説明

インサートコアの位置決め機構

【課題】 円筒形のインサートコアに樹脂材料を被覆した成形品を成形する際に、インサートコアをキャビティ内で確実に所定の位置に位置決めするインサートコアの位置決め機構を提供する。
【解決手段】 ブッシュ部材11の円筒形のガイドブッシュ11a内に摺動可能に配したインサイドピンガイド12の先端部に正角錐台形の側面の傾斜面によるインサイドピン押圧部12bとこれを囲む位置にインサイドピン保持部12cとを有するピンガイド部12aを設け、該ピンガイド部12aにインサイドピン13の基端部を連繋させる。インサイドピン13の先端部をガイドブッシュ11aのガイド孔11cに遊挿する。ブッシュ部材11とインサイドピンガイド12との相対的な軸方向の移動で、インサイドピン13がガイド孔11cから突出し、ガイドブッシュ11aに遊嵌したインサートコア2を押圧し、その内径を基準で位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒状のインサートコアを合成樹脂で被覆して成形するに際して、該インサートコアを金型のキャビティ内で所定の位置に位置決めするインサートコアの位置決め機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図6に示す部品はトロイダルコイルのトロイダルコア1を示しているものであり、このトロイダルコア1は、磁性体からなる円筒形のインサートコア2を合成樹脂による被膜層3で被覆されて成形されている。なお、このトロイダルコア1には、該トロイダルコア1の内外にかけて軸方向にコイル4が巻回されて部品として完成する。
【0003】
前記トロイダルコア1の成形は、金型のキャビティ内にインサートコア2を配置させて樹脂材料を射出装置により該金型に射出することで被膜層3を形成する。このとき、インサートコア2が所定の位置に位置した状態にない場合には、被膜層3の厚さが一定とならないため、キャビティ内で所定の位置に位置するようにインサートコア2の位置決めを行う必要がある。
【0004】
従来のこの種の位置決め機構では、インサートコア2の外周面に位置決め部材を当接させることにより位置決めしていた。図5は従来の位置決め機構の概略を示しており、インサートコア2の軸と直交する矢標Pで示す方向に可動側の金型5aが固定側の金型5bに対して摺動することにより金型の開閉が行われる。これらの金型5a、5bには、インサートコア2が配されるキャビティ5c内に出没する位置決め用支持ピン6が設けられている。なお、図5においては固定側の金型5bの位置決め用支持ピン6は省略している。すなわち、インサートコア2をキャビティ5c内にセットした状態で、4本の前記位置決め用支持ピン6のそれぞれをキャビティ5c内に突出させると、これら位置決め用支持ピン6の先端がインサートコア2に当接し、インサートコア2がキャビティ5c内の所定の位置、例えば、キャビティ5c内の中央部に支持されて位置決めされる。この状態で樹脂材料をキャビティ5c内に射出すれば、インサートコア2が樹脂材料によって被覆されて、被膜層3が形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のインサートコアの位置決め機構では、インサートコアの外径を基準として位置決めしているため、次のような問題が生じるおそれがある。
【0006】
前記位置決め支持ピン6をインサートコア2の外周面に当接させて位置決めするため、インサートコア2がキャビティ内5cで位置ずれし易い。このため、位置ずれが生じた場合であっても樹脂材料によりインサートコア2が確実に被覆されるように、被膜層3が余裕を持った肉厚に形成されるようにして、成形不良の低減を図っている。また、前述したように、インサートコア2の軸直角方向に金型をスライドさせる必要があることから、構造が複雑となってしまうおそれがある。
【0007】
