説明

アルカリ可溶型樹脂、アルカリ可溶型感光性着色組成物、およびカラーフィルタ

【課題】本発明は、カラーフィルタ用基板上にダイコート法により塗布し、カラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における残渣が少なく、かつ、乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であっても容易に除去することができるアルカリ可溶型感光性着色組成物を形成可能なアルカリ可溶型樹脂を提供することを主目的としている。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートと、酸基を有するモノマーと、下記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーとを構成単位として有する共重合体であることを特徴とするアルカリ可溶型樹脂を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未露光箇所における残渣が少なく、かつ、ダイリップに付着した場合であっても容易に除去することができるアルカリ可溶型感光性着色組成物に用いられるアルカリ可溶型樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。
【0003】
このような着色層の形成方法としては、例えば、顔料や染料等の着色剤を含有する着色層用感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法が知られている。透明基板上にフォトリソグラフィー法により着色層を形成する場合、透明基板上に着色層用感光性樹脂組成物の残渣が付着することがあり、上記着色層用感光性樹脂組成物の残渣がカラーフィルタ表面に存在した場合には、透過率やコントラストの低下などを引き起こすほか、パターンエッジ部に残存した場合には、ITO膜の剥離や、液晶セル化工程でのシール性劣化を起こすなど、後工程にまで影響を及ぼすような問題が生じるといった問題があった。
【0004】
さらに近年、カラーフィルタの色再現性向上のため、このようなフォトリソグラフィー法に用いられる着色層用感光性樹脂組成物は、そこに含まれる顔料の高濃度化が要求されており、その顔料の高濃度化に伴い、感光性や溶解性などの着色層形成性に寄与する成分が相対的に減少した結果、現像後に着色層用感光性樹脂組成物が残存し易くなるといった問題が生じている。
【0005】
また、フォトリソグラフィー法に用いられる着色層用感光性樹脂組成物のカラーフィルタ用基板への塗布方法としては、着色層用感光性樹脂組成物が均一な膜厚となるように塗布することが容易であるといった利点から、従来、スピンコート法が用いられてきたが、近年のカラーフィルタの大型化に伴い、カラーフィルタ用基板を安定的に回転させること等が困難となるといった問題が生じてきた。
【0006】
そこで、着色層用感光性樹脂組成物のカラーフィルタ用基板への塗布方法として、ダイコート法による塗布が検討されている。
しかしながら、カラーフィルタ用基板は、各カラーフィルタ用基板同士が分割されたシート状であるため、ダイコート法により着色層用感光性樹脂組成物を塗布する場合には、各カラーフィルタ用基板の入れ替えの際に、ダイからの着色層用感光性樹脂組成物の吐出が停止することになる。すなわち、ダイリップの先端は、着色層用感光性樹脂組成物の吐出時には湿潤し、着色層用感光性樹脂組成物の吐出停止時には乾燥することを繰り返すことになる。顔料が高濃度化されている着色層用感光性樹脂組成物が、ダイリップ先端で乾燥すると、顔料濃度が急激に増加するため、顔料の凝集塊が発生する場合がある。これらの凝集塊は、ダイリップ先端に付着し、再度、着色層用感光性樹脂組成物を吐出した際に、リップ先端から剥離してカラーフィルタ用基板上に移動し、異物欠陥となるといった問題があった。また、このような異物欠陥が頻発するとカラーフィルタの歩留まりが低下するといった問題があった。
【0007】
このような残渣や異物欠陥の問題を解決するために、特許文献1では、着色層用感光性樹脂組成物に含まれるバインダ樹脂および分散剤を特定の構造を有するものとすることで、乾燥凝集塊および残渣の発生を抑制する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されるような方法であっても、現像時の残渣の発生を十分に抑制することができないといった問題があった。また、ダイリップへの乾燥凝集塊の発生を十分に抑制することができず、さらに一旦付着した乾燥凝集塊は、容易に除去できないといった問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2006−58821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、カラーフィルタ用基板上にダイコート法により塗布し、カラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における残渣が少なく、かつ、乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であっても容易に除去することができるアルカリ可溶型感光性着色組成物を形成可能なアルカリ可溶型樹脂を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートと、酸基を有するモノマーと、下記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーとを構成単位として有する共重合体であることを特徴とするアルカリ可溶型樹脂を提供する。
【0011】
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基である。また、mは2〜100の整数であり、nは0〜20の整数である。)
【0012】
本発明によれば、上記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートおよび上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーを構成単位として有することにより、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を、カラーフィルタ用基板上にダイコート法により塗布し、カラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における残渣が少なく、かつ、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であっても容易に除去することができるものとすることができる。
【0013】
本発明においては、上記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量が、30質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。上記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲であることにより、本発明のアルカリ可溶型樹脂を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の残渣をより少ないものとすることができるからである。
【0014】
本発明においては、上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーの含有量が、5質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましい。上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーの含有量が上記範囲であることにより、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を、カラーフィルタ用基板上にダイコート法により塗布する際に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であってもより容易に除去することができるものとすることができるからである。
【0015】
本発明においては、上記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびイソプロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるものであることが好ましい。本発明のアルカリ可溶型樹脂を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の残渣をより少ないものとすることができるからである。
【0016】
