説明

アンテナ装置

【課題】、高い共振周波数で動作するアンテナ素子の放射効率を向上させることができ、プリント基板上への固定も容易な複共振型のアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、第1の誘電率を有する第1の基体と、第1の誘電率よりも低い第2の誘電率を有し第1の基体と一体化された第2の基体と、第1の基体の主面に形成され第1の共振周波数で共振する第1のアンテナ素子として機能する第1の放射導体と、第2の基体の主面に形成され第1の共振周波数よりも高い第2の共振周波数で共振する第2のアンテナ素子として機能する第2の放射導体と、第1の放射導体の一端付近に接続された第1のスルーホール導体と、第2の放射導体の一端付近に接続された第2のスルーホール導体とを備えている。第1及び第2の放射導体は、一端同士が第1の基体と第2の基体との境界で接続され、且つ、境界付近において互いに逆方向に分かれるように延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関し、特に、複数のアンテナ共振点を有する複共振アンテナの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の無線通信機器に内蔵される表面実装型アンテナの一つとして複共振アンテナが注目されている(例えば、特許文献1参照)。複共振アンテナは、誘電体基体上に複数の放射導体が形成され、各放射導体の給電点が共通且つ共振周波数が異なるように構成されたものであり、例えば2つの放射導体の一方をGPS用アンテナ、他方を無線LAN用アンテナとして使用することができる。また、周波数帯域の一部分が重なり合うように2つの共振周波数を僅かにずらして共振周波数の広帯域化を図ることも可能である。
【0003】
また、特許文献2には、無給電側放射電極と給電側放射電極との間の容量結合を弱め、2つの放射電極の共振の相互干渉を抑制することを目的として、誘電率が異なる第1及び第2の誘電体基体を一体化させた基体を用い、第1の誘電体基体側に無給電側放射電極を形成し、第2の誘電体基体側に給電側放射電極を形成した複共振アンテナが開示されている。
【特許文献1】特許第4044302号公報
【特許文献2】特許第3596526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複共振アンテナの設計では、相対的に低い共振周波数で動作するアンテナとそれよりも高い共振周波数で動作するアンテナを得るため、所望の共振周波数f、f、・・・、fの各アンテナ素子を一つの給電源から分岐させる構造が知られている。この種の複共振アンテナでは、最も低い共振周波数fで動作するアンテナ素子のサイズが最も大きいため、その設計では共振周波数の低い側のアンテナ素子を最初に設計した後、それよりも高い共振周波数側のアンテナ素子を順次設計していく方法がとられることが多い。
【0005】
実装面積等の制約から共振周波数が低い側のアンテナ素子の設計が物理的に困難な場合、小型化の手法の一つとして、基体の材料として誘電率の高い材料を採用することが一般的に行われている。高誘電率の基体を用いた場合には、その波長短縮効果により、誘電率の低い基体に形成した場合よりもアンテナ長の短い小型なアンテナを設計することができる。
【0006】
しかしながら、高誘電率を有する共通の基体上に共振周波数が低い側のアンテナ素子と共振周波数が高い側のアンテナ素子とを一緒に配置すると、共振周波数が高い側のアンテナ素子にも波長短縮効果が作用する結果、共振周波数が低い側のアンテナ素子に比べ共振周波数が高い側のアンテナ素子が小さくなりすぎてしまい、放射特性が大幅に低下するという問題がある。特に、低い側の共振周波数fと高い側の共振周波数f〜fが離れていればいるほどこの問題は顕著となる。たとえば携帯電話を例に挙げると、低い側の共振周波数fが850MHzの通信帯域のモノポールアンテナと高い側の共振周波数fnが2.4GHzの通信帯域のモノポールアンテナとを、同じ誘電率の基体に同時に搭載した複共振アンテナの場合、共振周波数の高い側のアンテナ長は低い側のそれに対し、およそ1/3程度になってしまう。
【0007】
また、アンテナの実装では、プリント基板上に半田実装することによって固定する方法や機械的に固定する方法が一般的であるが、アンテナの組み込みの容易性から、機械的な固定によってアンテナをより確実に固定したいという要求や、プリント基板が収容される無線通信装置の筐体に対してアンテナを固定したいという要求が高まっている。