説明

インターフェロンアルファ誘導遺伝子

本発明は、インターフェロン−αの投与によって上方制御され、配列番号1に示されるcDNA配列に対応する遺伝子の同定に関する。この遺伝子の発現産物の決定は、インターフェロン−αや1型インターフェロン受容体で作用する他のインターフェロンでの処置に対する応答性の予測に利用できると推奨されている。同遺伝子がコードする蛋白質の治療用途も認識されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのコード配列がこれまでに未知であると思われるインターフェロン−α(IFN−α)の投与によって上方制御(upregulate)されるヒト遺伝子の同定に関する。この遺伝子の発現産物の検出は、IFN−αや、1型インターフェロン受容体に作用する他のインターフェロンに対する応答性の予測に利用し得る。同遺伝子にコードされる単離された新規蛋白質の治療用途も予見される。
【背景技術】
【0002】
IFN−αは、いくつかの障害の処置のために広く用いられている。IFN−αを用いて処置し得る障害は、白血病、リンパ腫及び固形腫瘍などの腫瘍性疾患、エイズ関連カポジ肉腫、及び慢性肝炎などのウイルス感染症を含む。IFN−αについてはまた、自己免疫性、ミコバクテリア性、神経変質性、寄生生物性及びウイルス性の疾患の処置のために口腔粘膜経路を介して投与することが推奨されている。特に、IFN−αは、例えば、多発性硬化症、らい病、結核、脳炎、マラリア、子宮頚癌、陰部ヘルペス、B及びC型肝炎、HIV、HPV並びにHSV−l及び2型の処置のために推奨されてきた。また、関節炎、狼瘡及び糖尿病の処置のためにも提言されてきた。多発性骨髄腫、毛様細胞白血病、慢性骨髄性白血病、ローグレードリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、カルチノイド腫瘍、子宮頚癌、カポジ肉腫を含む肉腫、腎臓腫瘍、腎細胞癌腫や肝細胞癌腫や上咽頭癌腫を含む癌腫、血液悪性腫瘍、結腸直腸癌、グリア芽細胞腫、喉頭乳頭腫、肺癌、大腸癌、悪性黒色腫及び脳腫瘍などの腫瘍性疾患はまた、口腔粘膜経路すなわち口経路又は鼻経路を介したIFN−αの投与によって処置されるものとして提言されている。
【0003】
IFN−αは、1型インターフェロンファミリーの一員であり、1型インターフェロン受容体との相互作用を通じてその特徴的生物活性を及ぼす。他の1型インターフェロンは、IFN−β、IFN−ω及びIFN−τを含む。
【0004】
残念ながら、インターフェロン−αなどの1型インターフェロンでの処置に対する潜在的な患者、特に、例えば、慢性ウイルス性肝炎、腫瘍性疾患や再発寛解型多発性硬化症に苦しむ患者のうち、全員が1型インターフェロン治療に好適に応答するわけではなく、しかも応答する者のうちの一部のみが長期的な利点を示す。1型インターフェロン処置の治療結果を医師が確信して予測することができないということは、高価な生物薬剤の無駄や治療で失われる時間という観点におけるだけでなく、患者が曝される重大な副作用という観点においても、該治療の費用対利益比に関して重大な懸念を引き起こす。さらに、IFN−αの異常な生産が、いくつかの自己免疫疾患に関連していることが示されている。これらの理由により、1型インターフェロンが、いくつかの遺伝子の発現を調節することによってその治療的作用を及ぼすことから1型インターフェロン応答性遺伝子を同定することに多大な関心が存在する。確かに、1型インターフェロン処置によって誘発される遺伝子発現の特異的パターンこそが、その処置に対して患者が好適に応答するか否かを決定するのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
あるヒト遺伝子cDNAが、口腔粘膜経路を介した又は腹腔内へのIFN−αの投与によって上方制御されるマウス遺伝子に対応するものとして今や確認されており、新規のDNAを表すものと考えられる。したがって、この対応するヒト遺伝子も、今やIFN−α上方制御型遺伝子(IFN−α upregulated gene)と称する。
【0006】
同遺伝子によってコードされる蛋白質は、198kDaの分子量を持ち、下記ではHuIFRG198蛋白質という。この蛋白質及びその機能的な変異体は現在、特に、抗ウイルス性、抗腫瘍性又は免疫調節性の薬剤としての使用のための治療薬剤として予見されている。例えば、それらは、自己免疫性、ミコバクテリア性、神経変質性、寄生生物性又はウイルス性の疾患、関節炎、糖尿病、狼瘡、多発性硬化症、らい病、結核、脳炎、マラリア、子宮頚癌、陰部ヘルペス、B又はC型肝炎、HIV、HPV、HSV−1又は2、或いは、多発性骨髄腫、毛様細胞白血病、慢性骨髄性白血病、ローグレードリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、カルチノイド腫瘍、子宮頚癌、カポジ肉腫を含む肉腫、腎臓腫瘍、腎細胞癌腫や肝細胞癌腫や上咽頭癌腫を含む癌腫、血液悪性腫瘍、大腸癌、グリア芽細胞腫、喉頭乳頭腫、肺癌、大腸癌、悪性黒色腫又は脳腫瘍などの腫瘍性疾患の処置に使用してもよい。換言すれば、該蛋白質は、1型インターフェロンで処置可能な任意の疾患の処置にも利用し得る。
【0007】
1型インターフェロンで処置された患者、例えば、口腔粘膜経路を介した又は静脈内的な方法などで、IFN−αで処置した患者の細胞試料におけるHuIFRG198蛋白質又はその天然産生変異体又は対応mRNAのレベルの決定は、該処置に対する応答性を予測するためにも用いることができる。或いは、そしてより好ましくは、該応答性は、例えば、ヒト末梢血単核細胞の試料をインビトロにおいて1型インターフェロンで処置して、HuIFRG198遺伝子に対応する発現生成物、好ましくはmRNAの上方制御(upregulation)又は下方制御(downregulation)を探すことによって判断してもよいこともまた見出されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の第1の態様によれば、
(i)配列番号2のアミノ酸配列、
(ii)その変異体であって、例えば、免疫調節活性及び/又は抗ウイルス活性及び/又は抗腫瘍活性であるところの実質的に類似した機能を有する変異体、或いは、
(iii)例えば、免疫調節活性及び/又は抗ウイルス活性及び/又は抗腫瘍活性であるところの実質的に類似した機能を保持する(i)又は(ii)の断片
を含む単離ポリペプチドが提供される。
【0009】
一般に、最も関心のある蛋白質は、配列番号2の全長にわたり、配列番号2のアミノ酸配列と98%超の同一性を有するものである。
【0010】
本発明はまた、ヒト又は非ヒト動物の治療的処置に使用するため、より詳細には、抗ウイルス性、抗腫瘍性又は免疫調節性の薬剤として使用するための該蛋白質を提供する。上記に示したように、該使用は、1型インターフェロンで処置可能な任意の疾患に広げてもよい。
【0011】
本発明の別の態様によれば、上記で規定した本発明のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド、又はその相補体が提供される。該ポリヌクレオチドは典型的には、
(a)配列番号1の核酸又はそのコード配列及び/又はそれに相補的な配列、
