説明

インクジェット用のワイプ装置およびこれを用いたワイプ方法

【課題】ノズルプレートに非接触で、ノズルプレートに対して平行でかつ安定したガス流を形成することができるワイプ装置を提供すること。
【解決手段】ガスを噴射するガス噴射孔と、頂点を有する凸状の曲面であって、前記ガス噴出孔から噴射されたガスが吹き付けられる曲面を有するガイド部と、を有するワイプ装置であって、前記ガイド部上に配置された、インクジェットヘッドのノズルプレートに付着した異物を、前記ガイド部の曲面に沿って誘導されたガスで吹き飛ばすワイプ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド用のワイプ装置、およびワイプ装置を用いてインクジェットヘッドのノズルプレートに付着したインクなどの異物を取り除くワイプ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの製造の際に、インクジェットヘッドを用いて機能材料を含むインクを塗布する方法が広く採用されている。インクジェットヘッドは、ノズルプレートに設けられた微細孔(ノズル)を通して、インクを被塗布材に向けて吐出する。
【0003】
このようなインクジェットヘッドでは、ノズルからインクを吐出すると、吐出されたインクの一部や、外気中のごみなどの異物がノズルプレートに付着することがあった。ノズルプレートに異物が付着すると、ノズルから適切にインクを吐出できなくなり、正確な塗布ができなくなる。
【0004】
そこで、インクジェットヘッドを有する印刷装置は、通常、ノズルプレートに付着した異物を除去するためのワイプ装置を備える(例えば特許文献1参照)。異物を除去するためのワイプ装置としては、ノズルプレートに対して斜めにガスを吹き付けるワイプ装置が知られている(例えば特許文献2〜4参照)。
【0005】
図1Aは特許文献2に開示されたワイプ装置の斜視図であり、図1Bは、インクジェットヘッド10のノズルプレート11をワイプ中の図1Aに示されたワイプ装置の断面図である。また、図2は、インクジェットヘッド10のノズルプレート11をワイプ中の特許文献3に開示されたワイプ装置の断面図である。
【0006】
図1A、図1Bおよび図2に示されるように、特許文献2および特許文献3に開示されたワイプ装置は、ガスを噴射するガス噴射孔130と、ガスを吸引するガス吸引孔150とを有する。また、図1Bおよび図2に示されるように、特許文献2および特許文献3に開示されたワイプ装置は、ノズルプレート11に対して、ガス噴射孔130から斜めにガスを噴射し、ノズルプレート11に付着した異物を吹き飛ばす。そして吹き飛ばされた異物が周囲に飛散しないよう、ガス吸引孔150が吹き飛ばされた異物を吸引する。
【0007】
しかしながら、特許文献2および特許文献3のワイプ装置のように、ガス噴射孔130から斜めにガスを噴射すると、ノズルプレート11のノズル孔13の内部に向けてガスが噴射される。ノズル孔13の内部に向けてガスが噴射されると、ノズル孔13内のインク15の乾燥が促進され、ノズル孔13が詰り、ノズル孔13からインクが吐出しなくなってしまう。
【0008】
このように、ノズル孔の内部にガスが向かうことを防止するために、図3Aおよび図3Bに示すように、ガス噴射孔130からノズルプレート11に対して平行にガスを噴射する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0009】
また、ノズル孔の内部にガスが向かうことを防止するために、オリフィス効果を利用したワイプ装置も知られている(例えば特許文献5〜7参照)。
【0010】
図4は、インクジェットヘッド10のノズルプレート11をワイプ中の特許文献5に開示されたワイプ装置の断面図である。図4に示されるように特許文献5に開示されたワイプ装置は、ガス吸引孔150と、突起121を有するガスガイド部120を有する。
【0011】
図4に示されるように特許文献5で開示されたワイプ装置と、ノズルプレート11との間には、突起121によって、ガスガイド部120とノズルプレート11と間隔が狭くなったオリフィス部123が形成される。オリフィス部123が形成された状態で、ガス吸引孔150からガスを吸引すると、オリフィス部123においてオリフィス効果によりガスの流速が速くなり、ノズルプレート11の表面に付着した異物などが吹き飛ばされる。このように、オリフィス効果を利用したワイプ装置では、ノズルプレート11に対して斜めにガスを噴射しないので、ガスがノズル孔の内部に向かうことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−169730号公報
【特許文献2】特開2000−62197号公報
【特許文献3】特開平成2−108549号公報
【特許文献4】米国特許4970535号明細書
【特許文献5】特開2004−90361号公報
【特許文献6】特開昭和63−242643号公報
【特許文献7】米国特許4908636号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図3Bに示されるように、ガス噴射孔130からノズルプレート11に対して平行にガスを噴射する場合、ガスの流速が速い領域と、ノズルプレート11とが必然的に離間する。このため、ノズルプレート11の近傍で、充分なガスの流速を確保できず、異物を吹き飛ばせなくなる恐れがある。このため、図3Bに示されたようなワイプ装置では、ノズルプレート11の近傍におけるガスの流速を確保するために、ガス噴射孔130から噴射されるガスの流速を速くすることが求められる。
