説明

アンテナ装置及び携帯無線機

【課題】2周波数で動作する2給電小型アンテナを提供する。
【解決手段】放射導体12の一端は第1の無線部14から給電され、反対側の一端は第2の無線部15から給電される。第1の無線部14は、第1の送信回路、第1の受信回路、第1の分波器及び第1の整合回路で構成され、第2の無線部15は、第2の送信回路、第2の受信回路、第2の分波器及び第2の整合回路で構成される。放射導体12は、第1の無線部14に対して変形の折り返しモノポールアンテナとして動作し、第2の無線部15に対しては逆Lアンテナとして動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ装置及びそれを用いた携帯無線機(通信端末)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話の普及とともにその多機能化が進んでおり、携帯電話において使用されている周波数のマルチバンド化やbluetooth、ワイヤレスLAN、ワンセグなどの携帯電話以外の無線機能が搭載されるようになってきている。それに伴って、必要なアンテナ数が増ええるとともに、アンテナを形成するために大きなスペースが必要となっている。その一方で、ユーザーからは携帯電話自体のより一層の小型化、薄型化を望む声も大きい。その場合には、アンテナの性能を落とすことなく、小型化することが必要となる。多周波数共用マイクロストリップアンテナに関する文献としては下記の文献がある。
【0003】
【特許文献1】特開平05−175722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に使用されているマルチバンド対応型携帯電話のアンテナ方式としては、例えば、2周波数対応の携帯電話用のアンテナとしては、
1)給電点が1つであり、アンテナが途中で分岐し、それぞれの周波数に対応するエレメントに分かれる2共振逆Lアンテナ、
2)アンテナは1つであり、その逓倍波の共振を使用する2共振逆Fアンテナ
が多く使用されている。
【0005】
また、その一方で、近年では携帯電話の構造自体が多種多様化してきており、使用する周波数によって給電点の位置がアンテナ特性の優劣に大きく影響を与えることが確認されている、前述の2つのアンテナ方式では、給電点が1つであるため、それぞれの周波数に対して最適な給電点位置にすることが難しく、アンテナの小型化の障害の一因になっている。
【0006】
また、各周波数に対して、それぞれ給電点とアンテナとを設ける方法も利用されている。しかしながら、この場合には2つのアンテナを用意する必要があるという点で小型化には不利であり、さらに、2つのアンテナ間での結合を避けるために、アンテナ間の距離を確保する必要があり、小型化が一層難しくなる。本発明は、アンテナの小型化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1つのアンテナを2つの給電点から給電することによって、上記の課題を克服したものである。
【0008】
第1の周波数を使用する第1の無線部と第1の周波数とは異なる第2の周波数を使用する第2の無線部からそれぞれ異なる一端に給電される放射導体があり、放射導体からみた第2の無線部のインピーダンスを第1の周波数では低インピーダンスに、第2の周波数では50Ωに設計され、放射導体からみた第1の無線部のインピーダンスを第1の周波数では50Ωに、第2の周波数では高インピーダンスに設計されている。このとき、放射導体の電気長を第1の周波数の1/2波長に、かつ、第2の周波数の1/4波長に設計することによって、放射導体は、第1の無線部では変形の1/2波長折り返しモノポールアンテナとして動作し、第2の無線部では1/4波長逆Lアンテナとして動作する。
【0009】
また、前述のアンテナを第1の筐体と第2の筐体がヒンジ部で接続されているクラムシェルタイプや2軸回転ヒンジを有する折り畳み式の携帯電話において、第1の筐体或いは第2の筐体のヒンジ部側に、前述のアンテナが配置されており、2つの給電部が、第1の回路基板の上端部の両端にそれぞれ配置し、上下筐体接続手段と第1の回路基板との接点を使用する周波数が高い方の給電部側に配置することによって、携帯電話を開いた時の各周波数におけるアンテナ特性をより良好にすることができる。
【0010】
開閉可能な携帯電話のヒンジ部にアンテナがある場合は携帯電話を開いた場合に、アンテナが実装されていない方の筐体がアンテナに近づくため、アンテナ特性が影響を受ける。使用するアンテナの周波数が800MHz帯などの比較的低い場合は第1の回路基板上端部にある上下基板接続手段との接点は、第1の回路基板上端部にあるアンテナ給電点とは逆側の一端側に配置することによって携帯電話を開いた時のアンテナ特性を良好にすることができる。これは、アンテナ給電点からみた第2の回路基板は高周波的に、ある程度の電気長を伴って接続されていることになり、なおかつ、上下筐体接続手段及び第2の回路基板を含めた第2の筐体の電気長がその周波数の約1/4波長にすることができ、その結果、第2の筐体を励振させることができるためである。
【0011】
また、アンテナの給電点と同一側の一端に配置するとアンテナ特性は逆に劣化する。これはアンテナの給電点に対して第2の筐体を短い電気長を伴って接続されることによって第2の筐体が接地導体の一部つまりほぼアンテナに対してGNDとして動作し、携帯電話が開いた時にアンテナとGNDが近づくことによって特性が劣化するものである。
【0012】
また、使用する周波数が2GHz帯などの比較的高い場合は、800MHz帯より波長が約半分となるため、上下基板接続手段をアンテナ給電点と逆側に配置した場合、アンテナ給電点からみた、上下基板接続手段及び第2の回路基板を含めた第2の筐体の電気長は約1/2波長になってしまうため、アンテナ特性を良好にする効果はほとんど期待できない。
【0013】
逆に、上下筐体の接続手段をアンテナの給電部と同一側に配置した場合は上記電気長は約1/4波長に近づけることができるため、前述と同様の効果からアンテナ特性を良好にすることができる。上記のように各周波数に対応する給電部をそれぞれ最適に配置することによって携帯電話を開いた時のアンテナ特性を良好にしている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放射導体の両端が、異なる周波数を使用し、2つの無線部からそれぞれ給電されることによって、2つの異なる周波数でアンテナとして動作させることができる。従って、1つの放射導体で2つの周波数を共振できるため、アンテナが必要とする体積を大幅に減らすことができる。
【0015】
