説明

アンダーパス冠水予測通知装置

【課題】
従来の水位センサを用いた方法では、現状の水位情報を示すのみであり、数時間後の危険予測を行うものではないので、危険察知が間に合わない場合があった。
【解決手段】
本発明では気象レーダから得られる予測降雨量情報と、アンダーパスの近くに設置される観測センサから得られる観測局の水量情報と、これらの過去情報とを推移予測モデルに代入し前記アンダーパス内予測水位高を算出する。
さらに、前記アンダーパス内予測水位高を算出するための水位予測モデルを繰り返し計算することにより数時間後の未来のアンダーパス内の予測水位高を算出し、警報情報を発信するアンダーパス冠水予測通知装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーパス冠水予測通知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンダーパス(地下道)冠水予測通知装置として、アンダーパス内の水位を計測するための水位センサを危険水位の計測位置に配置したものがある。その動作としては、危険水位の計測位置に配置した水位センサによって危険水位値を検出した際に、監視者に警告を発するというものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−227717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される水位センサを用いた方法では、現状の水位情報を示すのみであり、数時間後の危険予測を行うものではないので、危険察知が間に合わない場合があった。
【0005】
そこで、本発明では、システム同定法をアンダーパスに導入することによって、数時間後のアンダーパス内の危険水位予測を可能にするアンダーパス冠水予測通知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のアンダーパス冠水予測通知装置は、
気象レーダから得られる予測降雨量情報が記憶される記憶手段と、
アンダーパスの近くに設置される観測センサから得られる観測局の水量情報が記憶される観測局情報記憶手段と、
前記アンダーパスの過去の冠水データが記憶される過去情報記憶手段と、
前記予測降雨量情報と、前記観測局情報と、前記過去の冠水データとから推定された推移予測モデルから前記アンダーパス内予測水位高を算出するアンダーパス内予測水位高算出部と、
を備え、
前記アンダーパス内予測水位高算出部は前記アンダーパス内予測水位高を算出するための水位予測モデルを繰り返し計算すること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、気象予測と降雨予測情報からアンダーパス内の数時間後の冠水予測を行うことができるため、人為的な災害を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係るアンダーパス冠水予測通知システムの構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係るアンダーパス冠水予測通知装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施態様について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るアンダーパス冠水予測通知システムの構成を示すブロック図である。図2は、本発明の実施形態に係るアンダーパス冠水予測通知装置の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のアンダーパス冠水予測通知システムは、アンダーパス冠水予測通知装置1と、気象レーダ2と、観測センサ3と、表示装置4と、VICSセンター5と、車両6と、から構成される。ここでは、冠水予測を報知するものして表示装置4によるものや、VICSセンター5から車両6への通報としたが、これに限定されるものではなくテレビ放送やラジオ放送、その他の放送設備を使用したものであってもよい。
【0012】
アンダーパス冠水予測装置1は、アンダーパス内予測水位高算出部11と、予測降雨量情報記憶部12と、観測局情報記憶部13と、過去の観測局情報記憶部14と、危険判定部15と、から構成される。
【0013】
アンダーパス予測水位高算出部11は、気象データ冠水予測モデル式実行部111へ気象レーダから送られてくる気象データや、アンダーパスの水位を観測する観測センサ3から得られる雨量や水量の情報を入力して冠水予測を行う。
【0014】
即ち、冠水予測モデル式実行部111は、予測降雨量情報記憶部12に記憶される予測降雨量情報と観測局情報記憶部13に記憶される観測情報が入力されると、(式1)に示す演算を実行する。式1のQ(t+1)は、(t+1)時刻の水位高を算出するもので、(t)時刻の水位高Q(t)と(t+1)時刻の予測雨量情報R(t)とから求められる。
【数1】

【0015】
ここで、例えばc、kに実際に数値を入力し定義する(式2)。
【0016】
なお、c、kの値(1/2,1/3)は、それぞれのアンダーパスで、計測した過去の観測局情報記憶部14よりアンダーパス内の雨量と、アンダーパス内の水位の変化を分析した結果によって決定されるであって、以下の値に限定されるわけではない。
【数2】

【0017】
また(式2)に定義することで、さらに(t+2)時刻の水位高Q(t+2)は(t+1)時刻の水位高Q(t+1)から求めることができる(式3)。
【数3】

【0018】
さらに、(式3)のQ(t+1)に(式2)を代入することにより、(式4)となる。
【数4】

【0019】
このように連続してt=t+1からt=t+x+1に拡張し、一般化すると、(t+x+1)時刻の水位高はQ(t)、R(t+1)、R(t+2)、…R(t+x)から求めることができる(式5)。
【数5】

