説明

アルミニウム電極配線用のガラス組成物と導電性ペースト、そのアルミニウム電極配線を具備する電子部品、及び、この電子部品の製造方法

【課題】鉛を含まず、アルミニウム(Al)の仕事関数より電極配線としての見かけの仕事関数が小さくなるアルミニウム電極配線用のガラス組成物を提供する。
【解決手段】アルミニウムより仕事関数が小さい元素の酸化物から構成される。この酸化物は、バナジウム(V)の酸化物と、アルカリ土類金属の酸化物と、アルカリ金属の酸化物とから構成され、アルカリ土類金属の元素としてはカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)の元素の内少なくともバリウムを含む1種以上の元素がなり、アルカリ金属の元素としてはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)の元素の内少なくとも1種以上の元素がなる。バナジウムの元素が五酸化バナジウム(V)として含まれているとした場合に、五酸化バナジウムを40〜70重量%含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電極配線用のガラス組成物と導電性ペースト、そのアルミニウム電極配線を具備する電子部品、及び、この電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セル、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)の電子部品には、電極配線が形成されている。その電極配線は導電性ペーストを用いて形成されている。導電性ペーストには、金属粒子として、銀(Ag)やアルミニウム(Al)が用いられている。電極配線は、導電性ペーストを大気中、高温で焼成することによって形成されるが、導電性ペーストは金属粒子の他にもガラス組成物の粉末を有しており、導電性ペーストの焼成時には、そのガラス組成物の軟化点以上の温度に加熱されることで、ガラス組成物が軟化流動し、銀電極配線とアルミニウム電極配線は緻密になるとともに基板に強固に接着する。
【0003】
このガラス組成物には、比較的に低温で軟化流動する、酸化鉛(PbO)を主成分とするガラス組成物が使用されている。しかし、そのガラス組成物に含まれる酸化鉛は有害な物質であり、環境負荷への低減を図るために、太陽電池セルやプラズマディスプレイパネル等の電子部品では、鉛フリーのガラス組成物が電極配線に適用されるようになってきた。たとえば、特許文献1では、太陽電池セルに形成される銀(Ag)電極配線及びアルミニウム(Al)電極配線に、酸化ビスマス(Bi)と酸化シリコン(SiO)を含む鉛フリーガラスが提案されている。また、特許文献2では、太陽電池セルに形成されるアルミニウム電極配線に、酸化ビスマスと酸化ボロン(B)を含む鉛フリーガラスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−543080号公報
【特許文献2】特開2006−332032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品で、(見かけの)仕事関数が小さい電極配線が必要な場合には、アルミニウム電極配線が用いられている。たとえば、pn接合を有する太陽電池セルでは、n型半導体側には銀電極配線が適用されるが、変換効率を向上するために、p型半導体側にはアルミニウム電極配線が適用されている。
【0006】
アルミニウム電極配線に酸化鉛を主成分とするガラス組成物を使用すると、鉛の仕事関数はアルミニウムより小さいので、アルミニウム電極配線の見かけの仕事関数を、アルミニウムの仕事関数程度に小さくすることができる。一方、特許文献1と特許文献2で提案されている鉛フリーガラスの構成元素であるビスマス、シリコン、ボロンは、アルミニウムより仕事関数が大きく、電極配線としての見かけの仕事関数は、鉛を用いた電極配線の見かけの仕事関数より大きくなっていると考えられた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、鉛を含まず、アルミニウムの仕事関数より電極配線としての見かけの仕事関数が小さくなるアルミニウム電極配線用のガラス組成物を提供し、それを用いた導電性ペーストを提供し、そのアルミニウム電極配線を具備する電子部品を提供し、さらに、この電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、アルミニウムより仕事関数が小さい元素の酸化物から構成されることを特徴とするアルミニウム電極配線用のガラス組成物であることを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、ガラス組成物からなる粉末とが、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に分散しているアルミニウム電極配線用の導電性ペーストであって、
前記粉末となる前記ガラス組成物には、本発明のアルミニウム電極配線用のガラス組成物が用いられていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、前記粒子を基板に固定するガラス組成物とを有するアルミニウム電極配線を具備する電子部品であって、
前記粒子を基板に固定する前記ガラス組成物には、本発明のアルミニウム電極配線用のガラス組成物が用いられていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、アルミニウムより仕事関数が小さい元素の酸化物から構成されるガラス組成物からなる粉末とが、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に分散している導電性ペーストを基板に塗布し、
塗布した前記導電性ペーストを焼成して、アルミニウム電極配線を形成する電子部品の製造方法であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鉛を含まず、アルミニウムの仕事関数より電極配線としての見かけの仕事関数が小さくなるアルミニウム電極配線用のガラス組成物を提供でき、それを用いた導電性ペーストを提供でき、そのアルミニウム電極配線を具備する電子部品を提供でき、さらに、この電子部品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の第1の実施形態に係る太陽電池セル(電子部品)の平面図である。
【図1B】本発明の第1の実施形態に係る太陽電池セル(電子部品)の底面図である。
【図1C】図1AのA−A′方向の矢視断面図である。
【図2】本発明の第4の実施形態に係るプラズマディスプレイパネル(電子部品)の断面図の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、アルミニウム(Al)より仕事関数が小さい元素の酸化物から構成されるガラス組成物を、アルミニウム電極配線に適用し、不可避の元素以外にアルミニウムより仕事関数が大きい元素の酸化物を含まないようにすることによって、このアルミニウム電極配線を形成した電子部品の性能を向上できることを見出した。たとえば、太陽電池セルでは、詳細は後記するが変換効率を向上できた。ガラス組成物でない結晶物においても、アルミニウムより仕事関数が小さい元素からなる酸化物は、数多く存在するが、結晶物の場合には、電極焼成温度以下で良好な軟化流動性を有しておらず、電子部品への良好なアルミニウム電極配線の形成がしにくい、或いはできないと言った問題がある。そのため、アルミニウム電極配線の形成には、ガラス組成物の含有が有効である。そして、このガラス組成物は、少なくとも、バナジウム(V)の酸化物と、アルカリ土類金属の酸化物と、アルカリ金属の酸化物とから構成されることが好ましいことを、本発明者らは見出した。
【0015】
【表1】

表1に、各種元素の仕事関数を示した。元素としては、アルミニウム(Al)と、ガラス主成分元素として、バナジウム(V)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)を取り上げた。また、ガラス組成物のガラス化を促進させるために添加するガラス化元素として、シリコン(Si)、ボロン(B)、リン(P)、テルル(Te)を取り上げた。アルカリ土類金属に属する元素としては、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)を取り上げた。アルカリ金属に属する元素としては、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)を取り上げた。ガラス組成物に添加されるその他の元素として、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)を取り上げた。
【0016】
そして、表1では、アルミニウムの仕事関数4.25eVを基準として、各種元素の仕事関数を評価した。アルミニウムの仕事関数4.25eVより0.25eV小さい4.00eV未満の仕事関数を有する元素を、アルミニウムより仕事関数が顕著に小さい元素として、「◎」評価とした。4.00eV以上で、かつ、4.24eV未満の仕事関数を有する元素を、アルミニウムより仕事関数が若干小さい元素として、「○」評価とした。4.24eV以上で、かつ、アルミニウムの仕事関数4.25eV以下の仕事関数を有する元素を、アルミニウムと同等の仕事関数を有する元素として、「△」評価とした。アルミニウムの仕事関数4.25eVを超える仕事関数を有する元素を、アルミニウムより大きい仕事関数を有する元素として、「×」評価とした。なお、表1の各種元素の仕事関数は、V.S.Fomenko, Handbook of Thermionic Properties, Plenum Press (1966)から引用した。リン(P)の仕事関数に関しては、記載されてはいなかったので引用せず、タングステン(W)の電極配線にリン(P)をコートすることにより、タングステンの電極配線の見かけの仕事関数が、タングステン(W)の仕事関数より大きくなることから、リン(P)の仕事関数は、タングステン(W)の仕事関数4.54eVより大きい(リン(P)の仕事関数>4.54eV)と判断した。
【0017】
表1の仕事関数評価によれば、「◎」評価となった元素は、アルカリ土類金属に属するバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)と、アルカリ金属に属するセシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)であった。これらのアルカリ土類金属に属する元素と、アルカリ金属に属する元素は、アルミニウムより仕事関数が小さいことがわかった。
【0018】
「○」評価となった元素は、バナジウム(V)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)であった。バナジウム(V)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)は、アルミニウムより仕事関数が小さいことがわかった。「△」評価となった元素は、亜鉛(Zn)であった。亜鉛(Zn)は、アルミニウムと仕事関数が同程度であることがわかった。一方、「×」評価となった元素は、ガラス主成分元素のビスマス(Bi)と錫(Sn)、ガラス化元素のシリコン(Si)、ボロン(B)、リン(P)、テルル(Te)と、鉄(Fe)と、タングステン(W)であった。ガラス主成分元素のビスマス(Bi)と錫(Sn)、ガラス化元素のシリコン(Si)、ボロン(B)、リン(P)、テルル(Te)と、鉄(Fe)と、タングステン(W)は、アルミニウムより仕事関数が大きいことがわかった。
【0019】
これらより、アルミニウム配線電極の見かけの仕事関数を小さくできるガラス組成物を構成する元素としては、「◎」評価の、アルカリ土類金属に属するバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)と、アルカリ金属に属するセシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)と、「○」評価の、バナジウム(V)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)が適していると考えられた。
【0020】
