説明

インクジェットインクのためのポリマー顔料分散剤を調製するためのモノマーとしての重合可能な官能基を有するフェニルアゾ−アセトアセタニリド誘導体及び関連化合物

下記式(I)によって表される発色団を有するモノマー:


式中、ARは置換又は非置換芳香族基を表し、ARは置換もしくは非置換芳香族基又は置換もしくは非置換アルキル基を表し、Rは置換又は非置換アルキル基を表し、R,AR及びARの一つは重合可能な官能基を有する置換基を持つ。このモノマーは顔料分散体、特にインクジェットインクのためのポリマー分散剤を調製するために有利に使用されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顔料分散体及び着色インクジェットインクにおけるカラー顔料と同様の構造を示す発色団を有するモノマーに関する。
【背景技術】
【0002】
顔料分散体は分散剤を使用して作られる。分散剤は分散媒体中の顔料粒子の分散の形成及び安定化を促進するための物質である。分散剤は一般に、アニオン、カチオン又はノニオンの構造を有する界面活性剤である。分散剤の存在は必要な分散エネルギーを実質的に低下させる。分散された顔料粒子は分散操作後、相互の引力によって再凝集する傾向を持ちうる。分散剤の使用はまた、顔料粒子のこの再凝集傾向を妨げる。
【0003】
分散剤はインクジェットインクのために使用されるときに特に高い条件に合致しなければならない。不適切な分散はそれ自体、液体系の粘度の増大、光沢の損失及び/又は色相のシフトとして出現する。さらに、顔料粒子の特に良好な分散は印刷ヘッドのノズル中の顔料粒子の通過を妨げないことを確実にすることが要求される。顔料粒子は通常、直径数マイクロメートルにすぎない。さらに、顔料粒子の凝集及びプリンターノズルの関連する閉塞はプリンターの待機時間で避けなければならない。
【0004】
ポリマー分散剤は分子の一部にいわゆるアルコール基を含み、それが分散される顔料上に吸着する。分子の空間的に別の部分において、ポリマー分散剤は突出するポリマー鎖を持ち、それによって顔料粒子は分散媒体と適合可能にされる(即ち、安定化される)。
【0005】
ポリマー分散剤の特性はモノマーの性質及びポリマー中のそれらの分布の両方に依存する。モノマーを無秩序に重合すること(例えばモノマーA及びBを重合してABBAABABにする)によって又はモノマーを交互に重合すること(例えばモノマーA及びBを重合してABABABABにする)によって得られたポリマー分散剤は一般に、劣った分散安定性をもたらす。分散安定性の改良はグラフトコポリマー及びブロックコポリマー分散剤を使用して得られる。
【0006】
グラフトコポリマー分散剤は主鎖(幹)に結合された側鎖を有するポリマー主鎖(幹)からなる。CA 2157361(DUPONT)は疎水性ポリマー主鎖及び親水性側鎖を有するグラフトコポリマー分散剤を使用することによって作られた顔料分散体を開示する。
【0007】
疎水性及び親水性ブロックを含有するブロックコポリマー分散剤は多数のインクジェットインク特許において開示されている。US 5859113(DUPONT)は芳香族又は脂肪族カルボン酸と反応される重合されたグリシジル(メタ)アクリレートモノマーのポリマーAセグメント、及びアルキル基中に1〜12個の炭素原子を有する重合されたアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーのポリマーBセグメントを有するABブロックコポリマー分散剤を開示する。
【0008】
水性インクジェットインクのためのポリマー分散剤の設計では、分散される顔料上に吸着する上述のアンカー基は一般に、顔料表面に対して親和性を示す疎水性基である。
【0009】
EP 0763580 A(TOYO INK)は水性線状ウレタンポリマー及び水性線状アクリルポリマーからなる群から選択された少なくとも一つの水性ポリマーの両末端又は一つの末端だけに有機染料、アントラキノン及びアクリドンからなる群から選択される少なくとも一つのタイプを有しかつ顔料と高い親和性を有する部分を持つ水性タイプの顔料分散剤を開示する。EP 0763378 A(TOYO INK)は非水性顔料分散のための同様の顔料分散剤も開示する。
【0010】
US 5420187(TOYO INK)は重合開始剤の存在下で酸性官能基を有する付加重合可能なモノマー及び他の付加重合可能なモノマーを重合することによって得られた顔料分散剤を開示し、重合開始剤は芳香族アミノ基を有するアントラキノン誘導体、芳香族アミノ基を有するアクリドン誘導体及び芳香族アミノ基を有する有機染料からなる群から選択される少なくとも一つの化合物をジアゾ化することによって作られるジアゾ化化合物である。この顔料分散剤では、着色剤はポリマー主鎖自体に位置される。
【0011】
US 2003044707(TOYO INK)は顔料のための分散剤を開示し、それは、顔料上に吸着するフタロシアニン型分子骨格及び分散の効果を出すために顔料の再凝集を防止するオリゴマー単位又はポリマー単位が共有結合される構造を有しかつ媒質又は溶媒に対する親和性を有する特定の化合物を含む。
【0012】
現在の慣習はカラー顔料の正確な又はほとんど正確な化学構造がカラー顔料との最大の親和性を確保するためにポリマー分散剤中にアンカー基として含められることである。結果として、各顔料はそれ自身のために作られたポリマー分散剤を持つ。実際には、これは完全な範囲のカラーインクジェットインクのセットを製造するために様々なポリマー分散剤の在庫の保持を要求する。顔料として銅フタロシアニンを有するシアンインクは全ての所望の特性が同じ顔料において組み合わされるという稀な例外である。しかし、イエロー顔料はインクジェットインクのそれらの適用において最も重要である特性に基づいて選択されなければならない。例えば、あるイエロー顔料はそれらの光安定性のために選択され、他のものは高い色強さを有する像を得るために選択される。様々なタイプのポリマー分散剤のかかる在庫の保持は追加の保管及び補給要求による財政上の不利を起こし、特定のインクジェットインクの製造のために「間違った」ポリマー分散剤を使用する可能性を増大させる。
【0013】
しかしながら、かかるポリマー分散剤の合成は、顔料の低い溶解性が顔料構造を含有するモノマーの低い溶解性を引き起こすので複雑である。
【0014】
一貫した像品質のため、インクジェットインクは顧客へのインクの輸送時の高温(60℃以上)及び使用時のインクジェットインクの分散媒体の変化、例えば溶媒の蒸発及び保湿剤、浸透剤及び他の添加剤の濃度の増加に対応することができる分散安定性を要求する。
【0015】
それゆえ、簡単な合成によって得られる単一のポリマー分散剤を使用してある範囲の安定した着色インクジェットインクを製造できることが大いに望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、複雑でない合成によって得られかつ異なるカラー顔料に対して好適であるポリマー分散剤を製造するためのモノマーを提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、高い分散安定性を有するインクジェットインクを提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、高い光学濃度を有する高い像品質の像を生成するためのインクジェットインクを提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は以下の記載から明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
高い光学濃度及び高い安定性を有するインクジェットインクは、ぶら下がっている発色団がカラー顔料と同様の構造を有するがカラー顔料より小さいサイズを有するカラーポリマー分散剤を使用して得られることが驚くべきことに見出された。
【0021】
本発明の目的は下記式(I)によって表される発色団を有するモノマーで実現される:

