説明

インクジェットヘッドの洗浄方法および洗浄装置

【課題】本発明は、簡単かつ省スペースで、インクジェット印刷装置において不吐出なく、安定した高品質の印刷物が得られる、インクジェットヘッドの洗浄方法を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッドをワイピングするワイピング部材とを備えたインクジェットヘッド印刷装置の洗浄において、インクジェットヘッド印刷装置から洗浄開始信号をインクジェット印刷装置に伝達する事で、インクジェット印刷装置にインプットされたワイピング部材に吸収されるインクジェットヘッドのノズル吐出口内部のインク量分を、ワイピングに先立って予めポンプにより押し出す事を特徴とするインクジェットヘッドの洗浄方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置におけるインクジェットヘッドの洗浄方法に関する。印刷物はインクジェット印刷装置を用いてパターン形成するものである。例えば、有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子)が例示でき、この有機EL素子の有機発光層をインクジェット印刷装置等により形成する。また、印刷物としてカラーフィルターも例示でき、この着色層をインクジェット印刷装置により形成する。また、この外、回路基板、薄膜トランジスタ、マイクロレンズ、バイオチップ等を印刷物として例示することができる。
【背景技術】
【0002】
以下では印刷物としてカラーフィルターを例に説明する。カラー表示装置用のカラーフィルターは様々なものがあるが、ここではカラー液晶、ディスプレイ用カラーフィルターを代表例として説明する。カラー液晶ディスプレイは、時計・カメラ等の小面積のものから、コンピューター端末表示装置・テレビ画像表示装置などの大面積のものまで広く使用されており、近年では大面積の用途を中心としてカラー表示化が急速に進んでいる。カラーフィルターは液晶ディスプレイのカラー表示化には必要不可欠で、カラー液晶ディスプレイの性能を決める重要な部品であり、高精細な画像を表示するために様々な形に細かくパターンニングされたものが用いられている。
【0003】
従来、例えば液晶表示装置用カラーフィルターの製造には、フォトレジスト材を用いたフォトリソグラフィー法が採用されているが、画素材料である前記フォトレジスト材の大部分をスピンコートの時点で捨てることとなり、このフォトレジスト材の経済的な使用が図れないという問題がある。また、色毎に露光・現像などの工程を経ることから全体としての作業効率が低いとともに、露光装置、現像装置などの高価な光学機器を要しており、これによってコストを引き下げることが出来ないという問題もある。
【0004】
そのため、近年着色層をインクジェット法で形成することが提案されている。インクジェット法によりカラーフィルターを形成する際、一般にRGBの3色のインクを吐出することで着色を行ってカラーフィルターを形成する。
【0005】
このインクジェット法では、通常各ノズルより数ピコリットルの着色液滴を画素内に射出する事で画素の色を形成する。この着色液滴の量により画素内の色度は決定する為、着色液滴の射出状態に差があればカラーフィルター基板に色ムラを生じるのみならず、液滴が乱れ、吐出すべき箇所に液滴が吐出されない、または、液滴が全く射出されずに白抜けが発生する事になる。こうした欠陥の大きいカラーフィルターを用いて、例えば液晶パネルを製造した場合、著しく画像品位が低下するという問題があった。
そこで、インクジェット法を用いたカラーフィルターの製造方法においては、画像品位の高い液晶パネルを提供するため、液滴の射出状態を安定化させる事が必要であり、インクジェットヘッドのノズル面部分の管理が重要になる。
【0006】
インクジェットヘッドを有するインクジェット印刷装置は、主にピエゾ方式、サーマル方式が用途に応じて用いられている。また、インクジェットヘッドは、ノズルを複数有するヘッド群を形成し、このヘッド群が用途・目的に合わせて配置されることで吐出パターンが形成されている。しかし、使用するインクの粘度が変わったり、吐出の精度を一定に保つため、インクジェットのノズル面や、インク溜まり等の複雑な部分を長時間かけて洗浄し、調整している。
【0007】
さらに、インク供給タンクからインクジェットヘッドの供給口までの配管の内径が小さく、かつ複雑な配管経路となっている。また、配管に使用される管は、樹脂製、ステンレス製、または内面に樹脂が被覆された金属製管が用いられ、さらに、インクを供給するポンプ、あるいはインク切り換えバルブ、またはインク用フィルター等が管と接続され配管されている。この種のインクジェットヘッドにおいては細いノズル内でインクが乾燥し、ノズル詰まり等の不具合が発生することがあり、定期的な清掃が必要である。
