じ耐食性を保証しないからである。更なる危険性は、減摩特性に悪影響を及ぼし得る、該多孔質セラミックラビングコーティングの運転条件下での変形(焼結による圧縮化)にある。このために、熱シールド上にセラミック保護コーティングを使用する場合、耐摩耗性(アブレシブ性)翼端との組み合わせが適している。
【0005】
アブレシブコーティングを有するタービン翼は、1960年代から公知である。ここ数十年において、アブレシブ翼端を製造するための多数の方法が開発されており、また数多くの特許によって保護されている(例えばUS6194086B1を参照のこと)。たしかに、アブレシブ翼端を形成するためのレーザー金属成形(LMF)の使用は1990年代初頭から公知であるけれども(例えばDE102004059904A1を参照のこと)、それでも、この方法は工業的規模で用いられることは依然として稀である。
【0006】
EP1295969A1及びEP1295970A1には、比較的大面積の酸化保護コーティングとして、単結晶基材に可能な限り最適な形で使用されるMCrAlY材料が開示される。
【0007】
同様に、単結晶成分の制御された再溶融又は金属成形のための(エピタキシャル)E−LMF法も公知である(EP1476272B1)。
【0008】
しかしながら、単結晶基材上にエピタキシャル凝固された中間コーティングを有するアブレシブ保護コーティングの製造はこれまで公知ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US6194086B1
【特許文献2】DE102004059904A1
【特許文献3】EP1295969A1
【特許文献4】EP1295970A1
【特許文献5】EP1476272B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の欠点を回避することである。本発明が基礎とする課題は、高い酸化安定性及び摩擦摩耗安定性によって際立つアブレシブ単結晶タービン翼を開発することであり、その際、該翼素材の単結晶性質からもたらされる処理条件に特に注意が払われる。同様に、本発明は、単結晶成分をリコンディショニング又はレトロフィッティングする適用法も扱う。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、この課題は、翼端を有し、且つ半径方法r(ローターに対して)に延びる単結晶基体を備えた、タービンのローターのタービン翼にて以下の特徴を実現することによって解決される:
− 公知のレーザー金属成形によって適用されており、且つ該基体にエピタキシャル結合されている少なくとも1つの耐酸化性の中間コーティングが、半径方向外側の翼端に配置されていること、及び
− レーザー金属成形によって適用されており、且つ耐酸化性バインダー材料及びその中に埋め込まれた砥粒とから成る少なくとも単層の耐摩耗性及び耐酸化性のコーティングが、少なくとも上記エピタキシャル中間コーティングの特定の領域に配置されていること。
【0012】
このような単結晶タービン翼を製造するための本発明による方法は、半径方向外側の翼端で、少なくとも1つの耐酸化性の中間コーティングが、レーザー金属成形によって該基体の表面にエピタキシャル的に適用されており、且つ、このエピタキシャル中間コーティングの少なくとも特定の領域にレーザー金属成形によって、耐酸化性バインダー材料及びその中に埋め込まれた砥粒とから成る少なくとも単層の耐摩耗性及び耐酸化性のコーティングが適用されていることを特徴としている。好ましくは、溶融池中の温度又は温度分布は、レーザー金属成形法による中間コーティング及び耐摩耗性−及び耐酸化性コーティングの積層の間ずっとオンラインで検出され、このデータは、商Gn/Vs(その際、Gは局所的温度勾配を表し、Vsは凝固フロントの速度を表し、且つnは更なる材料パラメーターを表している)が、指向性の単結晶凝固に必要とされる材料依存性の限界値を上回るように、レーザー金属成形中のレーザー出力及び/又はレーザービームとタービン翼との相対運動を制御するために、制御系を利用することにより用いられることができる。
【0013】
本発明の利点は、単結晶タービン翼が、高い処理温度でもアブレシブ翼端の最適な耐用寿命を伴って実現されることである。ステータ側の適切な接触コーティングとの相互作用において、高温ガス隙間を介した漏れ損失が低減し、且つタービンの効率が上昇する。
【0014】
耐酸化性中間コーティング及び半径方向外側のアブレシブコーティングは、レーザー金属成形によって作製されることが特に好ましい。