一方、「×」評価の、ガラス化元素のシリコン(Si)、ボロン(B)、リン(P)、テルル(Te)は、アルミニウム配線電極の見かけの仕事関数を小さくできるガラス組成物を構成する元素としては、適していないと考えられた。また、「×」評価の、鉛フリーガラスとして、鉛(Pb)に替わって用いられるビスマス(Bi)と錫(Sn)も、アルミニウム配線電極の見かけの仕事関数を小さくできるガラス組成物を構成する元素としては、適していないと考えられた。Pb-B-Si-Oのガラス系をなすガラス組成物を有するアルミニウム電極配線を太陽電池セルに適用した場合に比べ、Bi-B-Si-Oのガラス系をなすガラス組成物を有するアルミニウム電極配線を太陽電池セルに適用した場合の方が、変換効率が低くなる傾向があるが、これはガラス組成物を構成する元素の鉛(Pb)とビスマス(Bi)の仕事関数の差によるものと考えられた。また、「△」評価の亜鉛(Zn)と、「×」評価の鉄(Fe)、タングステン(W)も、アルミニウム配線電極の見かけの仕事関数を小さくできるガラス組成物を構成する元素としては、適していないと考えられた。
【0021】
表1の仕事関数評価から、アルミニウム電極配線のガラス組成物のガラス主成分元素としては、鉛(Pb)に替えて、「○」評価のバナジウム(V)を用いることが望ましいと考えられた。ガラス組成物は、アルミニウム電極配線中のアルミニウム粒子を基板に接着させるので、焼成時に軟化流動する必要がある。焼成時に容易に軟化流動させるためには、軟化点ができるだけ低いことが望ましく、軟化点を下げられるガラス化(ガラス組成物にすること)は有効な手段である。
【0022】
バナジウム(V)を(ガラス)主成分に含む酸化物(ガラス組成物)をガラス化するために、ガラス組成物に添加するアルカリ土類金属としては、イオン半径の大きいバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)が有効であり、特に、バリウム(Ba)はイオン半径が大きくガラス化に有効である。なお、イオン半径が小さいアルカリ土類金属ほど、ガラスになりにくいため、予め表1からマグネシウム(Mg)を除いている。すなわち、ガラス組成物に添加するアルカリ土類金属としては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)の元素の内、少なくともバリウムを含む1種以上の元素とすることが好ましい。
【0023】
同様に、バナジウム(V)を(ガラス)主成分に含む酸化物(ガラス組成物)をガラス化するために、ガラス組成物に添加するアルカリ金属としては、イオン半径の大きいセシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)が有効である。なお、イオン半径が小さいアルカリ金属ほど、ガラスになりにくいため、予め表1からリチウム(Li)を除いている。すなわち、ガラス組成物に添加するアルカリ金属としては、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)の元素の内、少なくとも1種以上の元素とすることが好ましい。ただ、ガラス化と仕事関数を配慮すると、イオン半径が大きく、仕事関数が小さいセシウム(Cs)が有効であるが、ガラス原料の炭酸セシウム(CsCO)は高価である。ガラス化と仕事関数だけでなく、その価格まで配慮すると、最も有効なアルカリ金属はカリウム(K)であると考えられる。
【0024】
これらのように、バナジウム(V)を(ガラス)主成分に含む酸化物(ガラス組成物)に対して、イオン半径の大きいアルカリ土類金属と、イオン半径の大きいアルカリ金属を添加することで、容易にガラス化させることができる。このため、バナジウム(V)をガラス主成分に含み、アルカリ土類金属とアルカリ金属を添加したガラス組成物は、通常使われるアルミニウム(Al)より仕事関数の大きなガラス化元素を含まなくともガラス化することができ、アルミニウム(Al)より仕事関数が小さい元素のみでガラス組成物を構成できる。これにより、アルミニウム電極配線の見かけの仕事関数を下げられ、詳細は後記するが、電子部品の性能、特に、太陽電池セルの変換効率を向上できる。
【0025】
バナジウム(V)をガラス主成分に含み、アルカリ土類金属とアルカリ金属を添加したガラス組成物は、バナジウム(V)の元素が五酸化バナジウム(V)として含まれているとした場合に(いわゆる酸化物換算で)、五酸化バナジウムを40〜70重量%含み、アルカリ土類金属の元素Rnが化学式RnOで表される酸化物として含まれているとした場合に(いわゆる酸化物換算で)、化学式RnOで表される酸化物を20〜40重量%含み、アルカリ金属の元素Rが化学式ROで表される酸化物として含まれているとした場合に(いわゆる酸化物換算で)、化学式ROで表される酸化物を10〜20重量%含むことが、好ましい。
【0026】
酸化物換算の五酸化バナジウム(V)が40重量%未満であると、アルミニウム電極配線としての(アルミニウム粒子に対する)耐水性、耐湿性等の化学的安定性を向上しにくく、さらに、アルミニウム電極配線の焼成温度が高くなり過ぎてしまう。一方、酸化物換算の五酸化バナジウム(V)が70重量%を超えると、ガラス組成物自体の耐水性、耐湿性等の化学的安定性が低下し、取り扱いしにくいガラス組成物となってしまう。さらに、電子部品の高性能化、特に、太陽電池セルの変換効率向上の効果が得られない。
【0027】
また、酸化物換算の化学式RnOで表される酸化物が20重量%未満であると、ガラス組成物はガラス化しにくく、一方、40重量%を超えると、アルミニウム電極配線の焼成温度が高くなり過ぎてしまう。
【0028】
また、酸化物換算の化学式ROで表される酸化物が10重量%未満であると、ガラス組成物は良好な軟化流動性が得られにくく、一方、20重量%を超えると、ガラス組成物自体の耐水性、耐湿性等の化学的安定性が低下してしまう。
【0029】
バナジウム(V)をガラス主成分に含み、アルカリ土類金属とアルカリ金属を添加したガラス組成物は、アルミニウム電極配線の焼成の際に、内部に微結晶が析出する。ガラス組成物は、電極焼成時の加熱過程おいて結晶化し、電極焼成時には良好な軟化流動性を示す。この結晶化では、ガラス組成物のガラス相内に分散するように結晶相(微結晶)が形成される。結晶相(微結晶)の粒径は10〜60nm程度であるので、顕著なものではない。ただ、この結晶化の程度によって、低温領域でのガラス組成物の軟化流動性に影響を与えることができる。また、太陽電池セルでは、この結晶化に程度によって、アルミニウム電極配線(アルミニウム粒子)からシリコン(Si)基板へのAl拡散量を増減させる制御をすることができる。その結晶化の温度は、500℃以下が好ましく、さらに400℃以下が一層好ましい。結晶化が500℃を超える高温になってから起こる場合は、軟化流動する温度も高温化するので、電極の焼成の低温化は妨げられてしまう。
【0030】
また、ガラス組成物の軟化流動する温度は、700℃以下が好ましく、さらに600℃以下が一層好ましい。ガラス組成物の軟化流動する温度が700℃以下であれば、太陽電池セル等のアルミニウム電極配線だけでなく、様々な電子部品のアルミニウム電極配線として広くかつ有効に展開できる。一方、700℃を超える高温での軟化流動は、適用できる電子部品が限定されてしまう。たとえば、太陽電池セルでのアルミニウム電極配線の形成には、700℃を超える高温での軟化流動では、焼成不十分になりやすく適用が難しい。通常、太陽電池セルでのアルミニウム電極配線は、約800℃で焼成されるが、ピーク温度の約800℃での焼成時間は短いため、昇温過程の少なくとも700℃以下から良好な軟化流動性を有するガラス組成物でないと、十分な焼成は行われない。
【0031】
なお、表1の仕事関数評価によれば、鉛(Pb)とアンチモン(Sb)は、「○」評価であり、この評価から判断すれば、ガラス組成物に用いることが可能な元素である。特に、鉛(Pb)は、環境負荷への影響を配慮すると、ガラス主成分元素としてではなく、より少量の添加物として用いることができる。もちろん、鉛(Pb)をガラス組成物に用いなくてもよいのである。
【0032】
バナジウム(V)をガラス主成分に含み、アルカリ土類金属とアルカリ金属を添加したガラス組成物は、粉末とされ、この粉末と、アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数のアルミニウム粒子とが、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に分散して、アルミニウム電極配線用の導電性ペーストとなる。この導電性ペーストを、基板にスクリーン印刷法等で塗布し、乾燥、焼成して、アルミニウム電極配線が形成される。焼成されたアルミニウム電極配線は、焼結した複数のアルミニウム粒子と、焼成の際に軟化流動しこれらのアルミニウム粒子を基板に固定するガラス組成物とを有している。アルミニウム電極配線が形成された基板は、太陽電池セルやディスプレイパネル等の電子部品に組み立てられる。電子部品の基板は、p型半導体を有し、このp型半導体にアルミニウム電極配線が形成される。アルミニウム電極配線の見かけの仕事関数は低くなっているので、アルミニウム電極配線は、p型半導体に対してオーミックコンタクトを取ることができる。そして、基板がpn接合を有する太陽電池セル等の電子部品にあっては、pn接合のp型半導体側にアルミニウム電極配線が形成されることになる。
【0033】
導電性ペーストにおいて、ガラス組成物の粉末は、アルミニウム粒子の100重量部に対して、0.2〜20重量部の割合で含まれていることが好ましい。さらに、ガラス組成物の粉末は、アルミニウム粒子の100重量部に対して、0.2〜2重量部の割合で含まれていることが一層好ましい。ガラス組成物の粉末が0.2重量部未満であると、アルミニウム電極配線が基板に対して良好に密着できず、しかも、アルミニウム電極配線の電気抵抗は高くなる。一方、ガラス組成物の粉末が20重量部を超えると、アルミニウム電極配線の電気抵抗が高くなる。しかも、ガラス組成物の粉末が20重量部を超えると、アルミニウム電極配線と基板の相互間に生じる応力が大きくなりやすく、基板が薄いなど基板の強度が確保できない場合には、基板が破損してしまう恐れがある。
【0034】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。また、本発明は、ここで取り上げた複数の実施形態の個々に限定されることはなく、適宜組み合わせてもよい。
【0035】
(第1の実施形態)
[ガラス組成物の軟化流動に関する検討]
第1の実施形態では、ガラス組成物のガラス系に対する軟化流動に関して検討した。
【0036】
表2に示すように、第1の実施形態では、実施例1〜5と比較例1〜8の計13種類のガラス組成物を作製し、それぞれのガラス組成物を使って軟化流動試験を行い、軟化流動性を評価している。さらに、それぞれのガラス組成物を使って導電性ペーストを作製し、それらそれぞれの導電性ペーストを使って電極配線を作製し、太陽電池セルを完成させ、変換効率を測定・評価している。ガラス組成物の作製に当っては、実施例1〜5と比較例1〜8毎に、ガラス系の組成を変えて製造している。
【表2】

【0037】
(1−1、ガラス組成物の作製)
表2の実施例1〜5と比較例1〜8に示すガラス系の組成を有するガラス組成物(酸化物)を作製した。実施例1〜4と比較例2〜8のガラス系の組成には、RoHS指令の禁止物質である鉛(Pb)を含ませていない。実施例5には、主成分としてではなく添加物として鉛(Pb)を含ませている。比較例1には、主成分として鉛(Pb)を含ませている。
【0038】
実施例1〜5のガラス系の組成の主成分は、バナジウム(V)にし、ガラス主成分酸化物は、五酸化バナジウム(V)にしている。さらに、アルカリ土類金属とアルカリ金属を添加している。
【0039】
実施例1では、主成分のバナジウム(V)に対して、添加物として、アルカリ土類金属のバリウム(Ba)と、アルカリ金属のセシウム(Cs)を加えている。
実施例2では、主成分のバナジウム(V)に対して、添加物として、アルカリ土類金属のバリウム(Ba)とストロンチウム(Sr)を加え、さらに、アルカリ金属のセシウム(Cs)とカリウム(K)を加えている。
実施例3では、主成分のバナジウム(V)に対して、添加物として、アルカリ土類金属のバリウム(Ba)とカルシウム(Ca)を加え、さらに、アルカリ金属のルビジウム(Rb)とカリウム(K)を加えている。
実施例4では、主成分のバナジウム(V)に対して、添加物として、アルカリ土類金属のバリウム(Ba)を加え、さらに、アルカリ金属のセシウム(Cs)とナトリウム(Na)を加え、さらに、アンチモン(Sb)を加えている。