【0014】
しかし、図3Bに示されたようなワイプ装置において、ガスの流速を上げると、ノズルプレートに対して斜めの成分を有するガス流が生じる。このため、図3Bに示されたようなワイプ装置では、ノズル孔13の内部にガスが向かい、ノズル孔13内のインク15が乾燥するという問題を解決できない。
【0015】
また、図3Bに示されたようなワイプ装置において、ワイプ装置とノズルプレート11とを近づけることで、ノズルプレート11の近傍におけるガスの流速を確保することも考えられる。しかしワイプ装置とノズルプレート11とを近づけすぎると、ワイプ装置がノズルプレート11に接触し、ノズルプレート表面の撥水膜を傷つけてしまう。
【0016】
また、図4に示されたようなオリフィス効果を利用するワイプ装置では、ノズル孔13の内部にガスが向かうことはないものの、オリフィス部123において、高速なガスの流れを実現するために、ワイプ装置とノズルプレート11との間隔を正確に設定することが求められる。このため、例えばインクジェットヘッドの端部や、ノズルプレートの繋ぎ目など、ノズルプレートが段差や隙間を有する場合、ガスの流速が落ち、異物を吹き飛ばせなくなる。
【0017】
また、図4に示されたようにオリフィス効果を利用するワイプ装置では、効果的にオリフィス効果を発生させるために、ガスガイド部120とノズルプレート11との間に形成されるガス流路を外部から密閉することが求められる。このためオリフィス効果を利用するワイプ装置では、図5に示すように、ガスガイド部120の壁面125をノズルプレート11に接触させることが求められる。このようにガスガイド部120の壁面125がノズルプレート11に接触すると、ノズルプレート11表面の撥水膜が磨耗されてしまう。
【0018】
本発明の目的は、ノズルプレートに非接触で、ノズルプレートに対して平行でかつ安定したガス流を形成することができるワイプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、コアンダ効果によって曲面に沿ってガスを誘導することで、ノズルプレートに対して平行でかつ安定したガス流を形成すことができることを見出し、さらに検討を加え発明を完成させた。すなわち本発明の第1は以下に示すワイプ装置に関する。
【0020】
[1]ガスを噴射するガス噴射孔と、頂点を有する凸状の曲面であって、前記ガス噴出孔から噴射されたガスが吹き付けられる曲面を有するガイド部と、を有するワイプ装置であって、前記ガイド部上に配置された、インクジェットヘッドのノズルプレートに付着した異物を、前記ガイド部の曲面に沿って誘導されたガスで吹き飛ばすワイプ装置。
[2]前記曲面の曲率半径は、5〜200mmである、[1]に記載のワイプ装置。
[3]前記ガス噴射孔から噴射されるガスの前記曲面に対する入射角度は、30〜90°である、[1]または[2]に記載のワイプ装置。
[4]前記曲面は、頂線を有する凸状の柱面であり、前記ガス噴射孔は、前記曲面の頂線に平行な長軸を有するスリットである、[1]〜[3]のいずれか一つに記載のワイプ装置。
[5]前記吹き飛ばされた異物を吸引するガス吸引孔をさらに有し、前記ガス吸引孔は、前記ガイド部を挟んで、前記ガス噴射孔に対向する、[1]〜[3]のいずれか一つに記載のワイプ装置。
[6]前記曲面は、頂線を有する凸状の柱面であり、前記ガス噴射孔は、前記曲面の頂線に平行な長軸を有するスリットであり、前記ガス吸引孔は、前記曲面の頂線に平行な長軸を有するスリットである、[5]に記載のワイプ装置。
[7]前記ガイド部を収容するハウジングをさらに有し、前記ハウジングは、互いに離間し、前記ハウジングの天井を構成する噴射孔プレートおよび吸引孔プレートと、前記噴射孔プレートと吸引孔プレートとの間に形成され、かつ前記曲面の頂線が露出する開口部と、を有し、前記ガス噴射孔は、前記曲面と前記噴射孔プレートとの間の隙間であり、前記ガス吸引孔は、前記曲面と前記吸引孔プレートとの間の隙間である、[6]に記載のワイプ装置。
[8]前記噴射孔プレートおよび吸引孔プレートの前記ノズルプレートに対向する面のうち、前記開口部近傍の領域は、前記ノズルプレートに平行である、[7]に記載のワイプ装置。
[9]前記ガス噴射孔内に、前記ガスを分配する拡散板を有する、[1]〜[8]のいずれか一つに記載のワイプ装置。
【0021】
本発明の第2は、以下に示すインクジェット装置に関する。
[10][1]〜[9]のいずれか一つに記載のワイプ装置を具備するインクジェット装置。
【0022】
本発明の第3は、以下に示すノズルプレートのワイプ方法に関する。
[11][1]〜[9]のいずれか一つに記載のワイプ装置をワイプ装置を準備するステップと、前記曲面とノズルプレートとが対向するように、前記ワイプ装置上にインクジェットヘッドを配置するステップと、前記ガス噴射孔からガスを噴射させ、前記曲面と前記ノズルプレートとの間に一定間隔を保ちながら、前記ワイプ装置を前記ノズルプレートに対して相対移動させ、前記曲面に沿って誘導されたガスで、前記ノズルプレートに付着した異物を吹き飛ばすステップと、を有するノズルプレートのワイプ方法。
[12]前記ガス噴射孔から噴射される前記ガスの流速は、15m/s以上である、[11]に記載のワイプ方法。
