説明

アンテナ回路、ICインレット、ICタグ及びICカードならびにICタグの製造方法及びICカードの製造方法

【課題】 ICタグやICカード等の小型化、製造時の作業性、歩留まり率の向上、製造コストの低減を図る。
【解決手段】 非接触で情報伝送するICタグ等である。2つのアンテナ回路2の間を折り曲げて重ね合わせる。2つのアンテナ回路2のうちの1つはICチップ6を実装した実装回路2Aであり、他はICチップ6を実装しない開回路2Bである。アンテナ回路2の一方の面に、可視情報が印刷される表面印刷用基材10を備えた。アンテナ回路2の他方の面に接着材が設けられ、回路支持部4を折り曲げることでアンテナ回路2が互いに貼り合わされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人認証、商品管理、物流等に使用される非接触型のICタグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非接触型のICタグは主に、ICチップとアンテナ回路とを備えて構成されている。このICタグの製造において、ICチップとアンテナ回路との共振周波数は、静電容量とインダクタンスによって決定される。この共振周波数を調整するには、静電容量とインダクタンスのそれぞれを調整しなければならない。静電容量は通常ICチップ固有の値であり、その値を変化させるためにはアンテナ回路内に静電容量を追加しなければならない。また、インダクタンスを変化させるためには、アンテナ回路の巻き数を増減させたり回路長を変化させたりしなければならない。
【0003】
従来、これらに対応するために次のような対策が提案されている。
【0004】
特許文献1では、アンテナ回路内に静電容量を追加する対策が提案されている。また、特許文献2では、アンテナ回路長を変化させて調整する方法が提案されている。ここでは、インダクタンスの調整のために、予め所望の共振周波数よりも低くなるようにアンテナ回路を設計している。その上で、巻き数を減らしたり回路長を短くしたりして、インダクタンスの調整を行っている。
【0005】
また、所望の共振周波数を得る別の手段として特許文献3が提案されている。この特許文献3では、アンテナ回路を2面合わせることで、相互インダクタンス作用により所望の特性についての製品バラツキを小さく抑えたり質問機との交信距離を従来以上に延ばしたりする特性調整方法が提案されている。
【特許文献1】特開2001−010264号公報
【特許文献2】特開2001−251115号公報
【特許文献3】特開2003−173426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようなICタグでは、次のような問題がある。
【0007】
特許文献1では、アンテナ回路内に調整用コンデンサや調整用抵抗を設けているため、部品点数が増加して製造コストが嵩むと共に小型化の障害になるという問題点がある。
【0008】
特許文献2では、歩留まり率が低下し、及び小型化の妨げとなるという問題がある。
【0009】
ICチップとアンテナ回路の周波数(f)は、ICチップの静電容量(C)とアンテナ回路のインダクタンス(L)とによって決定される。その関係は以下の式(1)で表される。
【0010】
f=2π×1/(LC)1/2 ……(1)
この式から分かるように、インダクタンス(L)を大きくすれば、共振周波数を低くすることができる。上記インダクタンスの調整においては、予め所望の共振周波数よりも低くなるようにアンテナ回路を設計するにはインダクタンス(L)を大きくしなければならないが、このためには回路巻き数を多くする必要がある。しかしながら、回路巻き数が多くなると、回路の歩留まり率が低下し、最終製品形状であるICタグの小型化を妨げるという問題点がある。
【0011】
特許文献3では、2面のアンテナ回路を合わせているが、その作業が容易ではない。即ち、2面のアンテナ回路の重ね合わせでは、両面印刷による回路形成や、片面印刷で形成した単体アンテナ回路同士を貼り合わせるための作業が必要になり、その作業が容易でないという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
