説明

アレイアンテナ及び無線タグ通信装置

【課題】設置スペースが小さくて済み、且つ隣接するアンテナ素子相互間の影響を軽減するアレイアンテナ及びそのアレイアンテナを有する無線タグ通信装置を提供する。
【解決手段】複数のアンテナ素子30から構成されるアレイアンテナ16において、それらアンテナ素子30のうち少なくとも一部が空気よりも高い誘電率を有する固体誘電体18に被覆されていることから、複数のアンテナ素子30相互間の電気長を長くすることができ、実質的にそれらアンテナ素子30相互間の距離を長くとった場合と同等の効果が得られる。すなわち、設置スペースが小さくて済み、且つ隣接するアンテナ素子30相互間の影響を軽減するアレイアンテナ16を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線にて情報の書き込みや読み出しができる無線タグとの間で通信を行う無線タグ通信装置等に好適に適用されるアレイアンテナ及びそのアレイアンテナを有する無線タグ通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の情報が記憶された小型の無線タグ(応答器)から所定の無線タグ通信装置(質問器)により非接触にて情報の読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。このRFIDシステムは、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても無線タグ通信装置との通信によりその無線タグに記憶された情報を読み出すことが可能であることから、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
斯かる無線タグ通信装置の一例として、複数のアンテナ素子から成るアレイアンテナを備えたものが知られている。例えば、特許文献1に記載された無線装置がそれである。この無線装置によれば、複数のアンテナ素子から成るアレイアンテナと、それら複数のアンテナ素子により受信される受信信号それぞれにウェイトを乗算するアダプティブ処理部とを、備えていることから、上記複数のアンテナ素子相互間の位相差を利用して上記アレイアンテナの指向性を好適に定めることができ、通信対象である無線タグから送信される信号を好適に受信することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−283411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述したような従来のアレイアンテナでは、隣接するアンテナ素子相互間の結合量が比較的大きくなることから、特にそのアレイアンテナにより送信信号の送信及び受信信号の受信を同時に行う場合において、送信側からの回り込み信号が受信信号に混入し易くなるという弊害があった。そのように隣接するアンテナ素子相互間の影響に起因する弊害を抑制するための一方法として、それらアンテナ素子相互間の距離を長くとることが考えられるが、そのためにアレイアンテナの設置に要するスペースが大きくなってしまい、延いては装置が大型化するという新たな問題を生じさせる。このため、設置スペースが小さくて済み、且つ隣接するアンテナ素子相互間の影響を軽減するアレイアンテナの開発が求められていた。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、設置スペースが小さくて済み、且つ隣接するアンテナ素子相互間の影響を軽減するアレイアンテナ及びそのアレイアンテナを有する無線タグ通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、複数のアンテナ素子から構成されるアレイアンテナであって、それらアンテナ素子のうち少なくとも一部が空気よりも高い誘電率を有する固体誘電体に被覆されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記目的を達成するために、本第2発明の要旨とするところは、無線通信を介して情報の書き込み及び/又は読み出しが可能な無線タグに向けて所定の送信信号を送信アンテナから送信すると共に、その送信信号に応答してその無線タグから返信される返信信号を受信アンテナにより受信することでその無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、上記第1発明のアレイアンテナを備え、そのアレイアンテナは前記送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方として用いられることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
このように、前記第1発明によれば、複数のアンテナ素子から構成されるアレイアンテナにおいて、それらアンテナ素子のうち少なくとも一部が空気よりも高い誘電率を有する固体誘電体に被覆されていることから、前記複数のアンテナ素子相互間の電気長を長くすることができ、実質的にそれらアンテナ素子相互間の距離を長くとった場合と同等の効果が得られる。すなわち、設置スペースが小さくて済み、且つ隣接するアンテナ素子相互間の影響を軽減するアレイアンテナを提供することができる。
【0010】
ここで、前記第1発明において、好適には、前記アンテナ素子は、1直線上に配置された直線状エレメントから成るものである。このようにすれば、複数の直線状エレメントから成るアレイアンテナを小型化できると共に、隣接するアンテナ素子相互間の影響を軽減することができる。
【0011】
また、好適には、前記アンテナ素子は、1直線上に配置された1対の直線状エレメントから成るダイポールアンテナである。このようにすれば、複数のダイポールアンテナから成るアレイアンテナを小型化できると共に、隣接するアンテナ素子相互間の影響を軽減することができる。
【0012】
また、好適には、前記アンテナ素子は、1対の直線状エレメントの長さが、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2となるように構成されたものである。このようにすれば、固体誘電体を備えない通常のアンテナ素子より短いエレメント長で構成することができることに加え、アンテナ素子を共振状態で使用することができる。
【0013】
また、好適には、前記固体誘電体は、前記アンテナ素子の周囲を円筒状に被覆するものであり、それら固体誘電体に被覆された複数のアンテナ素子が互いに平行を成すように配列されて構成されるものである。このようにすれば、円筒状の固体誘電体によりアンテナ素子を被覆することで、アレイアンテナに到来する電波のアンテナ法線方向の成分を垂直に固体誘電体に入射させる構成が実現でき、その固体誘電体の誘電率や入射角等による屈折の影響を無視することができる。
【0014】
また、好適には、前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2となるように配列されたものである。このようにすれば、隣接するダイポールアンテナ相互間の結合を固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等に確保しつつ、より小型のアレイアンテナを実現できる。
【0015】
また、好適には、前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の空気中における波長の1/2となるように配列されたものである。このようにすれば、固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等の配置で、隣接するダイポールアンテナ相互間の結合を小さくすることができる。
【0016】
また、好適には、前記固体誘電体は、隣接する円筒状の固体誘電体相互間で一部が重なるように一体的に構成されたものである。このようにすれば、前記複数のアンテナ素子を被覆する固体誘電体を一体的に構成して厚みを持たせることで、その固体誘電体による隣接するアンテナ素子相互間の影響の軽減効果を高めることができる。
【0017】
また、好適には、前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2となるように配列されたものであり、前記円筒状の固体誘電体における底面半径は、前記隣接するアンテナ素子相互間の距離と等しいものである。このようにすれば、アレイアンテナに垂直な方向から±30°の範囲で到来する電波のアンテナ法線方向の成分を垂直に固体誘電体に入射させる構成が実現でき、その固体誘電体の誘電率や入射角等による屈折の影響を無視することができることに加え、可及的に小型のアレイアンテナを実現できる。
【0018】
また、好適には、前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の空気中における波長の1/2となるように配列されたものであり、前記円筒状の固体誘電体における底面半径は、前記隣接するアンテナ素子相互間の距離と等しいものである。このようにすれば、固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等の配置で、隣接するアンテナ素子相互間の結合を小さくすることができる。
