説明

インク印刷による導電性層の形成

支持体を含む要素であって、導電率増強剤を含有する印刷溶液が導電性層に接触すると、該印刷溶液と接触させられた領域の抵抗率が10分の1以下に減少するように、該支持体上に導電性ポリマーを含有する導電性高分子層が配置されている、要素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気装置又は半導体装置における電子回路素子として好適な有機ポリマー導電性層をパターニングする要素及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物、例えばインジウム錫酸化物(ITO)、アンチモンドープ型酸化錫、及び錫酸カドミウム(カドミウム錫酸化物)の透明導電性層(TCL)が、電気光学ディスプレイ装置、例えば液晶ディスプレイ装置(LCD)、エレクトロルミネッセントディスプレイ装置、フォトセル、ソリッドステート画像センサー又はエレクトロクロミックウィンドウの製造において共通に使用される。
【0003】
フラットパネルディスプレイのような装置は典型的には、透明電極としてインジウム錫酸化物(ITO)層を備えた基板を含有する。ITOの塗被は、真空スパッタリング法によって行われる。この真空スパッタリング法は、最大250℃の高い基板温度の条件を伴い、従ってガラス基板が一般に使用される。製作法のコストが高く、そして無機ITO層並びにガラス基板の脆弱性に起因してこのような電極の可撓性が低いことにより、潜在的な用途の範囲が限られる。結果として、有機材料だけから成る装置を形成することに対する関心が高まっている。このような装置は、可撓性基板としてプラスチック樹脂を含み、そして電極として有機導電性ポリマー層を含む。このようなプラスチック電子装置は、新しい特性を有する低廉なコストの装置を可能にする。(スパッタリングのようなバッチ法と比較して)連続的なホッパー塗布法又はローラー塗布法によって、フレキシブルなプラスチック基板に導電性ポリマー層を設けることができ、その結果得られる有機電極は、よりフレキシブルで、より低コストの、そしてより軽量の電子装置の「ロールツーロール」製作を可能にする。
【0004】
本来的に導電性のポリマーが、これらの導電性により、種々の業界から最近注目を集めている。これらのポリマーの多くは高い色調を有しており、TCL用途にあまり適してはいないものの、これらの本来的に導電性のポリマーのうちのいくつか、例えば置換型又は無置換型のピロール含有ポリマー(米国特許第5,665,498号及び同第5,674,654号の各明細書に述べられている)、置換型又は無置換型のチオフェン含有ポリマー(米国特許第5,300,575号、同第5,312,681号、同第5,354,613号、同第5,370,981号、同第5,372,924号、同第5,391,472号、同第5,403,467号、同第5,443,944号、同第5,575,898号、同第4,987,042号、及び同第4,731,408号の各明細書に述べられている)、置換型又は無置換型のアニリン含有ポリマー(米国特許第5,716,550号、同第5,093,439号、及び同第5,070,189号の各明細書に述べられている)は透明であり、そして少なくとも、中程度の被覆量で薄層として塗被されるときには、許容可能な範囲で着色される。これらのポリマーは、イオン伝導性に代わるその導電性のために、低湿度でも導電する。
【0005】
欧州特許出願公開第440 957号明細書には、ドーピング剤としてのポリアニオンの存在の下で酸化重合を行うことにより、水性混合物中のポリチオフェンを製造する方法が記載されている。欧州特許出願公開第686 662号明細書には、ポリチオフェンの塗被溶液中に、ジ-又はポリヒドロキシ及び/又は炭酸、アミド又はラクタム基を含有する化合物を添加することにより、水性塗被溶液から塗被された、ポリチオフェンの高導電性層を形成できることが開示されている。有機導電性ポリマーの塗被済層を、種々異なる方法を用いてパターニングして電極アレイを形成することができる。国際公開第97/18944号パンフレット及び同第5,976,274号パンフレットに記載された公知の湿式エッチングマイクロリソグラフィ技法の場合、有機導電性ポリマーの塗被済層の上側に、ポジ型又なネガ型のフォトレジストが取り付けられ、そしてフォトレジストをUV線に選択的に当て、フォトレジストを現像し、導電性ポリマー層をエッチングし、そして最後に、現像されていないフォトレジストを剥ぎ取る工程後に、パターニングされた層が得られる。米国特許第5,561,030号明細書においては、同様の方法を用いてパターンを形成するが、ただしこの場合、パターンが、まだ導電性ではないプレポリマー連続層として形成される点、そしてマスクを洗い流したあと、残ったプレポリマーが酸化により導電性にされる点において異なっている。コンベンショナルなリソグラフ技法に関与するこのような方法は、多くの工程を伴い、そして有害な化学物質の使用を必要とするので、厄介である。