(1) 複数のアンテナ回路からなり、お互いの間を折り曲げることによりお互いが重ね合わせられるように構成したことを特徴とするアンテナ回路。
【0013】
(2) 上記(1)に記載の複数のアンテナ回路のいずれか1つ以上のアンテナ回路にICチップを実装したことを特徴とするICインレット。
【0014】
(3) 基板部に、上記(2)に記載の1組のICインレットを有することを特徴とするICタグ。
【0015】
(4) 基板部に、上記(2)に記載の1組のICインレットを有することを特徴とするICカード。
【0016】
(5) 帯状の基板部にアンテナ回路を形成する工程と、
アンテナ回路を形成した基板部をタグ状に打ち抜く工程と、
タグ状の基板部上の複数のアンテナ回路の間を折り曲げる工程と
を備えたことを特徴とするICタグの製造方法。
【0017】
(6) 帯状の基板部にアンテナ回路を形成する工程と、
アンテナ回路を形成した基板部をカード状に打ち抜く工程と、
カード状の基板部上の複数のアンテナ回路の間を折り曲げる工程と
を備えたことを特徴とするICカードの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
各アンテナ回路を容易に且つ正確に重ね合わせることができ、ICタグ又はICカードの製造時の作業性を向上させることができ、製造コストの低減、歩留まり率の向上及び小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なおここでは、ICタグにアンテナ回路を2つ設けた構成を例に説明する。
【0020】
本実施形態に係るICタグは、基板の同一平面内に2つのアンテナ回路を設け、そのうちの一方をICチップが実装された実装回路とし、他方をICチップのない開回路とし、これらに接着材を積層した後、表面印刷用基材を貼り合わせ、タグ加工により所望のタグ形状に打ち抜き、タグ使用時に中央部から折り曲げて貼り合わせることで、所望の共振周波数を得ることができるようにしたタグである。このICタグの具体的な構成を図1〜図7に基づいて説明する。
【0021】
ICタグ1は図1〜図4に示すように主に、アンテナ回路2と、基板部3と、回路支持部4とから構成されている。
【0022】
アンテナ回路2は2つ設けられ、そのうちの一方はICチップ6を実装する実装回路2Aとなっている。他方はICチップ6を実装しない共振周波数調整回路としての開回路2Bとなっている。
【0023】
実装回路2Aには、ICチップ実装用接続端子5と、このICチップ実装用接続端子5に実装されるICチップ6と、絶縁膜7Aで絶縁された状態で回路の両端を接続するジャンパ7とが設けられて実装回路を構成している。実装回路2Aの巻数は、予め所望の共振周波数よりも高めになるように設定されている。巻数は任意であるが、ICタグ1の小型化を考慮するならば、好ましくは開回路の巻数と同じか、少なくするように設定する。開回路2Bは、コイル状の配線のみで構成され、ICチップを実装しないで、その両端が開放している。
【0024】
アンテナ回路2は、回路基板8の少なくとも一方の面に設けられる。
【0025】
アンテナ回路2としては、被覆導線をコイル状に巻く方法、導電性ペーストをコイル状に印刷する方法や回路基板にラミネートされた銅等の導電金属層をエッチングによりコイル状に形成する方法等が例示できる。導電性ペーストとしては、金、銀、ニッケル等の金属粒子をバインダーに分散させたもの等が用いられる。バインダーとしては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0026】
ICインレットは、図7に示すようにアンテナ回路2のうち実装回路2AにICチップ6を実装したもののことをいう。本発明においては、単一構成要件の複数のアンテナ回路のうち少なくとも1つ以上にICチップが実装されていればよい。ICチップはアンテナ回路に電気的に接続されていればよく、実装方法としては特に限定されるものではない。厚みを薄くできるという観点より、ICチップの回路面をアンテナ回路面側に積層させるフリップチップ実装が好ましい。ICチップの接続には、接合材料を用いることができる。この接合材料としては、異方導電性ペースト(以下「ACP」と略す)等を用いることができる。
【0027】