そこで、この発明は、円筒形のインサートコアのキャビティ内における位置を、該インサートコアの内径を基準として位置決めすることにより、インサートコアの位置ずれを抑制し、樹脂材料による被膜層を不必要に厚く成形する必要をなくしたインサートコアの位置決め機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るインサートコアの位置決め機構は、キャビティ内の所定の位置に円筒形のインサートコアを位置させ、前記キャビティ内に樹脂材料を射出して、インサートコアが樹脂材料で被覆された成形品を成形するに際して、前記インサートコアをキャビティ内の所定の位置に位置決めするインサートコアの位置決め機構において、キャビティ内に配したインサートコアの径方向に移動して押圧位置に位置付き、該インサートコアの内周面を押圧して該インサートコアを保持するのに適した本数の位置決め用インサイドピンと、前記位置決め用インサイドピンを前記押圧位置とインサートコアの内周面から離隔する離隔位置との間で移動させるインサイドピン移動手段とからなり、キャビティ内にインサートコアを配した状態で、前記インサイドピン移動手段で前記位置決め用インサイドピンを押圧位置まで移動させて、前記インサートコアの内周面を押圧することにより該インサートコアのキャビティ内における位置決めを行うことを特徴としている。
【0009】
キャビティ内にインサートコアを配置した状態で、前記インサイドピン移動手段を作動させると前記位置決め用インサイドピンがインサートコアの径方向に押圧位置まで移動する。このため、インサートコアは内周面が位置決め用インサイドピンで押圧された状態となり、インサートコアは所定の位置、例えばキャビティ内の中央位置に位置決めされる。このとき、位置決め用インサイドピンの本数を、インサートコアを当該所定位置に保持するのに十分なものとする。すなわち、少なくとも3本の位置決め用インサイドピンで、インサートコアの内周面の等間隔の位置を押圧するようにしてあれば、インサートコアは安定した状態で位置決めされる。
【0010】
また、請求項2の発明に係るインサートコアの位置決め機構は、前記インサイドピン移動手段は、前記インサートコアの内側を該インサートコアの軸方向に移動する移動部材と、前記移動部材の移動を位置決め用インサイドピンの移動へ変換する移動方向変換手段とからなることを特徴としている。
【0011】
前記移動部材のインサートコアの軸方向への移動を前記移動方向変換手段により変換して、前記位置決め用インサイドピンの押圧位置と離隔位置との間の移動を行うようにしたものである。すなわち、移動部材がインサートコアの軸方向に移動すると、前記移動方向変換手段を介して位置決め用インサイドピンがインサートコアの径方向に移動する。
【0012】
また、請求項3の発明に係るインサートコアの位置決め機構は、前記移動方向変換手段は、前記移動部材の一部に形成した正三角錐台形の傾斜面である側面からなり、前記位置決め用インサイドピンの基端部を接触させるインサイドピン押圧部と、前記位置決め用インサイドピンの基端部が前記インサイドピン押圧部に接触した状態に維持させるインサイドピン保持部と、前記位置決め用インサイドピンがインサートコアの軸方向に移動することを阻止するインサイドピンガイド手段とからなることを特徴としている。
【0013】
前記位置決め用インサイドピンは、前記インサイド保持部によってインサイドピン押圧部との接触状態が維持され、インサイドピンガイド手段によりインサートコアの軸方向への移動が阻止されている。このため、正三角錐台形の側面の傾斜面で形成されている前記インサイドピン押圧部に基端部が接触している位置決め用インサイドピンは、移動部材の移動によって前記傾斜面に対する接触位置が変更する。この接触位置の変更に応じて位置決め用インサイドピンはインサートコアの径方向に移動することになる。そして、径方向の外側に向かって移動することによりインサートコアの内周面に押圧される。
【0014】
また、請求項4の発明に係るインサートコアの位置決め機構は、前記インサイドピンガイド手段は、キャビティ内に位置して、前記インサートコアが遊嵌するブッシュ部材と、前記ブッシュ部材の周壁に形成したガイド孔とからなり、前記位置決め用インサイドピンの先端部を前記ガイド孔に遊挿すると共に、該先端部を該ガイド孔からブッシュ部材の外周部へ出没可能としたことを特徴としている。
【0015】
インサートコアをキャビティ内に配置する際には、前記ブッシュ部材に遊嵌させる。このブッシュ部材に形成したガイド孔には前記位置決め用インサイドピンが遊挿されている。このため、位置決め用インサイドピンはこのガイド孔内で、インサートコアの径方向に移動する。径方向の外側に向かって移動した場合には、位置決め用インサイドピンの先端がガイド孔の外側に突出して、インサートコアの内側面を押圧する。
【0016】
また、請求項5の発明に係るインサートコアの位置決め機構は、前記移動部材は、前記金型の開閉動作によりインサートコアをその軸方向に移動させることにより、インサートコアに対して相対的に移動することを特徴としている。