また、開閉可能な携帯電話のヒンジ部にアンテナがある場合は、携帯電話を開いた場合に、アンテナが実装されていない方の筐体がアンテナに近づくことに起因するアンテナ特性の影響を低減することができる。各周波数に対応する給電部をそれぞれ最適に配置することによって、携帯電話を開いた時のアンテナ特性を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態による携帯端末について、携帯電話機を例にして図面を参照しながら説明を行う。図1A及び図1Bは、本発明の第1の実施の形態による携帯電話の概略構成例を示す図である。図1A(a)は、携帯電話の斜視図であり、図1A(b)は、携帯電話の内部に設けられているアンテナと回路基板との位置関係を示す図であり、図1A(c)は、アンテナの無線部との関係を示した図である。図1B(a)、(b)は、第1の無線部及び第2の無線部のインピーダンス特性例を示した図であり、図1C(a)は、第1の無線部及び第2の無線部の構成を簡単に示した図であり、図1C(b)は、図1C(a)内の整合回路の一例を示した図である。
【0017】
本実施の形態によるアンテナは、図1Aに示すように、ストレート型携帯電話において、その筐体11の上端部に配置され、放射導体12の一端が第1の無線部14から第1の給電部において給電され、もう一端が第2の無線部15から第2の給電部において給電されている。第1の給電部と第2の給電部とは、第1の無線部14と放射導体12との間及び第2の無線部15と放射導体12との間に設けられている。
【0018】
また、第1の無線部14は、第1の周波数帯f11を第2の無線部15は第2の周波数帯f12を使用し、第1の周波数帯f11と第2の周波数帯f12は、異なる周波数帯としている。図1B(a)に示すスミスチャートのインピーダンス特性のように、放射導体12からみた第1の無線部14のインピーダンスは、第1の周波数帯f11では略50Ωに設計されており、第2の周波数帯f12ではインピーダンスが高く、略開放端となっている。一方、放射導体12からみた第2の無線部15のインピーダンスは、第1の周波数帯f11ではインピーダンスが低く、略短絡端となっており、第2の周波数帯f12では略50Ωに設計されている。このため、第2の周波数f12において第1の無線部14と放射導体12とは整合がとれていない状態になるため、第2の無線部15から発信される電波は放射導体12を通じて直接第1の無線部14に入射することはない。第1の周波数f11においても、同様の理由により第1の無線部14から発信される電波は放射導体12を通じて第2の無線部15に直接に入射することはない。従って、2つの無線部14・15は、それぞれ他方の無線部が発信する強入力電波が入射することによって、それぞれの無線部が壊れるようなことが無いため、2つの無線部を同時に使用することができるという利点がある。
【0019】
各無線部14・15のインピーダンスの調整方法の一例を挙げると、図1C(a)に示すように、第1の無線部14は、第1の送信回路16、第1の受信回路17、第1の分波器18及び第1の整合回路19を含んで構成されており、第2の無線部15も第1の無線部14と同様に、第2の送信回路110、第2の受信回路111、第2の分波器112及び第2の整合回路113を含んで構成されている。
【0020】
それぞれの整合回路19・113を調整することによって、放射導体12からみた各無線部14・15のインピーダンスを調整する。尚、それぞれの整合回路19・113は、図1C(c)に示すように、コイルL及びコンデンサCから構成されるが、これらの代わりに誘導性及び容量性を有する他の部品を使用しても良い。
【0021】
上記の構成によると、第1の無線部14に対しては、放射導体12は先端が短絡端と等価であるため変形の折り返しモノポールアンテナとして動作する。一方、第2の周波数帯f12における第2の無線部15に対しては、放射導体12は、先端が開放端と等価であるため、逆Lアンテナとして動作する。この際、第1の無線部14からみた第1の周波数帯f11における放射導体12の電気長が、1/2λになり、かつ、第2の無線部15からみた第2の周波数f12における放射導体12の電気長が1/4λとなるように、放射導体12の大きさを調整することによって、放射導体12は、第1の周波数f12において第1の無線部14では1/2λ変形折り返しモノポールアンテナとして動作するため、アンテナのインピーダンスを高くすることができ、広帯域で良好なアンテナを得ることができる。一方、第2の周波数f12において、第2の無線部15では、1/4λ逆Lアンテナとして動作する。
【0022】
上記のように、第1の周波数帯f11における波長の約1/2かつ第2の周波数帯f12における波長の約1/4となるように、放射導体1の電気長を調整することによって、1つのアンテナを、2つの無線部14・15に対して使用することができる。
【0023】
このため、従来は、使用するシステムによって、それぞれアンテナを必要としていたが、本実施の形態においては、1つのアンテナを2つのシステムで共用することができるため、アンテナ特性を良好にしたままで、アンテナに必要なスペースを小さくすることができる。また、第1の無線部14に対するアンテナとしては、1/2λ系変形折り返しモノポール方式を使用することによって、1/4λの逆Lアンテナ方式を使用するよりもアンテナの面積を大きく使用することになるため、アンテナ面積が大きい分だけアンテナ特性を良くすることができる。
【0024】
また、この関係によると、第1の周波数帯f11は、第2の周波数帯f12の約2倍である必要があるが、それぞれの給電部に整合回路を設けることによって、周波数調整は可能である。
【0025】
より具体的な例を挙げると、例えば、日本国内で使用されている2GHz帯を使用するWCDMA方式を第1の無線部とし800MHz帯を使用するPDC方式を第2の無線部として考えると、PDC(800MHz帯)はWCDMA(2GHz帯)の2倍に近い波長であるため、本実施の形態による構成をそのまま使用することができる。
【0026】
従来の方式では、PDC用のアンテナと、WCDMA用のアンテナをそれぞれ用意する必要があり、その分だけアンテナが必要とするスペースも大きくなるが、本実施の形態にいる構成を使用することによって、より小さなスペースで2つのシステムのアンテナを構成することができる。また、本実施の形態によれば、それぞれの給電部を放射導体の両端に設けているが、このようにすることによって、アンテナの体積を最大限に使用することができ、アンテナ特性をさらに良好にすることができる。
【0027】