基板部3は、アンテナ回路2を支持すると共に可視情報3Cを表示するための部分である。この基板部3は、図5に示すように主に、回路基板8と、両面接着材9と、表面印刷用基材10と、剥離材11とから構成されている。なお、図5では理解しやすいように各層を厚く表現したが、実際には表面印刷用基材10から剥離材11までの全体の厚さでも1mm未満程度である。
【0028】
回路基板8は各アンテナ回路2をそれぞれ支持するための基板である。この回路基板8の表面にアンテナ回路2が設けられている。具体的には、実装回路2Aが設けられた回路基板8と、開回路2Bが設けられた回路基板8とが一対となって回路支持部4で支持されている。2つのアンテナ回路2は各回路基板8の表面(同一面)に並べて設けられている。
【0029】
回路基板8としては、上質紙、コート紙等の紙や合成樹脂フイルム等が用いられる。ここで用いられる合成樹脂フイルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリイミド等を挙げることができる。回路基板8の厚みとしては特に制限はないが、5〜200μmが好ましく、15〜125μmが特に好ましい。
【0030】
両面接着材9は、各アンテナ回路2が設けられた2つの回路基板8を互いに貼り合わせるための接着材である。両面接着材9は、各アンテナ回路2を覆って積層した状態で各回路基板8にそれぞれ貼り付けられている。この両面接着材9は、回路支持部4に支持された各回路基板8が互いに重ね合わせることで、これらを互いに貼り合わせてタグを構成する。尚、両面接着材9は、アンテナ回路2Aあるいは2Bにのみ積層されていてもよい。
【0031】
両面接着材9は、支持体9Aと、接着剤層9Bと、接着剤層9Cとから構成されている。支持体9Aとしては、合成樹脂フイルム、紙、不織布等を用いる。この合成樹脂フイルムとしては、種々の材料を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンフイルム、ポリイミドフイルム等の材料を用いることができる。これらの材料を、厚さ10〜100μm、好ましくは12〜80μmに設定して用いる。これは、両面接着材9として要求される強度と柔軟性を考慮した厚さである。尚、3層の両面接着材9の代わりに単層の接着剤層9Bのみでもよい。
【0032】
接着剤層9Bは、支持体9Aの一方の面に設けられ、ICチップ6及びアンテナ回路2を覆って回路基板8に貼り付けるための層である。接着剤層9Bは、ICチップ6及びアンテナ回路2の凹凸に追従してこれらを封止する。この接着剤層9Bとしては、十分な接着力があるものを用いる。例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系等の接着剤を用いることができる。この中で特に、アクリル系接着剤が接着力の面で優れている。接着剤層9Bの厚さは10〜100μm、好ましくは20〜60μmに設定する。この厚さは、ICチップ6及びアンテナ回路2の凹凸に追従することができる厚さとして設定したものである。
【0033】
接着剤層9Cは、支持体9Aの他方の面に設けられ、ICタグ1を折り曲げたときに互いに貼り合わされるための層である。この接着剤層9Cの材料として、折り曲げたときにそれぞれが剥がれることなく貼り合わせた状態を保てるものであればよい。例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系等の接着剤を用いることができる。この接着剤層9Cの表面に剥離材11が設けられる。この剥離材11によって、折り曲げ前の表面印字の際等に接着剤層9Cを保護する。
【0034】
剥離材11は、基材の少なくとも一方の面に剥離剤層を設けることが好ましい。基材としては、ポリエチレンラミネート紙、コート紙、グラシン紙等の紙やポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フイルム等を用いることができる。剥離剤としては、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、長鎖アルキル系樹脂等を挙げることができる。
【0035】
