説明

インサート成形方法、および射出成形機

【課題】簡単な構成で、寸法精度が良好な製品を成形することができるインサート成形方法と、インサート成形に使用する射出成形機とを提供する。
【解決手段】射出成形機は、インサート部品Wがセットされる金型1と、型閉じされた金型1のキャビティ3内に成形材料を射出充填する射出装置2とを備えてなるものであって、インサート部品Wがセットされてから成形材料pを射出充填するまでの間に金型1をインサート部品Wとともに所定温度に加熱する加熱手段4と、成形材料pが射出充填されてからインサート成形された成形品Pを取り出すまでの間に、金型1を所定温度に冷却する冷却手段5とが設けられている。金型1は、インサート部品Wがセットされこのインサート部品Wとともに加熱される入子型10と、この入子型10を保持する母型11とにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形方法、および射出成形機に関し、特に、インサート部品を金型にセットし、型閉じしてキャビティ内に成形材料を射出充填するインサート成形方法、および、インサート部品がセットされる金型と、型閉じされた金型のキャビティ内に成形材料を射出充填する射出装置とを備えてなる射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形においては、例えば図9に参照されるように、コイル構成部品などのインサート部品を金型にセットし、図14、図15に参照されるように金型を閉じてキャビティ内に成形材料を射出充填して、図19に参照されるようなコイルなどの製品をインサート成形により製造することが一般に行われている。
【0003】
このようなインサート成形に関する従来の技術としては、たとえば特許文献1が知られている。特許文献1では、インサート部品を加熱し、ロボットなどの移送手段により成形手段である金型に移送してセットしたうえで射出成形を行うことが開示されている。インサート部品を加熱する理由の一つは、インサート部品と金型の温度差が大きいと、熱膨張により精度よくインサート部品を金型に配置できないからであると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−180797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インサート成形においては、良好な寸法精度を得るために、インサート部品を高精度で金型にセットしなければならない場合がある。その場合ロボットを用いてインサート部品を金型にセットすることは困難であるため、作業員が手作業でインサート部品を金型にセットする必要が生じる。しかしながら、特許文献1に記載されているようにインサート部品を加熱する場合、加熱されたインサート部品を作業員が触ることができないことから、作業員が手作業でインサート部品を金型にセットすることは難しい。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、寸法精度が良好な製品を成形することができるインサート成形方法と、インサート成形に使用する射出成形機とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のインサート成形方法に係る発明は、上記目的を達成するため、インサート部品を金型にセットし、型閉じしてキャビティ内に成形材料を射出充填するインサート成形方法であって、インサート部品がセットされてから成形材料を射出充填するまでの間に金型をインサート部品とともに所定温度に加熱することを特徴とするものである。
請求項2のインサート成形方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明において、前記金型を、インサート部品がセットされ該インサート部品とともに加熱される入子型と、該入子型を保持する母型とにより構成しておくことを特徴とするものである。
請求項3のインサート成形方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項2に記載の発明において、前記金型として、複数の入子型を用意するとともに、各入子型を共通で保持する少なくとも一つの母型を用意することを特徴とするものである。
請求項4のインサート成形方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、成形材料が射出充填されてからインサート成形された成形品を取り出すまでの間に、金型を所定温度に冷却することを特徴とするものである。
請求項5のインサート成形方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項4に記載の発明において、前記加熱と冷却を熱交換により行うことを特徴とするものである。
また、請求項6の射出成形機に係る発明は、上記目的を達成するため、インサート部品がセットされる金型と、型閉じされた金型のキャビティ内に成形材料を射出充填する射出装置とを備えてなる射出成形機であって、インサート部品がセットされてから成形材料を射出充填するまでの間に金型をインサート部品とともに所定温度に加熱する加熱手段を設けたことを特徴とするものである。
請求項7の射出成形機に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項6に記載の発明において、前記金型は、インサート部品がセットされ該インサート部品とともに加熱される入子型と、該入子型を保持する母型とにより構成されていることを特徴とするものである。
請求項8の射出成形機に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項7に記載の発明において、前記金型は、複数の前記入子型と、各入子型を共通で保持する少なくとも一つの前記母型とにより構成されていることを特徴とするものである。
請求項9の射出成形機に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項6〜8のいずれか1項に記載の発明において、成形材料が射出充填されてからインサート成形された成形品を取り出すまでの間に、金型を所定温度に冷却する冷却手段を備えていることを特徴とするものである。