本発明においては、上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーが、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選択されるものであることが好ましい。本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を、カラーフィルタ用基板上にダイコート法により塗布する際に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であってもより容易に除去することができるものとすることができるからである。
【0017】
本発明においては、上記共重合体の酸価が、60mgKOH/g〜150mgKOH/gであることが好ましい。上記共重合体の酸価が、上記範囲より大きいと、アルカリ水溶液への溶解性が高すぎるため、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、露光箇所の着色層も溶解してしまい、上記着色層の密着性が低いものとなってしまう可能性があるからである。また上記範囲より小さいと、アルカリ水溶液への溶解性が低いものとなり、現像に要する時間が長いものとなる可能性があるからである。
【0018】
本発明においては、上記共重合体の分子量が、5000〜20000であることが好ましい。上記共重合体の分子量が上記範囲より小さいと、アルカリ水溶液への溶解性が大きく、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、露光箇所の着色層も溶解してしまい、上記着色層の密着性が低いものとなってしまう可能性があるからである。また上記範囲より大きいと、アルカリ水溶液への溶解性が低いものとなり、現像に要する時間が長いものとなる可能性があるからである。
【0019】
本発明は、上記アルカリ可溶型樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、多官能性モノマーと、光開始剤と、溶剤とを有することを特徴とするアルカリ可溶型感光性着色組成物を提供する。
【0020】
本発明によれば、上記アルカリ可溶型樹脂を含むものであるので、カラーフィルタ用基板上にダイコート法により塗布し、カラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における残渣が少なく、かつ、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であっても容易に除去することができるものとすることができる。
【0021】
本発明は、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成された着色層を有することを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【0022】
本発明によれば、着色層が上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成されたものであるため、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物がダイコート法によって塗布されたものである場合であっても、異物欠陥が少なく、かつ未露光部における残渣が少ないものとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、カラーフィルタ用基板上にダイコート法により塗布し、カラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における残渣が少なく、かつ、乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であっても容易に除去することができ、異物欠陥の少ないカラーフィルタとすることができるアルカリ可溶型感光性着色組成物を形成可能なアルカリ可溶型樹脂を提供できるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、アルカリ可溶型樹脂、アルカリ可溶型感光性着色組成物、およびカラーフィルタに関するものである。以下、本発明のアルカリ可溶型樹脂、アルカリ可溶型感光性着色組成物、およびカラーフィルタについて説明する。
【0025】
A.アルカリ可溶型樹脂
まず、本発明のアルカリ可溶型樹脂について説明する。本発明のアルカリ可溶型樹脂は、アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートと、酸基を有するモノマーと、下記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーとを構成単位として有する共重合体であることを特徴とするものである。
【0026】
【化2】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基である。また、mは2〜100の整数であり、nは0〜20の整数である。)
【0027】
本発明によれば、上記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートおよび上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーを構成単位として有することにより、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を、カラーフィルタ用基板上にダイコート法により塗布し、カラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における残渣が少なく、かつ、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であっても容易に除去することができるものとすることができる。
【0028】
ここで、上記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートおよび上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーを構成単位として有することにより、本発明のアルカリ可溶型樹脂をアルカリ可溶型感光性着色組成物に用いた場合に、未露光箇所における残渣が少なく、かつ、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であっても容易に除去することができるものとすることができる理由としては、以下のように推測される。
すなわち、シクロヘキシル(メタ)アクリレートを主な構成単位として有する従来のアルカリ可溶型感光性樹脂組成物用樹脂は、疎水性が十分でない化合物であるため、上記アルカリ可溶型感光性樹脂組成物用樹脂を含むアルカリ可溶型感光性樹脂組成物を用いて着色層を形成した場合には、そのアルカリ現像処理においてアルカリ水溶液に比較的素早く溶解する。このため、上記アルカリ可溶型感光性樹脂組成物に含まれる顔料等、アルカリ水溶液への溶解性が低い材料が、カラーフィルタ上に取り残され残渣となる。
一方、本発明のアルカリ可溶型樹脂は、構成成分であるアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが、シクロヘキシル基にアルキル基が付与された構造を有するため、疎水性が強く、アルカリ水溶液への溶解性を抑制することができる。このため、アルカリ現像処理時において、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物に含まれる顔料等、アルカリ水溶液への溶解性が低い材料も除去され易いものとなる。その結果、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の残渣を少ないものとすることができる。
【0029】
また、従来のアルカリ可溶型樹脂が、溶剤への溶解性が十分高いものではなかったため、このようなアルカリ可溶型樹脂を用いたアルカリ可溶型感光性着色組成物は、再溶解性が十分高いものではなかった。
ここで、再溶解性とは、一旦乾燥物となった後の溶剤へ溶解性であって、再溶解性が低いとは、一旦乾燥物となると、再度、溶剤へ溶解しにくい状態をいうものである。
このため、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を、カラーフィルタ用基板上にダイコート法により塗布することにより、カラーフィルタの着色層を形成する製造方法において、ダイリップ先端に付着し乾燥物となると、溶剤を用いても除去することが困難な場合が多かった。また、このようなダイリップ先端に付着し乾燥物となったアルカリ可溶型感光性着色組成物が、そのままダイリップ先端に残存・堆積した場合には、そのうちの一部が剥離し、カラーフィルタの着色層に混入することにより異物欠陥となるおそれが高かった。