しかしながら、高誘電率の材料はセラミックなどの弾性の著しく低い材料であるため、プリント基板や筐体に対して基体の弾性力を利用して機械的に固定することが困難であった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、高い共振周波数で動作するアンテナ素子の放射効率を向上させることができ、プリント基板等への機械的固定も容易且つ確実な複共振型のアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によるアンテナ装置は、第1の誘電率を有する第1の基体と、第1の誘電率よりも低い第2の誘電率を有し第1の基体と一体化された第2の基体と、第1の基体の主面に形成され第1の共振周波数で共振する第1の放射導体と、第2の基体の主面に形成され第1の共振周波数よりも高い第2の共振周波数で共振する第2の放射導体とを備え、第1及び第2の放射導体は、一端同士が第1の基体と第2の基体との境界で接続され、且つ、境界付近において互いに逆方向に分かれるように延設されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、誘電率が高い第1の基体と誘電率が低い第2の基体を一体化した基体を用い、第1の基体上に共振周波数の低い側のアンテナ素子を形成し、第2の基体上に共振周波数の高い側のアンテナ素子を形成しているので、共振周波数の高い側のアンテナ素子が小さくなりすぎてしまい、放射特性が大幅に低下するという問題を解決することができる。すなわち、小型で放射特性に優れた複共振アンテナを実現することができる。さらに、この構成によれば、周波数差の大きな複共振アンテナを実現することができ、本発明による顕著な効果を得ることができる。
【0011】
本発明によるアンテナ装置は、第1の放射導体の一端付近に接続され、第1の基体を貫通する第1のスルーホール導体と、第2の放射導体の一端付近に接続され、第2の基体を貫通する第2のスルーホール導体とをさらに備えることが好ましい。本発明によるアンテナ装置は、第2の放射導体の一端付近に接続され、第2の基体を貫通する第1及び第2のスルーホール導体をさらに備えることもまた好ましい。この場合、第1のスルーホール導体は、給電ラインに接続された給電用スルーホール導体であることが特に好ましく、第2のスルーホール導体は、グランドに接続されたショート用スルーホール導体であることが特に好ましい。この構成によれば、第1及び第2のアンテナ素子を共に逆Fアンテナとする複共振アンテナを実現することができる。
【0012】
本発明において、第2の基体は、プリント基板又はプリント基板を収容する筐体に固定するための固定部材を一体的に備えることが好ましい。この構成によれば、誘電率が低い材料は可撓性が高いという特性を活かして、第2の基体の一部を固定部材として使用していることから、特別な固定具を用意することなく、プリント基板上に機械的に固定することができる。
【0013】
本発明による固定部材は、プリント基板又は筐体に係合される爪構造であることが好ましい。これによれば、弾性力が高いという低誘電率材料の特性を活かして、プリント基板に対する固定構造を容易に実現することができる。本発明の固定部材は、プリント基板又は筐体に設けられた穴に挿入される突起部材であることもまた好ましい。突起部材の先端部を潰して穴から抜けないように加工すれば、プリント基板に対してアンテナを固定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、共振周波数の高い側で動作するアンテナ素子の放射効率を向上させることができ、プリント基板上への固定も容易且つ確実なアンテナ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態によるアンテナ装置100の構造を示す略斜視図である。また、図2は、図1に示したアンテナ装置100の略展開図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、このアンテナ装置100は複共振アンテナであって、第1及び第2の基体11,12からなる基体10と、第1の基体11の上面に形成された第1の放射導体13と、第2の基体12の上面に形成された第2の放射導体14と、第1の放射導体13の一端13a付近に接続された給電用スルーホール導体(第1のスルーホール導体)15と、第2の放射導体14の一端14a付近に接続されたショート用スルーホール導体(第2のスルーホール導体)16と、第1の基体11の底面に形成された給電電極17と、第2の基体12の底面に形成されたグランド電極18とを備えている。
【0018】
基体10は、第1の誘電率εr1を有する第1の基体11と、第1の誘電率εr1よりも低い第2の誘電率εr2を有する第2の基体12からなり、第1の基体11の側面と第2の基体12の側面は接着され、両者は一体化されている。第1の基体11の材料としては、例えばセラミックや樹脂を用いることができ、誘電率εr1は例えば30とすることができるが、これに限定されるものではない。第1の基体11の具体的な材料としては、ポリカABSなどのポリマーアロイにTiOをフィラーとして混合した材料を用いることが好ましい。また、第2の基体12の材料としては、樹脂を用いることが好ましく、その誘電率εr2は例えば3とすることができるが、これに限定されるものではない。第2の基体12の具体的な材料としては、ポリカABSなどのポリマーアロイ材料を用いることが好ましい。このように、第1及び第2の基体11,12が同じ樹脂材料を主成分とする場合には、両者の一体化が容易である。第1及び第2の基体11,12の大きさは、目的とする共振周波数に合わせて適宜設定することができる。