実施例5では、主成分のバナジウム(V)に対して、添加物として、アルカリ土類金属のバリウム(Ba)を加え、さらに、アルカリ金属のセシウム(Cs)を加え、さらに、鉛(Pb)を加えている。
【0040】
このように、実施例1〜5のガラス組成物は、アルミニウムより仕事関数が小さい元素の酸化物のみから構成されている。実施例1〜5のガラス組成物は、通常のガラスとは異なり、ガラス化元素であるシリコン(Si)、ボロン(B)、リン(P)、テルル(Te)の酸化物を含まない。シリコン(Si)、ボロン(B)、リン(P)、テルル(Te)の元素の仕事関数は、表1で示した通り、アルミニウム(Al)より仕事関数が非常に大きい。
【0041】
比較例1では、ガラス主成分酸化物を酸化鉛(PbO)とし、主成分の鉛(Pb)に対して、添加物として、ガラス化元素のボロン(B)とシリコン(Si)を加え、さらに、アルミニウム(Al)と亜鉛(Zn)を加えている。
比較例2では、ガラス主成分酸化物を酸化ビスマス(Bi)とし、主成分のビスマス(Bi)に対して、添加物として、ガラス化元素のボロン(B)とシリコン(Si)を加え、さらに、亜鉛(Zn)と、アルカリ土類金属のバリウム(Ba)と、アルカリ金属のカリウム(K)を加えている。
比較例3では、ガラス主成分酸化物を酸化錫(SnO)とし、主成分の錫(Sn)に対して、添加物として、ガラス化元素のリン(P)を加え、さらに、亜鉛(Zn)を加えている。
比較例4では、ガラス主成分酸化物を五酸化バナジウム(V)とし、主成分のバナジウム(V)に対して、添加物として、ガラス化元素のリン(P)を加え、さらに、鉄(Fe)と、アルカリ金属のカリウム(K)を加えている。
比較例5では、ガラス主成分酸化物を五酸化バナジウム(V)とし、主成分のバナジウム(V)に対して、添加物として、ガラス化元素のリン(P)を加え、さらに、タングステン(W)と、アルカリ土類金属のバリウム(Ba)を加えている。
比較例6では、ガラス主成分酸化物を酸化テルル(TeO)とし、主成分でありガラス化元素でもあるテルル(Te)と主成分であるバナジウム(V)に対して、添加物として、アルカリ土類金属のバリウム(Ba)と、亜鉛(Zn)を加えている。
比較例7では、ガラス主成分酸化物を五酸化バナジウム(V)とし、主成分のバナジウム(V)に対して、添加物として、ガラス化元素のリン(P)とテルル(Te)を加え、さらに、アルカリ土類金属のバリウム(Ba)と、タングステン(W)と、鉄(Fe)を加えている。
比較例8では、ガラス主成分酸化物を酸化亜鉛(ZnO)とし、主成分の亜鉛(Zn)と主成分であるバナジウム(V)に対して、添加物として、ガラス化元素のボロン(B)を加えている。
【0042】
このように、比較例1〜8のガラス組成物には、アルミニウムより仕事関数が大きい元素の酸化物が含まれている。また、アルミニウム(Al)より仕事関数が非常に大きいガラス化元素であるシリコン(Si)、ボロン(B)、リン(P)、テルル(Te)の酸化物も含まれている。
【0043】
そして、ガラス組成物の作製は、具体的に以下の手順で行った。
【0044】
まず、実施例1〜5と比較例1〜8毎に、ガラス系の組成が所定の組成になるように、粉末状の原料化合物を配合し混合した。
【0045】
なお、バナジウム(V)の原料化合物としては、五酸化バナジウム(V)を用いた。鉛(Pb)の原料化合物としては、酸化鉛(PbO)を用いた。ビスマス(Bi)の原料化合物としては、三酸化ビスマス(Bi)を用いた。錫(Sn)の原料化合物としては、酸化錫(SnO)を用いた。シリコン(Si)の原料化合物としては、酸化シリコン(SiO)を用いた。ホウ素(B)の原料化合物としては、酸化ホウ素(B)を用いた。リン(P)の原料化合物としては、五酸化リン(P)を用いた。テルル(Te)の原料化合物としては、二酸化テルル(TeO)を用いた。バリウム(Ba)の原料化合物としては、炭酸バリウム(BaCO)を用いた。ストロンチウム(Sr)の原料化合物としては、炭酸ストロンチウム(SrCO)を用いた。カルシウム(Ca)の原料化合物としては、炭酸カルシウム(CaCO)を用いた。セシウム(Cs)の原料化合物としては、炭酸セシウム(CsCO)を用いた。ルビジウム(Rb)の原料化合物としては、炭酸ルビジウム(RbCO)を用いた。カリウム(K)の原料化合物としては、炭酸カリウム(KCO)を用いた。ナトリウム(Na)の原料化合物としては、炭酸ナトリウム(NaCO)を用いた。亜鉛(Zn)の原料化合物としては、酸化亜鉛(ZnO)を用いた。鉄(Fe)の原料化合物としては、三酸化二鉄(Fe)を用いたが、酸化鉄(FeO)や四酸化三鉄(Fe)などを用いてもよい。タングステン(W)の原料化合物としては、三酸化タングステン(WO)を用いた。
アンチモン(Sb)の原料化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)を用いたが、四酸化アンチモン(Sb)を用いてもよい。
【0046】
次に、混合した粉末を白金ルツボに入れ、電気炉を用いて加熱し溶融させた。加熱条件としては、5〜10℃/minの昇温速度で1000〜1100℃まで加熱し、その1000〜1100℃の加熱温度で2時間保持した。この保持中には、均一なガラス組成物とするために、溶融物が均一になるように攪拌した。
【0047】
次に、白金ルツボを高温のまま電気炉から取り出し、予め200〜300℃に加熱しておいたステンレス板上に溶融物を流し込んだ。溶融物は、急冷されガラス化し、バルク状のガラス組成物となって固形化した。そのバルク状のガラス組成物を、スタンプミルを用い粉砕して、粒径5μm以下のガラス組成物の粉末(酸化物の粉末)を作製した。このガラス組成物の粉末(酸化物の粉末)を押し固めて、直径10mm、厚さ5mmの円柱形でガラス組成物の成形体を作製した。
【0048】
(1−2、ガラス組成物の軟化流動試験)
実施例1〜5と比較例1〜8のそれぞれで作製したガラス組成物の成形体の軟化流動試験を行った。軟化流動試験では、アルミナ(Al)基板上で、ガラス組成物の成形体を加熱することによって軟化流動させ、その軟化性と流動性の程度によって軟化流動性を評価した。加熱条件としては、加熱温度を500℃、600℃、700℃、800℃の4通りに変えて試験した。加熱では、それぞれの加熱温度に保持した電気炉に、ガラス組成物の成形体を1分間入れ、取り出した。取り出したガラス組成物の成形体を目視で観察し、軟化流動性を評価した。評価基準としては、良好な流動性が得られた場合(軟化性・流動性共に良好)には「○」とし、良好な流動性は得られなかったが、軟化していた場合(軟化性良好、流動性不良)には「△」とし、軟化していない場合(軟化性・流動性共に不良)には「×」とする基準を用いた。
【0049】
表2に示すように、軟化流動試験の結果は、実施例1〜5と比較例1〜8のどのガラス組成物においても、加熱温度が700℃と800℃の軟化性と流動性は良好であり、「○」の評価であった。
加熱温度が600℃では、実施例1〜3、実施例5、比較例1〜3、比較例5〜8のガラス組成物において、軟化性と流動性は良好であり、「○」の評価であった。加熱温度が600℃では、実施例4、比較例4のガラス組成物において、良好な軟化性が見られたが、良好な流動性は見られず、「△」の評価であった。
加熱温度が500℃では、比較例6、比較例7のガラス組成物において、軟化性と流動性は良好であり、「○」の評価であった。加熱温度が500℃では、実施例1〜5、比較例1〜3、比較例5のガラス組成物において、良好な軟化性が見られたが、良好な流動性は見られず、「△」の評価であった。加熱温度が500℃では、比較例4、比較例8のガラス組成物において、良好な軟化性も流動性も見られず、「×」の評価であった。
前記より、表2に示す実施例1〜5のガラス組成物では、表1に示すガラス化元素、シリコン(Si)、ボロン(B)、リン(P)、テルル(Te)バナジウム(V)を含んでいないのにも関わらず、ガラス化元素を含んだ比較例1〜8と同程度の軟化流動性を確保することができた。これは、実施例1〜5のガラス組成物にアルカリ土類金属とアルカリ金属を添加したことで、ガラス化が促進され、軟化点が低下したためと考えられる。軟化点が低下したので、実施例1〜5では、700℃以上で良好な軟化流動性が得られ、実施例1〜3と実施例5では、600℃以上で良好な軟化流動性が得られた。
【0050】
(1−3、導電性ペーストの作製)
導電性ペーストは、実施例1〜5と比較例1〜8のそれぞれで作製したガラス組成物毎に作製した。バルク状のガラス組成物を、スタンプミルを用い粉砕して、粒径5μm以下のガラス組成物の粉末(酸化物の粉末)を作製した。ガラス組成物の粉末の平均粒径(D50)は、略2μmであった。
【0051】
導電性ペーストに含有させる金属粒子として、平均粒径(D50)略4μmのアルミニウム粒子を用意した。まず、アルミニウムを溶融し、水アトマイズ法にて球状のアルミニウム粒子を作製した。このアルミニウム粒子から、粒径0.5μm未満の粒子を篩いによって除去し、粒径8μm以上の粒子を篩いによって除去して、残ったアルミニウム粒子を導電性ペーストに用いた。導電性ペーストに用いたアルミニウム粒子は、平均粒径(D50)が略4μmであり、粒径が0.5μm以上8μm未満の範囲内に約95%以上の体積分率を有していた。
【0052】
実施例1〜5と比較例1〜8毎に、アルミニウム粒子とガラス組成物(酸化物)の粉末を混合し、さらに、この混合物にバインダ樹脂と溶剤とを添加・混合し、混錬した。バインダ樹脂は溶剤に溶け、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に、アルミニウム粒子とガラス組成物(酸化物)の粉末とが分散し、導電性ペーストが完成した。なお、バインダ樹脂にはエチルセルロースを用い、溶剤にはブチルカルビトールアセテートを用いた。
【0053】
なお、実施例1〜5と比較例3〜8では、アルミニウム粒子100重量部に対して、ガラス組成物(酸化物)の粉末を、2重量部混合した。比較例1と比較例2では、アルミニウム粒子100重量部に対して、ガラス組成物(酸化物)の粉末を、4重量部混合した。このようにした理由は、比較例1と比較例2のガラス組成物(酸化物)の比重は、他の例のガラス組成物(酸化物)の比重より約2倍大きく、導電性ペーストにおけるガラス組成物(酸化物)の体積比を、実施例1〜5と比較例1〜8の間で略同程度にするためである。また、アルミニウム粒子とガラス組成物(酸化物)の粉末からなる導電性ペーストの固形分の重量の、導電性ペーストの重量に対する重量比を、70〜75重量%とした。
【0054】
(1−4、太陽電池セルの作製)
太陽電池セルは、実施例1〜5と比較例1〜8のそれぞれで作製したガラス組成物毎、すなわち、導電性ペースト毎に作製した。
【0055】
図1Aに、本発明の第1の実施形態で作製した太陽電池セル(電子部品)10の平面図を示し、図1Bに、その底面図を示し、図1Cに、図1AのA−A′方向の矢視断面図を示している。第1の実施形態では、本願発明を適用可能な電子部品として、太陽電池セル10を例に挙げ説明する。
【0056】
図1Bと図1Cに示す太陽電池セル(電子部品)10の裏面電極(アルミニウム電極配線)5に、本願発明の電子部品のアルミニウム電極配線を適用している。また、p型のシリコン基板からなる半導体基板(基板)1の裏面上に裏面電極(アルミニウム電極配線)5が形成されている。
【0057】
半導体基板1には、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などが使用される。この半導体基板1は、ホウ素(B)等を含有しp型半導体となっている。図1Aに示される半導体基板1の受光面側には、太陽光の反射を抑制するために、エッチング等により凹凸(図示省略)が形成されている。また、図1Cに示すように、半導体基板1の受光面側には、リン(P)等がドーピングされ、サブミクロンオーダの厚みでn型半導体の拡散層2が形成されている。この拡散層2のn型半導体と、半導体基板1のp型半導体とにより、pn接合部が形成されている。このpn接合部では、太陽光が吸収されて生成した電子・正孔対が、電子と正孔に分離し、電圧が発生することになる。半導体基板1の受光面の裏面側には、アルミニウムが高濃度にドーピングされ、サブミクロンオーダの厚みでp+型半導体の合金層(Back Surface Field :BSF層)7が形成されている。合金層7が形成されることにより、半導体基板1内部で発生したキャリアが裏面で再結合するのを防止し、太陽電池セルの性能を向上させることができる。
【0058】