一方、本発明においては、上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーが、後述するような溶剤への溶解性に優れているため、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を再溶解性に優れたものとすることができる。このため、ダイリップ先端に付着し乾燥物となった場合であっても、上記溶剤を用いて容易に除去することを可能とし、カラーフィルタの着色層へ混入防止を容易に図ることができ、さらにその結果として、得られたカラーフィルタを、異物欠陥の少ないものとすることができる。
【0030】
以下、本発明のアルカリ可溶型樹脂である共重合体について説明する。
【0031】
本発明のアルカリ可溶型樹脂である共重合体は、少なくともアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートと、酸基を有するモノマーと、上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーとを構成単位として有するものである。
【0032】
1.アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレート
本発明に用いられるアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートは、シクロヘキシル(メタ)アクリレートのシクロヘキシル基に、アルキル基を結合させたものである。
【0033】
本発明に用いられるアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートに含まれるアルキル基としては、上記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、炭素数が、1〜4の範囲内であることが好ましく、なかでも2〜4の範囲内であることが好ましい。上記範囲より大きいと、アルカリ可溶型樹脂の疎水性が強くなり過ぎるために、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層等を形成する場合の現像時において、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の現像のされ方である現像形態が、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物からなる着色層形成用層が徐々に溶解される溶解型ではなく、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の塊が上記カラーフィルタ上から剥離するように現像される剥離型となる恐れがあるからである。このため上記着色層形成用層の塊が現像異物として上記カラーフィルタ上に再付着し、品質低下を招く恐れがあるからである。また、上記範囲より小さいと十分な残渣低減効果が得られない恐れがあるからである。
【0034】
また、上記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートに含まれるアルキル置換基の結合箇所としては、上記アルキル置換基が結合できる箇所であれば良い。
【0035】
このようなアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートに含まれるアルキル基を有する、アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの具体例としては、
tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソプロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを挙げることができ、なかでもtert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびイソプロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる郡から選択されるものを好ましく用いることができる。上記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが、上述した化合物であることにより、本発明のアルカリ可溶型樹脂を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の残渣をより少ないものとすることができるからである。
なお、本発明においては、上記のアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの1種類以上を用いることができる。
【0036】
本発明に用いられるアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量としては、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の残渣を少ないものとすることができるものであれば良く、具体的には、上記共重合体中に、30質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも50質量%〜85質量%の範囲内であることが好ましく、特に60質量%〜80質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲であることにより、本発明のアルカリ可溶型樹脂の疎水性を十分に向上させることができるため、上記アルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の残渣を特に少ないものとすることができるからである。
【0037】
2.(メタ)アクリレートモノマー
本発明に用いられる(メタ)アクリレートモノマーは、下記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーであり、溶剤への溶解性に優れたものである。
【0038】
【化3】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基である。また、mは2〜100の整数であり、nは0〜20の整数である。)
【0039】
上記Rは、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であり、本発明のアルカリ可溶型樹脂を、溶剤への溶解性に優れたものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、1〜20の範囲内、特に1〜12の範囲内のアルキル基であることが好ましい。本発明のアルカリ可溶型樹脂を、溶剤への溶解性により優れたものとすることができるからである。
【0040】
上記式(1)において、ポリオキシエチレン鎖を構成するオキシエチレン基は、直鎖状であっても良く、分岐を有するものであっても良い。
【0041】
上記式(1)において、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し数であるmは、2〜100の整数であり、本発明のアルカリ可溶型樹脂を、溶剤への溶解性に優れたものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、2〜100の範囲内であることが好ましく、なかでも4〜40の範囲内であることが好ましい。上記範囲より大きいと、重合性官能基濃度が低くなり重合性が低下する可能性があるからであり、上記範囲より小さいと、溶剤への溶解性が不十分なものになる可能性があるからである。
【0042】
上記式(1)において、ポリオキシプロピレン鎖を構成するオキシプロピレン基は、直鎖状であっても良く、分岐を有するものであっても良い。
【0043】
上記式(1)において、ポリオキシプロピレン鎖の繰り返し数であるnは、0〜20の整数であり、本発明のアルカリ可溶型樹脂を、溶剤への溶解性に優れたものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも、0〜10の範囲内であることが好ましい。上記範囲より大きいと、重合性官能基濃度が低くなり重合性が低下する可能性があるからである。
【0044】