【0006】
欧州特許出願公開第615 256号明細書に記載された、基板上に導電性ポリマーのパターンを生成する方法は、3,4-エチレンジオキシチオフェンモノマーと酸化剤とベースとを含有する組成物を塗被して乾燥させ;乾燥させた層を、マスクを通してUV線に当て;次いで加熱することを伴う。UVに当てられた塗膜領域は、非導電性ポリマーを含み、UVに当てられていない領域は導電性ポリマーを含む。この方法に基づく導電性ポリマーパターンの形成は、別個のフォトレジスト層の塗被及びパターニングを必要としない。
【0007】
米国特許第6,045,977号明細書には、フォトベースジェネレーターを含有する導電性ポリアニリン層をパターニングする方法が記載されている。このような層をUVに当てることにより、照射された領域内の導電性を低減するベースが生成される。
【0008】
欧州特許出願公開第1 054 414号明細書には、ClO-、BrO-、MnO4-、Cr2O7-2、S2O8-2、及びH2O2から成る群から選択された酸化体を含有する印刷溶液を使用して、導電性ポリマー層上に電極パターンを印刷することにより、前記導電性ポリマー層をパターニングする方法が記載されている。酸化体溶液に暴露された導電性層の領域は非導電性にさせられる。
【0009】
リサーチディスクロージャ(Research Disclosure), 1998年11月、第1473頁(開示番号41548)には、選択された領域がレーザー照射によって基板から除去されるフォトアブレーションを含む、導電性ポリマーにおける種々のパターン形成方法が記載されている。このようなフォトアブレーション法は、便利な乾式のワンステップ法であるが、しかし、破壊屑の発生が湿式の清浄化工程を必要とすることがあり、そしてレーザー装置の光学系及び機械系を汚染するおそれがある。電極パターンを形成するために導電性ポリマーの除去を伴う従来の方法はまた、パターニングされた表面の導電性領域と非導電性領域との間に光学濃度の差を誘発し、このことは回避されるべきである。
【0010】
レーザーによって像様加熱することにより有機導電性ポリマー層をパターニングする方法は、欧州特許出願公開第1 079 397号明細書に開示されている。その方法は、層をほとんどアブレート又は破壊することなしに、抵抗性を約10分の1〜1000分の1に減少させる。
【0011】
上に示したように、当業者は、多種多様の導電性TCL組成物を開示している。しかし、パターニングされた導電性TCL構造に対する重要な要求が、未だに当業者において存在している。優れた電極性能を提供するのに加えて、TCL層はまた、高度に透明でなければならず、パターニング可能でなければならず、湿度変化の影響に抵抗しなければならず、そして妥当なコストで製造可能でなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が向かう目標は、種々様々な商業的ニーズを従来技術よりも効果的に満たすように改善された、導電性のパターニング可能な、好ましくはウェブ塗被可能なTCL膜を提供することである。
【0013】
本発明の目的は、コンベンショナルなリソグラフ技術の利用、又はエッチング又はアブレーションによる導電性塗膜の領域の除去を必要としない導電性有機ポリマー層をパターニングする便利なワンステップ法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、基板上に配置された導電性ポリマーに電極パターンを生成する方法であって、該方法が:
基板上に、導電性ポリマーを含有する層を塗布し;そして
導電率増強剤を含有する印刷溶液を使用して、該印刷溶液と接触させられた領域の抵抗率が10分の1以下に減少するように、前記層上にパターンを印刷する、
工程を含む方法を提供することにより達成される。
【0015】
本発明はまた、支持体を含む要素であって、導電率増強剤を含有する印刷溶液が導電性層に接触すると、該印刷溶液と接触させられた領域の抵抗率が10分の1以下に減少するように、該支持体上に導電性ポリマーを含有する導電性高分子層が配置されている、要素を提供する。
【0016】