図1Aに示すように、半導体基板1の受光面上には、受光面電極配線4が設けられている。受光面電極配線4は、半導体基板1の受光面を縦断するように平行に配置された太い配線と、この太い配線に対してグリッド状(櫛歯状及び梯子状)に配置された細い配線とを有し、受光面の全面から集電可能になっている。また、半導体基板1の受光面上には、窒化シリコン(Si)膜等の反射防止層3が、厚さ100nm程度形成されている。受光面電極配線4は、ガラス粉末と銀粒子とを含む導電性ペーストを焼成して形成されている。
【0059】
図1Bと図1Cに示すように、半導体基板1の受光面の裏面上には、裏面電極5と出力電極6が設けられている。裏面電極5は、半導体基板1の受光面の裏面の略全面を覆うように配置され、半導体基板1の受光面の裏面の略全面から集電可能になっている。出力電極6は、半導体基板1の受光面の裏面を縦断するように平行に配置され、裏面電極5から集電可能になっている。出力電極6は、酸化物の粉末と銀粒子とを含む導電性ペーストを焼成して形成されている。裏面電極5は、前記で実施例1〜5、比較例1〜8毎に作製したガラス組成物(酸化物)の粉末とアルミニウム粒子とを含む導電性ペーストを焼成して形成されている。
【0060】
次に、太陽電池セル10の製造方法について説明する。
【0061】
半導体基板1として、p型のシリコン基板を用意した。このシリコン基板のサイズは、125mm角で、厚み200μmとした。次に、図示は省略したが、光入射効率を向上させるため1%苛性ソーダ(水酸化ナトリウム:NaOH)と10%イソプロピルアルコール(CHCH(OH)CH)の強アルカリ性の水溶液を用い、半導体基板1の受光面側をエッチングして凹凸を形成した。
【0062】
半導体基板1の受光面側に、五酸化リン(P)を含む液を塗布し、900℃で30分間処理することで、五酸化リンから半導体基板1へリン(P)を拡散させ、受光面側にn型半導体の拡散層2を形成した。五酸化リンを除去した後、拡散層2上に、窒化シリコン膜の反射防止層3を一様な厚さに形成した。この窒化シリコン膜は、シラン(SiH)とアンモニア(NH)の混合ガスを原料とするプラズマCVD法等により形成することができる。
【0063】
次に、受光面電極配線4を形成するために、反射防止層3上に、受光面電極配線4の配置されるグリッド状に、酸化物の粉末と銀粒子とを含む市販の導電性ペースト(銀ペースト)をスクリーン印刷法により塗布し、150℃に加熱して30分間乾燥させた。銀ペーストの酸化物の粉末には、Pb−B−Si−Al−Zn−Oのガラス系のガラス組成物の粉末を用いた。
【0064】
半導体基板1の受光面の裏面側には、出力電極6用に、図1Bに示すパターンになるように、前記と同じ銀ペーストをスクリーン印刷法により塗布し、また、裏面電極5用に、図1Bに示すパターンになるように、前記で実施例1〜5、比較例1〜8毎に作製したガラス組成物(酸化物)の粉末とアルミニウム粒子とを含む導電性ペースト(アルミニウムペースト)をスクリーン印刷法により塗布した。そして、出力電極6と裏面電極5を、150℃で30分間加熱して乾燥させた。なお、銀ペーストとアルミニウムペーストの塗布では、受光面側と裏面側のどちらを先に塗布し乾燥させてもかまわない。
【0065】
次に、赤外線急速加熱炉を用いて、導電性ペースト(銀ペーストとアルミニウムペースト)を、半導体基板1ごと、大気中で800℃まで急速に加熱し、20秒間保持する焼成を行うことで、受光面電極配線4と出力電極6と裏面電極5を同時に形成し、太陽電池セル10を完成させた。なお、この焼成により、裏面電極5(アルミニウムペースト)中のバインダ樹脂と溶剤は、揮発、燃焼して、裏面電極5(アルミニウムペースト)中から除かれる。また、この焼成により、裏面電極5(アルミニウムペースト)中の複数のアルミニウム粒子は、焼結して一体化し、裏面電極5(アルミニウムペースト)中のガラス組成物の粉末は、軟化流動して、アルミニウム粒子と半導体基板1に密着し、アルミニウム粒子と半導体基板1とを接着させる。
【0066】
また、この焼成により、裏面電極5(アルミニウムペースト)中のガラス組成物の粉末は、結晶化し、ガラス組成物のガラス相中に、微結晶からなる結晶相を分散・発生させる。この微結晶の発生状態により、後記する合金層7のp+型半導体の不純物濃度が左右される。微結晶の発生頻度が高すぎると合金層7のp+型半導体の不純物濃度が低くなりすぎ、太陽電池セル10の変換効率を低下させてしまう。微結晶の発生頻度が低すぎたり発生しなかったりすると合金層7のp+型半導体の不純物濃度が高くなりすぎ、太陽電池セル10の変換効率を低下させてしまう。微結晶の発生頻度が適当であると合金層7のp+型半導体の不純物濃度が適当になり、太陽電池セル10の変換効率を高めることができる。
【0067】
また、この焼成により、半導体基板1の裏面側では、裏面電極5の下部の半導体基板1に、アルミニウムペースト由来の裏面電極5のアルミニウム粒子からアルミニウムが高濃度に拡散し、p+型半導体の合金層7が形成されている。この合金層7の形成により、前記したように太陽電池セル10の変換効率が高められるだけでなく、半導体基板1に裏面電極5をオーミック接続させることができる。
【0068】
また、この焼成により、半導体基板1の受光面側では、受光面電極配線4に含まれる酸化物(ガラス組成物)と反射防止層3とが反応して、図1Cに示すように、受光面電極配線4が反射防止層3を貫通して拡散層2に達し、受光面電極配線4と拡散層2とがオーミック接続されている。
【0069】
(1−5、太陽電池セルの評価)
実施例1〜5と比較例1〜8のガラス組成物毎に作製した太陽電池セル10の変換効率の測定を行った。測定では、ソーラーシュミレータを用いた。測定結果の変換効率を、表3に示す。
【0070】
実施例1のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、17.6%であった。
実施例2のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、17.8%であった。
実施例3のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、17.7%であった。
実施例4のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、17.2%であった。
実施例5のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、17.4%であった。
比較例1のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、16.9%であった。
比較例2のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、16.3%であった。
比較例3のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.6%であった。
比較例4のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.9%であった。
比較例5のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.8%であった。
比較例6のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.4%であった。
比較例7のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.6%であった。
比較例8のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.3%であった。
【表3】

【0071】
一見して、実施例1〜5では、太陽電池セル10の変換効率が17%を上回ったのに対して、比較例1〜8の変換効率は17%未満となり、実施例1〜5の方が、比較例1〜8より、変換効率が高くなる傾向が明らかに表れた。これは、裏面電極(アルミニウム電極配線)5のガラス組成物が、アルミニウム(Al)より仕事関数が小さい元素の酸化物から構成され、不可避の元素以外にアルミニウムより仕事関数が大きい元素の酸化物を、含んでいないためである。このため、裏面電極(アルミニウム電極配線)5の見かけの仕事関数を下げることができ、半導体基板1に裏面電極5を、低抵抗にオーミック接続させることができたので、変換効率を高効率化できたと考えられる。
【0072】
また、裏面電極5(アルミニウムペースト)中のガラス組成物の粉末は、焼成の際に結晶化し、ガラス組成物のガラス相中に、微結晶からなる結晶相を分散・発生させる。この微結晶の発生状態によって、アルミニウム粒子から半導体基板1へのアルミニウムの拡散量が適正になり、合金層7のp+型半導体の不純物濃度が適正に設定され、太陽電池セル10の変換効率が高められたと考えられる。
【0073】
なお、実施例1〜5において、裏面電極(アルミニウム電極配線)5のガラス組成物を、アルミニウム(Al)より仕事関数が小さい元素の酸化物で構成できたのは、従来、ガラス化元素として用いられていた表1に示すようなシリコン(Si)、ボロン(B)、リン(P)、テルル(Te)を用いず、替わりに、アルカリ土類金属及びアルカリ金属を用いたからである。特に、実施例1〜3では、バナジウム(V)の主成分元素の他は、アルカリ土類金属及びアルカリ金属だけの酸化物であり、これらの実施例1〜3において、17.6%以上の高い変換効率が得られた。なお、実施例4と実施例5に示すように、アルカリ土類金属及びアルカリ金属だけでなく、これらの元素の他に、アルミニウム(Al)より仕事関数が小さい元素のアンチモン(Sb)や鉛(Pb)を含有させても、高い変換効率が得られることがわかった。
【0074】
以上のことから、本発明の電子部品のアルミニウム電極配線は、太陽電池セル10の裏面電極5(p型半導体用の電極(p型電極))として適用できることが確認された。裏面電極5は、p型半導体にオーミック接続するアルミニウム電極配線であり、太陽電池セル10以外の、電子部品のp型半導体にオーミック接続する電極配線にも適用できると考えられる。もちろん、本発明の電子部品のアルミニウム電極配線(裏面電極5)は、p型半導体に対する接触抵抗だけでなく、比抵抗も低くなっていると考えられることから、単に、電極間を接続する電極配線として用いることもできる。
【0075】
また、比較例9として、ガラス組成物の粉末の替りに、五酸化バナジウム(V)の結晶の粉末を用いて、他の条件は実施例1等と同じに、アルミニウム電極配線用の導電性ペーストを作製した。そして、この導電性ペーストを用いて、他の条件は実施例1等と同じに、太陽電池セルを作製し、変換効率を測定した。比較例9の五酸化バナジウム(V)の結晶粉末を用いた太陽電池セル10の変換効率は、15.1%であった。この比較例9の変換効率15.1%は、表3に示された実施例1〜5と比較例1〜8のどの変換効率よりも低かった。このことより、導電性ペーストの酸化物(ガラス組成物)としては、結晶よりガラスの方が有効であることが分かった。これは、実施例1〜5の酸化物(ガラス組成物)のガラス相中に、微結晶からなる結晶相を分散・発生している状態とは異なり、酸化物(ガラス組成物)が全て結晶になっているので、アルミニウム粒子から半導体基板1へのアルミニウムの拡散が、抑制され、合金層7のp+型半導体の不純物濃度が低くなり、太陽電池セル10の変換効率が低下したと考えられる。このことから、導電性ペースト(アルミニウム電極配線)の酸化物(ガラス組成物)のガラス化の有効性が明らかになった。そして、実施例1〜5と比較例1〜8の酸化物(ガラス組成物)比較から、実施例1〜5の酸化物(ガラス組成物)が、際立って有効であることがわかった。これは、酸化物(ガラス組成物)が、アルミニウムより仕事関数が小さい元素の酸化物(ガラス組成物)から構成され、具体的には、バナジウム(V)、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の酸化物(ガラス組成物)から構成したためであることが分かった。
【0076】
(第2の実施形態)
[ガラス組成物を構成する酸化物の組成比に関する検討]
第2の実施形態では、ガラス組成物を構成する酸化物の組成比に関して検討した。
【0077】