【0008】
インクの交換や定期的な清掃を実施する場合、インクを配管から抜き出した後、配管内部を溶剤で洗浄するか、または、次に使用するインクを用いて加圧圧送することで前の塗工液を押し出して入れ替える方法が知られている。この場合、洗浄用の溶剤または次に使用する塗工液は、配管内部容積により、適宜の量が吐出され液の置換が行われるようになっている。また、インクジェットヘッドの内部など複雑な構造あるいは形状の部分は、その都度、人手により分解、清掃が行われている。
【0009】
ところで、インクの多様化に伴い、インクの切り換え時間を速くすることが特に要望されている。インクジェットヘッドの洗浄に非常に時間がかかり、さらに、異種塗工液の混合、塗工液と洗浄用溶剤が混ざり合った時に、塗工液に起因する凝集物やゲル状物生じる現象であるソルベントショックが発生する問題があった。
このような問題を解決する手段として、従来種々のノズル洗浄方法や乾燥防止方法が採用されている。代表的な方法としては、ダイヘッドのスリットノズルの先端に残留した固形化しつつあるインクを、作業効率の低下を招くことなく、完全に除去することのできるダイコートのノズルの洗浄方法、および洗浄機構も知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、配管洗浄用にピグ(PIG:金属の塊)を用いて圧縮気体によって配管内壁を移動することにより、塗工液が押し出されることにより、配管洗浄時の塗工液ロスを低減するとともに、少量の洗浄溶剤で短時間で効率よく洗浄できるダイコータ洗浄装置も知られている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、配管内壁の洗浄に際して、塗工液除去剤を用いて処理し、ついで、酸を用いて処理した後、フラッシング処理を行い、さらに水置換処理を行うことを特徴とした塗工液移送配管内壁の洗浄方法も知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0010】
上記の方法は主としてダイコート等の塗工装置に適用されるものである。インクジェット印刷装置の清掃技術に関する文献を以下に挙げる。
インクジェットヘッドとしてインクジェットヘッドを備えた塗工装置(インクジェット印刷装置)において、このインクジェット印刷装置の配管内部に洗浄液を送液して洗浄する方法が知られている(例えば、特許文献5)。
特許文献6に提案されているように、インクジェットノズル吐出口面をワイピング動作にてクリーニングすることで吐出口面に付着したインク等の異物を除去する方法も知られている。
【0011】
しかしながら上記特許文献に記載の方法によると以下のような問題が発生した。
特許文献1はインクジェットヘッドを洗浄するに際して、該塗布ヘッドにつながる塗工液供給管から塗布ヘッド内へ洗浄液を供給すると共に、この塗工液供給管を通過する洗浄液内に窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを吹き込むことにより、洗浄液流が気泡流化し、この気泡による攪拌効果が増加し、微小な隙間等に付着している残留塗工液も洗い流せるとされている。しかし、塗工液と相性のよくない洗浄液が使用された際に、ソルベントショックが発生する問題があった。
また、上記特許文献1に記載の方法では、大型化するインクジェットヘッドの塗工液溜まり内部あるいはスリットノズル等内部を洗浄する為に多量の洗浄溶剤が必要になっている問題があった。
次に、特許文献2に記載の手段は、スリットノズルの先端を、洗浄ノズルの射出口からエアーを噴射し、残った洗浄液を乾燥除去するものであり、複数のノズルを配置するインクジェットヘッドを洗浄することは困難であった。
さらに、特許文献3は、ピグが圧縮気体によって配管内壁を移動することにより、塗工液が洗浄されると記載されている。また、配管に使用されている管は、塗工装置あるいは塗工液等により樹脂製管、内面にフッ素樹脂やシリコーン樹脂等を被覆された金属製管があるが、これらの管は、ピグにより被覆表面が損傷されたり、あるいは表面が凹凸状となり、塗工液がより付着しやすくなる問題があった。また、液吐出口の幅が狭い場合、前記ピグがインクジェットヘッドに詰まったりし、内部洗浄に不向きであった。