【0015】
アブレシブ翼端は、レーザー金属成形(LMF)によって実現される。本発明の本質的な部分は、単結晶タービン翼の使用のために材料及びプロセスに課される特別な要求を考慮に入れることである。この点において、翼体との界面で、まず耐酸化性の単結晶バッファーコーティングが実現され、そして該コーティングはタービン翼の単結晶基体上でエピタキシャル凝固する。次いで、このエピタキシャル結合されたバッファーコーティングに、実際のアブレシブコーティングが適用される。該アブレシブコーティングの本質的な特徴は、耐酸化性マトリックスに砥粒が完全に埋め込まれていることである。更なる特徴は、該アブレシブコーティング中で砥粒が均一に分布していることである。
【0016】
好ましくは、アブレシブ単結晶タービン翼の記載される構成は、新規部材の製造にも、レトロフィットにも、既存の製造プロセスを単に最小限に適合させるだけで使用することができる。
【0017】
更なる好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0018】
例として、エピタキシャル中間コーティングは、γ/β又はγ/γ'型の耐酸化性のMCrAlY合金(本明細書の範囲において、ここでMは、Ni、Co又は両元素の組み合わせを意味する)から製造され、その化学組成は、エピタキシャル凝固に際して、まずγ相が形成され、その後に初めてβ相、もしくはγ'相が形成されるように選択される。
【0019】
上記合金の化学組成を、これがNi−Al−Cr三元系状態図においてγ相中にあり、且つγ−とβ−もしくはγ'相域との共晶界面付近にあるように選択されている場合に好ましい。これはNi/Co−Cr−Al状態図にも当てはまる。なぜなら、Ni及びCoは完全に相溶性であり、すなわちCoは、凝固挙動にではなく、β相安定温度又はβ相割合にしか影響を及ぼさないからである。
【0020】
更に好ましいのは、単結晶基体にエピタキシャル的に適用された中間コーティングが、次の化学組成(質量%記載):Cr 15〜30、Al 5〜10、Y 0.3〜1.2、Si 0.1〜1.2、その他 0〜2、残り Ni、Coを有するγ/β又はγ/γ'型の耐酸化性超合金から成るか又は、次の化学組成(質量%記載):Co 35〜39、Cr 18〜24、Al 7〜9、Y 0.3〜0.8、Si 0.1〜1、その他 0〜2、残り Niを有するγ/β型の耐酸化性超合金から成るか又は、次の化学組成(質量%記載):Cr 18〜26、Al 5〜8、Y 0.3〜1.2、Si 0.1〜1.2、その他 0〜2、残り Ni、Coを有するγ/γ'型の耐酸化性超合金から成る場合である。これらの材料は、特に中間コーティングとして適している。好ましいのは、該材料が、50K未満及び好ましくは30K未満の固相線−と液相線温度ΔT0との凝固間隔を持つ場合である。これにより凝固中に亀裂が形成する危険性が減少する。
【0021】
エピタキシャル中間コーティングは、LMF法による使用のために最適化されている化学組成を有する耐酸化性材料から成る。該材料の組成は、溶融相からの凝固に際して、まずγ相が形成し、且つタービン翼の基体上でエピタキシャル凝固するように選択される。
【0022】
更に、耐酸化性中間コーティング用に使用される材料が、耐摩耗性及び耐酸化性のコーティングにおけるバインダー材料としても使用される場合に好ましい。なぜなら、これは2つのコーティングの共存性を一層改善し、このことが特にそれらの特性に有利に作用するからである。
【0023】
そのうえ、耐摩耗性−及び耐酸化性コーティングにおいて立方晶窒化ホウ素(cBN)を砥粒材料として用いることが適していると判明した。多層の耐摩耗性−及び耐酸化性コーティングの場合、砥粒材料の割合が外側に向かって半径方向rに増加する場合に好ましい。なぜなら、その時、最も外側のコーティングは砥粒材料の最も高い割合を有し、それゆえ最も高い耐摩耗性を有するからである。
【0024】
図面は、本発明の例示的な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一の例示的な実施形態によるガスタービンのローターのタービン翼を示す図
【図2】図1におけるラインII−IIに沿った略断面図を示す図
【図3】本発明の第二の例示的な実施形態によるアブレシブ単結晶タービン翼の製造に際しての製造シーケンスを示す図
【図4】単結晶タービン翼上の、LMF法により作製されたコーティングの組み合わせの写真画像を示す図