【0017】
前記移動部材の移動は、キャビティ内にインサートコアを配置した状態で、モータ等の駆動力を利用してインサートコアに対して移動させる機構を採用することができるが、この発明では金型の開閉動作を利用して移動するようにしたものである。金型の開閉動作は金型が移動することに行われるから、この金型の移動を利用して移動部材を金型内のインサートコアに対して相対的に移動させるようにしたものである。すなわち、インサートコアが移動部材に対して移動することになる。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るインサートコアの位置決め機構によれば、円筒形のインサートコアのキャビティ内における位置決めを、該インサートコアの内径を基準として行うから、安定して所定の位置を維持させることができる。しかも、金型の分割面は、従来のようにインサートコアの軸を含む面と平行とならず、軸直角の面となる。従来の場合のように、軸を含む面と平行な面である場合にはインサートコアの外径を基準として位置決めすることになり、位置決めするための支持ピンは少なくとも4本を必要とする。これに対して、この発明に係る位置決め機構では、インサートコアの内周面に位置決め用インサイドピンを押圧することができ、少なくとも3本の位置決め用インサイドピンでよい。しかも、金型をインサートコアの径方向に摺動させる構造とならず、簡単な構造で確実にインサートコアの位置決めを行うことができる。このため、インサートコアを被覆する樹脂材料による被覆層の厚さに余裕を持たせる必要がなく、成形品の歩留まりの向上を図ることができる。加えて、被覆層の肉厚が小さくなることにより、トロイダルコアとした場合に巻回されるコイルの総延長が短くなって、使用するコイルの量の軽減を図ることができる。
【0019】
また、請求項2の発明に係るインサートコアの位置決め機構によれば、円筒形のインサートコアの内側に配した移動部材の移動により位置決め用インサイドピンを移動させることができるから、構造を簡単にして確実に位置決め用インサイドピンを移動させることができる。
【0020】
また、請求項3の発明に係るインサートコアの位置決め機構によれば、移動部材の移動を、簡単な構造で位置決め用インサイドピンの移動に確実に変換することができる。
【0021】
また、請求項4の発明に係るインサートコアの位置決め機構によれば、位置決め用インサイドピンは、前記ブッシュ部材のガイド孔に遊挿されることによって、該ブッシュ部材に対して一定の位置に存している。このため、前記移動部材をこのブッシュ部材に対して移動させることにより、位置決め用インサイドピンは確実にインサートコアの径方向に移動することができる。
【0022】
また、請求項5の発明に係るインサートコアの位置決め機構によれば、金型の開閉動作に連動させて位置決め用インサイドピンを移動させるため、別途駆動源を必要とせず、構造を簡単にして、確実に動作させることができて、インサートコアを確実に所定の位置に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るインサートコアの位置決め機構を具体的に説明する。
【0024】
図1はこの発明に係るインサートコアの位置決め機構の要部の構造を示す概略の斜視図である。この位置決め機構は、主として、円筒形のガイドブッシュ11aを備えたインサイドピンガイド手段であるブッシュ部材11とこのブッシュ部材11の内部を軸方向に摺動自在なインサイドピン移動手段としてのインサイドピンガイド12、このインサイドピンガイド12により、前記ガイドブッシュ11aに対して該ブッシュ部材11の径方向に移動する位置決め用インサイドピン13とから構成されている。
【0025】
前記ブッシュ部材11は、円筒形のガイドブッシュ11aとこのガイドブッシュ11aの一端部に形成されたフランジ部11b、前記位置決め用インサイドピン13の先端部を遊挿させるガイド孔11cとを備えている。位置決め用インサイドピン13は、図4に示すように、平面形状がほぼ凸形状に形成されており、先端の小幅のピン部13aが前記ガイド孔11cに遊挿される。基端の大幅のフランジ部13bは、前記インサイドピンガイド12に連繋している。
【0026】
