説明

インジェクション管

【課題】圧縮機から逆流してきた冷媒によって生じる脈動を低減させることができ、脈動による振動および騒音を低減させることができて、振動による管の損傷を防止することができるインジェクション管を提供する。
【解決手段】減圧された冷媒を気液分離するレシーバにおいて気液分離された気体冷媒、または熱交換器によってガス化された気体冷媒を圧縮機3に供給するインジェクション管17であって、前記圧縮機3の側に位置する端部に、当該インジェクション管17の内径よりも大きな内径を有するマフラ19が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の冷媒回路を構成するインジェクション管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の冷媒回路を構成するインジェクション管としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−128994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたインジェクション管では、(ガス)インジェクション量が多くなると圧縮機から逆流してきた冷媒によって脈動が生じ、この脈動によって振動および騒音が発生して、振動が著しい場合にはインジェクション管が破損してしまう恐れがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、圧縮機から逆流してきた冷媒によって生じる脈動を低減させることができ、脈動による振動および騒音を低減させることができて、振動による管の損傷を防止することができるインジェクション管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係るインジェクション管は、減圧された冷媒を気液分離するレシーバにおいて気液分離された気体冷媒、または熱交換器によってガス化された気体冷媒を圧縮機に供給するインジェクション管であって、前記圧縮機の側に位置する端部に、当該インジェクション管の内径よりも大きな内径を有するマフラが設けられている。
【0007】
本発明に係るインジェクション管によれば、圧縮機から逆流してきた冷媒によって生じる脈動が、マフラによって低減(吸収)されることとなるので、脈動による振動および騒音を低減させることができて、振動による管の損傷を防止することができる。
【0008】
上記インジェクション管において、前記マフラが油分離機能を有し、前記マフラで分離された潤滑油が、油戻り管を介して前記圧縮機の油溜まりに戻されるように構成されているとさらに好適である。
【0009】
このようなインジェクション管によれば、マフラによって圧縮機から逆流してきた冷媒中の潤滑油が分離され、分離された潤滑油が油戻し管を介して圧縮機に戻されることとなるので、冷凍サイクル側に循環される潤滑油の油循環率(OCR:OC%)[全質量流量(冷媒流量+潤滑油流量)に対する潤滑油の質量流量の比]を低減させることができる。
【0010】
本発明に係る空気調和機は、脈動による振動および騒音を低減させることができて、振動による管の損傷を防止することができるインジェクション管を備えている。
【0011】
本発明に係る空気調和機によれば、圧縮機から逆流してきた冷媒によって生じる脈動が、インジェクション管に設けられたマフラによって低減(吸収)されることとなるので、インジェクション量が非常に多い場合でも低振動および低騒音を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るインジェクション管によれば、圧縮機から逆流してきた冷媒によって生じる脈動を低減させることができ、脈動による振動および騒音を低減させることができて、振動による管の損傷を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るインジェクション管を具備した空気調和機全体の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るインジェクション管が接続された空気調和機用圧縮機の側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るインジェクション管を具備した空気調和機を運転させて得られた実験結果を示すグラフである。
【図4】本発明に係るインジェクション管に設けられたマフラの内径と、空気調和機用圧縮機から逆流してきた冷媒によって生じる脈動の大きさとの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係るインジェクション管が接続された空気調和機用圧縮機の側面図である。