請求項10の射出成形機に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項9に記載の発明において、前記加熱手段と冷却手段との間で熱交換を行うヒートパイプが設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、インサート部品がセットされてから成形材料を射出充填するまでの間に金型をインサート部品とともに所定温度に加熱するという簡単な構成により、インサート部品と金型とを容易に且つ正確に温度制御して、寸法精度が良好な製品を成形することが可能なインサート成形方法を提供することができる。
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記金型を、インサート部品がセットされ該インサート部品とともに加熱される入子型と、該入子型を保持する母型とにより構成しておくことにより、インサート成形前にインサート部品と金型を所定温度に加熱するために必要な熱量を低減させて温度制御を効率よく行うことができ、また、インサート部品を高精度で金型にセットしなければならない場合であっても、作業員の手作業によってインサート部品を容易に且つ確実に金型にセットすることが可能なインサート成形方法を提供することできる。
請求項3の発明によれば、請求項2に記載の発明において、前記金型として、複数の入子型を用意するとともに、各入子型を共通で保持する少なくとも一つの母型を用意することにより、入子型にインサート部品をセットする工程と、インサート部品がセットされた状態の入子型を加熱する工程と、入子型を母型により保持してキャビティ内に成形材料を射出充填する工程とを並行して行うことができる。それゆえ、射出成形機の稼働率を高くすることができる。
請求項4の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、成形材料が射出充填されてからインサート成形された成形品を取り出すまでの間に、金型を所定温度に冷却することにより、金型の温度を次にセットするインサート部品の温度に近づけることができるため、金型と次にセットするインサート部品の温度差による寸法誤差が少なく、寸法精度が良好な製品を成形することが可能であり、さらには、インサート部品を高精度で金型にセットしなければならない場合であっても、作業員の手作業によってインサート部品を容易に且つ確実に金型にセットすることが可能である。
請求項5の発明によれば、請求項4に記載の発明において、前記加熱と冷却を熱交換により行うことにより、効率が良好なインサート成形方法を提供することができる。
また、請求項6の発明によれば、インサート部品がセットされてから成形材料を射出充填するまでの間に金型をインサート部品とともに所定温度に加熱する加熱手段を設けたという簡単な構成により、インサート部品と金型とを容易に且つ正確に温度制御して、寸法精度が良好な製品を成形することが可能な射出成形機を提供することができる。
請求項7の発明によれば、請求項6に記載の発明において、前記金型を、インサート部品がセットされ該インサート部品とともに加熱される入子型と、該入子型を保持する母型とにより構成することにより、インサート部品を高精度で金型にセットしなければならない場合であっても、作業員の手作業によってインサート部品を容易に且つ確実に金型にセットすることが可能な射出成形機を提供することができる。
請求項8発明によれば、請求項7に記載の発明において、前記金型を、複数の前記入子型と、各入子型を共通で保持する少なくとも一つの前記母型とにより構成することにより、入子型へのインサート部品のセットと、インサート部品がセットされた状態の入子型の加熱と、入子型を母型により保持してキャビティ内への成形材料の射出充填とを並行して行うことができ、したがって、成形サイクルにかかる時間を短縮して効率よくインサート成形を行うことが可能な射出成形機を提供することができる。
請求項9の発明によれば、請求項6〜8のいずれか1項に記載の発明において、成形材料が射出充填されてからインサート成形された成形品を取り出すまでの間に、金型を所定温度に冷却する冷却手段を備えていることにより、金型の温度をインサート部品の温度に近づけることができ、したがって、金型とインサート部品の温度差による寸法誤差が少なく、寸法精度が良好な製品を成形することが可能であり、さらには、インサート部品を高精度で金型にセットしなければならない場合であっても、作業員の手作業によってインサート部品を容易に且つ確実に金型にセットすることが可能である。
請求項10の発明によれば、請求項9に記載の発明において、前記加熱手段と冷却手段との間で熱交換を行うヒートパイプが設けられていることにより、インサート成形を効率よく行うことが可能な射出成形機を提供することができる。
【0009】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に相当し、(3)項が請求項3に相当し、(4)項が請求項4に相当し、(5)項が請求項5に相当し、(9)項が請求項6に相当し、(10)項が請求項7に相当し、(11)項が請求項8に相当し、(12)項が請求項9に相当し、(13)項が請求項10に相当する。
【0010】
(1) インサート部品を金型にセットし、型閉じしてキャビティ内に成形材料を射出充填するインサート成形方法であって、
インサート部品がセットされてから成形材料を射出充填するまでの間に金型をインサート部品とともに所定温度に加熱することを特徴とするインサート成形方法。
【0011】
(1)項に記載の発明では、インサート部品がセットされた金型を室温から所定温度に加熱することにより、インサート部品と金型とを容易に且つ正確に温度制御することができることから、温度差による寸法誤差を少なくすることができ、且つ必要な成形材料の流動を確実に得ることができる。それによって寸法精度が良好な製品を成形することができる。また、インサート部品を高精度で金型にセットしなければならない場合であっても、作業員の手作業によってインサート部品を容易に且つ確実に金型にセットすることができる。
【0012】
(2) 前記金型を、インサート部品がセットされ該インサート部品とともに加熱される入子型と、該入子型を保持する母型とにより構成しておくことを特徴とする(1)項に記載のインサート成形方法。
