説明

アンモニア供給システム

【課題】タンク内の残量アンモニアのブロー量を抑えることができるアンモニア供給システムを提供すること。
【解決手段】発電所において燃料を燃焼させて生じた排気ガスを、気化したアンモニアを加えた触媒層の中に通す脱硝装置において、脱硝装置205に気化したアンモニアを供給するアンモニア供給システム1。液化アンモニアを貯蔵する複数のタンク2と、複数のタンク2に接続された複数の液体アンモニア供給ライン4と、液化アンモニアを気化させる複数の気化器3と、複数の気化器3に接続された複数の気化アンモニア供給ライン5と、複数のタンク2に接続され、複数のタンク2のそれぞれの内部で自然蒸発によって気化した自然気化アンモニアを脱硝装置205に供給する自然気化アンモニア供給ライン7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア供給システムに関し、特に、火力発電所において燃料を燃焼させて生じた排気ガスを、気化したアンモニアを加えた触媒層の中に通す脱硝装置において、脱硝装置に気化したアンモニアを供給するアンモニア供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃やして発生する熱エネルギーを利用する火力発電所では、NOxを含んだ排気ガスにアンモニアを加え触媒層の中を通すことにより、排気ガス中のNOxを触媒の働きで窒素と水に分解する脱硝装置を備え、燃料の燃焼に生じる排気ガスから有害物質を除去してクリーンになった排気ガスを煙突から大気に放出している(非特許文献1参照)。そして、火力発電所では、脱硝装置にアンモニアを供給するアンモニア供給システムを備える。
【0003】
アンモニア供給システムは、液化アンモニアを貯蔵する複数のタンクと、液化アンモニアを気化させる複数の気化器とを備える。複数のタンクは、それぞれ、複数の気化器を介して脱硝装置に接続されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.energia.co.jp/energy/eco/environ/hokoku/01kan/01kan1−12.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発電所の所員は、各タンクの点検作業をするときに、まず、点検をするタンクの内部にある液化アンモニアを使い切るか、他のタンクに移送するタンク間移送操作を行う。これにより、点検をするタンクの内部にある液化タンクのほとんどがなくなるが、点検をするタンクに、わずかながら残量アンモニアが残る。
【0006】
そこで、発電所の所員は、次に、点検をするタンクに残っている残量アンモニアを水中にブローをするなどして、タンクの内部の残量アンモニアをタンク外に排出する排気作業を行う。この排気作業は、発電設備に使用することない無駄な排出となっている。
【0007】
また、ブローの際に用いた水はアンモニア含有排水となり、このアンモニア含有排水は高濃度のアンモニア成分を含んでいるので、排水を排水タンクへ入れ,工業用水で所定の基準以下に希釈した後に、発電所の外へ排水している。
【0008】
本発明は、タンク内の残量アンモニアのブロー量を抑えることができるアンモニア供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアンモニア供給システムは、発電所において燃料を燃焼させて生じた排気ガスを、気化したアンモニアを加えた触媒層の中に通す脱硝装置において、該脱硝装置に前記気化したアンモニアを供給する。アンモニア供給システムは、液化アンモニアを貯蔵する複数のタンクと、それぞれの一方が前記複数のタンクのそれぞれに接続された複数の液体アンモニア供給ラインと、それぞれが前記液体アンモニア供給ラインのそれぞれの他方に接続され、前記液化アンモニアを気化させる複数の気化器と、それぞれの一方が前記複数の気化器のそれぞれに接続された複数の気化アンモニア供給ラインであって、それぞれの他方が前記脱硝装置に接続された複数の気化アンモニア供給ラインと、それぞれの一方が前記複数のタンクのそれぞれに接続され、前記複数のタンクのそれぞれの内部で自然蒸発によって気化した自然気化アンモニアを前記脱硝装置に供給する自然気化アンモニア供給ラインと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るアンモニア供給システムは、さらに、前記自然気化アンモニア供給ラインに設けられた圧力調節弁を備えてもよい。