式中、ARは置換又は非置換芳香族基を表し、ARは置換もしくは非置換芳香族基又は置換もしくは非置換アルキル基を表し、Rは置換又は非置換アルキル基を表し、R,AR及びARの一つは重合可能な官能基を有する置換基を持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
定義
本発明の開示に使用される用語「着色剤」は染料及び顔料を意味する。
【0023】
本発明の開示に使用される用語「染料」はそれが関係する周囲条件下で適用される媒体において10mg/L以上の溶解性を有する着色剤を意味する。
【0024】
用語「顔料」はDIN55943(ここに参考として組み入れられる)において関係する周囲条件下で適用媒体において実際に不溶解性である(即ち、その媒体において10mg/Lより小さい溶解性を有する)着色剤として規定される。
【0025】
本発明の開示に使用される用語「発色団」は300nm〜2000nmの吸収最大を有する基を意味する。
【0026】
本発明の開示に使用される用語「ぶら下がっている発色団」はポリマー主鎖上の側基として存在する発色団を意味し、ポリマー主鎖自体の基又はポリマー主鎖の末端基としてのみ存在する基を意味しない。
【0027】
用語「C.I.」はカラーインデックスの略語として本願の開示に使用される。
【0028】
本発明の開示に使用される用語「化学線」は光化学反応を開始することができる電磁線を意味する。
【0029】
用語「DP」は重合度、即ち平均的なポリマー分子における構造単位(モノマー)の数の略語として本願の開示に使用される。
【0030】
用語「PD」はポリマーの多分散性の略語として本願の開示に使用される。
【0031】
本発明の開示に使用される用語「分散」は少なくとも二つの物質の均質混合物を意味し、それらの一つ(分散相又はコロイドと称される)は第二の物質(分散媒体と称される)を通して微粉状態で均一に分布される。
【0032】
本発明の開示に使用される用語「ポリマー分散剤」は分散媒体における一つの物質の分散の形成及び安定化を促進するための物質を意味する。
【0033】
本発明の開示に使用される用語「コポリマー」は二つ以上の異なる種のモノマーがポリマー鎖中に組み込まれている巨大分子を意味する。
【0034】
本発明の開示に使用される用語「ブロックコポリマー」はモノマーが一つの鎖における相対的に長い交互の配列で存在するコポリマーを意味する。
【0035】
本発明の開示に使用される用語「スペクトル分離率(spectral separation factor)」は最大吸光度Amax(波長λmaxで測定)のより高い波長λrefで測定された参照吸光度Arefに対する比率を計算することによって得られた値を意味する。
【0036】
本発明の開示に使用される「SSF」はスペクトル分離率の略語である。
【0037】
用語「アルキル」はアルキル基における炭素原子の各数に対して可能な全ての変形を意味し、例えば三つの炭素原子に対してはn−プロピル及びイソプロピルであり、四つの炭素原子に対してはn−ブチル、イソブチル及びターシャリブチルであり、五つの炭素原子に対してはn−ペンチル、1−1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピル及び2−メチル−ブチルなどである。
【0038】
用語「アシル基」は−(C=O)−アリール及び−(C=O)−アルキル基を意味する。
【0039】
用語「脂肪族基」は飽和された直鎖、枝分かれ鎖及び脂環式炭化水素基を意味する。
【0040】
用語「不飽和脂肪族基」は、少なくとも一つの二重又は三重結合を含む、直鎖、枝分かれ鎖及び脂環式炭化水素基を意味する。
【0041】
本発明の開示に使用される用語「芳香族基」は環式共役炭素原子の集合体を意味し、それらは大きい共鳴エネルギーを特徴とし、例えばベンゼン、ナフタレン及びアントラセンである。
【0042】
用語「脂環式炭化水素基」は環式炭素原子の集合体を意味し、それらは芳香族基、例えばシクロヘキサンを形成しない。
【0043】
用語「複素芳香族基」は少なくとも一つの環式共役炭素原子が窒素原子、硫黄原子、燐原子、セレン原子及びテルル原子の如き非炭素原子によって置換されている芳香族基を意味する。
【0044】
用語「複素環式基」は少なくとも一つの環式炭素原子が酸素原子、窒素原子、燐原子、ケイ素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子の如き非炭素原子によって置換されている脂環式炭化水素基を意味する。
【0045】
発色団を有するモノマー
本発明による発色団を有するモノマーは下記式(I)によって表されることができる:

式中、ARは置換又は非置換芳香族基を表し、ARは置換もしくは非置換芳香族基又は置換もしくは非置換アルキル基を表し、Rは置換又は非置換アルキル基を表し、R,AR及びARの一つは重合可能な官能基を有する置換基を持つ。
【0046】
本発明による発色団を有するモノマーは好ましくはラジカル又はカチオン重合によって、最も好ましくはラジカル重合によって重合可能である。R,AR及びARの少なくとも一つの上で重合可能な官能基を有する置換基の重合可能な官能基はエチレン不飽和の重合可能な官能基であることが好ましい。
【0047】
一つの実施態様では、式(I)のARはアルキル基、好ましくはメチル又はエチルによって置換される。
【0048】
別の実施態様では、式(I)のARは重合可能な官能基、好ましくはエチレン不飽和の重合可能な官能基を有する脂肪族置換基によって置換される。好ましくは、この脂肪族エチレン不飽和の重合可能な官能基は以下のものによって置換される。

【0049】
好ましい実施態様では、モノマーは式(II)によって表される:

式中、R1〜R11の一つは前記重合可能な官能基を有する置換基であり、R1〜R11がもし前記重合可能な官能基を有する置換基を表さないなら、水素、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコール基、カルボン酸基、エステル基、アシル基、ニトロ基及びハロゲンからなる群から独立して選択され、又はR7及びR8は一緒に複素環式環を形成してもよい。
好ましい実施態様では、R7及びR8によって形成される複素環式環はイミダゾールである。
【0050】
重合可能な官能基はエチレン不飽和の重合可能な官能基であることが好ましい。エチレン不飽和の重合可能な官能基はスチレン、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエステル及びビニルエーテルからなる群から選択されることが好ましい。
【0051】
式(I)による好適なモノマーは表1:スチレン誘導体、表2:(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド誘導体、及び表3:他の重合可能な誘導体に開示されたモノマーを含む。