[13]前記曲面と前記ノズルプレートとの間隔は、0.2〜1.5mmである、[11]または[12]に記載のワイプ方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明のワイプ装置によれば、ノズルプレートに非接触で、ノズルプレートの表面に対して平行でかつ安定したガス流を形成することができる。このため本発明によれば、ノズル孔内のインクの乾燥を防止し、かつノズルプレートの表面の撥水膜を傷つけることなく、ノズルプレートに付着した異物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来のワイプ装置の模式図
【図2】従来のワイプ装置の断面図
【図3】従来のワイプ装置の模式図
【図4】従来のワイプ装置の断面図
【図5】従来のワイプ装置の側面図
【図6】実施の形態1のワイプ装置を示す図
【図7】実施の形態1のワイプ装置を用いたワイプ方法のフローを示す図
【図8】実施の形態1のワイプ装置を用いたワイプ方法のフローを示す図
【図9】実施の形態2のワイプ装置の断面図
【図10】実施の形態3のワイプ装置の断面図
【図11】実施の形態4のワイプ装置を示す図
【図12】実施の形態5のワイプ装置の断面図
【図13】実施の形態5のワイプ装置の断面の一部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.本発明のワイプ装置
本発明のワイプ装置は、少なくとも、ガスを噴射するガス噴射孔と、ガス噴出孔から噴射されたガスが吹き付けられる曲面を有するガイド部と、を有する。
【0026】
本発明のワイプ装置は、インクジェットヘッドのノズルプレートに接触することなく、コアンダ効果によってガイド部の曲面によって誘導されたガスで、ノズルプレートに付着した異物を、吹き飛ばすことを特徴とする。以下、本発明の構成要素について説明する。
【0027】
ガス噴射孔は、インクジェットヘッドのノズルプレートに付着した異物を吹き飛ばすためのガスを噴射するための孔である。ガス噴射孔から噴射されるガスは、空気や窒素、インクジェットヘッドに収容されたインクの溶媒蒸気などである。噴射するガスをインクの溶媒蒸気とすることで、本発明のワイプ装置でインクジェットヘッドをワイプする際にノズル内のインクが乾燥することを防止することができる。
【0028】
ガス噴射孔から噴射されるガスの流速は、15m/s以上であることが好ましい。噴射されるガスの流速が15m/s未満であった場合、ノズルプレートに付着した異物を吹き飛ばせないからである。
【0029】
ガス噴射孔の形状は特に限定されないが、長軸を有するスリットであることが好ましい(図6参照)。また、ガス噴射孔内には、拡散板が設けられていてもよい(実施の形態5参照)。ガス噴射孔内に拡散板を設けることで、ガス噴射孔から噴出されるガスの流速を均一にすることができる。
【0030】
ガイド部は、ガス噴射孔から噴射されたガスを誘導するための部材である。本発明では、ガイド部は、頂点を有する凸状の曲面を有することを特徴とする。曲面のうち少なくとも頂点近傍は、外部に露出している。曲面は、頂点を有すればよいが、頂線を有する柱面であってもよい(図6A参照)。ここで「頂線」とは、柱面の母線のうち、頂点を通る母線を意味する。また、曲面が頂線を有する柱面である場合、曲面は頂線に関して線対称であってもよいが、曲面は頂線に関して非対称であってもよい。本発明のワイプ装置でインクジェットヘッドをワイプする際、曲面の頂点は、インクジェットヘッドのノズルプレートに対向する。
【0031】
また、曲面が頂線を有する柱面である場合、曲面の頂線は、スリット状のガス噴射孔の長軸と平行であることが好ましい。このように、ワイプ装置が、頂線を有する柱面を有するガイド部と、柱面の頂線に平行な長軸を有するスリットであるガス噴射孔とを有することで、ワイプ装置がワイプできる幅が広がり、より広い領域を一度にワイプすることが可能になる。
【0032】
本発明では、ガイド部がガス噴射孔から噴射されたガスをコアンダ効果によって曲面に沿って誘導することを特徴とする。ここで「コアンダ効果」とは、粘性を有する流体の中に物体を置いたときにその物体に沿って流体の向きが変わる現象を意味する。すなわち、本発明では、「コアンダ効果」を生じさせるために、ガイド部の曲面の形状を工夫したことを特徴とする。
【0033】
「コアンダ効果」を生じさせるためのガイド部の曲面の構造は、ガス噴射孔が噴射するガスの種類および流速によって異なる。例えば、ガス噴射孔から流速15m/sの空気を噴射する場合、ガスが流れる方向の曲面の曲率半径が5〜200mmで、ガスを誘導する曲面の弦の長さ5〜60mmであれば、コアンダ効果によってガスを誘導することができる。
【0034】
また、ガスが流れる方向の曲面の曲率半径が200mm超であってもコアンダ効果は発現するが、ワイプ装置が大型になりすぎるため、曲率半径は200mm以下であることが好ましい。
【0035】
また、コアンダ効果を生じさせるためには、曲面に対するガスの入射角度を30〜90°にすることが好ましい。ここで、「ガスの入射角度」とは、ガス噴射孔から最も近い曲面上の点における曲面の法線と、ガスが噴射される方向とがなす角度を意味する(図6B参照)。ガスの入射角度が30°未満であると、曲面に沿ったガスの流れの成分が弱くなり、曲面に沿って効率よくガスが流れなくなる。
【0036】
本発明のワイプ装置は、さらに噴射されたガスによって吹き飛ばされた異物を吸引するためのガス吸引孔を有していてもよい。
【0037】
