説明

アルミ電線及び接続端子構造

【課題】アルミ電線における接続端子部の腐食を防止するのに適したアルミ電線および、腐食性が改善された接続端子部の形成方法を提供する。
【解決手段】アルミ金属線2の表面に内側から順に下地メッキ層4、銅メッキ層6、表層メッキ層8が設けられてなるアルミ線10を導体とし、前記下地メッキ層4が、イオン化傾向の順位がアルミと銅との間の金属からなり、前記表層メッキ層8がSnまたはSn系合金からなるアルミ電線。前記アルミ電線を構成するアルミ線10の線束の端末部分をかしめ部材によりかしめ固定する工程、前記線束の端末部分の端面に糸半田の先端部を近接させる工程、該先端部をプラズマアーク法などにより加熱して前記端面、あるいは該端面とその近傍が該糸半田の半田材で被覆されるように半田掛けする工程を含むアルミ電線の接続端子構造形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐腐食性が改善されたアルミ電線及び接続端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミ電線は自動車等の移動体に用いる電線として軽量化のうえで注目されている。
【0003】
電線には腐食対策が必要であり、腐食に対しては芯線に樹脂からなるシース材を被覆することが行われるが、接続端子部においては芯線の端部が露出するので、この露出端部が腐食しやすいことが問題となっている。
【0004】
とくに、アルミ電線は接続端子部に異種金属のかしめ部材を用いると芯線が腐食しやすいので、耐腐食性の向上が望まれている。
【0005】
この対策として、例えば、接続端子の接続部の接続面を除いた表面部分全体を覆うようにメッキを施すことが開示されているが(例えば、特許文献1参照)、自動化された接続端子部の形成工程でこのようなメッキを施すことはこの形成工程の自動化のうえで加工効率を阻害する要因になるおそれがある。
【0006】
また、接続部の接続面を除いた表面部分全体を樹脂で覆うことも考えられる(例えば、ヒントとして特許文献2参照)が、これも形成工程の自動化のうえで加工効率を阻害する要因になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
[特許文献1]特開2009−277674号公報
[特許文献2]特開2007−282428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、アルミ電線における接続端子部の腐食を防止するのに適したアルミ電線および、腐食性が改善された接続端子部の形成方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは、アルミ金属線の表面に内側から順に下地メッキ層、銅メッキ層、表層メッキ層が設けられてなるアルミ線を導体とし、
前記下地メッキ層が、イオン化傾向の順位がアルミと銅との間の金属からなり、
前記表層メッキ層がSnまたはSn系合金からなる
アルミ電線であることにある。
【0010】
前記下地メッキ層の厚みは、前記アルミ金属線の径をd(mm)として、0.2μm〜4.0d(μm)であり得る。
【0011】
また、本発明の要旨とするところは、前記アルミ電線を構成するアルミ線の線束の端末部分が、相手側端子と電気的に接続される接続部を備えるかしめ部材により前記端末部分の外周を覆ってかしめ固定されてなる接続端子構造であることにある。
【0012】
前記接続端子構造においては、前記線束の端末部分の少なくとも端面が金属または樹脂からなる被覆材により被覆され得る。
【0013】
前記接続端子構造においては、前記線束の端末部分の端面、あるいは端面とその近傍が金属または樹脂からなる被覆材により被覆され得る。
【0014】
前記接続端子構造においては、前記被覆材が半田材からなり得る。
【0015】
また、本発明の要旨とするところは、前記アルミ電線を構成するアルミ線の線束の端末部分を電気的に接続される接続部を備えるかしめ部材により前記端末部分の外周を覆ってかしめ固定する工程、前記線束の端末部分の端面に糸半田の先端部を近接させる工程、該先端部をプラズマアーク法またはレーザーアーク法により加熱して前記端面、あるいは該端面とその近傍が該糸半田の半田材で被覆されるように半田掛けする工程を含むアルミ電線の接続端子構造形成方法であることにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、アルミ電線における接続端子部の腐食を防止するのに適したアルミ電線および、腐食性が改善された接続端子部の形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のアルミ電線の構成の態様を示す断面模式図である。