【0019】
第1の放射導体13は、第1の共振周波数fで共振する第1のアンテナ素子ANT1として機能するものであり、そのアンテナ長は第2の放射導体14よりも長い。また、第2の放射導体14は、第1の共振周波数fよりも高い第2の共振周波数fで共振する第2のアンテナ素子ANT2として機能するものであり、そのアンテナ長は第1の放射導体13よりも短い。第1の放射導体13の一端13aと第2の放射導体14の一端14aは、第1の基体11と第2の基体12との境界Bにおいて接続されており、第1の放射導体13と第2の放射導体14は、第1の基体11と第2の基体12との境界Bから互いに逆方向に分かれるように延設されている。第1の放射導体13の他端13b及び第2の放射導体14の他端14bは共に開放端となっている。
【0020】
第1のスルーホール導体15は、第1及び第2のアンテナANT1,ANT2に共通の給電点であり、第1の基体11と第2の基体12との境界B付近に設けられており、第1の基体11を貫通している。第1のスルーホール導体15の上端は第1の放射導体13の一端13aに接続されており、下端は給電電極17を介してプリント基板上の給電ラインに接続されている。第2のスルーホール導体16もまた、第1の基体11と第2の基体12との境界付近に設けられているが、第1のスルーホール導体15と異なり、第2の基体12を貫通している。よって、第2のスルーホール導体16の上端は第2の放射導体14の一端14aに接続されており、下端はグランド電極18を介してプリント基板上のグランドパターンに接続されている。以上の構成により、本実施形態においては、第1及び第2のアンテナ素子ANT1,ANT2が共に逆Fアンテナを構成している。
【0021】
本実施形態では、第1のスルーホール導体15は第1のスルーホール導体11を貫通しており、第2のスルーホール導体16は第2のスルーホール導体12を貫通している。第1及び第2のスルーホール導体15,16が共に第1の基体11を貫通する場合には、スルーホール導体15,16間の電磁界結合が非常に強くなり、各アンテナ素子ANT1,ANT2の帯域幅が狭くなる。また、スルーホール導体15,16間の位置関係がわずかにずれるだけで各アンテナ素子のインピーダンスが大きく変化し、インピーダンスのバラツキが大きくなる。しかしながら、本実施形態のように第1及び第2のスルーホール導体15,16が第1及び第2の基体11,12をそれぞれ貫通している場合には、スルーホール導体間の電磁界結合を抑えることができ、所望の帯域幅を確保することができる。また、スルーホール導体間の位置ずれに起因するインピーダンスのバラツキを抑えることができる。
【0022】
上述したように、本実施形態によるアンテナ装置100は、高域側のアンテナ素子ANT2が形成される第2の基体12の材料として誘電率が比較的低いものを用いている。高域側で高誘電率の基体を用いて高い共振周波数のアンテナを得るためには、アンテナ長を大幅に短くしなければならず、アンテナ長を大幅に短くすると放射効率が大幅に低下するという問題がある。しかし、高域側で低誘電率の材料を用いた場合には、高い共振周波数を得ようとする場合であっても、アンテナ長を比較的長くすることができる。すなわち、高域側のアンテナ素子が必要以上に小型化されることがなく、高域側のアンテナ素子の放射特性を改善することができる。
【0023】
第2のアンテナ素子ANT2のアンテナ長を長くするためには、帯状の第2の放射導体14を折り返し構造とすることが好ましい。上記のように、第2の基体12の誘電率を低くした条件下で所望の共振周波数を得るためには、アンテナ長を長くしなければならないが、基体12の大きさが同じである場合には、所望のアンテナ長を直線的に確保することができない可能性があり、直線的に確保しようとすれば第2の基体12を大きくしなければならないという問題がある。しかし、このような折り返し構造とすれば、第2の基体12を大きくすることなく所望のアンテナ長を確保することができ、高域側のアンテナ素子の放射特性を改善することができる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によるアンテナ装置100は、誘電率が高い第1の基体11と誘電率が低い第2の基体12とを備え、第1の基体11に共振周波数の低い側のアンテナ素子ANT1を形成し、第2の基体12上に共振周波数の高い側のアンテナ素子ANT2を形成しているので、共振周波数の高い側のアンテナ素子ANT2が小さくなりすぎてしまい、放射特性が大幅に低下するという問題を解決することができる。すなわち、小型で放射特性に優れた複共振アンテナを実現することができる。
【0025】
