説明

アルツハイマー病の治療に有効な化合物およびそれら化合物を含む製剤

アセチルコリンエステラーゼ−抑制アルカロイドとのフロログルシノール塩、およびそれらの製造方法。前記塩はうつ病およびアルツハイマー病の治療に有効であり、慣用の薬剤製剤として、あるいは放出を制御した経皮性製剤として投与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアセチルコリンエステラーゼ−抑制アルカロイドとのフロログルシノール塩類に関し、さらにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー前駆物質蛋白質(Alzheimer Precursor Protein:APP)の変換生成物であるアミロイドペプチドAβ1−42は、アルツハイマー病の出現に重要な役割を演ずる(Nature Medicine, , 28−29, 1997; Science, 275, 630−1, 1997)。
【0003】
遺伝によって受継いだアルツハイマー病を有する患者のAPP抗知覚突然変異はAβ1−42の放出を増加させる。プレセニリン1および2突然変異もAβ1−42を増加させる。
【0004】
突然変異したAPPを示す遺伝形質を転換したマウスは、加令によるβ−アミロイド沈着物を過多に発達させて認知障害を有する(Science, 1996, 274, 99−102; Nature, 373, 523−27, 1995)。
【0005】
病原性β−アミロイドの蛋白質分解分裂はβ−およびγ−セクレターゼによって媒介される。α−セクレターゼはAPPを可溶性、非−病源性の形態に転換させ、大脳レベルの血管のアミロイド沈着を減少させる。α−セクレターゼはm1およびm3ムスカリン受容体の媒介でアセチルコリンによって刺激される(Science 1992, 258, 304−307)。細胞内メディエーターは蛋白質キナーゼC(PKC)である(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990, 87, 6003−6006)。
【0006】
アセチルコリンエステラーゼ−抑制アルカロイドのあるものは、明らかにα−セクレターゼの間接的な刺激によりアルツハイマー病の治療に有効であるとわかった。例えば、ガランタミンはアセチルコリンエステラーゼを抑制してアセチルコリンを増加させる。これはM1およびM3ムスカリン受容体を通じてPKCを活性化し、それによりα−セクレターゼの増加と、引続いて起る病原性アミロイドの減少をもたらす。
【0007】
フィソスチグミン、フペルジンおよびタクリンはアセチルコリンエステラーゼ−抑制アルカロイドの他の例である。NMDA拮抗性アルカロイド(例えばメマンチン)、ヌートロピック、コリン作用剤、グルタミン拮抗剤、セロトニン作用剤、MAO抑制剤、PKC活性化剤、ムスカリン作用剤もまた好便にこの目的に使用される。
【0008】
上に述べたことから考えて、選択的にPKCを活性化する物質、特に神経細胞中のみに存在するPKC−γを活性化する物質を使用することがアルツハイマー病の治療にとって重要な解決法である。さらに、直接または間接にα−セクレターゼを刺激するすべての物質は病原性β−アミロイドの重要な抑制剤であり、したがってアルツハイマー病の治療に適当である。
【0009】
抗コリンエステラーゼアルカロイドとのハイパーフォリン塩が、アルツハイマー病の治療に特に興味深いものとして最近WO/99/41220に開示された。しかしながら、その後、前記塩の薬理活性が生体内で代謝反応のため減少することが認められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、フロログルシノール塩、特にテトラヒドロ−およびオクタヒドロ−ハイパーフォリン、またはアドハイパーフォリン誘導体の塩およびアルカロイドとのコルポロン塩は新陳代謝的に安定であり、単一の化合物やWO/99/41220に記載の塩に較べて高いα−セクレターゼ活性を誘起することが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の化合物は一般式(I)を有する:
[A][B] (I)
ただし[A]は式(II)のアニオン
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、nは0または1;Rがイソ−ペンテニルであるときはRがヒドロキシルでRが水素であり;Rがイソ−ペンチルであるときはRがヒドロキシルでRが水素であるか、またはRとRが一緒になってカルボニルを形成する。]
であるかまたは[A]は式(III)のコルポロンのアニオンであり、
【0014】
【化2】

【0015】
式(II)および(III)はまた相当する互変形を含んでおり;
そして[B]は、抗コリンエステラーゼ剤、NMDA−拮抗剤、ヌートロピック、コリン作用剤(cholinergics)、グルタミン拮抗剤、セロトニン作用剤(serotoninergics)、MAO抑制剤、PKC活性化剤、ムスカリン作用剤、ビンカミン、アポビンカミン、チニジンおよびエセロリンから選ばれるアルカロイドのカチオンである。
【0016】