【0019】
また、好適には、前記固体誘電体は、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子を一体的に且つ矩形平板状に被覆するものである。このようにすれば、隣接するアンテナ素子相互間の影響を更に軽減することができる。
【0020】
また、好適には、前記矩形平板状の固体誘電体の厚さは、前記アンテナ素子のエレメントの直径以下である。このようにすれば、前記矩形平板状の固体誘電体の厚さを可及的に薄くすることで電波の入射乃至射出時における屈折の影響を小さくできると共に、隣接するアンテナ素子相互間の結合量を小さくできる。
【0021】
また、好適には、前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の空気中における波長の1/2以上となるように配列されたものである。このようにすれば、隣接するダイポールアンテナ相互間の結合を固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等に確保しつつ、より小型のアレイアンテナを実現できる。
【0022】
また、好適には、前記矩形平板状の固体誘電体の厚さは、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2である。このようにすれば、固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等の通信特性を保証しつつ、より小型のアレイアンテナを実現できる。
【0023】
また、好適には、前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の空気中における波長の1/2以上となるように配列されたものである。このようにすれば、固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等の配置で、隣接するアンテナ素子相互間の結合を小さくすることができる。
【0024】
また、好適には、前記矩形平板状の固体誘電体における前記複数のアンテナ素子によって張られる平面と平行を成す2つの平面部について、一方の平面部と前記平面との距離は前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2以上であり、他方の平面部と前記平面との距離はその波長の1/2未満である。このようにすれば、前記複数のアンテナ素子に対する前記2つの平面部までの厚さに偏りをつけることで、アレイの前後で別々のパターンを形成することができ、何れか一方の面のみにビームを形成すること等が可能とされる。
【0025】
また、好適には、前記矩形平板状の固体誘電体における前記複数のアンテナ素子によって張られる平面と平行を成す2つの平面部について、少なくとも一方の平面部と前記平面との距離は前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2以上であり、その平面部を覆うように金属板が固設されたものである。このようにすれば、金属面等に取り付けた際に好適に機能するアレイアンテナを実現できる。
【0026】
また、好適には、前記固体誘電体は、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子を一体的に且つそれら複数のアンテナ素子によって張られる平面と垂直な光軸を有する凸レンズ状に被覆するものである。このようにすれば、前記固体誘電体を凸レンズ状とすることで、各アンテナ素子に対応して固体誘電体中を通過する電波の距離が異なり、到来方向から遠いほど固体誘電体中を通過する距離が大きくなることから、指向性方向制御が容易となり、ビーム幅を狭くすることができる。
【0027】
また、好適には、前記固体誘電体は、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子を一体的に且つそれら複数のアンテナ素子によって張られる平面と垂直な光軸を有する凹レンズ状に被覆するものである。このようにすれば、前記固体誘電体を凹レンズ状すなわち両端部に近付くほど厚みが厚くなるように構成することで、その両端部におけるアンテナ素子を近接させてもそれら隣接するアンテナ素子相互間の影響を可及的に軽減することができる。
【0028】
また、好適には、前記固体誘電体は、セラミックスを主材料とするものである。このようにすれば、比較的高い誘電率を有する実用的な材料を用いて設置スペースが小さくて済み且つ隣接するアンテナ素子相互間の影響を軽減するアレイアンテナを提供することができる。
【0029】
また、前記第2発明によれば、前記第1発明のアレイアンテナを備え、そのアレイアンテナは前記送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方として用いられるものであることから、無線タグ通信装置による無線タグとの通信に用いられるアレイアンテナに関して、複数のアンテナ素子相互間の電気長を長くすることができ、実質的にそれらアンテナ素子相互間の距離を長くとった場合と同等の効果が得られる。すなわち、設置スペースが小さくて済み、且つ隣接するアンテナ素子相互間の影響を軽減するアレイアンテナを備えた無線タグ通信装置を提供することができる。
【0030】
ここで、前記第2発明は、好適には、前記固体誘電体の性状に基づいて前記アレイアンテナの指向性を制御する指向性制御部を備えたものである。このようにすれば、前記アレイアンテナに備えられた固体誘電体の誘電率、形状、及びアンテナ素子との相対位置関係等に合わせて、それらによる電波の屈折や電気長の変化等の影響を考慮した指向性制御を行うことができる。
【0031】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0032】
図1は、本発明が好適に用いられる無線タグ通信システム10について説明する図である。この無線タグ通信システム10は、本発明の一実施例である無線タグ通信装置12と、その無線タグ通信装置12の通信対象である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ14とから構成される所謂RFID(Radio Frequency Identification)システムであり、上記無線タグ通信装置12はそのRFIDシステムの質問器として、上記無線タグ14は応答器としてそれぞれ機能する。すなわち、上記無線タグ通信装置12から質問波F(送信信号)が上記無線タグ14に向けて送信されると、その質問波Fを受信した上記無線タグ14において所定の情報信号(データ)によりその質問波Fが変調され、応答波F(返信信号)として上記無線タグ通信装置12に向けて返信されることで、その無線タグ通信装置12と無線タグ14との間で情報の通信が行われる。この無線タグ通信システム10は、例えば、所定の通信領域内における物品の管理等に用いられるものであり、上記無線タグ14は、好適には、管理対象である物品に貼られる等してその物品と一体的に設けられている。
【0033】
図2は、上記無線タグ通信装置12の電気的構成を説明する図である。この図2に示すように、上記無線タグ通信装置12は、上記送信信号の主搬送波を発生させるための主搬送波発生部20と、その主搬送波発生部20により発生させられた主搬送波を後述する送信データ生成部42により生成される送信情報信号(送信データ)により変調して上記送信信号を生成する送信信号変調部21と、その送信信号変調部21により変調された送信信号を上記無線タグ14に向けて送信すると共に、その送信信号に応じてその無線タグ14から返信される返信信号を受信するための送受信共用の複数(図2では3本)のアンテナ素子30a、30b、30c(以下、特に区別しない場合には単にアンテナ素子30と称する)と、それら複数のアンテナ素子30から送信される送信信号の送信指向性を制御すると共に、それら複数のアンテナ素子30により受信される受信信号の受信指向性を制御するための指向性処理部22と、その指向性処理部22から供給される送信信号をアンテナ素子30に供給すると共に、それらアンテナ素子30により受信された受信信号をその指向性処理部22に供給する複数(図2では3つ)の送受信分離部24a、24b、24c(以下、特に区別しない場合には単に送受信分離部24と称する)と、所定の周波数の局所信号を発生させる局部発振器26と、上記指向性処理部22から供給される受信信号それぞれにその局部発振器26により発生させられる局所信号を掛け合わせることでダウンコンバートする複数(図2では3つ)のダウンコンバータ28a、28b、28cと、それらダウンコンバータ28によりダウンコンバートされた受信信号の復調処理をはじめとする上記無線タグ通信装置12の動作を制御する制御部40とを、備えて構成されている。ここで、上記送受信分離部24としては、サーキュレータ若しくは方向性結合器等が好適に用いられる。
【0034】