特許文献4は、塗工液移送配管内壁を洗浄する際、まず、塗工液除去剤を用いて処理し、次いで、酸処理した後、フラッシング処理を行い、さらに水置換処理により、配管内壁を洗浄することが開示されているが、塗工液除去剤と洗浄される塗工液に使用する溶剤との相溶性が悪い場合、ソルベントショックが発生する問題があった。また、最後の水置換をおこなうため、乾燥に時間がかかる問題があった。
特許文献5では、インキ吐出印刷装置内部に残存するインキと洗浄に用いる溶剤の相溶性によって、ソルベントショックを発生する問題があった。また、洗浄に際して配管内部及びインクジェットヘッド内に十分に洗浄液を行き渡らせるため、大量の洗浄液が必要であった。
特許文献6の方法によると、このワイピング動作にてインクジェットヘッドのノズル面のインクのみならず、インクジェットヘッドのノズル面の内部のインクもワイピングに吸収されてしまい、ノズル吐出口面からのエアー噛み込みが生じてしまう。このエアー噛み込みが、ノズル吐出内部のインクのメニスカスの破壊を生じ、結果として白抜け・色ムラ・液滴の乱れ等の新たな欠陥の発生原因となっていた。
【特許文献1】特開平7−132267号公報
【特許文献2】特開2000−10767号公報
【特許文献3】特開平9−85153号公報
【特許文献4】特開昭63−256163号公報
【特許文献5】特開2004−66735号公報
【特許文献6】特開2005−22200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、特にインクジェット印刷装置において、簡単かつ省スペースで、不吐出なく、安定した高品質の印刷物が得られる、インクジェットヘッドの洗浄方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を達成するための解決手段を以下に示す。
【0014】
請求項1に記載の発明は、少なくともインクを貯蔵するインク供給タンクと、前記インク供給タンクに接続されてインクに圧力を印加するポンプと、複数のインク吐出ノズルを含むインクジェットヘッドと、前記インク供給タンクと前記インクジェットヘッドを前記ポンプを介して接続するインク通路と、前記インク通路の内部に設けられた圧電素子と、を備えたインク吐出印刷装置の当該インクジェットヘッドの洗浄方法において、
洗浄開始する前に所定の流量のインクをインクジェットヘッドから押し出した後、ワイピング部材により、このインクジェットヘッドをワイピングすることを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄方法である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、
前記所定の流量が、ワイピング部材に吸収されるべきインクの量とほぼ同じであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記ワイピング部材が、布またはフィルムのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のインクジェットヘッドの洗浄方法である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、
前記ポンプがダイヤフロムポンプであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェットヘッドの洗浄方法である。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記ポンプがプランジャーポンプであることを特徴とする請求項1〜4に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法である。
【0019】
請求項6に記載の発明は、少なくともインクを貯蔵するインク供給タンクと、前記インク供給タンクに接続されてインクに圧力を印加するポンプと、複数のインク吐出ノズルを含むインクジェットヘッドと、前記インク供給タンクと前記インクジェットヘッドを前記ポンプを介して接続するインク通路と、前記インク通路の内部に設けられた圧電素子と、ワイピンク部材と、前記ワイピング部材の吸収されるべきインクの量を測定する機構と、前記インクの量を前記圧電素子に送信する機構と、を備えたことを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄装置である。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記所定の流量が、ワイピング部材に吸収されるべきインクの量とほぼ同じであることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッドの洗浄装置である。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記ワイピング部材が、布またはフィルムのいずれかであることを特徴とする請求項6又は7のいずれかに記載のインクジェットヘッドの洗浄装置である。