表面印刷用基材10は、商品の情報等の可視情報3Cを印刷するための基材である。この表面印刷用基材10に、商品情報、値段、バーコード等(図2参照)の可視情報3Cが印刷される。この可視情報3Cは、ICタグ1が折り曲げられた状態で両面に表示される(図3,4参照)。可視情報3Cが片方の表面印刷用基材10にのみ印刷されている場合は、ICタグ1が折り曲げられた状態で、その可視情報3Cが片面に表示される。この表面印刷用基材10としては、表面に印字適正を有しているものを用いる。例えば、合成樹脂フイルム、合成紙、不織布、紙等を用いることができる。また必要に応じて、これらに感熱記録、感圧記録、レーザ光記録、インクジェット記録等の各種の記録層を形成したものを用いる。
【0036】
回路支持部4は、2つのアンテナ回路2をそれぞれ支持して位置合わせしながら互いに重ね合わせるための部位である。回路支持部4はここでは2つの基板部3を連結する連結板状に形成されている。回路支持部4の中央部には折り目13が設けられている。この折り目13は、2つの基板部3を支持した状態で折り曲げて、正確に位置合わせしながら互いに重ね合わせるための部位である。折り目13には、回路支持部4がこの折り目13の部分から正確に折れ曲がるように、切れ目、ミシン目、溝等の折れ曲がりを案内するための手段が施されている。これにより、2つの基板部3を正確に位置合わせしながら互いに重ね合わせることで、2つのアンテナ回路2を設定位置に正確に位置合わせして互いに重ね合わせるようになっている。さらに、回路支持部4には、折り目13を対象にした2つの貫通穴14が設けられている。この2つの貫通穴14は、紐類やワイヤー等を通すための穴である。2つの貫通穴14は回路支持部4が折り目13で折り曲げられた状態で1つの穴になり、その穴に紐類やワイヤー等が通されて商品に結わえ付けられる。貫通穴14は、ICタグ1の抜き加工において、回路支持部4に2つ設けられる。貫通穴14は、ICタグ1の付け方等の使用態様に応じて、その穴の大きさ、設置位置等を適宜設定する。穴の形状も、丸に限らず、多角形(三角形、四角形、六角形等)等の任意の形状に設定する。
【0037】
上記実施形態では、実装回路2AにのみICチップ6を搭載し、開回路2BにはICチップ6を搭載しなかったが、開回路2BにもICチップ6を搭載してもよい。この場合、一方のICチップ6にのみ情報を書き込むようにして、他方のICチップ6は使用せずに、共振周波数調整回路として使用する。この場合、書き込む情報の種類に応じて、一方のICチップ6を使用して他方を共振周波数調整回路としたり、他方のICチップ6を使用して一方を共振周波数調整回路としたりしても良い。
【0038】
また、開回路2Bの巻方向は、実装回路2Aと逆方向でも、順方向でも良い。製造時の設定や要求される特性等に応じて、適宜設定して良い。
【0039】
アンテナ回路2を3つ以上設ける場合は、実装回路2Aを2つ以上設けても良い。この場合は、書き込む情報の種類に応じて使い分けたり、容量不足、動作不良等の予備として使ったりすることができる。
【0040】
以上のように構成されたICタグ1は、次のようにして形成される。
【0041】
まず、回路基板8にアンテナ回路2を形成する。上述のエッチングによる方法によってアンテナ回路2を回路基板8上に形成する。この場合、図6に示すように、長尺の回路基板8に2つのアンテナ回路2(実装回路2Aと開回路2B)を一対として、この一対のアンテナ回路2を同一平面上に連続的に並べて形成する。このアンテナ回路2の回路基板8上への配列パターンとしては、種々のものがある。ここでは、一対のアンテナ回路2を長手方向に一列に並べて形成するが、複数列に並べて形成しても良い。形成する個数等に応じて適宜設定する。
【0042】
アンテナ回路2を形成した後、絶縁膜7A及びジャンパ7を形成して図7に示すようにICチップ6を実装し、ICインレットを形成する。このICチップ6等を覆うように両面接着材9を設けると共に、両側の表面に表面印刷用基材10及び剥離材11を設けて、長尺帯状の形成品を作る。
【0043】
また、必要に応じて、表面印刷用基材10の表面に商品情報、値段、バーコード等の可視情報3Cを印刷する。
【0044】
抜き加工をする場合は、長い帯状の形成品からタグ形状に打ち抜いていく。これにより、2つの基板部3とこれらを連結する回路支持部4とを備えた展開状態のICタグ1を形成する。
【0045】
