説明

インク供給装置

【課題】ダイヤフラムポンプを用いたインクジェットヘッドの圧力制御を行うインク供給装置において、吐出ミスのない安定した塗工が可能なインク供給装置を提供する。
【解決手段】インク供給源1からインクジェットヘッド8までの配管途中に、インク供給源1からインクジェットヘッド8へインクを一方向にして流すダイヤフラムポンプ4を備えてなるインク送出手段を具備し、かつ、インクジェットヘッド8のインク圧力を検出する圧力センサー9からの情報に基づいて、インクジェットヘッド8のヘッド吐出口におけるインクのメニスカス面を形成するインク圧力条件を維持するように、ダイヤフラムポンプ4を動作させる駆動手段を具備してなるインク供給装置において、インク供給源1からダイヤフラムポンプ4までの間に、インクジェットヘッド8の吐出面と同等またはそれ以下の高さで分岐バルブ3が設けられていることを特徴とするインク供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタの色パターン形成に用いるインクジェット塗工装置などのインク吐出機構にインクを供給するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイなどに用いられるカラーフィルタ(以下CFと称する)の製造方法は従来からフォトリソグラフィーによる方法(以下フォトリソ方式渡渉する)が一般的であった。このフォトリソ方式では感光性レジストを角型のガラス基板に塗工し、露光、現像、乾燥の工程を複数回繰り返すことで、一定の格子状カラーパターンを得ることができる。
【0003】
しかしながら、近年基板の大型化が進むと共に、パネル価格の下落に伴ってCFのコストダウン要求も更に厳しくなってきている。従って次世代の2m角を超えるようなサイズのCF製造ラインをフォトリソ方式で構築する場合、装置自体のコストが現ライン以上に高くなるとともにサイズアップによるフットプリント(生産に必要な面積)の拡大によって建屋にかかるコストも嵩んでしまい、イニシャルコストの大幅なアップが予想される。また、現像される余分なインクの増加や現像液等の材料使用量の増加によりランニングコストも更に上がることが予想でき、前述したコストダウン要求を満たすことは困難である。
【0004】
そこでフォトリソ方式に代わる新しいCF製造方法の一つとしてインクジェット方式が注目されている。この方法では、インクジェットヘッドを用いてBMパターンに直接カラーパターンを複数色同時塗工していく。このため、フォトリソ方式で必要であった露光、現像等の工程を削減でき、フットプリントを大幅に削減することが可能となる。また塗工材料も必要最小量であり、更にフォトリソ方式で必要であった現像液等が不要となるため、ランニングコストも削減することが可能である。
【0005】
前述インクジェット方式においてインクを吐出する為のインクジェットヘッドは、基板の大型化、生産性向上の為のタクトアップ、カラーフィルタの高精細化が進むにしたがって装置に搭載するヘッドが密集しかつ複数個配列されるようになった。インクジェット方式におけるインク供給装置は品質に大きな影響を与える為、特許文献1に開示されているように、インク供給源からインクジェットヘッドまでのインク供給系の途中に、大気開放のサブインクタンクを介在させ、その液面高さとインクジェットヘッドのインク吐出口のインク面高さとの水頭差を確保して、インク吐出口のインク面をコントロールするシステムが提案されている。さらに、特許文献2では、インクを溜め受けるタンクの液面測定を行うなどの煩雑なシステムを必要としないとともに、大気開放されたサブインクタンクからの固形物のインクジェットヘッド側への送り込みが発生しないように考慮された、圧力センサーからの情報に基づいてダイヤフラムポンプを動作させてインクを送出する、より簡易的な装置構成でのインク供給装置が提案されている。
【特許文献1】特開2000−318184号公報
【特許文献2】特開2007−29932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のインク供給装置においては、インクの不吐出という品質上考慮し
なければならない事柄が発生する。インク固形物による詰りの発生は、開放系のインクタンクを密閉系の装置を採用することにより大幅に減少できたが、収率良く確実な塗布を行う点では課題が残る。インクジェットヘッドへのインク送出手段であるダイヤフラムポンプは、インク圧力を検出する圧力センサーの情報をもとに圧力維持を図るしくみとなっている。ダイヤフラムポンプは圧力をコントロールできる容量が決まっており、塗工を重ねて圧力コントロールができない容量に達すると塗工と塗工の合間でインク供給源から補充するためのチャージ動作を実施するが、このチャージ動作後の塗工で高い頻度で不吐出が発生する問題があった。