このような本発明に用いられる上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレー、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーが、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選択されるものであることが好ましい。上述した化合物であることにより、本発明のアルカリ可溶型樹脂を、溶剤への溶解性により優れたものとすることができ、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を、カラーフィルタ用基板上にダイコート法により塗布する際に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であってもより容易に除去することができるものとすることができるからである。
なお、本発明においては、上記の式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーの1種類以上を用いることができる。
【0045】
本発明に用いられる上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーの含有量としては、本発明のアルカリ可溶型樹脂を、溶剤への溶解性に優れたものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、上記共重合体中に、5質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、特に5質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲であることにより、本発明のアルカリ可溶型樹脂を、溶剤への溶解性により優れたものとすることができ、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を、カラーフィルタ用基板上にダイコート法により塗布する際に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であってもより容易に除去することができるものとすることができるからである。
【0046】
3.酸基を有するモノマー
本発明に用いられる酸基を有するモノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有し、上述したアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートと重合することができ、かつ酸基を有するものである。
本発明においては、上記酸基を有するモノマーを構成単位として有することにより、アルカリ可溶性に優れたものとすることができる。
【0047】
本発明に用いられる酸基を有するモノマーに含まれる酸基としては、水中において酸性を示す官能基であれば特に限定されるものではないが、通常、カルボキシル基が用いられる。
【0048】
このような酸基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸の二量体、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、およびこれらの無水物を挙げることができる。本発明においては、なかでも、(メタ)アクリル酸を好ましく用いることができる。
なお、本発明においては、上記の1種類以上を用いることができる。
【0049】
本発明に用いられる酸基を有するモノマーの含有量としては、本発明のアルカリ可溶型樹脂をアルカリ可溶性とすることができるものであれば良く、具体的には、上記共重合体中に、10質量%〜25質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも12質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲であることにより、本発明のアルカリ可溶型樹脂を、アルカリ水溶液への溶解性に優れたものとすることができ、このようなアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合には、現像に要する時間を短いものとすることができ、さらに現像形態を溶解型とすることができるからである。
【0050】
4.共重合体
本発明のアルカリ可溶型樹脂である共重合体は、上記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、酸基を有するモノマーおよび上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーを構成単位として少なくとも有し、これらを共重合したものであれば特に限定されるものではなく、他の構成単位を有するものであっても良い。
【0051】
このような他の構成単位としては、エチレン性不飽和二重結合を有し、上述したアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、酸基を有するモノマーおよび上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーと重合することができるものであれば良く、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、γ−メチルスチレン等を挙げることができる。
【0052】
また、本発明に用いられる共重合体は、側鎖に光重合性基を有するものであっても良い。本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成する際の光照射によって、アルカリ可溶型樹脂同士、または上記アルカリ可溶型感光性着色組成物に通常含まれる多官能性モノマーと重合し、着色層を強固なものとすることができるからである。
【0053】
このような光重合性基としては、光照射によって、アルカリ可溶型樹脂同士、または上記多官能性モノマーと重合することが可能なものであれば特に限定されるものではないが、通常、エチレン性不飽和二重結合を有するエチレン性不飽和基が用いられる。
【0054】
また、上記共重合体を、光重合性基を有するものとする方法としては、例えば、上述した酸基を有するモノマーが有する酸基に、エチレン性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物のエポキシ基を反応させる方法を挙げることができる。このようなエチレン性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、具体的には、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸エチルグリシジル、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
なお、上記光重合性基の含有量としては、本発明のアルカリ可溶型樹脂の用途等に応じて適宜設定することができる。
【0055】
本発明に用いられる共重合体の酸価としては、本発明のアルカリ可溶型樹脂がアルカリ可溶性を発揮するものであれば特に限定されるものではないが、上記共重合体の酸価が、60mgKOH/g〜150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、なかでも70mgKOH/g〜130mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、特に75mgKOH/g〜110mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。上記範囲より大きいと、アルカリ水溶液への溶解性が高すぎるため、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、露光箇所の着色層も溶解してしまい、上記着色層の密着性が低いものとなってしまう可能性があるからである。また上記範囲より小さいと、アルカリ水溶液への溶解性が低くいものとなり、現像に要する時間が長いものとなる可能性があるからである。
なお、上記酸価はJIS K 0070に従って、電位差滴定法により測定することができる。
【0056】
本発明に用いられる共重合体の分子量としては、上記共重合体であるアルカリ可溶型樹脂がアルカリ可溶性を発揮するものであれば特に限定されるものではないが、5000〜20000の範囲内であることが好ましく、なかでも6000〜18000の範囲内であることが好ましく、特に7000〜15000の範囲内であることが好ましい。上記範囲より小さいと、アルカリ水溶液への溶解性が大きく、本発明のアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、露光箇所の着色層も溶解されてしまい、上記着色層の密着性が低いものとなってしまう可能性があるからである。また上記範囲より大きいと、アルカリ水溶液への溶解性が低いものとなり、現像に要する時間が長いものとなる可能性があるからである。
なお、上記分子量とは、重量平均分子量(Mw)のことであり、上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0057】