(b)(a)に規定された配列に対して相補的な配列と、例えば、ストリンジェント(stringent)な条件下で、ハイブリッド形成する配列、
(c)(a)又は(b)に規定された配列に対して、遺伝暗号の結果として縮重している配列、或いは
(d)(a)、(b)又は(c)に規定された配列に対して少なくとも60%の同一性を有する配列
を含む配列を含む。
【0012】
好ましいポリヌクレオチドは、配列番号2の全長にわたり、配列番号2の配列と98%超の同一性を有するポリペプチドをコードするものである。
【0013】
本発明はまた、
− 本発明のポリヌクレオチドを含み、本発明のポリペプチドを発現できる発現ベクター、
− 本発明の発現ベクターを含有する宿主細胞、
− 本発明のポリペプチドに対して特異的な抗体、
− 1型インターフェロンで処置可能な疾患を有する対象を処置する方法であって、前記患者に、有効量のHuIFRG198蛋白質又はその機能的変異体を投与することを含む該方法、
− 抗ウイルス性又は抗腫瘍性又は免疫調節性の薬剤として治療に使用するため、より詳細には、1型インターフェロンで処置可能な疾患の処置に使用するための薬物の製造における該ポリペプチドの使用、
− 本発明のポリペプチドと、医薬として許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物、
− 本発明のポリペプチドを生産する方法であって、前記ポリペプチドの発現を実現し該ポリペプチドを単離するのに適当な条件下で本発明の宿主細胞を保つことを含む該方法、
− ヒト又は非ヒト動物の治療的処置に使用するため、より詳細には、抗ウイルス性、抗腫瘍性又は免疫調節性の薬剤として使用するために、上記に規定されたポリペプチドのインビボ発現を誘導する、例えば発現ベクター形態の、本発明のポリヌクレオチド、
− 該ポリヌクレオチドと、医薬として許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物、
− 1型インターフェロンで処置可能な疾患を有する被験体を処置する方法であって、該ポリヌクレオチドを前記患者に有効量投与することを含む該方法、
− 抗ウイルス性、抗腫瘍性又は免疫調節性の薬剤として治療に使用するため、より詳細には、1型インターフェロンで処置可能な疾患の処置に使用するための薬物、例えば、ベクター製剤の製造における該ポリヌクレオチドの使用、並びに
− 免疫調節活性及び/又は抗ウイルス活性及び/又は抗腫瘍活性を有する化合物を同定する方法であって、HuIFRG198蛋白質又はその天然産生変異体を発現できる細胞を用意することと、前記細胞を試験用の化合物と共にインキュベートすることと、HuIFRG198遺伝子発現の上方制御を求めて監視することとを含む方法、
を提供する。
【0014】
また別の態様では、本発明は、1型インターフェロンでの処置、例えば、IFN−α処置(口腔粘膜経路又は非経口的経路、例えば、静脈内、皮下又は筋肉内によるIFN−α処置など)に対する患者の応答性を予測する方法であって、前記患者からの細胞試料、例えば、血液試料における、HuIFRG198蛋白質又はその天然産生変異体、例えば、対立遺伝子の変異体、又は対応するmRNAのレベルを決定することを含み、前記試料は、1型インターフェロン、例えば、IFN−αの口腔粘膜経路を介した又は静脈内への投与後に前記患者から得るか、或いはインビトロでIFN−αなどの1型インターフェロンを用いて、前記決定の前に処理される方法を提供する。本発明はまた、該試験を実行するためのキットまで広がる。
【0015】
配列の簡単な説明
配列番号1は、ヒト蛋白質HuIFRG198のアミノ酸配列とそのコードcDNAである。
配列番号2は、HuIFRG198蛋白質のアミノ酸配列のみである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上記に示したように、ヒト蛋白質HuIFRG198及びその機能的変異体は現在、治療に有用な薬剤として、より詳細には、抗ウイルス性、抗腫瘍性又は免疫調節性の薬剤として使用するためのものとして認識される。
【0017】
この目的のためのHuIFRG198蛋白質の変異体は、HuIFRG198蛋白質と実質的に同じ機能的活性を有し、IFN−αの投与に応答して上方制御される天然産生変異体であってもよく、対立遺伝子変異体又は種変異体のいずれでもよい。或いは、治療に使用するHuIFRG198蛋白質の変異体は、配列番号2から変化しているが、非天然変異体である配列を含んでもよい。
【0018】
用語「機能的変異体」は、HuIFRG198蛋白質の同じ必須形質又は基本的機能を有するポリペプチドを指す。HuIFRG198蛋白質の必須形質は、免疫調節性ペプチドとしてみなしてもよい。機能的変異体ポリペプチドは、追加的に又は代わりに抗ウイルス活性及び/又は抗腫瘍活性を示してもよい。
【0019】
望ましい抗ウイルス活性は、例えば、次のように試験又は監視してもよい。試験される変異体をコードする配列を、ウイルス性のパッケージングシグナルΨ及び薬物耐性マーカを含有するモロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)に由来するレトロウイルスベクターなどのレトロウイルスベクター内でクローニングする。次いで、高力価感染性複製能力のないウイルスを生産するために、ウイルス性gag及びpol遺伝子を含有する汎親和性パッケージング細胞系に、組換え型のレトロウイルスベクターと、水疱性口内炎ウイルス外被糖蛋白質を含有するプラスミドpVSV−Gとを同時形質移入する(Burnsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84、5232〜5236頁)。次いで、該感染性の組換えウイルスを使って、インターフェロン感受性線維芽細胞又はリンパ芽球腫細胞に形質移入し、さらに上記変異体蛋白質を安定して発現する細胞系を、標準的なインターフェロンバイオアッセイでウイルス感染に対する抵抗性について試験する(Toveyら、Nature、271、622〜625頁、1978年)。標準的な増殖アッセイを用いた増殖阻害(Mosmann,T、J.Immunol.Methods、65、55〜63頁、1983年)、及び標準的な技法を用いたMHCクラスI及びクラスII抗原の発現も判定できる。
【0020】
HuIFRG198の望ましい機能的変異体は、本質的には、配列番号2の配列からなっていてもよい。配列番号2の機能的変異体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して、その少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば、少なくとも100個の連続するアミノ酸の領域又は配列番号2の全長にわたって、少なくとも60%から70%の同一性、好ましくは少なくとも80%又は少なくとも90%及び特に好ましくは少なくとも95%、少なくとも97%又は少なくとも99%の同一性を有するポリペプチドであってもよい。ある好ましい態様では、本発明は、配列番号2の全長にわたり、配列番号2のアミノ酸配列に対して98%超の同一性、好ましくは少なくとも98.5%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%の同一性を有する配列番号2の機能的変異体に関する。蛋白質同一性を決定する方法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0021】