前記導電率増強剤が、ジヒドロキシ基もしくはポリ-ヒドロキシ基及び/又はカルボキシル基、又はアミド基、又はラクタム基を含有する有機化合物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による方法は、本来的に導電性のポリマーを含有する塗被組成物を基板上に塗被し、次いで乾燥させ、これに続いて、導電率増強剤を含有する印刷溶液を使用して、乾燥させられた層上に電極パターンを印刷することを伴う。
【0018】
本来的に導電性のポリマーは、周知の本来的に導電性のポリマー、例えば置換型又は無置換型のピロール含有ポリマー(米国特許第5,665,498号及び同第5,674,654号の各明細書に述べられている)、置換型又は無置換型のチオフェン含有ポリマー(米国特許第5,300,575号、同第5,312,681号、同第5,354,613号、同第5,370,981号、同第5,372,924号、同第5,391,472号、同第5,403,467号、同第5,443,944号、同第5,575,898号、同第4,987,042号、及び同第4,731,408号の各明細書に述べられている)、置換型又は無置換型のアニリン含有ポリマー(米国特許第5,716,550号、同第5,093,439号、及び同第5,070,189号の各明細書に述べられている)のうちのいずれか又は組み合わせから選択することができる。
【0019】
本発明の導電性層は、乾燥塗被重量約10〜約1000 mg/m2の、本来的に導電性のポリマーを含有するのがよい。好ましくは、導電性層は、乾燥塗被重量約20〜約500 mg/m2の、本来的に導電性のポリマーを含有するのがよい。塗布される導電性ポリマーの実際の乾燥塗被重量は、採用される具体的な導電性ポリマーの特性によって、また、具体的な用途に対する要件によって決定される。これらの要件は例えば、層の導電率、透明度、光学濃度、コストなどを含んでよい。
【0020】
好ましい実施態様の場合、本来的に導電性のポリマーを含有する層は、
a) 式Iに従うポリチオフェン
【0021】
【化1】

【0022】
(上記式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素又はC1-C4アルキル基を表し、或いは一緒になって、随意選択的に置換されているC1-C4アルキレン基又はシクロアルキレン基、好ましくはエチレン基、随意選択的にアルキル置換されているメチレン基、随意選択的にC1-C12アルキル-又はフェニル置換されている1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、又は1,2-シクロヘキシレン基を表し;そしてnは5〜1000である);
b) ポリアニオン化合物;及び随意選択的に、
c) 塗膜形成高分子バインダー
を含有する混合物を塗布することによって調製される。
【0023】
本来的に導電性のポリマーは、有機溶剤もしくは水又はこれらの混合物中に可溶性又は分散可能となることができる。環境上の理由から、水性系が好ましい。これらの本来的に導電性のポリマーと一緒に使用されるポリアニオンは、高分子カルボン酸、例えばポリアクリル酸、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、及び高分子スルホン酸、例えばポリスチレンスルホン酸及びポリビニルスルホン酸のアニオンを含み、高分子スルホン酸が本発明における使用にとって好ましい。これらのポリカルボン酸及びポリスルホン酸は、他の重合可能なモノマー、例えばアクリル酸とスチレンとのエステルと共重合されたビニルカルボン酸モノマー及びビニルスルホン酸モノマーから形成されたコポリマーであってもよい。ポリアニオンを提供するポリ酸の分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000であり、より好ましくは2,000〜500,000である。ポリ酸及びこれらのアルカリ塩は、例えばポリスチレンスルホン酸及びポリアクリル酸として一般に入手可能であり、或いは周知の方法を用いて製造することもできる。導電性ポリマー及びポリアニオンを形成するために必要となる遊離酸の代わりに、ポリ酸のアルカリ塩基と適量のモノ酸との混合物を使用することもできる。
【0024】
塗膜形成高分子バインダーを添加することなしに、本来的に導電性のポリマーを塗布することもできるが、層の物理特性を改善し、そして/又は印刷溶液の吸収を改善するために、塗膜形成高分子バインダーを採用することが好ましい。このような好ましい実施態様の場合、層は、約5〜95 %の塗膜形成高分子バインダーを含んでよい。塗膜形成高分子バインダーの最適な重量パーセントは、本来的に導電性のポリマーの電気的特性、高分子バインダーの化学組成、及び具体的な回路用途に対する要件に応じて変化する。