本発明に用いられる共重合体は、アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、酸基を有するモノマー、および上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーがランダムに配置されたランダム共重合体であっても良く、上記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、酸基を有するモノマー、および上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーが、それぞれ連続して重合した領域を有するブロック共重合体であっても良い。
【0058】
本発明のアルカリ可溶型樹脂として用いられる共重合体の製造方法としては、上述したアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、酸基を有するモノマー、および上記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーを構成単位として有する共重合体を製造することができる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の重合方法を用いることができ、例えばビニル基を有する化合物の重合に一般的に用いられる方法であるラジカル重合、アニオン重合、リビングラジカル重合等を用いることができる。
【0059】
本発明のアルカリ可溶型樹脂の用途としては、カラーフィルタの着色層の形成に用いられるアルカリ可溶型感光性着色組成物を挙げることができる。なかでも、カラーフィルタの着色層の形成の際に、ダイコート法によって塗布されるアルカリ可溶型感光性着色組成物に好適に用いられる。
【0060】
B.アルカリ可溶型感光性着色組成物
次に、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物について説明する。本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物は、上記アルカリ可溶型樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、多官能性モノマーと、光開始剤と、溶剤とを有することを特徴とするものである。
【0061】
本発明によれば、上記アルカリ可溶型樹脂を含むものであるので、再溶解性に優れたものとすることができる。このためカラーフィルタ用基板上に上記アルカリ可溶型感光性着色組成物をダイコート法により塗布する際に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であっても容易に除去することができるものとすることができる。
また、上記アルカリ可溶型樹脂を含むものであるので、カラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における残渣が少ないものとすることができる。
【0062】
本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物は、上記アルカリ可溶型樹脂、顔料、顔料分散剤、多官能性モノマー、光開始剤、および溶剤を有するものである。以下、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物の各構成について説明する。
【0063】
1.アルカリ可溶型樹脂
本発明に用いられるアルカリ可溶型樹脂は、上述したアルカリ可溶型樹脂である。
このようなアルカリ可溶型樹脂の含有量としては、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の残渣を少ないものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物に含まれる固形分中に、1質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも1質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲であることにより、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、未露光箇所における上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の残渣を少ないものとすることができるからである。
なお、アルカリ可溶型感光性着色組成物に含まれる固形分とは、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物における、溶剤以外の構成成分全てである。
【0064】
なお、上記アルカリ可溶型樹脂として用いる共重合体については、上記「A.アルカリ可溶型樹脂」の項に記載したものと同様の内容とすることができるので、ここでの記載を省略する。
【0065】
2.溶剤
本発明に用いられる溶剤は、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の各構成を溶解または分散させ、粘度を調節するものである。
【0066】
このような溶剤としては、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物の各構成とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であれば良い。具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;および、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ酢酸ブチル、3−メチルー3−メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;などが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0067】
本発明に用いられる溶剤の含有量としては、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を均一な膜厚で塗工し、カラーフィルタの着色層を形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、通常、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物に含まれる固形分の濃度が、5質量%〜30質量%の範囲内、なかでも10質量%〜25質量%の範囲内となるように配合されることが好ましい。
【0068】
3.顔料分散剤
本発明に用いられる顔料分散剤としては、公知の顔料分散剤を使用することができる。具体的には、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、変性ポリエステル、変性ポリアミド等の高分子分散剤、リン酸エステル、アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の界面活性剤や顔料誘導体を挙げることができる。本発明においては、これらの中でも、高分子分散剤が好ましく、具体的な商品名としては、Ciba EFKA−4046、Ciba EFKA−4047、Ciba EFKA−4300、Ciba EFKA−4330、Ciba EFKA−4340(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製)、Disperbyk111、Disperbyk161、Disperbyk165、Disperbyk182、Disperbyk2000、Disperbyk2001(以上、ビックケミー社製)、SOLSPERSE24000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE28000(以上、ルーブリゾール社製)、アジスパーPB821、アジスパーPB822(味の素ファインテクノ(株)製)等を挙げることができる。
【0069】
本発明に用いられる顔料分散剤の含有量としては、後述する顔料を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物に含まれる固形分中に、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも1質量%〜8質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲より小さいと、上記顔料を均一に分散することが困難になり、上記範囲より大きいと、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の現像性が低下したり、未露光部分での残渣が残存する可能性があるからである。