【図5】コーティング装置及びE−LMF法の原理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を、例示的な実施形態及び図1〜5に基づいて以下でより詳細に説明する。
【0027】
図1は、ガスタービンの(ここでは概略的にのみ示されている)ローター2のタービン翼1の透視図を示し、他方で、図2には、図1におけるラインII−IIに沿った部分が拡大して表示されている。タービン翼1は、(ローターに対して)半径方向rに延びる単結晶基体4を有し、該基体は、本発明により翼端3にLMFによって適用されたエピタキシャル型の耐酸化性中間コーティング5と、その上に適用された耐摩耗性−及び耐酸化性コーティング6(図2を参照のこと)とを有する。ここで、該コーティング6は、中間コーティング5全体を覆うが、しかし、それは該中間コーティング5を部分的にのみ覆っていることも可能である。翼基体の基材は、例えば単結晶ニッケル基超合金である。この第一の例示的な実施形態において、基体4の表面は、LMF法の使用前には未コーティングのままであった。コーティング5及び6のいずれも、単層又は多層の形態を有してもよい。LMF法によって適用されたコーティング5、6の数によって(もしくは適用された層の数によって)、タービン翼の長さLを簡単に変化させることができる。
【0028】
本発明が基礎とする一つの構想は、アブレシブコーティング6を、単結晶翼基体4上にエピタキシャル凝固される中間コーティング5(バッファーコーティング)上に形成することにある。該エピタキシャル中間層5は、その化学組成がLMF法による使用に最適化されている耐酸化性材料から成る。該材料の組成は、溶融相からの凝固に際して、まずγ相が形成し、且つタービン翼1の基体4上でエピタキシャル凝固するように選択される。
【0029】
該凝固に際しての割れの危険性を低減するために、該材料組成は、固相線温度と液相線温度との凝固間隔が<50K及び好ましくは<30Kとなるように最適化される。
【0030】
エピタキシャル中間コーティング5は、第一の変法において(図1及び2に示される通り)、未コーティングの単結晶タービン翼1の翼端3に直接適用することができる。代替的なアプローチにおいては、該エピタキシャル中間コーティング5は、それが他の既に存在する保護コーティングと少なくとも部分的に重なるように施される。この場合、存在する保護コーティングは、例えば、いわゆるMCrAlYコーティング11(M=Ni、Co又は両元素の組み合わせ)であってよく、該コーティングは、たいていの高負荷タービン翼において、翼主要部の表面を酸化及び腐食から保護する(図3を参照のこと)。更なる第三の変法(図3を参照のこと)においては、翼主要部になお付加的なセラミック遮熱コーティング12(TBC)が存在しており、該コーティングは、その後のアブレシブ翼端を形成によって損傷しない。
【0031】
バインダー7及び中間コーティング5における特にLMF法のために意図されている材料を使用することによって、並びに、好ましくはレーザー出力のオンライン制御による制御されたプロセス実施によって、翼1の単結晶基体4上に耐酸化性中間コーティング5の単結晶エピタキシャル凝固を達成することができる。凝固に際しての割れの危険性は、中間コーティング5及びバインダー7として使用される材料の最適化された組成によって最小限にされる。耐酸化性中間コーティング5と翼主要部に存在していてもよい更なる保護コーティング11、12とを重ねることによって、高温ガスに曝される翼端3のこれらの表面の効果的な保護が保証される。
【0032】
所望の翼長を達成するのに必要な場合、第一の中間コーティング5に耐酸化性材料からの更なる層を適用してよい。実際のアブレシブコーティング6は、エピタキシャル中間コーティング5に直接施されるか、又は耐酸化性材料からの最上層に施されるかのいずれかである。このために、砥粒が耐酸化性のバインダー材料(好ましくは中間コーティング用に使用される材料からなる)と一緒に混合され、且つLMF法によって適用される。ここで、アブレシブコーティング6は、中間コーティング5を完全に覆い隠す必要はなく、単一ストリップとしてか又は単一ストリップ部分の組み合わせ物として形成されていてよい。多層アブレシブコーティング6の場合、砥粒材料8の割合が外側に向かって半径方向rに増加する場合に好ましい。なぜなら、その時、最も外側のコーティング6は砥粒材料8の最も高い割合を有し、それゆえ最も高い耐摩耗性を有するからである。
【0033】
以下の利点を、このコーティングにおいてバインダー材料の最適な選択によって同時に利用することができる:
・割れが起こりにくい
・高い耐酸化性