【0022】
請求項9に記載の発明は、前記ポンプがダイヤフロムポンプであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のインクジェットヘッドの洗浄装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、インクジェットヘッドをワイピングするワイピング部材とを備えたインクジェットヘッドの洗浄方法に於いて、ワイピングによるヘッド洗浄の際に、インクジェットヘッドのノズル内部のインクがワイピングに吸収されても、同時に周囲の空気を巻き込むことがなくなった。このため、この空気由来のノズル吐出口内部のインクのメニスカスの破壊及び、エアー噛み込みにより生じる白抜け・色ムラ・液滴の乱れ等の欠陥を防止し、かつ生産性の良好なインクジェット洗浄方法を提供することが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のインクジェット印刷装置で製造できる印刷物は、表示ディスプレイの表示画面を構成する光学部品として好適に利用できる。光学部品としては、例えば、カラー液晶ディスプレイの表示画面を構成するカラーフィルターが例示でき、インク皮膜は透過光を着色する着色層を構成し、この着色層は前記領域ごとに異なる色彩を有する複数色のものである。
また、光学部品として、有機エレクトロルミネセンス素子を例示することもでき、この場合には、インク皮膜は有機発光材料層を構成する。また、前記領域ごとに異なる色彩を有する複数色の有機発光材料層である。なお、この外、本発明に係る印刷物として、回路基板、薄膜トランジスタ、マイクロレンズ、バイオチップ等を例示することができる。以下ではカラーフィルターの製造方法を例に本発明のインクジェットヘッドの洗浄方法を説明する。
【0025】
(インクジェット印刷装置の構成)
まず、本発明におけるインク供給装置について図1に基づいて説明する。
図1を参照して説明する。本発明のインクジェット印刷装置は、少なくともインク供給タンク1と、ポンプ5と、複数のインク吐出ノズルを含むインクジェットヘッド4とを備えている。インク供給タンク1とインクジェットヘッド4はインク通路7により接続されている。インクジェットのインク2は、供給タンク1に供給されており、インク通路7を通ってポンプ5の供給源側へと通じる。ポンプ5は、インク供給源側7をインクを強制吸引する吸引側とし、インクジェットヘッド4側を、インクを強制送出する送出側8とする。
インク送出手段にはポンプ5の駆動させるサーボモータ6が接続されていて、このサーボモータ6の動作によって圧管理を正確に行うためのポンプ5が駆動制御されている。圧管理を行うためにセンサー3が設置されている。
上記ポンプの一例として、ダイヤフラムポンプ又はプランジャーポンプを挙げることができる。
【0026】
また、インクジェットヘッド4内部において、インク通路が分流し、インク吐出ノズルに均等にインクが供給される構造となっている。インク吐出ノズル部分のインク通路の内に圧電素子が設けられ、この圧電素子に電圧が印加されることによりインクが吐出される。インク吐出ノズルとポンプと間にインク圧力を検出する圧力センサを備えていて、インク吐出ノズル(圧電素子部分)にかかるインク圧力の負荷が常に測定される。
【0027】
本発明では急激なインクの減少分をポンプ5で自動的に押し出す事で減少したインクを補充出来、結果としてノズル吐出口内部のインクのメニスカスの破壊及び、エアー噛み込みにより生じる白抜け・色ムラ・液滴の乱れ等の欠陥を防止する事が出来る。
(インクジェットヘッドの洗浄方法)
次に、上記のインクジェット印刷装置における本発明のインクジェットヘッドの洗浄方法の一例について説明する。
インクジェットノズルの詰まり等があった場合、ノズル洗浄を実施する。ノズルの洗浄方法としては、まず、インク供給タンク1を加圧することでノズル内部の乾燥インクを除去する。
その後、上記サーボモータ6の動作によって圧管理を正確に行い、ポンプが駆動制御をする事でインクジェットヘッドの液滴はノズル内部に引いていく。