【0070】
4.顔料
本発明に用いられる顔料としては、公知の顔料を用いることができる。本発明において使用可能な有機顔料の具体例を下記表1および表2に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
また、用いることができる無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、ベンガラ、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
なお、これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
また、本発明に用いられる顔料の分散平均粒径としては、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、通常、0.01μm〜0.15μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01μm〜0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0075】
本発明に用いられる顔料の含有量としては、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、用いる顔料の種類によっても異なるが、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物に含まれる固形分中において、1質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも10質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲より多いと、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、残渣の発生や、現像性が低下する可能性があるからである。また、上記範囲より少ないと、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、着色層を発色が十分なものとすることができない可能性があるからである。
【0076】
5.多官能性モノマー
本発明に用いられる多官能性モノマーは、複数の重合性の官能基を有し、光照射により、上記多官能性モノマー同士が重合し、上記多官能性モノマーを含む本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物を硬化させるものである。
このような多官能性モノマーとしては、通常、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートが用いられる。
【0077】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0078】
また、上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カルボン酸変性ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0079】
これらの多官能(メタ)アクリレートは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0080】
本発明に用いられる多官能性モノマーの含有量としては、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物に含まれる固形分中において、5質量%以上であることが好ましく、なかでも9質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が溶出する場合があるからである。また、上記範囲より多いと、未露光箇所分でも現像できなくなる可能性があるからである。
【0081】
6.光開始剤
本発明に用いられる光開始剤としては、光照射により、上記多官能性モノマー同士を重合することができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なものを用いることができる。具体的には、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4´−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、P−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブチキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、2,4ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、1,2−オクタジオン、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(o−ベンゾイルオキシム)等の光開始剤を挙げることができる。本発明においては、これらの光開始剤を単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0082】
このような光開始剤の含有量としては、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を所望の硬化速度で光硬化することができるものであれば良く、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物中に含まれる固形分中において、0.1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.7質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0083】
7.アルカリ可溶型感光性着色組成物
本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物は、上記アルカリ可溶型樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、多官能性モノマーと、光開始剤と、溶剤とを少なくとも有するものであれば良く、必要に応じて他の添加剤を有するものであっても良い。
このような他の添加剤としては、バインダー樹脂、増感剤、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤等などが挙げられる。
【0084】
このようなバインダー樹脂としては、例えば、2種以上のモノマーからなる共重合体を用いることができる。このようなモノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、およびスチレンを挙げることができる。
【0085】
上記バインダー樹脂の含有量としては、本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物中に含まれる固形分中に、10質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0086】
上記増感剤としては、カラーフィルタの着色層の形成に一般的に用いられるものを使用することができ、例えば脂肪族あるいは芳香族の単、多官能チオール化合物や芳香族アミン系化合物等を挙げることができる。このような増感剤の含有量としては、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の固形分中、0.01質量%〜2質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.7質量%〜1.2質量%の範囲内であることが好ましい。
【0087】
本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物の製造方法としては、上記アルカリ可溶型樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、多官能性モノマーと、光開始剤と、溶剤とを均一に混合することができる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の混合手段を用いることができる。
【0088】
本発明のアルカリ可溶型感光性着色組成物の用途としては、カラーフィルタの着色層をフォトリソグラフィー法を用いて形成する際に用いられる感光性着色組成物を挙げることができる。なかでも、感光性着色組成物がダイコート法によって塗布された場合であっても、異物欠陥が少なく、かつ未露光部における残渣が少ないことを要求されるカラーフィルタの着色層の形成に用いられる感光性着色組成物に好適に用いられる。
【0089】