上記指向性処理部22は、上記送信信号変調部21から供給される送信信号それぞれの位相を制御する複数(図2では3つ)の送信信号位相制御部32a、32b、32c(以下、特に区別しない場合には単に送信信号位相制御部32と称する)と、それぞれの振幅を制御する複数(図2では3つ)の送信信号振幅制御部34a、34b、34c(以下、特に区別しない場合には単に送信信号振幅制御部34と称する)とを、備えており、それら送信信号位相制御部32及び送信信号振幅制御部34を介して上記複数のアンテナ素子30から送信される送信信号それぞれの位相及び振幅を制御することでその送信信号の送信指向性を制御する。また、上記複数の送受信分離部24から供給される受信信号それぞれの位相を制御する複数(図2では3つ)の受信信号位相制御部36a、36b、36c(以下、特に区別しない場合には単に受信信号位相制御部36と称する)と、それぞれの振幅を制御する複数(図2では3つ)の受信信号振幅制御部38a、38b、38c(以下、特に区別しない場合には単に受信信号振幅制御部38と称する)とを、備えており、それら受信信号位相制御部36及び受信信号振幅制御部38を介して上記複数のアンテナ素子30により受信された受信信号それぞれの位相及び振幅を制御することでその受信信号の受信指向性を制御する。
【0035】
前記制御部40は、CPU、ROM、及びRAM等を含んで構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う所謂マイクロコンピュータであり、送信データの生成、送信信号位相制御部32及び送信信号振幅制御部34の制御量の決定、受信信号位相制御部36及び受信信号振幅制御部38の制御量の決定、前記無線タグ14に向けて前記送信信号を送信する送信制御、その送信信号に応じて前記無線タグ14から返信される返信信号を受信する受信制御、及び受信された受信信号を復調する復調制御等を実行する。斯かる制御を実行するため、送信データ生成部42、PAAウェイト制御部46、受信信号合成部52、及び受信信号復調部54を機能的に含んでいる。
【0036】
上記送信データ生成部42は、前記送信信号を変調するための所定の送信情報信号である送信データを生成して前記送信信号変調部21に供給する。その送信信号変調部21では、上記送信データ生成部42から供給される送信データに基づいて送信信号の変調が行われる。
【0037】
前記PAAウェイト制御部46は、送信制御部48及び受信制御部50を含んでおり、前記複数のアンテナ素子30から送信される送信信号それぞれの位相(及び必要に応じて振幅)を制御することで送信指向性を制御する。また、前記複数のアンテナ素子30により受信される受信信号それぞれの位相(及び必要に応じて振幅)を制御することで受信指向性を制御する。すなわち、前記アレイアンテナ16の送受信指向性を制御する指向性制御部として機能する。
【0038】
上記送信制御部48は、前記指向性処理部22を介して各送信信号の位相を制御することにより前記複数のアンテナ素子30から成る送信アンテナを送信用フェイズドアレイアンテナ(Phased Array Antenna)として制御する。或いは、前記指向性処理部22を介して各送信信号の位相及び振幅を受信信号の品質が向上するように制御することにより前記複数のアンテナ素子30から成る送信アンテナを送信用アダプティブアレイアンテナ(Adaptive Array Antenna)として制御する。好適には、後述する受信信号合成部52における前記受信信号の合成量が可及的に大きくなるように前記送信信号の送信指向性を定める。
【0039】
前記受信制御部50は、前記複数のアンテナ素子30により受信される受信信号それぞれの位相(及び必要に応じて振幅)を制御することによりその受信信号の受信指向性を制御する。すなわち、前記指向性処理部22を介して各受信信号の位相を制御することにより前記複数のアンテナ素子30から成る受信アンテナを受信用フェイズドアレイアンテナとして制御する。或いは、前記指向性処理部22を介して各受信信号の位相及び振幅を受信信号の品質が向上するように制御することにより前記複数のアンテナ素子30から成る受信アンテナを受信用アダプティブアレイアンテナとして制御する。好適には、後述する受信信号合成部52における前記受信信号の合成量が可及的に大きくなるように前記受信信号の受信指向性を定める。
【0040】
前記受信信号合成部52は、前記複数のアンテナ素子30によりそれぞれ受信される受信信号を合成する。前記受信制御部50により前記指向性処理部22を介してそれぞれ位相及び振幅が制御された受信信号がこの受信信号合成部52により合成されることで、前記複数のアンテナ素子30から成る受信アンテナの受信指向性が定まる。
【0041】
前記受信信号復調部54は、上記受信信号合成部52により合成された前記複数のアンテナ素子30からの受信信号を復調する。好適には、AM方式により受信信号をAM復調した後、その復調信号をFM復号化して前記無線タグ14による変調に関する情報信号を読み出す。
【0042】
図3は、前記無線タグ14に備えられた無線タグ回路素子70の構成を説明する図である。この図3に示すように、上記無線タグ回路素子70は、前記無線タグ通信装置12との間で信号の送受信を行うためのアンテナ部72と、そのアンテナ部72により受信された信号を処理するためのIC回路部74とを、備えて構成されている。そのIC回路部74は、上記アンテナ部72により受信された前記無線タグ通信装置12からの質問波Fを整流する整流部76と、その整流部76により整流された質問波Fのエネルギを蓄積するための電源部78と、上記アンテナ部72により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部86に供給するクロック抽出部80と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部82と、上記アンテナ部72に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部84と、上記整流部76、クロック抽出部80、及び変復調部84等を介して上記無線タグ回路素子70の作動を制御するための制御部86とを、機能的に含んでいる。この制御部86は、前記無線タグ通信装置12と通信を行うことにより上記メモリ部82に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ部72により受信された質問波Fを上記変復調部84において上記メモリ部82に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波Fとして上記アンテナ部72から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0043】
図4は、前記無線タグ通信装置12に備えられた、本第1発明の一実施例であるアレイアンテナ16の外観を概略的に示す斜視図である。この図4に示すように、本実施例のアレイアンテナ16を構成するアンテナ素子30は、好適には、それぞれ1直線上に配置された1対の直線状エレメントから成るダイポールアンテナであり、それら複数のダイポールアンテナが互いに平行を成すように配列されて前記アレイアンテナ16が構成されている。また、以下に詳述するように、それら複数のアンテナ素子30a、30b、30cそれぞれの周囲が底面半径を同じくする円筒状の固体誘電体18a、18b、18c(以下、特に区別しない場合には単に固体誘電体18と称する)に被覆されている。なお、この図4において、各アンテナ素子30の中央から紙面下方に向かい延びている部分は給電用ケーブルである。後述する図面においても同様であり、以下、その説明を省略する。
【0044】
図5は、前記アレイアンテナ16に備えられたアンテナ素子30(ダイポールアンテナ)の外観を概略的に示す斜視図であり、図6は、その寸法を説明する正面図(側面図)である。これらの図に示すように、1対の直線状エレメントから成るダイポールアンテナである前記アンテナ素子30は、上記円筒状の固体誘電体18における軸心に配設され、そのアンテナ素子30における任意の箇所(直線上における任意の位置)から円筒の側面までの距離rが常に一定(=円筒の底面半径)となるように構成されている。また、好適には、上記円筒状の固体誘電体18の長手寸法Lcはアンテナ素子30の長手寸法(エレメント全長)Leよりも長く、前記アンテナ素子30は前記円筒状の固体誘電体18中に埋設されている。
【0045】