尚、図1D(a)、(b)は、グランドパターン(接地導体)と回路基板13との配置例を示す図である。図1D(a)は、携帯電話機の液晶表示面に対して液晶背面側の構成を示す図であり、回路基板13の一端側に、アンテナ12が設けられ、このアンテナ12が設けられていない領域に、グランドパターン16aが設けられている。図1D(b)に示すように、液晶側から見ると、アンテナ12は裏面側に設けられており、それを避けた回路基板13の領域にグランドパターン16bが設けられている。このグランドパターン16bの周辺には複数の液晶ホルダとの接点20が設けられている。尚、グランドパターンは、回路基板13上のアンテナの配置されている位置以外の任意の場所のグランド電位のパターンであり、回路基板と一体化されている。
【0028】
図2A(a)〜図2B(b)までは、本発明の第2の実施の形態によるアンテナ装置の構成例を示す図である。図2A(a)は、アンテナ装置を内蔵した折り畳み式の携帯電話の正面図であり、図2A(b)は、携帯電話内のアンテナ装置の配置例を示す図であり、図2Bは、アンテナ装置と無線部との関係を示す図であり、図2C(a)、(b)は、携帯電話を開いた状態と閉じた状態とにおける放射導体と第2の筐体(アンテナが配置されていない方の筐体)との位置関係を示す図である。
【0029】
これらの図に示すように、本実施の形態による携帯電話は、放射導体23及び第1の回路基板24、キー部25等を内蔵する第1の筐体21と表示部26及び第2の回路基板27等を内蔵する第2の筐体22とが第1の筐体21の上端部と第2の筐体22の下端部とにおいてヒンジ部28によって接続されており、第1の筐体21内の第1の回路基板24の上端部一端と、第2の筐体22側の第2の回路基板27の下端部の一端とは、ヒンジ部28内部を通る細線同軸29によって接続されている。
【0030】
放射導体23の一端(図の左側)は、第1の信号選択手段210を介して第1の無線部212により第1の回路基板24の上端部における細線同軸29接続位置に近い方の一端から給電されている。放射導体23の逆側の一端は、第2の信号選択手段211を介して第2の無線部213から、第1の回路基板24上端部における細線同軸29の接続位置から遠い方の一端から給電されている。
【0031】
第1の無線部212では第1の周波数帯f21を使用し、第2の無線部213では第2の周波数帯f22を使用するが、f21とf22とは、異なる周波数帯である。また、第1の信号選択手段210は、第1の周波数においては第1の無線部212と放射導体23とをほぼ0Ωで接続し、第2の周波数においては放射導体23から見た第2の無線部213のインピーダンスをほぼ電気的に開放端に近くなるような高インピーダンスにする。
【0032】
一方、第2の信号選択手段211は、第1の周波数においては、放射導体23からみた第2の無線部213のインピーダンスを電気的に短絡端に近くなるような低インピーダンスにするものであり、第2の周波数においては、放射導体23と第2の無線部213とをほぼ0Ωで接続する。
【0033】
以上の構成は、第1の実施の形態において、回路側のインピーダンスによって開放端や短絡端に見せていたものを、代わりに第1の信号選択手段210及び第2の信号選択手段211を使用して、同様の効果を得ることができるようにしたものである。つまり、第1の無線部212に関しては、使用する第1の周波数f21において、第2の信号選択手段211はGNDと接続されているのと等価であるため、放射導体の先端が短絡されているのと等価であり1/2λ折り返しモノポールアンテナとして動作する。
【0034】
また、第2の周波数f22において、第2の無線部213から見た放射導体23の先端は開放端であり、放射導体は1/4λモノポールアンテナとして動作する。
【0035】
第1の信号選択手段及び第2の信号選択手段の一構成例を図2Dに示す。図2Dに示すように、第1の信号選択手段及び第2の信号選択手段は、フィルタ等により構成することができる。
【0036】
放射導体23は、その一端では第1のフィルタ214を介して無線部212と接続されており、もう一端では第2の無線部213と接続されているが、その途中で、第2のフィルタ215を介してGNDと接続されている。第1のフィルタ214は、第1の周波数においてはほぼ損失無しに第1の無線部212と放射導体23とを接続するものであり、第2の周波数においては非常に高いインピーダンスを示し、放射導体23から第1の無線部212に電流を流さなくするような特性を示す。
【0037】
また、第2のフィルタ215は、第1の周波数では放射導体23とGNDとを接続するものであり、第2の周波数では非常に高いインピーダンスを示し、放射導体23からGNDへ電流を流さなくする特性を示す。第1のフィルタ214と第2のフィルタ215とは、必要とする周波数特性が同じであるため、同一のフィルタを兼用して用いても良い。
【0038】
以上に説明したように、これらのフィルタによって、それぞれの信号選択手段の必要とする特性を満たすことができる。また、本実施の形態によれば、折り畳み式の携帯電話のヒンジ部にアンテナを配置したことによって以下のような更なる効果を奏する。すなわち、一般的に開閉可能な携帯電話のヒンジ部にアンテナがある場合は、携帯電話を開いた場合には、アンテナが実装されていない方の筐体がアンテナに近づくため、アンテナ特性に様々な影響を与える。例えば、使用するアンテナの周波数が800MHz帯などの比較的低い場合には第1の回路基板の上端部にある細線同軸やFPCから構成される第1の回路基板と第2の回路基板とを接続するための上下基板接続手段との接点は、第1の回路基板の上端部に配置されるアンテナ給電点とは逆側の一端側に配置することによって、携帯電話を開いた時のアンテナ特性を良好にすることができる。
【0039】
これは、アンテナ給電点からみた第2の回路基板は、高周波的にある程度の電気長を伴って接続されていることになり、なおかつ、上下筐体接続手段及び第2の回路基板を含めた第2の筐体の電気長がその周波数の約1/4波長にすることができ、その結果として、第2の筐体を励振させることができるためである。
【0040】
また、アンテナの給電点と同一側の一端に配置するとアンテナ特性は逆に劣化する。これは、アンテナの給電点に対して第2の筐体を短い電気長を伴って接続されることにより、第2の筐体が接地導体の一部、つまりほぼアンテナに対してGNDとして動作し、携帯電話が開いた時に、アンテナとGNDとが近づくことによって特性が劣化することに起因するものである。
【0041】
また、使用する周波数が2GHz帯などの比較的高周波数帯である場合は、800MHz帯よりも波長が約半分となるため、上下基板接続手段をアンテナ給電点と逆側に配置した場合に、アンテナ給電点からみた、上下基板接続手段及び第2の回路基板を含めた第2の筐体の電気長は約1/2波長になってしまうため、アンテナ特性を良好にするという効果はほとんど期待できない。
【0042】
逆に、上下筐体の接続手段をアンテナの給電部と同一側に配置した場合は、上記電気長は約1/4波長に近づけることができるため、前述と同様の効果からアンテナ特性を良好にすることができる。
【0043】