好ましい抗コリンエステラーゼ剤はガランタミン、フィソスチグミン、フペルジンおよびタクリンであり;好ましいNMDA−拮抗剤はメマンチンである。
【0017】
さらに、特に好ましいのは次の塩である:
ガランタミンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
フィソスチグミンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
メマンチンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
ビンカミンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
アポビンカミンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
チニジンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
エセロリンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
タクリンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
コルポロンとのガランタミン塩。
【0018】
ハイパーフォリンおよびアドハイパーフォリン飽和誘導体はセイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)の花の先端に冨化されたもののヘキサンまたはエーテル抽出物の直接還元によって得ることができる。
【0019】
特に、テトラヒドロ−誘導体は水素化物による還元によって得ることができ、一方オクタヒドロ−誘導体は、WO 03/09114に記載のように、接触水素化によるイソプレン鎖の化学選択的還元によって得ることができる。
【0020】
ハイパーフォリン誘導体およびコルポロンは、当業者周知の慣用法にしたがって上述のアルカロイドで塩にされる。
【0021】
本発明の塩は強力な抗うつ性および抗アルツハイマー作用を有する安定な結晶生成物である。α−セレクターゼによるAPP放出に対する本発明化合物の効果は、Galbete J.L.らによってBiochem. 348, 307−313, 2000に報告された事項にしたがって、神経芽腫細胞ライン(SH−SY5Y)の培養媒体中で測定した。次表に報告の結果は、試験化合物がα−セレクターゼの媒介するAPP代謝を活性化して培養媒体中に分泌されるAPPを増加させることを示している。
【0022】
【表1】

【0023】
また本発明の化合物がアセチルコリンエステラーゼ抑制剤としても蛋白質キナーゼC活性化剤としても活性であることが観測されている。
【0024】
それ故、本発明はまた式(I)の塩を含む薬剤組成物にも関する。前記組成物は、RemingtonのPharmaceutical Sciences Handbook, XVII Ed., Mack Pub., N.Y., U.S.A.に報告されたもののような、慣用法にしたがって製造されたソフト−ゼラチンカプセル、ハード−ゼラチンカプセル、錠剤、座薬および放出制御製剤の形態となるであろう。
【0025】
好ましい薬剤の形態はハード−およびソフト−ゼラチンカプセル、錠剤、および経皮性プラスターである。後者の場合、本発明化合物の放出制御は、プラスターを大脳の頚動脈支配領域に近い部分に置くことによって得ることができる。製剤中の化合物の投与量は1日1回当り10〜100mgの範囲である。
【0026】
本発明を次の実施例によりさらに詳しく説明する。
【0027】
実施例1 ガランタミンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
3.4033gのオクタヒドロハイパーフォリンを室温で10mlのMeOH中に溶解する。この溶液に5mlのMeOH中に溶解した1.72gのガランタミンを加える。この溶液に僅か濁るまで水を加え、冷蔵庫中に一夜放置する。次の物理−化学的特性を有するガランタミンオクタヒドロハイパーフォリネートが得られる:
H−NMR(300 MHz CDCl): δ 6.72(1H,d,J=8.5 Hz,CH), 6.68(1H,d,J=8.5 Hz,CH), 6.07(1H,s,CH), 4.66(1H,m,CH), 4.18(1H,m,CH), 3.88(3H,s,CH), 3.79(2H,d,J=15.0 Hz,CH), 3.38(1H,t,J=13.6 Hz,CH), 3.14(1H,td,J=13.6, 4.0 Hz,CH), 2.73(1H,dd,J=16.0および4.8 Hz,CH), 2.48(3H,s,CH), 1.93−1.00(22H,m,H−4,H−11,CH−5,CH−15,CH−16,CH−17,CH−21,CH−22,CH−26,CH−27,CH−31,CH−32), 1.00−0.80(24H,d,CH−19,CH−20,CH−24,CH−25,CH−29,CH−30,CH−34,CH−35), 1.20, 1.06(6H,d,J=6.3 Hz,CH−12,CH−13), 0.91(3H,s,CH−14).