図7及び図8は、前記固体誘電体18の物性(電気特性)について説明する図である。本実施例のアンテナ素子30を被覆する固体誘電体18は、例えば、セラミックス材料(ファインセラミックス)、合成樹脂材料、絶縁材料の粉体を含む混合材料等、少なくとも空気よりも高い誘電率を有する固体材料から成るものであり、その比誘電率εrは、好適には2乃至100程度である。また、その比透磁率μrは、好適には空気に近い1程度である。比誘電率がεr、比透磁率がμrである誘電体内における電波の速度vrは、光速をcとして次の(1)式で表せることから、前記固体誘電体18内における所定の電波の波長λrは、空気中におけるその電波の波長をλ0として次の(2)式で表すことができる。また、前記固体誘電体18が無損失であると仮定すると、比透磁率μr=1であり、図8に示すように角度θiで到来する信号が前記固体誘電体18と空気との境界面において角度θtで入射する場合、この2つの角度は次の(3)式で表すような関係を持つ。すなわち、前記固体誘電体18内では空気中よりも電波の波長が短くなり、物理的には同じ距離だけ離れている二点に対する電気長は前記固体誘電体18内では空気中よりも長くなる。ここで、前記固体誘電体18に被覆されたダイポールアンテナとしてのアンテナ素子30は、斯かる固体誘電体18に被覆されない空気中で用いられる通常のダイポールアンテナに比べてその長手寸法(エレメント全長)Leが短いものとされている。すなわち、直線状ダイポールアンテナのエレメント全長Lは、通常、通信に用いられる電波の波長をλとしてL=λ/2(各直線状エレメントの長さがλ/4)とされるが、前記アンテナ素子30ように比誘電率εrの固体誘電体18に被覆されたダイポールアンテナでは、斯かる通常のダイポールアンテナよりもエレメント全長がεr1/2だけ短いことが好ましく、本実施例のアンテナ素子30ではそのように構成されている。
【0046】
r=c/(εr・μr1/2 ・・・(1)
【0047】
λr=λ0/(εr・μr1/2 ・・・(2)
【0048】
sinθi/sinθt=εr1/2 ・・・(3)
【0049】
図9は、前記アレイアンテナ16に備えられた複数のアンテナ素子30及び固体誘電体18の相対位置関係と、それら複数のアンテナ素子30による前記無線タグ14との間の通信について説明する図である。この図9に示すように、前記アレイアンテナ16に備えられた複数のアンテナ素子30は、それら複数のアンテナ素子30が互いに平行を成すように配列されている。また、隣り合って設けられた円筒状の固体誘電体18同士が接するように、すなわち相互に隣接する円筒状の固体誘電体18が同一の直線上に位置する母線により接触するように配設されている。斯かる構成により、本実施例のアレイアンテナ16に備えられた前記複数のアンテナ素子30は、互いに隣接するアンテナ素子30相互間の距離が、前記固体誘電体18の底面半径rの2倍(=直径)に等しくなるように配設されている。このような構成によれば、前記アレイアンテナ16に垂直な方向(複数のアンテナ素子30によって張られる平面に垂直な方向)からアンテナ素子30の軸心まわりに±60°の範囲で到来する電波のアンテナ法線方向の成分を前記固体誘電体18に垂直に入射させることができ、また誘電体内を通る経路長が各アンテナ素子で等しくなるため、前記アレイアンテナ16の指向性制御に際して前記固体誘電体18に関係する補正を行う必要が特に生じない。
【0050】
ここで、好適には、前記アレイアンテナ16におけるアンテナ素子30相互間の距離2rは、そのアレイアンテナ16による通信に用いられる電波すなわち前記無線タグ14との間の通信に用いられる搬送波の前記固体誘電体18内における波長λgrの1/2に略等しくなるように定められている。一般に、複数のダイポールアンテナを備えたアレイアンテナでは、それら複数のダイポールアンテナが互いに平行を成すように且つ隣接するダイポールアンテナ相互間の間隔が通信に用いられる電波の波長の1/2に略等しくなるように配置されるが、上記構成では、アンテナ素子間結合量を固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等程度に保証できると共に、アンテナ素子30相互間の距離(物理的距離)を可及的に短くすることができ、小型のアレイアンテナ16を実現できる。
【0051】
また、好適には、前記アレイアンテナ16におけるアンテナ素子30相互間の距離2rは、そのアレイアンテナ16による通信に用いられる電波の空気中における波長λg0の1/2に略等しくなるように定められている。斯かる構成では、固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等の配置となるため、ビーム幅等を同じ条件で設計できることに加え、隣接するアンテナ素子30相互間の結合を小さくすることができ、その結合に起因する弊害を好適に抑制できる。
【0052】
続いて、本第1発明の他の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、以下に説明する各実施例に適用される固体誘電体としては、前述した実施例と同等の材質及び物性(電気特性)を有するものが好適に用いられる。
【0053】
図10は、前述したアレイアンテナ16に替えて前記無線タグ通信装置12に好適に適用される、本第1発明の他の実施例であるアレイアンテナ88の外観を概略的に示す斜視図であり、図11は、そのアレイアンテナ88に備えられた複数のアンテナ素子30及び固体誘電体90の相対位置関係を説明する正面図である。これらの図に示すように、本実施例のアレイアンテナ88では、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子30が固体誘電体90により一体的に被覆されている。この固体誘電体90は、図11に示すように、前記複数のアンテナ素子30それぞれに対応して設けられた複数(アンテナ素子30と同数)の、底面半径を同じくする円筒状の固体誘電体90a、90b、90c(それぞれ固体誘電体90の一部であり、特に区別しない場合には固体誘電体90と称する)が、隣接する円筒相互間で一部が重なるように、すなわち円筒の一部を共有するように一体的に構成されたものである。また、前記複数のアンテナ素子30は、それぞれ対応する円筒状の固体誘電体90a、90b、90cにおける軸心に配設されており、上記固体誘電体90は、それら複数のアンテナ素子30が同一平面内において互いに平行を成すように形成されている。
【0054】
また、図11に示すように、隣接するアンテナ素子30相互間の距離は一定とされており、好適には、その距離は上記円筒状の固体誘電体90a、90b、90cに共通の底面半径rと等しいものとされている。このような構成によれば、前記アレイアンテナ88に垂直な方向(複数のアンテナ素子30によって張られる平面に垂直な方向)からアンテナ素子30の軸心まわりに±30°の範囲で到来する電波のアンテナ法線方向の成分を前記固体誘電体90に垂直に入射させることができ、また誘電体内を通る経路長が各アンテナ素子30で等しくなるため、前記アレイアンテナ88の指向性制御に際して前記固体誘電体90に関係する補正を行う必要が特に生じない。
【0055】
ここで、好適には、上記アレイアンテナ88におけるアンテナ素子30相互間の距離rは、そのアレイアンテナ88による通信に用いられる電波すなわち前記無線タグ14との間の通信に用いられる搬送波の前記固体誘電体90内における波長λgrの1/2に略等しくなるように定められている。斯かる構成では、アンテナ素子間結合量を固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等程度に保証できると共に、アンテナ素子30相互間の距離(物理的距離)を可及的に短くすることができ、小型のアレイアンテナ88を実現できる。
【0056】
また、好適には、前記アレイアンテナ88におけるアンテナ素子30相互間の距離rは、そのアレイアンテナ88による通信に用いられる電波の空気中における波長λg0の1/2に略等しくなるように定められている。斯かる構成では、固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等の配置となるため、ビーム幅等を同じ条件で設計できることに加え、隣接するアンテナ素子30相互間の結合を小さくすることができ、その結合に起因する弊害を好適に抑制できる。
【0057】
図12は、前述したアレイアンテナ16に替えて前記無線タグ通信装置12に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナ92の外観を概略的に示す斜視図である。この図12に示すように、本実施例のアレイアンテナ92では、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子30が矩形平板状の固体誘電体94により一体的に被覆されている。この固体誘電体94の厚さ寸法tは、好適には、上記アレイアンテナ92による通信に用いられる電波の上記固体誘電体94内における波長λgrの1/2程度であり、前記複数のアンテナ素子30は、その固体誘電体94の厚み方向に関して略中央に、それら複数のアンテナ素子30が同一平面内において互いに平行を成すように埋設されている。また、隣接するアンテナ素子30相互間の距離dは一定とされており、好適には、その距離dは、上記アレイアンテナ92による通信に用いられる電波の空気中における波長λg0の1/2以上とされる。斯かる構成では、前記アレイアンテナ92の指向性制御に際して上記固体誘電体94の電気特性等の性状に基づく補正を行う必要がある。このため、上記アレイアンテナ92が前記無線タグ通信装置12に適用される場合、前記PAAウェイト制御部46に備えられたバッファ等の記憶部には、上記固体誘電体94の性状すなわち寸法、形状、比誘電率εr、比透磁率μr、及びアンテナ素子30との相対位置関係等に応じて、上記アレイアンテナ92に対する入射乃至射出角度(指向方向)に対応する電波の屈折量(屈折角度)及び誘電体を通過する距離を示す関係(所定のマップ等)が予め記憶され、前記PAAウェイト制御部46は、その関係に基づいて上記アレイアンテナ92の指向性を制御する。
