説明

イチイ属の形成層または前形成層由来植物幹細胞株を有効性分として含有する抗酸化、抗炎症または抗老化用組成物

本発明はイチイ属の形成層または前形成層由来細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する抗酸化、抗炎症または抗老化用組成物に関する。本発明に係る組成物は、既存の抗酸化剤と抗炎症剤の副作用を最小化し、細胞内の代謝作用に係り、細胞内の活性酸素を減少させ、老化に係る信号を減少及び誘導させる効果があるため、老化の防止及び遅延に有用である。さらに、本発明に係る組成物はメラニン生成を抑制する効果があって、美白用化粧料組成物としても有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイチイ属の形成層、または前形成層由来細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する抗酸化、抗炎症または抗老化用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
老化とは人間が生まれて死亡するまで持続的に起きる機能的、構造的、生化学的過程で人体を構成している細胞と身体組織全体に起き、代謝速度の低下、疾病増加、適応力低下等を示し、究極的には細胞と身体全体の死亡に達する現象である。老化過程及び原因を説明する学説は大きく遺伝子説(Chung. H.Y. et al., Kor. J. Gerontol., 2:1, 1992)と消耗説(Chung. H.Y. et al., Kor. J. Gerontol., 2:1, 1992)に分かれる。この中で消耗説は生物体の構成細胞が時間の経過に伴って機能が低下すると説明し(wear & tear theory)、或いは有害物質の蓄積によるものであると説明するが、特にそのうち、人体代謝過程、放射能露出、ウィルス、重金属及び大気汚染等を通して生成されるフリーラジカルが、毒性が強い物質を形成することによって老化を促進するだけでなく、老化に係る種々の疾病を起こすというフリーラジカル理論(free radical theory)が最も有力な学説と受け入れられている。
【0003】
フリーラジカルは最郊殻電子軌道に対を組まない電子を一つ有する物質を総称するが、その構造が非常に不安定で、電子を得て安定化しようとする性質によって反応性が非常に高い。特に、酸素から由来するフリーラジカルを活性酸素と称し、これらは蛋白質、脂質、炭水化物等と反応して、脂質過酸化、DNA損傷、蛋白質の酸化等を誘発して、細胞内構造物に損傷を引き起こし、結果的に細胞の死滅を招き、特に血管老化の原因となって炎症過程に係ることによって動脈硬化、アルツハイマー、及び血中にホモシステインを増加させる。
【0004】
酸素と関連する人体内の毒性物質を活性酸素種(ROS:reactive oxygen species)というが、このようなROSの種類としてはスーパーオキシド(superoxide)、ヒドロキシル(hydroxyl)、ペルオキシ(peroxyl)、アルコキシル(alkoxyl)、ヒドロペルオキシル(hydroperoxyl)のようなフリーラジカル(遊離基、free radical)と過酸化水素(hydrogen peroxide)、次亜塩素酸(hypochlorous acid)、オゾン(ozone)、一重項酸素(singlet oxygen)、パーオキシナイトライト(peroxynitrite)等のような非フリーラジカル(非遊離基、non-free radial)がある。この中で酸素毒性のうち、最も多く研究され重要な役割を果たすものは、スーパーオキシドであり、フリーラジカル(superoxide free radical、活性酸素または有害酸素)として知られている(Fridovich L., Science, 201:175, 1978)。
【0005】
老化が進行する間に細胞のミトコンドリアに発生するROSは酸化損傷を示すターゲットになる(Lesnefsky, E.J. & Hoppel, C.L. Arch. Biochem. Biophys. 420, 287, 2003)。細胞内の酸素ラジカルに関するこのフリーラジカル理論は、老化に係る酸化ストレスと、これによる老化−関連疾病に多くの相関があるという報告があり(Finkel, T. & Holbrook, N.J., Science 408;239, 2000)、これら酸化ストレス(Oxidative stress)は、老化(senescence)を誘導するのに重要な役割を果たすことが報告されている(Chen Q. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. May 9; 92(10):4337, 1995; Packer L. & Fuehr K., Nature, 267(5610):423, 1977)。このような酸化ストレスは、増加する活性酸素種のレベルと減少したアンチオキシダントリザーブ(antioxidant reserve)とによる高分子(macromolecules)の酸化によって、細胞に影響を与えた損傷を説明するために使われた用語である(Thomas C. & Squier, Experimental Gerontology, 36; 1539, 2001)。
【0006】
複製老化(Replicativesenescence)が、既に進行した老化細胞は、若い細胞よりさらに高いレベルのROSを生産することができ、正常代謝過程中において、スーパーオキシド、過酸化水素、及びヒトロキシルラジカル等のような毒性副産物を生産するようになる。老齢の人や老化した実験動物における実験結果によると、組織はそれらのDNA、蛋白質及び脂肪(lipid)に酸化損傷を蓄積する(Chen, Ann. N. Y. Acad. Sci., 908:111, 2000)。ROSと特にヒトロキシルラジカルはDNAを攻撃して8−オキソ−2’−デイキシグアノシン(8-oxo-2’-deixyguanosine)と他の強力な変異性付加物(mutagenicadducts)の形成を引き起こし、そしてそれぞれの種毎に、ROSの比は、寿命(life-span)に係っており、これは老化の割合と多様な老化に係る疾病に対する定義において、決定的要因であることを意味する(Finkel & Holbrook, Nature, 408(6809):239, 2000)。
【0007】
「若い培養細胞において複製能は分裂回数が進むほど減少するようになり、最終的に増殖するための能力を失って成長状態が終わるようになる倍化の限界(doubling limited)が与えられるようになる。」と1961年HayflickとMoorheadによって初めて示され、ROSはヒト線維芽細胞においてin vitro老化と細胞内(in vivo)老化のための実験モデルとしてヒト細胞の老化に係る分子的変化を定義するのに使われている(HAYFLICK L. & MOORHEAD P.S., Exp. Cell Res., 25:585, 1961)。
ヒトを含む全ての好気性生物体は、酸素を利用したエネルギー代謝過程において常に発生する活性酸素の傷害に対して、根本的には自己防御機構を備えているが、組織の防御能を超えた活性酸素の生成は、最近関節炎、循環器障害などの成人病だけでなく、痴呆などの種々の疾患の原因となっている(Halliwell et al., Drugs, 42:569, 1991; Fukuzawa et al., J. Act. oxyg. Free Rad., 1:55, 1990)。
【0008】
所謂有害酸素と呼ばれる活性酸素は、最も安定した形態の酸素である三重項酸素(3O)が酸化還元過程において還元されて生成される一重項酸素であるスーパーオキシドアニオン(Superoxide anion;O2−)と過酸化水素(H)、ヒドロキシラジカル(・OH)のように対を組まない状態のフリーラジカルであり、これらは蛋白質、DNA、酵素及びT細胞のような免疫系統の因子を損傷させて、疾患を引き起こす(Regnstrom et al., Lancet., 16:1183, 1992; Gey et al., Am. Ac. J. Cin. Nutr., 53:326, 1991)。
【0009】
このような理由から抗酸化剤の開発研究が活発に進められ、酵素系列の予防的抗酸化剤であるスーパーオキシドジスムターゼ(Superoxide dismutase)、カタラーゼ(Catalase)、グルタチオンペルオキシダーゼ(Glutathione peroxidase)等のような抗酸化酵素と天然抗酸化剤であるビタミンE、ビタミンC、カロテノイド(Carotenoid)、グルタチオン(Glutathione)及び合成抗酸化剤であるブチルヒドロキシアニソール(t-Butyl-4-hydroxyanisole;BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(3,5-(t-Butyl)-4-hydroxytoluene;BHT)等の多くの抗酸化剤が知られている。しかしながら、抗酸化酵素は年を取って老いていくに伴って活性酸素に対する防御能力が低下する。また、合成抗酸化剤の場合、その変異原性及び毒性が指摘されて、より安全でかつ効力が強い天然抗酸化剤の開発が切に求められている現状である(Hatano et al., Natural Medicines, 49:359, 1995; Masaki et al., Biol. Pharm. Bull, 18:162, 1995)。