【図2】本発明のアルミ電線を用いた接続端子構造の態様の一例を示し、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のA−A方向の断面図である。
【図3】浸食の深さとニッケルメッキ層の厚みとの関係を示すグラフである。
【図4】本発明のアルミ電線を用いた接続端子構造の他の態様の一例を示す平面図である。
【図5】本発明のアルミ電線を用いた接続端子構造のさらに他の態様の一例を示す平面図である。
【図6】本発明のアルミ電線を用いた接続端子構造のさらに他の態様の一例を示す平面図である。
【図7】本発明のアルミ電線を用いた接続端子構造形成方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のアルミ電線は図1に示すように、アルミ金属線2の表面に内側から順に下地メッキ層4、銅メッキ層6、表層メッキ層8が設けられてなるアルミ線10を導体とするアルミ電線である。なお、本明細書においては、各図にわたって記される同じ符号は同一又は同様の部材やものを示す。
【0019】
本願明細書においては、用語「アルミ金属線」はアルミまたはアルミを主成分とする金属からなる金属線をいい、用語「アルミ線」はこのアルミ金属線を主たる構成要素とする線をいうものとする。
【0020】
図2に示すように、アルミ線10からなる複数本の加撚集束された線束(芯線)12を、線束の外周を樹脂などからなるシース材で被覆してシース14を設けたものが本発明のアルミ電線20の代表的な態様である。
【0021】
アルミ電線20は、その端末部22においてシース14を除去して線束12を露出させた端末部22の外周を、相手側端子と電気的に接続される接続部24を有するかしめ部材26のかしめ部28で覆ってかしめ固定されてなる接続端子構造30を形成することにより、相手側端子と接続して好適に用いられる。
【0022】
一般に電線の腐食はこのシースでガードされるが、前述のように、接続端子部においては電線の端部が露出するので、この露出端部が腐食しやすい。とくに従来のアルミ製電線においては、接続端子部の端面から腐食が進行する。あるいは、かしめ部材との接触部における電気化学的反応に起因して腐食が発生する。
【0023】
さらには、アルミ線の露出端部を仮に被覆材で被覆したとしても、アルミ線がメッキ層を備える場合は、下地メッキ層とその表層のメッキ層との間のイオン化傾向の違いによる電気化学的反応により腐食が発生することがある。
【0024】
本発明においては、表層メッキ層8は、SnまたはSn系合金からなるメッキ層である。Sn系合金はSnを主成分とする合金である。Sn系合金としては例えばSn−Ag−Cu合金、Sn−Cu合金、Sn−In合金が挙げられる。Sn−Ag−Cu合金としては例えばSn−3Ag−0.5Cuが、Sn−Cu合金としては例えば99.3Sn−0.7Cuが、Sn−In合金としては例えば99Sn−1Inが挙げられる。
【0025】
下地メッキ層4は、イオン化傾向の順位がアルミと銅との中間にある金属からなるメッキ層であり、例えば、このような金属としてはニッケル、亜鉛、鉄、錫が例示される。
【0026】
本願発明者らにより、本発明のアルミ電線は後述のようにこのような腐食が生じにくいことが見出された。
【0027】
本発明のアルミ電線に用いるアルミ金属線2の線径は特に限定されず、例えば、0.3〜1mmのものが好適に用いられる。
【0028】
下地メッキ層4は電気メッキにより形成される。アルミ金属線2の径がd(mm)のとき、下地メッキ層4の厚みは0.2μm〜4.0d(μm)であることが好ましい。この厚みがこの範囲を下回ると、接続端子部における耐腐食性が低下する。厚みがこの範囲を上回ると、アルミ線の可撓性が損なわれる。例えば、アルミ金属線2の径が0.4mmの場合、下地メッキ層4の厚みは0.2〜1.6μmであることが好ましい。
【0029】
銅メッキ層6は電気メッキにより形成され、厚みは4〜7μmであることが好ましい。
【0030】
表層メッキ層8は熔融メッキ法により形成され、厚みは0.5〜1.5μmであることが好ましい。
【0031】
本発明のアルミ電線の効果を以下の実験例で示す。
【0032】
実験例