【0058】
図13は、前述したアレイアンテナ16に替えて前記無線タグ通信装置12に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナ96の外観を概略的に示す斜視図であり、図14は、そのアレイアンテナ96に備えられた複数のアンテナ素子30及び固体誘電体98の相対位置関係を説明する正面図である。これらの図に示すように、本実施例のアレイアンテナ96では、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子30が矩形平板状の固体誘電体98により一体的に被覆されており、それら複数のアンテナ素子30が同一平面内において互いに平行を成すように埋設されている。また、隣接するアンテナ素子30相互間の距離dは一定とされており、好適には、その距離dは、上記アレイアンテナ96による通信に用いられる電波の空気中における波長λg0の1/2以上とされる。上記固体誘電体98は、前記複数のアンテナ素子30相互間の電気長を長くするという効果を奏し得る範囲内において可及的に薄く構成されたものであり、その厚さ寸法tは、好適には、ダイポールアンテナとしての前記アンテナ素子30の直径以下である。すなわち、各アンテナ素子30の一部が平面部98pから外部に露出していてもよい。斯かる構成では、上記アレイアンテナ96に垂直な方向(複数のアンテナ素子30によって張られる平面に垂直な方向)以外の方向からの入射については屈折により入射角が変わるが、上記固体誘電体98の厚み寸法tが可及的に薄く構成されており、特に、その固体誘電体98における前記複数のアンテナ素子30によって張られる平面と平行を成す2つの平面部98pと、それらアンテナ素子30との間の厚みはほとんど無視できることから、上記アレイアンテナ96の指向性制御に際して前記固体誘電体98に関係する補正を行う必要が特に生じない。
【0059】
図15は、前述したアレイアンテナ16に替えて前記無線タグ通信装置12に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナ100の外観を概略的に示す斜視図であり、図16は、そのアレイアンテナ100に備えられた複数のアンテナ素子30及び固体誘電体102の相対位置関係を説明する正面図である。これらの図に示すように、本実施例のアレイアンテナ100では、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子30が矩形平板状の固体誘電体102により一体的に被覆されている。この固体誘電体102の厚さ寸法tは、好適には、上記アレイアンテナ100による通信に用いられる電波の上記固体誘電体102内における波長λgrの1/2以上であり、更に好適には、隣接するアンテナ素子30相互間の距離d以上である。前記複数のアンテナ素子30は、その固体誘電体102の厚み方向に関して略中央に、それら複数のアンテナ素子30が同一平面内において互いに平行を成すように埋設されている。また、隣接するアンテナ素子30相互間の距離dは一定とされており、好適には、その距離dは、上記固体誘電体102の厚み寸法t以下であり、且つ上記アレイアンテナ100による通信に用いられる電波の空気中における波長λg0の1/2以上とされる。斯かる構成では、上記固体誘電体102における前記複数のアンテナ素子30によって張られる平面と平行を成す2つの平面部102pと、それらアンテナ素子30との間に十分な厚みが存在するため、各アンテナ素子30周辺の誘電体の効果が十分に奏される一方、図16に示すように、上記アレイアンテナ100に垂直な方向(複数のアンテナ素子30によって張られる平面に垂直な方向)以外の方向からの入射については屈折により入射角が変わるため、そのアレイアンテナ100の指向性制御に際して上記固体誘電体102の電気特性等の性状に基づく補正を行う必要がある。このため、上記アレイアンテナ100が前記無線タグ通信装置12に適用される場合、前記PAAウェイト制御部46に備えられたバッファ等の記憶部には、上記固体誘電体102の性状に応じて上記アレイアンテナ100に対する入射乃至射出角度(指向方向)に対応する電波の屈折量及び誘電体を通過する距離を示す関係が予め記憶され、前記PAAウェイト制御部46は、その関係に基づいて上記アレイアンテナ100の指向性を制御する。
【0060】
図17は、前述したアレイアンテナ16に替えて前記無線タグ通信装置12に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナ104の外観を概略的に示す斜視図であり、図18は、そのアレイアンテナ104に備えられた複数のアンテナ素子30及び固体誘電体106の相対位置関係を説明する正面図である。これらの図に示すように、本実施例のアレイアンテナ104では、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子30が矩形平板状の固体誘電体106により一体的に被覆されており、それら複数のアンテナ素子30が同一平面内において互いに平行を成すように埋設されている。また、隣接するアンテナ素子30相互間の距離dは一定とされており、好適には、その距離dは、上記アレイアンテナ104による通信に用いられる電波の空気中における波長λg0の1/2以上とされる。また、図18に示すように、上記固体誘電体106における前記複数のアンテナ素子30によって張られる平面と平行を成す2つの平面部106p、106p′について、一方の平面部106p′と前記平面との距離は上記アレイアンテナ104による通信に用いられる電波の上記固体誘電体106内における波長λgrの1/2以上であり、他方の平面部106pと前記平面との距離はその波長λgrの1/2未満とされている。斯かる構成では、前記複数のアンテナ素子30が上記固体誘電体106の厚み方向に関して中央から偏った位置に配設されており、上記2つの平面部106p、106p′のうち何れに対して電波が入射乃至射出するかにより上記固体誘電体106の影響が異なるため、それら2つの平面部106p、106p′それぞれに対応して個別の指向性制御を行うことができ、片側のみにビームを形成すること等が可能とされる一方、上記アレイアンテナ104に垂直な方向(複数のアンテナ素子30によって張られる平面に垂直な方向)以外の方向からの入射については屈折により入射角が変わるため、そのアレイアンテナ104の指向性制御に際して上記固体誘電体106の電気特性等の性状に基づく補正を行う必要がある。このため、上記アレイアンテナ104が前記無線タグ通信装置12に適用される場合、前記PAAウェイト制御部46に備えられたバッファ等の記憶部には、上記固体誘電体106の性状に応じて上記アレイアンテナ104に対する入射乃至射出角度(指向方向)に対応する電波の屈折量及び誘電体を通過する距離を示す関係が予め記憶され、前記PAAウェイト制御部46は、その関係に基づいて上記アレイアンテナ104の指向性を制御する。
【0061】
図19は、前述したアレイアンテナ16に替えて前記無線タグ通信装置12に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナ108の外観を概略的に示す斜視図であり、図20は、そのアレイアンテナ108に備えられた複数のアンテナ素子30及び固体誘電体106の相対位置関係を説明する正面図である。これらの図に示すように、本実施例のアレイアンテナ108は、上記アレイアンテナ104の固体誘電体106における前記複数のアンテナ素子30によって張られる平面と平行を成す2つの平面部106p、106p′のうち上記平面との距離が離れている方の平面部106p′を覆うように金属板110が固設されたものである。すなわち、前記複数のアンテナ素子30によって張られる平面とその金属板110との距離は、上記アレイアンテナ108による通信に用いられる電波の上記固体誘電体106内における波長λgrの1/2以上とされる。この金属板110の材料としては、鉄、銅、アルミニウム等が好適に用いられ、その厚み寸法は、例えば、使用周波数帯における金属の表皮効果の厚み以上あれば十分(900MHz帯を用いる場合10μm以上あれば十分)である。なお、上記金属板110は、必ずしも上記平面部106p′の全面を被覆するものでなくともよい。斯かる構成では、上記アレイアンテナ108の背面に金属や他の誘電体が存在する場合にその影響を抑えられることに加え、上記金属板110により上記アレイアンテナ108を壁面等に取り付けることが容易とされる一方、上記アレイアンテナ104と同様に、上記アレイアンテナ108に垂直な方向(複数のアンテナ素子30によって張られる平面に垂直な方向)以外の方向からの入射については屈折により入射角が変わるため、そのアレイアンテナ108の指向性制御に際して上記固体誘電体106の電気特性等の性状に基づく補正を行う必要がある。この補正を踏まえた指向性制御については、上記アレイアンテナ104と同様である。