つまりPDCのように800MHz帯を使用する場合には、第1の回路基板24の上端部の一端にアンテナ給電点がある場合は、第1の回路基板24の上端部におけるアンテナ給電点と逆側の一端で細線同軸或いはFPCを介して第2の回路基板と接続した方が携帯電話を開いた時に第2の筐体を励振させ、高利得化、広帯域化できるという点でアンテナにとっては有利であり、一方、2GHz帯を使用する場合は、逆にアンテナと同一端から第2の回路基板と接続した場合に、携帯電話を開いた場合に第2の筐体が励振するためアンテナにとっては有利である。
【0044】
本実施の形態において、第1の無線部をWCDMA(2GHz帯)の無線部とし、第2の無線部をPDC(800MHz帯)として考えると、携帯電話を折り畳んだ状態における効果は同様であるが、WCDMA用のアンテナの給電点が細線同軸29と第1の回路基板24との接続位置に近く、逆にPDC用のアンテナ給電点が細線同軸29と第1の回路基板24との接続位置から遠いため、携帯電話を開いた時に、いずれの周波数でも第2の筐体を励振することができ、高利得で広帯域なアンテナを実現することができる。
【0045】
以上に説明したように、本実施の形態によるアンテナ装置によれば、従来のアンテナよりアンテナ特性をより良好にすることができるため、特性を落とすことなく小型化することができるという利点がある。
【0046】
本発明の第3の実施の形態によるアンテナ装置について図3A〜図3Dまでを参照しながら説明を行う。図3Aは、本実施の形態によるアンテナ装置を内蔵した折り畳み式の携帯電話の正面図であり、図3Bは、携帯電話内のアンテナ装置の位置を明示した図であり、図3Cは、アンテナ装置と無線部との関係を示す機能ブロック図であり、図3Dは、各切換部の切換えの手順を示したフローチャート図である。
【0047】
本実施の形態によるアンテナ装置を組み込んだ携帯電話の基本的な構成は、上記第2の実施の形態による携帯電話とほぼ同じであるが、図3B及び図3Cに示すように、放射導体33は、第2の筐体32側の内部であってヒンジ部38付近に配置されており、第1の回路基板34と第2の回路基板37とは、細線同軸39によって、それぞれヒンジ部38側の一端側に接続されている。その他、第1の回路基板24、第2の回路基板37、表示部36の配置は、第2の実施の形態による携帯電話と同様である。
【0048】
放射導体33の一端は、第1の無線部312から給電され、もう一端は、第2の無線部313から給電されている。また、放射導体33と第1の無線部312との間には第1の切換部310が、放射導体33と第1の無線部313との間には第2の切換部311が設けられている。
【0049】
第1の切換部310及び第2の切換部311は、制御部314からの制御信号によって、図3D(a)、(b)にも示されるように、以下のように制御される。処理が開始され(ステップS1:start)、ステップS2において、第1の無線部312を使用する場合は(ステップS2)、ステップS4に進み、第1の切換部310は、第1の無線部312と放射導体33とを接続し(図3D(b)の状態2)、第2の切換部311は、第2の無線部313と放射導体33とを切断し放射導体33と接地導体である第2の回路基板のGNDと接続する(図3D(b)の状態2)。第2の無線部313を使用する場合は(ステップS2)、ステップS3に進み、第1の切換部310は第1の無線部312と放射導体33の接続を切断し、第2の切換部311は、放射33と第2の回路基板のGNDとの接続を切断し、放射導体33と第2の無線部313とを接続する(図3D(b)の状態1)。
【0050】
上記の構成によって、第2の実施の形態と同様に、放射導体33は、第1の無線部312にとっては、先端短絡型の変形の折り返しモノポールアンテナとして動作し、第2の無線部313にとっては、先端開放の逆Lアンテナとして動作する。また、本実施の形態は、放射導体が第2の筐体32に内蔵されているため、通話時にアンテナに手がかかりにくく、アンテナ特性の劣化量が少ないという利点がある。
【0051】
図4A〜図4Dまでは、本発明の第4の実施の形態によるアンテナ装置を備えた携帯電話を示す図である。図4Aは、アンテナ装置を内蔵した折り畳み式の携帯電話の正面図であり、図4Bは携帯電話内のアンテナ装置の位置を示す図であり、図4Cはアンテナ装置と無線部との関係を示す図である。図4Dは切替え装置の一構成例を示す図であり、図4Eは、切換装置の制御方法の一例を示したフローチャート図である。
【0052】
第4の実施の形態と第2の実施の形態とにおける異なる点は、切換装置414の有無と第1の回路基板44と第2の回路基板47とが細線同軸ではなくFPC49により接続されている点と、開閉の検出手段419及び磁石420が追加されている点で異なる。図4Dに簡略化して示したように、切換装置414は、スイッチ416とコイル417、コンデンサ418と回路パターン(配線)等から構成されており、制御部415からの制御信号によって、第2のフィルタ411と第1の回路基板のGNDとの接続条件を、状態1、状態2、状態3の3つの状態に切換えることができる。各状態は、以下のように決定されている。切換装置414は、状態1では第2のフィルタ411と第1の回路基板GNDとをそのまま接続し、状態2では第2のフィルタ411と第1の回路基板のGNDとをコイル417を介して接続し、状態3では第2のフィルタ411と第1の回路基板のGNDとをコンデンサ418を介して接続する。
【0053】
上記の構成によって、第2の実施の形態で説明した利点があることはもちろんであるが、本実施の形態では、切換装置414を設けたことによって、以下に説明するような利点が追加される。すなわち、第1の無線部412から見た放射導体43は、切換装置414が状態1の場合は、第2の実施の形態による技術と同様に、変形の1/2λ折り返しモノポールとして動作する。状態2の場合は、コイル417を介してGNDと接続しているため、状態1と比較するとアンテナの共振周波数は低くなる方向へシフトする。状態3の場合は、コンデンサ418を介してGNDと接続しているため、状態1と比較すると、アンテナの共振周波数は高くなる方向へシフトする。
【0054】
図4Eに示すように、ステップS11において処理をStartし、ステップS12において、第1の無線部412を使用するか第2の無線部413を使用するかを判定し、第1の無線部412を使用する場合は処理を終了する(ステップS19)。第2の無線部413を使用し、ステップS14において携帯電話が閉じているか否かを判定し、閉じている場合には、ステップS15に進み切換装置414を状態1にする。開いている場合には、ステップS16に進み、通話中か否かを判定する。通話中でない場合は、ステップS17において切換装置414を状態2とし、通話中であればステップS18に進み切換装置414を状態3とし、処理を終了する(ステップS19:end)。