【0020】
ここで、上記R(t+1)、R(t+2)、…R(t+x)は、例えば気象庁等の雨量予測可能時間に依存する。よって予測降雨量情報R(t+x)が、例えばR(t+x−2)まで求められるのであれば、より数時間後又は数十分後のアンダーパス内の水量が予想できることとなる。
【0021】
予測降雨量情報記憶部12は、予測降雨量情報を気象レーダ2から入手し、記憶される。
【0022】
観測局情報記憶部13は、冠水量を予測したいアンダーパス付近に設置され、アンダーパス直近の水量である冠水局情報を観測センサ3から入手し記憶される。
【0023】
過去の観測局情報記憶部14は、観測センサ3が観測した過去の観測情報が記憶される。
【0024】
危険判定部15は、アンダーパス予測水位高算出部11で算出されたアンダーパス予測水位高をもとに危険水位を判定する。具体的には、上記Q(t+1)が危険状態を示す値を示した場合、その旨を表示装置4またはVICSセンター5に通知する。
【0025】
気象レーダ2は、現在の雨量情報を含む上記アンダーパスの水量に影響を与える地域の定められた気象情報を取得する。その後、気象レーダ2では気象情報から、予測雨量情報が作成される。そして、気象レーダ2から予測雨量情報がアンダーパス冠水予測通知装置1の予測雨量情報記憶部12へ送出される。
【0026】
ここで、気象レーダ2は水量を予測したいアンダーパスの周囲1キロ平方メートルの予測雨量を算出するための気象情報を取得するものであり、気象レーダに限らず気象情報を予想できるシステムであればよい。
【0027】
観測センサ3は、水量を予測したいアンダーパス直近の水量を計測し、その水量情報をアンダーパス冠水予測通知装置1の観測局情報記憶部13へ送出する。例えば、観測センサ3は、アンダーパスの入り口などに設置される。
【0028】
表示装置4は、アンダーパスの出入り口に設置され、アンダーパス監視者に情報表示盤41を介して冠水情報を知らせる。また、危険な水量を示したならば、回転灯42を介して当該アンダーパス内が危険であることを知らせてもよい。なお、危険な水位は、周辺の居住者が避難する時間を考慮した適切な水位が設定されなければならない。それらは、過去の観測局情報記憶部14の情報も参照して設定されるべきである。
【0029】
VICS(Vehicle Information and Communication System)センター5は、アンダーパス冠水予測通知装置1からの危険情報を取得し、カーナビゲーションシステム等の車載器61を搭載する車両6の利用者に、アンダーパス内が危険水位であることを通知する。
【0030】
次に、上記構成のアンダーパス冠水予測通知システムの動作について説明する。
【0031】
まず、アンダーパス冠水予測装置1は気象レーダ2および観測センサ3から予測降雨情報および観測局情報を取得する。取得した予測降雨量情報は、アンダーパス冠水予測装置1の予測降雨量情報記憶部12に記憶され、観測局情報は同じく観測局情報記憶部13に記憶される。
【0032】
次に、アンダーパス内予測水位高算出部11は、予測降雨量情報記憶部12および観測局情報記憶部13から、それぞれの予測降雨量情報、現在の観測局情報を読み出す。それぞれの値R(t+x)、(t+x)を冠水予測モデル式実行部111に代入して、数時間後の水位量Q(t+x+1)を算出する。
【0033】
計算終了後、アンダーパス内予測水位高算出部11は算出された数時間後の水位量Q(t+1)を危険判定部15へ送出する。
【0034】
危険判定部15は、上記数時間後の水位量Q(t+1)と、予め定められた危険水位量とを比較し、危険水位量を示していると判断した場合、表示装置4またはVICSセンター5に危険情報を送出する。
【0035】
表示装置4は、受信した危険情報を表示装置盤41に表示する。または回転灯42により、監視者または近くを走行する車両6の運転者等に通知する。
【0036】
VICSセンター5を介して、車両6に搭載される車載器61に危険情報を表示してもよい。
【0037】
このようにすることで、数時間後のアンダーパス内の冠水予測が可能となり、(式1)に示すように他の外部要因が少ないことから、精度も維持することができる。
【0038】
なお本発明は、発明の要旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態を適宜設計変更することが可能であり、必要に応じて実施形態を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 … アンダーパス冠水予測通知装置
11 … アンダーパス内予測水位高算出部
111 … 冠水予測モデル式実行部
12 … 予測降雨量情報記憶部
13 … 観測局情報記憶部
14 … 過去の観測局情報記憶部
15 … 危険判定部
2 … 気象レーダ
3 … 観測センサ
4 … 表示装置
41 … 情報表示盤
42 … 回転灯
5 … VICSセンター
6 … 車両
61 … 車載器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象レーダから得られる予測降雨量情報が記憶される記憶手段と、
アンダーパスの近くに設置される観測センサから得られる観測局の水量情報が記憶される観測局情報記憶手段と、
前記アンダーパスの過去の冠水データが記憶される過去情報記憶手段と、
前記予測降雨量情報と、前記観測局情報と、前記過去の冠水データとから推定された推移予測モデルから前記アンダーパス内予測水位高を算出するアンダーパス内予測水位高算出部と、
を備え、
前記アンダーパス内予測水位高算出部は前記アンダーパス内予測水位高を算出するための水位予測モデルを繰り返し計算すること
を特徴とするアンダーパス冠水予測通知装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−113185(P2011−113185A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267407(P2009−267407)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】