次いで、剥離材11を剥がし、回路支持部4の折り目13の部分から折り曲げて、2つの基板部3を合わせて各アンテナ回路2を整合した状態で重ね合わせる。次いで、必要に応じて紐類を貫通穴14に通して製品に結わえ付ける。
【0046】
[第1変形例]
第1変形例を図8に示す。図8は回路支持部4を基板部3とほぼ同じ幅にして、2つの基板部3を支持するような構成となっている。貫通穴14は2つの基板部3の外側に設けられる。この場合、回路支持部4の幅が広いため、より安定して各基板部3を支持することができるようになる。
【0047】
[第2変形例]
第2変形例を図9に示す。上記実施形態では、実装回路2Aと開回路2Bとで、アンテナの大きさ及び巻数をほぼ同じに設定したが、ICタグ1に要求される特性に応じて変えても良い。例えば、図9に示すように、実装回路を搭載した基板部3Aに対して開回路を搭載した基板部3Bを小さくして、開回路のアンテナの大きさを小さく、巻数を少なくしてもよい。逆に、開回路のアンテナの大きさを実装回路よりも大きく、巻数を多くしてもよい。要求される特性に応じて適宜設定する。
【0048】
[第3変形例]
第3変形例を図10及び図11に示す。上記実施形態では、アンテナ回路2を実装回路2Aと開回路2Bの2つの回路から構成したが、3つ以上の回路から構成しても良い。例えば、3つの回路からアンテナ回路2を構成する場合は、図10及び図11に示すように、基板部3を3つ並べて各基板部3の間に回路支持部4を設ける。これにより、3つの回路を容易に且つ正確に位置合わせして重ね合わせることができる。
【0049】
[第4変形例]
第4変形例を図12に示す。上記実施形態では、アンテナ回路2を実装回路2Aと開回路2Bの2つの回路から構成したが、図12に示すように、3つの基板部3をL字型に並べて構成しても良い。4つ以上並べる場合も同様に、一列に配設したり、ジグザグに配列したりして、各基板部3を重ね合わせる。
【0050】
[第5変形例]
第5変形例を図13に示す。上記実施形態では、各基板部3を互いに隙間無く貼り合わせたが、使用態様によっては、隙間を空けて配設される場合もある。例えば、図13に示すように、くさび状の部材に取り付けることもある。ICタグ1に要求される特性に問題がない範囲で、各基板部3を互いに傾斜させたり、ある程度の間隔を空けたりして配設することもできる。
【0051】
[第6変形例]
第6変形例を図18に示す。図18に示すように、回路基板8にアンテナ回路2A,2Bを形成し、ICチップ6を実装しICインレットを形成する。ICインレットを折り曲げて、接着剤9Bにて貼り合わせてICタグ1を形成する。このICタグ1を、合成樹脂21にて樹脂封止してICカード20を形成する。ここで用いる合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂等が挙げられる。ICカードの厚みとしては、ICタグを十分に覆うことができればよく、特に限定されるものではない。
【0052】
[第7変形例]
上記実施形態では、2つのアンテナ回路2(実装回路2Aと開回路2B)を両方とも回路基板8の表面(一側面)に設けたが、一方のアンテナ回路2を回路基板8の表面に、他方を回路基板8の裏面に設けるようにしても良い。この場合も上記実施形態同様の作用、効果を奏することができる。
【0053】
[第8変形例]
また、袋に入った商品の場合は、ICタグ1を一緒に袋に入れても良い。この場合は、貫通穴14は不要となる。
【0054】
[第9変形例]
上記実施形態では、アンテナ回路2を四角形状にしたが、ICタグ1の形状に応じて、円形等の他の形状でもよいことは言うまでもない。また、ICタグ1以外にも、ICカード等のアンテナ回路2を組み込むことのできるものであれば本発明を適用することができる。
【0055】
[第1使用例]
第1使用例を図14に示す。上記実施形態では、貫通穴14に紐類やワイヤー等を通してICタグ1を商品に結わえ付けたが、ICタグ1の取り付け方法としては、商品の形状等に応じて種々のもが考えられる。例えば、本のインデックスラベルとして使用する場合は、図14に示すように、本のページ16の端に貼り合わせ部1Aを設けて貼り合わせても良い。この場合のICタグ1は図8に示す構成になっている。なお、貼り合わせ部1Aには貫通穴14は設けられていない。
【0056】