アミノ酸置換は、例えば1個、2個又は3個から10個、20個又は30個の置換として行ってもよい。保存的置換は、例えば下記の表にしたがって行ってもよい。第2列の同一ブロック内のアミノ酸及び好ましくは第3列の同一行内のアミノ酸は、互いに置換してもよい。
【表1】

【0022】
本発明による治療に使用する変異体ポリペプチド配列は、より短いポリペプチド配列でもよく、例えば、長さにして少なくとも20個のアミノ酸から50、60、70、80、100、150又は200個のアミノ酸のペプチドは、HuIFRG198蛋白質の適切な生物活性を保持していれば、本発明の範囲内にあるものと考えられる。特に、しかし排他的なものではないが、本発明のこの態様は、上記変異体が、完全な天然の天然産生蛋白質配列の断片である状況を包含する。
【0023】
抗HuIFRG198蛋白質抗体を産生するために用いることができるHuIFRG198蛋白質の修飾された形態及びその断片も、本発明に包含される。該変異体は、HuIFRG198蛋白質のエピトープを含むであろう。
【0024】
本発明のポリペプチドは、化学的に修飾されてもよく、例えば、ポスト翻訳的に修飾してもよい。例えば、それらは、グリコシル化されてもよく、且つ/又は修飾アミノ酸残基を含んでもよい。それは、N末端及び/又はC末端へのある配列の付加によって修飾されてもよく、例えば、それらの精製を支援するためにT7タグ又はヒスチジン残基を提供すること、或いは細胞膜への挿入を促進するためにシグナル配列を付加することによって修飾してもよい。該修飾ポリペプチドは、本発明の用語「ポリペプチド」の範囲内にある。
【0025】
本発明のポリペプチドは、検出用標識で標識してもよい。検出用標識は、上記ポリペプチドの検出を可能にするいかなる適当な標識でもよい。適当な標識は、125I、35Sなどの放射性同位体、又は酵素、抗体、ポリヌクレオチド、及びビオチンなどのリンカーを含む。本発明の標識ポリペプチドは、アッセイに用いてもよい。該アッセイにおいては、固体支持体に結合したポリペプチドを用意することが好ましいことがある。本発明はまた、容器内にキットの形態で包装した該標識付き及び/又は固定化ポリペプチドに関する。該キットは、他の適当な試薬、対照又は指示書などを選択的に含有していてもよい。
【0026】
本発明のポリペプチドは、合成的に又は組換え手段によって作ることができる。本発明の該ポリペプチドは、非天然産生アミノ酸、例えば、Dアミノ酸を含むように修飾してもよい。本発明の変異体ポリペプチドは、インビトロ及び/又はインビボでの安定性を増すような修飾を有していてもよい。上記ポリペプチドが合成的手段で生産される場合、該修飾を生産中に導入してもよい。上記ポリペプチドはまた、合成的又は組換え的な生産に続いて修飾してもよい。
【0027】
いくつかの側鎖修飾が、蛋白質修飾技術分野において知られており、本発明のポリペプチドにおいても存在していてもよい。そのよう修飾は、例えば、アルデヒドとの反応と後に続くNaBHを用いた還元による還元的アルキル化、メチルアセチミデートを用いたアミジン化、又は無水酢酸を用いたアシル化によるアミノ酸の修飾を含む。
【0028】
本発明のポリペプチドは、実質的に単離された形態である。該ポリペプチドは、該ポリペプチドの意図した目的を妨げることのない担体又は希釈剤と混ぜてもよく、それでも実質的に単離されているとみなされることが理解されるであろう。本発明のポリペプチドは、実質的に精製された形態であってもよく、その場合、一般に製剤中に該ポリペプチドを含み、該製剤中のポリペプチドに対して重量百分率で90%超、例えば、95%、98%又は99%超が本発明のポリペプチドである。
【0029】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、HuIFRG198蛋白質又はその変異体をコードするヌクレオチド配列、及びそれに相補的である単離されたヌクレオチド配列を含む。このヌクレオチド配列は、DNAでもRNAでもよく、また一本鎖でも二本鎖でもよく、ゲノムDNA、合成DNAやcDNAを含む。好ましくは、上記ヌクレオチド配列は、DNA配列であり、最も好ましくは、cDNA配列である。
【0030】
上記に示したように、該ポリヌクレオチドは、典型的には
(a)配列番号1の核酸又はそのコード配列及び/又はそれに相補的な配列、
(b)(a)に規定された配列に対して相補的な配列と、例えば、ストリンジェントな条件下で、ハイブリッド形成する配列、
(c)(a)又は(b)に規定された配列に対して、遺伝暗号の結果として縮重している配列、
(d)(a)、(b)又は(c)に規定された配列に対して少なくとも60%の同一性を有する配列
を含む配列を含む。
【0031】
好適な態様では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2のHuIFRG198蛋白質、又は配列番号2の全長にわたる配列番号2の配列と98%超の同一性を有する前記HuIFRG198蛋白質の変異体をコードする。該ポリヌクレオチドは、配列番号2の全長にわたり、配列番号2のアミノ酸配列と98%超の同一性、好ましくは少なくとも98.5%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%の同一性を有する配列番号2の機能的変異体をコードしていてもよい。
【0032】
適切なコード配列を含むポリヌクレオチドは、ヒト細胞から単離したり、また当該技術分野においてよく知られている方法にしたがって合成することができ、一例としてSambrookら(1989年)の分子クローニング:実験室マニュアル、第2版(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition)、Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0033】
本発明のポリヌクレオチドは、その内部に合成又は修飾されたヌクレオチドを含んでいてもよい。ポリヌクレオチドに対するいくつかの異なるタイプの修飾が当該技術分野において知られている。これらは、メチルホスホネート及びホスホチオエートバックボーン、該分子の3’及び/又は5’末端でのアクリジン又はポリリジン鎖の付加を含む。該修飾は、本発明のポリヌクレオチドのインビボ活性又は寿命を増強するために実行してもよい。
【0034】