【0010】
一方、炎症(inflammation)は、病原体の侵入または損傷した組織除去を開始するために傷部位において現れる局所的な反応である。その肯定的な役割にもかかわらず、炎症はヒト疾病の最も一般的な発病メカニズムの一つとなった。活性化した白血球(monocytes)及び大食細胞による酸化窒素(NO)の生成が強力な炎症反応を開始し、細菌病原体に対する初期免疫反応における最も重要な役割を果たす(Bogdan C., Nat. Immunol., 2:907, 2001)。
【0011】
炎症反応は組織(細胞)の損傷や外部感染源(バクテリア、かび、ウィルス、種々のアレルギー誘発物質)に感染した時、局所血管と体液において、各種炎症媒介因子及び免疫細胞が係って、酵素活性化、炎症媒介物質分泌、体液浸潤、細胞移動、及び組織破壊等の一連の複合的な生理的反応と紅班、むくみ、発熱、痛み等外的症状を示す。正常なヒトの場合、炎症反応は外部感染源を除去して損傷した組織を再生し、生命体機能回復作用を行うが、抗原が除去されなかったり内部物質が原因になって、炎症反応が過度だったり持続的に起きると、却って粘膜損傷を促し、その結果一部では癌発生等の疾患を誘発する。従って、副作用なしに過度でかつ持続的な炎症反応を予防できる天然抗炎症剤の開発も求められる。
【0012】
そこで、本発明者等は既存の抗酸化剤及び抗炎症剤の副作用を最小化して、抗酸化活性及び抗炎症活性の優れた天産物由来組成物を開発しようと鋭意努力した結果、イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株(cell line)及びその抽出物が老化及び炎症に対して優れた抑制効果を有することを確認して、本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、既存の抗酸化剤及び抗炎症剤の副作用を最小化した抗酸化及び抗炎症活性と老化防止及び遅延効果を示す天産物由来組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、イチイ属の形成層または前形成層由来の、以下の特性を有する細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する抗酸化、抗炎症または抗老化用組成物を提供する:
(a)先天的未分化状態(innately undifferentiated)であり;
(b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生長速度が速く、安定的に培養され;及び
(c)多数の液包(vacuole)を有する形態学的特徴を示す。
【0015】
本発明はまた、前記細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する老化防止用化粧料組成物を提供する。
本発明はさらに、前記細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する美白用化粧料組成物を提供する。
本発明はまたさらに、前記細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する抗酸化機能性食品を提供する。
本発明はまたさらに、前記細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する老化防止用機能性食品を提供する。
【0016】
本発明の他の特徴及び実施例は下記の詳細な説明及び添付された特許請求範囲からより一層明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る細胞株の誘導過程、前形成層及び形成層の層の分離後の様子及び脱分化した細胞と伽羅木の前形成層及び形成層由来細胞間比較を示す写真である。
【図2】本発明に係る細胞株から工程別に有効物質を抽出する工程図である。
【図3】皮膚繊維亜細胞(HDF)にHで処理して老化を誘導する際、本発明に係る細胞株抽出物の抗酸化活性を示すROS量の比較グラフと、DCFH蛍光撮影写真を示す写真である(P−WE:前形成層蒸留水抽出物、C−WE:形成層蒸留水抽出物)。
【図4】皮膚繊維亜細胞(HDF)にHで処理して老化を誘導する際、本発明に係る細胞株抽出物のERK発現抑制能を示す写真である(P−WE:前形成層蒸留水抽出物、C−WE:形成層蒸留水抽出物)。
【図5】皮膚繊維亜細胞(HDF)にHで処理して老化を誘導する際、本発明に係る細胞株抽出物のMnSOD発現誘導能を示した写真である(P−WE:前形成層蒸留水抽出物)。
【図6】皮膚繊維亜細胞(HDF)にLPSを処理して炎症を誘導する際、本発明に係る細胞株抽出物のIL−1β発現抑制能を示す写真である(P−ME:前形成層メタノール抽出物、C−WE:形成層メタノール抽出物)。
【図7】皮膚繊維亜細胞(HDF)にLPSを処理して炎症を誘導する際、本発明に係る細胞株抽出物のMMP−9発現抑制能を示す写真である(P−ME:前形成層メタノール抽出物)。
【図8】皮膚繊維亜細胞(HDF)にLPSを処理して炎症を誘導する際、本発明に係る細胞株抽出物のMMP−2発現抑制能を示す写真である(P−ME:前形成層メタノール抽出物)。
【図9】皮膚繊維亜細胞(HDF)にLPSを処理して炎症を誘導する際、本発明に係る細胞株抽出物のICAM−1発現抑制能を示す写真である(P−ME:前形成層メタノール抽出物)。
【図10】本発明に係る細胞株抽出物(イチイ属の形成層由来細胞株のDMSO抽出物)の処理時に繊維亜細胞生存率を測定した結果を示したグラフである。
【図11】本発明に係る細胞株抽出物及び培養液の紫外線照射によって発生する活性酸素種除去効果を示すグラフである。
【図12】紫外線照射してMMP−1を誘導する際、本発明に係る細胞株抽出物及び培養液のMMP−1生成抑制効果を示すグラフである。
【図13】本発明に係る細胞株抽出物及び培養液のB−16メラノーマ細胞株においてメラニン生成抑制効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
他の定義がない限り、本明細書で使われた全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する技術分野において熟練した専門家によって通常分かるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書において使われた命名法は本技術分野においてよく知られており、通常使われるものである。
【0019】
本発明の詳細な説明等において使われる主な用語の定義は次のようになる。
本願において、維管束「形成層」は植物体の側部に位置する側部分裂組織(lateral meristem)であり、形成層の活動によって植物の肥大生長が起き、その結果11,000年以上の年輪を刻む巨大植物体が存在可能になる。発生学的に維管束形成層は前形成層に起源するため、分裂組織的連続性を維持しながら、徐々に分化した同一分裂組織である。このような形成層と前形成層は、一次分裂組織として、本発明において形成層及び前形成層組織を使って同じ効果を得ると期待された。
【0020】
本願において、「破砕物」とは、細胞を、界面活性剤(detergent)等を利用した化学的方法または物理的方法等で破砕して得た細胞溶解物を意味し、細胞株の「抽出物」とは、細胞を溶媒に溶かして分離した物質であり、蒸留または蒸発を利用して濃縮される。また、細胞株の「培養液」とは、細胞を培養させた後、細胞を除去して残った細胞培養溶液を意味する。
【0021】
本願において「先天的未分化状態」とは、脱分化過程を経て未分化状態で存在するのではない、本来から分化前状態を維持することをいう。
【0022】
本発明は一観点において、イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する抗酸化、抗炎症または抗老化用組成物に関する。
【0023】
本発明に係るイチイ属の形成層または前形成層由来細胞株は、(a)先天的未分化状態であること;(b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生長速度が速くて安定的に培養されること;及び(c)多数の液包を有する形態学的特徴を示すことを特徴とする。さらに、前記細胞株は追加的に(a)懸濁培養時に単細胞状態で存在すること;及び(b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生物反応器においてシェアストレス(shear stress)に対して低い感受性を有することを特徴とする。
【0024】
本発明において、前記細胞株は以下の工程を含む分離方法によって得られることを特徴とする:
(a)イチイ属の形成層または前形成層含有組織を取得する工程;