その後インクジェットヘッド4のノズル吐出口面に残ったインクを、布、フィルム等でワイピングを行うことで、インクジェットヘッド4表面の乾燥インクや余分なインクを除去する必要があるが、この際にインクヘッドヘッド4表面のインクのみならず、インクジェットヘッドノズル内部のインクまでワイピングに吸収されてしまい、インク吐出装置内部のインク量が急激に減少してしまう為、ノズル吐出口内部のインクのメニスカスの破壊及び、エアー噛み込みにより白抜け・色ムラ・液滴の乱れ等の欠陥が発生する事がある。
【0028】
これを防止する為には、ワイピング10によるインクジェットヘッド4洗浄により吸収されるインクジェットヘッドノズル内部のインク量を補う必要がある。
そこで、ワイピング10によるインクジェットヘッド洗浄の開始信号をインクジェット印刷装置に伝送9し、事前にインプットされた、上記圧力センサー3の値より算出したワイピング10によるインクジェットヘッド4洗浄により吸収されるインクジェットヘッドノズル内部のインク流量を、伝送9された信号を受け取った上記インクジェット印刷装置は上記ポンプ5に伝送し、ワイピング10によるインクジェットヘッド4洗浄と同時に上記ポンプ5により押し出す事で、ワイピング10によるインク吸収分を補い、
インク吐出内部のインク量減少によるノズル吐出口内部のインクのメニスカスの破壊及び、エアー噛み込みを防止する事が可能となる。
【実施例】
【0029】
以下、具体的実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0030】
ダイヤフラムポンプを用いたカラーフィルター用インクジェット印刷装置を例示して、本発明のインクジェットヘッドの洗浄方法について説明する。
(隔壁の作成)
以下、隔壁をカラーフィルターにおいてはブラックマトリックスと称する。ブラックマトリックスはフォトリソグラフィー法を用いて作製した。基板として無アルカリガラスを用いた。基板上に、フッ素樹脂を含む感光性樹脂組成物を全面に、膜厚2μmの薄膜状に塗布した。その後、格子状のパターンを有するフォトマスクを用いて露光、その後、アルカリにて現像を行い、この基板をオーブンに入れ熱硬化処理を行うことで、ブラックマトリックスを作製した。
(インクの調整)
インクとして、顔料を溶剤を除くインクの全固形分の合計質量に締める割合が50質量%で必要な分光特性となるように調整し、溶剤をインクに締める全固形分濃度が30質量%となるように調整した。
(カラーフィルター用インクジェット印刷装置)
インクジェット印刷装置において使用されるインクは、供給タンクに貯蔵されており、配管のチューブを通ってダイヤフラムポンプの供給源側へと通じる。ダイヤフラムポンプは、インク供給源側をインクを強制吸引する吸引側とし、インクジェットヘッド側をインクを強制送出する送出側とした。また、インク送出手段にはダイヤフラムポンプの駆動させるサーボモータが接続されていて、このサーボモータの動作によってインクの吐出を正確に行うためのダイヤフラムポンプが駆動制御されており、インクはチューブを経由しインクジェットヘッドへと送られる。
【0031】
(ワイピングによるノズル内部インク吸収量算出)
事前に、ワイピングによるインクジェットヘッドノズル洗浄を行い、その際の圧力をプロットした。この圧力変動の値から実際にワイピングに吸収されたインクジェットヘッドのノズル内部の液量を算出した。本発明では、この算出されたインク流量の情報を、ワイピンクに先立ってインクジェット印刷装置に記憶させた。
【0032】
(インクジェットヘッドの洗浄)
非印字時にインクジェットヘッドのノズル洗浄の信号が出されると、インク供給タンクを加圧し、インクジェットヘッドのノズル内のインクのうち、記憶させたインク流量を押し出すようにプログラムを行った。そして、実際にワイピングを行う前にノズル信号を発信し、その後ワイピングによるノズル内部の乾燥インクの除去を行った。そして、そのままヘッド面のインク滴を制御した状態で、インクジェットヘッドの下に洗浄部材を搭載したユニットが移動し、インクジェットヘッドのヘッド面に押し当てを行った。
【0033】
洗浄部材としては、ロール状のマイクロファイバーを用いた。洗浄ユニットはクラッチブレーキを使用した巻出とサーボモータを使用した巻取機構が設けられていて、エアシリンダで上下させることが可能である。一定時間経過後、洗浄ユニットが下方に移動することでインクジェットヘッドのノズル洗浄は完了した。
この際にインクジェット印刷装置のポンプの押し出し動作も同時に行われた為、ワイピングによるインクジェットヘッド洗浄時の圧変動もゼロになった。