【0007】
本発明はかかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、ダイヤフラムポンプを用いたインクジェットヘッドの圧力制御を行うインク供給装置において、吐出ミスのない安定した塗工が可能なインク供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、インク供給源1からインクジェットヘッド8までの配管途中に、インク供給源1からインクジェットヘッド8へインクを一方向にして流すダイヤフラムポンプ4を備えてなるインク送出手段を具備し、かつ、インクジェットヘッド8のインク圧力を検出する圧力センサー9からの情報に基づいて、インクジェットヘッド8のヘッド吐出口におけるインクのメニスカス面を形成するインク圧力条件を維持するように、ダイヤフラムポンプ4を動作させる駆動手段を具備してなるインク供給装置において、インク供給源1からダイヤフラムポンプ4までの間に、インクジェットヘッド8の吐出面と同等またはそれ以下の高さで分岐バルブ3が設けられていることを特徴とするインク供給装置である。
【0009】
次に本発明の請求項2に係る発明は、インク供給源1からインクジェットヘッド8までの配管途中に、インク供給源1からインクジェットヘッド8へインクを一方向にして流すダイヤフラムポンプ4を備えてなるインク送出手段を具備し、かつ、インクジェットヘッド8のインク圧力を検出する圧力センサー9からの情報に基づいて、インクジェットヘッド8のヘッド吐出口におけるインクのメニスカス面を形成するインク圧力条件を維持するように、ダイヤフラムポンプ4を動作させる駆動手段を具備してなるインク供給装置において、ダイヤフラムポンプ4はインクジェットヘッド8の吐出面より低い位置に設置されており、ダイヤフラムポンプ4には、インクジェット8の吐出面と同等かそれ以下の高さにエア抜きバルブ5が設けられていることを特徴とするインク供給装置である。
【0010】
次に本発明の請求項3に係る発明は、インク供給源1からインクジェットヘッド8までの配管途中に、インク供給源1からインクジェットヘッド8へインクを一方向にして流すダイヤフラムポンプ4を備えてなるインク送出手段を具備し、かつ、インクジェットヘッド8のインク圧力を検出する圧力センサー9からの情報に基づいて、インクジェットヘッド8のヘッド吐出口におけるインクのメニスカス面を形成するインク圧力条件を維持するように、ダイヤフラムポンプ4を動作させる駆動手段を具備してなるインク供給装置において、ダイヤフラムポンプ4はインクジェットヘッド8の吐出面より高い位置に設置されており、ダイヤフラムポンプ4には、バルブ後の大気開放口がインクジェット吐出面と同等かそれ以下の高さになるようにエア抜きバルブ5が設けられていることを特徴とする、インク供給装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインク供給装置によれば、ダイヤフラムポンプを用いてインクジェットヘッドの圧力制御を行うインク供給装置において吐出ミスのない安定した塗工が可能なインク供給装置を提供することができ、塗工が安定して不良の発生が少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のインク供給装置を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。図1は、本発明の請求項1の発明を採用した一例の配管系統図である。また、図2は、本発明の請求項2の発明を採用した一例の配管系統図である。また、図3は、本発明の請求項3の発明を採用した一例の配管系統図である。
【0013】
本発明のインク供給装置は、インクジェットヘッド8近傍に設置された圧力センサー9でインク圧を監視しながらダイヤフラムポンプ4によりインクジェットヘッド面の安定したメニスカス制御を行うことを基本的な機構としている。
【0014】