【0025】
本発明の導電性層において有用な高分子塗膜形成バインダーの一例としては、水溶性又は水分散性の、親水性ポリマー、ゼラチン、ゼラチン誘導体、マレイン酸又は無水マレイン酸コポリマー、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ジアセチルセルロース、及びトリアセチルセルロース)、ポリビニルアルコール、及びポリ-N-ビニルピロリドンが挙げられる。他の好適なバインダーは、エチレン系不飽和型モノマー、例えばアクリル酸を含むアクリレート、メタクリル酸を含むメタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミド、イタコン酸ならびにその半エステル及びジエステル、置換型スチレンを含むスチレン、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン、及びオレフィンから調製された付加型のホモポリマー及びコポリマーの水性エマルジョン、及びポリウレタン又はポリエステルイオノマーの水性分散体を含む。
【0026】
本発明のために水性印刷溶液を採用する場合、親水性塗膜形成高分子バインダー、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、セルロース誘導体、又はポリビニルアルコールを利用することが有利である。
【0027】
本来的に導電性のポリマーを含有する層に含むことができるその他の成分の一例としては、粘着防止剤、界面活性剤又は塗被助剤、増粘剤、粘度調整剤、硬膜剤又は架橋剤、顔料又は色素、滑剤、及び当業者には容易に明らかな種々のその他のコンベンショナルな塗被用添加剤が挙げられる。
【0028】
電極パターンの印刷は、オフセット印刷、スクリーン印刷又はインクジェット印刷によって行うことができる。インクジェット印刷を用いることは、スクリーン又はリソプレートが必要でないという利点を有する。インクジェットプリンターは、広範囲に利用可能であり(幅広フォーマットインクジェットプリンターを含む)、電極のレイアウトを設計することができ、コンピュータからプリンターに直接的に出力することができる。
【0029】
本発明において電極パターンを形成するために使用される印刷溶液は、水性溶剤又は有機溶剤中に導電率増強剤を含有する。環境上の理由から、水性印刷溶液が最も望ましい。
【0030】
特に好ましい導電率増強剤は:糖及び糖誘導体、例えばスクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース;糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール;フラン誘導体、例えば2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸;アルコール、例えばエチレングリコール、グリセロール、ジ-又はトリエチレングリコールである。
【0031】
ジヒドロキシ基、ポリ-ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、又はラクタム基を含有する有機化合物が:
(a)下記式II:
(OH)n−R−(COX)m
II
(上記式中、m及びnは独立して1〜20の整数であり、Rは炭素原子数2〜20のアルキレン基、当該アリーレン鎖内炭素原子数6〜14のアリーレン基、ピラン基又はフラン基であり、そしてXは、-OH又は-NYZであり、Y及びZは独立して水素又はアルキル基である)によって表されるか;又は
(b)糖、糖誘導体、ポリアルキレングリコール、又はグリセロール化合物であるか;又は
(c)N-メチルピロリドン、ピロリドン、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、又はN-オクチルピロリドンから成る群から選択される。
【0032】
印刷溶液中の導電率増強剤の濃度は、使用される具体的な有機化合物、及び電極パターンに対する導電性要件に応じて大幅に変化することができる。しかし、本発明の実施において効果的に採用することができる好都合な濃度は、約0.5〜約25重量%;より好都合には0.5〜10重量%;及びより望ましくは0.5〜5重量%である。
【0033】
電極パターンを印刷した後、層を室温〜約250℃の温度で乾燥させることができる。
【0034】
印刷及び乾燥の後、印刷溶液と接触させられた領域の抵抗率は、10分の1以下、好ましくは100分の1以下、最も好ましくは1000分の1以下に減少する。