【0011】
本発明に係るアンモニア供給システムは、さらに、それぞれが前記複数の液体アンモニア供給ラインのうちから選ばれた2つの液体アンモニア供給ラインを接続する1以上の液体アンモニア渡りラインを備えたことを特徴としてもよい。
【0012】
本発明に係るアンモニア供給システムは、さらに、それぞれが前記複数のタンクのそれぞれに設けられ、前記自然気化アンモニアを大気に放出する複数のブロー弁を備えたことを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アンモニア供給システムは、各タンクの内部で自然蒸発によって気化した自然気化アンモニアを複数の気化器を介さずに脱硝装置に供給する自然気化アンモニア供給ラインを備えているので、タンクの内部に残留している自然気化アンモニアのほとんどを脱硝装置に供給してから、排気作業を行うことができ、アンモニアのブロー量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のアンモニア供給システムが適用される発電プラントの一例を示すブロック図である。
【図2】本発明のアンモニア供給システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、コンバインド発電プラントを示している。コンバインド発電は、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた(コンバインド)発電設備である。燃料であるLNG(液化天然ガス)を燃やしてガスタービンを回転させ、その際に発生する排熱でボイラ水を沸騰させ、その蒸気でさらに蒸気タービンを回転させて発電する方式である。コンバインド発電プラントは、高効率で、電力需要に対する調整能力に優れるという特徴を有している。
【0017】
図1において、発電設備200では、燃料のガス(LNG)が燃焼器201に送り込まれ、ガスタービン202を回転させる。その際、空気圧縮機203は、ガスタービン202の回転に伴い、圧縮空気を燃焼器に送り込む。ガスタービン202からの排気は脱硝装置205を経て煙突207から排出される。
【0018】
排熱は排熱回収ボイラ206に給水された水で蒸気を発生させる。排熱回収ボイラ206からの蒸気は、蒸気タービン208に送り込まれる。復水器209は、蒸気タービン208を通過した蒸気を冷却・液化する。復水器209では、図示しない各種ポンプ、取水路を介して冷却管に冷却水としての海水が取り込まれ、熱交換後、海に放出される。復水は、排熱回収ボイラ206にて再び蒸気発生に利用される。ガスタービン202、蒸気タービン208の回転により、発電機210が発電し、電力が得られる。
【0019】
図2に示すように、アンモニア供給システム1は、発電所にある発電設備200においてLNGのような燃料を燃焼させて生じた排気ガスを、気化したアンモニアを加えた触媒層の中に通す脱硝装置205に接続されている。アンモニア供給システム1は、気化したアンモニアを脱硝装置205に供給する。
【0020】
アンモニア供給システム1は、複数のタンク(Aタンク、Bタンク、Cタンク)2と、複数の気化器3とを備えている。
【0021】
各タンク2には、液化アンモニアが貯蔵されている。各タンク2の上部には、液化アンモニアが気化したアンモニアガスを排気する排気処理設備(図示せず)に供給する排気処理ライン12が接続されており、その排気処理ライン12には、ブロー弁11が設けられている。
【0022】
各タンク2には、液体アンモニア供給ライン4の一方が接続されている。各液体アンモニア供給ライン4の他方は、各気化器3に接続している。したがって、複数のタンク2は、それぞれ、複数の気化器3の入力口(図示せず)に接続されている。
【0023】
各気化器3は、各タンク2から供給された液体アンモニアを気化させるものである。各気化器3の出力口(図示せず)には、各気化アンモニア供給ライン5が接続している。
【0024】
脱硝装置205には、各気化器3によって気化されたアンモニアが脱硝装置205に供給されるように、各気化アンモニア供給ライン5の他方が接続されている。