【0055】
この構成によるメリットは、アンテナの共振周波数がずれた場合に、切換装置414を制御することによって、アンテナの共振周波数を補正できる点が挙げられる。例えば、折り畳み式の携帯電話のヒンジ部にアンテナが配置されている場合は、携帯電話を閉じた状態から開いた状態にした場合に、アンテナの共振周波数は低い方へずれることが多い。これは、携帯電話を開くことによって、表部側の筐体がアンテナに近づくことが原因であるが、本実施の形態による技術を使用すると、例えば開閉の検出手段419、磁石420が近接することによって、携帯電話が閉じていることを判断し、磁石420が離れていることから携帯電話が開いていることを判断するが、この情報を元に、制御部415は、制御信号によって携帯電話が閉じた状態の時は、切換装置414を状態2にし、また、開いた状態の時は、切換装置414は状態1にする。
【0056】
携帯電話のアンテナにおいては、通話時に人の頭や手の影響によって共振周波数が低い方へずれることが知られているが、通話時には切換部の状態を状態3にすることによって、アンテナの共振周波数のずれを補正することができる。
【0057】
図5Aから図5Cまでは、本発明の第5の実施の形態によるアンテナ装置を含む携帯電話を示す図である。図5Aは、アンテナ装置を内蔵した折り畳み式の携帯電話の正面図であり、図5Bは携帯電話内のアンテナ装置の位置を示す図であり、図5Cはアンテナ装置と無線部との関係を示す図であり、図5Dは切換部の動作を示したフローチャート図である。
【0058】
第2の実施の形態とは異なり、本実施の形態は、マルチバンド対応の無線部に対して、それぞれの周波数帯ごとに1つの放射導体に給電する。第1の筐体51内部のヒンジ部58付近に配置される放射導体53の一端は、第1の給電部515によって給電され、逆側の一端から第2の給電部516によって給電されている。第1の給電部515及び第2の給電部516は、スイッチ等から構成される切換部512と接続されており、切換部512はトライバンド対応の無線部513に接続されている。
【0059】
切換部512は、制御部514からの制御信号によって、次のように2つの状態に切換える、その2つの状態を状態1と状態2と定義すると、状態1では、無線部513と第1の給電部515を接続し、状態2では無線部513と第2の給電部516とを接続するように制御される。
【0060】
また、第1の給電部515と切換部512との間には、第1のフィルタ510が配置されており、放射導体53は第2の給電部516と切換部512との間で、第2のフィルタ511を介して第1の回路基板のGNDと接続されている。第1のフィルタ510と第2のフィルタ511とは、同じフィルタであり、無線部513で使用する第1の周波数f51では、インピーダンスが100Ω以上であり、第2の周波数帯f52及び第3の周波数f53ではインピーダンスが低く、略0Ωである。
【0061】
具体的な例を挙げると、無線部513を海外の携帯電話の方式であるGSMの無線部とし、第1の周波数f51をGSM900帯、第2の周波数f52をDSC1800帯、第3の周波数f53をPCS1900帯とする。切換部512は、制御部514によって制御されるが、その制御手順を図5Dのフローチャート図を参照しつつ説明する。図5Dに示すように、処理を開始(ステップS21:start)、ステップS22において、GSM900帯又はDCS1800帯或いはPCS1900帯の電波を使用するのかを判定する。
【0062】
ここで、GSM900帯の電波を使用して通信するときは、ステップS23に進み、制御部514は切換部512に状態2にするように制御信号を送り、切換部512は無線部513と第2の給電部516を接続する。放射導体53は第1のフィルタ510で略開放端と等価になっており、第2の給電部からみた放射導体53の電気長は略1/4λに設計されており、放射導体53は1/4λの逆Lアンテナとして動作する。
【0063】
一方、DCS1800帯或いはPCS1900帯の電波を使用する場合、ステップS24に進み、制御部514は、切換部512に状態1にするように制御信号を送り、切換部512は無線部513と第1の給電部515を接続する。DCS1800及びPCS1900の周波数帯では第1の給電部515からみた放射導体53の先端は、第1の回路基板のGNDで短絡されているものと等価である。DSC1800帯及びPCS1900帯は、GSM900帯の約2倍の周波数であるため、放射導体の電気長はDSC1800帯及びPCS1900帯では、約1/2λとなり、変形の1/2λ折り返しモノポールアンテナとして動作する。そして、動作を終了する(ステップS25)。状態1及び2に関する説明は図5C(b)に示す。
【0064】
上記の構成によると、従来のGSM900用の放射導体とDCS1800帯及び/PCS1900帯用の放射導体をそれぞれ用意し、アンテナを形成する場合と比較してアンテナを小型化することが可能である。またDCS1800及びPCS1900のアンテナ特性は、変形の折り返しモノポールアンテナを使用することによって、アンテナのインピーダンスをハイインピーダンスにすることができるため、従来の逆Lアンテナと比較して、広帯域で高利得なアンテナにすることができる。さらに、第2の実施の形態による技術と同様に、それぞれの周波数帯のアンテナに有利になるようにそれぞれの給電点を配置できるため、アンテナのより一層の小型化が可能になる。また、それぞれの給電点に対して整合回路を設けることによって、それぞれのアンテナのインピーダンスを良好にできる。
【0065】
図6A〜図6Dは、本発明の第6の実施の形態によるアンテナ装置を示す図である。図6Aは、アンテナ装置を内蔵した折り畳み式の携帯電話の正面図であり、図6Bは携帯電話内のアンテナ装置の位置を示す図であり、図6Cは、アンテナ装置と無線部との関係を示す図である。図6Dは、切換装置の一構成例を示す図である。これらの構成は、第5の実施の形態とほぼ同様であるが、第2のフィルタ611と第1の回路基板のGNDとの間に切換装置615を設けた点が異なる。
【0066】
図6Dに示すように、切換装置615は、スイッチ620とコイル618、コンデンサ619と回路パターン等から構成されており、その制御方法は第3の実施の形態と同様であり、制御部614からの制御信号によって、第2のフィルタ611と第1の回路基板のGNDとの接続条件を変更する。切換装置615は、状態1では第2のフィルタ611と第1の回路基板GNDとをそのまま接続し、状態2では第2のフィルタ611と第1の回路基板のGNDとをコイル618を介して接続し、状態3では第2のフィルタ611と第1の回路基板のGNDとをコンデンサ619を介して接続する。
【0067】