13C−NMR(75 MHz CDCl): δ 211.41, 208.09, 146.20, 144.85, 133.12, 128.22, 127.31, 126.68, 122.77, 121.36, 111.80, 88.87, 62.29, 60.35, 56.18, 53.81, 49.29, 48.30, 42.16, 42.06, 41.39, 41.25, 40.34, 37.82, 37.75, 37.60, 33.68, 33.30, 30.11, 29.88, 29.04, 28.49, 28.38, 28.16, 26.90, 23.98, 22.96, 22.88, 22.82, 22.72, 22.68, 22.61, 21.88, 21.16, 20.89, 14.82.
ESIMS m/z 288[ガランタミン+H](100),543[オクタヒドロハイパーフォリン−H](100),1109[2(オクタヒドロハイパーフォリン−H)+Na](92).
【0028】
実施例2 フィソスチグミンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
実施例Iに記載の方法にしたがって、フィソスチグミン塩基をオクタヒドロハイパーフォリンの当量で塩にする。次の物理−化学的特性および分光特性を有するフィソスチグミンオクタヒドロハイパーフォリネートが得られる:
H−NMR(300 MHz CDCl): δ 6.86(1H,dd,J=8.3および2.2 Hz,CH), 6.81(1H,d,J=2.2 Hz,CH), 6.41(1H,d,J=8.3 Hz,CH), 4.28(2H,s,CH), 2.98(3H,s,CH), 2.91(2H,d,J=4.8 Hz,CH), 2.86(3H,m,CH), 2.60(3H,m,CH), 1.48(3H,m,CH), 1.93−1.00(22H,m,H−4,H−11,CH−5,CH−15,CH−16,CH−17,CH−21,CH−22,CH−26,CH−27,CH−31,CH−32), 1.00−0.80(24H,d,CH−19,CH−20,CH−24,CH−25,CH−29,CH−30,CH−34,CH−35), 1.20, 1.06(6H,d,J=6.3 Hz,CH−12,CH−13), 0.91(3H,s,CH−14).
13C−NMR(75 MHz CDCl): δ 211.73, 208.47, 156.37, 149.17, 144.02, 137.03, 121.19, 121.13, 116.47, 107.38, 97.82, 77.71, 77.28, 76.86, 53.44, 53.21, 49.07, 42.20, 41.12, 40.33, 37.89, 37.72, 37.56, 33.71, 29.95, 29.10, 28.51, 28.35, 28.19, 27.95, 27.27, 26.90, 24.05, 22.99, 22.96, 22.90, 22.85, 22.79, 22.70, 22.63, 21.93, 21.31, 20.88, 14.74.
ESIMS m/z 276[フィソスチグミン+H](100),[2フィソスチグミン+Na](34),543[オクタヒドロハイパーフォリン−H](100),1109[2(オクタヒドロハイパーフォリン−H)+Na](23).
【0029】
実施例3 メマンチンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
実施例Iに記載の方法にしたがって、メマンチン塩基をオクタヒドロハイパーフォリンの当量で塩にする。次の物理−化学的特性および分光特性を有するメマンチンオクタヒドロハイパーフォリネートが得られる:
H−NMR(300 MHz CDCl): δ 2.38, 2.21, 1.19, 1.12, 1.0, 0.97, 0.96, 0.95, 0.93, 0.92, 0.90, 0.88.
13C−NMR(75 MHz CDCl): δ 211.72, 121.11, 60.03, 50.52, 50.16, 48.79, 43.06, 42.51, 42.19, 41.01, 40.36, 37.86, 37.60, 33.67, 32.90, 30.45, 30.36, 30.13, 29.96, 29.05, 28.61, 28.19, 26.98, 24.00, 22.98, 22.87, 22.75, 22.66, 22.61, 21.98, 21.26, 20.87, 14.83.
ESIMS m/z 180[メマンチン+H](100),[M+H](34),543[オクタヒドロハイパーフォリン−H](100),1109.
【0030】
実施例4 ビンカミンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
実施例I記載の方法にしたがって、MeOH容量を他のアルカロイドと較べて増加させて、ビンカミンをオクタヒドロハイパーフォリンの当量で塩にする。次の物理−化学的特性および分光特性を有するビンカミンオクタヒドロハイパーフォリネートが得られる:
H−NMR(300 MHz CDCl): δ 7.53(1H,m,CH)− 7.18(3H,m,CH)−14 1.93−1.00(22H,m,H−4,H−11,CH−5,CH−15,CH−16,CH−17,CH−21,CH−22,CH−26,CH−27,CH−31,CH−32), 1.00−0.80(24H,d,CH−19,CH−20,CH−24,CH−25,CH−29,CH−30,CH−34,CH−35), 1.20, 1.06(6H,d,J=6,3 Hz,CH−12,CH−13), 0.91(3H,s,CH−14).