表1に示す6種類のアルミ線につき、11Pの電線を作成し、端部の周面を銅板で筒状に巻きまわしてかしめて固定したものを腐食テスト用試料とした。
【0033】
アルミ線の原料素材としては、1.4mm径のアルミ金属線を用い、下地メッキ層4としてニッケルを電気メッキし、その上に銅を電気メッキしたのち、常法によりアルミ金属線の径が0.4mmになるように伸線し、次いで試料番号L−4〜6の試料につき表層メッキ層8としてSn−3Ag−0.5Cuを常法により熔融メッキした。
【0034】
この試料を濃度5重量%の食塩水に常温で96時間浸漬したのち縦割して腐食状態を観察した。腐食は端面から進行しており、腐食した部分は空洞になっている。当初の端面から残留のアルミ電線の端面までの距離、すなわち浸食の深さを測定した。
表1に試料の内容と浸食の深さを示す。
【0035】
【表1】

【0036】
図3に、表1の結果に基づく、浸食の深さとニッケルメッキ層の厚みとの関係を示す。
【0037】
表1、図3より、ニッケルメッキ層の厚みが0.2μm以上であれば良好な耐腐食性能が得られることがわかる。また、最外層としてSn−3Ag−0.5Cuメッキ層が形成されていないものは、ニッケルメッキ層の厚みが0.2μm以上であっても耐腐食性能が劣ることがわかる。
【0038】
本発明のアルミ電線を用いた接続端子構造30は、さらに、図4に示すように、線束12の端末部22の端面32が金属または樹脂からなる被覆材34により被覆された構造であることが腐食を防ぐうえで好ましい。
【0039】
被覆材34は、端面32のみならず端面32近傍の線束12の周面を被覆するように設けられてもよい。被覆材34が図5に示すように端面32と端面32近傍の線束12の周面37および、かしめ部28の端面32近傍の部分の表面35を被覆するように設けられてもよい。
【0040】
あるいは、図4、図5の場合に比べて製造工程に時間を要するが、図6に示すように、被覆材34は、端面32、電線の端部に露出した線束12の周面全体、および、かしめ部28全体を被覆するように設けられてもよい。
【0041】
被覆材34を樹脂で形成する場合、例えば、2液混合型のエポキシ樹脂を端面32等に塗布して硬化させるなどの方法が用いられる。あるいは、紫外線硬化型の樹脂(アクリル系など)を端面32等に塗布して紫外線照射で硬化させるなどの方法が用いられる。
【0042】
被覆材34が金属からなる場合、この金属からなる被覆材34ははんだ材を用いて端面32等を覆うように半田付けすることにより容易に形成することができる。このはんだ材が、表層メッキ層に対する濡れ性が良好なはんだ材、例えば表層メッキ層がSn−Ag−Cu系合金のメッキ層であるとすると、このSn−Ag−Cu系合金のメッキ層に用いられているはんだ材と同様なはんだ材を用いる場合は、半田付け工程において熔融したはんだ材が、互いに隣接のアルミ線10の間の隙間に容易に入り込んで隙間を充填するので、被覆材34が端面32に確実に固着固定される。また、この充填により耐腐食性が向上する。
【0043】
はんだ材を用いて端面32を覆うように半田付けする態様の一例としては、
アルミ電線を構成するアルミ線10の線束12の端末部22を電気的に接続される接続部24を備えるかしめ部材26により端末部22の外周を覆ってかしめ固定する工程(図2参照)、
線束10の端末部22の端面32に糸半田40の先端部42を近接させる工程(図7参照)、
カソード電極装置44を用いて、カソード電極からアルゴン等の不活性ガスのプラズマフレーム33を発生させ、糸半田40の先端部42をアノード電極として先端部42を加熱蒸発させその金属蒸気を端面32に接触させて冷却することにより、端面32が糸半田40の半田材で被覆されるように半田付けする、プラズマアーク法による半田付けの工程(図7参照)
を含むアルミ電線の接続端子構造形成方法が挙げられる。
【0044】
はんだ材を用いて端面32を覆うように半田付けする態様の他の一例としては、
アルミ電線を構成するアルミ線10の線束12の端末部22を電気的に接続される接続部24を備えるかしめ部材26により端末部22の外周を覆ってかしめ固定する工程(図2参照)、
線束10の端末部22の端面32に糸半田40の先端部42を近接させる工程、
糸半田40と線束(芯線)12との間に電圧を印加してアーク放電させるとともに糸半田40の先端部42にYAGレーザー等のレーザー光を照射してて先端部42を加熱蒸発させその金属蒸気を端面32に接触させて冷却することにより、端面32が糸半田40の半田材で被覆されるように半田付けするレーザーアーク法による半田付けの工程