【0013】
(2)項に記載の発明では、(1)項に記載の発明において、金型を、インサート部品がセットされ該インサート部品とともに加熱される入子型と、該入子型を保持する母型とにより構成しておくことにより、インサート成形前にインサート部品がセットされた金型を室温から所定温度に加熱するために必要な熱量を低減させて温度制御を効率よく行うことができる。
【0014】
(3) 前記金型として、複数の入子型を用意するとともに、各入子型を共通で保持する少なくとも一つの母型を用意することを特徴とする(2)項に記載のインサート成形方法。
【0015】
(3)項に記載の発明では、(2)項に記載の発明において、前記金型として、複数の入子型を用意するとともに、各入子型を共通で保持する少なくとも一つの母型を用意することにより、室温の入子型にインサート部品をセットする工程と、インサート部品がセットされた状態の入子型を所定温度に加熱する工程と、入子型を母型により保持してキャビティ内に成形材料を射出充填する工程とを並行して行うことができ、したがって、成形サイクルにかかる時間を短縮して効率よくインサート成形を行うことができる。
【0016】
(4) 成形材料が射出充填されてからインサート成形された成形品を取り出すまでの間に、金型を所定温度に冷却することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のインサート成形方法。
【0017】
(4)項に記載の発明では、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の発明において、成形材料が射出充填されてからインサート成形された成形品を取り出すまでの間に、金型を所定温度に冷却することにより、製品を手作業で金型から取り出すことができる。
【0018】
(5) 前記加熱と冷却を熱交換により行うことを特徴とする(4)項に記載のインサート成形方法。
【0019】
(5)項に記載の発明では、(4)項に記載の発明において、インサート部品がセットされた金型の加熱と、成形材料が射出充填された金型の冷却とを、熱交換により行うことで、冷却時に放出すべき熱量を次の製品の加熱に再利用でき、エネルギ消費を抑制することができる。
【0020】
(6) 前記インサート部品がセットされた金型を複数設けられたバッチ炉で順次加熱することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のインサート成形方法。
【0021】
(6)項に記載の発明では、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の発明において、インサート部品がセットされた金型を複数設けられたバッチ炉で順次加熱することにより、金型をインサート部品とともに室温から所定温度に段階的に確実に昇温させることができる。
【0022】
(7) 前記インサート部品がセットされた金型をトンネル炉内で移動させて連続して加熱することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のインサート成形方法。
【0023】
(7)項に記載の発明では、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の発明において、インサート部品がセットされた金型をトンネル炉内で移動させて連続して加熱することにより、金型をインサート部品とともに室温から所定温度に漸次確実に昇温させることができる。
【0024】
(8) 前記インサート部品がセットされた金型の加熱、または、前記インサート部品がセットされた金型の加熱と成形材料を射出充填後された金型の冷却を断熱囲い内で行うことを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載のインサート成形方法。
【0025】
(8)項に記載の発明では、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の発明において、インサート部品がセットされた金型の加熱、または、前記インサート部品がセットされた金型の加熱と成形材料を射出充填後された金型の冷却を断熱囲い内で行うことにより、インサート部品がセットされた金型の加熱、または、前記インサート部品がセットされた金型の加熱と成形材料を射出充填後された金型の冷却を効率よく行うことができる。
【0026】
(9) インサート部品がセットされる金型と、型閉じされた金型のキャビティ内に成形材料を射出充填する射出装置とを備えてなる射出成形機であって、
インサート部品がセットされてから成形材料を射出充填するまでの間に金型をインサート部品とともに所定温度に加熱する加熱手段を設けたことを特徴とする射出成形機。
【0027】
(9)項に記載の発明では、インサート部品を金型にセットし、この金型を加熱手段により室温から所定温度に加熱する。インサート部品が金型とともに室温から同時に同じ温度まで加熱されるため、容易に且つ正確に温度制御することができ、したがって、温度差による寸法誤差を少なくすることができるため、その後、射出装置によって金型のキャビティ内に成形材料を射出充填すると、寸法精度が良好な製品を成形することができる。
【0028】
(10) 前記金型は、インサート部品がセットされ該インサート部品とともに加熱される入子型と、該入子型を保持する母型とにより構成されていることを特徴とする(9)項に記載の射出成形機。
【0029】
(10)項に記載の発明では、(9)項に記載の発明において、金型を、インサート部品がセットされ該インサート部品とともに加熱される入子型と、該入子型を保持する母型とにより構成しておくことにより、母型から解放された状態の室温の入子型にインサート部品をセットし、その後、インサート部品がセットされた入子型を室温から所定温度に加熱する。入子型を加熱するため、金型全体を加熱する場合と比較して、室温から所定温度まで加熱するのに必要な熱量を低減させて温度制御を効率よく行うことができる。また、インサート部品をセットするときには、入子型を母型から解放した状態であり、入子型を室温の状態とすることができるため、インサート部品を高精度で金型にセットしなければならない場合であっても、作業員の手作業によってインサート部品を容易に且つ確実に金型にセットすることができる。