【0062】
図21は、前述したアレイアンテナ16に替えて前記無線タグ通信装置12に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナ112の外観を概略的に示す斜視図であり、図22は、そのアレイアンテナ112に備えられた複数のアンテナ素子30及び固体誘電体114の相対位置関係を説明する正面図である。これらの図に示すように、本実施例のアレイアンテナ112では、同一平面内に互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子30が固体誘電体114により一体的に被覆されている。この固体誘電体114は、前記複数のアンテナ素子30を一体的に且つそれら複数のアンテナ素子30によって張られる平面と垂直な方向に光軸を有する凸レンズ状(楕円柱状)に被覆するものである。また、隣接するアンテナ素子30相互間の距離dは一定とされており、好適には、その距離dは、上記アレイアンテナ112による通信に用いられる電波の上記固体誘電体114内における波長λgrの1/2に略等しくなるように定められている。なお、上記固体誘電体114は、必ずしも厳密な凸レンズ状を成すものでなくともよく、また、通信に用いられる電波の入射乃至射出が想定される方向のみが部分的に凸レンズ状とされたものであってもよい。更には、必ずしも光学的なレンズとして機能しなくともよいことは言うまでもない。斯かる構成では、上記アレイアンテナ112に垂直な方向(複数のアンテナ素子30によって張られる平面に垂直な方向)以外の方向からの入射については、各アンテナ素子30に対応して上記固体誘電体114中を通過する電波の距離が異なり、図22に示すように、到来方向から遠いほど固体誘電体114中を通過する距離が大きくなることから、前記アンテナ素子30相互間の距離dを比較的短くしても上記アレイアンテナ112がフェイズドアレイアンテナとして機能するために十分な位相差が得られる一方、上記アレイアンテナ112に垂直な方向以外の方向からの入射については屈折により入射角が変わるため、そのアレイアンテナ112の指向性制御に際して上記固体誘電体114の電気特性等の性状に基づく補正を行う必要がある。このため、上記アレイアンテナ112が前記無線タグ通信装置12に適用される場合、前記PAAウェイト制御部46に備えられたバッファ等の記憶部には、上記固体誘電体114の性状に応じて上記アレイアンテナ112の各エレメントに対し入射乃至射出角度(指向方向)に対応する電波の屈折量及び誘電体を通過する距離を示す関係が予め記憶され、前記PAAウェイト制御部46は、その関係に基づいて上記アレイアンテナ112の指向性を制御する。
【0063】
図23は、前述したアレイアンテナ16に替えて前記無線タグ通信装置12に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナ116の外観を概略的に示す斜視図であり、図24は、そのアレイアンテナ116に備えられた複数のアンテナ素子30及び固体誘電体118の相対位置関係を説明する正面図である。なお、これらの図では、前述した図2に示す構成よりも2本多い5本のアンテナ素子30a、30b、30c、30d、30eを備えた構成を示しているが、前記無線タグ通信装置12には、これらのうち3本のアンテナ素子30a、30b、30cを備えたものが好適に適用される。本実施例のアレイアンテナ116では、同一平面内に互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子30が固体誘電体118により一体的に被覆されている。この固体誘電体118は、前記複数のアンテナ素子30を一体的に且つそれら複数のアンテナ素子30によって張られる平面と垂直な方向に光軸を有する凹レンズ状(逆アーチ状)に被覆するものである。また、前記複数のアンテナ素子30相互間の距離は、上記固体誘電体118の両端部に寄るにつれ短くなる(接近する)ように構成されている。なお、この固体誘電体118は、必ずしも厳密な凹レンズ状を成すものでなくともよく、また、通信に用いられる電波の入射乃至射出が想定される方向のみが部分的に凹レンズ状とされたものであってもよい。更には、必ずしも光学的なレンズとして機能しなくともよいことは言うまでもない。斯かる構成では、上記固体誘電体118が両端部に近づくほど厚み寸法が大きくなるように形成されており、その両端部に寄るにつれ前記アンテナ素子30相互間の距離が接近するように配設されているため、ビームを絞りサイドローブを小さくすることが可能とされる。また、図23及び図24に示すように、アンテナ素子30の本数を増やすことで斯かるサイドローブを可及的に小さくすることができる。一方、上記アレイアンテナ116に垂直な方向(複数のアンテナ素子30によって張られる平面に垂直な方向)以外の方向からの入射については屈折により入射角が変わるため、そのアレイアンテナ116の指向性制御に際して上記固体誘電体118の電気特性等の性状に基づく補正を行う必要がある。このため、上記アレイアンテナ116が前記無線タグ通信装置12に適用される場合、前記PAAウェイト制御部46に備えられたバッファ等の記憶部には、上記固体誘電体118の性状に応じて上記アレイアンテナ116の各エレメントに対し入射乃至射出角度に対応する電波の屈折量及び誘電体を通過する距離を示す関係が予め記憶され、前記PAAウェイト制御部46は、その関係に基づいて上記アレイアンテナ116の指向性を制御する。
【0064】
このように、本実施例によれば、複数のアンテナ素子30から構成されるアレイアンテナ16等において、それらアンテナ素子30のうち少なくとも一部が空気よりも高い誘電率を有する固体誘電体18等に被覆されていることから、前記複数のアンテナ素子30相互間の電気長を長くすることができ、実質的にそれらアンテナ素子30相互間の距離を長くとった場合と同等の効果が得られる。すなわち、設置スペースが小さくて済み、且つ隣接するアンテナ素子30相互間の影響を軽減するアレイアンテナ16等を提供することができる。
【0065】
また、前記アンテナ素子30は、1直線上に配置された1対の直線状エレメントから成るダイポールアンテナであるため、複数のダイポールアンテナから成るアレイアンテナ16等を小型化できると共に、隣接するダイポールアンテナ相互間の影響を軽減することができる。
【0066】
また、前記アンテナ素子30は、一対の直線状エレメントの長さが、前記アレイアンテナ16等による通信に用いられる電波の前記固体誘電体18内における波長の約1/2となるように構成されたものであるため、固体誘電体を備えない通常のアンテナ素子より短いエレメント長で構成することができる上、アンテナ素子を共振状態で使用することができる。
【0067】
また、前記固体誘電体18は、前記アンテナ素子30の周囲を円筒状に被覆するものであり、それら固体誘電体18に被覆された複数のアンテナ素子30が互いに平行を成すように配列されて構成されるものであるため、円筒状の固体誘電体18によりアンテナ素子30を被覆することで、アレイアンテナ16に到来する電波のアンテナ法線方向の成分を垂直に固体誘電体18に入射させることができ、その固体誘電体18の誘電率や入射角等による屈折の影響を無視することができる。
【0068】
また、前記複数のアンテナ素子30は、互いに隣接するアンテナ素子30相互間の距離が、前記アレイアンテナ16等による通信に用いられる電波の前記固体誘電体18等内における波長λgrの1/2となるように配列されたものであるため、固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等のアンテナ素子30相互間の結合を保証しつつ、より小型のアレイアンテナ16等を実現できる。
【0069】
また、前記複数のアンテナ素子30は、互いに隣接するアンテナ素子30相互間の距離が、前記アレイアンテナ16等による通信に用いられる電波の空気中における波長λg0の1/2となるように配列されたものであるため、固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等の配置で、隣接するアンテナ素子30相互間の結合を小さくすることができる。
【0070】
また、前記固体誘電体90は、隣接する円筒状の固体誘電体90a、90b、90c相互間で一部が重なるように一体的に構成されたものであるため、前記複数のアンテナ素子30を被覆する固体誘電体90を一体的に構成して厚みを持たせることで、その固体誘電体90による隣接するアンテナ素子30相互間の影響の軽減効果を高めることができる。
【0071】
また、前記複数のアンテナ素子30は、互いに隣接するアンテナ素子30相互間の距離が、前記アレイアンテナ88による通信に用いられる電波の前記固体誘電体90内における波長λgrの1/2となるように配列されたものであり、前記円筒状の固体誘電体90a、90b、90cにおける底面半径rは、前記隣接するアンテナ素子30相互間の距離と等しいものであるため、アレイアンテナ88に垂直な方向から±30°の範囲で到来する電波のアンテナ法線方向の成分を垂直に固体誘電体90に入射させることができ、その固体誘電体90の誘電率や入射角等による屈折の影響を無視することができることに加え、可及的に小型のアレイアンテナ88を実現できる。