典型的には、本発明のポリヌクレオチドは、選択的条件下で配列番号1のコード配列又はコード配列の相補配列とハイブリッド形成できる、好ましくはヌクレオチドの連続配列であるヌクレオチドの配列を含むことになろう。該ハイブリッド形成は、バックグランドよりも有意に高いレベルで発生する。バックグランドのハイブリッド形成は、例えば、cDNAライブラリーに他のcDNAが存在することから、発生する。本発明のポリヌクレオチドと、配列番号1のコード配列又はコード配列の相補配列との間の相互作用によって発生されるシグナルレベルは、他のポリヌクレオチドと配列番号1のコード配列との間の相互作用に対して典型的には少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍の強度であろう。相互作用の強度は、例えば、プローブを放射性標識することによって、例えば32Pを用いて、決定することができる。選択的ハイブリッド形成は、典型的には、低い厳密性(stringency)(0.3M塩化ナトリウムと0.03Mクエン酸ナトリウム、約40℃)、中程度の厳密性(例えば、0.3M塩化ナトリウムと0.03Mクエン酸ナトリウム、約50℃)又は高い厳密性(例えば、0.03M塩化ナトリウムと0.03Mクエン酸ナトリウム、約60℃)の条件を用いて達成される。
【0035】
配列番号1のコード配列は、ヌクレオチド置換、例えば1個、2個又は3個から10個、25個、50個又は100個の置換によって修飾されていてもよい。縮重置換を行ってもよく、且つ/又は例えば上記の表に示されるように、修飾された配列が翻訳される場合には保存的アミノ酸置換となるような置換を行ってもよい。配列番号1のコード配列は、その代わり又は追加として、1個又は複数の挿入及び/又は欠失によって、及び/又は一方又は両方の端での伸長によって修飾されてもよい。
【0036】
配列番号1から選択されるDNA配列に対して選択的にハイブリッド形成することが可能な本発明のポリヌクレオチド、そのコード配列及びそれに相補的なDNA配列は、標的配列に対して、一般に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80又は90%、さらに好ましくは少なくとも95%又は97%で相同であろう。この相同性は、典型的には、少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば、少なくとも40個、60個又は100個以上の連続するヌクレオチドの領域にわたっている。
【0037】
上記の相同性の度合と最小サイズ化とのいかなる組合せも、本発明のポリヌクレオチドを規定するために使用することができるが、よりストリンジェントな組合せ(即ち、より長い長さにわたるより高い相同性)が好ましい。したがって、例えば、25個好ましくは30個のヌクレオチドの形態にわたって少なくとも80%相同なポリヌクレオチドは、40個のヌクレオチドにわたって少なくとも90%相同なポリヌクレオチドと同様に好適であることが判るであろう。
【0038】
ここで言及されるポリヌクレオチド又は蛋白質の配列の相同体は、相同性計算のよく知られた手段にしたがって求めてもよく、例えば、蛋白質相同性は、アミノ酸同一性(ときには「ハード(hard)な相同性」といわれる)を基に計算してもよい。例えば、UWGCGパッケージは、相同性を計算するために用いることができ、例えば、そのデフォルト設定で用いられることができるBESTFITプログラムを提供する(Devereuxら(1984年)Nucleic Acids Research 12、387〜395頁)。PILEUP及びBLASTアルゴリズムを、相同性を計算する又は配列を並べるため、或いは同等又は対応配列を同定するために用いることができ、典型的には、それらのデフォルト設定で、例えば、Altschul S.F.(1993年)、J.Mol.Evol.36、290〜300頁;Altschul,S.F.ら、(1990年)J.Mol.Biol.215、403−10に記載されたように用いることができる。
【0039】
BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公然と入手できる。このアルゴリズムでは、初めに、データベース配列内のWの長さの短い文字列に並置したときに何らかの正の値の閾値スコアTに一致する又はこれを満たす問い合わせ配列内の同長さの短い文字列を同定することによって高スコア配列対(HSP)を同定する。Tは、近接文字列スコア閾値と呼ばれる(Altschulら、上記)。これらの初期近接文字列ヒットは、それらを含有するHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして働く。文字列ヒットは、各配列に沿って両方向に、累積アラインメントスコアが増大できる限り伸長される。文字列ヒットの各方向への伸長は次の場合に停止される。累積アラインメントスコアが、その最大到達値から量Xだけ減少した場合、1つ又は複数の負のスコアの残存アラインメントの累積が原因で累積スコアが零又はそれよりも下になった場合、或いはどちらかの配列の末端に到達した場合である。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T及びXは、アラインメントの感度と速度を決定する。BLASTプログラムでは、デフォルトとしては、文字列長さ(W)として11、BLOSUM62スコア行列(HenikoffとHenikoff(1992年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89、10915〜10919頁を見られたい))アラインメント(B)として50、期待値(E)として10、M=5、N=4、及び両鎖の比較が用いられる。
【0040】
BLASTアルゴリズムは、二つの配列の間の類似度の統計解析を行う。例えば、KarlinとAltschul(1993年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:5873〜5787頁を見られたい。BLASTアルゴリズムによって提供される類似度の一尺度は、最小和確率(the smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2個のヌクレオチド又はアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、ある配列が別の配列に類似しているとみなされるのは、第1の配列の第2の配列に対する比較における最小和確率が、約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合である。
【0041】
本発明によるポリヌクレオチドは、インビトロでも、インビボでも、またエキソビボでも行うことができる本発明による蛋白質の生産において有用性を有する。該ポリヌクレオチドにおいて、本発明の望ましい蛋白質に対するコード配列は、選ばれた宿主細胞において該望ましい蛋白質の発現を誘導できるプロモーター配列に作動的に連結されるであろう。該ポリヌクレオチドは、一般に発現ベクター形態で存在するであろう。免疫調節活性及び/又は抗ウイルス活性及び/又は抗腫瘍活性を有する本発明のポリペプチドのインビボでの発現を誘導する、例えば発現ベクター形態にある本発明のポリヌクレオチドもまた、治療薬剤として用いてもよい。
【0042】