【0030】
(11) 前記金型は、複数の前記入子型と、各入子型を共通で保持する少なくとも一つの前記母型とにより構成されていることを特徴とする(10)項に記載の射出成形機。
【0031】
(11)項に記載の発明では、(10)項に記載の発明において、金型を、複数の入子型と、各入子型を共通で保持する少なくとも一つの母型とにより構成することにより、
室温の状態で入子型へのインサート部品のセットと、インサート部品がセットされた状態の入子型の室温からの加熱と、入子型を母型により保持してキャビティ内への成形材料の射出充填とを並行して行うことができ、したがって、成形サイクルにかかる時間を短縮して効率よくインサート成形を行うことが可能な射出成形機を提供することができる。
【0032】
(12) 成形材料が射出充填されてからインサート成形された成形品を取り出すまでの間に、金型を所定温度に冷却する冷却手段を備えていることを特徴とする(9)〜(11)のいずれか1項に記載の射出成形機。
【0033】
(12)項に記載の発明では、(9)〜(11)のいずれか1項に記載の発明において、キャビティ内に成形材料が射出充填された金型を冷却手段により所定温度に冷却する。短時間で金型の温度を次にセットするインサート部品の温度と同等の室温に低下させることができるため、金型と次にセットするインサート部品の温度差による寸法誤差が少なく、寸法精度が良好な製品を成形することができ、さらには、インサート部品を高精度で金型にセットしなければならない場合であっても、作業員の手作業によってインサート部品を容易に且つ確実に金型にセットすることができ、したがって、成形サイクルにかかる時間を短縮して効率よくインサート成形を行うことができる。
【0034】
(13) 前記加熱手段と冷却手段との間で熱交換を行うヒートパイプが設けられていることを特徴とする(12)項に記載の射出成形機。
【0035】
(13)項に記載の発明では、(12)項に記載の発明において、ヒートパイプが設けられていることにより、インサート部品がセットされた金型の加熱手段による加熱と、成形材料が射出充填された金型の冷却手段による冷却とを、熱交換により効率よく行うことができる。
【0036】
(14) 前記加熱手段は、前記インサート部品がセットされた金型を順次加熱するよう複数設けられていることを特徴とする(9)〜(13)のいずれか1項に記載の射出成形機。
【0037】
(14)項に記載の発明では、(9)〜(13)のいずれか1項に記載の発明において、複数の加熱手段によりインサート部品がセットされた金型を順次加熱する。金型とインサート部品を室温から所定温度に段階的に確実に昇温させることができる。
【0038】
(15) 前記加熱手段は、前記インサート部品がセットされた金型を移動させることにより連続して加熱するトンネル炉により構成されていることを特徴とする(9)〜(13)のいずれか1項に記載の射出成形機。
【0039】
(15)項に記載の発明では、(9)〜(13)のいずれか1項に記載の発明において、トンネル炉内を移動させることによりインサート部品がセットされた金型を連続して漸次加熱する。金型とインサート部品を室温から所定温度に確実に昇温させることができる。
【0040】
(16) 前記加熱手段、または、前記加熱手段と冷却手段を取り囲む断熱囲いを設けたことを特徴とする(9)〜(15)のいずれか1項に記載の射出成形機。
【0041】
(16)項に記載の発明では、(9)〜(15)のいずれか1項に記載の発明において、加熱手段、または、加熱手段と冷却手段を断熱囲いにより取り囲むことにより、インサート部品がセットされた金型の加熱、または、前記インサート部品がセットされた金型の加熱と成形材料を射出充填後された金型の冷却を断熱囲い内で行うため、インサート部品がセットされた金型の加熱、または、前記インサート部品がセットされた金型の加熱と成形材料を射出充填後された金型の冷却を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の射出成形機の実施の一形態を概念的に説明するために示した正面図である。
【図2】本発明の射出成形機の実施の一形態を概念的に説明するために示した平面図である。
【図3】母型の入子型保持機構を説明するために示した部分拡大断面図である。
【図4】図3の部分平面図である。
【図5】図4の部分正面図である。
【図6】本発明の射出成形機の変形例を概念的に説明するために示した平面図である。
【図7】本発明の射出成形機のさらに変形例を概念的に説明するために示した平面図である。
【図8】本発明の射出成形機の入子型の実施の一形態を示した断面図である。
【図9】図8に示した入子型にインサート部品をセットした状態を示した断面図である。
【図10】図9に示したインサート部品がセットされた入子型を加熱炉内に移動させて加熱する状態を説明するために示した断面図である。
【図11】図10に示した加熱された入子型を母型に移動させた保持する前の状態を説明するために示した断面図である。
【図12】図11に示した状態から入子型を母型に保持させた状態状態を説明するために示した断面図である。
【図13】図12に示した母型および入子型を上型と対向させるよう上型の下方に配置した状態を説明するために示した断面図である。
【図14】図13に示した状態から、母型および入子型と上型とを近接させて型閉じしキャビティを形成した状態を説明するために示した断面図である。
【図15】図14に示した状態から、金型のキャビティ内に成形材料を射出充填した状態を説明するために示した断面図である。
【図16】成形材料が固化して母型および入子型と上型とを離間させて型開きした状態を説明するために示した断面図である。
【図17】図16の状態から母型および入子型を上型の下方から移動させて、母型が入子型を解放した状態を説明するために示した断面図である。
【図18】図17の状態から入子型を冷却手段内に移動させて冷却する状態を説明するために示した断面図である。
【図19】インサート部品がインサート成形されて入子型から取り出した製品を説明するために示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