前記インサイドピンガイド12は長尺の棒状をしており、先端部にピンガイド部12aが形成されている。このピンガイド部12aは、中心部が正三角錐台形に形成され、この正三角錐台形の傾斜面で形成された側面がインサイドピン押圧部12bとされている。また、この正三角錐台形の側辺を臨んでインサイドピン保持部12cが形成されている。このインサイドピン保持部12cは、図1及び図4に示すように、インサイドピン保持部12cのそれぞれの、前記側辺に臨む部分の端面がほぼW形状に形成されており、このW形状の中央の山の稜線が前記正三角錐台形の側辺と平行な状態を維持して対峙している。また、このW形状の中央の山と側部の翼部とで形成される空間部に、前記位置決め用インサイドピン13のフランジ部13bが位置するようにしてあり、隣接したインサイドピン保持部12cのそれぞれの空間部にフランジ部13bが位置することによって、位置決め用インサイドピン13がこのインサイドピン保持部12cと前記インサイドピン押圧部12bとにより規制されている。なお、前記空間部に臨んだインサイドピン保持部12cのW形状の各面と、前記位置決め用インサイドピン13のフランジ部13bの周面は、前記正三角錐台形の側面と平行に形成されている。
【0027】
図2及び図3は、前記位置決め機構が金型の型締め装置に組み込まれた状態を示しており、図2が型開時を、図3が型締め時をそれぞれ示している。図2に示すように、前記ブッシュ部材11のガイドブッシュ11aは、下型21の下型キャビティ部22に位置させてあり、前記フランジ部11bが下型21の下面に形成された凹部23に収容されてブッシュ部材11が下型21と一体的とされている。
【0028】
前記インサイドピンガイド12は、先端部が前記ブッシュ部材11の内側に位置させてある。このインサイドピンガイド12は下型21が取り付けられるロアプレート25を貫通してバックアッププレート26に固定されている。このバックアッププレート26と前記ロアプレート25とは接離可能とされており、図示しないバネ等の復元力を、ロアプレート25がバックアッププレート26から離隔する方向に移動するよう付勢してある。
【0029】
前記インサイドピンガイド12のピンガイド部12aには、前記インサイドピン押圧部12bに前記位置決め用インサイドピン13の前記フランジ部13bの端面を接触させ、該フランジ部13bをインサイドピン保持部12cに連繋させてある。また、該位置決め用インサイドピン13のピン部13aの先端が前記ブッシュ部材のガイド孔11cに遊挿されている。このため、位置決め用インサイドピン13はブッシュ部材11により拘束されて、下型キャビティ部22内で一定位置に位置付けられている。
【0030】
図2の型締め時に示すように、アッパプレート31に取り付けられた上型32と前記下型21とが密着して、上型32の上型キャビティ部33と前記下型キャビティ部22とが協働して、成形品のためのキャビティ部が形成される。なお、前記インサイドピンガイド12の先端部は、型締め時に上型キャビティ部33内に位置するように、下型21から突出させてある。
【0031】
また、下型キャビティ部22の底面から下型キャビティ部22内に突出させて適宜本数の支持ピン35が配されていると共に、下型キャビティ部22内で金型の開閉方向と平行な方向に摺動自在な突き出しピン36が設けられている。
【0032】
以上により構成されたこの発明に係るインサートコアの位置決め機構の実施形態について、以下にその作用を説明する。なお、この実施形態では、図6に示すトロイダルコイルのトロイダルコア1を成形する場合について説明し、インサートコア2としては磁性を有する金属を用いる場合について説明する。
【0033】
図2に示すように、型開時にインサートコア2を下型キャビティ部22内に配置する。このとき、インサートコア2は下型キャビティ部22内に配されているブッシュ部材11に遊嵌させる。また、支持ピン35によりインサートコア2はキャビティ部22内で底面から浮いてた状態に支持される。この状態で、型締め動作が行われる。
【0034】