を含むアルミ電線の接続端子構造形成方法が挙げられる。
【0045】
この方法は、短時間で効率的に被覆材34を端面32に確実に固着させることができ、被覆材34の被覆操作の自動化を可能にする。
【0046】
実施例1
【0047】
アルミ線の原料素材として1.4mm径のアルミ金属線を用い、ニッケル、銅をこの順で常法により電気メッキしたのちアルミ金属線の径が0.4mmになるように伸線した。伸線後のニッケルメッキ層の厚みは0.3μm、銅メッキ層の厚みは5.7μmであった。次いでSn−3Ag−0.5Cuを常法により厚み0.2μmで熔融メッキしアルミ線を得た。このアルミ線から11Pの電線を作成し、端部の周面を銅性のかしめ部材でかしめて固定して接続端子構造を形成した。
【0048】
この接続端子構造の部分を濃度5重量%の食塩水に常温で96時間浸漬したのち縦割して腐食状態を観察した。腐食は端面から進行しており、腐食した部分は空洞になっている。当初の端面から残留のアルミ電線の端面までの距離、すなわち浸食の深さを測定したところ、0.5mmであり、良好な耐腐食性の接続端子構造を得た。
比較例1
【0049】
実施例1で用いたと同様のアルミ金属線を用い、ニッケル、銅をこの順で常法により電気メッキしたのちアルミ金属線の径が0.4mmになるように伸線しアルミ線を得た。伸線後のニッケルメッキ層の厚みは0.3μm、銅メッキ層の厚みは5.7μmであった。このアルミ線から11Pの電線を作成し、端部の周面を銅性のかしめ部材でかしめて固定して接続端子構造を形成した。
【0050】
この接続端子構造の部分を濃度5重量%の食塩水に常温で96時間浸漬したのち実施例1と同様にして浸食の深さを測定したところ、3.5mmであり耐腐食性は不良であった。
【0051】
実施例2
【0052】
アルミ線の原料素材として1.4mm径のアルミ金属線を用い、亜鉛、銅をこの順で常法により電気メッキしたのちアルミ金属線の径が0.4mmになるように伸線した。伸線後の亜鉛メッキ層の厚みは0.3μm、銅メッキ層の厚みは5.7μmであった。次いでSn−3Ag−0.5Cuを常法により厚み0.2μmで熔融メッキしアルミ線を得た。このアルミ線から11Pの電線を作成し、端部の周面を銅性のかしめ部材でかしめて固定して接続端子構造を形成した。
【0053】
この接続端子構造の部分を濃度5重量%の食塩水に常温で96時間浸漬したのち実施例1と同様にして浸食の深さを測定したところ、0.6mmであり、良好な耐腐食性の接続端子構造を得た。
【0054】
実施例3
【0055】
アルミ線の原料素材として1.4mm径のアルミ金属線を用い、鉄、銅をこの順で常法により電気メッキしたのちアルミ金属線の径が0.4mmになるように伸線した。伸線後の鉄メッキ層の厚みは0.3μm、銅メッキ層の厚みは5.7μmであった。次いでSn−3Ag−0.5Cuを常法により厚み0.2μmで熔融メッキしアルミ線を得た。このアルミ線から11Pの電線を作成し、端部の周面を銅性のかしめ部材でかしめて固定して接続端子構造を形成した。
【0056】
この接続端子構造の部分を濃度5重量%の食塩水に常温で96時間浸漬したのち実施例1と同様にして浸食の深さを測定したところ、0.6mmであり、良好な耐腐食性の接続端子構造を得た。
実施例4
【0057】
アルミ線の原料素材として1.4mm径のアルミ金属線を用い、錫、銅をこの順で常法により電気メッキしたのちアルミ金属線の径が0.4mmになるように伸線した。伸線後の錫メッキ層の厚みは0.3μm、銅メッキ層の厚みは5.7μmであった。次いでSn−3Ag−0.5Cuを常法により厚み0.2μmで熔融メッキしアルミ線を得た。このアルミ線から11Pの電線を作成し、端部の周面を銅性のかしめ部材でかしめて固定して接続端子構造を形成した。
【0058】
この接続端子構造の部分を濃度5重量%の食塩水に常温で96時間浸漬したのち実施例1と同様にして浸食の深さを測定したところ、0.6mmであり、良好な耐腐食性の接続端子構造を得た。
実施例5
【0059】
アルミ線の原料素材として1.4mm径のアルミ金属線を用い、ニッケル、銅をこの順で常法により電気メッキしたのちアルミ金属線の径が0.4mmになるように伸線した。伸線後のニッケルメッキ層の厚みは0.3μm、銅メッキ層の厚みは5.7μmであった。次いで錫を常法により厚み0.2μmで熔融メッキしアルミ線を得た。このアルミ線から11Pの電線を作成し、端部の周面を銅性のかしめ部材でかしめて固定して接続端子構造を形成した。
【0060】