表4に示すように、第2の実施形態では、実施例G−01〜G−16の計16種類のガラス組成物を作製し、それぞれのガラス組成物を使って、結晶化開始温度の測定(示差熱分析(DTA))と、軟化流動試験と、ガラス単体での耐水性試験を行っている。さらに、それぞれのガラス組成物を使って導電性ペーストを作製し、それらそれぞれの導電性ペーストを使ってアルミニウム電極配線を作製し、太陽電池セルを完成させ、その太陽電池セルを使って、変換効率の測定と、密着性試験と、電極配線の耐水性試験を行っている。ガラス組成物の作製に当っては、実施例G−01〜G−16毎に、ガラス組成物を構成する酸化物の組成比を変えて製造している。
【表4】

【0078】
(2−1、ガラス組成物の作製)
表4の実施例G−01〜G−16に示す組成を有するガラス組成物(酸化物)を作製した。主成分の酸化物はバナジウム(V)を含む五酸化バナジウム(V)とした。また、ガラス組成物(酸化物)には、アルカリ土類酸化物と、アルカリ金属酸化物とを含有させた。アルカリ土類酸化物としては、カルシウム(Ca)を含む酸化カルシウム(CaO)と、ストロンチウム(Sr)を含む酸化ストロンチウム(SrO)と、バリウム(Ba)を含む酸化バリウム(BaO)を含有させた。アルカリ金属酸化物としては、ナトリウム(Na)を含む酸化ナトリウム(NaO)、カリウム(K)を含む酸化カリウム(KO)、ルビジウム(Rb)を含む酸化ルビジウム(RbO)、セシウム(Cs)を含む酸化セシウム(CsO)を含有させた。なお、表4中の組成の重量%の値は、原料化合物中に含まれる正味のバナジウム(V)、アルカリ土類金属、アルカリ金属の元素3種の重量から前記3種の酸化物の重量をいわゆる酸化物換算で算出し、その3種の換算値(3種の酸化物の重量)の比から重量%を算出している。
【0079】
実施例G−01では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)80重量%、アルカリ土類酸化物の酸化バリウム(BaO)15重量%、アルカリ金属酸化物の酸化カリウム(KO)5重量%とした。
実施例G−02では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)75重量%、アルカリ土類酸化物の酸化バリウム(BaO)20重量%、アルカリ金属酸化物の酸化セシウム(CsO)5重量%とした。
実施例G−03では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)75重量%、アルカリ土類酸化物の酸化バリウム(BaO)15重量%、アルカリ金属酸化物の酸化カリウム(KO)5重量%と酸化セシウム(CsO)5重量%とした。
実施例G−04では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)70重量%、アルカリ土類酸化物の酸化バリウム(BaO)20重量%、アルカリ金属酸化物の酸化カリウム(KO)5重量%と酸化セシウム(CsO)5重量%とした。
実施例G−05では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)65重量%、アルカリ土類酸化物の酸化バリウム(BaO)25重量%、アルカリ金属酸化物の酸化カリウム(KO)10重量%とした。
実施例G−06では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)60重量%、アルカリ土類酸化物の酸化バリウム(BaO)40重量%とした。
実施例G−07では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)60重量%、アルカリ土類酸化物の酸化バリウム(BaO)30重量%、アルカリ金属酸化物の酸化ナトリウム(NaO)1重量%と酸化カリウム(KO)7重量%と酸化セシウム(CsO)2重量%とした。
実施例G−08では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)55重量%、アルカリ土類酸化物の酸化バリウム(BaO)45重量%とした。
実施例G−09では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)55重量%、アルカリ土類酸化物の酸化バリウム(BaO)35重量%、アルカリ金属酸化物の酸化カリウム(KO)10重量%とした。
実施例G−10では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)55重量%、アルカリ土類酸化物の酸化カルシウム(CaO)5重量%と酸化ストロンチウム(SrO)5重量%と酸化バリウム(BaO)20重量%、アルカリ金属酸化物の酸化ナトリウム(NaO)2重量%と酸化カリウム(KO)5重量%と酸化ルビジウム(RbO)3重量%と酸化セシウム(CsO)5重量%とした。
実施例G−11では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)50重量%、アルカリ土類酸化物の酸化バリウム(BaO)35重量%、アルカリ金属酸化物の酸化カリウム(KO)10重量%と酸化セシウム(CsO)5重量%とした。
実施例G−12では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)50重量%、アルカリ土類酸化物の酸化バリウム(BaO)25重量%、アルカリ金属酸化物の酸化カリウム(KO)10重量%と酸化ルビジウム(RbO)5重量%と酸化セシウム(CsO)5重量%とした。
実施例G−13では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)45重量%、アルカリ土類酸化物の酸化ストロンチウム(SrO)10重量%と酸化バリウム(BaO)25重量%、アルカリ金属酸化物の酸化ナトリウム(NaO)3重量%と酸化カリウム(KO)10重量%と酸化セシウム(CsO)7重量%とした。
実施例G−14では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)40重量%、アルカリ土類酸化物の酸化ストロンチウム(SrO)5重量%と酸化バリウム(BaO)35重量%、アルカリ金属酸化物の酸化ナトリウム(NaO)2重量%と酸化カリウム(KO)8重量%と酸化ルビジウム(RbO)5重量%と酸化セシウム(CsO)5重量%とした。
実施例G−15では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)35重量%、アルカリ土類酸化物の酸化カルシウム(CaO)5重量%と酸化ストロンチウム(SrO)10重量%と酸化バリウム(BaO)30重量%、アルカリ金属酸化物の酸化ナトリウム(NaO)4重量%と酸化カリウム(KO)10重量%と酸化セシウム(CsO)6重量%とした。
実施例G−16では、ガラス組成物(酸化物)の組成比を、五酸化バナジウム(V)30重量%、アルカリ土類酸化物の酸化カルシウム(CaO)10重量%と酸化ストロンチウム(SrO)10重量%と酸化バリウム(BaO)25重量%、アルカリ金属酸化物の酸化ナトリウム(NaO)5重量%と酸化カリウム(KO)10重量%と酸化ルビジウム(RbO)5重量%と酸化セシウム(CsO)5重量%とした。
【0080】
そして、ガラス組成物の作製は、具体的に以下の手順で行った。
【0081】
まず、実施例G−01〜G−16毎に、ガラス系の組成が所定の組成になるように、粉末状の原料化合物を配合し混合した。原料化合物としては、第1の実施形態と対応する元素について同じ原料化合物を用いた。
【0082】
次に、混合した粉末300gを白金ルツボに入れ、電気炉を用いて加熱し溶融させた。加熱条件としては、5〜10℃/minの昇温速度で1100〜1200℃まで加熱し、その1100〜1200℃の加熱温度で2時間保持した。この保持中には、均一なガラス組成物とするために、溶融物が均一になるように攪拌した。
【0083】
次に、白金ルツボを高温のまま電気炉から取り出し、予め150〜200℃に加熱しておいたステンレス厚板上に溶融物を流し込んだ。溶融物は、急冷されガラス化し、バルク状のガラス組成物となって固形化した。そのバルク状のガラス組成物を、スタンプミルを用い粉砕して、分級することによって、平均粒径(D50)1〜2μmのガラス組成物の粉末を得た。
【0084】
(2−2、ガラス組成物の結晶化開始温度の測定)
実施例G−01〜G−16のそれぞれで作製したガラス組成物の特性温度の測定を行い、結晶化開始温度を求めた。特性温度の測定では、示差熱分析(DTA)装置(真空理工株式会社製、型式:DT−1500)を用いた。標準試料としてα-アルミナ(Al)を用い、標準試料と供試材(実施例G−01〜G−16毎のガラス組成物の粉末)の質量を、それぞれ1gとした。測定では、大気雰囲気中で標準試料と供試材を昇温し、昇温速度を5℃/minとした。特性温度の測定(DTA測定)から、DTAカーブが得られ、DTAカーブでは、発熱ピークが測定された。この発熱ピークの開始温度(接線法による、発熱ピークによる上昇開始前のDTAカーブの接線と、発熱ピークの前半において上昇するDTAカーブの接線とが交わるときの温度)を、ガラス組成物の結晶化開始温度と定義し求めた。
【0085】
表5に、求めたガラス組成物の結晶化開始温度が属する温度領域を示した。温度が結晶化開始温度以上になると、ガラス組成物中に結晶相(微結晶)が生じる。この結晶相は、合金層7(図1C参照)のp+型半導体の不純物濃度を調整するのに必須であり、結晶相をこの不純物拡散が起こる前に、確実に発生させるためには、結晶化開始温度はできるだけ低いほうがよいと考えられる。ただ、結晶化開始温度より高い温度で、結晶化が促進され、結晶相の体積が大きくなりすぎると、後記する軟化流動性を阻害するので、軟化流動性も合わせて評価する必要がある。
【表5】

【0086】
結晶化開始温度が、300℃〜400℃の低温領域に属した実施例は、実施例G−01〜G−05、実施例G−07、実施例G−09、実施例G−10、実施例G−12であった。これらの実施例は、結晶相を発生させやすい傾向にあるといえる。
結晶化開始温度が、400℃〜500℃の中低温領域に属した実施例は、実施例G−11、実施例G−13、実施例G−14であった。これらの実施例は、結晶相を発生させやすい傾向にあるといえる。
結晶化開始温度が、500℃〜600℃の中高温領域に属した実施例は、実施例G−06、実施例G−16であった。これらの実施例は、結晶相を発生させにくい傾向にあるといえる。
結晶化開始温度が、600℃〜の高温領域に属した実施例は、実施例G−08、実施例G−15であった。これらの実施例は、結晶相を発生させにくい傾向にあるといえる。
【0087】
(2−3、ガラス組成物の軟化流動試験)
実施例G−01〜G−16のそれぞれで作製したガラス組成物の軟化流動試験を行った。ガラス組成物の粉末(酸化物の粉末)を押し固めて、直径10mm、厚さ5mmの円柱形でガラス組成物の成形体を作製した。そして、ガラス組成物の軟化流動性を、第1の実施形態と同様な試験で評価した。軟化流動性は、ガラス組成物で、アルミニウム電極配線(導電性ペースト)中のアルミニウム粒子を基板に接着するのに必須の性質であり、ガラス組成物を十分に軟化流動させるためには、できるだけ低温で、軟化性と流動性が発現することが望ましい。
【0088】
表5に示すように、軟化流動試験の結果は、後記のようになった。
実施例G−05、実施例G−07、実施例G−12で、加熱温度が500℃と600℃と700℃と800℃の全てで、軟化性と流動性が良好であり、「○」の評価が得られた。これらの実施例は、軟化流動性を発現させやすい傾向にあるといえる。
実施例G−04、実施例G−09〜G−11、実施例G−13で、加熱温度が500℃で、良好な軟化性が見られたが、良好な流動性は見られず、「△」の評価であったが、加熱温度が600℃と700℃と800℃で、軟化性と流動性が良好であり、「○」の評価が得られた。これらの実施例は、軟化流動性を発現させやすい傾向にあるといえる。
実施例G−14で、加熱温度が500℃で、良好な軟化性も流動性も見られず、「×」の評価であったが、加熱温度が600℃と700℃と800℃で、軟化性と流動性が良好であり、「○」の評価が得られた。この実施例は、軟化流動性を発現させやすい傾向にあるといえる。
実施例G−01、実施例G−02、実施例G−03で、加熱温度が500℃と600℃で、良好な軟化性も流動性も見られず、「×」の評価であったが、加熱温度が700℃と800℃で、軟化性と流動性が良好であり、「○」の評価が得られた。これらの実施例は、加熱温度が600℃でも、良好な軟化流動性が見られず、軟化流動性を発現させにくい傾向にあるといえる。