図3は、本発明の第2の実施形態によるアンテナ装置200の構成を示す略斜視図である。
【0026】
図3に示すように、このアンテナ装置200の特徴は、第1及び第2のスルーホール導体15,16の双方が第2の基体12を貫通するように形成されており、各々の一端が共に第2の放射導体14の一端付近に接続されている点にある。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、同一の構成要素に同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0027】
上述したように、第1及び第2のスルーホール導体15,16が共に第1の基体11を貫通する場合には、スルーホール導体15,16間の電磁界結合が非常に強くなり、各アンテナ素子ANT1,ANT2の帯域幅が狭くなる。また、スルーホール導体15,16間の位置関係がわずかにずれるだけで各アンテナ素子のインピーダンスが大きく変化し、インピーダンスのバラツキが大きくなる。しかしながら、本実施形態のように第1及び第2のスルーホール導体15,16の双方が第2の基体12を貫通している場合には、スルーホール導体間の電磁界結合を抑えることができ、所望の帯域幅を確保することができる。また、スルーホール導体間の位置ずれに起因するインピーダンスのバラツキを抑えることができる。
【0028】
図4は、本発明の第3の実施形態によるアンテナ装置300の構成を示す略斜視図である。また、図5は、図4に示したアンテナ装置300の展開図である。
【0029】
図4及び図5に示すように、このアンテナ装置300の特徴は、第1の基体11が第2の基体12に取り囲まれた構造となっており、第2の基体12の長手方向の端部にはプリント基板に対する固定部材12wが形成されている点にある。そのため、基体の大部分が第2の基体12によって構成されており、第1の基体11の側面は露出しておらず、第2の基体12に覆われている。また、その他の構成については第1の実施形態と同様であるため、同一の構成要素に同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0030】
本実施形態のアンテナ装置300は、プリント基板上に自身を固定するための固定部材12wを備えている。固定部材12wは第2の基体12の一部であって、第2の基体12の底面側から下方に突出する爪構造である。一般に誘電率の高い材料は硬質で弾性力が小さいため、固定部材として使用することが非常に困難であるのに対し、誘電率の低い材料は軟質で弾性力が大きいため、固定部材12wとしての使用に適している。本実施形態においては、誘電率が高い第1の基体11には爪構造を設けず、誘電率が低い第2の基体12に爪構造を設けることで、アンテナ装置300をプリント基板上に機械的に固定することができる。
【0031】
以上説明したように、第3の実施形態によるアンテナ装置300は、誘電率が低く可撓性が高い第2の基体12の一部をプリント基板上へ固定するための固定部材として使用していることから、第1の実施形態によるアンテナ装置100の作用効果に加えて、特別な固定具を使用することなく、アンテナ装置300をプリント基板上に機械的に固定することができる。
【0032】
また、第3の実施形態によれば、第1の基体11が第2の基体12に組み込まれており、第1の基体11と第2の基体12とが複数の側面で接着されていることから、落下衝撃等の外的応力が加えられても両者が分離することがなく、信頼性の高いアンテナ装置を提供することができる。
【0033】
図6は、本発明の第4の実施形態によるアンテナ装置400の構成を示す略斜視図である。また、図7は、アンテナ装置400の組み込み構造の一例を示す略断面図である。
【0034】
図6に示すように、アンテナ装置400は、第2の基体12がブロック形状ではなく、略U字状に湾曲した板状の基体を用いるものであり、第2の実施形態と同様、板状の基体の大部分が第2の基体12によって構成され、平坦領域の一部分に第1の基体11が組み込まれている点を特徴としている。そのため、第2の基体12は第1の基体11の周囲を取り囲んでいる。そして、図7に示すように、第2の基体11の湾曲した端部に形成された爪構造12xがプリント基板20に嵌合する構造となっている。
【0035】
図7に示すように、アンテナ装置400をプリント基板20に固定したとき、アンテナ装置400のうち、放射導体13,14が形成された基体の主要部はプリント基板20から浮き上がった状態となっている。しかし、本実施形態においては、第1及び第2のスルーホール導体15,16にピン21,22がそれぞれ挿入されており、ピン21,22の先端がプリント基板20上の給電ラインやグランドに接触するので、それらに対する電気的接続が確保される。
【0036】
図8は、アンテナ装置400の組み込み構造の他の例を示す略断面図である。
【0037】