ガス吸引孔は、ガスの流れの下流方向に配置される。具体的には、ガス吸引孔は、ガイド部を挟んで、前記ガス噴射孔に対向する(図9参照)。ワイプ装置がガス吸引孔を有することで、吹き飛ばされた異物をガス吸引孔で回収することができ、吹き飛ばされた異物が飛散することを防止できる。
【0038】
ガス吸引孔の形状は特に限定されないが、上述のようにガス噴射孔がスリット状である場合、ガス吸引孔もガイド部の柱面の頂線に平行な長軸を有するスリットであることが好ましい。
【0039】
このようなワイプ装置を用いて、ノズルプレートをワイプするには、ガス噴射孔からガスをガイド部の曲面に吹き付けながら、ガイド部の曲面をノズルプレートに近づければよい。これにより、曲面に沿ったガス流が、ノズルプレートに接触し、ノズルプレートに付着した異物を、吹き飛ばすことができる。そしてガイド部の曲面とノズルプレートとの間で一定間隔を保ちながら、ワイプ装置をノズルプレートに対して相対移動させることで、ノズルプレート全体をワイプすることができる。
【0040】
凸状の曲面に沿って誘導されるガス流は、同様に凸曲状になるので、ノズルプレートに接触するガス流は、ノズルプレートに対して平行になる。このため、従来のワイプ装置のように、ノズル孔の内部にガスが向かい、ノズル孔内のインクが乾燥することがない。
【0041】
また、ガスの流量および流速は、ガス噴射孔から噴射されるガスの流量および流速によって制御される。このため本発明では、オリフィス効果を利用した従来のワイプ装置のように、ノズルプレートの形状等によってガスの流量および流速が不安定になることはない。このため、ノズルプレートが段差や隙間を有する場合であっても、ガスの流速が落ちることはなく、安定したガス流を維持できる。
【0042】
2.本発明のインクジェット装置
本発明のインクジェット装置は、本発明のワイプ装置と、インクジェットヘッドを具備することを特徴とする。インクジェット装置は、2以上のインクジェットヘッドを有していてもよい。インクジェット装置は、ワイプ装置およびインクジェットヘッド以外に、被塗布材を移動させるためのステージや、ステージの移動を制御する制御機構などが含まれる。
【0043】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されない。
【0044】
(実施の形態1)
図6Aは、本発明の実施の形態1のワイプ装置100の斜視図である。図6Aに示されるように、ワイプ装置100は、頂線Tを有する柱面からなる曲面111を有するガイド部110と、頂線Tと平行な長軸を有するスリット状のガス噴射孔130を有する。また、図6Aに示されるようにガイド部110の曲面111は外部に露出している。図6Bは、図6Aに示されたワイプ装置100の一点鎖線Aによる断面図である。一点鎖線Aは、ガス噴射孔130から噴射されたガスの流れ方向に平行な線である。
【0045】
図6Bに示される曲面111の曲率半径112は5〜200mmであり、弦113の長さは、5〜60mmである。曲面111の曲率半径112は、一定であってもよいが、変化してもよい。例えば、曲面111のうち、頂線Tよりもガス噴出孔130側の領域の曲率半径112が、曲面111のうち、頂線Tよりガス噴出孔130と反対側の領域の曲率半径112以下であっても、曲面111はコアンダ効果によってガスを誘導することができる。
【0046】
また、ガス噴射孔130の幅131は、0.2〜1.5mmである。また、ガス噴射孔130は、噴射されたガスの曲面111に対する入射角度θが30°〜90°になるように調整される。
【0047】
次に、実施の形態1のワイプ装置を用いたノズルプレートのワイプ方法について、図7A〜図8Bを参照しながら説明する。
【0048】
図7A〜図8Bに示されるように、本実施の形態のワイプ方法は、実施の形態1のワイプ装置100を準備する第1ステップ(図7A)と、2)曲面111とノズルプレート11とが対向するように、ワイプ装置100の上にインクジェットヘッド10を配置する第2ステップ(図7B)と、3)ガス噴射孔130からガスを噴射させ、曲面111とノズルプレート11との間に一定間隔D1を保ちながら、ワイプ装置100をノズルプレート11に対して相対移動させる第3ステップ(図8A、図8B)とを有する。
【0049】
1)図7Aは第1ステップを示す。図7Aに示されるように第1ステップでは、図6Aおよび図6Bで示される実施の形態1のワイプ装置100を準備する。
【0050】
2)図7Bは、第2ステップを示す。図7Bに示されるように第2ステップでは、ワイプ装置100の曲面111と、インクジェットヘッド10のノズルプレート11とが対向するように、ワイプ装置100の上にインクジェットヘッド10を配置する。曲面111と、ノズルプレート11とは離間し、両者の間には、間隔D1が形成される。
【0051】
また、図7Bでは、ワイプ装置100が、ノズルプレート11に対して重力方向下方に配置された例を示したが、ワイプ装置100は、ノズルプレート11に対して重力方向上方に配置されていてもよい。上述したコアンダ効果は、重力の影響よりも強いからである。また、図7Bに示されるように、ノズルプレート11には、異物としてインク滴15が付着している。
【0052】
3)図8Aおよび図8Bは、第3ステップを示す。図8Aおよび図8Bに示されるように、第3ステップでは、ガス噴射孔130から噴射されたガスを曲面111に吹き付け、かつ曲面111とノズルプレート11との間に一定間隔D1を保ちながら、移動機構(不図示)で、ワイプ装置100をノズルプレート11に対して相対移動させる。
【0053】