・良好な湿潤性及び砥粒の封入
【0034】
製造技術に関して、翼主要部の先行する慣例のコーティングに従ったE−LMF法によるアブレシブ性の単結晶翼端の実現は特に興味深い:この製造シーケンスにおいては、既存の製造プロセスは最小限にしか変化される必要がなく、翼主要部へのMCrAlY保護コーティングの適用中にアブレシブコーティングをマスキングしなくても済むことができる。それに従って、部品(タービン翼1)は、アブレシブ翼端の適用直後に更なるその後のステップを実施することなく使用可能である。好ましくは、更なる熱処理無しで済ますことができる。
【0035】
本発明によるアブレシブ単結晶タービン翼1の製造における可能な一製造シーケンスは、図3に示されている。単結晶材料、例えば単結晶N基超合金から成る翼体4の表面には、MCrAlY接着コーティング11が適用されており、該コーティング11には再びセラミック遮熱コーティング(TBC)12が適用されている(図3aを参照のこと)。この例示的な実施形態においてクラウンの形状を持つ半径方向外側の翼端3では、コーティングが機械的及び/又は化学的に除去、例えば研磨除去、切削除去又はエッチング除去されており(図3bを参照のこと)、その結果、この箇所における単結晶基体4の表面には保護コーティングがなく、すなわち、覆い隠されていない。引き続き、本発明によりE−LMF法によって、エピタキシャル凝固された中間コーティング5及びその上にアブレシブコーティング6が適用される。
【0036】
図4は、LMF法により作製された、そのようなアブレシブ単結晶翼端3を例示的に実現した写真画像を示す。ここで、翼端3はクラウン状に形成されている。線源として1000Wの出力を有するファイバー結合型高出力ダイオードレーザーを用いた。単結晶基体4(N基超合金MK4)に半径方向外側の表面で、エピタキシャル凝固されており、且つ単結晶形態にある、Amdry995の名称で公知の市販の合金から成る中間コーティング5がまず配置されており、該コーティングの最適な微細構造は、その上に置かれるアブレシブコーティング6との界面にも連なっており、これは、この例示的な実施形態において、バインダー材料としてのAmdry995と、その中に埋め込まれた砥粒材料8としてのcBN粒子とから成る。当然の事ながら、第一の砥粒8の上方に単結晶微細構造が連なることはもはや可能ではない。
【0037】
以下の合金が、エピタキシャル中間コーティング5の材料もしくはバインダー材料7として適している:
− γ/β又はγ/γ'型の耐酸化性のMCrAlY合金(M=Ni、Co又は両元素の組み合わせ)であって、その化学組成は、エピタキシャル凝固に際して、まずγ相が形成され、その後に初めてβ相、もしくはγ'相が形成されるように選択される;
− γ/β又はγ/γ'型の耐酸化性のMCrAlY合金であって、その化学組成は、これが三元系のNi−Al−Cr状態図もしくはNi/Co−Al状態図においてγ相中にあり、且つγ−とβ−もしくはγ'相域との共晶界面付近にあるように選択される;
− 次の化学組成(質量%記載):Cr 15〜30、Al 5〜10、Y 0.3〜1.2、Si 0.1〜1.2、その他 0〜2、残り Ni、Coを有するγ/β又はγ/γ'型の耐酸化性超合金;
− 次の化学組成(質量%記載):Co 35〜39、Cr 18〜24、Al 7〜9、Y 0.3〜0.8、Si 0.1〜1.2、その他 0〜2、残り Niを有するγ/β型の耐酸化性超合金;
− 次の化学組成(質量%記載):Cr 18〜26、Al 5〜8、Y 0.3〜1.2、Si 0.1〜1.2、その他 0〜2、残り Ni、Coを有するγ/γ'型の耐酸化性超合金。
【0038】
これらの材料は、中間コーティング5として、しかしまた、アブレシブコーティング6におけるバインダー材料7としても特に適している。好ましいのは、該材料が、50K未満及び好ましくは30K未満の固相線温度と液相線温度ΔT0との間の凝固間隔を持つ場合である。それによって、凝固に際しての割れの危険性が低減する。
【0039】
図5は、本発明による方法を実施するためのコーティング装置13及び高強度の集束レーザービーム10の周りの粉末粒子の同軸噴射による(エピタキシャル)LMF法を示す。該装置13は、EP1476272B1に詳細に記載されており、この文献の開示内容は参照をもって本出願の一部を成したものとする。(図5には示されていない)ロボットにより行われる粉末ノズル(又はワークピース、この場合、タービン翼1)の移動は、プロセスの完全な6軸フレキシビリティを可能にする。ダイクロイックミラー14は、部品1に高強度レーザー光10を偏光し、且つそれを小さな標的に集束させる。該ミラー14は処理光に対して透明であり、それは溶融池16の温度のオンライン制御を可能にする光高温計(非図示)と結ばれている。