【0052】


【0053】

【0054】
着色されたインクジェットインク
【0055】
着色されたインクジェットインクは少なくとも三つの成分:(i)カラー顔料、(ii)ポリマー分散剤、及び(iii)分散媒体を含む。
【0056】
着色されたインクジェットインクは少なくとも一つの界面活性剤をさらに含有してもよい。
【0057】
着色されたインクジェットインクは少なくとも一つの殺生物剤をさらに含有してもよい。
【0058】
着色されたインクジェットインクは少なくとも一つの保湿剤及び/又は浸透剤をさらに含有してもよい。
【0059】
着色されたインクジェットインクは少なくとも一つのpH調整剤をさらに含有してもよい。
【0060】
着色されたインクジェットインクはインクの蒸発速度を低下させるその能力によるノズルの詰まりを防止するために少なくとも一つの浸透剤をさらに含有してもよい。
【0061】
着色されたインクジェットインクの粘度は100S−1の剪断速度及び20〜110℃の温度で好ましくは100mPa.s未満、より好ましくは30mPa.s未満、最も好ましくは15mPa.s未満である。
【0062】
本発明による着色されたインクジェットインクは水性、溶媒ベース又は油ベースの着色インクジェットインクであることが好ましい。
【0063】
着色されたインクジェットインクは硬化性であってもよく、異なる官能度を持つモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーを含有してもよい。モノ、ジ、トリ及び/又はそれより多い官能価のモノマー、オリゴマー又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物を使用してもよい。開始剤は典型的には重合反応を開始する。重合反応を開始するための開始剤と称される触媒は硬化性着色インクジェットインクに含まれてもよい。開始剤は熱的開始剤であることができるが、光開始剤であることが好ましい。光開始剤はポリマーを形成するためにモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーより低い活性エネルギーを要求する。硬化性液体に使用するために好適な光開始剤はノリッシュI型開始剤、ノリッシュII型開始剤又は光酸発生剤であってもよい。
【0064】
カラー顔料
カラー顔料は本発明によるモノマーにおける発色団と同様の構造を有するが、より小さいサイズであることが好ましい。発色団はカラー顔料の分子量の95%より小さい、好ましくは90%より小さい、好ましくは85%より小さい、より好ましくは75%より小さい、最も好ましくは65%より小さい分子量を有することが好ましい。
【0065】
カラー顔料はHERBST,Willy,et al.Industrial Organic Pigments,Production, Properties,Applications.3rdth edition.Wiley−VCH,2004.ISBN 3527305769によって開示されたものから選択されてもよい。
【0066】
特に好ましい顔料はC.I.Pigment Yellow 12,13,14,17,55,63,81,83,87,113,121,124,152,170,171,172,174及び188である。
【0067】
特に好ましい顔料はC.I.Pigment Yellow 1,2,3,5,6,49,65,73,74,75,97,98,111,116,130及び213である。
【0068】
特に好ましい顔料はC.I.Pigment Yellow 120,151,154,175,180,181及び194である。
【0069】
特に好ましい顔料はC.I.Pigment Orange 1,36,60,62及び72である。
【0070】
着色されたインクジェットインクにおける顔料粒子はインクジェット印刷装置、特に発射ノズルのインクの自由な流れを可能にするために十分に小さくすべきである。また、最大の色の強さのため及び沈降を遅くするために小さい粒子を使用することが望ましい。
【0071】
着色されたインクジェットインクにおける顔料の平均粒子サイズは0.005〜15μmにすべきである。好ましくは、平均顔料粒子サイズは0.005〜5μm、より好ましくは0.005〜1μm、特に好ましくは0.005〜0.3μm、最も好ましくは0.040〜0.150μmである。本発明の目的が達成される限り、より大きい顔料粒子サイズを使用してもよい。
【0072】
顔料は着色されたインクジェットインクの全重量に基づいて0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の量で着色されたインクジェットインクに使用される。
【0073】
ポリマー分散剤
着色されたインクジェットインクのためのポリマー分散剤は本発明による一つ以上のモノマーを含むポリマー主鎖を有する。ポリマー分散剤のポリマー主鎖を構成する他のモノマー種はポリマー分散剤と分散媒体の間の相溶性のために要求される。ポリマー主鎖の残りは顔料に対する親和性を有することは要求されない。例えば、水性インクジェットインクのための分散剤のポリマー主鎖の残りはアクリル酸モノマーのホモポリマーであることができる。ホモポリマーは一般に顔料を分散できないが、顔料と類似性を示す発色団を有する一つ以上のモノマー単位の存在はポリマー分散剤と顔料表面の間の適切な親和性を保証する。
【0074】
ポリマー主鎖はまた、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、くし形コポリマー又は交互コポリマーであることができる。また、ポリマー主鎖として好適なものは、MATYJASZEWSKI,K.,et al.Atom Transfer Radical Polymerization. Chem. Reviews 2001.vol.101,p.2921−2990によって開示された勾配コポリマーである。ときにはインクの特定の特性、例えば分散安定性を高めるために顔料表面に対して高い親和性を有する多数のモノマーを含めることが有用でありうる。例えば、水性インクジェットインクのための分散剤のポリマー主鎖は顔料表面に対するポリマー分散剤の親和性を増大するために疎水性モノマーを含有してもよい。しかしながら、この顔料表面に対する親和性を高めるときに、ポリマー主鎖が顔料粒子を分散媒体と相溶性にするために十分に突出するように注意を払うべきである。
【0075】
本発明による着色されたインクジェットインクに使用されるポリマー分散剤のポリマー主鎖のモノマー単位の好ましくは最大45%、より好ましくは最大30%は発色団を有する。
【0076】
グラフトコポリマーではメトキシポリエチレングリコール(MPEG)のグラフトされた鎖の使用は水性インクジェットインクにおいて極めて有利であることが見出された。溶媒ベースのインクジェットインクに対しては、ポリエステルのグラフトされた鎖の使用が極めて有利であることが見出された。好ましいMPEGマクロモノマーはLAPORTE INDUSTRIES LTDからのBISOMER(商品名)MPEG 350MA(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)である。
【0077】
非水性インクジェットインクにおけるポリエステルの好ましいグラフト鎖はδ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン及び/又はC〜Cのアルキル置換ε−カプロラクトンから誘導される。グラフト鎖は例えば分散剤のポリマー主鎖におけるアクリル酸モノマーのカルボン酸基とポリエステル−OH鎖のCDI結合を通してポリマー分散剤中に導入されることができる。しかしながら、アクリル酸モノマーのカルボン酸基に既に結合したポリエステル鎖がマクロモノマーとして使用されるフリーラジカルによるグラフト化は良好な分散品質を生じるだけでなく、要求する精製が少ない再現可能なポリマー分散剤の合成によって得られることが観察された。
【0078】
モノマー及び/又はオリゴマーを含むか又はそれらからなる分散媒体を有する放射線硬化性インクに対しては、分散媒体において良好な溶解性を有する多くの(コ)ポリマーはポリマー分散剤のポリマー主鎖のために好適である。
【0079】
ポリマー主鎖は好ましくはたった二つ又は三つのモノマー種からなる。これらのモノマー種はPolymer Handbook,Vol.1+2.4th edition.J.BRANDRUP,et al編集.Wiley−Interscience,1999に見出されるいかなるモノマー及び/又はオリゴマーであることもできる。
【0080】
モノマーの好適な例はアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリロイルオキシ安息香酸及びメタクリロイルオキシ安息香酸(又はそれらの塩)、無水マレイン酸;アルキル(メタ)アクリレート(線状、枝分かれした及びシクロアルキル)、例えばメチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレート及びフェニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;他のタイプの官能基(例えばオキシラン、アミノ、フルオロ、ポリエチレンオキサイド、ホスフェート置換)を有する(メタ)アクリレート、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート;アリル誘導体、例えばアリルグリシジルエーテル;スチレン類、例えばスチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、及び4−アセトキシスチレン;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド(N−モノ及びN,N−二置換を含む)、例えばN−ベンジル(メタ)アクリルアミド;マレイミド、例えばN−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド及びN−エチルマレイミド;ビニル誘導体、例えばビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルナフタレン及びビニルハライド;ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル;及びカルボン酸のビニルエステル、例えばビニルアセテート及びビニルブチレートを含む。
【0081】
本発明による着色されたインクジェットインクに使用されるポリマー分散剤は好ましくは5〜1000、より好ましくは10〜500、最も好ましくは10〜100の重合度DPを有するポリマー主鎖を持つ。
【0082】
着色されたインクジェットインクに使用されるポリマー分散剤は好ましくは500〜30000、より好ましくは1500〜10000の数平均分子量Mnを持つ。
【0083】
ポリマー分散剤は好ましくは2より小さい、より好ましくは1.75より小さい、最も好ましくは1.5より小さいポリマー分散度PDを持つ。
【0084】
ポリマー分散剤は顔料の重量に基づいて5〜600重量%、好ましくは10〜100重量%の量で着色されたインクジェットインクに使用される。
【0085】
合成
着色されたインクジェットインクに使用されるポリマー分散剤は本発明によるモノマーとの共重合によって製造される。
【0086】
重合方法は、連鎖生長が水又はメタノールの如き小さな分子の除去を伴う縮合重合、又はポリマーが他の物質の損失なしで形成される付加重合であってもよい。モノマーの重合は塊状重合及び半連続重合の如き従来方法に従って行なわれることができる。
【0087】
合成は制御されたラジカル重合(CRP)技術によって実施されることが好ましい。好適な重合技術はATRP(原子移動ラジカル重合)、RAFT(可逆的付加−鎖断片化移動重合)、MADIX(移動活性キサントゲン酸を使用する)可逆的付加−鎖断片化移動法)、触媒鎖移動(例えばコバルト錯体を使用する)、GTP(基移動重合)、又はニトロキシド(例えばTEMPO)媒介重合を含む。
【0088】
ポリマー主鎖のモノマーと発色団を含有するモノマーを共重合することによって製造されたポリマー分散剤は、反応性基を有する発色団での(コ)ポリマーの変性によって製造されたポリマー分散剤と比較して優れた特性を有することが見出された。発色団を含有するモノマーを使用する重合方法は幅広い種類の分散媒体に対して十分に制御された設計のポリマー分散剤の利点を提供する。その低い溶解性のため、発色団として完全なカラー顔料を含有するモノマーはポリマー分散剤の合成、並びに幅広い種類の分散媒体及び顔料に対するポリマー分散剤の適合性の両方において問題を与える。
【0089】
分散媒体
着色されたインクジェットインクに使用される分散媒体は液体である。分散媒体は水及び/又は有機溶媒からなってもよい。
【0090】
もし着色されたインクジェットインクが硬化性の着色されたインクジェットインクであるなら、水及び/又は有機溶媒は液体分散媒体を得るために一つ以上のモノマー及び/又はオリゴマーによって置換される。ときには、分散剤の溶解を改善するために少量の有機溶媒を添加することが有利でありうる。有機溶媒の含有量は着色されたインクジェットインクの全重量に基づいて20重量%より低くすべきである。
【0091】
好適な有機溶媒はアルコール、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、カルビトール、セロソルブ、高級脂肪酸エステルを含む。好適なアルコールはメタノール、エタノール、プロパノール及び1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ブタノール、t−ブタノールを含む。好適な芳香族炭化水素はトルエン及びキシレンを含む。好適なケトンはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2,4−ペンタンジオン及びヘキサフルオロアセトンを含む。また、グリコール、グリコエーテル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドを使用してもよい。
【0092】
好適なモノマー及びオリゴマーは、Polymer Handbook,Vol.1+2.4th edition.J.BRANDRUP,et al編集.Wiley−Interscience,1999に見出されることができる。
【0093】
硬化性の着色されたインクジェットインクのためのモノマーの好適な例はアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸(又はそれらの塩)、無水マレイン酸;アルキル(メタ)アクリレート(線状、枝分かれ及びシクロアルキル)、例えばメチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレート及びフェニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;他のタイプの官能基(例えばオキシラン、アミノ、フルオロ、ポリエチレンオキサイド、ホスフェート置換)を有する(メタ)アクリレート、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート;アリル誘導体、例えばアリルグリシジルエーテル;スチレン類、例えばスチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、及び4−アセトキシスチレン;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド(N−モノ及びN,N−二置換を含む)、例えばN−ベンジル(メタ)アクリルアミド;マレイミド、例えばN−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド及びN−エチルマレイミド;ビニル誘導体、例えばビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルナフタレン及びビニルハライド;ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル;及びカルボン酸のビニルエステル、例えばビニルアセテート及びビニルブチレートを含む。
【0094】
モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを使用してもよい。モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーは異なる官能度を持ってもよく、モノ−、ジ−、トリ−及びそれより高い官能価のモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーを含む混合物を使用してもよい。
【0095】
別の実施態様では、本発明によるモノマーは分散媒体の一部である。
【0096】
油ベースのインクジェットインクに対しては分散媒体は芳香油、パラフィン系油、抽出パラフィン系油、ナフテン系油、抽出ナフテン系油、水素処理された軽油又は重油、植物油及びそれらの誘導体及び混合物を含むいかなる好適な油であることもできる。パラフィン系油は通常のパラフィン型(オクタン及びそれより高級のアルカン)、イソパラフィン(イソオクタン及びそれより高級のイソアルカン)及びシクロパラフィン(シクロオクタン及びそれより高級のシクロアルカン)及びパラフィン系油の混合物であることができる。
【0097】
界面活性剤
着色されたインクジェットインクは少なくとも一種の界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は両性イオン性であることができ、着色されたインクジェットインクの全重量に基づいて20重量%未満の全量で、特に着色されたインクジェットインクの全重量に基づいて10重量%未満の全量で通常添加される。
【0098】
着色されたインクジェットインクのために好適な界面活性剤は脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、アルキルベンゼンスルホネート塩、スルホンスクシネートエステル塩及び高級アルコールのリン酸エステル塩(例えば、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート及びナトリウムジオクチルスルホスクシネート)、高級アルコールのエチレンオキサイドアダクト、アルキルフェノールのエチレンオキサイドアダクト、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキサイドアダクト、及びアセチレングリコール及びそのエチレンオキサイドアダクト(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びSURFYNOL(登録商標)104,104H,440,465及びTG,AIR PRODUCTS&CHEMICALS INCから入手可能)を含む。
【0099】
殺生物剤
本発明の着色されたインクジェットインクのために好適な殺生物剤はナトリウムデヒドロアセテート、2−フェノキシエタノール、ナトリウムベンゾエート、ナトリウムピリジンチオン−1−オキサイド、エチルp−ヒドロキシベンゾエート及び1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びそれらの塩を含む。
【0100】
好ましい殺生物剤はHENKELから入手可能なBronidox(登録商標)及びAVECIAから入手可能なProxel(登録商標)GXLである。
【0101】
殺生物剤は0.001〜3重量%、より好ましくは0.01〜1.00重量%の量で添加されることが好ましい(各々は着色されたインクジェットインクの全重量に基づく)。
【0102】
pH調整剤
着色されたインクジェットインクは少なくとも一種のpH調整剤を含有してもよい。好適なpH調整剤はNaOH,KOH,NEt,NH,HCl,HNO,HSO及び(ポリ)アルカノールアミン、例えばトリエタノールアミン及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールを含む。好ましいpH調整剤はNaOH及びHSOである。
【0103】
保湿剤/浸透剤
好適な保湿剤はトリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、グリセロール、ウレア、チオウレア、エチレンウレア、アルキルウレア、アルキルチオウレア、ジアルキルウレア及びジアルキルチオウレア、ジオール(エタンジオール、プロパンジオール、プロパンエトリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含む);グリコール(プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールを含む)、及びそれらの混合物及び誘導体を含む。好ましい浸透剤はトリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセロール及び1,2−ヘキサンジオールである。浸透剤はインクジェットインク配合物に配合物の0.1〜40重量%、より好ましくは配合物の0.1〜10重量%、最も好ましくは約4.0〜6.0重量%の量で添加されることが好ましい。
【0104】
着色されたインクジェットインクの製造
着色されたインクジェットインクはポリマー分散剤の存在下で分散媒体において顔料を沈殿又は微粉砕することによって製造されてもよい。
【0105】
混合装置は圧力ニーダー、オープンニーダー、遊星形ミキサー、溶解機、及びダルトンユニバーサルミキサーを含んでもよい。好適な微粉砕及び分散装置はボールミル、パールミル、コロイドミル、高速分散器、ダブルローラー、ビーズミル、ペイントコンディショナー、及びトリプルローラーである。分散はまた、超音波エネルギーを使用して作られてもよい。
【0106】
多くの異なるタイプの材料はガラス、セラミックス、金属、及びプラスチックの如き微粉砕媒体として使用されてもよい。好ましい実施態様では、粉砕媒体は粒子、好ましくは実質的に球状形状のもの、例えば本質的にポリマー樹脂からなるビーズ又はイットリウム安定化ジルコニウムビーズを含むことができる。
【0107】
混合、微粉砕及び分散の工程では、各工程は、熱の蓄積を防止するために冷却して、そして化学線が実質的に除外された光条件下でできるだけ多い放射線硬化性インクジェットインクに対して実施される。
【0108】
インクジェットインクは一種より多い顔料を含んでもよく、インクジェットインクは各顔料に対して別個の分散剤を使用して調製されてもよく、又は幾つかの顔料は分散体を調製するのに混合及び共微粉砕されてもよい。
【0109】
分散工程は連続式、バッチ式、又は半バッチ式で実施されることができる。
【0110】
ミル微粉砕物の成分の好ましい量及び比率は特定の材料及び意図した用途に依存して幅広く変化するだろう。微粉砕混合物の中身はミル微粉砕物及び微粉砕媒体を含む。ミル微粉砕物は顔料、ポリマー分散剤及び液体キャリア(例えば水)を含む。インクジェットインクに対して、顔料は通常、微粉砕媒体を除くと1〜50重量%でミル微粉砕物中に存在する。顔料のポリマー分散剤に対する重量比は20:1〜1:2である。
【0111】
微粉砕時間は、幅広く変化することができ、顔料、機械的手段及び選択される滞留条件、初期及び所望の最終粒子サイズなどに依存する。本発明では、100nm未満の平均粒子サイズを有する顔料分散体を調製してもよい。
【0112】
微粉砕が完了した後、微粉砕媒体は濾過、メッシュスクリーンを通した篩分けなどの通常の分離技術を使用して微粉砕された粒状化合物(乾燥又は液体分散形態のいずれかで)から分離される。しばしば篩分けはミル、例えばビーズミル中に組み入れられる。微粉砕された顔料濃縮物は濾過によって微粉砕媒体から分離されることが好ましい。
【0113】
一般に、インクジェットインクを濃縮されたミル微粉砕物の形で作ることが望ましく、それは次いでインクジェット印刷システムに使用するために適切な濃度に希釈される。この技術は装置から多量の着色されたインクの製造を可能にする。希釈によって、インクジェットインクは個々の用途に対して、所望の粘度、表面張力、色、色相、飽和濃度、及び印刷領域被覆率に調整される。
【0114】
スペクトル分離率
スペクトル分離率SSFは着色されたインクジェットインクを特徴づけるために優れた測度であることが見出された。なぜならば、それは光吸収に関する特性(最大吸光度の波長λmax、吸収スペクトルの形状及びλmaxにおける吸光度値)並びに分散品質及び安定性に関する特性を考慮に入れているからである。
【0115】
高い波長における吸光度の測定は吸収スペクトルの形状についての表示を与える。分散品質は溶液中の固体粒子によって誘導された光散乱の現象に基づいて評価されることができる。透過で測定すると、顔料インクにおける光散乱は実際の顔料の吸光度ピークより高い波長の増大した吸光度として検出されてもよい。分散安定性は例えば80℃で一週間の熱処理の前後のSSFを比較することによって評価されることができる。
【0116】
インクのスペクトル分離率SSFは、支持体上に噴出された像又はインク溶液の記録されたスペクトルのデータを使用し、最大吸光度をより高い参照波長λrefにおける吸光度と比較することによって計算される。スペクトル分離率は最大吸光度Amaxの参照波長における吸光度Arefに対する比率として計算される。