ガス噴射孔130から噴射されたガスは、曲面111の一方の端部E1から曲面111の頂点に向けて、曲面111に吹きつけられる。
【0054】
ワイプ装置100をノズルプレート11に対して相対移動させるには、インクジェットヘッド10(ノズルプレート11)を移動させてもよいし、ワイプ装置100を移動させてもよいし、ワイプ装置100およびインクジェットヘッド10の両方を移動させてもよい。
【0055】
図8Aおよび図8Bに示されるようにガス噴射孔130から噴射されたガスは、コアンダ効果によって曲面111に沿って誘導される。曲面111と、ノズルプレート11との間隔D1は、特に限定されないが、曲面111に沿ったガス流が、ノズルプレート11に接触するように設定される。間隔D1は、具体的には約0.2〜1.5mmである。間隔D1が、0.2mm未満であると、ワイプ装置の相対移動中に、曲面とノズルプレートとが接触してしまう恐れがある。一方、間隔D1が1.5mm超であると、ガス流とノズルプレート11とが離れてしまい、インク滴15を吹き飛ばすことが出来なくなる。
【0056】
このように、ガス噴射孔130からガスを噴射させながら、ワイプ装置100をノズルプレート11に対して相対移動させることで、ノズルプレート11に付着したインク滴15は、曲面111に沿って誘導されたガスによって吹き飛ばされる。吹き飛ばされたインク滴15は、そのまま、ガス流に乗ってノズルプレート11の表面から排除される。
【0057】
凸状の曲面111に沿ったガス流は、曲面111と同様に凸曲状になるので、ノズルプレート11に接触するガス流は、ノズルプレート11に平行になる。このため、従来のワイプ装置のように、ノズル孔の内部にガスが向かい、ノズル孔が乾燥することがない。
【0058】
また、ノズルプレート11に接触するガス流の流速は、ガス噴射孔130から噴射されるガスの流速によって制御される。このため、本実施の形態におけるノズルプレート11に接触するガス流の流速は、オリフィス効果を利用した従来のワイプ装置のように、ノズルプレートの形状による影響を受けない。このため、ノズルプレートの端部や、ノズルプレートの繋ぎ目などで、ガスの流速が落ちることはない。これにより、インクジェット装置が複数のインクジェットヘッドからなる大型ヘッドを有する場合であっても、ノズルプレートを問題なくワイプすることができる。
【0059】
(実施の形態2)
実施の形態2では、ワイプ装置がガス吸引孔を有する形態について説明する。
【0060】
図9は、ノズルプレート11をワイプ中の実施の形態2のワイプ装置200の断面図である。実施の形態1のワイプ装置100と同一の構成要素は同一の符号を付し説明を省略する。図9に示されるように、実施の形態2のワイプ装置200は、ガス吸引孔150を有する。
【0061】
ガス吸引孔150は、コアンダ効果によって曲面111に沿って誘導されたガスが流入するようにガス流の下流方向に配置される。具体的には、ガス吸引孔150は、ガイド部110を挟んで、ガス噴射孔130と対向する。また、ガス吸引孔150は、ガス噴射孔130と同様に曲面111の頂線に平行な長軸を有するスリットである。ワイプ装置200がガス吸引孔150を有することで、吹き飛ばされたインク滴15をガス吸引孔150で回収することができ、吹き飛ばされたインク滴15が飛散することを防止できる。
【0062】
また、ガス吸引孔150の幅151は、ガス噴射孔130の幅131(図6B)よりも大きいことが好ましい。ガス吸引孔150の幅151は、ガス噴射孔130の幅131(図6B)よりも大きくすることで、吹き飛ばされたインク滴15をより確実に回収することができる。具体的には、ガス吸引孔150の幅151は、0.5〜2.5mmであることが好ましい。
【0063】
このように実施の形態2によれば実施の形態1の効果に加えて、噴射ガスによって吹き飛ばされたインク滴15をガス吸引孔150で回収することができ、吹き飛ばされたインク滴15が飛散することを防止できる。
【0064】
(実施の形態3)
実施の形態3では、ガス噴射孔、ガイド部およびガス吸引孔が一体化された形態について説明する。
【0065】
図10は、ノズルプレート11をワイプ中の実施の形態3のワイプ装置300の断面図である。実施の形態1および実施の形態2のワイプ装置と同一の構成要素については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0066】
図10に示されるように、実施の形態3のワイプ装置300は、ガイド部110を収容するハウジング310を有する。ハウジング310は、ハウジング310の天井を構成する噴射孔プレート311および吸引孔プレート313を有する。噴射孔プレート311および吸引孔プレート313は曲面111に接触せず、曲面111の一部を覆う。噴射孔プレート311と吸引孔プレート313とは、離間し、両者の間には開口部312が形成される。開口部312は、曲面111の頂線Tと平行な長軸を有することが好ましい(図11A参照)。
【0067】
曲面111の頂点Tは、開口部312を通して外部に露出している。ガイド部110と、ハウジング310とは、締結、溶接またはロウ付などで接続されていてもよい。
【0068】
本実施の形態では、ガス噴射孔130およびガス吸引孔150が曲面111と一体化されている。具体的には、ガス噴射孔130は、噴射孔プレート311と、曲面111との間の隙間によって構成され;ガス吸引孔150は、吸引孔プレート313と、曲面111との間の隙間によって構成される。