13C−NMR(75 MHz CDCl): δ 207.42, 174.47, 134.63, 128.92, 122.37, 121.62, 120.79, 118.85, 110.72, 105.99, 82.09, 59.62, 54.60, 51.31, 49.57, 44.86, 44.50, 42.40, 41.08, 40.22, 37.83, 37.68, 37.47, 35.57, 33.69, 29.83, 29.15, 29.07, 28.50, 28.40, 28.16, 26.91, 24.96, 23.78, 22.96, 22.93, 22.87, 22.79, 22.69, 22.63, 21.81, 21.13, 20.80, 20.52, 16.95.
ESIMS m/z 355[ビンカミン+H](100),543[オクタヒドロハイパーフォリン−H](100).
【0031】
実施例5 アポビンカミンとのオクタヒドロアドハイパーフォリン塩;
実施例I記載の方法にしたがって、アポビンカミン塩基をオクタヒドロハイパーフォリンの当量で塩にする。次の物理−化学的特性および分光特性を有するアポビンカミンオクタヒドロハイパーフォリネートが得られる:
H−NMR(300 MHz CDCl): δ 7.51(1H,m,CH), 7.22(1H,m,CH), 6.18(1H,m,CH), 5.07(4H,m,CH), 3.99(3H,m,CH), 1.93−1.00(22H,m,H−4,H−11,CH−5,CH−15,CH−16,CH−17,CH−21,CH−22,CH−26,CH−27,CH−31,CH−32), 1.00−0.80(24H,d,CH−19,CH−20,CH−24,CH−25,CH−29,CH−30,CH−34,CH−35), 1.20, 1.06(6H,d,J=6,3 Hz,CH−12,CH−13), 0.91(3H,s,CH−14).
13C−NMR(75 MHz CDCl): δ 211.4, 191.3, 184.6, 163.7, 134.7, 128.8, 128.6, 127.7, 122.8, 120.9, 118.7, 112.9, 108.6, 82.7, 61.5, 56.3, 51.3, 47.7, 41.5, 40.5, 38.2, 37.9, 37.7, 33.9, 30.5, 29.6, 28.7, 28.3, 28.1, 27.1, 23.3, 23.1, 23.0, 22.8, 22.7, 22.4, 22.0, 14.0.
ESIMS m/z 337[アポビンカミン+H](100),543[オクタヒドロハイパーフォリン−H](100).
【0032】
実施例6 チニジンとのオクタヒドロアドハイパーフォリン塩;
実施例Iに記載の方法にしたがって、チニジン塩基をオクタヒドロハイパーフォリンの当量で塩にする。次の物理−化学的特性および分光特性を有するチニジンオクタヒドロハイパーフォリネートが得られる:
H−NMR(300 MHz CDCl): 艨@8.78(1H,d(4.6),CH), 7.95(1H,d(9.2),CH), 7.64(1H,d(4.6),CH), 7.34(1H,dd(9.2 および 2.6),CH), 7.30(1H,m,CH), 6.05(1H,m,CH), 5.14(6H,m), 3.86(4H,m), 3.18(5H,m), 1.93−1.00(22H,m,H−4,H−11,CH−5,CH−15,CH−16,CH−17,CH−21,CH−22,CH−26,CH−27,CH−31,CH−32), 1.00−0.80(24H,d,CH−19,CH−20,CH−24,CH−25,CH−29,CH−30,CH−34,CH−35), 1.20, 1.06(6H,d,J=6,3 Hz,CH−12,CH−13), 0.91(3H,s,CH−14).
13C−NMR(75 MHz CDCl): 艨@211.4, 191.3, 184.6, 158.2, 147.7, 147.1, 144.5, 126.8, 121.3, 101.7, 82.7, 61.5, 56.2, 51.3, 47.7, 41.5, 40.5, 38.2, 37.9, 37.7, 33.9, 30.5, 29.6, 28.7, 28.3, 28.1, 27.1, 23.3, 23.1, 23.0, 22.8, 22.7, 22.4, 22.0, 14.0.
ESIMS m/z 325[チニジン+H](100),543[オクタヒドロハイパーフォリン−H](100).
