説明

アルカリ金属フリーめっき前洗浄剤

【課題】 半導体ウエハーなどに均一にめっきを施すために行う、洗浄および濡れ性向上のためのアルカリ性洗浄に使用する洗浄剤であって、アルカリ金属を含まないアルカリ性洗浄剤を提供すること。
【解決手段】 リン酸またはその塩を含み、水酸化テトラアルキルアンモニウム塩によりpH11.5以上の強アルカリ性にしたアルカリ金属フリーめっき前洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属フリーめっき前洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハーに対して無電解めっきを行う際に、触媒付与とそれに続くめっき膜析出を均一に行うことを目的として、基板洗浄や濡れ性の向上のためのアルカリ性洗浄剤による処理が一般的に行われている。
また、金属製品の表面処理方法として、りん酸水溶液および有機酸洗抑制剤を含む前処理液、アンモニウムイオン、オルソりん酸イオンおよびナトリウムイオンを含む後処理液で処理することが知られている(特許文献1)。
しかし、アルカリ性洗浄剤などに一般的に含まれているナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属は半導体用途のデバイスではもっとも嫌われる元素である。
また、特許文献2には、光ディスクのクリーナーとしてホコリなどの付着を防止するために、クリーナーに耐電防止剤として界面活性剤を使用したものも知られており、その界面活性剤として、第4級アンモニウム塩も開示されている。
しかし、めっきの前処理に関する開示は一切ない。
【特許文献1】特公昭54−25500号公報
【特許文献2】特開平4−126800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、半導体ウエハーなどに均一に無電解めっき等のめっきを施すために行う、洗浄、および濡れ性向上のためのアルカリ性洗浄に使用する洗浄剤であって、アルカリ金属を含まないアルカリ性洗浄剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、鋭意検討した結果、アルカリ金属の代わりに水酸化テトラアルキルアンモニウム塩を使用することにより強アルカリ性とした洗浄剤を開発し、これにさらに洗浄効果を高めるため、りん酸またはその塩を添加した洗浄剤が有効であることを知見し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
[1] リン酸またはその塩を含み、水酸化テトラアルキルアンモニウム塩に よりpH11.5以上の強アルカリ性にしたアルカリ金属フリーめっき前洗 浄剤、
[2] リン酸がリン酸、メタリン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ピロリン酸から選ばれる前記[1]記載のアルカリ金属フリーめっき前洗浄剤、
[3] 無電解めっき用[1]または[2]記載のアルカリ金属フリーめっき前洗浄剤、
に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の洗浄剤は、アルカリ金属を含まず、半導体ウエハーに均一に無電解めっきを施すためのアルカリ性洗浄剤として特に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に使用する水酸化テトラアルキルアンモニウム塩は、アルカリ性洗浄剤を所定のpHに調整するためのpH調整剤である。この水酸化テトラアルキルアンモニウム塩における、そのアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基が好ましい。本発明においては、これを使用してアルカリ性洗浄剤をpH11.5以上に調整する。pHが11.5未満では基板表面に付く水酸基が少なく、濡れ性が十分に得られない。
【0007】
本発明のアルカリ性洗浄剤には、リン酸またはその塩が必要である。この成分の添加により洗浄効果を向上することができ、均一な無電解めっき等めっき皮膜の形成に寄与することができる。
本発明に使用するリン酸としては、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、次亜リン酸、ホスホン酸等であり、またその塩としては、前記リン酸のアンモニウム塩が好ましく、例えばリン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、次亜リン酸アンモニウム等が好ましい。
リン酸またはその塩のアルカリ性洗浄剤における濃度は、0.1〜500g/Lが好ましく、1〜100g/Lがより好ましい。この範囲よりも低いと、前記の効果が得られず、またこの範囲よりも高いと使用薬品の溶解度の問題が生じてくる。
【0008】
本発明の洗浄剤には、前記の他に必要に応じて、他の添加剤を使用してもよい。例えば、被めっき基板に対する洗浄剤の濡れ性を向上させるために界面活性剤を使用してもよい。このような界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、あるいはこれらの共重合体等のポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのノニオン系界面活性剤が好ましいが、アニオン系、カチオン系の界面活性剤を使用してもよい。
【0009】
本発明のアルカリ性洗浄剤は、すでに述べているように、特定のpHを有することが重要な水系洗浄剤であるが、アルコール、ケトンなど水溶性有機溶媒を本発明の目的の範囲内で混合して使用してもよい。
本発明のアルカリ性洗浄剤は、半導体ウエハーに特に好適なものであるが、金属めっきを施すための被めっき材に対しても有効なアルカリ性洗浄剤である。
このような半導体ウエハーとは別の他の好適な被めっき材としては、例えばガラス、セラミックス等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
半導体ウエハーなどの被めっき材は、本発明の洗浄剤中に浸漬するなどして洗浄されるが、この際に洗浄剤は加温することが好ましい。
また、本発明は、めっき前処理として、洗浄に使用するアルカリ性洗浄剤に関するものであり、洗浄後に施すめっき処理については特に制限はない。
【実施例】
【0010】
スパッタリング法により膜厚15nmの窒化タンタルが成膜されたシリコンウエハーに対して、下記の実施例1〜9および比較例1〜3に示すめっき前洗浄およびそれに続くめっき処理を行い、めっき前洗浄後の基板の濡れ性の確認およびめっき処理後のめっき膜の表面観察を目視により行った。
実施例1