【0069】
ガス噴射孔130は、ガス供給口315と接続される。また、ガス吸引孔150はガス排出口317に接続される。ガス供給口315およびガス排出口317の数は1つであってもよいが2以上であってもよい。また、本実施の形態では、ガス供給口315およびガス排出口317がハウジング310の底面に設けられているが、ガス供給口315およびガス排出口317はハウジング310の側面に設けられてもよい。
【0070】
このようにガス噴射孔、ガイド部およびガス吸引孔を一体化することで、実施の形態2の効果に加えて、ワイプ装置をコンパクトにすることができる。また、ガス噴射孔、ガイド部およびガス吸引孔を一体化することで、ガス噴射孔、ガス吸引孔およびガイド部の相対位置を調整する作業を省略することができる。
【0071】
また、ガス吸引孔を曲面と一体化することで、インク滴をより確実に吸引することができる。インク滴は、通常曲面に張り付いた状態で、ガス吸引孔に吸引されるからである。
【0072】
(実施の形態4)
実施の形態4では、噴射孔プレートおよび吸引孔プレートのノズルプレートに対向する面の開口部近傍の領域が、ノズルプレートに平行である形態について説明する。
【0073】
図11Aは、本実施の形態のワイプ装置400の分解斜視図であり、図11Bは、ノズルプレート11をワイプ中の図11Aに示されたワイプ装置400の一点鎖線Aによる断面図である。実施の形態3のワイプ装置と同一の構成要素については同一の符号を付し説明を省略する。
【0074】
図11Bおよび図11Aに示されるように、噴射孔プレート311のノズルプレート11に対向する面のうち開口部312近傍の領域(以下、「平行領域」とも称する)411は、ノズルプレート11に略平行である。同様に、吸引孔プレート313のノズルプレート11に対向する面のうち開口部312近傍の領域(以下、「平行領域」とも称する)413は、ノズルプレート11に略平行である。
【0075】
このように、噴射孔プレート311および吸引孔プレート313に平行領域を設けることで、図11Bに示されるようにノズルプレート11と平行領域との間にガス流を形成することができる。ノズルプレート11と平行領域と間隔D2は通常0.2〜1.5mmである。
【0076】
具体的には、本実施の形態では、平行領域411とノズルプレート11との間に、開口部312に向かったガス流が生じ;平行領域413とノズルプレート11との間に、開口部312に向かったガス流が生じる。これにより、ノズルプレート11に付着したインク滴15をガス流によって、開口部312に導くことができる。開口部312まで導かれたインク滴15は、曲面111に沿って誘導されたガスによって吹き飛ばされガス吸引孔150に吸引される。このように、本実施の形態のワイプ装置400は、インク滴15を集める機能を有するので、インク滴15を効果的に吹き飛ばすことができる。
【0077】
また、平行領域が親液性である場合、平行領域は液体ワイプとしても機能しうる。すなわち、平行領域が親液性である場合、ノズルプレート11に付着したインク滴15が平行領域に接触すると、インク滴15が撥液性処理が施されたノズルプレート11から、親液性の平行領域に移動し、ノズルプレート11からインク滴15を除去することができる。
【0078】
親液性の平行領域に移動した、インク滴15は、ハウジング310の外部に沿って流れ落ちたり、ノズルプレート11と平行領域との間のガス流によって、開口部312に導かれたりする。開口部312に導かれたインク滴15は、曲面111に沿って誘導されたガスによって吹き飛ばされガス吸引孔150に吸引される。
【0079】
このように、本実施の形態によれば、インク滴を開口部側に収集することができるので、実施の形態3の効果に加えて、少ないガスの流量で、ノズルプレートに付着したインク滴を除去できるというメリットを有する。
【0080】
(実施の形態5)
実施の形態5では、ガス噴射孔およびガス吸引孔の内部に拡散板が設けられた形態について説明する。
【0081】
図12は、実施の形態5のワイプ装置500の断面図である。実施の形態4のワイプ装置400と同一の構成要素については同一の符号を付し説明を省略する。図12に示されるように、本実施の形態のワイプ装置500は、ガス噴射孔130内部に拡散板501を有し、ガス吸引孔150の内部に拡散板503を有する。拡散板501、503は、多数の直径3〜10mmの穴を有する。拡散板501、503が有する穴は、拡散板501、503全体に亘って均一に分布していてもよいが、不均一に分布していてもよい。例えば、拡散板の中央部(ガス供給口315近傍)における穴の配置ピッチを、拡散板の端部(ハウジング310近傍)における穴の配置ピッチよりも小さくしてもよい。
【0082】
図13は、拡散板501の拡大図である。図13に示されるように、ガス供給口315からは、ガス噴射孔130内に不均一にガスが供給されるが、拡散板501によって、ガス噴射孔130内のガスの分布が均一にされる。
【0083】
拡散板501によってガス噴射孔130内のガスの分布が均一になることを示すため以下のシミュレーションを行った。シミュレーションのプログラムとしてFLUENT(アンシス・ジャパン株式会社)用いた。
【0084】
シミュレーションでは、拡散板501の長さ501Lを1mとし、拡散板501の中央部(ガス供給口315近傍)における穴の配置ピッチを、拡散板501の端部(ハウジング310近傍)における穴の配置ピッチの、1/2とした。
【0085】