【0033】
実施例7 エセロリンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
実施例I記載の方法にしたがって、エセロリン塩基をオクタヒドロハイパーフォリンの当量で塩にする。次の物理−化学的特性ならびに分光特性を有するエセロリンオクタヒドロハイパーフォリネートが得られる:
H−NMR(300 MHz CDOD): δ 6.68(1H,dd,J=9.8および2.7 Hz,CH), 6.66(1H,s,CH), 6.55(1H,d,J=7.8 Hz,CH), 3.38(1H,m,CH), 3.25(2H,m,CH), 3.07(3H,s,CH), 2.85(3H,s,CH), 1.93−1.00(22H,m,H−4,H−11,CH−5,CH−15,CH−16,CH−17,CH−21,CH−22,CH−26,CH−27,CH−31,CH−32), 1.00−0.80(24H,d,CH−19,CH−20,CH−24,CH−25,CH−29,CH−30,CH−34,CH−35), 1.20, 1.06(6H,d,J=6.3 Hz,CH−12,CH−13), 0.91(3H,s,CH−14).
13C−NMR(75 MHz CDCl): δ 207.36, 121.60, 53.26, 49.59, 42.41, 41.59, 41.09, 40.20, 37.81, 37.67, 37.46, 33.69, 29.82, 29.05, 28.49, 28.40, 28.17, 26.90, 23.76, 22.96, 22.93, 22.87, 22.79, 22.68, 22.63, 21.82, 21.11, 20.80, 15.22.
ESIMS m/z 219[エセロリン+H](100),1111[2オクタヒドロハイパーフォリン+Na](72),567[オクタヒドロハイパーフォリン+Na](27),543[オクタヒドロハイパーフォリン−H](100),1109[2(オクタヒドロハイパーフォリン−H)+Na](29).
【0034】
実施例8 タクリンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
実施例I記載の方法にしたがって、タクリン塩基をオクタヒドロハイパーフォリンの当量で塩にする。次の物理−化学的特性および分光特性を有するタクリンオクタヒドロハイパーフォリネートが得られる:
H−NMR(300 MHz CDOD): δ 8.37(1H,d,J=8.8 Hz,CH), 7.91(1H,t,J=7.8 Hz,CH), 7.78(1H,d,J=8.1 Hz,CH), 7.65(1H,t,J=8.0 Hz,CH), 3.05(2H,t,J=5.8 Hz,CH), 2.68(2H,t,J=5.8 Hz,CH), 2.46(2H,m,CH), 2.02(2H,m,CH), 93−1.00(22H,m,H−4,H−11,CH−5,CH−15,CH−16,CH−17,CH−21,CH−22,CH−26,CH−27,CH−31,CH−32), 1.00−0.80(24H,d,CH−19,CH−20,CH−24,CH−25,CH−29,CH−30,CH−34,CH−35), 1.20, 1.06(6H,d,J=6,3 Hz,CH−12,CH−13), 0.91(3H,s,CH−14).
13C−NMR(75 MHz CDCl): δ 212.51, 210.48, 155.50, 152.00, 138.00, 132.67, 125.97, 123.70, 120.21, 115.58, 109.09, 60.47, 48.40, 42.17, 41.61, 41.34, 40.57, 40.38, 40.01, 38.20, 37.84, 37.62, 33.76, 30.17, 29.12, 28.72, 28.41, 28.12, 26.92, 24.04, 22.98, 22.90, 22.88, 22.80, 22.73, 22.61, 22.46, 22.17, 21.86, 21.21, 21.10, 14.73.
ESIMS m/z 199[タクリン+H](100),543[オクタヒドロハイパーフォリン−H](100).
【0035】
実施例9 コルポロンとのガランタミン塩;
実施例I記載の方法にしたがって、ガランタミン塩基をコルプロンの当量で塩にする。この塩は次の物理−化学的特性および分光特性を有する:
H−NMR(300 MHz CDCl): δ 6.73(1H,d,J=7.6 Hz,CH), 6.69(1H,d,J=8.5,CH), 6.07(1H,s,CH), 5.18(1H,s,ブロード化したシングレット,CH), 4.84(1H,ブロード化したシングレット,CH), 4.67(1H,t,J=3.0, CH), 4.28−3.87(2H,d,J=15.0, CH), 4.19(1H,m,CH), 3.88(3H,s,CH), 3.46−3.22(2H,td−m,J=14.0, 2.0, CH), 2.74−2.30(2H,dd−dd,J=16.1, 4.4−5.1, 2.4, CH), 2.53(3H,s,CH), 2.41(2H,d,J=7.4, CH), 2.15−1.76(2H,td−m,J=14.0, 3.1, CH), 1.81(3H,s,CH), 1.73(3H,s,CH), 1.62(3H,s,CH), 1.59(3H,s,CH), 1.17(3H,d,J=6.7, CH), 2.68−2.55(2H,m,CH).