この接続端子構造の部分を濃度5重量%の食塩水に常温で96時間浸漬したのち実施例1と同様にして浸食の深さを測定したところ、0.6mmであり、良好な耐腐食性の接続端子構造を得た。
実施例5
【0061】
アルミ線の原料素材として1.4mm径のアルミ金属線を用い、ニッケル、銅をこの順で常法により電気メッキしたのちアルミ金属線の径が0.4mmになるように伸線した。伸線後のニッケルメッキ層の厚みは0.3μm、銅メッキ層の厚みは5.7μmであった。次いで99.3Sn−0.7Cuを常法により厚み0.2μmで熔融メッキしアルミ線を得た。このアルミ線から11Pの電線を作成し、端部の周面を銅性のかしめ部材でかしめて固定して接続端子構造を形成した。
【0062】
この接続端子構造の部分を濃度5重量%の食塩水に常温で96時間浸漬したのち実施例1と同様にして浸食の深さを測定したところ、0.7mmであり、良好な耐腐食性の接続端子構造を得た。
実施例6
【0063】
アルミ線の原料素材として1.4mm径のアルミ金属線を用い、ニッケル、銅をこの順で常法により電気メッキしたのちアルミ金属線の径が0.4mmになるように伸線した。伸線後のニッケルメッキ層の厚みは0.3μm、銅メッキ層の厚みは5.7μmであった。次いで99Sn−1Inを常法により厚み0.2μmで熔融メッキしアルミ線を得た。このアルミ線から11Pの電線を作成し、端部の周面を銅性のかしめ部材でかしめて固定して接続端子構造を形成した。
【0064】
この接続端子構造の部分を濃度5重量%の食塩水に常温で96時間浸漬したのち実施例1と同様にして浸食の深さを測定したところ、0.7mmであり、良好な耐腐食性の接続端子構造を得た。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、自動車等の移動体のワイヤーハーネスに適用して移動体の軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0066】
2:アルミ金属線
4:下地メッキ層
6:銅メッキ層
8:表層メッキ層
10:アルミ線
12:線束
14:シース
20:アルミ電線
22:端末部
24:接続部
26:かしめ部材
28:かしめ部
30:接続端子構造
34:被覆材
44:カソード電極装置
33:プラズマフレーム
40:糸半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ金属線の表面に内側から順に下地メッキ層、銅メッキ層、表層メッキ層が設けられてなるアルミ線を導体とし、
前記下地メッキ層が、イオン化傾向の順位がアルミと銅との間の金属からなり、
前記表層メッキ層がSnまたはSn系合金からなる
アルミ電線。
【請求項2】
前記下地メッキ層の厚みが、前記アルミ金属線の径をd(mm)として、0.2μm〜4.0d(μm)である請求項1に記載のアルミ電線。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアルミ電線を構成するアルミ線の線束の端末部分が、相手側端子と電気的に接続される接続部を備えるかしめ部材により前記端末部分の外周を覆ってかしめ固定されてなる接続端子構造。
【請求項4】
前記線束の端末部分の少なくとも端面が金属または樹脂からなる被覆材により被覆された請求項3に記載の接続端子構造。
【請求項5】
前記線束の端末部分の端面、あるいは端面とその近傍が金属または樹脂からなる被覆材により被覆された請求項3に記載の接続端子構造。
【請求項6】
前記被覆材が半田材からなる請求項4または5に記載の接続端子構造。
【請求項7】
請求項1に記載のアルミ電線を構成するアルミ線の線束の端末部分を電気的に接続される接続部を備えるかしめ部材により前記端末部分の外周を覆ってかしめ固定する工程、前記線束の端末部分の端面に糸半田の先端部を近接させる工程、該先端部をプラズマアーク法またはレーザーアーク法により加熱して前記端面、あるいは該端面とその近傍が該糸半田の半田材で被覆されるように半田掛けする工程を含むアルミ電線の接続端子構造形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−99219(P2012−99219A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229269(P2010−229269)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(390024464)協和電線株式会社 (13)
【Fターム(参考)】