シミュレーションの結果、ガス噴射孔130の中央部130cにおけるガスの流速を1としたとき、ガス噴射孔130の端部130e(末端から30mmの内の領域)におけるガスの流速を0.8〜0.9内に抑えることができた。また、ガス噴射孔130の中央部130cと端部130eとの間の領域におけるガスの流速比を0.9〜1内に抑えることができた。
【実施例】
【0086】
[実施例1]
実施例1では、図6〜8に記載された実施の形態1のワイプ装置100で、ノズルプレートをワイプした例について説明する。
【0087】
(ワイプ装置の寸法)
曲面111の曲率半径112を10mmとし、曲面の弦113の長さを5mmとした。また、ガス噴射孔130であるスリットの幅131を、0.4mmとした。また、曲面111に対するガスの入射角度θを71°(水平面に対して、19°)とした(図6B参照)。
【0088】
(ワイプ条件)
ノズルプレートの表面には、予め直径3mm程度のインク滴を付着させた。ノズルプレートにおけるインクの接触角は、50°程度である。そして、ガス噴射孔から、空気を噴射しながら、ワイプ装置をノズルプレートに対して相対移動させた。ガス噴射孔から噴射される空気の流速を、25m/sとした。また、ワイプ装置の移動速度を10mm/sとした。そして、曲面111とノズルプレート11との間隔D1を、0.5〜1.5mmの範囲で変化させた(図8B参照)。そしてワイプ装置100によるワイプの性能(ノズルプレートに残ったインク液滴305の大きさ)を評価した。
【0089】
(結果)
間隔D1を1.5mmとしたとき、最大で直径0.35mmインク滴がノズルプレートに残った。間隔D1を1.0mmとしたとき、最大で直径0.28mmのインク滴がノズルプレートに残った。間隔D1を0.7mmとしたとき最大で直径0.16mmのインク滴がノズルプレートに残った。そして間隔D1を0.5mm以下としたときインク滴をノズルプレートから完全に除去することができた。
【0090】
また、ノズルプレートの端部においても、ワイプ性能が低下しないことを確認できた。この結果は、本発明のワイプ装置がノズルプレートの形状(段差や隙間)に依存せず、曲面に沿ってコアンダ効果により安定したガスの流れを形成できることを示唆する。
【0091】
[実施例2]
実施例2では、ガス噴射孔130であるスリットの幅131を、0.8mmとした以外は、実施例1と同じ条件で、ノズルプレートをワイプした。
【0092】
(結果)
ガス噴射孔130であるスリットの幅131を0.8mmとすると、間隔D1が1.0mm以下のときにインク滴をノズルプレートから完全に除去することができた。
【0093】
[実施例3]
実施例3では、噴射孔130から噴射される空気の流速を50m/sとした以外は、実施例1と同じ条件で、ノズルプレートをワイプした。
【0094】
(結果)
噴射孔130から噴射される空気の流速を50m/sとすると、間隔D1が1.0mm以下のときにインク滴をノズルプレートから完全に除去することができた。
【0095】
[実施例4]
実施例4では、曲面111に対するガスの入射角度θを60°(水平面に対して、30°)とした(図6B参照)以外は、実施例1と同じ条件で、ノズルプレートをワイプした。
【0096】
(結果)
ガス噴射孔130からのガスの噴射角度を、水平面に対して、30°とすると、間隔D1が0.5mm以下のときにインク滴をノズルプレートから完全に除去することができた。
【0097】
実施例1〜4の結果を以下の表1にまとめて示す。
【表1】

【0098】
実施例1〜4の結果は、除去するインクや設備の制約条件に応じて、ガス噴射孔の角度や供給する空気の流速を適宜設計することにより、所望のワイプ性能を得ることができることを示唆する。
【0099】
[実施例5]
実施例5では、図9に示された実施の形態2のワイプ装置を用いて、ノズルプレートをワイプした例を説明する。
【0100】
実施例5では、ガス吸引孔150を設け、曲面111とノズルプレート11との間隔D1を、1mmとした以外は、実施例1と同じ条件で、ノズルプレートをワイプした。ガス吸引孔150の幅151は、0.4mmとした(図9参照)。
【0101】
(結果)
ガス吸引孔150の幅151が0.4mmである場合、吹き飛ばされたインク滴15は、ガス吸引孔150の上面にも付着し、ガス吸引孔がインク滴306を全て回収することができなかった。これは、曲面111のガス吸引孔150側ではガス流の幅が1.0mm程度まで広がっていることに起因すると考えられる。
【0102】
[実施例6]
実施例6では、ガス吸引孔150の幅151を1.2mmとし、ガス噴射孔130からのガスの噴射角度を、水平面に対して、30°とした以外は、実施例5と同じ条件で、ノズルプレートをワイプした。
【0103】
(結果)
ガス吸引孔150の幅151を1.2mmとし、ガス噴射孔130からのガスの噴射角度を、水平面に対して、30°とすると、吹き飛ばされたインク滴15を全てガス吸引孔150で吸引することができた。
【0104】
この結果は、ガス吸引孔の幅をガス噴射孔の幅よりも大きくすることで、吹き飛ばされたインク滴15の回収がより確実になることを示唆する。
【0105】
[実施例7]
実施例7では、図11に示された実施の形態4のワイプ装置を用いて、ノズルプレートをワイプした例を説明する。
【0106】
(ワイプ装置の寸法)
図11Bにおけるφ1、φ2、δ1、δ2を以下のように設定した。
φ1=19°、φ2=30°、δ1=δ2=90°
【0107】