該目的のための発現ベクターは、組換えDNA技術の分野における従来の実行態様にしたがって構築してもよい。それらは、例えば、プラスミドDNAの使用をともなってもよい。それらは複製開始点を備えてもよい。該ベクターは、1種又は複数の選択可能な標識遺伝子、例えば、細菌性プラスミドの場合におけるアンピシリン抵抗性遺伝子を含有する。本発明のベクターの他の特徴は、蛋白質発現を可能にするために、適切なイニシエーター、エンハンサー、及び例えば、望ましいものであり且つ適正な配向に位置決めされたポリアデニル化シグナルなどの他の要素を含んでもよい。他の好適な非プラスミドベクターは、当該分野の熟練者には明らかであろう。この点におけるさらなる例として、Sambrookら、1989年(上記)を再び参照されたい。該ベクターは、さらに、例えば、ウイルス性ベクターを含む。好適なウイルス性ベクターの例は、単純ヘルペスウイルス性ベクター、そして、レンチウイルスを含む複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、HPVウイルス(HPV−16やHPV−18など)、及び弱毒化したインフルエンザウイルスベクターを含む。
【0043】
プロモーター及び他の発現制御シグナルは、発現が設計される対象である宿主細胞に適合するように選択してもよい。例えば、酵母プロモーターは、S.セレビシエ(cerevisiae)GAL4及びADHプロモーター、S.ポンベ(pombe)nmt1及びadhプロモーターを含む。哺乳動物プロモーターは、カドミウムなどの重金属やβ−アクチンプロモーターに応答して誘発することができるメタロチオネインプロモーターを含む。SV40ラージT抗原プロモーターやアデノウイルスプロモーターなどのウイルス性プロモーターを用いてもよい。使用してもよいウイルス性のプロモーターの他の例は、モロニーマウス白血病ウイルスの長い末端反復配列(MMLVLTR)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーター、及びHPVプロモーター、特に、HPV上流調節領域(URR)を含む。他の好適なプロモーターは、組換えDNA技術分野における熟練者によく知られているものであろう。
【0044】
本発明の発現ベクターは、本発明の望ましいポリペプチドに対するコード配列の側方に位置する配列をさらに含んでもよく、真核生物のゲノム配列、好ましくは哺乳動物のゲノム配列、又はウイルスのゲノム配列に相同な配列を提供する。これは、本発明の該ポリヌクレオチドを真核細胞のゲノム又はウイルス内へ相同的組換えによって導入することを可能にする。特に、ウイルスの配列が側方に位置している発現カセットを含むプラスミドベクターは、本発明のポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に送達するために適当なウイルスベクターを調製するために用いることができる。
【0045】
本発明はまた、HuIFRG198蛋白質又はその変異体を発現するように変更されたインビトロの細胞、例えば、原核又は真核細胞を含む。該細胞は、HuIFRG198蛋白質又はその変異体をコードするポリヌクレオチドが宿主ゲノムに組み込まれている安定した、例えば真核生物の、細胞系を含む。本発明の宿主細胞は、哺乳動物の細胞又は昆虫の細胞、又は酵母などの下等な真核細胞、又は細菌細胞などの原核細胞であってもよい。本発明によるポリペプチドをコードするベクターの挿入によって変更してもよい細胞の特定の例は、哺乳動物のHEK293T、CHO、HeLa及びCOS細胞を含む。好ましくは、安定しているだけでなく、ポリペプチド成熟グリコシル化を可能にする細胞系を選んでもよい。発現は、例えば、形質転換された卵母細胞内で達成してもよい。
【0046】
本発明のポリペプチドは、トランスジェニック非ヒト動物、好ましくはマウスの細胞において発現してもよい。本発明のポリペプチドを発現できるトランスジェニック非ヒト動物は、本発明の範囲に含まれる。
【0047】
本発明によるポリヌクレオチドは、アンチセンス配列の生産を可能にするために、アンチセンス配向で上述したようなベクター内に挿入してもよい。アンチセンスRNA又は他のアンチセンスポリヌクレオチドは、合成手段によって生産してもよい。
【0048】
ヒト又は非ヒト動物の治療的処置において使用するための、配列番号2で規定するアミノ酸配列に対するコード配列のアンチセンス配列をインビボで発現できる、例えば、発現ベクター形態にあるポリヌクレオチド、又はその天然産生変異体はまた、本発明の別の態様を構成するものと認識される。該ポリヌクレオチドは、HuIFRG198蛋白質の上方制御に関連した疾患の処置において利用できよう。
【0049】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、PCR増幅のためのプライマー対などの、本発明のポリペプチドに対するcDNA内の配列を標的とする核酸増幅用のプライマーのセットにまで広がる。本発明はまた、検出用標識、例えば、放射性標識、又は酵素やビオチンなどの非放射性標識で標識付けしてもよい、本発明のポリペプチドに対するcDNA又はRNA内の配列を標的にするのに適当なプローブを提供する。該プローブは、固体支持体に結合してもよい。該固体支持体は、別の核酸、例えば、他の1型インターフェロン上方制御型遺伝子、例えば、IFN−αの口腔粘膜の又は静脈内の投与に応答して上方制御されるとして同定されるような遺伝子に対応するmRNA又はその増幅産物に対するプローブを担持するマイクロアレイ(又は一般には核酸、プローブ又はDNAチップと呼ばれる)でもよい。該マイクロアレイを構築するための方法はよく知られている(例えば、Affymax Technologies N.V.のEP−B0476014と0619321と「チッピング予報(The Chipping Forecast)」という表題のNature Genetics Supplement January 1999年を見られたい)。
【0050】
該プライマー又はプローブの核酸配列は、好ましくは長さにして少なくとも10、好ましくは少なくとも15又は少なくとも20、例えば、少なくとも25、少なくとも30又は少なくとも40個のヌクレオチドであろう。しかし、40、50、60、70、100又は150個のヌクレオチドまでの長さ又はそれを超える長さでもよい。
【0051】
本発明の別の態様は、HuIFRG198遺伝子内の突然変異、例えば一塩基多型(SNP)を同定するための本発明のプローブ又はプライマーの使用である。
【0052】
上記に示したように、さらに別の態様では、本発明は、免疫調節活性及び/又は抗ウイルス活性及び/又は抗腫瘍活性を有する化合物を同定するための方法であって、HuIFRG198蛋白質又はその天然産生変異体を発現できる細胞を用意することと、前記細胞を試験用の化合物と共にインキュベートすることと、HuIFRG198遺伝子発現の上方制御を求めて監視することとを含む方法を提供する。該監視は、HuIFRG198蛋白質又はその天然産生変異体をコードするmRNAをプローブすることによってもよい。或いは、HuIFRG198及びその天然産生変異体のうちの1種又は複数に特異的に結合できる抗体又は抗体断片を使用してもよい。
【0053】
抗体