(b)前記取得された形成層または前形成層含有組織を培養して、形成層または前形成層から増殖する形成層または前形成層の層(cambium or procambium layer)と前記形成層または前形成層以外の部分から無定形に増殖するカルス層を誘導する工程;及び
(c)前記カルス層から形成層または前形成層の層を分離して、形成層または前形成層由来細胞株を取得する工程。
【0025】
本発明において、好ましくは、前記細胞株は3〜5重量%の粗糖(raw sugar)または砂糖;及びジャスモン酸メチル(methyl jasmonate)、真菌類抽出物、細菌類抽出物、酵母(yeast)抽出物、キトサン、グルコマンナン(glucomannan)、グルカン(glucan)、フェニルアラニン(phenylalanine)、安息香酸(benzoic acid)、サリチル酸(salicylic acid)、アラキドン酸(arachidonic acid)、STS、モバロナロネイトN−ベンゾリグリシン(mevalonalonate N-benzolyglycine)、ABA、SNP、IPP、BHT、CCC、エセフォン(ethephon)、馬尿酸(hippuric acid)、硝酸二アンモニウムセリウム(ammonium ceric nitrate)、AgNO、硫酸バナジル(vanadyl sulfate)、p−アミノ安息香酸(p-aminobenzoic acid)、ブラシノステロイド(brassinosteroids)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、酢酸ナトリウム(sodium acetate)からなる群から選択される物質;を含む培地で更に培養されることを特徴とする。この時、前記ジャスモン酸メチルは10〜100μMの含有量で添加される。
【0026】
本発明において、前記抽出物は蒸留水、アルコール、アセトン、DMSO(Dimethyl Sulfoxide)及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒を利用して抽出されたことを特徴とする。
【0027】
本発明においては、前記細胞株抽出物をHと共に皮膚繊維亜細胞を処理した。その結果、前記細胞株抽出物は、活性酸素種の生成及びp−ERK1/2の発現を抑制して、MnSODの発現を誘導することが確認され、本発明に係る細胞株抽出物の抗酸化活性を確認した。また、本発明においては、前記細胞株抽出物をLPSと共に皮膚繊維亜細胞を処理した。その結果、前記細胞株抽出物は、ICAM−1、MMP9、MMP2及びIL−1βを抑制することを確認が確認され、本発明に係る細胞株抽出物の抗炎症活性を確認した。即ち、前記細胞株抽出物は老化と炎症が誘導される前に処理された場合、細胞内のこれらの信号をブロッキングすることを確認した。
【0028】
さらに、本発明の他の実施例においては、本発明に係る細胞株抽出物及び細胞株培養液が紫外線照射によって発生する活性酸素種を除去する効果があることを確認した。
【0029】
従って、本発明においては、前記細胞株を含有する組成物が抗酸化活性、抗炎症活性及び抗老化活性を示す具体的な実施例がないとしても、前記調べたようにその細胞株抽出物が抗酸化、抗炎症及び抗老化活性を有することを確認し、本発明に係る細胞株自体やその破砕物を含有した組成物の場合においても抗酸化活性及び抗炎症活性を示して、老化を予防して皮膚炎症を予防及び改善できることは当業界において通常の知識を有するた者に自明である。
【0030】
本発明に係る細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を有効性分として含有する抗酸化、抗炎症または抗老化用組成物は、これらを各々単独で含んだり一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含み、医薬組成物として提供でき、前記細胞株または細胞株の抽出物は、疾患及びそれの重症程度、患者の年令、体重、健康状態、性別、投与経路及び治療期間等により適切な薬学的に有効量で医薬組成物に含まれる。
【0031】
前記において「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容されてヒトに投与される時、通常胃腸障害、目まいのようなアレルギー反応、またはこれと似た反応を起こさない組成物をいう。前記担体、賦形剤及び希釈剤は、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、ポルビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0032】
前記医薬組成物は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含んでもよい。また、本発明の医薬組成物は哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延された放出を提供できるよう、当業界に公示された方法を用いて剤形化される。剤形は粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアゾール、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態であってもよい。
【0033】
一方、本発明のまた他の実施例においては、本発明に係る細胞株抽出物及び培養液がイチイ属抽出物及び優れた老化防止効果を有すると知られているRA(Retionic acid)と対比しても、さらに優れたタイプIコラゲナーゼ(matrix metalloproteinase-1、MMP−1)生成抑制効果を示すことを確認した。本発明に係る細胞株、その抽出物、その破砕物またはその培養液を含む組成物がコラーゲンの分解を抑制する効果があり、皮膚老化防止及びしわを改善する効果があることが明らかになり、老化防止用化粧料組成物として非常に有用であることを確認した。従って、本発明はさらにまた他の観点において、イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を有効性分として含有する老化防止用化粧料組成物に関する。
【0034】
また、本発明の他の実施例においては、本発明に係る細胞株抽出物及び細胞株培養液がマウスメラノーマ細胞株においてメラニン生成を抑制する効果を有することを確認して、美白用化粧料組成物としても非常に有用であることを確認した。従って、本発明は他の観点において、前記イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する美白用化粧料組成物に関する。
【0035】
本願において「機能性化粧品」とは、一般の化粧品に本発明に係る細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を添加することによって一般の化粧品の機能性を向上させた化粧品を意味する。例えば、本発明の細胞株またはその抽出物等を含有する老化防止用化粧料組成物を利用して、機能性化粧品を提供することができる。
【0036】
本発明の化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分としての抽出物以外に化粧料組成物に通常利用される成分を含み、例えば、溶媒、安定化剤、溶解化剤、乳化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の補助剤、及び担体を含んでもよい。
【0037】
本発明の化粧料組成物は、当業界において通常製造される任意の剤形に製造されることができるが、望ましくは、化粧水、栄養ローション、栄養クリーム、マッサージクリーム、栄養エッセンス、パック、メーキャップベース、ファンデーション、ボディーオイル、ヘアーオイル、シャンプー、リンスからなる群から選択される剤形で製造されることを特徴とする。
【0038】
このような化粧料組成物の剤形の例に係ることなく、本発明の細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する本発明の化粧料組成物は、抗酸化効果を有し、皮膚に発生したフリーラジカルを消去して細胞内抗酸化系保護効果があってフリーラジカル等の作用による酸化によって生じる皮膚老化の予防及び遅延効果を発揮でき、MMP−1生成抑制を介して、皮膚老化を防止してしわを改善することができる。
【0039】
本発明はさらにまた他の観点において、前記イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を有効性分として含有する抗酸化機能性食品に関する。
【0040】
また、本発明はさらにまた他の観点において、前記イチイ属の形成層または前形成層由来細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を有効性分として含有する老化防止用機能性食品に関する。