C.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成された着色層を有するものである。
【0090】
このような本発明のカラーフィルタを図を参照して説明する。図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、カラーフィルタ10は、透明基板1と、上記透明基板1上にパターン状に形成され、開口部を有する遮光部2と、上記遮光部2の開口部上に形成された着色層3とを有するものである。
ここで、上記着色層は、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成されたものである。
【0091】
本発明によれば、着色層が上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成されたものであるため、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物がダイコート法によって塗布されたものである場合であっても、異物欠陥が少なく、かつ未露光部における残渣が少ないものとすることができる。
以下、本発明のカラーフィルタについて説明する。
【0092】
本発明に用いられる着色層は、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成されたものである。
【0093】
このような本発明に用いられる着色層の配列としては、一般的なカラーフィルタの着色層が有するものとすることができ、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
【0094】
上記着色層の厚みとしては、通常、1μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
【0095】
本発明に用いられる着色層の形成方法は、後述する透明基板上に、精度よく形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、通常、フォトリソグラフィー法が用いられる。本発明においては、なかでも上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を、後述する透明基板上に、ダイコート法によって塗布する塗布工程と、塗布されたアルカリ可溶型感光性着色組成物を乾燥させた後、フォトリソグラフィー法により露光および現像を行う露光・現像工程とにより形成する方法が好ましい。
本発明においては、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物が、上述したアルカリ可溶型感光性着色組成物であるため、このようなアルカリ可溶型感光性着色組成物をダイコート法を用いて塗布した際に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であっても容易に除去することができる。このため、ダイリップに付着した上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物が混入することによる、異物欠陥の発生防止を容易に図ることができるからである。このため、本発明のカラーフィルタを、異物欠陥の少ないものとすることができ、さらに歩留まりが向上することから高生産性のものとすることができるからである。またダイコート法を用いることにより、サイズの大きな基板であっても容易に、かつ素早く塗布することができるからであるからである。
また、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物が、上述したアルカリ可溶型感光性着色組成物であるため、フォトリソグラフィー法によって着色層を形成することにより、本発明のカラーフィルタを、未露光箇所における上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の残渣が少ないものとすることができるからである。
【0096】
本発明のカラーフィルタは、上記着色層以外に、通常、透明基板と、遮光部とを少なくとも有するものである。このような透明基板および遮光部としては、一般的なカラーフィルタに使用されるものを用いることができる。
【0097】
本発明のカラーフィルタの製造方法としては、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を用いたフォトリソグラフィー法によって、上記着色層を形成するものであれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルタの製造方法を用いることができる。
【0098】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0099】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0100】
[実施例1〜9、比較例2〜4]
重合槽に、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを300g仕込み、窒素雰囲気下に110℃に昇温した後、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート(t−BuCHMA)、エチルシクロヘキシルメタクリレート(EtCHMA)、イソプロピルシクロヘキシルメタクリレート(i−PrCHMA)、メタクリル酸(MAA)、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n≒23)(日本油脂株式会社製、PME−1000)、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n≒9)(日本油脂株式会社製、PME−400)、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=2)(日本油脂株式会社製、PME−100)、メチルメタクリレート(MMA)、スチレン(St)、ベンジルメタクリレート(BzMA)、およびアゾイソブチロニトリル(AIBN)を、下記表3に示す組成で含む混合物をそれぞれ1.5時間かけて連続的に滴下した。その後110℃で、2時間攪拌してアルカリ可溶型樹脂を得た。得られたアルカリ可溶型樹脂は、いずれも固形分40%であった。また、その重量平均分子量および酸価の測定結果を表4に示す。
なお、上記重量平均分子量の測定方法は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム−21H(Shodex GPC System−21H)により重量平均分子量を測定した。また酸価の測定方法は、上述した方法を用いた。
【0101】
【表3】

【0102】
[比較例1]
下記組成を有し、混合したモノマー組成物を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが150g入った重合層中に、窒素気流下、100℃で、3時間かけて滴下した。滴下終了後さらに3時間加熱することにより重合体溶液を得た。この重合体溶液の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で8000であった。
【0103】
<モノマー組成物>
ベンジルメタクリレート:30g(0.17モル)
スチレン:38g(0.37モル)
メタアクリル酸:18g(0.21モル)
t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂製 パーブチルO):10g
【0104】
次に、得られた重合体溶液に、グリシジルメタクリレートを14g(0.10モル)、トリエチルアミンを0.2g、p−メトキシフェノールを0.05g添加し、110℃で10時間加熱することにより、上記重合体溶液の主鎖のメタクリル酸のカルボン酸基と、グリシジルメタクリレートのエポキシ基との反応を行い、アルカリ可溶型樹脂を形成した。反応中は、グリシジルメタクリレートの重合を防ぐため、反応溶液内に空気をバブリングさせた。
反応は、溶液の酸価測定により追跡した。得られたアルカリ可溶型樹脂は、固形分38%であり、その重量平均分子量および酸価の測定結果を表4に示す。
【0105】
【表4】

【0106】
[評価]
実施例および比較例で得られたアルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて、現像残渣、現像時間、現像形態、乾燥塗膜の溶剤再溶解性について評価を行った。
【0107】
1.アルカリ可溶型感光性着色組成物の調製
比較例1で形成されたアルカリ可溶型樹脂をバインダー樹脂として用い、下記に示す組成を、ビーズミルを使用して均一に混合分散してアルカリ可溶型感光性着色組成物を調製した。なお、比較例1は、アルカリ可溶型樹脂と、バインダー樹脂とが同一であるので、上記アルカリ可溶型樹脂およびバインダー樹脂を合わせて、上記アルカリ可溶型樹脂を固形分換算で7.7重量部配合することになる。