【0040】
翼端3がレーザー金属成形に供される場合、中間コーティング5の材料7(又は砥粒材料8及びコーティング6の耐酸化性バインダー材料7)は粉末ノズル内で混合され、キャリアーガス15によって搬送され、引き続き、集束された粉末噴流としてレーザービーム10の周りに同心円状に、レーザービーム10により生成される翼端の溶融池16中へと噴射される。付加的に、該レーザー金属成形中には、溶融池中の温度又は温度分布がオンラインで検出され(光学的温度信号17)、そしてこのデータは、レーザー金属成形の間ずっとレーザー出力を制御するために及び/又はレーザービーム10とタービン翼1との相対運動を制御して変化させるために、図5で示されなかった制御系を利用して用いられる。
【0041】
記載される例において、組み込まれた高温計は、レーザー処理中の溶融池温度の測定を可能にする。温度信号17をレーザー制御装置(非図示)にフィードバックすることにより、実時間制御プロセスを利用してレーザー出力を自動的に、エピタキシャル凝固に必要な基準が満たされるように適合することが可能である:このために、商Gn/Vsは、指向性の単結晶凝固に必要な材料依存性の限界値を上回っていなければならない。ここで、Gは局所的温度勾配を表し、Vsは凝固フロントの速度を表し、且つnは更なる材料パラメーターを表す。
【0042】
本発明は、単結晶タービン翼用のアブレシブ保護コーティングの高価でなく且つ容易に実施可能な製造方法を開示する。高い処理温度でも実用的な該アブレシブコーティングの耐用寿命は、耐酸化性バインダーマトリックス中に砥粒が完全に埋め込まれることによって増大する。従って、アブレシブコーティングの利点は、少なくともなじみ運転過程の継続時間において保証されることができる。
【0043】
バインダーの特別な材料特性によって、第一に良好な酸化安定性が保証される。第二に材料の凝固特性は、エピタキシャルレーザー金属成形(E−LMF)による使用に最適化されている:従って、基材への有利なエピタキシャル結合を、同時に欠陥形成の危険性を最小限にしながら達成することができる。単結晶部品、例えば単結晶タービン翼は非常に大きな熱力学的負荷に曝されるので、機械的結着性の保持(いかなる欠陥又は割れも生じない)がタービンでの使用のための重要な前提条件である。
【0044】
単結晶タービン翼のアブレシブコーティングは、最新世代の強力なタービンにおいて非常に高い商業的可能性を有している。この場合、単結晶部品は、最初のタービン段(HPT=高圧タービン及び/又はLPT=低圧タービン)で使用される。現在では、依然として、これらの部品における高温ガス漏れ損失を最適化するための満足のいく解決手段は存在していない。本発明は、熱シールドとタービン翼の先端との間の漏れを低減することを可能にする。アブレシブコーティングの実用的な耐用寿命にわたり、適切に設定されたなじみ運転処置の範囲内で、ケーシングの変形又はタービン翼のラビングによるローターとハウジングとの偏心距離を補正することができる。
【0045】
アブレシブコーティングが失われた後ですら、翼の基材は、バインダー及びバッファーコーティングとして使用される結合フィラーの良好な耐酸化性によって、公称使用時間全体を通して保護され続ける。
【0046】
摩擦接触に対して増大したアブレシブタービンの耐摩耗性によって、熱シールド上に比較的緻密なセラミックコーティングを適用することが可能になる。なじみ運転処置の間の良好なラビング挙動は、このように熱シールド上のセラミックコーティングの必要とされる長期耐食性と結び付けることができる。
【0047】
関心を引く商業的可能性はまた、既存の翼のレトロフィッティング又はリコンディショニングである。これらは、装着された場合に、漏れ損失の低減、ひいてはタービンの改善された効率を達成するために、本発明による方法によって部分変更を加えてもよい。このオプションでは、既に翼主要部に存在していてよい保護コーティングを事前に除去する必要はない。それゆえ、これは単結晶ガスタービン翼のリコンディショニングのための興味深いオプションを提供する。
【0048】