【0072】
また、前記複数のアンテナ素子30は、互いに隣接するアンテナ素子30相互間の距離が、前記アレイアンテナ88による通信に用いられる電波の空気中における波長λg0の1/2となるように配列されたものであり、前記円筒状の固体誘電体90a、90b、90cにおける底面半径rは、前記隣接するアンテナ素子30相互間の距離と等しいものであるため、固体誘電体を備えない通常の1/4波長間隔のアレイアンテナと同等の配置で、隣接するアンテナ素子30相互間の結合を小さくすることができ、ビーム幅等を同じ条件で設計できることに加え、より小型のアレイアンテナ88を実現できる。
【0073】
また、前記固体誘電体94等は、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子30を一体的に且つ矩形平板状に被覆するものであるため、隣接するアンテナ素子30相互間の影響を更に軽減することができる。
【0074】
また、前記矩形平板状の固体誘電体98の厚さtは、前記アンテナ素子30のエレメントの直径以下であるため、前記矩形平板状の固体誘電体98の厚さtを可及的に薄くすることで電波の入射乃至射出時における屈折の影響を小さくできると共に、隣接するアンテナ素子30相互間の結合量を小さくできる。
【0075】
また、前記矩形平板状の固体誘電体102の厚さtは、前記アレイアンテナ100による通信に用いられる電波の前記固体誘電体102内における波長λgrの1/2以上であるため、隣接するアンテナ素子30相互間の影響を可及的に軽減することができる。
【0076】
また、前記矩形平板状の固体誘電体102の厚さtは、前記アレイアンテナ100による通信に用いられる電波の前記固体誘電体102内における波長λgrの1/2であるため、固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等の通信特性を保証しつつ、より小型のアレイアンテナ100を実現できる。
【0077】
また、前記複数のアンテナ素子30は、互いに隣接するアンテナ素子30相互間の距離が、前記アレイアンテナ92等による通信に用いられる電波の空気中における波長λg0の1/2以上となるように配列されたものであるため、固体誘電体を備えない通常の1/2波長間隔のアレイアンテナと同等の配置で、隣接するアンテナ素子30相互間の結合を小さくすることができ、ビーム幅等を同じ条件で設計できることに加え、より小型のアレイアンテナ92等を実現できる。
【0078】
また、前記矩形平板状の固体誘電体106における前記複数のアンテナ素子30によって張られる平面と平行を成す2つの平面部106p、106p′について、一方の平面部106p′と前記平面との距離は前記アレイアンテナ104による通信に用いられる電波の前記固体誘電体106内における波長λgrの1/2以上であり、他方の平面部106pと前記平面との距離はその波長λgrの1/2未満であるため、前記複数のアンテナ素子30に対する前記2つの平面部106p、106p′までの厚さに偏りをつけることで、アレイの前後で別々のパターンを形成することができ、片側のみにビームを形成すること等が可能とされる。
【0079】
また、前記矩形平板状の固体誘電体106における前記複数のアンテナ素子30によって張られる平面と平行を成す2つの平面部106p、106p′について、少なくとも一方の平面部106p′と前記平面との距離は前記アレイアンテナ108による通信に用いられる電波の前記固体誘電体106内における波長λgrの1/2以上であり、その平面部106p′を覆うように金属板110が固設されたものであるため、金属面等に取り付けた際に好適に機能するアレイアンテナ108を実現できる。
【0080】
また、前記固体誘電体114は、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子30を一体的に且つそれら複数のアンテナ素子30によって張られる平面と垂直な光軸を有する凸レンズ状に被覆するものであるため、前記固体誘電体114を凸レンズ状とすることで、各アンテナ素子30に対応して固体誘電体114中を通過する電波の距離が異なり、到来方向から遠いほど固体誘電体114中を通過する距離が大きくなることから、指向性方向制御が容易となり、ビーム幅を狭くすることができる。
【0081】
また、前記固体誘電体118は、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子30を一体的に且つそれら複数のアンテナ素子30によって張られる平面と垂直な光軸を有する凹レンズ状に被覆するものであるため、前記固体誘電体118を凹レンズ状すなわち両端部に近付くほど厚みが厚くなるように構成することで、その両端部におけるアンテナ素子30を相互に近接させてもそれら隣接するアンテナ素子30相互間の影響を可及的に軽減することができる。
【0082】
また、前記固体誘電体18等は、セラミックスであるため、比較的高い誘電率を有する実用的な材料を用いて設置スペースが小さくて済み、且つ隣接するアンテナ素子30相互間の影響を軽減するアレイアンテナ16等を提供することができる。
【0083】
また、本実施例の無線タグ通信装置12は、前述した本実施例のアレイアンテナ16等を備え、そのアレイアンテナ16等は前記送信アンテナ及び受信アンテナとして用いられるものであることから、その無線タグ通信装置12による無線タグ14との通信に用いられるアレイアンテナ16等に関して、複数のアンテナ素子30相互間の電気長を長くすることができ、実質的にそれらアンテナ素子30相互間の距離を長くとった場合と同等の効果が得られる。すなわち、設置スペースが小さくて済み、且つ隣接するアンテナ素子30相互間の影響を軽減するアレイアンテナ16等を備えた無線タグ通信装置12を提供することができる。
【0084】
また、前記無線タグ通信装置12は、前記固体誘電体94等の性状に基づいて前記アレイアンテナ92等の指向性を制御する指向性制御部であるPAAウェイト制御部46を備えたものであるため、前記アレイアンテナ92等に備えられた固体誘電体94等の誘電率、形状、及びアンテナ素子30との相対位置関係等に合わせて、それらによる電波の屈折や電気長の変化等の影響を考慮した指向性制御を行うことができる。
【0085】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0086】
例えば、前述した実施例において、前記アレイアンテナ16等に備えられたアンテナ素子30は、1直線上に配置された1対の直線状エレメントから成るダイポールアンテナであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一部が非直線状である線状エレメントから成るダイポールアンテナや単一の線状エレメントから成るモノポールアンテナ等であってもよく、アレイアンテナを構成するアンテナ素子として機能し得るものであればその態様は問わない。
【0087】
また、前述した実施例では、無線通信を介して情報の書き込み及び/又は読み出しが可能な無線タグ14に向けて所定の送信信号を送信すると共に、その送信信号に応答してその無線タグ14から返信される返信信号を受信することでその無線タグ14との間で情報の通信を行う無線タグ通信装置12にアレイアンテナ16等が適用された例を説明したが、本発明のアレイアンテナは、例えば、種々の移動体通信や無線LAN通信等、RFIDシステム以外の通信にも好適に用いられ得るものである。
【0088】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明が好適に用いられる無線タグ通信システムについて説明する図である。
【図2】本第2発明の一実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図3】図2の無線タグ通信装置の通信対象である無線タグに備えられた無線タグ回路素子の構成を説明する図である。
【図4】図2の無線タグ通信装置に備えられた、本第1発明の一実施例であるアレイアンテナの外観を概略的に示す斜視図である。
【図5】図4のアレイアンテナに備えられたアンテナ素子の外観を概略的に示す斜視図である。
【図6】図4のアレイアンテナに備えられたアンテナ素子の寸法を説明する正面図(側面図)である。
【図7】図5のアンテナ素子を被覆する固体誘電体の物性について説明する図である。
【図8】図5のアンテナ素子を被覆する固体誘電体の物性について説明する図である。
【図9】図4のアレイアンテナに備えられた複数のアンテナ素子及び固体誘電体の相対位置関係と、それら複数のアンテナ素子による図3の無線タグとの間の通信について説明する図である。
【図10】図2の無線タグ通信装置に好適に適用される、本第1発明の他の実施例であるアレイアンテナの外観を概略的に示す斜視図である。
【図11】図10のアレイアンテナに備えられた複数のアンテナ素子及び固体誘電体の相対位置関係を説明する正面図である。