本願において「機能性食品」とは、一般食品に本発明に係る細胞株または細胞株の抽出物を添加することによって食品の機能性を向上させたことを意味する。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を通して本発明をより一層詳細に説明する。この実施例は単に本発明を例示するものであり、本発明の範囲がこの実施例によって制限されると解釈されないことは当業界において通常の知識を有するた者には自明である。
特に、下記実施例においては伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の抽出物及びその培養液の抗酸化、抗炎症及び抗老化効果及び美白効果を確認したが、その細胞株自体を使用しても類似する結果を得られるということは当業界において通常の知識を有する者には自明である。
【0042】
[実施例1]伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の製造
(1)植物材料の準備
伽羅木の小枝及び幹を各々採取した後、直ちに抗酸化剤100mg/Lアスコルビン酸(L-ascorbic acid、DUCHEFA, The Netherlands)溶液に沈積して、運送・保管した。
その後、1%ベノミル(benomyl、Dongbu Hannong Chemical, Korea)、1%ダコニール(daconil、Dongbu Hannong Chemical, Korea)、1%ストレプトマイシン(sterptomycin sulphate、DUCHEFA, The Netherlands)、0.1%セフォタキシン(cefotaxime sodium、DUCHEFA, The Netherlands)の混合溶液で24時間前処理後、フェノール化合物(phenolic compound)と残存化学物質を除去するために水道水(tap water)で30分間洗浄した。さらに、70%エタノール(ethanol、DC Chemical, Korea)で1分、30%過酸化水素(hydrogen peroxide、LG Chemical, Korea)で15分、1%CLOROX溶液に15分、3%クロロックス(CLOROX)溶液で5分表面殺菌後、3〜4回洗浄した。
【0043】
(2)小枝及び幹から前形成及び形成層組織分離
前記殺菌過程を経た小枝及び幹の外側組織を縦方向に引っ張ると簡単に剥がれた。剥がれた組織は、木部、前形成層または形成層、師部、皮層、及び表皮で構成されるが、剥がれた組織の最内側組織、即ち、木部が培地面に当たるように培養した。
【0044】
(3)伽羅木の前形成層及び形成層由来細胞株誘導工程
初期培養4〜7日目に前形成層及び形成層から細胞分裂が肉眼上で観察され、培養15日以後に師部・皮層及び表皮で形成された層から脱分化による無定形のカルスが誘導し始めた。しかし、培養期間中ずっと木部は細胞分裂が起きることなく、前形成層及び形成層の層(layer)との分離が自然に行われた。培養30日経過後、前形成層及び形成層の層と師部を含んだ上層、即ち、無定形のカルス層に分離し始め(図1の(a)A及び(b)A)、二層が自然に分離するまで待って完全分離になると夫々異なるシャーレ(petri dish)に分離培養した(図1の(a)B〜C、(b)B〜D)。図1の(a)においてAsms前形成層分離を示し、木部を除去後、培養して上部(top)は師部・皮層・表皮を含む組織、底部(bottom)は前形成層を夫々示す。図1の(b)において、Aは形成層分離を示し、上部は師部・皮層・表皮を含む組織を、中間部(middle)は形成層を示し、底部は木部を示す。矢印(Arrow head)は前形成層及び形成層の層と師部・皮層・表皮を含む組織間の分離を示す。また、図1の(a)と(b)において、Bは細胞間の分裂差により不定形で増殖する師部・皮層・表皮を含む組織由来細胞株を、Cは細胞間の分裂が均一であって、一定の板状に増殖する前形成層及び形成層由来細胞株を、(b)においてDは細胞分裂が起きない木部を示す。分離後、生長率が良く、白くて柔らかくなった部分を誘導培地と同じ新しい培地で21日目ごとに継代した。
【0045】
一方、前形成層及び形成層由来細胞株だけを誘導するために使用した培地は表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
培地に生長調節剤としてNAA、IAAのようなオーキシン(Auxin)類を1〜3mg/Lの濃度で添加したが、望ましくは2mg/Lの濃度で添加する。培養は25±1℃で調節された暗室で実施された。
【0048】
一方、比較のため、伽羅木の胚(embryo)と葉(needle)の切片体を消毒した後、前記表1の培地で培養し、その結果、胚と葉の切片体は、脱分化によってカルスが形成することを観察できた。胚及び葉の切片体から誘導されたカルスは、師部を含む組織と同様に多数の細胞の間の分裂速度の差により不定形をなし、生長率がバラつき、褐変し易い傾向を示す。褐変及び凝集した胚及び葉切片体から誘導されたカルスは、自身が分泌するフェノール化合物によって生長が鈍くなって最後には壊死した。即ち、6ケ月後から胚と葉から誘導されたカルスは維持及び培養し難かった。一方、前形成層及び形成層由来細胞は20ヶ月以上の長期培養時に細胞の生長率、生長パターン、凝集程度が変わることなく安定的に維持されて、大量培養が可能であった。
【0049】
(4)分離した細胞株の増殖工程及び特性観察
前記前形成層及び形成層由来細胞株を下記表2の液状培地が含まれたフラスコに入れて、暗条件で25±1℃で100rpmの回転攪拌機(shaker)で培養した。継代培養周期は2週間に固定することによって培養細胞が常に対数生長期状態で高い活力を維持できるようにした。
【0050】
【表2】

【0051】
一方、胚及び葉由来カルス(callus)も前記表2の培地2で培養して、本発明に係る前形成層及び形成層由来細胞株と比較した。
細胞凝集度(biological microscope CX31、Olympus, Japan)を見ると、表3のように本発明に係る細胞株は懸濁培養時90%以上の単細胞状態で存在することが確認でき、図1の(c)に示したように、多数の液包を有する形態学的特徴を観察でき、未分化状態であることを確認することができた。図1の(c)の伽羅木の前形成層由来細胞において矢印で表示された部分が液包を示す。
【0052】
【表3】

【0053】
一方、大量培養の可能性を調べるため、3Lの内容積を有する空気浮揚式生物反応器(airlift bioreactor、ソンウォンサイテク、Korea)で胚・葉由来カルスと前形成層及び形成層由来細胞を培養した。培地は表2の液状培地を使用し、暗条件で25±1℃で一定に維持した。この場合、胚(embryo)・葉(needles)由来培養物の倍加時間(doubling time)はフラスコにおいては12日であるのに対して反応器(reactor)においては21日と長くなった。これは反応器内における生長輪生成と培養中の植物培養体凝集性と細胞壁が固くて、剪断に対する感受性で細胞生存率(cell viability)が急激に低下したことが原因であると判断された。一方、前形成層及び形成層由来細胞培養物の倍加時間は4〜5日でフラスコと反応器との間に差がないか、却って短縮された(表4)。前形成層及び形成層由来細胞培養物は、生物反応器内の生長輪面積を非常に小さく形成して、培養器に簡単な刺激を与えて培地を動かすと、内壁のリング(ring)が簡単に除去された。また、凝集が小さく、多くの液包を有し、剪断に対する感受性が低く、細胞生存率の低下を招くことはなかった。
【0054】
【表4】

【0055】
(5)糖及びジャスモン酸メチルの処理
前記実施例1の(4)のように14日間懸濁培養した細胞株を滅菌水に粗糖3〜5重量%(g/L)及びジャスモン酸メチル100μMを添加した培地で10日間暗培養した後、細胞を回収して次の実験を行った。
【0056】
[実施例2]伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の抽出物製造
(1)DMSO抽出物の製造
(i)培養液を取り除いた前記細胞株500gに500mLのDMSOを加えて、50℃で6時間攪拌しながら溶解した。
(ii)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離し、上層液を取ることによってDMSO可溶性物質を得た。
(iii)前記得たDMSO可溶性物質を、回転真空濃縮器を利用して濃縮した。
(iv)濃縮試料を、凍結乾燥器を利用して乾燥させてDMSO抽出物を得た。
【0057】
(2)蒸留水抽出物、メタノール抽出物及びアセトン抽出物の製造
実施例1で製造された細胞株から次のように工程毎に有効物質を抽出した(図2)。
(i)培養液を取り除いた前記細胞株500gに500mLの蒸留水を加えて、50℃で6時間攪拌させながら溶解した。
(ii)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離し、上層液を取ることによって蒸留水可溶性物質を得た。
(iii)前記蒸留水可溶性物質を得た後、残った蒸留水不溶性物質に500mLのメタノール(methanol)を添加して、室温で6時間攪拌して溶解した。