別の態様によれば、本発明はまた、従来の技法で得られ且つ本発明のポリペプチドに対して特異的である抗体(例えば多クローン又は好ましくは単クローンの抗体、キメラ抗体、ヒト化された抗体及び抗原結合能を保持するその断片)に関する。該抗体は、例えば、免疫沈降をともなう精製、単離又はスクリーニング方法に有用であり、HuIFRG198蛋白質又はその変異体の機能をさらに解明するための道具として用いてもよい。それらは、それ自体で治療薬剤としてもよい。該抗体は、本発明による蛋白質の特異的エピトープに対して作成してもよい。抗体は、その特異性を示す蛋白質に高親和性で結合するときにその蛋白質に特異的に結合するが、他の蛋白質には結合しないか又は僅かに低い親和性で結合するに過ぎない。抗体の特異的結合能を決定するための競合的結合又は免疫放射定量アッセイのための多様なプロトコルはよく知られている。
【0054】
医薬組成物
本発明のポリペプチドは、典型的に、医薬として許容可能な担体又は希釈剤とともに投与するために調合される。製薬的な担体又は希釈剤は、例えば、等張液であってもよい。例えば、固体経口形態は、活性化合物とともに、希釈剤、例えば、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、セルロース、コーンスターチ又はジャガイモ澱粉;滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、及び/又はポリエチレングリコール;結合剤;例えば、澱粉、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルピロリドン;分離防止剤、例えば、澱粉、アルギン酸、アルギネート又はナトリウム澱粉グリコレート;発泡性混合物;染料;甘味料;レシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸などの湿潤剤;、及び一般には、製薬調合物において用いられる無毒性で薬理学的に不活性な物質を含んでもよい。該医薬製剤は、知られている方法、例えば、混合、顆粒化、錠剤化、糖衣、又は被膜の各方法によって製造してもよい。
【0055】
経口投与用の分散液は、シロップ、乳濁液及び懸濁液であってもよい。シロップは、担体として、例えば、ショ糖又はグリセリン添加のショ糖及び/又はマンニトール及び/又はソルビトールを含有してもよい。
【0056】
懸濁液及び乳濁液は、担体として、例えば、天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はポリビニルアルコールを含有してもよい。筋肉内注射用の懸濁液又は溶液は、活性化合物とともに、医薬として許容可能な担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコール、及び所望に応じて、適量の塩酸リドカインを含有してもよい。
【0057】
静脈内投与若しくは注入用の溶液は、担体として、例えば、滅菌水を含有してもよく、又は好ましくは、滅菌した等張食塩水溶液の形態であってもよい。
【0058】
本発明により使用するHuIFRG198蛋白質又はその機能的な類似体の適当な用量は、種々のパラメータ、特に、使用している当該物質、処置される患者の年齢、体重及び状態、投与の経路、及び必要とする投与計画にしたがって決定できる。繰り返すが、医師は、いかなる特定の患者に対しても、要求される投与経路及び用量を決定することができる。典型的な一日の用量は、特異的阻害剤の活性、処置される対象の年齢、体重及び状態、及び投与の頻度と経路に応じて、体重比で毎kgあたり約0.1から50mg、好ましくは約0.1mg/kgから10mg/kgであってもよい。好ましくは、一日の用量レベルは、5mgから2gであってもよい。
【0059】
治療用途に適当な本発明のポリヌクレオチドはまた、典型的には、医薬として許容可能な担体又は希釈剤とともに投与するために調合される。該ポリヌクレオチドは、所望のポリペプチドの発現がインビボで達成され得るいかなる既知の技法によって投与してもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、注射、好ましくは皮内、皮下又は筋肉内への注射によって導入してもよい。或いは、該核酸を、粒子媒介送達装置を用いて皮膚を通して直接的に送達してもよい。治療的核酸に適当な本発明のポリヌクレオチドは、或いは、口腔粘膜の表面に、例えば鼻腔内又は経口投与によって投与してもよい。
【0060】
治療用途に適当な本発明の非ウイルス性ベクターは、例えば、リポソーム内に又は界面活性剤含有ベクター送達粒子内に収容してもよい。本発明の核酸構築物の取り込みは、いくつかの既知の形質移入技法、例えば形質移入剤の使用を含む技法によって促進してもよい。これらの薬剤の例は、陽イオン性薬剤、例えば、リン酸カルシウム及びDEAEデキストラン及びリポフェクタント、例えばリポフェクタム及びトランスフェクタム、を含む。投与される核酸の用量は、変更することができる。典型的に、該核酸は、粒子介在遺伝子送達の場合には1pgから1mg、好ましくは1pgから10μgの範囲の核酸であり、他の経路の場合には10μgから1mgの範囲で投与される。
【0061】
1型インターフェロン応答性の予測
やはり上記に示したように、さらに別の態様では、本発明は、1型インターフェロンでの処置、例えば、口腔粘膜経路又は静脈内でのIFN−α処置などのIFN−α処置に対する患者の応答性を予測する方法であって、前記患者からの細胞試料においてHuIFRG198蛋白質又はその天然産生変異体、或いは対応するmRNAのレベルを決定することを含み、前記試料は、1型インターフェロンの投与後に前記患者から得るか、又はインビトロで1型インターフェロンを用いて前記決定の前に処置する方法を提供する。
【0062】
好ましくは、応答性を試験するための1型インターフェロンは、処置のために選択される1型インターフェロンである。それは、推奨した処置経路及び推奨した処置用量で投与してもよい。好ましくは、その後の分析試料は、例えば、血液試料又は血液試料から単離される末梢血単核細胞(PBMC)の試料であってもよい。
【0063】
より好都合及び好ましくは、血液から単離されたPBMCを含む患者から得られる試料は、インビトロで、例えば、約1から10,000IU/mlの用量範囲の1型インターフェロンで処置してもよい。該処置は、何時間かの期間、例えば約7から8時間の間、行ってもよい。該インビトロ試験のための好適な処置条件は、正常なドナーから取られたPBMCを同インターフェロンで試験し、適切な発現産物の上方制御を探すことによって決定してもよい。繰り返すが、使用される1型インターフェロンは、好ましくは、患者の処置のために推奨した1型インターフェロン、例えば組換え型IFN−αであろう。該試験のためのPBMCは、フィコール−ハイパーク密度勾配を用いて血液試料から従来の方法で単離してもよい。1型インターフェロン応答性の該インビトロ試験のための適当なプロトコルの例は、下記実施例3に提供されている。
【0064】
上記試料は、1型インターフェロンでのインビトロ処置の後で適切であれば、HuIFRG198蛋白質又はその天然産生変異体のレベルを求めて解析してもよい。これは、HuIFRG198蛋白質及びその天然産生変異体、例えばその対立遺伝子変異体の1種又は複数に特異的に結合できる1種又は複数の抗体を用いて行ってもよい。しかし、好ましくは、上記試料は、HuIFRG198蛋白質又はその天然産生変異体をコードするmRNAを求めて解析される。該mRNA解析は、mRNAの検出で知られる技法、例えばノーザンブロット検出やmRNAディファレンシャルディスプレイのうちどれを使用してもよい。多様な既知の核酸増幅プロトコルを、試料内に存在するいかなる関心対象のmRNA、又はその一部を検出前に増幅するために使用してもよい。関心対象のmRNA又は対応する増幅核酸は、固体支持体に結合した核酸プローブを用いてプローブしてもよい。該固体支持体は、先に上述したように、1型インターフェロン上方制御型遺伝子、例えば、IFN−αの口腔粘膜の又は静脈内の投与に応答して上方制御されるとして同定されるような遺伝子、に対応する別のmRNA又はその増幅産物のレベルを決定するためのプローブを担持するマイクロアレイでもよい。