最初に、本発明のインサート成形に用いる射出成形機の実施の一形態を、主に図1〜図7に基づいて詳細に説明する。なお、図7と図8は、本発明による射出成形機の変形例をそれぞれ説明するために示した平面図である。図において、同様または相当する構成については同一の符号を付することとする。
本発明の射出成形機は、概略、インサート部品Wがセットされる金型1と、型閉じされた金型1のキャビティ3内に成形材料を射出充填する射出装置2とを備えてなるものであって、インサート部品Wがセットされてから成形材料pを射出充填するまでの間に金型1をインサート部品Wとともに所定温度に加熱する加熱手段4が設けられている。さらに、本発明の射出成形機の金型1は、インサート部品Wがセットされこのインサート部品Wとともに加熱される入子型10と、この入子型10を保持する母型11とにより構成されている。
【0044】
図1、図2に示すように、射出成形機の一端にはセットステージS1が配置されており、他端には射出装置2が配置されている。この実施の形態の場合、セットステージS1と射出装置2との間には、加熱ステージS4と冷却ステージS5が並列に配置されており、加熱ステージS4および冷却ステージS5と射出装置2との間には、成形ステージS3が配置されている。なお、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、たとえば、セットステージS1と、加熱ステージS4と、成形ステージS3および射出装置2と、冷却ステージS5とを順次環状に配置するなどとすることもできる。
【0045】
この実施の形態における金型1は、成形ステージS3の回転テーブル30(後述する)上に設けられた一対の母型11、および、この母型11に保持される複数の入子型10を備えてなる下型31と、成形ステージS3の上方に設けられた単一の上型32とにより構成される。以下の説明では、母型を下母型11と、入子型を下入子型10と称する。
【0046】
この実施の形態におけるセットステージS1は、下入子型10に対して作業員がインサート部品Wを手作業でセットするよう構成されている。図2に示した実施の形態の場合におけるセットステージS1は、各下入子型10を支持する搬送トレー12と、テーブル15上に敷設され搬送トレー12を移動可能に支持するレール13と、作業員Mが搬送トレー12の下入子型10にインサート部品Wをセットするときに自動で開き、このセットが終了して作業員MがセットステージS1内から外に退避すると自動で閉じる自動扉14とを備えている。図2に示すように、レール13は、作業員Mが下入子型10にインサート部品Wをセットする位置Q1と、下入子型10を加熱ステージS4に受け渡すための位置Q2と、冷却ステージS5から下入子型10を受け取る位置Q3とにわたって、搬送トレー12を循環移動させ得るよう、テーブル15上に配置されている。
【0047】
加熱ステージS4は、図1および図2に示した実施の形態の場合、複数の加熱手段4が配列されることにより構成されており、各加熱手段4は加熱プレート40を備えている。各加熱プレート40は、個々に所定の温度に制御することが可能となっており、例えば、セットステージS1でインサート部品Wがセットされた室温の下入子型10を、成形ステージS3に送るときに所定の温度(一例として140〜200°C)程度まで段階的に昇温させるように、それぞれ制御される。
【0048】
冷却ステージS5は、図1および図2に示した実施の形態の場合、複数の冷却手段5が配列されることにより構成されており、各冷却手段5は冷却プレート50を備えている。各冷却プレート50は、個々に所定の温度に制御することが可能となっており、例えば、成形ステージS3で所定の温度の成形材料(一例として、300〜340°C)pが射出充填され固化した下入子型10を、セットステージS1に送るときに室温程度まで段階的に冷却させるように、それぞれ制御される。
【0049】
この実施の形態においては、加熱手段4の各加熱プレート40と、この各加熱プレート40にそれぞれ隣接する冷却手段5の各冷却プレート50との間には、加熱プレート40と冷却プレート50の間で熱交換を行うヒートパイプ60が設けられている。さらに、この実施の形態においては、図1にのみ鎖線で示すように、加熱ステージS4と冷却ステージS5と搬送手段(後述する)7の周囲と上方を取り囲む断熱囲い61が設けられている。
【0050】
互いに隣接する各加熱プレート40ならびに冷却プレート50、および、回転テーブル30に最も近い加熱プレート40と冷却プレート50と回転テーブル30上の下入子型受け渡し位置(後述する)R1における下母型11との間で、それぞれ下入子型10を移送するための搬送手段7が、加熱ステージS4と冷却ステージS5との間に並列に設けられている。図2に示した実施の形態における搬送手段7は、各下入子型10をそれぞれ把持し解放するよう開閉する一対のフォークをそれぞれ備えている複数の把持手段70と、各把持手段70を移動可能に支持する把持手段摺動レール72と、把持手段摺動レール72を昇降移動させる昇降手段73とを備えている。このように構成された搬送手段7では、各把持手段70のフォークがそれぞれ開いた状態で昇降手段73により把持手段摺動レール72を下降させ、各把持手段70のフォークを閉じさせて下入子型10を把持し、昇降手段73により把持手段摺動レール72を上昇させて、把持手段摺動レール72に支持された各把持手段70を移動させるよう駆動して次の工程を行うための加熱プレート40、冷却プレート50、または回転テーブル30上の下入子型受け渡し位置R1の上方まで移動させ、再び昇降手段73により把持手段摺動レール72を下降させて、各把持手段70のフォークを開いて下入子型10を解放して、加熱プレート40、冷却プレート50、または回転テーブル30上の下入子型受け渡し位置R1の下母型11に下入子型10を載置する。
【0051】
成形ステージS3は、一対の下母型11、11が設けられた回転テーブル30を備えている。両下母型11、11は、回転テーブル30の回転中心に対して180度の位相で配設されている。回転テーブル30は、下母型11が下入子型受け渡し位置R1と上型32と協働して型閉じする成形位置R2とのいずれかに移動するように、その回転駆動を制御される。図3〜図5に示すように、下母型11は、下入子型10を保持するよう構成された保持機構33を備えており、また、回転テーブル30の下入子型受け渡し位置R1における下方には、下母型11の保持機構33による下入子型10の保持を解放させる解放機構34が設けられている。