型締め動作は図示しない油圧シリンダ等による型締め機構の作動により行われて、前記バックアッププレート26を上型32の方向に押動させる。バックアッププレート26が押し上げられと、前記図示しないバネ等を介してロアプレート25が押し上げられて上昇することになる。このロアプレート25が上昇して前記アッパプレート31と密着すると、ロアプレート25が当該位置に停止する。この状態で、型締め機構の作動によりバックアッププレート26は前記バネの復元力に抗して、さらに押し上げられることになる。このバックアッププレート26には、前記インサイドピンガイド12が取り付けられているから、このインサイドピンガイド12がブッシュ部材11に対して摺動して上昇する。インサイドピンガイド12には先端部に正三角錐台形の側面で形成されたインサイドピン押圧部12bが形成され、このインサイドピン押圧部12bに位置決め用インサイドピン13のフランジ部13bの背面が当接している。また、フランジ部13bの前面は前記インサイドピン保持部12cにより規制されており、しかも、位置決め用インサイドピン13の先端部は前記ブッシュ部材11のガイドブッシュ11aに形成されたガイド孔11cに遊挿されている。このため、インサイドピンガイド12の上昇により位置決め用インサイドピン13は傾斜面で形成されたインサイドピン押圧部12bによりガイドブッシュ11aの径方向の外側に向かって移動して前進し、ピン部13bの先端がガイドブッシュ11aの前記ガイド孔11cから突出することになる。このガイドブッシュ11aにはインサートコア2が遊嵌されているから、ガイド孔11cから突出した位置決め用インサイドピン13のピン部13aの先端は、該インサートコア2の内周面を押圧することになる。しかも、該位置決め用インサイドピン13は前記インサイドピン押圧部12bにより拘束されているため、インサートコア2は確実に位置決め用インサイドピン13で押圧される。また、この位置決め用インサイドピン13は三方向でインサートコア2の内周面を押圧するから、インサートコア2は確実に所定の位置に位置決めされる。
【0035】
そして、前記バックアッププレート26がロアプレート25に当接した状態で前記位置決め用インサイドピン13が確実にインサートコア2を位置決めした状態となる。この状態で、インサートコア2の周囲にはキャビティ部の壁面との間で間隙が形成された状態となり、図示しない射出装置によって樹脂材料をキャビティ部に射出することにより、該樹脂材料が前記間隙に充填され、インサートコア2を被覆する被膜層3が形成される。
【0036】
そして、樹脂材料の硬化後に型締め装置を作動させて前記バックアッププレート26を下降させると、前記インサイドピンガイド12の下降に伴い、前記位置決め用インサイドピン13がインサイドピン保持部12cに押動されて、ガイドブッシュ11aの径方向の内側に後退する。これにより、インサートコア2の拘束が解除される。また、バックアッププレート26の下降によりロアプレート25も下降して型開きが行われる。次いで、前記突き出しピン36を下型キャビティ部22内で上昇させれば成形品であるトロイダルコア1が取り出される。
【0037】
前記完成したトロイダルコア1の内周面には、図6に示すように、前記位置決め用インサイドピン13の先端部が押圧された部分にインサート支持穴2aが3箇所に形成される。また、底面には前記支持ピン35により支持された支持穴2bが、上面には前記上型キャビティ部33に突出してインサートコア2の上面に突き当てる図示しない支持ピンによる支持穴2cが形成される。なお、下型キャビティ部22では、インサートコア2が姿勢を保つように4本の支持ピン35で支持されるため、4つの支持穴2bが形成されるのに対して、上型キャビティ部33では、インサートコア2がキャビティ部内で不用意に上昇しないようにするものであるため2本の支持ピンで押さえられて、2つの支持穴2cが形成される。
【0038】
以上説明した実施形態では、トロイダルコイルのコアに用いる場合について説明したため、インサートコアとしては磁性を有する金属として説明したが、円筒形のインサートコアであれば、用途に応じて非磁性体を用いる場合その他金属をインサートコアする場合にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明に係るインサートコアの位置決め機構によれば、円筒形のインサートコアを確実にキャビティ内の所定の位置に位置決めできると共に、構造が簡単であり、金型の開閉動作に連動させて位置決め機構を駆動することが出来るので、射出成形機の省力化にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明に係るインサートコアの位置決め機構の要部の構造を説明する概略斜視図で、(a)は型開き時の状態を、(b)は型締め時の状態を、それぞれ示している。
【図2】この発明に係るインサートコアの位置決め機構を備えた金型を示す図で、型開時の状態を示している。
【図3】この発明に係るインサートコアの位置決め機構を備えた金型を示す図で、型締め時の状態を示している。