実施例G−06、実施例G−08、実施例G−15、実施例G−16で、加熱温度が500℃と600℃で、良好な軟化性も流動性も見られず、「×」の評価であったが、加熱温度が700℃で、良好な軟化性が見られたが、良好な流動性は見られず、「△」の評価であり、加熱温度が800℃で、軟化性と流動性が良好であり、「○」の評価が得られた。これらの実施例は、加熱温度が600℃でも、良好な軟化流動性が見られず、軟化流動性を発現させにくい傾向にあるといえる。
【0089】
(2−4、ガラス組成物の耐水性試験)
ガラス組成物の耐水性試験は、加熱温度800℃の軟化流動試験後の、実施例G−01〜G−16毎のガラス組成物を、50℃の純水に8時間浸漬させることで行った。この後、ガラス組成物を目視で観察し、その腐食状態から耐水性を判定した。判定基準としては、外観上ほとんど変化が認められない場合を、「○」の評価とし、変化が明らかに認められた場合を、「×」の評価とする基準を用いた。アルミニウム電極配線に用いられるガラス組成物であるので、高い耐水性が望まれる。
【0090】
表5に示すように、ガラス組成物の耐水性試験の結果は、「○」の評価が、実施例G−04〜G−15で得られ、実施例G−01〜G−03と実施例G−16で、「×」の評価となった。
【0091】
後記では、2−2のガラス組成物の結晶化開始温度の測定と、2−3のガラス組成物の軟化流動試験と、2−4のガラス組成物の耐水性試験の結果について、総合的に考察した。
【0092】
実施例G−01〜G−03のガラス組成物では、表5に示すように、300℃〜400℃の低温領域で結晶化が開始することがわかったが、さらに、400℃以下で顕著に結晶化が促進され、結晶相の体積が顕著に大きくなっていることがわかった。これは、ガラス化しにくく、結晶化しやすい性質を表している。これにより、ガラス組成物中のガラス相が相対的に減少し、軟化流動性が低下したと考えられる。600℃以下で、良好な軟化流動性が得られなかったのは、その結晶相の増加の影響であると考えられる。また、実施例G−01〜G−03のガラス組成物で耐水性が低下したのも、結晶化によるものと考えられる。結晶化に伴い結晶粒界に金属が析出し、その金属が腐食・酸化したと考えられる。実施例G−01〜G−03のガラス組成物が結晶化しやすい性質を持つ理由としては、表4に示すように、五酸化バナジウム(V)の組成比が大きく、75重量%以上になっていたためであると考えられる。逆に、五酸化バナジウム(V)の組成比に対して、ガラス化を促進させるアルカリ土類酸化物の組成比とアルカリ金属酸化物の組成比が、特に、酸化バリウム(BaO)の組成比が、少ないためであると考えられる。前記から、五酸化バナジウム(V)の組成比が、75重量%未満になっていることが望ましいことがわかった。逆に、ガラス化を促進させるアルカリ土類酸化物の組成比とアルカリ金属酸化物の組成比の和が、25重量%以上になっていることが望ましいことがわかった。
【0093】
実施例G−06、実施例G−08のガラス組成物では、表5に示すように、500℃を超える高温で結晶化を開始した。また、700℃以下では良好な流動性が得られなかった。しかし、耐水性は良好であった。これらは、ガラス組成物中にアルカリ金属酸化物が含まれていないためであると考えられる。また、実施例G−08の結晶化開始温度が、実施例G−06より高くなっているのは、酸化バリウム(BaO)の組成比が大きくなっているためである。前記から、ガラス組成物には、アルカリ土類酸化物だけでなく、アルカリ金属酸化物も必須であることがわかった。また、結晶化開始温度を低下させるには、アルカリ土類酸化物、すなわち、酸化バリウム(BaO)の組成比を減少させればよく、例えば、40重量%以下にすればよいことがわかった。
【0094】
実施例G−15、実施例G−16のガラス組成物では、表5に示すように、500℃を超える高温で結晶化を開始した。また、700℃以下では良好な流動性が得られなかった。これらは、アルカリ土類酸化物の和の組成比が、45重量%となり、大きすぎたためであると考えられた。耐水性に関しては、実施例G−15は良好であったが、実施例G−16は良好ではなかった。これは、実施例G−16のアルカリ金属酸化物の和の組成比が、実施例G−15では20重量%であるところ、実施例G−16では25重量%となり、大きくなりすぎたためであると考えられた。前記から、アルカリ土類酸化物の和の組成比は、45重量%未満にすればよいことがわかった。また、アルカリ金属酸化物の和の組成比は、25重量%未満にすればよいことがわかった。
【0095】
実施例G−04、実施例G−05、実施例G−07、実施例G−09〜G−14のガラス組成物では、表5に示すように、500℃以下の低温で結晶化を開始し、その結晶化が総体積的に顕著なものでないことから、600℃以下でも良好な軟化流動性を有していた。特に、結晶化開始温度が400℃以下の実施例G−05、実施例G−07、実施例G−12のガラス組成物は、軟化流動性にも優れ、500℃でも良好な軟化流動性を示す傾向があった。また、これらのガラス組成物の耐水性は、良好であった。前記から、表4の実施例G−04、実施例G−05、実施例G−07、実施例G−09〜G−14に示すように、五酸化バナジウム(V)の組成比は、40重量%〜70重量%にすればよいことがわかった。また、アルカリ土類酸化物の和の組成比は、20重量%〜40重量%にすればよいことがわかった。また、アルカリ金属酸化物の和の組成比は、10重量%〜20重量%にすればよいことがわかった。
【0096】
(2−5、導電性ペーストの作製)
導電性ペーストは、実施例G−01〜G−16のそれぞれで作製したガラス組成物毎に作製した。バルク状のガラス組成物を、スタンプミルを用い粉砕して、ガラス組成物の粉末(酸化物の粉末)を作製した。ガラス組成物の粉末の平均粒径(D50)は、1μm〜2μmであった。導電性ペーストに含有させる金属粒子として、平均粒径(D50)略3μmであり、カルシウム(Ca)を少量含むアルミニウム(合金)粒子を用いた。導電性ペーストには、アルミニウム(合金)粒子100重量部に対して、ガラス組成物(酸化物)の粉末を、1重量部混合した。第2の実施形態では、第1の実施形態に比べて、ガラス組成物の粉末の平均粒径(D50)を1μm〜2μmに小さくしたことに伴い、アルミニウム(合金)粒子に対するガラス組成物(酸化物)の粉末の混合量を、1重量部に減らした。導電性ペーストの作製上の他の作製条件は、第1の実施形態と同じにした。
【0097】
(2−6、太陽電池セルの作製)
太陽電池セルは、実施例G−01〜G−16のそれぞれで作製したガラス組成物毎、すなわち、導電性ペースト毎に作製した。第2の実施形態では、半導体基板1にボロン(B)を含有した多結晶シリコン基板(p形半導体基板)を用いた。その多結晶シリコン基板のサイズは、150mm角で、厚み200μmとした。そして、第1の実施形態の太陽電池セル10の製造方法と同様の製造方法で太陽電池セルを作製した。
【0098】
(2−7、太陽電池セルの評価)
表6に示すように、太陽電池セルの評価としては、変換効率の測定と、密着性試験と、太陽電池セルの耐水性試験を行った。まず、実施例G−01〜G−16のガラス組成物毎に作製した太陽電池セルの変換効率の測定を行った。測定では、ソーラーシュミレータを用いた。測定結果の変換効率を、表6に示す。
【表6】

【0099】
実施例G−01のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.6%であった。
実施例G−02のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、14.9%であった。
実施例G−03のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.5%であった。
実施例G−04のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、16.1%であった。
実施例G−05のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、16.3%であった。
実施例G−06のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.4%であった。
実施例G−07のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、16.5%であった。
実施例G−08のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.2%であった。
実施例G−09のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、16.5%であった。
実施例G−10のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、16.2%であった。
実施例G−11のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、16.6%であった。
実施例G−12のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、16.4%であった。
実施例G−13のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、16.5%であった。
実施例G−14のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、16.1%であった。
実施例G−15のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.8%であった。
実施例G−16のガラス組成物を用いた太陽電池セルの変換効率は、15.5%であった。
【0100】
次に、実施例G−01〜G−16の太陽電池セル毎に、裏面電極(アルミニウム電極配線)5(図1C参照)の半導体基板1に対する接着(密着性)の強さを、ピール試験にて評価した。ピール試験では、市販のセロハンテープを、裏面電極(アルミニウム電極配線)5に貼り付けた後に引き剥がした。そして、剥がした後に裏面電極(アルミニウム電極配線)5を観察し評価した。評価基準としては、裏面電極(アルミニウム電極配線)5が剥離しなかったものを「○」とし、剥離したものを「×」とする基準を用いた。表6に示すように、ピール試験の結果は、実施例G−01〜G−05と実施例G−07と実施例G−09〜G−14で「○」であり、実施例G−06と実施例G−08と実施例G−15と実施例G−16で「×」であった。
【0101】
次に、実施例G−01〜G−16の太陽電池セル毎の裏面電極(アルミニウム電極配線)5(図1C参照)に対し、耐水性試験として、2−4のガラス組成物の耐水性試験と同様に、50℃の純水に8時間浸漬させた。この後、裏面電極(アルミニウム電極配線)5を目視で観察し、その変色から耐水性を判定した。判定基準としては、外観上ほとんど変色が認められない場合を、「○」の評価とし、変色が認められた場合を、「×」の評価とする基準を用いた。なお、従来のアルミニウム電極配線は、50℃の純水に8時間浸漬させると、アルミニウム(電極配線)の水酸化物の生成により、アルミニウム電極配線が、黒色に変色することが分かっている。表6に示すように、裏面電極(アルミニウム電極配線)5の耐水性試験の結果は、実施例G−01〜G−05と実施例G−07と実施例G−09〜G−14で「○」であり、実施例G−06と実施例G−08と実施例G−15と実施例G−16で「×」であった。
【0102】
太陽電池セルの評価として行った変換効率の測定より、実施例G−04、実施例G−05、実施例G−07、実施例G−09〜G−14では、変換効率が16%を上回り、それ以外の実施例G−01〜G−03、実施例G−06、実施例G−08、実施例G−15、実施例G−16の変換効率が16%未満に留まったのに比べ、高い変換効率が得られることがわかった。さらに、実施例G−04、実施例G−05、実施例G−07、実施例G−09〜G−14では、裏面電極(アルミニウム電極配線)5の密着性試験と耐水性試験ともに良好であった。
【0103】
実施例G−01〜G−03では、高い変換効率は得られなかったが、裏面電極(アルミニウム電極配線)5の密着性試験と耐水性試験は良好であった。表5の実施例G−01〜G−03の耐水性試験結果に示すように、実施例G−01〜G−03のガラス組成物は、耐水性に乏しかったが、導電性ペーストの焼成時に、ガラス組成物がアルミニウム(合金)粒子と反応することによって、ガラス組成物としての耐水性もよくなり、裏面電極(アルミニウム電極配線)5としての耐水性もよくなったと考えられる。また、この反応により密着性も高められ良い結果が得られたと考えられるが、この反応が裏面電極(アルミニウム電極配線)5から半導体基板1へのアルミニウムの拡散を抑制してしまうため、変換効率が16%に達せず低めであったと推測された。