図8に示すように、本実施形態によるアンテナ装置400は、第2の基体11の湾曲した端部に形成された爪構造12yがプリント基板20を収容するための筐体23に嵌合する構造となっている。上記のように、第2の基体12は第1の基体11よりも弾性力があることから、爪構造12yを設けることにより筐体23との係合が可能である。筐体23内にプリント基板20を収容したとき、筐体23に固定されたアンテナ装置400のうち、放射導体13,14が形成された基体の主要部はプリント基板20から浮き上がった状態となっている。しかし、本実施形態においては、第1及び第2のスルーホール導体15,16にピン21,22がそれぞれ挿入されており、ピン21,22の先端がプリント基板20上の給電ラインやグランドに接触するので、それらに対する電気的接続が確保される。
【0038】
図9は、アンテナ装置400の組み込み構造のさらに他の例を示す略断面図である。
【0039】
図9に示すように、本実施形態によるアンテナ装置400は、第2の基体11の湾曲した端部に形成された突起部材20zの先端部がプリント基板20上の穴20aに挿入され、プリント基板20上に固定されている。上記のように、第2の基体11は樹脂であり、熱可塑性を有することから、プリント基板20上の穴20aに突起部材12zを貫通させ、先端部を熱プレスすることにより、先端部をつぶすことができ、突起部材20zが穴20aから抜けないように変形させて、プリント基板20と係合させることが可能である。アンテナ装置400をプリント基板20に固定したとき、プリント基板20に固定されたアンテナ装置400のうち、放射導体13,14が形成された基体の主要部はプリント基板20から浮き上がった状態となっている。しかし、本実施形態においては、第1及び第2のスルーホール導体15,16にピン21,22がそれぞれ挿入されており、ピン21,22の先端がプリント基板20上の給電ラインやグランドに接触するので、それらに対する電気的接続が確保される。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によるアンテナ装置400は、誘電率が相対的に高い第1の基体11と誘電率が相対的に低い第2の基体12とを備え、第1の基体11上に共振周波数の低い側のアンテナ素子ANT1を形成し、第2の基体12上に共振周波数の高い側のアンテナ素子ANT2を形成しているので、共振周波数の高い側のアンテナ素子ANT2が小さくなりすぎてしまい、放射特性が大幅に低下するという問題を解決することができる。すなわち、小型で放射特性に優れた複共振アンテナを実現することができる。また、本発明によれば、誘電率が低く可撓性又は可塑性が高い第2の基体12の一部をプリント基板又は筐体に固定するための固定部材として使用していることから、特別な固定具を使用することなく、アンテナ装置をプリント基板上に機械的に固定することができる。
【0041】
さらに、第4の実施形態によれば、第1の基体11が第2の基体12に組み込まれており、第1の基体11と第2の基体12とが複数の側面で接着されていることから、落下衝撃等の外的応力が加えられても両者が分離することがなく、信頼性の高いアンテナ装置を提供することができる。
【0042】
図10は、本発明の第5の実施形態によるアンテナ装置500の構成を示す略斜視図である。
【0043】
図10に示すように、アンテナ装置500は、第1のアンテナ素子ANT1を構成する第1の放射導体13よりも第2のアンテナ素子ANT2を構成する第2の放射導体14のアンテナ長が長くなっている。給電点付近においては、第1の実施形態と同様、第1の放射導体13と第2の放射導体14は、第1の基体11と第2の基体12との境界Bから互いに逆方向に分かれるように延設されているが、第2の放射導体14は給電点付近ですぐに折り返して、第1の放射導体13と平行に延設されている。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によるアンテナ装置500は、誘電率が高い第1の基体11と誘電率が低い第2の基体12とを備え、第1の基体11に低い共振周波数側のアンテナ素子ANT1を形成し、第2の基体12上に高い共振周波数側のアンテナ素子ANT2を形成しているので、高い共振周波数側のアンテナ素子ANT2が小さくなりすぎてしまい、放射特性が大幅に低下するという問題を解決することができる。すなわち、小型で放射特性に優れた複共振アンテナを実現することができる。また、本発明によれば、誘電率が低く可撓性が高い第2の基体の一部をプリント基板に取り付けられる筐体に固定するための固定部材として使用していることから、特別な固定具を使用することなく、アンテナ装置をプリント基板上に機械的に固定することができる。
【0045】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0046】