【図6】本発明に係るインジェクション管を具備した他の空気調和機全体の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るインジェクション管の第1実施形態について、図1から図4を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るインジェクション管を具備した空気調和機全体の概略構成図、図2は本実施形態に係るインジェクション管が接続された空気調和機用圧縮機の側面図、図3は本実施形態に係るインジェクション管を具備した空気調和機を運転させて得られた実験結果を示すグラフ、図4は本発明に係るインジェクション管に設けられたマフラの内径と、空気調和機用圧縮機から逆流してきた冷媒によって生じる脈動の大きさとの関係を示すグラフである。
【0015】
図1に示すように、空気調和機1は、冷媒を圧縮する空気調和機用圧縮機(例えば、スクロール圧縮機)3と、圧縮された冷媒の熱を放熱させるコンデンサ(放熱器)5と、放熱された冷媒の圧力を減圧させる第1膨張弁(高圧側減圧部)7と、減圧された冷媒を気液分離するレシーバ9と、液冷媒をさらに減圧する第2膨張弁(低圧側減圧部)11と、減圧された液冷媒に熱を吸収させるエバポレータ(吸熱器)13とを備えている。
また、レシーバ9と空気調和機用圧縮機(空調用圧縮機)3との間には、レシーバ9において気液分離された気体冷媒を空気調和機用圧縮機3に供給するインジェクション管17が配置されている。
【0016】
さて、図2に示すように、本実施形態に係るインジェクション管17には、その途中(本実施形態では空気調和機用圧縮機3に形成されたインジェクションポート(図示せず)に近い側の端部)に、マフラ19が取り付けられている。
マフラ19は、インジェクション管17の内径の、例えば、2倍の内径を有し、インジェクション管17の内径の、例えば、10倍の長さを有する直管状の部材であり、水平方向に沿って配置されている。
また、マフラ19は、そのガス出口からインジェクションポートまでの距離Lが2×T×aよりも小さくなり、かつ、周囲に配置された機器や配管との関係、およびインジェクション管17の取り回し等を考慮して、Lが最も短くなる位置に設置されている。ここで、Tは閉鎖時間(周波数の半分程度の時間(条件によって異なる)。例えば、空気調和機用圧縮機3の回転数が120Hzで、インジェクションポートが周波数の半分の時間閉じていると仮定した場合には、1/120/2(sec)となる。)であり、aは音速である。
【0017】
本実施形態に係るインジェクション管17によれば、空気調和機用圧縮機3から逆流してきた冷媒によって生じる脈動が、マフラ19によって低減(吸収)されることとなるので、脈動による振動および騒音を低減させることができて、振動による管の損傷を防止することができる。
また、本実施形態に係るインジェクション管17を具備した空気調和機1によれば、空気調和機用圧縮機3から逆流してきた冷媒によって生じる脈動が、インジェクション管17に設けられた(取り付けられた)マフラ19によって低減(吸収)されることとなるので、インジェクション量が非常に多い場合でも低振動および低騒音を実現することができる。
【0018】
図3は、本実施形態に係るインジェクション管17を具備した空気調和機1を運転させて得られた実験結果を示すグラフであり、横軸はインジェクション流量[比]、縦軸は脈動値[比]を示している。
図3に示すように、本実施形態に係るインジェクション管17を具備した空気調和機1では、本実施形態に係るインジェクション管17を具備を装備していない空気調和機よりも脈動が大幅に低減しており、本実施形態に係るインジェクション管17による上記作用効果を裏付けるものとして有効な実験結果である。
【0019】
なお、図4はマフラ19の内径と、空気調和機用圧縮機3から逆流してきた冷媒によって生じる脈動の大きさとの関係を示すグラフであって、横軸は配管径[比]、すなわち、マフラ19の内径がインジェクション管17の内径の何倍であるかを示し、縦軸は脈動値[比]を示している。
図4から、マフラ19の内径が大きくなるとそれに伴って脈動が小さくなっていくことが分かる。
【0020】
本発明に係るインジェクション管の第2実施形態について、図5を参照しながら説明する。図5は本実施形態に係るインジェクション管が接続された空気調和機用圧縮機の側面図である。
本実施形態に係るインジェクション管21は、マフラ19の代わりに、マフラ23を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0021】
図5に示すように、本実施形態に係るインジェクション管21には、その途中(本実施形態では空気調和機用圧縮機3に形成されたインジェクションポート(図示せず)に近い側の端部)に、油分離機能を有するマフラ23が設けられている。