【0035】
印刷溶液中で使用することができる、導電率増強剤に添加されるその他の成分は:界面活性剤及び湿潤助剤、レオロジー改質剤、安定剤、殺生剤、保湿剤及び乾燥防止剤などを含む。印刷された電極パターンの視覚的な記録を提供することが望ましい場合、印刷溶液中に色素及び顔料を使用することができる。
【0036】
本来的に導電性のポリマーを含有する層は、意図する用途に応じて種々異なる基板上に塗布することができる。好適な基板は、ガラス、高分子フィルム、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリオレフィン、及びその他のよく知られたポリマーフィルム、紙、シリコンウェハー、ガラス強化型エポキシなどを含む。基板は、透明、不透明、又は反射性であってよい。導電性層は、任意の好適な塗布法、例えばスピン塗布、ホッパー塗布、ローラー塗布、又はエアナイフ塗布を用いて塗布することができる。
【実施例】
【0037】
下記非限定的な例によって、本発明をさらに説明する。
【0038】
本来的に導電性のポリマーを含有する層の調製(試料A):
商業的に利用可能な導電性ポリマー分散体{Bayer Corporationから入手可能な、ポリスチレンスルホネートポリアニオンを有するポリ(エチレンジオキシチオフェン)であるBaytron P}、ゼラチン及びゼラチン硬化剤(ジヒドロキシジオキサン)を含有する水性塗被用組成物を、100 μm厚ポリエステル基板上に塗布し、そして100℃で乾燥させた。乾燥済塗膜は、150 mg/m2のBaytron P、37.5 mg/m2のゼラチン、及び1.2 mg/m2のジヒドロキシジオキサンを含有し、そして2点プローブで測定して、1 × 106Ωに等しい表面抵抗率を有した。
【0039】
例1(インクジェット印刷)
試料Aにおいて上述した層上に、3.75重量%のジエチレングリコール、1.25重量%のグリセロール、及び0.01%の非イオン性界面活性剤を含有する水性印刷溶液を、Hewlett-Packard DeskJet 692Cインクジェットプリンターを使用して、10 cc/m2に等しい湿潤塗膜被覆量で塗被した。この印刷溶液は1インチ平方の面積上に塗布し、次いで試料を室温で乾燥させた。乾燥後の処理済領域の表面抵抗率は920Ωであった。これは抵抗率が1000分の1未満に減少したことを示す。
【0040】
例2(リソプレート印刷)
1インチ平方の「インク受理」領域を有するリソプレートを調製し、これを用いて、5重量%のジエチレングリコール及び0.03重量%の非イオン性界面活性剤を含有する水性印刷溶液を、試料Aにおいて調製された層上に転写した。塗布された印刷溶液の湿潤被覆量は、12.5 cc/m2と等価であった。印刷後、試料を室温で乾燥させた。乾燥後の処理済領域の表面抵抗率は1 × 103 Ωであった。これは抵抗率が1000分の1に減少したことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体を含む要素であって、導電率増強剤を含有する印刷溶液が導電性層に接触すると、該印刷溶液と接触させられた領域の抵抗率が10分の1以下に減少するように、該支持体上に導電性ポリマーを含有する導電性高分子層が配置されている、要素。
【請求項2】
該印刷溶液と接触させられた領域の抵抗率が、1000分の1以下に減少する、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
該印刷溶液と接触させられた領域の抵抗率が、100分の1以下に減少する、請求項1に記載の要素。
【請求項4】
該導電率増強剤が、ジヒドロキシ基、ポリ-ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、又はラクタム基を含有する有機化合物である、請求項1に記載の要素。
【請求項5】
ジヒドロキシ基、ポリ-ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基、又はラクタム基を含有する該有機化合物が:
(a)下記式II:
(OH)n−R−(COX)m
II
(上記式中、m及びnは独立して1〜20の整数であり、Rは炭素原子数2〜20のアルキレン基、アリーレン鎖内炭素原子数6〜14のアリーレン基、ピラン基又はフラン基であり、そしてXは、-OH又は-NYZであり、ここでY及びZは独立して水素又はアルキル基である)によって表されるか;又は
(b)糖、糖誘導体、ポリアルキレングリコール、又はグリセロール化合物であるか;又は