【0052】
下母型11は、下入子型10の下面を支持するための支持部110aを備えてなる下母型本体110と、下入子型10の側面を挟持するための複数のブロック111とを備えている。下母型11の保持機構33は、下母型本体110に支持された下入子型10の側面に対して各ブロック111が挟持するよう常時付勢する付勢手段35とを備えている。
【0053】
この実施の形態における支持部110aは下母型本体110の略中心に形成されており、この実施の形態では4つの溝112が支持部110aから放射状に延びるように形成されている。そして、この実施の形態の場合、溝112と対応して4つのブロック111が用意されている。各ブロック111の下方には、溝112に対して摺動可能に係合する係合部111aが形成されている。下母型11の保持機構33の付勢手段35は、ブロック111の係合部111aの後端に設けられたプレート113と、基端部が下母型本体110に設けられ中間部がプレート113に挿通されたピン114と、プレート113とピン114の先端拡大部114aとの間に介装された圧縮ばね115とを備えている。圧縮ばね115の伸長作用によりプレート113が常時押圧されて、各ブロック111が下母型本体110の支持部111aに向かって集合するよう常時付勢されている。そのため、下母型11の支持部111aに支持された下入子型10の側面が、互いに対向するブロックの間で挟持され、位置決めされて保持される。なお、本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、たとえば、平面視でL字状のブロックを一対用意し、下入子型10の対角線上に位置する角部をこの一対のL字状ブロックにより挟持するよう構成するなど、他の構成も含まれる。
【0054】
ここで、図3の中心線から右方は、下母型11の保持機構33により下入子型10が保持された状態を示し、図3の中心線から左方は、解放機構34により下母型11から下入子型10が解放された状態を示したものである。解放機構34は、回転テーブル30の加熱ステージS4および冷却ステージS5の側に設定された下入子型受け渡し位置R1の下方に設けられた突出しピン340と、突出しピン340が突出されることにより圧縮ばね115の付勢に抗してブロック111が後退するようブロック111に形成されたテーパ穴341とを備えている。
【0055】
突出しピン340は、各ブロック111に形成されたテーパ穴341と対応してこの実施の形態では4つが配置されており、その基端部が共通の突出しプレート342に固定されている。突出しプレート342を駆動するための機構は、通常の射出成形機で用いられているエジェクタ機構などを採用することができる。各突出しピン340の先端部は、所定の角度を有するテーパ状に成形されている。回転テーブル30と下母型本体110には、突出しピン340を挿通させるための孔30b、110bが形成されている。各ブロック111のテーパ穴341は、図3の中心線から左方に示したように、突出しピン340が孔110b、30bを通って上方に突出されて突出しピン340のテーパ状の先端部が係合することにより、圧縮ばね115の付勢に抗してブロック111をそれぞれ後退させるように形成されている。
【0056】
回転テーブル30の中心軸に対して、下入子型受け渡し位置R1と180度反対側の位置には、成形位置R2が設定されている。成形位置R2における回転テーブル30の下面は、上型32の型締力に耐え得るよう支持されている。成形位置R2の周囲には、この実施の形態では3本のタイバー36が立設されており、タイバー36の上端には受圧盤37が設けられている。この実施の形態では、タイバー36のうちの一つが、回転テーブル30の中心軸の延長線上に配置されており、他の二つが回転テーブル30の外側縁の近くに配置されている。受圧盤37には型締シリンダ38が設けられており、型締シリンダ38のラムは、タイバー36の中間部に摺動可能に挿通された可動盤39の上面と接続されている。
【0057】
可動盤39の下面には上型32が取付けられている。下母型11と上型32との間には、型閉じしてキャビティ3内に成形材料pを射出充填するときの圧力に下入子型10が耐えられるように拘束するための耐圧機構116が設けられている。耐圧機構116は、下母型11の各ブロック111の背面に型締方向(図3では鉛直方向)に対して所定角度で傾斜するよう形成された下コッタ面111bと、図3の中心線から右方に鎖線で示すように、上型32の周囲に設けられて上型32を型閉じしたときにブロック111の下コッタ面111bと摺動するように接して下入子型10の側面を押圧させる上コッタ面32bとにより構成されている。
【0058】
射出装置2は、成形材料pを混錬しつつ加熱溶融する加熱筒20と、加熱筒20の先端に設けられたノズル21と、加熱筒20内で加熱溶融された成形材料pを所定量ノズル21から射出させる射出手段22と、ノズル21の先端を金型1のノズルタッチ部にノズルタッチさせ、また、ノズルタッチ部から離間させるように移動させる移動手段23とを備えている。なお、金型1のノズルタッチ部は、上型32と下型31とのパーティング面に形成することができ、また、図14、図15などに参照されるように、たとえば上型32に設けられたスプールブッシュ32cとすることもできる。
【0059】
図6に示した実施の形態における加熱ステージS4、冷却ステージS5は、それぞれ独立してバッチ処理する複数の加熱炉41、複数の冷却槽51により構成されている。各加熱炉41と冷却槽51は、それぞれ開閉可能なシャッタ41a、51aを有している。また、図6に示した実施の形態における搬送手段7は、加熱炉41の配列と冷却槽51の配列との間に配設されたレール74と、このレール74上を移動する把持手段75とを備えてなる。把持手段75は、昇降(鉛直方向に伸長・退縮)可能および回転可能な支柱に支持されており、開閉可能および水平方向に進退可能な一対のフォークを備えている。さらに、セットステージS1には、インサート部品Wがインサート成形された製品Pを下入子型10から取り出して射出成形機から払い出す製品払い出し機76が設けられている。この実施の形態における搬送手段7は、加熱炉41と冷却槽51と回転テーブル30上の下入子型受け渡し位置R1にある下母型11とに順次下入子型10を搬送させる。なお、この実施の形態では、搬送手段7は、インサート成形が完了した製品Pを有する下入子型10を回転テーブル30上の下入子型受け渡し位置R1にある下母型11から受け取ると、製品払い出し機76に搬送して製品Pを下入子型10から取り出させ、空になった下入子型10を冷却ステージS5の所定の冷却槽51に搬入させて、下入子型10を室温まで段階的に冷却させる。このように、温度が高い成形直後の状態の製品Pを取り出してから下入子型10のみを冷却ステージS5で冷却することにより、下入子型10を冷却するために要する時間を短縮することができる。