前記ウエハーを、リン酸10g/L水溶液を水酸化テトラメチルアンモニウムによりpHを12,0にした洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハーは全面が濡れていた。その後、イミダゾールとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの等モル反応生成物であるシランカップリング剤を0.016重量%含んだ水溶液に塩化パラジウム水溶液を50mg/Lになるように添加して調製しためっき前処理剤に60℃で3分間浸漬処理後、次亜リン酸30g/Lに60℃で3分間浸漬処理し、無電解めっきを70℃で15分間実施した。めっき液の組成は、硫酸銅0.02モル/L、エチレンジアミン四酢酸塩0.16モル/L、グリオキシル酸0.03モル/L、ホスフィン酸0.1モル/L、2.2’−ビピリジル20mg/L、pH12.5(pH調整剤:水酸化テトラメチルアンモニウム)である。めっき膜は全面に均一に形成された。
【0011】
実施例2
前記ウエハーを、リン酸三アンモニウム15g/L、ポリエチレングリコール(MW4000)500mg/L水溶液を水酸化テトラメチルアンモニウムによりpHを11.5にした洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハーは全面が濡れていた。その後、実施例1と同様の方法でめっき前処理と無電解銅めっきを実施した。めっき膜は全面に均一に形成された。
【0012】
実施例3
前記ウエハーを、リン酸水素二アンモニウム20g/L水溶液を水酸化テトラエチルアンモニウムによりpHを12.5にした洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハーは全面が濡れていた。その後、実施例1と同様の方法でめっき前処理と無電解めっきを実施した。めっき膜は全面に均一に形成された。
【0013】
実施例4
前記ウエハーを、リン酸二水素アンモニウム25g/L、ポリプロピレングリコール(MW4000)1000mg/Lの水溶液を水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウムによりpHを12.0にした洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハーは全面が濡れていた。その後、実施例1と同様な方法でめっき前処理と無電解めっきを実施した。めっき膜は全面に均一に形成された。
【0014】
実施例5
前記ウエハーを、次亜リン酸アンモニウム12g/Lの水溶液を水酸化テトラブチルアンモニウムによりpHを12.0にした洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハーは全面が濡れていた。その後、実施例1と同様の方法でめっき前処理と無電解めっきを実施した。めっき膜は全面に均一に形成された。
【0015】
実施例6
前記ウエハーを、次亜リン酸50g/Lの水溶液を水酸化テトラメチルアンモニウムによりpHを11.5にした洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハーは全面が濡れていた。その後、実施例1と同様の方法でめっき前処理と無電解めっきを実施した。めっき膜は、全面に均一に形成された。
【0016】
実施例7
前記ウエハーを、ホスホン酸20g/Lの水溶液を水酸化テトラメチルアンモニウムによりpHを12.0にした洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハーは全面が濡れていた。その後、実施例1と同様な方法でめっき前処理と無電解めっきを実施した。めっき膜は全面に均一に形成された。
【0017】
実施例8
前記ウエハーを、ピロリン酸30g/Lの水溶液を水酸化テトラエチルアンモニウムによりpHを12.0にした洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハー全面が濡れていた。その後、実施例1と同様の方法でめっき前処理と無電解めっきを実施した。めっき膜は全面に均一に形成された。
【0018】
実施例9
前記ウエハーを、メタリン酸15g/Lの水溶液を水酸化テトラメチルアンモニウムによりpHを12.0にした洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハーは全面が濡れていた。その後、実施例1と同様の方法でめっき前処理と無電解めっきを実施した。めっき膜は全面に均一に形成に形成された。
【0019】
比較例1
前記ウエハーを、リン酸10g/Lの水溶液を水酸化テトラメチルアンモニウムによりpHを10.0にした洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハーは一部水をはじいていた。その後、実施例1と同様の方法でめっき前処理と無電解めっきを実施した。めっき膜は基板端部が未析出であった。
【0020】
比較例2
前記ウエハーを、リン酸10g/L(強酸性)の洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハーは全面水をはじいていた。その後、実施例1と同様の方法でめっき前処理と無電解めっきを実施した。めっき膜は所々が未析出であった。また、一部に膨れが発生した。
【0021】
比較例3
前記ウエハーを、水に水酸化テトラエチルアンモニウムを添加することによりpHを12.0にした洗浄剤を用いて60℃で3分間浸漬処理した。水洗後のウエハーは全面が濡れていた。その後、実施例1と同様の方法でめっき前処理と無電解めっきを実施した。めっき膜は全面に形成されたものの、一部に膨れが発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸またはその塩を含み、水酸化テトラアルキルアンモニ ウム塩によりpH11.5以上の強アルカリ性にしたアルカリ金属フリーめ っき前洗浄剤。
【請求項2】
リン酸がリン酸、メタリン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ピロリン酸から選ばれる請求項1記載のアルカリ金属フリーめっき前洗浄剤。
【請求項3】
無電解めっき用請求項1または2記載のアルカリ金属フリーめっき前洗浄剤。

【公開番号】特開2006−104515(P2006−104515A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292497(P2004−292497)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(591007860)株式会社日鉱マテリアルズ (545)
【Fターム(参考)】