(c)N-メチルピロリドン、ピロリドン、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、又はN-オクチルピロリドンから成る群から選択される、
請求項4に記載の要素。
【請求項6】
前記導電率増強剤が、N-メチルピロリドン、ピロリドン、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N-オクチルピロリドン、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、糖アルコール、2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸、ソルビトール、グリコール、エチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、もしくはトリエチレングリコール、又はこれらの化合物のうちのいずれか2種又は3種以上の混合物である、請求項1に記載の要素。
【請求項7】
前記導電率増強剤が、N-メチルピロリドン、ピロリドン、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、又はN-オクチルピロリドンである、請求項1に記載の要素。
【請求項8】
前記導電率増強剤が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、又はグリセロールである、請求項1に記載の要素。
【請求項9】
前記中性電荷導電率増強剤が、エチレングリコール、グリコール又はグリセロールの混合物である、請求項1に記載の要素。
【請求項10】
前記導電率増強剤が、N-メチルピロリドン、ソルビトール、エチレングリコール、グリセロール、及びジエチレングリコールから成る群から選択された1種又は2種以上の化合物である、請求項1に記載の要素。
【請求項11】
n及びmが互いに独立して、2〜8の整数を表す、請求項5に記載の要素。
【請求項12】
ラクタム基を含有する該有機化合物が、N-メチルピロリドン、ピロリドン、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、又はN-オクチルピロリドンである、請求項4に記載の要素。
【請求項13】
該導電率増強剤が、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸、エチレングリコール、グリセロール、ジ-又はトリエチレングリコールである、請求項5に記載の要素。
【請求項14】
該印刷溶液中の導電率増強剤の濃度が、該印刷溶液の重量を基準として、0.5〜25.0 wt %である、請求項1に記載の要素。
【請求項15】
該印刷溶液中の導電率増強剤の濃度が、該印刷溶液の重量を基準として、0.5〜10.0 wt %である、請求項1に記載の要素。
【請求項16】
該印刷溶液中の導電率増強剤の濃度は、該印刷溶液の重量を基準として、0.5〜5.0 wt %である、請求項1に記載の要素。
【請求項17】
該導電性ポリマーが、置換型もしくは無置換型のピロール含有ポリマー、置換型もしくは無置換型のチオフェン含有ポリマー、又は置換型もしくは無置換型のアニリン含有ポリマーである、請求項1に記載の要素。
【請求項18】
該導電性ポリマーを含有する層が、乾燥塗被重量10〜1000 mg/m2の該導電性ポリマーを含有する、請求項1に記載の要素。
【請求項19】
該導電性ポリマーを含有する層が、乾燥塗被重量20〜500 mg/m2の該導電性ポリマーを含有する、請求項1に記載の要素。
【請求項20】
該導電性ポリマーを含有する該層が:
a) 式I
【化1】

に従うポリチオフェン
(上記式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素又はC1-C4アルキル基を表し、或いは一緒になって、随意選択的に置換されているC1-C4アルキレン基又はシクロアルキレン基、好ましくはエチレン基、随意選択的にアルキル置換されているメチレン基、随意選択的にC1-C12アルキル-又はフェニル置換されている1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、又は1,2-シクロヘキシレン基を表し、そしてnは5〜1000である);
b) ポリアニオン化合物;及び随意選択的に、
c) 塗膜形成高分子バインダー
を含有する混合物を含む、請求項1に記載の要素。
【請求項21】
該ポリアニオンが、高分子カルボン酸のアニオンである、請求項20に記載の要素。
【請求項22】