【0117】
SSFは大きな色域を有するインクジェットセットを設計するための優れたツールである。しばしばインクジェットインクセットは現在商業化され、そこでは異なるインクは互いに十分に適合しない。例えば、全てのインクの組み合わされた吸収性は可視スペクトル全体に対して完全な吸収を与えない。例えば着色剤の吸収スペクトル間に「間隙」が存在する。別の問題はあるインクが別のインクの範囲で吸収しうることである。これらのインクジェットインクセットの生じた色域は低いか又は月並みである。
【実施例】
【0118】
材料
以下の実施例で使用された全ての材料は特記しない限り、Aldrich Chemical Co.(ベルギー)及びAcros(ベルギー)のような標準的な出所から容易に入手可能である。使用された水は脱イオン水であった。
【0119】
SMA 1000PはATOFINAから入手可能なスチレン無水マレイン酸の交互コポリマーである。
VERSICOL E5は水におけるpAAの25重量%溶液としてALLIED COLLOIDS MANUFACTURING CO LTDから得られた。この溶液は続いて変性反応のために使用されたポリアクリル酸の乾燥粉末を与えるために凍結乾燥された。
Raney Nickel(登録商標)はDEGUSSAからの触媒である。
WAKO V−601はWako Pure Chemical Industries,Ltdからのジメチル2,2′−アゾビスイソブチレートである。
MSTY又はアルファメチルスチレンダイマーはGoi Chemical Co.,Ltdからの2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンである。
AAはACROSからのアクリル酸である。
MAAはACROSからのメタクリル酸である。
BAはACROSからのブチルアクリレートである。
EHAはACROSからの2−エチルヘキシルアクリレートである。
STYはACROSからのスチレンである。
Proxel(登録商標)Ultra5はAVECIAからである。
グリセロールはACROSからである。
1,2−プロパンジオールはCALDIC CHEMIE NVからである。
Surfynol(登録商標)104HはAIR PRODUCTS&CHEMICALS INCからである。
PY12はC.I.Pigment Yellow 12の略語であり、それに対してCLARIANTからのPermanent(登録商標)Yellow DHGが使用された。
PY13はC.I.Pigment Yellow 13の略語であり、それに対してCIBAからのIrgalite(登録商標)Yellow BAWが使用された。
PY14はC.I.Pigment Yellow 14の略語であり、それに対してSUN CHEMICALからのSunbrite Yellow 14/274−2168が使用された。
PY17はC.I.Pigment Yellow 17の略語であり、それに対してCLARIANTからのGraphtol(登録商標)Yellow GGが使用された。
【0120】
使用されたカラー顔料の化学的構造は表4に掲載される。