上記の構成によって、第5の実施の形態による効果があることはもちろんであるが、切換装置615を設けたことによって、次のような効果が追加される。無線部613から見た放射導体63は、切換装置615が状態1の場合は第5の実施の形態と同様に、変形の1/2λ折り返しモノポールとして動作する。状態2の場合は、コイル618を介してGNDと接続しているため、状態1と比較するとアンテナの共振周波数は低くなる方向へシフトする。状態3の場合は、コンデンサ619を介してGNDと接続しているため、状態1と比較するとアンテナの共振周波数は高くなる方向へシフトする。
【0068】
この構成によるメリットは、第4の実施の形態で述べたものと同様であり、それとは別に、アンテナの共振周波数を切換装置615によってチューニングできる点がある。具体的な例を挙げて説明すると、例えば無線部613をGSM900帯/DSC1800帯/PCS1900帯/WCDMA帯のクワッドバンド対応の無線部とし、第1の周波数帯f61をGSM900帯、第2の周波数帯f62をDCS1800帯、第3の周波数帯f63を、第4の周波数帯f64をWCDMA帯とする。放射導体63の電気長は、GSM900帯の約1/4λかつPCS1900帯の1/2λに設計されている。GSM900帯を使用する場合は、切換部612は無線部613と第1のフィルタ610との接続を切断し、無線部613と第2の給電部617とを接続する、つまり放射導体63は第2の給電部617から給電され、1/4λの逆Lアンテナとして動作する。
【0069】
一方、DCS1800帯、PCS1900帯及びWCDMA帯を使用する使用する場合は、切換部612は無線部613と第2の給電部617との接続を切断し、無線部613と第1のフィルタ610とを接続する。つまり放射導体63は第1の給電部616から給電され、1/2λ変形折り返しモノポールアンテナとして動作するが、その共振周波数は、切換装置615の接続状態によって調整することができる。
【0070】
第4の実施の形態において説明したように、スイッチ620がコイル618を介して、第1の回路基板のGNDと接続されている時が共振周波数は一番低く、次に何も介さないで第1の回路基板64のGNDと接続されている時であり、最も共振周波数が高いのは、スイッチがコンデンサ619を介して第1の回路基板64のGNDに接続されている時である。また、各バンドに関しても、DSC1800帯の周波数が最も低く、次にPCS1900帯、WCDMA帯と続く。切換装置615を用いて、使用する周波数帯ごとにアンテナの共振周波数をチューニングすることよって、より高利得なアンテナにすることができる。
【0071】
図7Aから図7Dまでは、本発明の第7の実施の形態によるアンテナ装置を示す図である。また図7Aは、アンテナ装置を内蔵した携帯電話の斜視図であり、図7Bは携帯電話内部のアンテナ装置と回路基板との位置関係を示す図であり、図7Cは図7Bにおける放射導体の形状をメアンダ状にしたものである。携帯電話の構成は、第1の実施の形態と全く同じであるが放射導体72に切り込みを入れることによって周波数調整をしている点が異なる。また図7Dのようにアンテナをメアンダ状にすることによってアンテナの共振周波数を下げることが可能である。
【0072】
以上に説明したように、本実施の形態によるアンテナ装置によれば、放射導体の両端が、異なる周波数を使用し2つの無線部からそれぞれ給電されることによって、2つの異なる周波数でアンテナとして動作させることができる。従って、1つの放射導体で2つの周波数を共振できるため、アンテナが必要とする体積を大幅に減らすことができる。
【0073】
また、開閉可能な携帯電話のヒンジ部にアンテナを設けた構成である場合は、携帯電話を開いた場合に、アンテナが実装されていない方の筐体がアンテナに近づくため、アンテナ特性も影響を受ける。使用するアンテナの周波数が800MHz帯などの比較的低い場合は第1の回路基板上端部に設けられた上下基板接続手段との接点は、第1の回路基板の上端部にあるアンテナ給電点とは逆側の一端側に配置されることによって、携帯電話を開いた時のアンテナ特性を良好にすることができる。これはアンテナ給電点からみた第2の回路基板は、高周波的に、ある程度の電気長を伴って接続されていることになり、なおかつ、上下筐体接続手段及び第2の回路基板を含めた第2の筐体の電気長がその周波数の約1/4波長にすることができ、その結果、第2の筐体を励振させることができるためである。
【0074】
また、アンテナの給電点と同一側の一端に配置するとアンテナ特性は逆に劣化する。これはアンテナの給電点に対して第2の筐体を短い電気長を伴って接続されることによって第2の筐体が接地導体の一部、つまりほぼアンテナに対してGNDとして動作し、携帯電話が開いた時にアンテナとGNDが近づくことによって特性が劣化するものである。
【0075】
また、使用する周波数が2GHz帯などの比較的高い場合は、800MHz帯より波長が約半分となるため、上下基板接続手段をアンテナ給電点と逆側に配置した場合、アンテナ給電点からみた、上下基板接続手段及び第2の回路基板を含めた第2の筐体の電気長は約1/2波長になってしまうため、アンテナ特性を良好にする効果はほとんど期待できない。逆に上下筐体の接続手段をアンテナの給電部と同一側に配置した場合は、上記電気長は約1/4波長に近づけることができるため、前述と同様の効果からアンテナ特性を良好にすることができる。上記のように各周波数に対応する給電部をそれぞれ最適に配置することによって携帯電話を開いた時のアンテナ特性を良好にすることができる。
【0076】
図8Aから図8Eまでは、本発明の第8の実施の形態によるアンテナ装置を示す図である。図8Aは、第1の実施の形態における第1の給電部83はそのままで、第2の給電部84を回路基板81の端から回路基板81の幅方向の長さLの1/4だけ回路基板の内側に移動させた構成を示す図である。
【0077】
一般的に、携帯電話に採用されているほとんどのアンテナは、筐体側にも電流を流し、アンテナとして動作させている。また、多くのアンテナの給電点は、接地導体の端部に設けられるように設計されることが多い。これは、筐体電流を有効に使用することと、アンテナをできるだけGNDから離すこと、携帯電話においてアンテナに与えられた体積を最大限に使用すること、を主な目的としている。
【0078】
アンテナの給電点が端ではなく内側にあると、図8Bに示すように、筐体電流は両端に向かってそれぞれ流れる。これらを、それぞれ筐体電流Aと筐体電流Bとすると、方向が逆であるため2つの電流が打ち消しあってしまう。従って、単純に考えると筐体の電流は筐体電流Aと筐体電流Bの差分となってしまい、筐体電流を最大限に使用することができない。つまり一般的な大きさの携帯電話において、ヒンジ部にアンテナがある場合は、給電点は、できるだけ端である方が筐体電流を有効に使用できるという点で有利であるが、幅方向の1/4の長さ程度までであれば、給電点が内側にあってもそれほど特性が劣化することはない。