【0060】
図7に示した実施の形態における加熱ステージS4、冷却ステージS5は、それぞれ連続して加熱および冷却処理する所謂トンネル加熱炉42およびトンネル冷却槽52により構成されている。また、図6に示した実施の形態における搬送手段7は、トンネル加熱炉42およびトンネル冷却槽52にそれぞれ配設されたベルトコンベア77と、トンネル加熱炉42とトンネル冷却槽52の間に配設されたレール78、および、このレール78上を移動する把持手段79とにより構成されている。把持手段79は、支持支柱に回動可能に支持されたアームを有する所謂スカラーロボット79aと、アームに昇降移動可能に支持された開閉可能な一対のフォーク79bとを備えている。セットステージS1でインサート部品Wがセットされた下入子型10は、搬送手段7によりベルトコンベア77のトンネル加熱炉42入口近傍に載置され、トンネル加熱炉42内を所定の時間をかけて移動され、インサート部品Wとともに所定の温度に加熱される。一方、回転テーブル30上の成形位置R2でインサート成形された製品Pを有する下入子型10は、回転テーブル30の回転より下入子型受け渡し位置R1に移動されて、解放機構34によりブロック111が後退されて、解放されている。そして、この製品Pを有する下入子型10は、搬送手段7によりトンネル冷却槽52の入口近傍のベルトコンベア77上に移載されている。したがって、回転テーブル30上の下入子型受け渡し位置R1にある下母型11は、空きの状態となっている。この状態で、トンネル加熱炉42内を移動することにより加熱された下入子型10は、トンネル加熱炉42の出口で、搬送手段7のフォーク79bに把持されてスカラーロボット79aのアームの旋回により回転テーブル30上の下入子型受け渡し位置R1にある下母型11に移載される。また、製品Pを有する下入子型10は、トンネル冷却槽52内を移動することにより冷却されて、搬送手段7によってトンネル冷却槽52の出口近傍のベルトコンベア77上から製品払い出し機76に搬送されて、製品Pが下入子型10から取り出され、空になった下入子型10は、搬送手段7によってセットステージS1のセット位置Q1に移動される。
【0061】
なお、本発明の射出成形機は、上述したように構成された各種の加熱手段4、冷却手段5、搬送手段7を組み合わせてもよく、また、加熱手段4として上述したように室温から所定の温度に加熱することができるもの、冷却手段5としてインサート成形が完了した下入子型10を室温程度まで冷却することができるもの、下入子型10を所定の位置に搬送することができるものであれば、他の形式のものを採用することもできる。さらに、金型1は、下入子型10および下母型11からなる下型31と上型32により構成することなく、上入子型および上母型からなる上型と下型により構成することもでき、さらにまた、型開閉方向が水平方向の金型により構成することもできる。そして、本発明の射出成形機には、インサート部品Wをインサート成形された製品Pを有する金型1が比較的速く室温まで冷却される場合や、この金型を室温まで冷却するまでの時間に比較的余裕がある場合には、冷却手段5を設けないものも含まれる。
【0062】
次に、本発明のインサート成形方法の実施の一形態を、図1〜図7に示したように構成された射出成形機を用いる場合により、その作動とともに図8〜図19に基づいて説明する。
本発明のインサート成形方法は、概略、インサート部品Wを金型1にセットし、型閉じしてキャビティ3内に成形材料を射出充填するものであって、インサート部品Wがセットされてから成形材料pを射出充填するまでの間に金型1をインサート部品Wとともに所定温度に加熱する。さらに、本発明のインサート成形方法は、金型1を、インサート部品Wがセットされこのインサート部品Wとともに加熱される入子型10と、この入子型10を保持する母型11とにより構成しておく。
【0063】
図8に示すように、下入子型10は、例えばコイル構成部品などのインサート部品Wを収容し、且つ、このインサート部品Wをインサート成形してなる製品Pの形状に応じた形状のキャビティ3を形成するよう型彫されている。この下入子型10は、複数用意されている。このように構成された下入子型10は、セットステージS1のセット位置Q1の搬送トレー12上に載置されて、図9に示すように、この実施の形態の場合では作業員Mによりインサート部品Wがセットされる。このとき、下入子型10は、インサート部品Wと同じ、略室温の状態としておく。これにより、下入子型10とインサート部品Wは、熱膨張(温度による寸法の変化)も同じ状態となっている。その結果、作業員Mが手作業で、インサート部品Wを下入子型10に精度よく、セットすることができる。
【0064】
次いで、図10に示すように、このインサート部品Wがセットされた下入子型10が載置された搬送トレー12を加熱ステージS4への受け渡し位置Q2まで搬送し、搬送手段7によって下入子型10を加熱ステージS4に移送し、加熱手段4によりインサート部品Wがセットされた下入子型10を所定の温度まで加熱する。下入子型10とインサート部品Wは、加熱手段4によって同時に加熱されるため、同じ温度変化となる。これにより、下入子型10とインサート部品Wが略同じ熱膨張となり、その結果、両者10、Wの相対的な寸法精度も良好となる。
【0065】