マフラ23は、例えば、遠心力を利用して冷媒中から潤滑油を分離する機能を備えたものであり、図5に示すような形状を呈している。
また、マフラ23は、そのガス出口からインジェクションポートまでの距離Lが2×T×aよりも小さくなり、かつ、周囲に配置された機器や配管との関係、およびインジェクション管21の取り回し等を考慮して、Lが最も短くなる位置に設置されている。ここで、Tは閉鎖時間(周波数の半分程度の時間(条件によって異なる)。例えば、空気調和機用圧縮機3の回転数が120Hzで、インジェクションポートが周波数の半分の時間閉じていると仮定した場合には、1/120/2(sec)となる。)であり、aは音速である。
なお、図5中の符号25は、マフラ23で分離された潤滑油を空気調和機用圧縮機3の底部(潤滑油溜まり)に戻すための油戻し管である。
【0022】
本実施形態に係るインジェクション管21によれば、空気調和機用圧縮機3から逆流してきた冷媒によって生じる脈動が、マフラ23によって低減(吸収)されることとなるので、脈動による振動および騒音を低減させることができて、振動による管の損傷を防止することができる。
また、本実施形態に係るインジェクション管21を具備した空気調和機1によれば、マフラ23によって空気調和機用圧縮機3から逆流してきた冷媒中の潤滑油が分離され、分離された潤滑油が油戻し管25を介して空気調和機用圧縮機3に戻されることとなるので、冷凍サイクル側に循環される潤滑油の油循環率(OCR:OC%)[全質量流量(冷媒流量+潤滑油流量)に対する潤滑油の質量流量の比]を低減し、システム効率を向上させることができるとともに、空気調和機用圧縮機3における潤滑油不足を防止することができる。
さらに、本実施形態に係るインジェクション管21を具備した空気調和機1によれば、空気調和機用圧縮機3から逆流してきた冷媒によって生じる脈動が、インジェクション管21に設けられた(取り付けられた)マフラ23によって低減(吸収)されることとなるので、インジェクション量が非常に多い場合でも低振動および低騒音を実現することができる。
【0023】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、適宜必要に応じて変形実施、変更実施することができる。
例えば、第1実施形態のところで説明したマフラ19は、インジェクション管17の途中を拡径させたものであっても良い。
【0024】
また、本発明に係るインジェクション管17,21は、図1に示す構成を有する空気調和機1のみに適用されるものではなく、例えば、図6に示す構成を有する空気調和機31にも適用することができる。
図6において、図中の符号32は減圧弁(第3膨張弁)、符号33は熱交換器である。また、コンデンサ5の出口側に接続された配管は、熱交換器33の上流側で二方に分岐されており、一方の配管は熱交換器33を介して第2膨張弁11に接続され、他方の配管は熱交換器33を介してインジェクション管17,21に接続されている。熱交換器33の上流側に位置する他方の配管には減圧弁32が接続されており、減圧された冷媒が熱交換器33内に導かれるようになっている。熱交換器33内では、他方の配管内を通過する冷媒が、一方の配管内を通過する冷媒によって昇温(加熱)、ガス化され、ガス化した冷媒が、インジェクション管17,21を介して圧縮機3に導かれるようになっている。
【符号の説明】
【0025】
1 空気調和機
3 空気調和機用圧縮機(圧縮機)
9 レシーバ
17 インジェクション管
19 マフラ
21 インジェクション管
23 マフラ
25 油戻り管
31 空気調和機
33 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧された冷媒を気液分離するレシーバにおいて気液分離された気体冷媒、または熱交換器によってガス化された気体冷媒を圧縮機に供給するインジェクション管であって、
前記圧縮機の側に位置する端部に、当該インジェクション管の内径よりも大きな内径を有するマフラが設けられていることを特徴とするインジェクション管。
【請求項2】
前記マフラは油分離機能を有しており、前記マフラで分離された潤滑油は、油戻り管を介して前記圧縮機の油溜まりに戻されることを特徴とする請求項1に記載のインジェクション管。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインジェクション管を備えてなることを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−185406(P2010−185406A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30918(P2009−30918)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】