ガス噴射孔130の幅131を0.4mmとし、ガス噴射孔130からのガスの噴射角度を、水平面に対して、19°とした。ガス吸引孔150の幅151を1.2mmとし、ガス吸引孔150へのガスの吸引角度の水平面に対して30°とした。
【0108】
(ワイプ条件)
ガス噴射孔から噴射される空気の流速を25m/sとし、ガス吸引孔へ吸引される空気の流速を50m/sと、曲面111とノズルプレート11と間隔D1を、1mmとした以外は、実施例1と同じ条件でノズルプレートをワイプした。
【0109】
(結果)
平行領域411とノズルプレート11との間に、開口部312に向かったガス流が生じ;平行領域413とノズルプレート11との間に、開口部312に向かったガス流が生じたことが確認された。またインク滴15がこのガス流によって、開口部312に導かれ、そして最終的に曲面111に沿って誘導されたガスによって吹き飛ばされガス吸引孔150に吸引される様子が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のワイプ装置は、被ワイプ材の形状に依存せず、かつノズル内のインクを乾燥させることなく、非接触方式で被ワイプ材をワイプすることができる。本発明のワイプ装置は、インクジェットヘッドやスリットダイヘッド、マルチノズル方式のディスペンサー塗布装置等のヘッドのワイピングに用いられうる。
【符号の説明】
【0111】
10 インクジェットヘッド
11 ノズルプレート
13 ノズル孔
15 インク
100、200、300、400、500 ワイプ装置
110 ガイド部
111 曲面
130 ガス噴射孔
131 ガス噴射孔の幅
150 ガス吸引孔
151 ガス吸引孔の幅
310 ハウジング
311 噴射孔プレート
312 開口部
313 吸引孔プレート
315 ガス供給口
317 ガス排気口
411 噴射孔プレートの平行領域
413 吸引孔プレートの平行領域
501 ガス噴射孔の拡散板
503 ガス吸引孔の拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを噴射するガス噴射孔と、
頂点を有する凸状の曲面であって、前記ガス噴出孔から噴射されたガスが吹き付けられる曲面を有するガイド部と、を有するワイプ装置であって、
前記ガイド部上に配置された、インクジェットヘッドのノズルプレートに付着した異物を、前記ガイド部の曲面に沿って誘導されたガスで吹き飛ばすワイプ装置。
【請求項2】
前記曲面の曲率半径は、5〜200mmである、請求項1に記載のワイプ装置。
【請求項3】
前記ガス噴射孔から噴射されるガスの前記曲面に対する入射角度は、30〜90°である、請求項1に記載のワイプ装置。
【請求項4】
前記曲面は、頂線を有する凸状の柱面であり、
前記ガス噴射孔は、前記曲面の頂線に平行な長軸を有するスリットである、請求項1に記載のワイプ装置。
【請求項5】
前記吹き飛ばされた異物を吸引するガス吸引孔をさらに有し、
前記ガス吸引孔は、前記ガイド部を挟んで、前記ガス噴射孔に対向する、請求項1に記載のワイプ装置。
【請求項6】
前記曲面は、頂線を有する凸状の柱面であり、
前記ガス噴射孔は、前記曲面の頂線に平行な長軸を有するスリットであり、
前記ガス吸引孔は、前記曲面の頂線に平行な長軸を有するスリットである、請求項5に記載のワイプ装置。
【請求項7】
前記ガイド部を収容するハウジングをさらに有し、
前記ハウジングは、互いに離間し、前記ハウジングの天井を構成する噴射孔プレートおよび吸引孔プレートと、前記噴射孔プレートと吸引孔プレートとの間に形成され、かつ前記曲面の頂線が露出する開口部と、を有し、
前記ガス噴射孔は、前記曲面と前記噴射孔プレートとの間の隙間であり、前記ガス吸引孔は、前記曲面と前記吸引孔プレートとの間の隙間である、請求項6に記載のワイプ装置。
【請求項8】
前記噴射孔プレートおよび吸引孔プレートの前記ノズルプレートに対向する面のうち、前記開口部近傍の領域は、前記ノズルプレートに平行である、請求項7に記載のワイプ装置。
【請求項9】
前記ガス噴射孔内に、前記ガスを分配する拡散板を有する、請求項1に記載のワイプ装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のワイプ装置を具備するインクジェット装置。
【請求項11】
請求項1に記載のワイプ装置を準備するステップと、
前記曲面とノズルプレートとが対向するように、前記ワイプ装置上にインクジェットヘッドを配置するステップと、
前記ガス噴射孔からガスを噴射させ、前記曲面と前記ノズルプレートとの間に一定間隔を保ちながら、前記ワイプ装置を前記ノズルプレートに対して相対移動させ、前記曲面に沿って誘導されたガスで、前記ノズルプレートに付着した異物を吹き飛ばすステップと、を有するノズルプレートのワイプ方法。
【請求項12】
前記ガス噴射孔から噴射される前記ガスの流速は、15m/s以上である、請求項11に記載のワイプ方法。
【請求項13】
前記曲面と前記ノズルプレートとの間隔は、0.2〜1.5mmである、請求項11に記載のワイプ方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−88133(P2011−88133A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178901(P2010−178901)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】