【図12】図2の無線タグ通信装置に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナの外観を概略的に示す斜視図である。
【図13】図2の無線タグ通信装置に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナの外観を概略的に示す斜視図である。
【図14】図13のアレイアンテナに備えられた複数のアンテナ素子及び固体誘電体の相対位置関係を説明する正面図である。
【図15】図2の無線タグ通信装置に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナの外観を概略的に示す斜視図である。
【図16】図15のアレイアンテナに備えられた複数のアンテナ素子及び固体誘電体の相対位置関係を説明する正面図である。
【図17】図2の無線タグ通信装置に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナの外観を概略的に示す斜視図である。
【図18】図17のアレイアンテナに備えられた複数のアンテナ素子及び固体誘電体の相対位置関係を説明する正面図である。
【図19】図2の無線タグ通信装置に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナの外観を概略的に示す斜視図である。
【図20】図19のアレイアンテナに備えられた複数のアンテナ素子及び固体誘電体の相対位置関係を説明する正面図である。
【図21】図2の無線タグ通信装置に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナの外観を概略的に示す斜視図である。
【図22】図21のアレイアンテナに備えられた複数のアンテナ素子及び固体誘電体の相対位置関係を説明する正面図である。
【図23】図2の無線タグ通信装置に好適に適用される、本第1発明の更に別の実施例であるアレイアンテナの外観を概略的に示す斜視図である。
【図24】図23のアレイアンテナに備えられた複数のアンテナ素子及び固体誘電体の相対位置関係を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0090】
12:無線タグ通信装置
14:無線タグ
16、88、92、96、100、104、108、112、116:アレイアンテナ
18、90、94、98、102、106、114、118:固体誘電体
30:アンテナ素子(ダイポールアンテナ)
46:PAAウェイト制御部(指向性制御部)
102p、102p′:平面部
110:金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子から構成されるアレイアンテナであって、
それらアンテナ素子のうち少なくとも一部が空気よりも高い誘電率を有する固体誘電体に被覆されていることを特徴とするアレイアンテナ。
【請求項2】
前記アンテナ素子は、1直線上に配置された直線状エレメントから成るものである請求項1のアレイアンテナ。
【請求項3】
前記アンテナ素子は、1直線上に配置された1対の直線状エレメントから成るダイポールアンテナである請求項2のアレイアンテナ
【請求項4】
前記アンテナ素子は、1対の直線状エレメントの長さが、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2となるように構成されたものである請求項3のアレイアンテナ。
【請求項5】
前記固体誘電体は、前記アンテナ素子の周囲を円筒状に被覆するものであり、それら固体誘電体に被覆された複数のアンテナ素子が互いに平行を成すように配列されて構成される請求項2から4の何れかのアレイアンテナ。
【請求項6】
前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2となるように配列されたものである請求項5のアレイアンテナ。
【請求項7】
前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の空気中における波長の1/2となるように配列されたものである請求項5のアレイアンテナ。
【請求項8】
前記固体誘電体は、隣接する円筒状の固体誘電体相互間で一部が重なるように一体的に構成されたものである請求項5のアレイアンテナ。
【請求項9】
前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2となるように配列されたものであり、前記円筒状の固体誘電体における底面半径は、前記隣接するアンテナ素子相互間の距離と等しいものである請求項8のアレイアンテナ。
【請求項10】
前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の空気中における波長の1/2となるように配列されたものであり、前記円筒状の固体誘電体における底面半径は、前記隣接するアンテナ素子相互間の距離と等しいものである請求項8のアレイアンテナ。
【請求項11】
前記固体誘電体は、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子を一体的に且つ矩形平板状に被覆するものである請求項2から4の何れかのアレイアンテナ。
【請求項12】
前記矩形平板状の固体誘電体の厚さは、前記アンテナ素子のエレメントの直径以下である請求項11のアレイアンテナ。
【請求項13】
前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の空気中における波長の1/2以上となるように配列されたものである請求項12のアレイアンテナ。
【請求項14】
前記矩形平板状の固体誘電体の厚さは、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2以上である請求項11のアレイアンテナ。
【請求項15】
前記複数のアンテナ素子は、互いに隣接するアンテナ素子相互間の距離が、前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電対中における波長の1/2以上となるように配列されたものである請求項14のアレイアンテナ。
【請求項16】
前記矩形平板状の固体誘電体における前記複数のアンテナ素子によって張られる平面と平行を成す2つの平面部について、一方の平面部と前記平面との距離は前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2以上であり、他方の平面部と前記平面との距離は該波長の1/2未満である請求項11のアレイアンテナ。
【請求項17】
前記矩形平板状の固体誘電体における前記複数のアンテナ素子によって張られる平面と平行を成す2つの平面部について、少なくとも一方の平面部と前記平面との距離は前記アレイアンテナによる通信に用いられる電波の前記固体誘電体内における波長の1/2以上であり、該平面部を覆うように金属板が固設されたものである請求項11のアレイアンテナ。
【請求項18】
前記固体誘電体は、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子を一体的に且つそれら複数のアンテナ素子によって張られる平面と垂直な方向に光軸を有する凸レンズ状に被覆するものである請求項2から4の何れかのアレイアンテナ。
【請求項19】
前記固体誘電体は、互いに平行を成すように配列された前記複数のアンテナ素子を一体的に且つそれら複数のアンテナ素子によって張られる平面と垂直な方向に光軸を有する凹レンズ状に被覆するものである請求項2から4の何れかのアレイアンテナ。
【請求項20】
前記固体誘電体は、セラミックスを主材料とするものである請求項1から19の何れかのアレイアンテナ。
【請求項21】
無線通信を介して情報の書き込み及び/又は読み出しが可能な無線タグに向けて所定の送信信号を送信アンテナから送信すると共に、該送信信号に応答して該無線タグから返信される返信信号を受信アンテナにより受信することで該無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、
請求項1から20の何れかのアレイアンテナを備え、該アレイアンテナは前記送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方として用いられることを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項22】
前記固体誘電体の性状に基づいて前記アレイアンテナの指向性を制御する指向性制御部を備えたものである請求項21の無線タグ通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−336305(P2007−336305A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166680(P2006−166680)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】