【0104】
また、実施例G−06、実施例G−08、実施例G−15、実施例G−16では、変換効率が16%に達せず、高い変換効率が得られず、密着性試験と耐水性試験も「×」の評価で、良好な評価は得られなかった。実施例G−06、実施例G−08、実施例G−15、実施例G−16は、表5に示す結晶化開始温度では高温になり、軟化流動性でも高温で軟化したように、軟化流動性が良好でないため、アルミニウム(合金)粒子の表面上を、ガラス組成物が覆えず、ガラス組成物でアルミニウム(合金)粒子同士を接着できず、アルミニウム(合金)粒子同士が十分に焼結されなかったためと考えられる。
【0105】
前記より、太陽電池セルの評価でも、ガラス組成物単独での評価と同様に、実施例G−04、実施例G−05、実施例G−07、実施例G−09〜G−14で、良好な評価が得られることがわかった。これより、表4の実施例G−04、実施例G−05、実施例G−07、実施例G−09〜G−14に示すように、五酸化バナジウム(V)の組成比は、40重量%〜70重量%にすればよいことがわかった。また、アルカリ土類酸化物の和の組成比は、20重量%〜40重量%にすればよいことがわかった。また、アルカリ金属酸化物の和の組成比は、10重量%〜20重量%にすればよいことがわかった。さらに、表5より、500℃以下で結晶化し、700℃以下で良好な流動性を示すガラス組成物が好ましく、特に400℃以下で結晶化し、600℃以下で良好な流動性を示すガラス組成物(実施例G−04、実施例G−05、実施例G−07、実施例G−09、実施例G−10、実施例G−12)が有効であることがわかった。
【0106】
(第3の実施形態)
[導電性ペーストにおけるガラス組成物の含有量に関する検討]
第3の実施形態では、導電性ペーストにおけるガラス組成物の含有量に関して検討した。
【0107】
表7に示すように、第3の実施形態では、導電性ペーストにおけるガラス組成物の含有量を変えて、実施例H−01〜H−13の計13種類の導電性ペーストを作製し、それぞれの導電性ペーストを使ってアルミニウム電極配線を作製し、アルミニウム電極配線を使って、密着性試験と、アルミニウム電極配線の耐水性試験と、比抵抗測定を行っている。
【表7】

【0108】
(3−1、ガラス組成物の作製)
実施例H−01〜H−13の導電性ペースト用のガラス組成物としては、表4の実施例G−11のガラス組成物と同じ組成のガラス組成物を、第2の実施形態と同様の製造方法で作成した。また、粉砕して粉末化したガラス組成物の平均粒径(D50)は、略1μmであった。
【0109】
(3−2、導電性ペーストの作製)
導電性ペーストに含有させる金属粒子として、平均粒径(D50)略3μmであるアルミニウム粒子を用いた。導電性ペーストには、アルミニウム粒子100重量部に対して、ガラス組成物(酸化物)の粉末を、実施例H−01〜H−13毎に、0重量部から30重量部まで変化させて混合した。また、アルミニウム粒子とガラス組成物(酸化物)の粉末からなる固形分の含有量が75重量%前後になるように、バインダ樹脂であるエチルセルロースと、溶剤であるα‐テルピネオールを含有させた。導電性ペーストの作製上の他の作製条件は、第1の実施形態と同じにした。
【0110】
実施例H−01の導電性ペーストの、アルミニウム粒子100重量部に対する、ガラス組成物の(ガラス)含有量は、0(ゼロ)重量部であった。
同様に、実施例H−02のガラス組成物の(ガラス)含有量は、0.1重量部であった。
実施例H−03のガラス組成物の(ガラス)含有量は、0.2重量部であった。
実施例H−04のガラス組成物の(ガラス)含有量は、0.3重量部であった。
実施例H−05のガラス組成物の(ガラス)含有量は、0.5重量部であった。
実施例H−06のガラス組成物の(ガラス)含有量は、1.0重量部であった。
実施例H−07のガラス組成物の(ガラス)含有量は、1.5重量部であった。
実施例H−08のガラス組成物の(ガラス)含有量は、2.0重量部であった。
実施例H−09のガラス組成物の(ガラス)含有量は、5.0重量部であった。
実施例H−10のガラス組成物の(ガラス)含有量は、10.0重量部であった。
実施例H−11のガラス組成物の(ガラス)含有量は、15.0重量部であった。
実施例H−12のガラス組成物の(ガラス)含有量は、20.0重量部であった。
実施例H−13のガラス組成物の(ガラス)含有量は、30.0重量部であった。
【0111】
(3−3、アルミニウム電極配線の作製)
アルミニウム電極配線は、実施例H−01〜H−13のそれぞれで作製した導電性ペースト毎に作製した。第3の実施形態では、アルミニウム電極配線の基板として、25mm角の多結晶シリコン(Si)基板(厚み200μm)と、アルミナ(Al)基板(厚み1.0mm)を用いた。導電性ペーストを、シリコン(Si)基板と、アルミナ(Al)基板に、スクリーン印刷で塗布し、乾燥させた。乾燥後、赤外線急速加熱炉にて大気中で800℃まで急速に加熱し、10秒間保持する焼成を行うことで、アルミニウム電極配線を形成した。
【0112】
(3−4、アルミニウム電極配線の評価)
表7に示すように、アルミニウム電極配線の評価としては、シリコン(Si)基板とアルミナ(Al)基板に対するアルミニウム電極配線の密着性試験と、アルミニウム電極配線の耐水性試験と、アルミニウム電極配線の比抵抗測定を行った。密着性試験と耐水性試験は、第2の実施形態と同様に評価した。また、比抵抗測定では、室温にて四端子法によって、アルミニウム電極配線の電気抵抗を測定し、別途、測定したアルミニウム電極配線の膜厚を用いて比抵抗を算出した。
【0113】
表7に示すように、密着性試験の結果は、基板がシリコン(Si)基板の場合、実施例H−02〜H−13で「○」の評価であり、実施例H−01で「×」の評価であった。すなわち、ガラス含有量が、0.1重量部以上で、良好な密着性が得られた。なお、実施例H−09〜H−13で、基板のそりが大きくなり、特に、実施例H−13では、そりが大きくなりすぎ、基板が破損する場合があった。
【0114】
また、密着性試験の結果で、基板がアルミナ(Al)基板の場合は、実施例H−03〜H−13で「○」の評価であり、実施例H−01と実施例H−02で「×」の評価であった。すなわち、ガラス含有量が、0.2重量部以上で、良好な密着性が得られた。なお、アルミナ(Al)基板の場合に、基板のそりが生じなかったのは、基板の厚さが、シリコン(Si)基板より5倍厚かっただけでなく、熱膨張係数がアルミニウム電極配線とアルミナ(Al)基板とでよく一致していたためと考えられる。
【0115】
表7に示すように、アルミニウム電極配線の耐水性試験の結果は、実施例H−03〜H−13で「○」の評価であり、実施例H−01と実施例H−02で「×」の評価であった。すなわち、ガラス含有量が、0.2重量部以上で、良好な耐水性が得られた。
【0116】
表7に示すように、アルミニウム電極配線の比抵抗測定の結果は、実施例H−05〜H−09で比抵抗(Ωcm)が10−5オーダの低抵抗であり、実施例H−03と実施例H−04と実施例H−10〜H−12で10−4オーダの低抵抗であったが、実施例H−01と実施例H−02と実施例H−13で10−2オーダの高抵抗であった。すなわち、ガラス含有量が、0.2重量部以上、かつ、20.0重量部以下(実施例H−03〜H−12)で、低い比抵抗(10−4オーダ)が得られた。さらに、ガラス含有量が、0.5重量部以上、かつ、5.0重量部以下(実施例H−05〜H−09)で、一層低い比抵抗(10−5オーダ)が得られた。
【0117】
前記のことから、アルミナ(Al)基板に関しては、密着性試験と耐水性試験と比抵抗測定を考慮すると、実施例H−03〜H−12で好ましく、具体的には、ガラス含有量は0.2重量部〜20.0重量部の範囲で好ましいことがわかった。さらに、好ましくは、比抵抗が10−5オーダの低抵抗になる観点から、実施例H−05〜H−09で、ガラス含有量は0.5重量部〜5.0重量部の範囲で好ましいことがわかった。
【0118】
また、シリコン(Si)基板に関しては、密着性試験と耐水性試験と比抵抗測定を考慮すると、実施例H−03〜H−08で好ましく、具体的には、ガラス含有量は0.2重量部〜2.0重量部の範囲で好ましいことがわかった。さらに、好ましくは、比抵抗が10−5オーダの低抵抗になる観点から、実施例H−05〜H−08で、ガラス含有量は0.5重量部〜2.0重量部の範囲で好ましいことがわかった。
【0119】
(第4の実施形態)
[アルミニウム電極配線のプラズマディスプレイパネルのアドレス電極への適用に関する検討]
第4の実施形態では、アルミニウム電極配線のプラズマディスプレイパネルのアドレス電極への適用に関して検討した。
【0120】
図2に、本発明の第4の実施形態に係るプラズマディスプレイパネル(PDP:電子部品)11の断面図の一部を示す。第4の実施形態では、本願発明を適用可能な電子部品として、プラズマディスプレイパネル11を例に挙げ説明する。プラズマディスプレイパネル11のアドレス電極21に、本願発明の電子部品のアルミニウム電極配線を適用いている。プラズマディスプレイパネル11は、前面板12と背面板13とが100〜150μmの間隙をもって対向させて配置され、前面板12と背面板13の間隙は隔壁14で維持されている。前面板12と背面板13との周縁部は封着材料15で気密に封止され、前面板12と背面板13の間隙のパネル内部には希ガスが充填されている。
【0121】
前面板12上には表示電極20が形成されている。また、コントラストを向上するために、隣接するセル16の表示電極20間にブラックマトリックス(黒帯)26が形成されることもある。表示電極20とブラックマトリックス26上に誘電体層23が形成され、誘電体層23上に放電から表示電極20等を保護するための保護層25(例えば、酸化マグネシウム(MgO)の蒸着膜)が形成されている。
【0122】
背面板(基板に相当)13上にはアドレス電極(アルミニウム電極配線に相当)21が形成されている。平面視において、アドレス電極21は、表示電極20に対して直交するように形成されている。アドレス電極21上に誘電体層24が形成され、誘電体層24上にセル16を構成するための隔壁14が設けられている。隔壁14は、ストライプ状あるいは格子(ボックス)状の構造体になっている。
【0123】
前面板12と背面板13の間の間隙において、隔壁14により区切られた微小空間はセル16となる。セル16には蛍光体17、18、19が充填されている。赤色蛍光体17が充填されたセル16と緑色蛍光体18が充填されたセル16と青色蛍光体19が充填されたセル16の3原色に対応する3個のセル16で1画素が構成されている。各画素は、表示電極20とアドレス電極21に印加される信号に応じて種々の色を発光することができる。
【0124】
次に、プラズマディスプレイパネル11の製造方法について説明する。
【0125】
(4−1、導電性ペーストの作製)
まず、アルミニウムと少量のシリコンを溶融し、水アトマイズ法にて球状のシリコンを少量含むアルミニウム(合金)粒子を形成した。導電性ペースト用の、このアルミニウム(合金)粒子の平均粒径(D50)は、略1μmとした。
【0126】
また、導電性ペースト用のガラス組成物としては、表4の実施例G−11のガラス組成物と同じ組成のガラス組成物を、第2の実施形態と同様の製造方法で作成した。また、粉砕して粉末化したガラス組成物の平均粒径(D50)は、1μm以下であった。
【0127】
作製したアルミニウム(合金)粒子の100重量部に対して、10重量部のガラス組成物(酸化物)の粉末を混合し、さらに、この混合物にバインダ樹脂と溶剤と感光剤を添加・混合し、混錬した。バインダ樹脂は溶剤に溶け、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に、アルミニウム(合金)粒子とガラス組成物(酸化物)の粉末とが分散し、導電性ペーストが完成した。なお、バインダ樹脂にはエチルセルロースを用い、溶剤にはブチルカルビトールアセテートを用いた。
【0128】
(4−2、プラズマディスプレイパネルの作製)