【0108】
<アルカリ可溶型感光性着色組成物の組成>
・上記アルカリ可溶型樹脂:0.4重量部(固形分換算)
・バインダー樹脂(上記比較例1で作製したアルカリ可溶型樹脂):7.3重量部(固形分換算)
・ジペンタエリストールヘキサアクリレート(DPHA):3.3重量部
・イルガキュア369(チバスペシャリティーケミカルズ社製、IRGACURE369):1重量部
・イルガキュア907(チバスペシャリティーケミカルズ社製、IRGACURE907):1重量部
・ピグメントレッド177(赤色顔料、P.R.177):0.7重量部
・ピグメントレッド254(赤色顔料、P.R.254):5.6重量部
・ピグメントイエロー139(黄色顔料、P.Y.139):0.7重量部
・分散剤(ビックケミー社製、Disperbyk161):2.0重量部(固形分換算)
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):60.8重量部
【0109】
2.着色層の形成
アルカリ洗浄済みのガラス基板上に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物をスピンコーティングし、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物からなる着色層形成用層を形成した後、室温3分間、80℃のホットプレート上で3分間加熱することによりプリベイクさせ、乾燥させた。
次いで、乾燥後の上記着色層形成用層を、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cmでマスク露光し硬化させた。
次いで、0.05wt%水酸化カリウム(KOH)を現像液として用いてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理を行い、パターン形成された基板を230℃のオーブン内で30分間ポストベイクした。ポストベイク後の上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成された着色層の膜厚は、1.9μmであった。
【0110】
3.評価
上記アルカリ可溶型樹脂を含むアルカリ可溶型感光性着色組成物の現像残渣、現像時間、現像形態、乾燥塗膜の溶剤再溶解性について以下のように評価を行った。
【0111】
(1)現像残渣
着色層形成後のガラス基板を、(a)目視評価、(b)拭き取り後評価、のそれぞれの方法により残渣の有無の評価を行った。
【0112】
(a)目視評価
上記着色層の形成後のガラス基板の表面から投光器により光を照射した状態で、目視観察し、未露光箇所における残渣の有無(投光器による目視)を確認した。結果を、下記表5に示す。ここで、上記ガラス基板上に白化が全く見られない場合には残渣がないと判断し○とし、上記ガラス基板表面に白化が見られた場合には残渣があると判断し×とした。
【0113】
(b)拭き取り後評価
上記着色層の形成後のガラス基板の未露光部(50mm×50mm)を、エタノールを含ませたレンズクリーナー(東レ製 トレシーMKクリーンクロス(登録商標))で十分に拭き取り、そのレンズクリーナーの着色度合いを目視で観察した。結果を表5に示す。なお、レンズクリーナーが全く着色しなかった場合は○、レンズクリーナーが微かに着色した場合は△、レンズクリーナーが着色した場合は×とした。
【0114】
(2)現像時間
上記着色層の形成において、未露光部が溶解し、現像されるまでの時間を測定し、下記基準で評価を行った。現像の終了は、目視により判断した。結果を表5に示す。
・○:10秒〜30秒で完全に溶解する。
・△:31秒〜59秒で完全に溶解する。
・×:60秒以内で完全に溶解しない。
【0115】
(3)現像形態
上記着色層の形成において、未露光部が現像されるときの、現像のされ方を観察し、溶解型か、剥離型かを観察した。結果を表5に示す。
【0116】
(4)乾燥塗膜の溶剤再溶解性
ダイコート法における異物欠陥発生の有無を評価する代替法として、乾燥塗膜の溶剤再溶解性評価を行った。評価方法としては、ガラス基板上に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物を、塗布し、恒温高湿オーブンを用いて、25℃、湿度55%の条件下で、30分風乾したのち、乾燥塗膜が付着したガラス基板をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に10分間浸漬した。このとき、乾燥塗膜の再溶解状態により、下記の3段階で評価した。結果を表5に示す。
・○:浸漬中に乾燥塗膜がすべて溶解する。
・△:10分間浸漬後も、乾燥塗膜の一部が残る。
・×:10分間浸漬後も乾燥塗膜がほとんどもしくは全く溶解しない。
【0117】
【表5】

【0118】
表5に示すように、実施例では、現像残渣が少ないことが確認できた。また、上記アルカリ可溶型樹脂の酸価が、60mgKOH/g〜150mgKOH/gの範囲内であり、分子量が5000〜20000の範囲内であることにより、現像残渣、現像時間がより少ないものとすることができることが確認できた。さらに乾燥塗膜の再溶解状態に優れたものであることより、カラーフィルタの着色層形成時に、上記アルカリ可溶型感光性着色組成物の乾燥凝集物がダイリップに付着した場合であっても、容易に除去することができることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0120】
1…基板
2…遮光部
3…着色層
10…カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートと、
酸基を有するモノマーと、
下記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーとを構成単位として有する共重合体であることを特徴とするアルカリ可溶型樹脂。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基である。また、mは2〜100の整数であり、nは0〜20の整数である。)
【請求項2】
前記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量が、30質量%〜90質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ可溶型樹脂。
【請求項3】
前記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーの含有量が、5質量%〜30質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルカリ可溶型樹脂。
【請求項4】
前記アルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびイソプロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のアルカリ可溶型樹脂。
【請求項5】
前記式(1)で示される(メタ)アクリレートモノマーが、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のアルカリ可溶型樹脂。
【請求項6】
前記共重合体の酸価が、60mgKOH/g〜150mgKOH/gであることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のアルカリ可溶型樹脂。
【請求項7】
前記共重合体の分子量が、5000〜20000であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載のアルカリ可溶型樹脂。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載のアルカリ可溶型樹脂と、顔料と、顔料分散剤と、多官能性モノマーと、光開始剤と、溶剤とを有することを特徴とするアルカリ可溶型感光性着色組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のアルカリ可溶型感光性着色組成物を用いて形成された着色層を有することを特徴とするカラーフィルタ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−67900(P2009−67900A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238131(P2007−238131)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【Fターム(参考)】