(iv)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離し、上層液を取ることによってメタノール可溶性物質を得た。
(v)前記メタノール可溶性物質を得た後、残ったメタノール不溶性物質に500mLのアセトン(acetone)を添加し、室温で6時間攪拌して溶解させた。
(vi)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離し、上層液を取ることによってアセトン可溶性物質を得た。
(vii)前記得た蒸留水、メタノール、アセトン可溶性物質を、回転真空濃縮器を利用して濃縮した。
(viii)濃縮試料を、凍結乾燥器を利用して乾燥させて、細胞培養液、メタノール、アセトンに溶かして、蒸留水抽出物、メタノール抽出物、アセトン抽出物を得た。
【0058】
[実施例3]皮膚繊維亜(HDF,Human diploid fibroblast)細胞培養
HDF細胞は胎児の陰茎包皮から分離培養した。細胞培養液はDMEM(Invitroge Gibco life tech. Vienna, Austria)培地に56℃で30分間加熱して、非動化した牛胎児血清(FBS、Hyclone, Logan, Utah, USA)を10%、ペニシリン(penicillin)(100unit/mL)とストレプトマイシン(streptomycin)(100μg/mL)及び300μg/mLグルタミン(glutamine)を添加して調製した。細胞は前記培養液を使用して、37℃、95%湿度、5%COインキュベーターで培養し、通常細胞が互いに融合する直前である3〜4日間隔で継代培養し、継代培養により20継代以下の若い(Young)細胞と、21〜49継代の中間(middle)細胞と50継代以上の老化細胞とに仕分けた。このように培養したHDF細胞は下記実施例4〜6の実験に使った。
【0059】
[実施例4]伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株抽出物の抗酸化活性測定(1) − Hによって誘導される活性酸素種測定
本発明に係る伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の抗酸化活性を測定するために次のような実験を行った。即ち、前記皮膚繊維亜細胞(HDF cell)に実施例2で取得した抽出物のうち、蒸留水抽出物を利用して、老化を起こして活性酸素種を誘導するHを処理した時、老化と活性酸素種を阻害するか否かを確認するため、活性酸素種(ROS)を測定する実験を行った。
【0060】
細胞内活性酸素の測定は活性酸素に敏感なDCFDA(2’,7’-dichlorofluorescin diacetate, Fluka Cat 35847 Molecular Probes, USA)蛍光dyeを使用してファックススキャン解析(Facscan analysis)を利用して分析した。各々のPDに係るHDF細胞を100mmプレートに育てた後、5uM濃度のDCFDAを暗所の状態で処理して、30分間37℃で反応させた後、PBSで2回洗浄後トリプシン−EDTA処理で細胞を回収した。以後、900rpmで4分間遠心分離して細胞を集めた後、各々細胞10,000個当りの活性酸素を測定した(図3の(a)、(b))。
【0061】
5×10の細胞を6ウェルプレートに分株後、各実験によりHを単独で処理し、実施例2で取得した抽出物を共に処理した。実施例2で取得した抽出物のうち、蒸留水抽出物を10〜100μg/mL処理したが、望ましくは蒸留水抽出物50μg/mL処理した後、HBSS(Hank’s balanced salt solution)で2〜3回洗浄して、再度HBSSに30分程度安定化させた。10uMのDCFDA(Molecular Probes USA)を処理後、暗所の状態で37℃で1時間染色し、HBSSで3回洗浄後蛍光顕微鏡で観察した(図3の(c))。
【0062】
HDF細胞にH 200uMと実施例2で取得した細胞株の蒸留水抽出物を10〜100μg/mLで処理したが、望ましくは50μg/mLを処理して、細胞の形態の変化程度を観察した。
【0063】
を細胞に処理して24時間が経過すると、HDF細胞は酸化ストレスによって、活性酸素(ROS)を発生するようになる。非蛍光性であるDCFDAは活性酸素によって酸化されて、強い蛍光を示すDCFになるため、これを測定することができる。本実施例においては、測定のためにFACS CAlibur(Becton Dickinson Analytic Flow Cytometer, USA)を使用した。
【0064】
その結果、図3に示したように、伽羅木の形成層由来細胞株抽出物及び伽羅木の前形成層由来細胞株抽出物共に活性酸素種(ROS)の生成が抑制されることが明らかになった(P−WE:前形成層蒸留水抽出物、C−WE:形成層蒸留水抽出物)。即ち、二つの細胞株抽出物共に活性酸素種の生成を抑制することを確認することができた。
【0065】
[実施例5]伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株抽出物の抗酸化活性測定(2) − Hによって誘導されるp−ERK1/2抑制能測定及びMnSOD誘導能測定
5−1.伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株抽出物のp−ERK1/2の発現抑制効果
生体内において活性酸素によってp−ERK1/2が増加することが知られているが、HDK細胞に実施例2で取得した細胞株抽出物とHを処理して、本発明に係る細胞株抽出物がp−ERK1/2発現を抑制するか否かを測定する実験を行った。
【0066】
HDF細胞にH200uMと実施例2で取得した細胞株蒸留水抽出物を投与してから11日後に、細胞を回収して、蛋白質を抽出した。蛋白質量の確認はブラッドフォード(Bradford)法で行った。即ち、HDF細胞を回収した後、細胞内の蛋白質を抽出して定量した。
【0067】
p−ERK1/2の量はウェスタンブロッティングで行った。即ち、定量された蛋白質はブロモフェノールブルー(bromophenol blue)染色液と混ぜた後、10%SDS−ポルアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に電気泳動した。電気泳動後、ポリビニリデンフロライド膜(ミリポア社)に蛋白質を転移させ、0.5%脱脂乳が含まれたTBS(Tris buffered saline)−tween溶液(10mM Tris. HCl,100mM NaCl,0.1% Tween 20,pH7.5)に浸漬し非特異的な反応を遮断した。
以後、ERKに対するウサギの抗体(Upstate)を1/600に希釈した溶液と常温で3時間反応させた後、2次抗体として抗ウサギIgG抗体を利用して反応させた。反応が終わった膜をTBS−tween溶液で4回洗浄してECL(enhanced chemiluminescence)検出試薬と1分間反応させた後、常温でX線フィルムに感光させた。
【0068】
その結果、図4に示したように、Hだけ処理した対照群より本発明に係る細胞株抽出物を共に処理した実験群においてp−ERK1/2の発現が減少したことを確認することができた。
【0069】
5−2.伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株抽出物のMnSODの発現誘導効果
生体内において活性酸素によってMnSODが増加することが知られているが、HDK細胞に実施例2で取得した細胞株抽出物とHを処理して、本発明に係る細胞株抽出物がMnSOD発現を誘導するか否かを測定する実験を行った。
【0070】
HDF細胞にH200uMと実施例2で取得した細胞株蒸留水抽出物を投与して、3、7、11日後に、細胞を回収して、蛋白質を抽出した。蛋白質量の確認はことが法で行われた。即ち、HDF細胞を回収した後、細胞内の蛋白質を抽出して定量した。
【0071】
MnSODの量はウェスタンブロッティングで行った。即ち、定量された蛋白質はブロモフェノールブルー染色液と混ぜた後、10%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に電気泳した。電気泳動後、ポリビニリデンフロライド膜(ミリポア社)に蛋白質を転移させて、0.5%脱脂乳が含まれたTBS−tween溶液(10mM Tris. HCl,100mM NaCl,0.1% Tween 20,pH7.5)に浸漬し非特異的な反応を遮断した。
【0072】
以後、MnSODに対するマウスの抗体を1/600に希釈した溶液と常温で3時間反応させた後、2次抗体として抗マウスIgG抗体を利用して、反応させた。反応が終わった膜をTBS−tween溶液で4回洗浄してECL検出試薬と1分間反応させた後、常温でX線フィルムに感光させた。
【0073】
その結果、図5に示したように、Hだけ処理した対照群より本発明に係る細胞株抽出物を共に処理した実験群においてMnSODの信号が増加したことを確認することができた。
【0074】
[実施例6]伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株抽出物の抗炎症活性測定