前述した従来技術での不吐出に絡むチャージ動作の問題点は以下の通りと推定される。すなわち、インク供給源からダイヤフラムポンプまでのインク補充の際、送液に圧力がかかり、補充完了後に配管内に残圧が発生する。インク補充の際はダイヤフラムポンプとインクジェットヘッド間はバルブで遮断し、インク供給源とダイヤフラムポンプ間のバルブを開放する為、ダイヤフラムポンプとインクジェットヘッド間にバルブ遮断による容積変化が起き、インクジェットヘッドから液の飛出し(液ダレ)が発生する。インク補充中は圧力制御が切れ、通常インクジェットヘッドは負圧側で制御されているが、徐々に陽圧側にシフトする。インク補充完了後はインク供給源とダイヤフラムポンプ間のバルブを遮断した後ダイヤフラムポンプとインクジェットヘッド間のバルブを開放するが、圧力制御が開始されるまでの一瞬インク供給源側とインクジェットヘッド側で水頭差が発生する。インク供給源側の液面によってはインクジェットヘッド面よりメニスカスが陰圧側となってヘッドにエアを引き込む、あるいは、メニスカスが陽圧になってインクが垂れ気味となる。これはある一定の負圧安定していたインクジェット吐出口のインクメニスカスがチャージ動作によって崩れてしまった事に因る。
【0015】
そこで、本発明の請求項1の発明によれば、インクジェットヘッド8の吐出面と同等またはそれ以下の高さに、インク供給源1からダイヤフラムポンプ4までの間に分岐バルブ3をもうけ、ダイヤフラムポンプ4のチャージ完了後に分岐バルブ3を開放し、発生した残圧を大気開放する。チャージから制御開始までの切替時に水頭差がはたらいても吐出面のインクのメニスカスが保持されることになる。
【0016】
また、本発明の請求項2の発明によれば、インクジェットヘッド8の吐出面より低い位置にダイヤフラムポンプ4を設置し、ダイヤフラムポンプ4のエア抜き用として利用されているエア抜きバルブ5の高さをインクジェットヘッド8の吐出面と同等またはそれ以下の高さに設置する。ダイヤフラムポンプ4のチャージ完了後に前記エア抜きバルブ5を開放し、発生した残圧を大気開放する。チャージから制御開始までの切替時に水頭差がはたらいても吐出面のインクのメニスカスが保持されることになる。
【0017】
また、本発明の請求項3の発明によれば、インクジェットヘッド8の吐出面との高さと関係なくダイヤフラムポンプ4を設置し、ダイヤフラムポンプ4のエア抜き用として利用されているエア抜きバルブ5後の配管の大気開放口をインクジェット吐出面と同等またはそれ以下の高さにもうけ、ダイヤフラムポンプ4のチャージ完了後に前記エア抜きバルブ5を開放し、発生した残圧を大気開放する。チャージから制御開始までの切替時に水頭差がはたらいても吐出面のインクのメニスカスが保持される。
【0018】
更に、本発明の請求項2の発明を採用した一例のインク供給装置について詳細に述べる。はじめにインク供給装置の配管系統を上流側から説明する。
インク供給源1とダイヤフラムポンプ4との間にポンプINバルブ2が配置される。ポンプINバルブ2とダイヤフラムポンプ4との間に分岐バルブ3が配置される。ダイヤフラムポンプ4はサーボモータにて駆動し、サーボモータの動作によってインクの吐出を極め
て正確に行われるようにダイヤフラムポンプ4が駆動制御され、さらに吐出停止もサーボモータの動作によって制御される。ダイヤフラムポンプ4から下流側にエア抜きバルブ5が配置される。ヘッダー7とダイヤフラムポンプ4との間にヘッド供給バルブ6が配置される。ヘッダー7には複数個のインクジェットヘッド8が接続され、ヘッダーベントバルブ10にてヘッダー7とインクジェットヘッド8のエア抜きを行う。ヘッダー7には圧力センサー9が設置され、インク圧力を常時検知する。分岐バルブ3とエア抜きバルブ5とヘッダーベントバルブ10のエア抜きのために排出されたインクは、廃液ライン11を通して回収される。
【0019】
塗工中または塗工制御中はポンプINバルブ2を遮断しており、ヘッド供給バルブ6を開放してダイヤフラムポンプ4を駆動している。通常負圧側で制御しており、インクジェットヘッド8の吐出口でインク面がメニスカス面となるように予め設定された圧力条件(例えば−1200Pa±250Pa)に収束させるべく、圧力センサー9でインク圧力を常時監視し、ダイヤフラムポンプ4にフィードバッグしている。塗工待機中はインクジェットヘッド8からインクを吐出しないのでインク圧にほとんど変化がなく、ダイヤフラムポンプ4はインクの微少な送液動作、吸液動作を繰り返すのみである。塗工中はインクジェットヘッド8からインクを吐出するので圧力降下する。これを防ぐため、制御によりダイヤフラムポンプ4がインクジェットヘッド8にインク送液(補充)動作を行う。ダイヤフラムポンプ4は送液容量が決まっているため、塗工を重ねると容量不足に至る。この為、塗工と塗工間を利用してヘッド供給バルブ6を遮断して制御を停止する。その後ポンプINバルブ2を開放し、インク供給源1からダイヤフラムポンプ4へインクの補充を行うチャージ動作を実施する。チャージ動作が終了するとポンプINバルブ2を遮断する。