【0065】
次の実施例は本発明を例示する。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
先の実験は、P20エッペンドルフマイクロピペットを用いて5μlのクリスタルバイオレットを正常な成体マウスの各鼻孔に塗布すると、ほぼ直ちにその染料が口咽頭腔の全表面に分配されるという結果になることを示した。口咽頭腔の染色は、上記染料の塗布後ほぼ30分してもなお見た目に明らかであった。これらの結果は、同様に塗布した125I標識組換えヒトIFN−α1〜8を用いて確認した。同じ投与法を、下記に説明される研究において口腔粘膜投与を行うために使用した。
【0067】
6週齢のオスのDBA/2マウスを、Life Technologies Incから購入した組換えマウスインターフェロンα(IFNα)100,000IUを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)、Protein Institute Incから購入した組換えヒトインターロイキン15(IL−15)10μg、ウシ血清アルブミン(BSA)100μg/mlを含有するPBSで処置するか、又は未処置のままとした。8時間後、マウスを頸椎脱臼によって犠牲にし、その口咽頭腔からリンパ組織を外科的に取り出して、すぐさま液体窒素中で冷凍し、−80℃で保存した。上記リンパ組織からRNAを、ChomczynskiとSacchi、1987年の方法(Anal.Biochem.162、156〜159頁)で抽出し、mRNAディファレンシャルディスプレイ解析(Lang,P.とPardee,A.B.、Science、257、967〜971頁)にかけた。
【0068】
ディファレンシャルディスプレイ解析
ディファレンシャルディスプレイ解析は、GenHunter Corporationの「Message Clean」と「RNA image」の各キットを用いて、本質的には製造元による記述のように実行した。簡単に述べると、RNAをRNアーゼ(RNase)を含まないDNアーゼ(DNase)で処理して、1μgを、3個の一塩基アンカーオリゴ(dT)プライマーA、C又はGのうちのいずれかを用いて100μlの反応緩衝液中で逆転写した。RNAはまた、9個の二塩基アンカーオリゴ(dT)プライマーAA、CC、GG、AC、CA、GA、AG、CG、GCのうちのいずれかを用いて逆転写した。比較する全ての試料は、同じ実験で逆転写し、一定分量に分けて冷凍した。増幅は、TaqDNAポリメラーゼとα−33P dATP(3,000Ci/mmole)とを含有する増幅混合液10μl中で逆転写試料1μlだけで実行した。80個の5’末端(HAP)ランダム配列プライマーを、(HT11)A、C、G、AA、CC、GG、AC、CA、GA、AG、CG又はGCプライマーのそれぞれと組み合わせて用いた。そして、試料を7%変性ポリアクリルアミドゲルに流し、オートラジオグラフィーにかけた。推定上の示差発現バンドを切り出し、供給元の指示書に従って再増幅し、さらにプローブとして用いて、IFN処置、IL−15処置及び賦形剤処置した動物の口咽頭腔から抽出したRNAのノーザンブロットとハイブリッド形成させた。
【0069】
クローニングと配列決定
ディファレンシャルディスプレイのスクリーンからの再増幅バンドをpPCR−Script SK(+)プラスミド(Stratagene)のSfr1部位でクローニングするとともに、cDNA末端の高速増幅から増幅されたcDNAをpCR3プラスミド(Invitrogen)でのTAクローニングによって単離した。DNAを、自動ジデオキシ配列決定装置(Perkin Elmer ABI PRISM 377)を用いて配列決定した。
【0070】
ヒトcDNAの単離
ディファレンシャルディスプレイスクリーンから同定したマウスの示差発現3’配列を、米国国立生物工学情報センター(NCBI)のGenBank(商標)のdbESTデータベースに存在するランダムヒト発現配列タグ(EST)と比較した。ディファレンシャルディスプレイスクリーンから単離されたマウスESTに潜在的に関連する配列は、コンティグ(contig)内に組み合わせ、推定上のcDNAに対応するヒトコンセンサス配列を構築するのに用いられた。該cDNAの1つは、6045ヌクレオチド長さであることが見出された。これは、その発現が、IFN−αの口腔粘膜の投与に続いて、マウスの口腔のリンパ組織において約3倍に増大されることが見出されたマウス遺伝子に対応していた。
【0071】
該推定上のcDNAが真正のヒト遺伝子に対応することを証明するために、コンセンサス配列の5’及び3’末端に由来のプライマーを用いて、特異的逆転写とPCR増幅とによってヒト末梢血白血球(PBL)から抽出したmRNAからcDNAを合成した。予測された大きさの独特のcDNA断片が得られ、クローニングして、配列決定した(配列番号1)。このヒトcDNAは、1712個のアミノ酸の蛋白質(配列番号2)をコードする位置243から5381にある長さ5139bpの翻訳領域(ORF)を含む。
【0072】
(実施例2)
IFN−αの静脈内の投与
オスDBA/2マウスに、Life Technologies Inc.から購入した組換えマウスIFN−αの100,000IUを含むPBS200μlを腹腔内注射するか、又は等しい体積のPBSのみの処置を施した。8時間後、該動物を頸椎脱臼によって犠牲にし、脾臓を従来の手順を用いて取り出した。全RNAを、ChomczynskiとSacchiの方法(Anal.Biochem.(1987年)162、156〜159頁)で抽出し、1試料あたり全RNA10.0μgを、グリオキサールの存在下でノーザンブロットにかけ、Dandoy−Dronら(J.Biol.Chem.(1998年)273、7691〜7697頁)に記載されたようにHuIFRG198mRNAを求めてcDNAプローブとハイブリッド形成させた。ブロットをまずオートラジオグラフィーにかけ、そしてPhospholmagerを製造元の指示書にしたがって用いて定量した。賦形剤だけで処置した動物に比べてIFN−α処置動物の脾臓から抽出されたRNAの試料においては、HuIFRG198蛋白質に対するmRNAの増大されたレベル(概ね4倍)が検出された。
【0073】
(実施例3)
インビトロでの1型インターフェロン応答性の試験