− LPSによって誘導されるICAM−1、MMP−9、MMP−2及びIL−1β抑制能
LPS(Lipopolysacharide:Escherichia coli strain B5:025, Sigma, St. Louis, MO)とは、E.Coli毒素から抽出されたものであり、マクロファージ、線維芽細胞、樹状細胞、リンパ球等の細胞の核から核因子(nuclear factor)−κB(NF−κB)の活性化を誘導して、各種炎症性斉サイトカイン(cytokine)の分泌を促すようになる。これを細胞に処理する場合、IL−1β、ICAM−1、MMP−9及びMMP−2を誘導するようになって炎症を促すと知られている。そこで、取得した形成層及び前形成層由来細胞株抽出物を利用して、これらの蛋白質の信号を抑制するか否かを確認した。
【0075】
6−1.伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の抽出物のIL−1βの発現抑制効果
LPSを細胞に処理する場合、炎症刺激の信号伝達による生成物であるIL−1βが増加することが知られている。そこで、HDK細胞に実施例2で取得した細胞株抽出物とLPSを処理して、本発明に係る細胞株抽出物がIL−1βの発現を抑制するか否かを測定する実験を行った。
【0076】
HDF細胞にLPS 10μg/mLと実施例2で取得した細胞株の抽出物のうちメタノール抽出物を10〜100μg/mL処理した。この時、望ましい処理量は50μg/mLである。メタノール抽出物を処理した後、3、6、24時間後、細胞を回収して蛋白質を抽出した。蛋白質量の確認はブラッドフォード法で行った。即ち、HDF細胞を回収した後、細胞内の蛋白質を抽出して定量した。
【0077】
IL−1βの量はウェスタンブロッティングで行った。定量された蛋白質はブロモフェノールブルー染色液と混ぜた後、10%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に電気泳動した。電気泳動後、ポリビニリデンフロライド膜(ミリポア社)に蛋白質を転移させて、0.5%脱脂乳が含まれたTBS−tween溶液(10mM Tris. HCl,100mM NaCl,0.1% Tween 20,pH7.5)に浸漬し、非特異的な反応を遮断した。
【0078】
以後、IL−1βに対するマウスの抗体を1/600に希釈した溶液と常温で3時間反応させた後、2次抗体として抗マウスIgG抗体を利用して、反応させた。反応が終わった膜をTBS−tween溶液で4回洗浄してECL検出試薬と1分間反応させた後、常温でX線フィルムに感光させた。
【0079】
その結果、図6に示したように、LPSだけ処理した対照群より本発明に係る細胞株抽出物を共に処理した実験群においてIL−1βの信号が減少したことを確認することができた。
【0080】
6−2.伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の抽出物のMMP−9の発現抑制効果
LPSを細胞に処理する場合、炎症刺激の信号伝達による生成物のMMP−9が増加することが知られている。
【0081】
そこで、HDK細胞に実施例2で取得した細胞株抽出物とLPSを処理して、本発明に係る細胞株抽出物がMMP−9の発現を抑制するか否かを測定する実験を行った。
【0082】
HDF細胞にLPS 10μg/mLと実施例2で取得した抽出物のうちメタノール抽出物を10〜100μg/mL処理した。この時、望ましい処理量は50μg/mLである。メタノール抽出物を処理した後、6時間後に、細胞を回収して、蛋白質を抽出した。蛋白質量の確認はブラッドフォード法で行った。即ち、HDF細胞を回収した後、細胞内の蛋白質を抽出して定量した。
【0083】
MMP−9の量はウェスタンブロッティングで行った。即ち、定量された蛋白質はブロモフェノールブルー染色液と混ぜた後、10%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に電気泳動した。電気泳動後、ポリビニリデンフロライド膜(ミリポア社)に蛋白質を転移させて、0.5%脱脂乳が含まれたTBS−tween溶液(10mM Tris. HCl,100mM NaCl,0.1% Tween 20,pH7.5)に浸漬し、非特異的な反応を遮断した。
【0084】
以後、MMP−9に対するマウスの抗体を1/600に希釈した溶液と常温で3時間反応させた後、2次抗体として抗マウスIgG抗体を利用して、反応させた。反応が終わった膜をTBS−tween溶液で4回洗浄してECL検出試薬と1分間反応させた後、常温でX線フィルムに感光させた。
【0085】
その結果、図7に示したように、LPSだけ処理した対照群より本発明に係る細胞株抽出物を共に処理した実験群においてMMP−9の信号が減少したことを確認することができた。
【0086】
6−3.伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の抽出物のMMP−2の発現抑制効果
LPSを細胞に処理する場合、炎症刺激の信号伝達による生成物のMMP−2が増加することが知られている。そこで、HDK細胞に実施例2で取得した細胞株抽出物とLPSを処理して、本発明に係る細胞株抽出物がMMP−2の発現を抑制するか否かを測定する実験を行った。
【0087】
HDF細胞にLPS 10μg/mLと実施例2で取得した細胞株抽出物のうちメタノール抽出物を10〜100μg/mL処理した。この時、望ましい処理量は50μg/mLである。メタノール抽出物を処理した後、3、6、24時間後、細胞を回収して蛋白質を抽出した。蛋白質量の確認はブラッドフォード法で行った。即ち、HDF細胞を回収した後、細胞内の蛋白質を抽出して定量した。
【0088】
MMP−2の量はウェスタンブロッティングで行った。即ち、定量された蛋白質はブロモフェノールブルー染色液と混ぜた後、10%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に電気泳動した。電気泳動後、ポリビニリデンフロライド膜(ミリポア社)に蛋白質を転移させて、0.5%脱脂乳が含まれたTBS−tween溶液(10mM Tris. HCl,100mM NaCl,0.1% Tween 20,pH7.5)に浸漬し、非特異的な反応を遮断した。
【0089】
以後、MMP−2に対するマウスの抗体を1/600に希釈した溶液と常温で3時間反応させた後、2次抗体として抗マウスIgG抗体を利用して、反応させた。反応が終わった膜をTBS−tween溶液で4回洗浄してECL検出試薬と1分間反応させた後、常温でX線フィルムに感光させた。
【0090】
その結果、図8に示したように、LPSだけ処理した対照群より本発明に係る細胞株抽出物を共に処理した実験群においてMMP−2の信号が減少したことを確認することができた。
【0091】
6−4.伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の抽出物のICAM−1の発現抑制効果
HDF細胞に実施例2で取得した細胞株メタノール抽出物とLPSを処理して、本発明に係る細胞株抽出物がICAM−1の発現を抑制するか否かを測定する実験を行った。
【0092】
HDF細胞にLPS 10μg/mLと実施例2で取得した細胞株の抽出物のうちメタノール抽出物を10〜100μg/mL処理した。この時、望ましい処理量は50μg/mLである。メタノール抽出物を処理して、1、3、6、12及び24時間培養した後、細胞を回収して蛋白質を抽出した。蛋白質量の確認はブラッドフォード法で行った。即ち、HDF細胞を回収した後、細胞内の蛋白質を抽出して定量した。
【0093】
ICAM−1の量はウェスタンブロッティングで行った。即ち、定量された蛋白質はブロモフェノールブルー染色液と混ぜた後、10%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に電気泳動した。電気泳動後、ポリビニリデンフロライド膜(ミリポア社)に蛋白質を転移させて、0.5%脱脂乳が含まれたTBS−tween溶液(10mM Tris. HCl,100mM NaCl,0.1% Tween 20,pH7.5)に浸漬し、非特異的な反応を遮断した。
【0094】
以後、ICAM−1に対するマウスの抗体を1/600に希釈した溶液と常温で3時間反応させた後、2次抗体として抗マウスIgG抗体を利用して、反応させた。反応が終わった膜をTBS−tween溶液で4回洗浄してECL検出試薬と1分間反応させた後、常温でX線フィルムに感光させた。
【0095】
その結果、図9に示したように、LPSだけ処理した対照群より本発明に係る細胞株抽出物を共に処理した実験群においてICAM−1の信号が減少したことを確認することができた。
【0096】