13C−NMR(75 MHz CDCl): δ 212.33, 203.98, 200.59 182.63, 146.32, 145.2, 134.45, 133.14, 128.73, 126.20, 123.19, 122.94, 119.23, 111.96, 88.84, 59.88, 56.21, 53.63, 48.10, 40.95, 37.78, 30.13, 26.06, 26.02, 19.09, 18.18, 18.10.
ESIMS m/z 288[ガランタミン+H](100),597[2ガランタミン+Na](22),399[コルプロン−H](100).
【0036】
実施例10 ガランタミンオクタヒドロハイパーフォリネートを含む製剤;
10mgのガランタミンオクタヒドロハイパーフォリネートを80mgのラクトース、5mgのステアリン酸マグネシウムで稀釈してハードゼラチンカプセル中に配分する。
【0037】
実施例11 ガランタミンオクタヒドロハイパーフォリネートを含む経皮性プラスター;
ゲル状の所定薬剤を得るため、10%のガランタミンオクタヒドロハイパーフォリネートおよび15%のN−メチル−2−ピロリドンを含む、アクリレート(Durotak 387−22−87)をベースとする粘着性の懸濁液を製造した。このゲルをコーティング用器具によってポリエステルフィルム(S2016)上に沈着させた。80℃で10分間乾燥後、乾燥した薬剤にポリエステルフィルム(Scotchpack 1109)を積層した。得られたシートを所望サイズのプラスターにカットした。
【0038】
実施例12 メンタミンオクタヒドロハイパーフォリネートを含む経皮性プラスター;
薬剤のゲルを供与するため、医療用シリコーン接着剤(Dow Corning MD 7−4502)10g中に0.050gのメンタミンオクタヒドロハイパーフォリネートを懸濁させた。このゲルをコーティング用器具によってポリエステルフィルム(S2016)上に溶媒で沈着させた。80℃で10分間乾燥後、ポリエステルフィルム(Scotchpack 1109)を乾燥した薬剤のゲル上に積層し、得られたシートを所望サイズのプラスターにカットした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の塩:
[A][B] (I)
ただし[A]は式(II)のアニオン
【化1】

[式中、nは0または1;Rがイソ−ペンテニルであるときはRがヒドロキシルでRが水素であり;Rがイソ−ペンチルであるときはRがヒドロキシルでRが水素であるか、またはRとRが一緒になってカルボニルを形成する。]
であるかまたは[A]は式(III)のコルポロンのアニオンであり、
【化2】

式(II)および(III)はまた相当する互変形を含んでおり;
そして[B]は抗コリンエステラーゼ剤、NMDA−拮抗剤、ヌートロピック、コリン作用剤、グルタミン拮抗剤、セロトニン作用剤、MAO抑制剤、PKC活性化剤、ムスカリン作用剤、ビンカミン、アポビンカミン、チニジンおよびエセロリンから選ばれるアルカロイドのカチオンである。
【請求項2】
前記抗コリンエステラーゼアルカロイドがガランタミン、フィソスチグミン、フペルジンおよびタクリンから選ばれる、請求項1記載の塩。
【請求項3】
前記NMDA−拮抗剤アルカロイドがメマンチンである、請求項1記載の塩。
【請求項4】
ガランタミンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
フィソスチグミンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
メマンチンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
ビンカミンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
アポビンカミンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
チニジンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
エセロリンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
タクリンとのオクタヒドロハイパーフォリン塩;
コルポロンとのガランタミン塩;
から選ばれる化合物。
【請求項5】
薬剤としての請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塩。
【請求項6】
アルツハイマー病の治療用薬剤の製造のための請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塩の使用。
【請求項7】
うつ病の治療用薬剤の製造のための請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塩の使用。
【請求項8】
適当な賦形剤および/またはキャリヤーと混合されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塩を含む、薬剤組成物。
【請求項9】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塩を含む、カプセル。
【請求項10】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塩を含む、経皮性プラスター。

【公表番号】特表2007−505152(P2007−505152A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529917(P2006−529917)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005644
【国際公開番号】WO2004/106275
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】