[第2使用例]
第2使用例を図15に示す。図15のように、本のページ16を挟んで一緒に貼り合わされても良い。この場合は、図14の貼り合わせ部1Aは設けられていない。
【0057】
[第3使用例]
第3使用例を図16に示す。図16のように、細長い取り付け対象物17の場合は、ICタグ1(図1のICタグ1と同じ構成のICタグ)において、基板部3及び回路支持部4が接着剤によって貼り合わされることで、取り付け対象物17を挟み込んで取り付けるようにしてもよい。
【0058】
[実施例]
回路基板8に厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフイルム(以下「PET」と略す)を用い、これに35μmの銅箔を貼合した銅箔/PET貼合品のニカフレックス(ニッカン工業製)の幅50mm、長さ10mの長尺帯状品をアンテナ回路2を作成する基材として用いた。この基材にスクリーン印刷法にてエッチングレジストパターンを印刷し、その後エッチングにて不要な銅箔を除去した。さらにその後ICチップ6を実装する回路側(実装回路2A)の最内部と最外部を結合するためにスクリーン印刷法により絶縁レジストインク(日本アチソン製、ML25089)とAgペースト剤(東洋紡績社製、DW250L-1)を用いてジャンパ7を形成した。アンテナ回路2は、線幅0.12mm、線間0.13mm、実装回路巻数15回、開回路巻数14回、アンテナ回路外径15×15mmとした。図6のように長尺帯状の幅50mm、長さ750mmの回路基板8上に実装回路2A及び開回路2Bを並列に並べた1組のアンテナ回路2を30個形成した。
【0059】
このアンテナ回路2にフリップチップ実装機(九州松下製、FB30T-M)を使用し、接合材料には異方導電性ペースト(京セラケミカル製、TAP0402E)を用い、RFID-ICチップ6(フィリップス製、I-Code)を200℃−300gf−1Osecの条件で熱圧着して実装し、1組のICインレットを30個形成した。
【0060】
次に図5のようにICインレットのICチップがある面に、両面接着材9(リンテック製、PET25W PAT1 8KX 8EC)の片側剥離紙8EC(接着剤層9B側)を剥がして貼り合わせた。次いで、PETに粘着加工を施した表面印刷用基材10(リンテック製、FR3412−50)をICインレットの回路基板8のICチップがある面とは反対面に貼り合わせた。
【0061】
さらに図1のようにタグ外径19×19mmの形状に打ち抜き加工を行なった。次いで剥離紙8KXを剥がし、回路支持部4の折り目13で折り曲げて、実装回路2Aと開回路2Bを重ね合わせるように貼り合わせ、図3のようなICタグを30個形成した。
【0062】
以上のように形成されたICタグ1を、以下の試験方法で動作確認を行った。
【0063】
ここでは、試験方法として、フィリップス社製I Code評価キットSLEV400を用いたRFIDに関するRead/Write試験及びAgilent社製ネットワークアナライザー8712ETを用いた共振波形/共振周波数試験を行った。
【0064】
この結果を表1に示す。
【表1】

【0065】
比較例1は、開回路のない実装回路のみの回路巻数15回、アンテナ回路外径22×16mmの1つのアンテナ回路からなり、折り曲げて重ね合わせない以外は実施例と同様にしてタグ外径26×20mmのICタグを30個形成した。
【0066】
比較例2は、実装回路に回路巻数23回、アンテナ回路外径15×15mmのアンテナ回路を用いた以外は、比較例1と同様にしてタグ外径19×19mmのICタグを30個形成した。
【0067】
比較例3は、実装回路に回路巻数15回、アンテナ回路外径15×15mmのアンテナ回路を用いた以外は、比較例1と同様にしてタグ外径19×19mmのICタグを30個形成した。
【0068】
表1に示すように、実施例では所望の共振周波数13.6MHz、比較例1、2では13.7MHzであるのに対して、比較例3では16.1MHzとなり、所望の共振周波数のものが得られなかった。比較例1では、タグ寸法が大きくなり、比較例2では回路の短絡または断線によりアンテナ回路の歩留り率が悪くなった。
【0069】
[実施形態の効果]