ヒトDaudi又はHeLa細胞をインビトロで組換えヒトIFN−α2(Schering−PloughからのIntron A)10,000IUを含むPBSで、又は等しい体積のPBSだけで処置した。8時間後、該細胞を遠心分離(800×gで10分間)し、細胞ペレットを回収した。全RNAを、該細胞ペレットから、ChomczynskiとSacchiの方法で抽出し、試料あたり全RNAの10.0μgを、グリオキサールの存在下でノーザンブロットにかけ、先に上記実施例2に記載されたようにHuIFRG198mRNAを求めてcDNAプローブとハイブリッド形成させた。PBSだけで処置した試料に比べてIFN−α処置Daudi又はHeLa細胞から抽出されたRNAの試料においては、HUIFRG198蛋白質に対するmRNAの増大されたレベル(概ね3倍)が検出された。
【0074】
同じ手順を、1型インターフェロンで処置されることを勧められた患者から取られたPBMCを用いて1型インターフェロン応答性を予測するために用いてもよい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号2のアミノ酸配列、
(ii)その変異体であって、免疫調節活性及び/又は抗ウイルス活性及び/又は抗腫瘍活性から選択された実質的に類似した機能を有する変異体、或いは
(iii)(i)又は(ii)の断片であって、免疫調節活性及び/又は抗ウイルス活性及び/又は抗腫瘍活性から選択された実質的に類似した機能を保持する断片、
を含む単離ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2の全長にわたり、配列番号2のアミノ酸配列と98%超の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
【請求項3】
配列番号2内に示したアミノ酸配列によって規定されるポリペプチド及び/又はその天然産生変異体に対する特異的抗体を産生するのに適当な前記ポリペプチドの変異体又は断片。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
cDNAである請求項4記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
ポリヌクレオチドが、
(a)配列番号1の核酸配列又はそのコード配列及び/又はそれに相補的な配列、
(b)(a)に規定された配列とハイブリッド形成する配列、
(c)遺伝暗号の結果として、(a)又は(b)に規定された配列に縮重している配列、或いは
(d)(a)、(b)又は(c)に規定された配列に対して少なくとも60%の同一性を有する配列、
を含む、請求項1又は2に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド配列を含み、請求項1、2又は3に記載のポリペプチドを発現できる発現ベクター。
【請求項8】
請求項7記載の発現ベクターを含有する宿主細胞。
【請求項9】
請求項1、2又は3に記載のポリペプチドに特異的な抗体。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のポリペプチドのインビボ発現を誘導する単離ポリヌクレオチド。
【請求項11】
ヒト又は非ヒト動物の治療的処置に使用するための、請求項1記載のポリペプチド又は請求項10記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項1記載のポリペプチド又は請求項10記載のポリヌクレオチドと、医薬として許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項13】
抗ウイルス性又は抗腫瘍性又は免疫調節性の薬剤として治療に使用するための薬物の調製における、請求項1記載のポリペプチド又は請求項10記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項14】
1型インターフェロンで処置可能な疾患を有する患者を処置するための方法であって、請求項1記載のポリペプチド又は請求項10記載のポリヌクレオチドを、前記患者に有効量投与することを含む方法。
【請求項15】
請求項1、2又は3に記載のポリペプチドを生産する方法であって、前記ポリペプチドの発現を実現し、前記ポリペプチドを単離するのに適当な条件下で、請求項8記載の宿主細胞を培養することを含む方法。
【請求項16】
免疫調節活性及び/又は抗ウイルス活性及び/又は抗腫瘍活性を有する化合物を同定する方法であって、配列番号2のポリペプチド又はその天然産生変異体を発現できる細胞を用意すること、前記細胞を試験用の化合物と共にインキュベートすること及び前記ポリペプチド又は変異体をコードする遺伝子の上方制御を求めて監視すること、を含む方法。
【請求項17】
配列番号2によって規定されるアミノ酸配列のためのコード配列又は前記コード配列の天然産生変異体に対して、アンチセンス配列をインビボで発現できる、ヒト又は非ヒト動物の治療的処置に使用するためのポリヌクレオチド。
【請求項18】
治療的処置に使用するための請求項9記載の抗体。
【請求項19】
請求項5記載のcDNA内の配列を標的とする、核酸増幅用のプライマーの1セット。
【請求項20】
請求項4〜6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドに由来する核酸プローブ。
【請求項21】
固体支持体に結合している請求項20記載のプローブ。
【請求項22】
1型インターフェロンでの処置に対する患者の応答性を予測する方法であって、前記患者からの細胞試料において、配列番号2に示すアミノ酸配列によって規定される蛋白質又はその天然産生変異体又は対応するmRNAのレベルを決定することを含み、前記試料は、1型インターフェロンの投与後に前記患者から得るか、又はインビトロで1型インターフェロンを用いて前記決定の前に処理する方法。
【請求項23】
前記試料を得る前に投与するか、又はインビトロで前記試料を処理するために使用するインターフェロンは、前記患者の処置のために推奨したインターフェロンである請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記患者の血液試料から単離した末梢血単核細胞を含む試料を、インビトロで1型インターフェロンで処理する請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記決定が、配列番号2に示した配列によって規定される蛋白質又は前記蛋白質の天然産生変異体をコードする、mRNAのレベルを決定することを含む請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1記載のポリペプチドを発現できる非ヒトトランスジェニック動物。


【公表番号】特表2007−531492(P2007−531492A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506040(P2006−506040)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001338
【国際公開番号】WO2004/085470
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(502210552)ファーマ パシフィック プロプライエタリー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】