ICAM−1は内皮細胞(endothelial cells)表面において発現する細胞付着物質群の代表的な蛋白質であり、正常の場合、非常に低いレベルで発現するが、TNF−α、インターフェロン−γ、インターロイキン−1β等サイトカイル類炎症媒介物質によって刺激を受けると、発現量が急速に増加して、血流中移動する単核球やリンパ球等の炎症細胞を付着し、炎症細胞が炎症発生組織に移動するのに役割を果たすことが知られており[Wegner C. D. et al, Science, 247(1941):456, 1990; Dustin, M. L. et al, J. Immunol., 137(1):245, 1986]、ICAM−1の発現は炎症細胞が炎症発生部位に移動及び集積する初期に作用し、炎症反応の増幅作用に重要な役割を果たす。従って、本発明に係る細胞株の処理によって、このようなICAM−1の発現が抑制されることが明らかになり、本発明に係る組成物は炎症を抑制及び予防する効果があることが分かった。
【0097】
[実施例7]細胞毒性実験
本発明に係る伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の毒性の有無を確認するために次の実験を行った。
【0098】
ヒト繊維亜細胞は(Normal human dermal fibroblast, NHDF)は、MCTT社(韓国)から購入し、10%FBSが添加されたDMEM培地(Welgene、韓国)で培養した。繊維芽細胞1×10/(96well)を接種して12時間培養した後、実施例2で取得した伽羅木の形成層由来細胞株のDMSO抽出物を1ppm、10ppm及び100ppmの濃度で及び実施例2で細胞株を取り除いて取得した培養液を1、5及び10体積%の濃度でFBS無添加DMEM培地に24時間処理した。この時、対照群(N)は試料を処理しなかった。繊維芽細胞の生存率はWST−1溶液10%を含んだFBS無添加DMEMで2時間培養した後、450nmの吸光度で測定した。
【0099】
その結果、図10に示したように、伽羅木の形成層由来細胞株のDMSO抽出物は、使用された実験の範囲で細胞の生存率を減少させず、培養液の場合10%で生存率が若干減少することが明らかになった。細胞活性度が80%未満の場合に細胞毒性があると判断するが、実験範囲で本発明に係る細胞株抽出物及び培養液は細胞毒性がないことが示された。
【0100】
[実施例8]紫外線照射によって発生する活性酸素種除去効果確認
本発明に係る伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の抗酸化活性及び抗老化活性を測定するため次の実験を行った。
【0101】
先にヒト角質形成細胞株(HaCaT:German Cancer Research Institute, Heidelberg, Germany)を、10%FBSが添加されたDMEM培地で培養した。3×10/(96well)を接種して12時間培養した。付着した試料に実施例2の伽羅木の形成層及び前形成層由来細胞株のDMSO抽出物を1、10、25及び50ppmの濃度で、さらに実施例2の培養液を0.1及び1体積%の濃度でFBS無添加DMEM培地に添加して、3時間処理した。この時、陽性対照群としてNAC(N-acetyl-cysteine)を10mM処理し、追加対照群として伽羅木のDMSO抽出物を1、10、25及び50ppmの濃度で処理した。
【0102】
次に、HBSSバッファーで洗浄してDCF−DA 50μM(HBSS)を37℃で20分間培養した。さらに、HBSSバッファーで2回洗浄してHBSS30uLを添加して、365nm 200mJ/cmを照射した。37℃で2時間培養後、蛍光度(excitation, 485 nm; emission, 535nm, Infinite M-200, Tecan)を測定して、WST−1溶液を用いて、生存率を測定して補正した。試料の活性酸素種除去効果は紫外線照射を行わなかった群の蛍光度を100として紫外線照射群と比較した。
【0103】
その結果、図11に示したように、本発明に係る細胞株のDMSO抽出物及び培養液を処理した場合、紫外線によって誘導された活性酸素種を除去する効果があることを確認することができた(細胞株抽出物の場合、前形成層由来細胞株抽出物及び形成層由来細胞株抽出物の測定値の平均値として記述する)。特に、対照群である伽羅木抽出物の場合、紫外線処理時試料未処理群(0ppm添加群)の測定値対比試料添加時測定値の減少率を算定した時、44%(1ppm)、55%(10ppm)、48%(25ppm)及び56%(50ppm)に減少したのに対して、本発明に係る細胞株抽出物の場合、紫外線処理時試料未処理群(0ppm添加群)の測定値対比試料添加時測定値の減少率を調べた際、62%(1ppm)、70%(10ppm)、73%(25ppm)、70%(50ppm)のようにさらに顕著な減少値を示し、本発明に係る細胞株の場合、伽羅木と比べて、更に強力な抗酸化効果を有することを確認することができた。
【0104】
[実施例9]紫外線照射によって誘導されるコラーゲン分解酵素(MMP−1)生成抑制効果確認
本発明に係る伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の老化防止活性を測定するために次の実験を行った。
【0105】
先ず繊維芽細胞(MCTT社、韓国)を2×10/(24well)で接種して12時間培養して付着後、FBS無添加DMEM培地で12時間渇望させた(starved)。DPBSバッファーで洗浄して365nm 100mJ/cmを照射した。また、試料で実施例2の伽羅木の形成層及び前形成層由来細胞株のDMSO抽出物を50及び25ppmの濃度で、さらに実施例2の培養液を1及び0.1%の濃度でFBS無添加DMEM培地で濃度毎に24時間処理した。この時、陽性対照群としてRA(Retinoic acid)を1μM処理し、追加対照群として伽羅木抽出物を50及び25ppmの濃度で処理した。その後、培地を回収して遠心分離と上澄み液中のMMP−1の量をELISA(Amersham)法で定量した。WST−1溶液を利用して、生存率を測定して補正した。
【0106】
その結果、図12に示したように、本発明に係る細胞株抽出物及び細胞株培養液の場合、MMP−1生成抑制効果が優秀であることが確認された(細胞株抽出物の場合、前形成層由来細胞株抽出物及び形成層由来細胞株抽出物の測定値の平均値で記述する)。特に、対照群の伽羅木抽出物及び老化防止効果が優秀であると知られているRAと比べてもMMP−1抑制効果が非常に優秀であることが明らかであり、老化防止用化粧料組成物として特に有用であることが明らかになった。
【0107】
[実施例10]細胞内のメラニン生成(melanogenesis)抑制効果
本発明に係る伽羅木の形成層または前形成層由来細胞株の美白活性を測定するために次の実験を行った。
【0108】
先ずマウスメラノーマ(B−16 F1)(韓国細胞株銀行、韓国)は、10%FBSが含まれていたDMEM培地で6−ウェルプレートにウェル当たり1×10個で接種した後、5%CO、37℃下で細胞がウェル底に約80%付着するまで培養した。培地を取除き、試料として実施例2の伽羅木の形成層及び前形成層由来細胞株DMSO抽出物が1及び10ppmで添加され、実施例2の培養液が0.05、0.1及び1%の濃度に希釈された培地に交換した後、5%CO、37℃下で一定時間培養した。この時、陽性対照群としてコウジ酸(Kojic acid)を1mM処理し、陰性対照群(図13の対照群)は試料未添加群とした。培地を取除いた細胞をPBSで洗浄して、これをトリプシンで処理して細胞を回収した。細胞ペレット(pellet)は10%DMSOが含まれていた1M NaOH 100uLを入れて、細胞内のメラニンを得た。この液をマイクロプレートリーダー(microplate reader: Tecan Infinite M200, Austria)で490nmで吸光度を測定して、一定の蛋白質当たりのメラニン量を求めた。蛋白質定量はブラッドフォード法を使用した。
【0109】
その結果、図13に示したように、本発明に係る細胞株抽出物及び培養液の場合、メラニンの生成が抑制されたことを確認することができた(細胞株抽出物の場合、前形成層由来細胞株抽出物及び形成層由来細胞株抽出物の測定値の平均値で記述する)。特に、細胞株抽出物1ppm処理時と培養液を処理した場合には美白効果と知らされたコウジ酸と実質的に同様のメラニン生成抑制効果を得ることができ、本発明に係る細胞株抽出物及び培養液が美白用化粧組成物として非常に有用であることが明らかになった。
【0110】
[実施例11]医薬製剤製造例
製剤例1.錠剤の製造
実施例2で製造された細胞株抽出物100mgをトウモロコシ澱粉100mg、乳糖100mg及びステアリン酸マグネシウム2mgを混合して、通常の錠剤製造方法により製造した。
【0111】
製剤例2.カプセル剤の製造
実施例2で製造された細胞株抽出物500mgを軟質ゼラチンカプセルに充填して、カプセル剤を製造した。
【0112】
製剤例3.シロップ剤の製造
実施例1で製造された細胞株1g、異性化糖10g、マンニトール5g、適量の精製水の含有量で通常の液製剤の製造方法により100mLのシロップ剤を製造した。
【0113】
製剤例4.注射剤の製造
実施例2で製造された細胞株抽出物200mgをポリオキシエチレン水素化カストロオイルを含有する生理食塩水200mgに加熱溶解させて、混合抽出物を0.1%の濃度で含有する注射剤を製造した。
【0114】
[実施例12]機能性食品の製造:機能性飲料の製造
製造例1.