【0121】
測定方法
1.SSFの測定
インクのスペクトル分離率SSFは、インク溶液の記録されたスペクトルのデータを使用し、最大吸光度と参照波長の吸光度を比較することによって計算された。この参照波長の選択は使用された顔料に依存する:
・もしカラーインクが400〜500nmの最大吸光度Amaxを持つなら、そのとき吸光度Arefは600nmの参照波長で決定されなければならない。
・もしカラーインクが500〜600nmの最大吸光度Amaxを持つなら、そのとき吸光度Arefは650nmの参照波長で決定されなければならない。
・もしカラーインクが600〜700nmの最大吸光度Amaxを持つなら、そのとき吸光度Arefは830nmの参照波長で決定されなければならない。
【0122】
吸光度はShimadzu UV−2101 PC複光束−分光光度計を用いて透過で測定された。インクは0.002%の顔料濃度を持つように希釈された。マゼンタインクの場合において、インクは0.005%の顔料濃度を持つように希釈された。希釈されたインクのUV−VIS−NIR吸収スペクトルの分光光度測定は表5の設定を使用して複光束分光光度計を用いて透過モードで行なわれた。10mmの路長を持つ石英セルが使用され、水がブランクとして選択された。

【0123】
狭い吸収スペクトル及び高い最大吸光度を示す効果的な着色されたインクジェットインクは少なくとも30のSSFの値を有する。
【0124】
2.分散安定性
分散安定性は80℃で一週間の熱処理の前後のSSFを比較することによって評価された。良好な分散安定性を示す着色されたインクジェットインクは熱処理後に30より大きいSSFを有する。
【0125】
3.ポリマー分析
他に特記しない限り、全てのポリマーは以下の方法を使用してゲル透過クロマトグラフィ(GPC)及び核磁気共鳴分光法(NMR)で特性決定された。ランダム又はブロックコポリマーは重水素化溶媒にそれらを溶解することによってNMRで分析された。H−NMRに対して±20mgのポリマーが0.8mLのCDCl又はDMSO−d6又はアセトニトリル−d3又はDO(NaODの添加あり又はなし)に溶解された。スペクトルはIDプローブを備えたVarian Inova 400MHz装置で記録された。13C−NMRに対して±200mgのポリマーが0.8mLのCDCl又はDMSO−d6又はアセトニトリル−d3又はDO(NaODの添加あり又はなし)に溶解された。スペクトルはSWプローブを備えたVarian Gemini2000 300MHzで記録された。
【0126】
Mn,Mw及び多分散性(PD)値はゲル透過クロマトグラフィを使用して決定された。有機溶媒に溶解可能なポリマーに対してPL混合Bカラム(Polymer Laboratories Ltd)が、較正基準として既知の分子量を有するポリスチレンを用いて移動相としてTHF+5%酢酸とともに使用された。これらのポリマーは1mg/mLの濃度で移動相に溶解された。水に溶解可能なポリマーに対してPL Aquagel OH−60,OH−50,OH−40及び/又はOH−30(Polymer Laboratories Ltd)カラムの組み合わせが、調査下のポリマーの分子量領域に依存して使用された。移動相として例えばリン酸一水素ニナトリウムでpH9.2に調整された水/メタノールの混合物が、中性塩(例えば硝酸ナトリウム)の添加あり又はなしで使用された。較正基準として既知の分子量を有するポリアクリル酸が使用された。ポリマーは水又は1mg/mLの濃度で水酸化アンモニウムで塩基性にされた水のいずれかに溶解された。屈折率の検出が使用された。
【0127】
ランダム(統計)コポリマーP(MAA−c−EHA)の平均的な組成の計算を示すために一例が与えられる。コポリマーのMnはGPCで5000であることが決定された。NMRによって各モノマータイプのモル百分率は45mol%のMAA及び55mol%のEHAであることが決定された。
計算:
(0.45×MMAA)+(0.55×MEHA)=140.09
5000/140.09=平均的なポリマー鎖中のモノマー単位の総数=36
MAA単位の平均数=0.45×(5000/140.09)=16単位
EHA単位の平均数=0.55×(5000/140.09)=20単位
従って、平均的な組成はP(MAA16−c−EHA20)である。
【0128】
4.粒子サイズ
着色されたインクジェットインクにおける顔料粒子の粒子サイズは着色されたインクジェットインクの希釈された試料について4mWのHeNeレーザで633nmの波長で光子相関分光法によって決定された。使用された粒子サイズ分析器はGoffin−Meyvisから入手可能なMalvern(登録商標)nano−Sであった。
【0129】
試料は1.5mLの水を含有するキュベットにインクの一滴を添加することによって調製され、均一な試料が得られるまで混合された。測定された粒子サイズは20秒の6回からなる三つの連続した測定の平均値である。良好なインクジェット特性(噴出特性及び印刷品質)について分散された粒子の平均粒子サイズは150nm以下であることが好ましい。
【0130】
5.%MWの計算
%MWはカラー顔料の分子量に対する発色団の分子量の比率に100を掛けて計算される。
【0131】
実施例1
この実施例はインクジェットのための異なる顔料が顔料と同様の構造を持つ小さな発色団を有する本発明によるモノマーで作られた同じポリマー分散剤を使用して分散されることができることを示す。分散剤のポリマー主鎖はホモポリマーであり、それは劣った分散能力を持つことが知られている。
【0132】
ポリマー分散剤DISP−1及びDISP−2
比較はホモポリマーと発色団で変性されたホモポリマーでなされた。
【0133】
VERSICOL E5(アクリル酸のホモポリマー)がポリマー分散剤DISP−1として使用された。ポリマー分散剤DISP−2は発色団MC−2でのエステル化によってVERSICOL E5を変性することによって調製された。
【0134】
発色団MC−2
発色団MC−2の形成は化合物MC−1Dのジアゾ化及び続く化合物MC−2Bにおけるカップリングによって達成された。
【0135】
化合物MC−1Cの調製
この反応を実施するために使用された容器は攪拌機、冷却器及び滴下漏斗を備えた三ッ口フラスコであった。100mLのジメチルホルムアミドにおける13.9g(0.1mol)の2−ニトロフェノール(化合物MC−1A)の溶液に31.8g(0.3mol)の炭酸ナトリウムを添加した。混合物を約150−160℃の温度に加熱し、16.1g(0.2mol)の2−クロロエタノール(化合物MC−1B)を液滴状に添加した。2−クロロエタノールの添加後、温度は150〜160℃の温度で約7時間維持された。充填物は攪拌しながら冷却され、形成された無機塩は濾別された。濾液は赤色の油と固体の混合物が形成されるまで40℃の温度の蒸発によって濃縮された。次いで油はメチレンクロライドに溶解され、無機塩が濾別された。濾液は第二の時間、蒸発され、形成された黄色油が分取カラムクロマトグラフィによって精製された。化合物MC−1Cの収率は79%であった。
化合物MC−1Cの合成法:

【0136】
化合物MC−1Dの調製
化合物MC−1Dは水素による化合物MC−1Cの触媒還元によって作られた。反応器は100mLのエタノールにおける18.3g(0.1mol)の化合物MC−1Cで充填され、1mLのRaney Nickel(登録商標)スラリーが添加された。混合物の容積はエタノールで150mLに設定され、還元は60barの初期H圧下で35℃の開始温度で実施された。反応器を震盪することによって、発熱反応が開始し、温度は約60℃に増大した。還元後、充填物は1時間混合され、Raney Nickel(登録商標)が濾別された。濾液は所望の白色結晶化合物MC−1Dが出現するまで50℃の温度で蒸発された。化合物MC−1Dの収率は95%であった。
化合物MC−1Dの合成法:

【0137】
発色団MC−2の調製
29.98mL(0.36mol)の濃塩酸を300mLの水における15.3g(0.1mol)の化合物MC−1Dの懸濁液に添加した。この混合物は約0〜5℃の温度に冷却され、8.97g(0.13mol)の亜硝酸ナトリウムが添加された。ジアゾニウム塩は0〜5℃の温度で維持された。15分後、過剰の亜硝酸塩が、3.0g(0.03mol)のスルファミド酸を添加することによって中和され、25.2g(0.3mol)の炭酸ナトリウムを添加することによって7のpHが得られた。ジアゾニウム塩が作られたときに、ACROSからの20.7g(0.1mol)のMC−2Bが500mLのメタノールと10.0mL(0.1mol)の29%水酸化ナトリウム溶液の混合物に溶解された。この溶液は液滴でジアゾニウム塩溶液中に添加され、黄色の懸濁液がすぐに形成された。温度は0〜5℃で約3時間維持され、黄色の化合物MC−2が濾過され、メタノールで洗浄された。発色団MC−2の収率は92%であった。
発色団MC−2の合成法:

【0138】
ポリマー分散剤DISP−2の合成
ポリマー分散剤DISP−2はDISP−1(VERSICOL E5)を発色団MC−2で変性することによって調製された。生じたぶら下がっている発色団PC−2はエステル結合を含有する結合基Lを通してポリマー主鎖にCによって結合された。

【0139】
反応は攪拌機、冷却器及び計泡器を上部に備えた三ッ口丸底フラスコにおいて実施された。4gのポリアクリル酸ホモポリマー(VERSICOL E5、粉末形態)がフラスコ中に導入され、40mLの無水ジメチルアセトアミド(DMA)に溶解された。わずかな窒素の流束がフラスコを通って循環された。(VERSICOL E5)が溶解された後、4.48gの1,1′−カルボニルジイミダゾール(CDI)が添加され、CO発生が観察された。反応は室温で1時間さらに攪拌され、その後169mgの触媒ジメチルアミノピリジン(DMAP)と組み合わせた4.10gの発色団MC−2を添加した。不均一混合物は攪拌され、80℃で20時間加熱された。反応混合物は室温に冷却され、10mLの2%v/vの酢酸/水溶液を徐々に添加することによって処理された。得られた不均一混合物はNaOHでpH10に塩基性化され、残りの沈殿物を除去するために濾過された。溶液は二日間水で透析され(1000ダルトンのMWCOの再生セルロース透析膜−SPECTRA/POR(登録商標)6)、出現した沈殿物は再び濾別された。得られた溶液は凍結乾燥され、フワフワした黄色粉末を与えた。DISP−2の収量は4.8gであった。
【0140】
DISP−2の分析結果:GPC:Mn=1208;Mw=4960;PD=4.11(水性GPC;PAA基準に対して較正)。
置換度はH−NMR分光光度計によって決定され、AAモノマー単位の百分率として表示された。発色団MC−2でのDISP−2の置換度は13mol%であった。
【0141】
ポリマー分散剤DISP−3〜DISP−6
ポリマー分散剤DISP−7〜DISP−8は同じ発色団PC−2を既に含有するモノマーMONC−1を共重合することによって調製された。
【0142】
モノマーMONC−1の合成

【0143】
エチルアセテート(480ml)を0℃に冷却した。アクリル酸(19.0g,0.264mol)及び2,6−ジ−ターシャリ−ブチル−4−メチルフェノール(0.2g,0.00088mol)を添加した。トリエチルアミン(26.7g,0.264mol)を液滴で添加し、その間温度は−5℃〜0℃に維持された。最後に、ベンゼンスルホニルクロライド(22.3g,0.126mol)を液滴で添加した。塩酸トリエチエルアミンが沈殿した。反応混合物は0℃で1時間攪拌され、結果として対称無水物を形成した。この混合物にN−ヒドロキシスクシンイミド(0.7g,0.006mol)及びMC−2(22.3g,0.06mol)が5℃で添加された。反応混合物は約17時間還流された(78℃)。反応混合物はEtOAc(100ml)で希釈され、蒸留水(400ml)で抽出された。有機層は分離され、塩酸の水溶液と蒸留水の混合物(1/5)で再び抽出された。最後に、有機層が水で洗浄され、MgSO上で乾燥された。溶媒の蒸発後、残留物は蒸留水中に懸濁され、45分間攪拌された。濾過は黄色の固体を与えた。
【0144】
MONC−1の合成法:

【0145】
ポリマー分散剤DISP−3の合成
ポリマー分散剤DISP−3はモノマーMONC−1をAAモノマーと90/10モル比のAA/MONC−1で共重合することによって調製された。
【0146】
合成は、冷却ユニット、計泡器を上部に備えかつ攪拌棒を備えた250mLの三ッ口の丸底フラスコで実施された。6.04gのモノマーAA,3.96gのモノマーMONC−1,0.43gの開始剤WAKO(登録商標)V601,0.44gの移動剤MSTYが89.13gのジオキサンに導入された。モノマーの全重量%濃度は10であった。反応混合物は約30分間溶液中に窒素を泡立てることによって脱ガスされた。フラスコは油浴中に浸漬され、80℃に加熱され、混合物は20時間さらに反応された。重合後、反応混合物は室温に冷却された。ポリマーは1000mLの水(HClで酸性化)に沈殿され、濾別され、続いて真空下で40℃で24時間乾燥して、8.4gのDISP−3の黄色粉末を与えた(収率=77.2%)。
【0147】
DISP−3の分析結果:GPC:Mn=2745;Mw=5478;PD=2.00(THF+5%酢酸中のGPC;PS基準に対して較正)。
NMR:AA/MONC−1モル比は90/10であった。平均でDISP−3は23.01AAモノマー単位及び2.55MONC−1モノマー単位を含有していた。
【0148】
ポリマー分散剤DISP−4の合成
ポリマー分散剤DISP−4はモノマーMONC−1をAAモノマーと81/19モル比のAA/MONC−1で共重合することによって調製された。
【0149】
合成は、冷却ユニット、計泡器を上部に備えかつ攪拌棒を備えた250mLの三ッ口の丸底フラスコで実施された。4.04gのモノマーAA,5.96gのモノマーMONC−1,0.32gの開始剤WAKO(登録商標)V601,0.33gの移動剤MSTYが89.35gのジオキサンに導入された。モノマーの全重量%濃度は10であった。反応混合物は約30分間溶液中に窒素を泡立てることによって脱ガスされた。フラスコは油浴中に浸漬され、80℃に加熱され、混合物は20時間さらに反応された。重合後、反応混合物は室温に冷却された。ポリマーは1000mLの水(HClで酸性化)に沈殿され、濾別され、続いて真空下で40℃で24時間乾燥して、7.5gのDISP−4の黄色粉末を与えた(収率=70.4%)。
【0150】
DISP−4の分析結果:GPC:Mn=1845;Mw=3187;PD=1.73(THF+5%酢酸中のGPC;PS基準に対して較正)。
NMR:AA/MONC−1モル比は81/19であった。平均でDISP−4は10.73AAモノマー単位及び2.51MONC−1モノマー単位を含有していた。
【0151】
ポリマー分散剤DISP−5の合成
ポリマー分散剤DISP−5はモノマーMONC−1をAAモノマーと71/29モル比のAA/MONC−1で共重合することによって調製された。
【0152】
合成は、冷却ユニット、計泡器を上部に備えかつ攪拌棒を備えた100mLの三ッ口の丸底フラスコで実施された。1.42gのモノマーAA,3.58gのモノマーMONC−1,0.21gの開始剤WAKO(登録商標)V601,0.22gの移動剤MSTYが44.57gのジオキサンに導入された。モノマーの全重量%濃度は10であった。反応混合物は約30分間溶液中に窒素を泡立てることによって脱ガスされた。フラスコは油浴中に浸漬され、80℃に加熱され、混合物は20時間さらに反応された。重合後、反応混合物は室温に冷却された。ポリマーは500mLの水(HClで酸性化)に沈殿され、濾別され、続いて真空下で40℃で24時間乾燥して、4.6gのDISP−5の黄色粉末を与えた(収率=84.7%)。
【0153】
DISP−5の分析結果:GPC:Mn=2633;Mw=3982;PD=1.51(THF+5%酢酸中のGPC;PS基準に対して較正)。
NMR:AA/MONC−1モル比は71/29であった。平均でDISP−5は10.71AAモノマー単位及び4.37MONC−1モノマー単位を含有していた。
【0154】
ポリマー分散剤DISP−6の合成
ポリマー分散剤DISP−6はモノマーMONC−1をAAモノマーと55/45モル比のAA/MONC−1で共重合することによって調製された。
【0155】
合成は、冷却ユニット、計泡器を上部に備えかつ攪拌棒を備えた100mLの三ッ口の丸底フラスコで実施された。0.72gのモノマーAA,4.28gのモノマーMONC−1,0.21gの開始剤WAKO(登録商標)V601,0.22gの移動剤MSTYが44.57gのジオキサンに導入された。モノマーの全重量%濃度は10であった。反応混合物は約30分間溶液中に窒素を泡立てることによって脱ガスされた。フラスコは油浴中に浸漬され、80℃に加熱され、混合物は20時間さらに反応された。重合後、反応混合物は室温に冷却された。ポリマーは500mLの水(HClで酸性化)に沈殿され、濾別され、続いて真空下で40℃で24時間乾燥して、5gのDISP−6の黄色粉末を与えた(収率=92%)。
【0156】
DISP−6の分析結果:GPC:Mn=2441;Mw=3458;PD=1.42(THF+5%酢酸中のGPC;PS基準に対して較正)。
NMR:AA/MONC−1モル比は55/45であった。平均でDISP−6は5.81AAモノマー単位及び4.75MONC−1モノマー単位を含有していた。
【0157】
ポリマー分散剤DISP−7
発色団MONC−2を有する異なるモノマーが使用されてポリマー分散剤DISP−7を調製した。
【0158】
モノマーMONC−2の合成
合成法:

【0159】
12.6g(0.03mol)のMC−1が660mlのジメチルアセトアミドに溶解された。混合物が70℃に加熱され、60℃に冷却された。4.7g(0.036mol)のジイソプロピル−エチル−アミンが添加され、混合物が40℃に冷却された。次いで5.7g(0.036mol)のクロロメチルスチレン(異性体の混合物)が添加され、混合物が70℃に加熱された。反応は70℃で12時間継続された。反応混合物は−10℃に冷却され、100mlの水が20mlずつに分けて添加された。混合物は−10℃で30分間攪拌された。モノマーMONC−2は媒体から沈殿された。モノマーは濾過によって分離され、81%の収率で乾燥された。構造はLC−MSを使用して確認された。MONC−2は二つのモノマーMONC−2a(パラ位置で結合)及びMONC−2b(メタ位置で結合)の40/60の混合物であった。

【0160】
ポリマー分散剤DISP−7の合成
ポリマー分散剤DISP−7はモノマーMONC−2をAAモノマーと共重合することによって調製された。
【0161】
合成は、冷却ユニット、計泡器を上部に備えかつ攪拌棒を備えた100mLの三ッ口の丸底フラスコで実施された。2.26gのモノマーAA,1.74gのモノマーMONC−2,0.12gの開始剤WAKO(登録商標)V601,0.12gの移動剤MSTYが35.76gのジオキサンに導入された。モノマーの全重量%濃度は10であった。反応混合物は約30分間溶液中に窒素を泡立てることによって脱ガスされた。フラスコは油浴中に浸漬され、80℃に加熱され、混合物は20時間さらに反応された。重合後、反応混合物は室温に冷却された。ポリマーは500mLの水(HClで酸性化)に沈殿され、濾別され、続いて真空下で40℃で24時間乾燥して、3gのDISP−7の黄色粉末を与えた。収率は71%であった。
【0162】
DISP−7の分析結果:GPC:Mn=1999;Mw=3945;PD=1.97(THF+5%酢酸中のGPC;PS基準に対して較正)。
NMR:AA/MONC−2モル比は86/4であった。平均でDISP−7は13AAモノマー単位及び2MONC−2モノマー単位を含有していた。
【0163】
インクジェットインクの調製
全てのインクジェットインクは、異なる顔料及び分散剤が使用された以外、表6に記載された組成物を得るために同じ方法で調製された。

【0164】
インク組成物は、顔料、分散剤及び約半分の水を溶解機で混合し、次いでこの混合物を、0.4mm直径のイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズ(TOSOH Co.からの「高耐水性ジルコニア粉砕媒体」)を使用してローラミル法で処理することによって作られた。60mLのポリエチレンフラスコを粉砕ビーズ及び20gの混合物でその体積の半分まで充填した。フラスコは蓋で閉じられ、3日間ローラミル上に置かれた。スピードは150rpmに設定された。微粉砕後、分散体は濾布を使用してビーズから分離された。攪拌下、界面活性剤Surfynol(登録商標)104H及び殺生物剤Proxel(登録商標)Ultra5、グリセロール、1,2−プロパンジオール及び残りの水が添加された。この混合物は10分間攪拌され、濾過された。濾過は二工程で実施された。最初に、インク混合物は1μmの孔径を有するマイクロファイバー使い捨てファイバーカプセル(Whatman IncからのGF/Bマイクロファイバー)で(plastipak)シリンジを使用して濾過される。次に、同じ手順が濾液で繰り返される。第二の濾過後、インクは評価を受ける状態にある。
【0165】
上述の方法を使用して、比較用インクジェットインクCOMP−1〜COMP−4及び本発明用インクジェットインクINV−1〜INV−9が表7に従って調製された。