その後、分岐バルブ3をある一定時間開放し、チャージ時の残圧を開放する。その後ヘッド供給バルブ6を開放し、圧力センサー9の圧力をみながら設定圧力になるよう再度制御を行う。制御後に設定圧力に到達し塗工を行うことで、圧力センサー9のデータでは圧力の上昇はみられず、複数個全てのノズルから吐出できる。
【0020】
図4は、従来のインク供給装置と本発明のインク供給装置を用いてCFの塗工を行った場合の、チャージ後の塗工不良内訳を示したグラフである。従来不吐出とヘッド面からの液ダレにより、塗工不良が約7%発生していたが、本発明では不良の発生はなく、これらの不良が解消されたことを示すもので、本発明の効果が確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の請求項1の発明を採用した一例の配管系統図。
【図2】本発明の請求項2の発明を採用した一例の配管系統図。
【図3】本発明の請求項3の発明を採用した一例の配管系統図。
【図4】従来のインク供給装置と本発明のインク供給装置を用いてCFの塗工を行った場合の、チャージ後の塗工不良内訳を示したグラフ。
【符号の説明】
【0022】
1・・・インク供給源 2・・・ポンプINバルブ 3・・・分岐バルブ
4・・・ダイヤフラムポンプ 5・・・エア抜きバブル
6・・・ヘッド供給バルブ 7・・・ヘッダー 8・・・インクジェットヘッド9・・・圧力センサー 10・・・ヘッダーベントバルブ
11・・・廃液ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク供給源(1)からインクジェットヘッド(8)までの配管途中に、インク供給源(1)からインクジェットヘッド(8)へインクを一方向にして流すダイヤフラムポンプ(4)を備えてなるインク送出手段を具備し、かつ、インクジェットヘッド(8)のインク圧力を検出する圧力センサー(9)からの情報に基づいて、インクジェットヘッド(8)のヘッド吐出口におけるインクのメニスカス面を形成するインク圧力条件を維持するように、ダイヤフラムポンプ(4)を動作させる駆動手段を具備してなるインク供給装置において、
インク供給源(1)からダイヤフラムポンプ(4)までの間に、インクジェットヘッド(8)の吐出面と同等またはそれ以下の高さで分岐バルブ(3)が設けられていることを特徴とするインク供給装置。
【請求項2】
インク供給源(1)からインクジェットヘッド(8)までの配管途中に、インク供給源(1)からインクジェットヘッド(8)へインクを一方向にして流すダイヤフラムポンプ(4)を備えてなるインク送出手段を具備し、かつ、インクジェットヘッド(8)のインク圧力を検出する圧力センサー(9)からの情報に基づいて、インクジェットヘッド(8)のヘッド吐出口におけるインクのメニスカス面を形成するインク圧力条件を維持するように、ダイヤフラムポンプ(4)を動作させる駆動手段を具備してなるインク供給装置において、
ダイヤフラムポンプ(4)はインクジェットヘッド(8)の吐出面より低い位置に設置されており、ダイヤフラムポンプ(4)には、インクジェット(8)の吐出面と同等かそれ以下の高さにエア抜きバルブ(5)が設けられていることを特徴とするインク供給装置。
【請求項3】
インク供給源(1)からインクジェットヘッド(8)までの配管途中に、インク供給源(1)からインクジェットヘッド(8)へインクを一方向にして流すダイヤフラムポンプ(4)を備えてなるインク送出手段を具備し、かつ、インクジェットヘッド(8)のインク圧力を検出する圧力センサー(9)からの情報に基づいて、インクジェットヘッド(8)のヘッド吐出口におけるインクのメニスカス面を形成するインク圧力条件を維持するように、ダイヤフラムポンプ(4)を動作させる駆動手段を具備してなるインク供給装置において、
ダイヤフラムポンプ(4)はインクジェットヘッド(8)の吐出面より高い位置に設置されており、ダイヤフラムポンプ(4)には、バルブ後の大気開放口がインクジェット(8)の吐出面と同等かそれ以下の高さになるようにエア抜きバルブ(5)が設けられていることを特徴とする、インク供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−109622(P2009−109622A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280100(P2007−280100)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】