次に、プラズマディスプレイパネルを作製した。まず、導電性ペーストを、スクリーン印刷法によって、背面板13の全面に塗布し、大気中150℃で乾燥させた。塗布した面にマスクを付け、紫外線を照射することによって、余分な箇所を除去し、アドレス電極21を背面板13上に形成した。次に、市販の銀ペーストを、スクリーン印刷法によって、前面板12の全面に塗布し、大気中150℃で乾燥させた。フォトリソグラフィ法とエッチング法によって銀ペーストの塗布膜の余分な箇所を除去して、表示電極20のパターニングを行った。
【0129】
その後、大気中、焼成温度600℃、焼成時間30分間で焼成して、表示電極20とアドレス電極21を完成させた。この焼成では、焼成雰囲気は酸性雰囲気になるのであるが、この焼成によって、アドレス電極21は、特にアルミニウムの金属粒子が化学反応して変色等することはなかった。
【0130】
次に、ブラックマトリックス26となるブラックペーストと、誘電体層23、24となる誘電性ペーストとを、前面板12と背面板13のそれぞれに塗布し、大気中、焼成温度610℃、焼成時間30分間で焼成した。なお、この焼成では、焼成雰囲気は酸性雰囲気になり、誘電体層24はアドレス電極21に直接接するが、この焼成によって、誘電体層24が、アドレス電極21とで化学反応することはなかった。前面板12の誘電体層23の側から保護層25を蒸着した。
【0131】
背面板13側の誘電体層24の上に隔壁14が設けられる。ガラス構造体よりなる隔壁14は、少なくともガラス組成物とフィラーを含む構造材料よりなり、その構造材料を焼結した焼成体から構成される。隔壁14は、隔壁部に溝が切られた揮発性シートを誘電体層24の上に貼り付け、その溝に隔壁14用のペーストを流し込み、500〜600℃で焼成することによって、揮発性シートを揮発させるとともに隔壁14を形成することができる。また、印刷法にて隔壁14用のペーストを誘電体層24の上の全面に塗布し、乾燥後にマスクして、サンドブラストや化学エッチングによって、不要な部分を除去し、500〜600℃で焼成することにより隔壁14を形成することもできる。この隔壁14を、誘電体層24の上に配置し、セル16を構成させた。そして、それぞれのセル16に、三原色に対応する蛍光体用のペーストを充填し450〜500℃で焼成することによって、赤色蛍光体17と緑色蛍光体18と青色蛍光体19を、セル16内に形成した。
【0132】
次に、封着材料15を、ディスペンサー法や印刷法等により、前面板12または背面板13のどちらか一方の周縁部に塗布した。そして、前面板12と背面板13を封着した。前面板12と背面板13の封着では、前面板12と背面板13とを正確に位置合わせしながら対向させて配置し、420〜500℃に加熱した。この加熱時には、セル16内のガスを排気して替わりに希ガスを封入した。なお、封着材料15は、蛍光体17〜19の形成時の蛍光体用のペーストの焼成と同時に仮焼成してもよい。封着材料15を仮焼成することによって、封着材料15内に含まれる気泡を低減できる。なお、図2では、封着材料15とアドレス電極21とが直接接している。封着材料15は、仮焼成時とガラス封着時に加熱され、この加熱では焼成雰囲気は酸性雰囲気になるのであるが、この加熱によって、封着材料15が、アドレス電極21とで化学反応することはなかった。以上で、プラズマディスプレイパネル11が完成した。
【0133】
(4−3、プラズマディスプレイパネルの評価)
(外観検査)
アドレス電極21の周りの外観検査を行った。アドレス電極21と背面板13の界面部や、アドレス電極21と誘電体層24の界面部には、空隙の発生や変色は認められなかった。外観上良好な状態でプラズマディスプレイパネル11を作製することができた。
【0134】
(点灯実験)
続いて、作製したプラズマディスプレイパネル11の点灯実験を行った。プラズマディスプレイパネル11のセル16を点灯(発光)させるために、点灯させたいセル16の表示電極20とアドレス電極21との間に電圧を印加してセル16内にアドレス放電を行い、希ガスをプラズマ状態に励起してセル16内に壁電荷を蓄積させた。次に、表示電極20の対に一定の電圧を印加することで、壁電荷が蓄積されたセル16のみに表示放電が起こり紫外線22を発生させた。そして、この紫外線22を利用して蛍光体17〜19を発光させ、画像(情報)を表示させた。
【0135】
この画像情報の表示の前後で、アドレス電極21の比抵抗が増加することはなかった。また、隣接するアドレス電極21同士等で、電気的耐圧性が低下することはなく、電圧を昇圧でき、セル16を点灯することができた。また、銀厚膜の電極配線のようなマイグレーション現象も生じず、その他特に支障があるような点は認められなかった。第4の実施形態のプラズマディスプレイパネル11のアドレス電極21には、高価な銀を使っていないので、コスト低減にも大きく貢献できる。
【0136】
なお、第4の実施形態では、アルミニウム電極配線を、アドレス電極21に適用したが、これに限らず、表示電極20に適用しても良い。ただし、この場合は、表示電極20の抵抗が銀ペーストから切換えたことにより上昇しないように、導電性ペースト中にアルミニウム粒子のほかに銀粒子も添加することが望ましい。
【0137】
本発明の実施形態では、アルミニウム電極配線の適用例として、太陽電池セル10の裏面に形成される裏面電極5や、プラズマディスプレイパネル11のアドレス電極21への展開を説明したが、必ずしもこれら2つの電子部品に限った話ではなく、その他の電子部品の電極としても広く適用できる可能性がある。特に、アルミニウム電極配線の高性能化と高信頼化が要求される電子部品や、高価な銀電極配線を安価なアルミニウム電極配線に変更したい電子部品では、本発明は非常に有効である。
【符号の説明】
【0138】
1 半導体基板(基板)
2 拡散層
3 反射防止層
4 受光面電極配線
5 裏面電極(アルミニウム電極配線)
6 出力電極
7 合金層
10 太陽電池セル(電子部品)
11 プラズマディスプレイパネル(電子部品)
12 前面板(基板)
13 背面板(基板)
15 封着材料
16 セル
20 表示電極(アルミニウム電極配線)
21 アドレス電極(アルミニウム電極配線)
22 紫外線
23、24 誘電体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム(Al)より仕事関数が小さい元素の酸化物から構成されることを特徴とするアルミニウム電極配線用のガラス組成物。
【請求項2】
不可避の元素以外にアルミニウムより仕事関数が大きい元素の酸化物を、含んでいないことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム電極配線用のガラス組成物。
【請求項3】
アルミニウムより仕事関数が小さい元素の前記酸化物は、少なくとも、
バナジウム(V)の酸化物と、
アルカリ土類金属の酸化物と、
アルカリ金属の酸化物とから構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム電極配線用のガラス組成物。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属の元素としては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)の元素の内、少なくともバリウムを含む1種以上であり、
前記アルカリ金属の元素としては、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)の元素の内、少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム電極配線用のガラス組成物。
【請求項5】
前記バナジウムの元素が五酸化バナジウム(V)として含まれているとした場合に、前記五酸化バナジウムを40〜70重量%含み、
前記アルカリ土類金属の元素Rnが化学式RnOで表される酸化物として含まれているとした場合に、前記化学式RnOで表される酸化物を20〜40重量%含み、
前記アルカリ金属の元素Rが化学式ROで表される酸化物として含まれているとした場合に、前記化学式ROで表される酸化物を10〜20重量%含むことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のアルミニウム電極配線用のガラス組成物。
【請求項6】
アルミニウム電極配線の焼成の際に、内部に微結晶が析出することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム電極配線用のガラス組成物。
【請求項7】
500℃以下の温度で結晶化し、700℃以下の温度で軟化流動することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のアルミニウム電極配線用のガラス組成物。
【請求項8】
400℃以下の温度で結晶化し、600℃以下の温度で軟化流動することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のアルミニウム電極配線用のガラス組成物。
【請求項9】
不可避の成分以外に、鉛(Pb)を含まないことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のアルミニウム電極配線用のガラス組成物。
【請求項10】
アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、ガラス組成物からなる粉末とが、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に分散しているアルミニウム電極配線用の導電性ペーストであって、
前記粉末となる前記ガラス組成物には、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のアルミニウム電極配線用のガラス組成物が用いられていることを特徴とするアルミニウム電極配線用の導電性ペースト。
【請求項11】
前記粉末は、前記粒子の100重量部に対して、0.2〜20重量部の割合で含まれていることを特徴とする請求項10に記載のアルミニウム電極配線用の導電性ペースト。
【請求項12】
前記粉末は、前記粒子の100重量部に対して、0.2〜2重量部の割合で含まれていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載のアルミニウム電極配線用の導電性ペースト。
【請求項13】
アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、前記粒子を基板に固定するガラス組成物とを有するアルミニウム電極配線を具備する電子部品であって、
前記粒子を基板に固定する前記ガラス組成物には、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のアルミニウム電極配線用のガラス組成物が用いられていることを特徴とする電子部品。
【請求項14】
前記ガラス組成物の内部には、微結晶が析出していることを特徴とする請求項13に記載の電子部品。
【請求項15】
前記ガラス組成物は、前記粒子の100重量部に対して、0.2〜20重量部の割合で含まれていることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の電子部品。
【請求項16】
前記基板は、p型半導体を有し、
前記p型半導体に、前記アルミニウム電極配線が形成されていることを特徴とする請求項13乃至請求項15のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項17】
前記基板がpn接合を有する太陽電池セルであることを特徴とする請求項16に記載の電子部品。
【請求項18】
請求項13乃至請求項15のいずれか1項に記載の電子部品において、
その電子部品がディスプレイパネルであることを特徴とする電子部品。
【請求項19】
アルミニウム及び/又はアルミニウムを含む合金からなる複数の粒子と、アルミニウムより仕事関数が小さい元素の酸化物から構成されるガラス組成物からなる粉末とが、溶剤に溶けたバインダ樹脂中に分散している導電性ペーストを基板に塗布し、
塗布した前記導電性ペーストを焼成して、アルミニウム電極配線を形成することを特徴とする電子部品の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−201714(P2011−201714A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69090(P2010−69090)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
【Fターム(参考)】