【0025】
各タンク2には、液体アンモニア供給ライン4とは別の自然気化アンモニア供給ライン7の一方が接続されている。自然気化アンモニア供給ライン7の他方は、気化器3を解さずに、脱硝装置205に接続している。自然気化アンモニア供給ライン7は、各タンク2の内部で自然蒸発によって気化したアンモニアである自然気化アンモニアを気化器3を介さずに脱硝装置205に供給するラインである。
【0026】
自然気化アンモニア供給ライン7には、圧力調節弁9が設けられている。圧力調節弁9は、複数のタンク2からの自然気化アンモニアを1つに集めた合流位置よりも脱硝装置205側に設けられている。また、各タンク2との合流位置との間には、開閉弁8が設けられている。
【0027】
液体アンモニア供給ライン4には、他の液体アンモニア供給ライン4に接続する液体アンモニア渡りライン6a、6b、6cが設けられている。
【0028】
液体アンモニア渡りライン6aは、図2において「Aタンク」とされるタンク2から伸びる液体アンモニア供給ライン4と、「Bタンク」とされるタンク2から伸びる液体アンモニア供給ライン4とを接続する。液体アンモニア渡りライン6bは、「Bタンク」とされるタンク2から伸びる液体アンモニア供給ライン4と、「Cタンク」とされるタンク2から伸びる液体アンモニア供給ライン4とを接続する。液体アンモニア渡りライン6cは、「Aタンク」とされるタンク2から伸びる液体アンモニア供給ライン4と、「Cタンク」とされるタンク2から伸びる液体アンモニア供給ライン4とを接続する。このように、液体アンモニア渡りラインは、複数の液体アンモニア供給ライン4のうちから選ばれた2つの液体アンモニア供給ライン4を接続している。
【0029】
液体アンモニア渡りライン6a、6b、6cには、それぞれ、開閉弁10a、10b、10cが設けられている。
【0030】
以上のアンモニア供給システム1は、タンクの点検作業をするときは、以下のように扱われる。以下に示す例では、作業者は、Aタンクを点検するものとし、Aタンクに入っている液化アンモニアをBタンクに移送するものとして、説明する。
【0031】
まず、通常の発電設備の使用の状態を説明する。通常の運転では、3つのタンク2から液体アンモニアを液体アンモニア供給ライン4、気化器3、気化アンモニア供給ライン5を介して脱硝装置205に供給する。
【0032】
次に、Aタンク2を点検する場合の手順を説明する。通常の発電設備の使用の状態を維持したまま、点検をするタンク2の内部にある液体アンモニアを、液体アンモニア供給ライン4、気化器3、気化アンモニア供給ライン5を介して、脱硝装置205に供給し、これにより、供給できなくなるまで行う。これにより、点検をするタンク2の内部にある液体アンモニアの量を少なくすることができる。
【0033】
次に、気化器3の作動を停止させる。これにより、Aタンク2からの液体アンモニアは、高圧力状態で、気化器3には供給されない状態になる。したがって、脱硝装置205は、Bタンク2とCタンク2とからの液体アンモニアを気化器3によって気化された気化アンモニアによって作動する状態になる。
【0034】
次に、開閉弁10aを開けて、Aタンク2にある液体アンモニアの高圧力を利用して、Aタンク2にある液体アンモニアを液体アンモニア渡りライン6aを介してBタンク2に供給する。
【0035】
次に、開閉弁10aを閉めて、Aタンク2にある液体アンモニアが液体アンモニア供給ライン4に流れないようにする。これにより、Aタンク2の内部のほとんどは、上述の高圧力よりも低い自然気化圧力の自然気化アンモニアで充満している。
【0036】
次に、Aタンク2から伸びる自然気化アンモニア供給ライン7に備えられた開閉弁8を開ける。このとき、圧力調節弁9は、自然気化圧力よりも低い設定圧力値に設定されている。これにより、圧力調節弁9によって設定された圧力になるまで、Aタンク2にある自然気化アンモニアが自然気化アンモニア供給ライン7を介して、かつ、気化器3を介さずに、脱硝装置205に供給される。これにより、脱硝装置205は、Bタンク2とCタンク2とからの液体アンモニアを気化器3によって気化された気化アンモニアと、自然気化アンモニア供給ライン7から供給される自然気化アンモニアとによって作動する状態になる。
【0037】