該ポリアニオンが、ポリアクリル酸、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、又は高分子スルホン酸である、請求項20に記載の要素。
【請求項23】
該ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸又はポリビニルスルホン酸である、請求項20に記載の要素。
【請求項24】
該塗膜形成高分子バインダーが、該導電性ポリマーを含有する該層の5〜95 wt%を含む、請求項20に記載の要素。
【請求項25】
該塗膜形成高分子バインダーが、水溶性又は水分散性の、親水性ポリマー、マレイン酸又は無水マレイン酸コポリマー、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、及びポリ-N-ビニルピロリドンから成る群から選択される、請求項20に記載の要素。
【請求項26】
該塗膜形成高分子バインダーがゼラチン又はゼラチン誘導体である、請求項20に記載の要素。
【請求項27】
該塗膜形成高分子バインダーが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、ジアセチルセルロース、又はトリアセチルセルロースである、請求項20に記載の要素。
【請求項28】
該塗膜形成高分子バインダーが、エチレン系不飽和型モノマーから調製された付加型のホモポリマー及びコポリマーの水性エマルジョンである、請求項20に記載の要素。
【請求項29】
該モノマーが、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、イタコン酸ならびにその半エステル及びジエステル、置換型及び無置換型のスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン、ならびにオレフィンから成る群から選択される、請求項28に記載の要素。
【請求項30】
該塗膜形成高分子バインダーが、ポリウレタン又はポリエステルイオノマーの水性分散体である、請求項30に記載の要素。
【請求項31】
電極パターンがオフセット印刷、スクリーン印刷又はインクジェット印刷によって形成される、請求項20に記載の要素。
【請求項32】
該導電性層が、スピン塗布、ホッパー塗布、ローラー塗布、又はエアナイフ塗布を用いて適用される、請求項1に記載の要素。
【請求項33】
該支持体が透明、不透明、又は反射性である、請求項1に記載の要素。
【請求項34】
該支持体が、ガラス、高分子フィルム、紙、シリコンウェハー又はガラス強化型エポキシである、請求項1に記載の要素。
【請求項35】
該高分子フィルム支持体が、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、セルロースエステル、又はポリオレフィンである、請求項34に記載の要素。
【請求項36】
導電性ポリマーを含む支持体上に電極パターンを生成する方法であって、該方法は:
該支持体に、導電性ポリマーを含有する層を塗布する工程;および
導電率増強剤を含有する印刷溶液を使用して、該印刷溶液と接触させられた領域の抵抗率が10分の1以下に減少するように、前記支持体上にパターンを印刷する工程、
を含んでなる。
【請求項37】
該印刷溶液と接触させられた領域の抵抗率が、1000分の1以下に減少する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
該印刷溶液と接触させられた領域の抵抗率が、100分の1以下に減少する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
該電極パターンがオフセット印刷、スクリーン印刷又はインクジェット印刷によって形成される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
該導電性層が、スピン塗布、ホッパー塗布、ローラー塗布、又はエアナイフ塗布を用いて適用される、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項20に記載の要素。

【公表番号】特表2007−503692(P2007−503692A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524708(P2006−524708)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/026586
【国際公開番号】WO2005/022665
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】