例えば、上記実施形態においては、第1及び第2の放射導体13,14が第1及び第2の基体11,12の上面にそれぞれ形成されているが、必ずしも上面のみに形成される必要はなく、側面に形成されても構わない。つまり、基体の底面を除いたいずれかの面(主面)に形成されていればよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、共振周波数f、fを有する2つのアンテナ素子を有する場合を例示しているが、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、アンテナ素子の数は3つ以上であっても構わない。
【0048】
また、上記実施形態においては、第1の放射導体11の一端に接続した第1のスルーホール導体15を給電用とし、第2の放射導体12の一端に接続したスルーホール導体16をショート用としているが、本発明はこのような構成に限定されず、複共振アンテナの設計によっては、スルーホール導体15をショート用とし、スルーホール導体16を給電用としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態によるアンテナ装置100の構造を示す略斜視図である。
【図2】図2は、図1に示したアンテナ装置100の略展開図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態によるアンテナ装置200の構造を示す略斜視図である。
【図4】図4は、本発明の第3の実施形態によるアンテナ装置300の構成を示す略斜視図である。
【図5】図5は、図4に示したアンテナ装置300の略展開図である。
【図6】図6は、本発明の第4の実施形態によるアンテナ装置400の構成を示す略斜視図である。
【図7】図7は、アンテナ装置400の組み込み構造の一例を示す略断面図である。
【図8】図8は、アンテナ装置400の組み込み構造の他の例を示す略断面図である。
【図9】図9は、アンテナ装置400の組み込み構造のさらに他の例を示す略断面図である。
【図10】図10は、本発明の第5の実施形態によるアンテナ装置500の構成を示す略斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 基体
11 第1の基体
12 第2の基体
12w 固定部材
12x 爪構造
12y 爪構造
12z 突起部材
13a 第1の放射導体の一端
13b 第1の放射導体の他端
13 第1の放射導体
14a 第2の放射導体の一端
14b 第2の放射導体の他端
14 第2の放射導体
15 第1のスルーホール導体
16 第2のスルーホール導体
20 プリント基板
20a 穴
20z 突起部材
21,22 ピン
23 筐体
100 アンテナ装置
200 アンテナ装置
300 アンテナ装置
400 アンテナ装置
500 アンテナ装置
B 境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の誘電率を有する第1の基体と、
前記第1の誘電率よりも低い第2の誘電率を有し前記第1の基体と一体化された第2の基体と、
前記第1の基体の主面に形成され第1の共振周波数で共振する第1の放射導体と、
前記第2の基体の主面に形成され第1の共振周波数よりも高い第2の共振周波数で共振する第2の放射導体とを備え、
前記第1及び第2の放射導体は、一端同士が前記第1の基体と前記第2の基体との境界で接続され、且つ、前記境界付近において互いに逆方向に分かれるように延設されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の放射導体の前記一端付近に接続され、前記第1の基体を貫通する第1のスルーホール導体と、
前記第2の放射導体の前記一端付近に接続され、前記第2の基体を貫通する第2のスルーホール導体とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第2の放射導体の前記一端付近に接続され、前記第2の基体を貫通する第1及び第2のスルーホール導体をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2の基体は、プリント基板又前記プリント基板を収容する筐体に固定するための固定部材を一体的に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記固定部材は、前記プリント基板又は前記筐体に係合される爪構造であることを特徴とする請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記固定部材は、前記プリント基板又は前記筐体に設けられた穴に挿入される突起部材であることを特徴とする請求項4に記載のアンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−81098(P2010−81098A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244818(P2008−244818)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】