この洗浄を行うことにより、ノズル部周縁に付着した乾燥インクが洗浄部材に拭き取られ、さらに、ワイピングにより吸収されたインクジェットヘッドノズル内部のインクも補充された為、インクジェットヘッドノズル吐出口内部のインクのメニスカスの破壊及び、エアー噛み込みにより生じる白抜け・色ムラ・液滴の乱れ等の欠陥無く、高品質なカラーフィルターを得る事が出来た。
【0034】
上記の本発明のインクジェットヘッドのノズル洗浄と同時にポンプによるインク押し出しを行わなかった場合は、インクジェットヘッドのノズル内部のメニスカスが安定せずに不吐出が発生する確率が高く、安定的に生産することが出来なかった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】インクジェット印刷装置の概略図
【符号の説明】
【0036】
1・・・インク供給タンク
2・・・インク
3・・・圧力センサー
4・・・インクジェットヘッド
5・・・ダイヤフラムポンプ
6・・・サーボモータ
7・・・インク供給タンクからダイヤフラムポンプへの経路
8・・・ダイヤフラムポンプからインクジェットヘッドへの経路
9・・・インクジェット印刷装置に伝送されるインクジェットヘッド洗浄の開始信号
10・・・ワイピング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともインクを貯蔵するインク供給タンクと、
前記インク供給タンクに接続されてインクに圧力を印加するポンプと、
複数のインク吐出ノズルを含むインクジェットヘッドと、
前記インク供給タンクと前記インクジェットヘッドを前記ポンプを介して接続するインク通路と、
前記インク通路の内部に設けられた圧電素子と、を備えたインク吐出印刷装置の当該インクジェットヘッドの洗浄方法において、
洗浄開始する前に所定の流量のインクをインクジェットヘッドから押し出した後、ワイピング部材により、このインクジェットヘッドをワイピングすることを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項2】
前記所定の流量が、ワイピング部材に吸収されるべきインクの量とほぼ同じであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項3】
前記ワイピング部材が、布またはフィルムのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項4】
前記ポンプがダイヤフロムポンプであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項5】
前記ポンプがプランジャーポンプであることを特徴とする請求項1〜4に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項6】
少なくともインクを貯蔵するインク供給タンクと、
前記インク供給タンクに接続されてインクに圧力を印加するポンプと、
複数のインク吐出ノズルを含むインクジェットヘッドと、
前記インク供給タンクと前記インクジェットヘッドを前記ポンプを介して接続するインク通路と、
前記インク通路の内部に設けられた圧電素子と、
ワイピンク部材と、
前記ワイピング部材の吸収されるべきインクの量を測定する機構と、
前記インクの量を前記圧電素子に送信する機構と、を備えたことを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄装置。
【請求項7】
前記所定の流量が、ワイピング部材に吸収されるべきインクの量とほぼ同じであることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッドの洗浄装置。
【請求項8】
前記ワイピング部材が、布またはフィルムのいずれかであることを特徴とする請求項6又は7のいずれかに記載のインクジェットヘッドの洗浄装置。
【請求項9】
前記ポンプがダイヤフロムポンプであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のインクジェットヘッドの洗浄装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−82806(P2009−82806A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254690(P2007−254690)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】