【0079】
一方で、アンテナが端にある場合は、通話時等にアンテナに、手や指がかかってしまうことが多いため、アンテナの特性が劣化することが知られており、給電点を内側に設計することでその影響が軽減できる。
【0080】
以上の2つの点から、アンテナの給電点を接地導体の端から幅方向の長さのおおよそ1/4より短い距離に設定し、待ち受け時特性と通話時特性のいずれを重視するかによって、その範囲内で給電点を定めることにより、アンテナ特性をバランス良く良好にすることができる。
【0081】
また、アンテナ形状としては、図8C(第1と第2の給電点83、84が放射導体82の略両端にそれぞれ配置されている構成)、図8D(第1と第2の給電点83、84が放射導体82の略両端よりもやや内側に入ってそれぞれ配置されている構成)、図8E(放射導体82が、回路基板81側で、コの字状の形状をしている構成)に示すような形状でも良く、上記と同様の効果を得ることができる。また、接地導体の端から給電点までの距離を1/4Lよりも長くしたからといって上記本発明の効果が全くなくなるわけではないが、筐体電流の打ち消しあう量が多くなるため、待ち受け時のアンテナを良好にすることが難しくなるため、そのような位置に給電点を配置しないようにする。
【0082】
尚、携帯電話機としては、折り畳み型、ストレート型、スライド型などの種々の形式に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、種々のアンテナ装置及びアンテナ装置を用いた無線通信機に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1A】本発明の第1の実施の形態によるアンテナ装置を示す図であり、(a)はアンテナ装置を内蔵した携帯電話の斜視図であり、(b)は携帯電話内部のアンテナ装置と回路基板の位置関係を示す図であり、(c)はアンテナ装置の無線部との関係を示した図である。
【図1B】(a)、(b)は、第1の無線部及び第2の無線部のインピーダンスを示した図である。
【図1C】図1C(a)は、第1の無線部及び第2の無線部の構成を簡単に示した図であり、図1C(b)は、図1C(a)内の整合回路の一例を示した図である。
【図1D】図1D(a)、(b)は、グランドパターン(接地導体)と回路基板との配置例を示す図である。
【図2A】本発明の第2の実施の形態によるアンテナ装置を示す図である。図2A(a)は、アンテナ装置を内蔵した折り畳み式の携帯電話の正面図であり、図2A(b)は、携帯電話内のアンテナ装置の配置例を示す図である。
【図2B】図2Bは、アンテナ装置と無線部との関係を示す図である。
【図2C】図2C(a)、(b)は、携帯電話を開いた状態と閉じた状態とにおける放射導体と第2の筐体(アンテナが配置されていない方の筐体)との位置関係を示す図である。
【図2D】第1の信号選択手段及び第2の信号選択手段の一構成例を示す図である。
【図3A】本発明の第3の実施の形態によるアンテナ装置を示す図である。図3Aはアンテナ装置を内蔵した折り畳み式の携帯電話の正面図である。
【図3B】図3Bは携帯電話内のアンテナ装置の位置を示す図である。
【図3C】図3Cはアンテナ装置と無線部との関係を示す図である。
【図3D】図3D(a)は各切換部の切換えの手順を示したフローチャート図であり、(b)は状態に関する説明図である。
【図4A】本発明の第4の実施の形態によるアンテナ装置を示す図である。図4Aはアンテナ装置を内蔵した折り畳み式の携帯電話の正面図である。
【図4B】図4Bは携帯電話内のアンテナ装置の位置を示す図である。
【図4C】図4Cはアンテナ装置と無線部との関係を示す図である。
【図4D】図4Dは切替え装置の構成を示した図である。
【図4E】図4Eは切換装置の制御方法を示したフローチャー図である。
【図5A】本発明の第5の実施の形態によるアンテナ装置を示す図である。図5Aはアンテナ装置を内蔵した折り畳み式の携帯電話の正面図である。
【図5B】図5Bは携帯電話内のアンテナ装置の位置を示す図である。
【図5C】図5Cはアンテナ装置と無線部との関係を示す図である。
【図5D】(a)は、切換部の動作を示したフローチャート図である。(b)は状態1、2を説明する図である。
【図6A】本発明の第6の実施の形態によるアンテナ装置を示す図である。図6Aはアンテナ装置を内蔵した折り畳み式の携帯電話の正面図である。
【図6B】図6Bは携帯電話内のアンテナ装置の位置を示す図である。
【図6C】図6Cはアンテナ装置と無線部との関係を示す図である。
【図6D】図6Dは切換装置の構成を示した図である。
【図7A】本発明の第7の実施の形態によるアンテナ装置を示す図である。図7Aはアンテナ装置を内蔵した携帯電話の斜視図である。
【図7B】図7Bは携帯電話内部のアンテナ装置と回路基板の位置関係を示す図である。
【図7C】図7Cはアンテナ装置と無線部との関係を示す図である。
【図7D】図7Dは図7Cにおける放射導体の形状をメアンダ状にしたものである。
【図8A】本発明の第8の実施の形態によるアンテナ装置の一構成例を示す図である。
【図8B】本発明の第8の実施の形態によるアンテナ装置の一構成例を示す図であり、図8Aの第1変形例である。
【図8C】本発明の第8の実施の形態によるアンテナ装置の一構成例を示す図であり、図8Aの第2変形例である。
【図8D】本発明の第8の実施の形態によるアンテナ装置の一構成例を示す図であり、図8Aの第3変形例である。
【図8E】本発明の第8の実施の形態によるアンテナ装置の一構成例を示す図であり、図8Aの第4変形例である。
【符号の説明】
【0085】
筐体…11
第1の筐体…21,31,41,51,61
第2の筐体…22,32,42,52,62
放射導体…12,23,33,43,53,63,72,82
回路基板…13,73,81
第1の回路基板…24,34,44,54,64
第2の回路基板…27,37,47,57,67,77
キー部…25,35,45,55,65
表示部…26,36,46,56,66
ヒンジ部…28,38,48,58,68
細線同軸…29,39,49,59
FPC…49,69
第1のフィルタ…214,410,510,610
第2のフィルタ…215,411,511,611
第1の無線部…14,212,312,412,74
第2の無線部…15,213,313,413,75
無線部…513,613
制御部…314,415,514,614
切換装置…414,615
切換部…512,612
スイッチ…416,620
コイル…417,618
コンデンサ…418,619
第1の送信回路…16
第2の送信回路…110
第1の受信回路…17
第2の受信回路…111
第1の分波器…18