【図4】この発明に係るインサートコアの位置決め機構の要部の平面図である。
【図5】従来の位置決め機構を説明する図で、円筒形のインサートコアを、外径基準によって位置決めしている。
【図6】この発明に係る位置決め機構により位置決めされるのに適した成形品の一例を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図であり一部にコイルを巻回した状態を示しており、(c)は底面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 トロイダルコア
2 インサートコア
3 被膜層
4 コイル
11 ブッシュ部材
11a ガイドブッシュ
11c ガイド孔
12 インサイドピンガイド
12a ピンガイド部
12b インサイドピン押圧部
12c インサイドピン保持部
13 位置決め用インサイドピン
13a ピン部
13b フランジ部
21 下型
22 下型キャビティ部
25 ロアプレート
26 バックアッププレート
31 アッパプレート
32 上型
33 上型キャビティ部
35 支持ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ内の所定の位置に円筒形のインサートコアを位置させ、前記キャビティ内に樹脂材料を射出して、インサートコアが樹脂材料で被覆された成形品を成形するに際して、前記インサートコアをキャビティ内の所定の位置に位置決めするインサートコアの位置決め機構において、
キャビティ内に配したインサートコアの径方向に移動して押圧位置に位置付き、該インサートコアの内周面を押圧して該インサートコアを保持するのに適した本数の位置決め用インサイドピンと、
前記位置決め用インサイドピンを前記押圧位置とインサートコアの内周面から離隔する離隔位置との間で移動させるインサイドピン移動手段とからなり、
キャビティ内にインサートコアを配した状態で、前記インサイドピン移動手段で前記位置決め用インサイドピンを押圧位置まで移動させて、前記インサートコアの内周面を押圧することにより該インサートコアのキャビティ内における位置決めを行うことを特徴とするインサートコアの位置決め機構。
【請求項2】
前記インサイドピン移動手段は、
前記インサートコアの内側を該インサートコアの軸方向に移動する移動部材と、
前記移動部材の移動を位置決め用インサイドピンの移動へ変換する移動方向変換手段とからなることを特徴とする請求項1に記載のインサートコアの位置決め機構。
【請求項3】
前記移動方向変換手段は、
前記移動部材の一部に形成した正三角錐台形の傾斜面である側面からなり、前記位置決め用インサイドピンの基端部を接触させるインサイドピン押圧部と、
前記位置決め用インサイドピンの基端部が前記インサイドピン押圧部に接触した状態に維持させるインサイドピン保持部と、
前記位置決め用インサイドピンがインサートコアの軸方向に移動することを阻止するインサイドピンガイド手段とからなることを特徴とする請求項2に記載のインサートコアの位置決め機構。
【請求項4】
前記インサイドピンガイド手段は、
キャビティ内に位置して、前記インサートコアが遊嵌するブッシュ部材と、
前記ブッシュ部材の周壁に形成したガイド孔とからなり、
前記位置決め用インサイドピンの先端部を前記ガイド孔に遊挿すると共に、該先端部を該ガイド孔からブッシュ部材の外周部へ出没可能としたことを特徴とする請求項3に記載のインサートコアの位置決め機構。
【請求項5】
前記移動部材は、前記金型の開閉動作によりインサートコアをその軸方向に移動させることにより、インサートコアに対して相対的に移動することを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載のインサートコアの位置決め機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−90502(P2009−90502A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261653(P2007−261653)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000144740)株式会社山城精機製作所 (19)
【出願人】(597005587)株式会社エス・エッチ・ティ (26)
【Fターム(参考)】