【0166】
結果及び評価
スペクトル分離率(SSF)は各試料について調製直後に決定された。結果は%MWとともに表8に記載される。

【0167】
表8からポリアクリル酸ホモポリマーが比較用インクジェットインクCOMP−1及びCOMP−2において顔料PY74及びPY17を分散できなかったことは明らかである。発色団でのポリアクリル酸の変性は比較用インクジェットインクCOMP−3及びCOMP−4に対して高いSSF値を既に生じている。しかしながら、最高のSSF値は、本発明用インクジェットインクINV−7を除いて、本発明用インクジェットインクINV−1〜INV−9において発色団を有するモノマーを共重合することによって調製されたポリマー分散剤を使用するときに得られた。本発明用インクジェットインクINV−7はポリマー分散剤において発色団を有するモノマーの数に対して上限があることを示す。なぜならば、分散品質は顔料PY74に対して許容できないレベルに低下されたからである。
【0168】
小さな発色団を既に含有するモノマーを共重合する簡単な方法は特定の分散媒体に対して一種以上の顔料のためのポリマー分散の良く制御された設計及び合成の利点を提供する。
【0169】
実施例2
この実施例は小さな発色団を既に含有するモノマーを共重合する方法によって調製されたポリマー分散剤を使用したインクジェットインクの改良された熱安定性を示す。それはまた、発色団を有するモノマーがポリマー分散剤の良く制御された設計及び合成を可能にする利点を示す。
【0170】
ポリマー分散剤DISP−8
ポリマー分散剤DISP−8はモノマーMONC−1をAA及びBAモノマーと共重合することによって調製された。
【0171】
ポリマー分散剤DISP−8の合成
合成は、冷却ユニット、計泡器を上部に備えかつ攪拌棒を備えた50mLの三ッ口の丸底フラスコで実施された。1.47gのモノマーAA,2.61gのモノマーBA,1.93gのモノマーMONC−1,0.20gの開始剤WAKO(登録商標)V601,0.21gの移動剤MSTYが23.59gのMEKに導入された。モノマーの全重量%濃度は20であった。反応混合物は約30分間溶液中に窒素を泡立てることによって脱ガスされた。フラスコは油浴中に浸漬され、80℃に加熱され、混合物は20時間さらに反応された。重合後、反応混合物は室温に冷却された。ポリマーは250mLの水に沈殿され、続いて真空下で40℃で24時間乾燥して、3.32gのDISP−8の黄色粉末を与えた(収率=51.8%)。
DISP−8の分析結果:GPC:Mn=5875;Mw=10853;PD=1.85(THF+5%酢酸中のGPC;PS基準に対して較正)。
NMR:AA/BA/MONC−1モル比は47/43/10であった。平均でDISP−8は21AAモノマー単位、19BAモノマー単位及び4MONC−1モノマー単位を含有していた。
【0172】
ポリマー分散剤DISP−9
ポリマー分散剤DISP−9はモノマーMONC−3をMAA及びEHAモノマーと共重合することによって調製された。
【0173】
発色団MC−3の合成
化合物MC−8Bの調製
この反応を実施するために使用された容器は攪拌機、冷却器及び滴下漏斗を備えた三ッ口フラスコであった。140g(1mol)の3−ニトロフェノール(化合物MC−8A)及び1.4LのN−メチルピロリドンの溶液に190mLのナトリウムメチレート30%(1.025mol)を添加した。混合物は100℃の温度及び80mbarの圧力で蒸留された。蒸留後、87mL(1.3mol)の2−クロロエタノール(化合物MC−1B)が液滴で添加された。2−クロロエタノールの添加後、混合物は約120℃の温度に3時間加熱された。反応混合物は85mLの濃HClを有する6Lの水の中に注がれた。生成物は濾過された。化合物MC−8Bの収率は27%であった。
化合物MC−8Bの合成法:

【0174】
化合物MC−8Cの調製
化合物MC−8Cは水素による化合物MC−8Bの触媒還元によって作られた。反応器は700mLエタノールにおける101g(0.55mol)の化合物MC−8Bで充填され、11mLのRaney Nickel(登録商標)スラリーが添加された。還元は46barの初期H圧下で75℃の開始温度で実施された。還元後、充填物は1時間混合され、Raney Nickel(登録商標)が濾別された。濾液は所望の白色結晶化合物MC−8Cが出現するまで50℃の温度で蒸発された。化合物MC−8Cの収率は95%であった。
化合物MC−8Cの合成法:

【0175】
化合物MC−3の調製
6.9g(45.2mmol)の化合物MC−8Cが40mLのHO及び10mLのメタノールと混合された。次いで、4.5g(54mmol)の化合物MC−1Fが添加され、混合物は30分間攪拌された。これは混合物A−MC−3である。6.2g(45.2mmol)の化合物MC−3Aが100mLのHOに添加された。16.2g(162mmol)の濃HClが添加された。溶液は約0〜5℃の温度に冷却された。4.05g(58.8mmol)の亜硝酸ナトリウムが添加され、混合物は0〜5℃の温度で維持された。15分後、過剰の亜硝酸塩が1.36g(13.6mmol)のスルファミド酸を添加することによって中和され、11.4g(136mmol)の炭酸ナトリウムを添加することによって7のpHが得られた。混合物A−MC−3が添加され、混合物は0〜5℃の温度で1時間攪拌された。攪拌は0〜5℃の温度で1時間継続された。黄色の化合物が濾過され、メタノールで洗浄された。発色団MC−3の収率は87%であった。
合成法:

【0176】
モノマーMONC−3の合成
合成法:

【0177】
1.2g(16mmol)のアクリル酸、6.7gの発色団MC−3及び3.0gのp−トルエンスルホン酸一水和物が200mlのトルエン及び20mlのジメチルアセトアミドに溶解された。混合物は水の共沸除去下で16時間還流された。混合物は室温に冷却された。溶解されなかった残留物は濾過によって除去された。溶媒は減圧下で除去された。残留物は300mlのメチル−tブチル−エーテルにおいて懸濁され、2時間還流された。混合物は室温に冷却され、粗モノマー色素が濾過によって単離され、乾燥された。粗生成物は溶離液として塩化メチレンを使用してVarian Mega bond 70gで分取カラムクロマトグラフィによって精製された。1.78gの精製された色素が単離された。収率は24%であった。
【0178】
ポリマー分散剤DISP−9の合成
合成は、冷却ユニット、計泡器を上部に備えかつ攪拌棒を備えた50mLの三ッ口の丸底フラスコで実施された。1.38gのモノマーMAA,2.95gのモノマーEHA,1.67gのモノマーMONC−3,0.20gの開始剤WAKO(登録商標)V601,0.21gの移動剤MSTYが23.59gのMEKに導入された。モノマーの全重量%濃度は20であった。反応混合物は約30分間溶液中に窒素を泡立てることによって脱ガスされた。フラスコは油浴中に浸漬され、80℃に加熱され、混合物は20時間さらに反応された。重合後、反応混合物は室温に冷却された。ポリマーは250mLの水に沈殿され、濾別され、続いて真空下で40℃で24時間乾燥して、4.1gのDISP−9の黄色粉末を与えた。収率は64%であった。
【0179】
DISP−9の分析結果:GPC:Mn=6235;Mw=11654;PD=1.87(THF+5%酢酸中のGPC;PS基準に対して較正)。
NMR:MAA/EHA/MONC−3モル比は51/45/4であった。平均でDISP−9は22MAAモノマー単位、19EHAモノマー単位及び2MONC−3モノマー単位を含有していた。
【0180】
インクジェットインクの調製
本発明用インクジェットインクINV−11及びINV−12は、表9によるポリマー分散剤及びカラー顔料PY74を使用して実施例1中の本発明用インクジェットインクINV−1,INV−3,INV−5及びINV−10及び比較用インクジェットインクCOMP−3と同じ方法で調製された。

【0181】
結果及び評価
スペクトル分離率(SSF)は各試料について調製直後に決定され、80℃で1週間の過酷な熱処理後に再び決定された。結果は表10に記載される。
【0182】

【0183】
表10から、本発明の着色されたインクジェットインクINV−1,INV−3,INV−5,INV−10,INV−11及びINV−12が、ポリマー分散剤が同様の発色団で変性された比較用インクジェットインクCOMP−3と比べて高い分散品質及び改良された分散安定性でcolour pigment C.I.Pigment Yellow 74を分散することができることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)によって表される発色団を有するモノマー:

式中、ARは置換又は非置換芳香族基を表し、ARは置換もしくは非置換芳香族基又は置換もしくは非置換アルキル基を表し、Rは置換又は非置換アルキル基を表し、R,AR及びARの一つは重合可能な官能基を有する置換基を持つ。
【請求項2】
重合可能な官能基はラジカル又はカチオン重合によって重合可能である請求項1に記載のモノマー。
【請求項3】
ARはメチル又はエチルを表す請求項1又は2に記載のモノマー。
【請求項4】
ARは以下のものからなる群から選択される請求項2に記載のモノマー:

【請求項5】
下記式(II)によって表される請求項1に記載のモノマー:

式中、R1〜R11の一つは前記重合可能な官能基を有する置換基であり、R1〜R11がもし前記重合可能な官能基を有する置換基を表さないなら、水素、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコール基、カルボン酸基、エステル基、アシル基、ニトロ基及びハロゲンからなる群から独立して選択され、又はR7及びR8は一緒に複素環式環を形成してもよい。
【請求項6】
R7及びR8によって形成される前記複素環式環はイミダゾロン又は2,3−ジヒドロキシピラジンである請求項5に記載のモノマー。
【請求項7】
前記重合可能な官能基はエチレン不飽和の重合可能な官能基である請求項1〜6のいずれかに記載のモノマー。
【請求項8】
前記エチレン不飽和の重合可能な官能基はスチレン、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエステル及びビニルエーテルからなる群から選択される請求項7に記載のモノマー。
【請求項9】
以下のものからなる群から選択される請求項1に記載のモノマー:



【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のモノマーを含むポリマー。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載のモノマーを含む放射線硬化性顔料分散体。

【公表番号】特表2009−501254(P2009−501254A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520841(P2008−520841)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063829
【国際公開番号】WO2007/006682
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(507381008)アグファ・グラフィクス・エヌヴィ (14)
【Fターム(参考)】