実施例1で製造した細胞株200mgを96mLの水に溶解させた後、補助剤としてビタミンC500mg、矯味剤としてクエン酸、オリゴ糖を各々1g加え、保存剤としてナトリウムベンゾエート0.05gを加えた後、精製水を加えて、全量を100mLにして、機能性飲料を製造した。
【0115】
製造例2.
実施例2で製造した細胞株抽出物200mgを96mLの水に溶解させた後、補助剤としてビタミンC500mg、矯味剤としてクエン酸、オリゴ糖を各々1g加え、保存材としてナトリウムベンゾエート0.05gを加えた後、精製水を加えて、全量を100mLにして、機能性飲料を製造した。
【0116】
[実施例13]機能性化粧品の製造
製造例1.乳液の製造
実施例2で製造した細胞株抽出物6.2mg、1,3−ブチレングリコール6.5mg、グリセリン1.2mg、D−パンテノール0.2mg、エタノール3.0mg、カルボマー0.1mg、ステアリン酸1.5mg、ポリソルベート60 0.7mg、親油性グリセリルステアレート0.6mg、ソルビタンセスキオレエート0.3mg、セテアリルアルコール0.6mg、スクアラン3.5mg、カプリリック/カプリック・トリグリセリド(Caprylic/Capric Triglyceride)3mg、ジメチコン0.4mg、防腐剤少量、調合香料適量、精製水(合計100mgになるように添加)の組成により通常の方法で乳液を製造した。
【0117】
製造例2.クリームの製造
実施例2で製造した細胞株抽出物5.0mg、1,3−ブチレングリコール7.0mg、グリセリン1.0mg、D−パンテノール0.1mg、マグネシウムアルミニウムシリケート0.4mg、ステアリン酸2.0mg、ポリソルベート60 1.5mg、親油性グリセリルステアレート2.0mg、ソルビタンセスキオレエート1.5mg、ミネラルオイル4.0mg、セテアリルアルコール3.0mg、スクアラン3.8mg、カプリリック/カプリック・トリグリセリド2.8mg、ジメチコン0.4mg、キサンタンガム適量、トリエタノールアミン適量、トコフェリルアセテート適量、防腐剤少量、調合香料適量、精製水(合計100mgになるように添加)の組成により通常の方法でクリームを製造した。
【産業上利用の可能性】
【0118】
以上説明したように、本発明に係る組成物は、既存の抗酸化剤と抗炎症剤の副作用を最小化し、細胞内の代謝作用に係り、細胞内の活性酸素を減少させ、老化に係る信号を減少及び誘導させる効果があるため、老化の防止及び遅延に有用である。さらに、本発明に係る組成物はメラニン生成を抑制する効果があって、美白用化粧料組成物としても有用である。
【0119】
以上、発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者には、このような具体的技術は単に望ましい実施様態に過ぎず、これによって、本発明の範囲が制限されるのではない点は明白であろう。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とそれらの等価物によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イチイ属の形成層または前形成層由来の、以下の特性を有する細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する抗酸化、抗炎症または抗老化用組成物:
(a)先天的未分化状態であり;
(b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生長速度が速く、安定的に培養され;及び
(c)多数の液包を有する形態学的特徴を示す。
【請求項2】
前記細胞株が、更に、以下の特性を有する請求項1に記載の組成物:
(a)懸濁培養時に単細胞状態で存在すること;及び
(b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生物反応器においてシェアストレスに対して低い感受性を有する。
【請求項3】
前記細胞株が、以下の工程を含む分離方法によって得られる請求項1または2に記載の組成物:
(a)イチイ属の形成層または前形成層含有組織を取得する工程;
(b)前記取得された形成層または前形成層含有組織を培養して、形成層または前形成層から増殖する形成層または前形成層の層と前記形成層または前形成層以外の部分から無定形に増殖するカルス層を誘導する工程;及び
(c)前記カルス層から形成層または前形成層の層を分離して、形成層または前形成層由来細胞株を取得する工程。
【請求項4】
前記細胞株が、3〜5重量%の粗糖または砂糖;及びジャスモン酸メチル、真菌類抽出物、細菌類抽出物、酵母抽出物、キトサン、グルコマンナン、グルカン、フェニルアラニン、安息香酸、サリチル酸、アラキドン酸、STS、モバロナロネイトN−ベンゾリグリシン、ABA、SNP、IPP、BHT、CCC、エセフォン、馬尿酸、硝酸二アンモニウムセリウム、AgNO、硫酸バナジル、p−アミノ安息香酸、ブラシノステロイド、アルギン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムからなる群から選択される物質;を含む培地で更に培養される請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記抽出物が、蒸留水、アルコール、アセトン、DMSO及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒を用いて抽出される請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
イチイ属の形成層または前形成層由来の、以下の特性を有する細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する老化防止用化粧料組成物:
(a)先天的未分化状態であり;
(b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生長速度が速く、安定的に培養され;及び
(c)多数の液包を有する形態学的特徴を示す。
【請求項7】
前記細胞株が、更に、以下の特性を有する請求項6に記載の化粧料組成物:
(a)懸濁培養時に単細胞状態で存在すること;及び
(b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生物反応器においてシェアストレスに対して低い感受性を有する。
【請求項8】
前記組成物が、MMP−1生成を抑制する請求項6または7に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記細胞株が、以下の工程を含む分離方法によって得られる請求項6または7に記載の組成物:
(a)イチイ属の形成層または前形成層含有組織を取得する工程;
(b)前記取得された形成層または前形成層含有組織を培養して、形成層または前形成層から増殖する形成層または前形成層の層と前記形成層または前形成層以外の部分から無定形に増殖するカルス層を誘導する工程;及び
(c)前記カルス層から形成層または前形成層の層を分離して、形成層または前形成層由来細胞株を取得する工程。
【請求項10】
前記細胞株が、3〜5重量%の粗糖または砂糖;及びジャスモン酸メチル、真菌類抽出物、細菌類抽出物、酵母抽出物、キトサン、グルコマンナン、グルカン、フェニルアラニン、安息香酸、サリチル酸、アラキドン酸、STS、モバロナロネイトN−ベンゾリグリシン、ABA、SNP、IPP、BHT、CCC、エセフォン、馬尿酸、硝酸二アンモニウムセリウム、AgNO、硫酸バナジル、p−アミノ安息香酸、ブラシノステロイド、アルギン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムからなる群から選択される物質;を含む培地で更に培養される請求項9に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
前記抽出物が、蒸留水、アルコール、アセトン、DMSO及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒を用いて抽出される請求項6または7に記載の化粧料組成物。
【請求項12】
イチイ属の形成層または前形成層由来の、以下の特性を有する細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する美白用化粧料組成物:
(a)先天的未分化状態であり;
(b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生長速度が速く、安定的に培養され;及び
(c)多数の液包を有する形態学的特徴を示す。
【請求項13】
前記抽出物が、蒸留水、アルコール、アセトン、DMSO及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒を用いて抽出される請求項12に記載の化粧料組成物。
【請求項14】
イチイ属の形成層または前形成層由来の、以下の特性を有する細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する抗酸化機能性食品:
(a)先天的未分化状態であり;
(b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生長速度が速く、安定的に培養され;及び
(c)多数の液包を有する形態学的特徴を示す。
【請求項15】
前記抽出物が、蒸留水、アルコール、アセトン、DMSO及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒を用いて抽出される請求項14に記載の機能性食品。
【請求項16】
イチイ属の形成層または前形成層由来の、以下の特性を有する細胞株、その抽出物、その破砕物及びその培養液のうちいずれか一つ以上を含有する老化防止用機能性食品:
(a)先天的未分化状態であり;
(b)イチイ属の形成層または前形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生長速度が速く、安定的に培養され;及び
(c)多数の液包を有する形態学的特徴を示す。
【請求項17】
前記抽出物が、蒸留水、アルコール、アセトン、DMSO及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒を用いて抽出される請求項16に記載の機能性食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−520874(P2011−520874A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509412(P2011−509412)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002553
【国際公開番号】WO2009/139581
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510077978)株式会社ウンファ (11)
【Fターム(参考)】