本発明は、全ての単結晶タービン翼1による使用を意図している。そのつどの運転条件(温度、燃料)に依存するアブレシブコーティング6の制限された耐用寿命が考慮されなければならない。耐酸化性バインダーマトリックス7中への砥粒8の良好な分布及び完全な埋包によって、耐用寿命が最適化される。それにも関わらず、本発明の主たる目的は、タービン翼端3を、とりわけ、なじみ運転段階(数十〜数百の運転時間)中に保護することである。アブレシブ保護コーティング6の特別な特性から可能な限りの効果を引き出すために、アブレシブタービン翼1に適合されたなじみ運転処置が用いられるべきである。
【0049】
当然の事ながら、本発明は記載した例示的な実施形態に制限されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 タービン翼
2 ローター
3 翼端
4 単結晶基材
5 エピタキシャル耐酸化性中間コーティング
6 耐摩耗性及び耐酸化性のコーティング
7 バインダー材料
8 砥粒材料
10 レーザービーム
11 メタリック保護コーティング(MCrAlYコーティング)
12 セラミック遮熱コーティング(TBC)
13 コーティング装置
14 ダイクロイックミラー
15 キャリアーガス
16 溶融池
17 光学的温度信号
r 半径方向
L タービン翼の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼端(3)を有し、且つ半径方法(r)に延びる単結晶基体(4)を有する、タービンのローター(2)のタービン翼(1)において
− 公知のレーザー金属成形によって適用されており、且つ前記基体(4)にエピタキシャル結合されている少なくとも1つの耐酸化性の中間コーティング(5)が、半径方向外側の翼端(3)に配置されており、且つ
− レーザー金属成形によって適用されており、且つ耐酸化性のバインダー材料(7)及びその中に埋め込まれた砥粒(8)とから成る少なくとも単層の耐摩耗性及び耐酸化性のコーティング(6)が、前記エピタキシャル中間コーティング(5)の少なくとも特定の領域に配置されていることを特徴とする、タービンのローター(2)のタービン翼(1)。
【請求項2】
前記中間コーティング(5)が、γ/β型又はγ/γ'型の耐酸化性のMCrAlY合金から成り、その化学組成が、エピタキシャル凝固に際して、まずγ相が形成され、その後に初めてβ相又はγ'相が形成されるように選択されていることを特徴とする、請求項1記載のタービン翼(1)。
【請求項3】
前記中間コーティング(5)が、固相線温度と液相線温度ΔT0との間で50K未満、好ましくは30K未満の凝固間隔を有する耐酸化性のMCrAlY合金から成ることを特徴とする、請求項1記載のタービン翼(1)。
【請求項4】
前記中間コーティング(5)が、γ/β型又はγ/γ'型の耐酸化性のMCrAlY合金から成り、その化学組成が、三元系のNi−Al−Cr状態図又はNi/Co−Al−Cr状態図においてγ相域にあり、且つγ相域とβ相域又はγ'相域との共晶界面付近にあるように選択されていることを特徴とする、請求項1記載のタービン翼(1)。
【請求項5】
前記中間コーティング(5)が、次の化学組成(質量%記載):Cr 15〜30、Al 5〜10、Y 0.3〜1.2、Si 0.1〜1.2、その他 0〜2、残り Ni、Coを有するγ/β型又はγ/γ'型の耐酸化性のMCrAlY合金から成ることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のタービン翼(1)。
【請求項6】
前記中間コーティング(5)が、次の化学組成(質量%記載):Co 35〜39、Cr 18〜24、Al 7〜9、Y 0.3〜0.8、Si 0.1〜1、その他 0〜2、残り Niを有するγ/β型の耐酸化性のMCrAlY合金から成ることを特徴とする、請求項5記載のタービン翼(1)。
【請求項7】
前記中間コーティング(5)が、次の化学組成(質量%記載):Cr 18〜26、Al 5〜8、Y 0.3〜1.2、Si 0.1〜1.2、その他 0〜2、残り Ni、Coを有するγ/γ'型の耐酸化性のMCrAlY合金から成ることを特徴とする、請求項5記載のタービン翼(1)。
【請求項8】
前記耐酸化性の中間コーティング(5)のために使用される材料が、前記耐摩耗性及び耐酸化性のコーティング(6)におけるバインダー材料(7)としても使用されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のタービン翼(1)。
【請求項9】
前記耐摩耗性及び耐酸化性のコーティング(6)における砥粒材料(8)が立方晶窒化ホウ素(cBN)であることを特徴とする、請求項1記載のタービン翼(1)。
【請求項10】