第2の分波器…112
第1の整合回路…19
第2の整合回路…113
開閉検出手段…419
磁石…420

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地導体とある間隔を隔てて対向して配置される放射導体を有するアンテナ装置であって、
該放射導体は、第1の周波数を使用する第1の無線部から第1の給電部において給電され、さらに、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を使用する第2の無線部から第2の給電部において給電され、前記第2の周波数における前記第1の無線部のインピーダンスが低インピーダンスであり、前記第1の周波数における前記第2の無線部のインピーダンスが高インピーダンスであることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
接地導体とある間隔を隔てて対向して配置される放射導体を有するアンテナ装置であって、
該放射導体は第1の周波数を使用する第1の無線部から第1の給電部において給電され、さらに、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を使用する第2の無線部から第2の給電部において給電され、
前記第1の無線部と前記放射導体との間に設けられた第1の信号選択手段と、前記第2の無線部と前記放射導体の間に設けられた第2の信号選択手段と、を有し、
前記接地導体の一端から前記第1の給電部までの距離と、前記接地導体の逆側の一端から第2の給電部までの距離と、のいずれか少なくとも一方が、前記接地導体における前記放射導体と対向する一辺の長さの、1/4より短いことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1の信号選択手段は、前記第1の周波数では低インピーダンスとなり、前記第2の周波数では高インピーダンスとなる第1のフィルタを介して前記第1の無線部と前記放射導体とを接続し、
前記第2の信号選択手段は、該第2の信号選択手段の内部で前記第2の無線部と接続されている前記放射導体を前記第1の周波数では低インピーダンスとなり、前記第2の周波数では高インピーダンスとなる第2のフィルタを介して前記接地導体と接続することを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1信号選択手段は、前記放射導体と前記第1の無線部とを接続する状態と切断する状態とを含む少なくとも2つの状態を切換えるスイッチであり、
前記第2の信号選択手段は、前記放射導体と前記第2の無線部とを接続する状態と前記放射導体と前記第2の無線部とを切断し、かつ、前記放射導体と前記接地導体とを接続する状態を含む少なくともの2つの状態を切換えるスイッチであることを特徴とする請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第2のフィルタと前記接地導体との間に負荷切換部を設け、
該負荷切換部により、前記第2のフィルタと前記接地導体との負荷接続状態を切換えることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1のフィルタと前記第2のファイルタとが同じ周波数特性を有することを特徴とする請求項3又は5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記放射導体の電気長を前記第1の周波数の1/2波長に、かつ、前記第2の周波数の1/4波長に設計することによって、前記放射導体を、前記第1の無線部では変形の1/2波長折り返しモノポールアンテナとして動作させ、前記第2の無線部では1/4波長逆Lアンテナとして動作させることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1の無線部と前記第2の無線部とは1つの無線部内に統合され、該統合された無線部を、前記第1の周波数では前記第1の給電部に接続し、前記第2の周波数では前記第2の給電部に接続する信号切換部を有することを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のアンテナ装置を有し、
キー操作部及び第1の回路基板を内蔵する第1の筐体の上端部と、表示部及び第2の回路基板を内蔵する第2の筐体の下端部と、がヒンジ部によって接続されており、前記第1の回路基板の上端部と前記第2の回路基板の下端部とが、上下基板接続手段によって接続されている携帯無線機において、
前記放射導体が前記第1の筐体の上端部に配置されていることを特徴とする携帯無線機。
【請求項10】
前記第1の給電部が前記第1の回路基板の上端部の一端に配置されており、前記第2の給電部が前記第1の回路基板の上端部の逆側の一端に配置されている携帯無線機において、
前記上下基板接続手段が前記第1の回路基板の上端部において、使用する周波数が高い方の給電部側の一端側に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の携帯無線機。
【請求項11】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のアンテナ装置を有し、
キー部及び第1の回路基板を内蔵する第1の筐体の上端部と、表示部及び第2の回路基板を内蔵する第2の筐体の下端部と、がヒンジ部によって接続されており、前記第1の回路基板の上端部と前記第2の回路基板の下端部とが上下基板接続装置によって接続されている携帯無線機において、
前記放射導体が前記第2の筐体の下端部に配置されていることを特徴とする携帯無線機。
【請求項12】
前記第1の給電部が前記第2の回路基板の下端部の一端に配置されており、前記第2の給電部が前記第2の回路基板下端部の逆側の一端に配置されており、
前記上下基板接続手段が前記第の回路基板の下端部において、使用する周波数が高い方の給電部側の一端側に接続されていることを特徴とする請求項11に記載の携帯無線機。
【請求項13】
請求項1から8までの記載のいずれか1項に記載のアンテナ装置を搭載したことを特徴とするストレート型通信無線機。
【請求項14】
請求項1から8までの記載のいずれか1項に記載のアンテナ装置を搭載したことを特徴とするスライド式通信無線機。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【公開番号】特開2008−294635(P2008−294635A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136672(P2007−136672)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】