次に、Aタンク2の内部の自然気化アンモニアの圧力が圧力調節弁9に設定された設定圧力値になると、Aタンク2の内部の自然気化アンモニアは、脱硝装置205に供給されなくなるので、開閉弁8を閉じる。これにより、Aタンク2の内部は、圧力調節弁9に設定された設定圧力値と略同じ圧力で密閉された状態になる。
【0038】
次に、ブロー弁11を開け、Aタンク2の内部の自然気化アンモニアを排気処理ライン12を介して排気処理設備(図示せず)に供給する。これにより、Aタンク2の内部の自然気化アンモニアのほとんどは、排気処理施設に排気される。
【0039】
そして、作業者は、Aタンク2の内部の点検を行う。
【0040】
このように、アンモニア供給システム1は、各タンク2の内部で自然蒸発によって気化した自然気化アンモニアを気化器3を介さずに脱硝装置205に供給する自然気化アンモニア供給ライン7を備えているので、タンク2の内部に残留している自然気化アンモニアのほとんどを脱硝装置205に供給してから、排気作業を行うことができ、アンモニアのブロー量を抑えることができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。タンクの数を3として説明したが、複数あれば、特に限定されない。また、通常使用時は、すべてのタンクから液体アンモニアを気化器に供給しているとして説明したが、発電設備の運転状況によっては、特定のタンクのみから液体アンモニアを気化器に供給してもよい。また、発電設備は、LNG発電、石炭発電、石油発電等、さまざまな発電設備に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 アンモニア供給システム
2 タンク
3 気化器
4 液体アンモニア供給ライン
5 気化アンモニア供給ライン
6a、6b、6c 液体アンモニア渡りライン
7 自然気化アンモニア供給ライン
8 開閉弁
9 圧力調節弁
10a、10b、10c 開閉弁
11 ブロー弁
12 排気処理ライン
200 発電設備
205 脱硝装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電所において燃料を燃焼させて生じた排気ガスを、気化したアンモニアを加えた触媒層の中に通す脱硝装置において、該脱硝装置に前記気化したアンモニアを供給するアンモニア供給システムであって、
液化アンモニアを貯蔵する複数のタンクと、
それぞれの一方が前記複数のタンクのそれぞれに接続された複数の液体アンモニア供給ラインと、
それぞれが前記液体アンモニア供給ラインのそれぞれの他方に接続され、前記液化アンモニアを気化させる複数の気化器と、
それぞれの一方が前記複数の気化器のそれぞれに接続された複数の気化アンモニア供給ラインであって、それぞれの他方が前記脱硝装置に接続された複数の気化アンモニア供給ラインと、
それぞれの一方が前記複数のタンクのそれぞれに接続され、前記複数のタンクのそれぞれの内部で自然蒸発によって気化した自然気化アンモニアを前記脱硝装置に供給する自然気化アンモニア供給ラインと、を備えたことを特徴とするアンモニア供給システム。
【請求項2】
さらに、前記自然気化アンモニア供給ラインに設けられた圧力調節弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア供給システム。
【請求項3】
さらに、それぞれが前記複数の液体アンモニア供給ラインのうちから選ばれた2つの液体アンモニア供給ラインを接続する1以上の液体アンモニア渡りラインを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア供給システム。
【請求項4】
さらに、それぞれが前記複数のタンクのそれぞれに設けられ、前記自然気化アンモニアを大気に放出する複数のブロー弁を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアンモニア供給システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−271014(P2010−271014A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125529(P2009−125529)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】