加熱ステージS4で所定の温度(一例として140〜200°C)まで昇温された下入子型10とインサート部品Wは、搬送手段7によって図11に示すように、回転テーブル30上の下入子型受け渡し位置R1にある下母型本体11の支持部110a上に載置される。このとき、図3の中心線から左方に示したように、解放機構34の突出しピン340が上方に突出されており、図11に矢印で示すように、圧縮ばね115の付勢に抗して各ブロック111が互いに離れるように後退移動されている。その後、図3の中心線から右方に示したように、解放機構34の突出しピン340を下降させると、図12に矢印で示すように、下母型11の保持機構33の付勢手段35の圧縮ばね115によって各ブロック111が下入子型10の側面を挟持し、下入子型10は下母型本体110の支持部110a上で位置決め保持されることとなる。下母型11に下入子型10が保持されると、回転テーブル30が180度回転駆動されて、下母型11と下入子型10は、成形位置R2に移動し、図13に示すように、上型32の下方に位置することとなる。そして、型締シリンダ38を伸長駆動して、図14に示すように、上型32を下型31に衝合させてキャビティ3を形成する。このとき、ブロック111の背面の下コッタ面111bと上型32の上コッタ面32bとが接合して、下入子型10をブロック111が強力に拘束することとなる。
【0066】
この状態で、射出装置2の加熱筒20を前進させてそのノズル21を金型のノズルタッチ部にノズルタッチさせ、図15に示すように、所定温度(一例として300〜340°C)に加熱され混錬された成形材料pをキャビティ3内に所定量射出充填する。このとき、下入子型10は、成形材料pの射出充填による圧力を受けることとなるが、耐圧機構116により下入子型10の側面が拘束されているため、かかる圧力に耐えることができる。
【0067】
キャビティ3内に射出充填した成形材料pが固化すると、型締シリンダ38の退縮駆動により図16に示すように上型32を上昇させ、型開きする。そして、回転テーブル30を180度回転させて下入子型10を成形位置R2から下入子型受け渡し位置R1に移動させ、解放機構34の突出しピン340を突出させることにより(図3の中心線から左方を参照)、圧縮ばね115の付勢に抗して図17に示すようにブロック111を後退させ、下入子型10を解放する。
【0068】
その後、搬送手段7により下型入子10を回転テーブル30上の下入子型受け渡し位置R1から冷却ステージS5に移動させ、図18に示した実施の形態では成形された製品Pとともに下入子型10を略室温程度まで冷却する。そのため、作業員Mが手作業で下入子型10から図19に示すように製品Pを取り出すことが可能となる。本発明は、上述した実施の形態に限定されることはなく、図6に基づいて説明したように、製品Pを下入子型10から取り出し、下入子型10のみを冷却してもよい。また、金型1として、下入子型10および下母型11からなる下型31と上型32により構成することなく、上入子型および上母型からなる上型と下型により構成することもでき、さらにまた、型開閉方向が水平方向の金型により構成することもできる。さらに、本発明のインサート成形方法では、インサート部品Wをインサート成形された製品Pを有する金型1が比較的速く室温まで冷却される場合や、この金型を室温まで冷却するまでの時間に比較的余裕がある場合には、下入子型を冷却するための工程を省略することもできる。
【符号の説明】
【0069】
W:インサート部品、 p:成形材料、 P:製品、 S1:セットステージ、 S4:加熱ステージ、 S3:成形ステージ、 :S5:冷却ステージ、 1:金型、 2:射出装置、 3:キャビティ、 4:加熱手段 5:冷却手段、 7:搬送手段、 10:下入子型、 11:下母型、 31:下型、 32:上型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート部品を金型にセットし、型閉じしてキャビティ内に成形材料を射出充填するインサート成形方法であって、
インサート部品がセットされてから成形材料を射出充填するまでの間に金型をインサート部品とともに所定温度に加熱することを特徴とするインサート成形方法。
【請求項2】
前記金型を、インサート部品がセットされ該インサート部品とともに加熱される入子型と、該入子型を保持する母型とにより構成しておくことを特徴とする請求項1に記載のインサート成形方法。
【請求項3】
前記金型として、複数の入子型を用意するとともに、各入子型を共通で保持する少なくとも一つの母型を用意することを特徴とする請求項2に記載のインサート成形方法。
【請求項4】
成形材料が射出充填されてからインサート成形された成形品を取り出すまでの間に、金型を所定温度に冷却することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインサート成形方法。
【請求項5】
前記加熱と冷却を熱交換により行うことを特徴とする請求項4に記載のインサート成形方法。
【請求項6】
インサート部品がセットされる金型と、型閉じされた金型のキャビティ内に成形材料を射出充填する射出装置とを備えてなる射出成形機であって、
インサート部品がセットされてから成形材料を射出充填するまでの間に金型をインサート部品とともに所定温度に加熱する加熱手段を設けたことを特徴とする射出成形機。
【請求項7】
前記金型は、インサート部品がセットされ該インサート部品とともに加熱される入子型と、該入子型を保持する母型とにより構成されていることを特徴とする請求項6に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記金型は、複数の前記入子型と、各入子型を共通で保持する少なくとも一つの前記母型とにより構成されていることを特徴とする請求項7に記載の射出成形機。
【請求項9】
成形材料が射出充填されてからインサート成形された成形品を取り出すまでの間に、金型を所定温度に冷却する冷却手段を備えていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記加熱手段と冷却手段との間で熱交換を行うヒートパイプが設けられていることを特徴とする請求項9に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−82138(P2013−82138A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224063(P2011−224063)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】