前記耐摩耗性及び耐酸化性のコーティング(6)における砥粒材料(8)の割合が、前記コーティングが多層の形態を有する場合に、半径方向(r)で外側に向かって増大することを特徴とする、請求項1記載のタービン翼(1)。
【請求項11】
前記タービン翼が、再生されたタービン翼であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のタービン翼(1)。
【請求項12】
前記タービン翼が、先立つ運転間隔においてアブレシブ翼端(3)を有さずに初めに使用されることを特徴とする、請求項11記載のタービン翼(1)。
【請求項13】
前記タービン翼が、新規部品であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のタービン翼(1)。
【請求項14】
長さ(L)を有する請求項1から13までのいずれか1項記載のタービン翼(1)において、前記長さ(L)が、レーザー金属成形によって形成された耐酸化性のエピタキシャル中間コーティング(5)及び/又は耐摩耗性及び耐酸化性のコーティング(6)の数によって変化させられることができることを特徴とする、長さ(L)を有する請求項1から13までのいずれか1項記載のタービン翼(1)。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の単結晶タービン翼(1)を製造する方法において、少なくとも1つの耐酸化性の中間コーティング(5)を、半径方向外側の翼端(3)でレーザー金属成形によって前記基体(4)の表面にエピタキシャル的に適用し、且つ、少なくとも単層の耐摩耗性及び耐酸化性のコーティング(6)を、前記エピタキシャル中間コーティング(5)の少なくとも特定の領域にレーザー金属成形によって適用することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の単結晶タービン翼(1)を製造する方法。
【請求項16】
溶融池(16)中の温度又は温度分布を、レーザー金属成形法による前記中間コーティング(5)及び前記耐摩耗性及び耐酸化性のコーティング(6)の形成中にオンラインで検出すること、及びこのデータを、商Gn/Vs、ここでGは局所的温度勾配を表し、Vsは凝固フロントの速度を表し、且つnは更なる材料パラメーターを表す、が指向性の単結晶凝固に必要な材料依存性の限界値を上回るように、レーザー金属成形中のレーザー出力及び/又はレーザービーム(10)とタービン翼(1)との相対運動を制御するために、制御系を利用して用いることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記耐摩耗性及びアブレシブ性のコーティング(6)を製造するための前記レーザー金属成形ステップ中に、砥粒(8)及び耐酸化性バインダー材料(7)を粉末ノズル内で混合し、次いで集束された粉末噴流として前記レーザービーム(10)の周りに同心円状に溶融池(16)中へと噴射することを特徴とする、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
先行する製造ステップにおいて、前記タービン翼(1)の基体(4)の表面上の少なくとも特定の領域を、耐酸化性のメタリック保護コーティング(11)、特にMCrAlYコーティングで被覆し、且つ耐酸化性のセラミック遮熱コーティング(12)を、場合により前記保護コーティング(11)に適用する、請求項15から17までのいずれか1項記載の方法において、半径方向外側の翼端(3)の前記少なくとも1つのメタリック保護コーティング及び、場合によってはセラミック保護コーティング(11、12)を、制御加工、特に研磨除去、CNC切削除去及び/又は化学的コーティング除去によって除去し、次いでレーザー金属成形によって形成されているエピタキシャル凝固された耐酸化性の中間コーティング(5)を、該コーティング(5)が、半径方向に延びるMCrAlYコーティング(11)とのみ少なくとも部分的に重なるものの、その上に存在していてもよい付加的なセラミック遮熱コーティング(12)とは重ならないように適用することを特徴とする、請求項15から17までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−149419(P2011−149419A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−245230(P2010−245230)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】