以上のように、アンテナ回路2の実装回路2Aに最適巻数の開回路2Bを正確に重ね合わせることにより、所望の共振周波数(要求される特性)のICタグ1を、小型のアンテナ回路2で実現することができる。この結果、ICタグ1を小型化することができる。
【0070】
また、実装回路2A及び開回路2Bのアンテナの巻数を減少させることができるため、アンテナ回路形成時の歩留まり率を向上させることができる。
【0071】
さらに、回路支持部4の折り目13によって、実装回路2Aと開回路2Bとを容易に且つ正確に重ね合わせることができ、ICタグ1の製造時の作業性が向上する。
【0072】
以上より、ICタグ1の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係るICタグを展開した状態でその裏側から示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るICタグを展開した状態でその表側から示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るICタグを貼り合わせた状態でその一側から示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るICタグを貼り合わせた状態でその他側から示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るICタグを示す側面断面図である。
【図6】回路基板にアンテナ回路を形成した状態を示す平面図である。
【図7】回路基板にアンテナ回路を形成してICチップを実装した状態を示す平面図である。
【図8】本発明の第1変形例を示す平面図である。
【図9】本発明の第2変形例を示す平面図である。
【図10】本発明の第3変形例を示す平面図である。
【図11】本発明の第3変形例を示す側面図である。
【図12】本発明の第4変形例を示す平面図である。
【図13】本発明の第5変形例を示す側面図である。
【図14】本発明の第1使用例を示す平面図である。
【図15】本発明の第2使用例を示す平面図である。
【図16】本発明の第3使用例を示す平面図である。
【図17】本発明の第6変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0074】
1:ICタグ、2:アンテナ回路、2A:実装回路、2B:開回路、3:基板部、3A:基板部、3B:基板部、3C:可視情報、4:回路支持部、5:ICチップ実装用接続端子、6:ICチップ、7:ジャンパ、7A:絶縁膜、8:回路基板、9:両面接着材、9A:支持体、9B:接着剤層、9C:接着剤層、10:表面印刷用基材、11:剥離材、13:折り目、14:貫通穴、16:本のページ、17:取り付け対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ回路からなり、お互いの間を折り曲げることによりお互いが重ね合わせられるように構成したことを特徴とするアンテナ回路。
【請求項2】
請求項1に記載の複数のアンテナ回路のいずれか1つ以上のアンテナ回路にICチップを実装したことを特徴とするICインレット。
【請求項3】
基板部に、請求項2記載の1組のICインレットを有することを特徴とするICタグ。
【請求項4】
基板部に、請求項2記載の1組のICインレットを有することを特徴とするICカード。
【請求項5】
帯状の基板部にアンテナ回路を形成する工程と、
アンテナ回路を形成した基板部をタグ状に打ち抜く工程と、
タグ状の基板部上の複数のアンテナ回路の間を折り曲げる工程と
を備えたことを特徴とするICタグの製造方法。
【請求項6】
帯状の基板部にアンテナ回路を形成する工程と、
アンテナ回路を形成した基板部をカード状に打ち抜く工程と、
カード状の基板部上の複数のアンテナ回路の間を折り曲げる工程と
を備えたことを特徴とするICカードの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−304184(P2006−304184A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126571(P2005−126571)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】