説明

インナーロータ型ブラシレスモータ及び該インナーロータ型ブラシレスモータの製造方法

【課題】巻線の巻装作業が容易でコギングトルクを低減できる上、小型軽量化をはかることができ、さらにはモータ効率を向上することができるようにする。
【解決手段】永久磁石12を有するロータ10と、該ロータ10の周囲に周方向に間隔を置いて複数のティース部21aを配設したステータコア21と、前記各ティース部21aに巻き付けられた巻線22とを具備するインナーロータ型ブラシレスモータにおいて、隣り合う前記ティース部21a,21a間のステータ内周側に、これら両ティース部21a,21a間を連結する連結部21bを設けるとともに、両ティース部21a,21a間のステータ外周側には、両ティース部21a,21a間のスロット空間Sとステータ外周の空間とを連通するスロット開口部20aを設け、前記スロット開口部20a内に、磁性体からなるとともにスロット開口部20a毎に独立した部材であるスペーサ23を装着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば小型ポンプなどに適用可能なインナーロータ型のブラシレスモータ及び該インナーロータ型ブラシレスモータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、永久磁石を有するロータと、該ロータの周囲に周方向に間隔を置いて複数のティース部を配設したステータコアと、前記各ティース部に巻き付けられた巻線とを備え、スロット開口部を、前記ステータコアの内周側に配置したものがある(例えば特許文献1参照)。
この従来技術によれば、各ティース部への巻線の巻装をステータコアの内周側から行わなければならない上、スロット開口部が比較的狭いこともあり、巻装作業が困難な上、巻線の占積率を上げるのも困難であった。
【0003】
そこで、他の従来技術として、ステータコアの内周側において隣り合うティース部間を接続し、ステータコアの外周側にスロット開口部を設け、この外周側のスロット開口部を用いて巻線を巻装した後に、前記ティース部の周囲に円筒状のヨーク部を嵌合するようにしたものがある(特許文献2参照)。
この従来技術によれば、各ティース部への巻線の巻装をステータコアの外周側から行うようにしているため、その巻装作業が容易な上、スロット開口部を比較的広く確保でき、巻線の占積率を上げるのも容易であった。さらに、スロット開口部をステータコア内周側に設けた前者従来技術の構成と比較し、コギングトルクを低減できるという利点もあった。
【0004】
しかしながら、後者従来技術によれば、隣り合うティース部と、これらティース部を連結する前記ヨーク部とによって磁路を形成するようにしているため、前記ヨーク部の肉厚をある程度厚くする必要があり、そのことによってモータの外径寸法が大きくなったり重量が増加したりするという問題があった。また、前記ヨーク部に渦電流が発生してモータ効率が低下するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−259513号公報
【特許文献2】特開2002−142391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、巻線の巻装作業が容易でコギングトルクを低減できる上、小型軽量化をはかることができ、さらにはモータ効率を向上することができるインナーロータ型ブラシレスモータ及び該インナーロータ型ブラシレスモータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための技術的手段は、永久磁石を有するロータと、該ロータの周囲に周方向に間隔を置いて複数のティース部を配設したステータコアと、前記各ティース部に巻き付けられた巻線とを具備するインナーロータ型ブラシレスモータにおいて、隣り合う前記ティース部間のステータ内周側に、これら両ティース部間を連結する連結部を設けるとともに、両ティース部間のステータ外周側には、両ティース部間のスロット空間とステータ外周の空間とを連通するスロット開口部を設け、前記スロット開口部内に、磁性体からなるとともに前記スロット開口部毎に独立した部材であるスペーサを装着したことを特徴とする。
【0008】
また、生産性を良好にするとともに良好な磁路を形成する態様として、前記スペーサは、ステータ内方向へ向かってロータ周方向の間隔が狭くなるように形成される。
【0009】
また、渦電流の発生を軽減する好ましい態様として、前記スペーサは、パーマロイPB、パーマロイPC、3%ケイ素快削鋼、パーメンジュール、Fe−Al磁性材のうちの何れかからなる。
【0010】
さらに、渦電流の発生を軽減するためには、前記スペーサは、前記ステータコアよりも固有抵抗が高い材料からなる。
【0011】
また、強度向上のためには、前記ステータコア及び前記スペーサの外周部を囲むようにハウジングを設ける。
【0012】
また、渦電流の発生を軽減する好ましい態様として、前記スペーサは、複数の板状の磁性体を、相互間を絶縁するとともにロータ軸方向に積層してなる。
【0013】
また、強度アップのための好ましい態様として、前記スペーサは、ロータ軸方向へわたる一体の部材とされる。
【0014】
また、放熱性を良好にするためには、前記スペーサの外面に、凹凸を設ける。
【0015】
さらに、生産性の向上、強度アップおよび放熱性の向上等のためには、前記スペーサ外面の凹凸の凹部をロータ周方向へ連続するように形成するとともに、前記ステータコアの外面に、前記スペーサ外面の凹部に連続する凹部を設け、これら双方の凹部を跨ぐように、スペーサ保持部材を装着する。
【0016】
さらに、前記インナーロータ型ブラシレスモータの好ましい製造方法としては、前記スペーサは、前記各ティース部に前記巻線を巻き付ける工程よりも後の工程で、前記スロット開口部内に装着される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
隣り合うティース部間のステータ内周側に連結部を設けるとともに、両ティース部間のステータ外周側にスロット開口部を設けた構造であるため、巻線を巻装する作業が容易な上、コギングトルクが比較的小さくなる。
その上、ステータコア外周側のスロット開口部内にスペーサを装着するようにしているため、ステータコアの周囲に設けられるヨーク部やハウジング等を薄肉化及び軽量化したり、これらヨーク部やハウジング等を省いたりすることができ、ひいては当該ブラシレスモータの小型軽量化をはかることができる。
しかも、隣り合う両ティース部と、これら両ティース部間の磁性体のスペーサとによって、磁気抵抗の低い良好な磁路を形成することができ、ひいては、モータ効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るインナーロータ型ブラシレスモータの一例を示す正面図である。
【図2】同一例におけるステータコアを示す斜視図である。
【図3】同一例におけるスペーサを示す斜視図である。
【図4】本発明に係るインナーロータ型ブラシレスモータの他例を示す正面図である。
【図5】同他例におけるステータコアを示す斜視図である。
【図6】同他例におけるスペーサ及びスペーサ保持部材を示す斜視図である。
【図7】同他例における要部断面図であり、ロータとコイルは省略している。
【図8】本発明に係るインナーロータ型ブラシレスモータにおける材質例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
このブラシレスモータ1は、図1に示すように、永久磁石12を有するロータ10と、該ロータ10の周囲に設けられたステータ20とを具備するインナーロータ型ブラシレスモータである。
【0020】
ロータ10は、磁性体からなる円柱状のロータコア11の外周側に永久磁石12(具体的には円筒状マグネット)を固定するとともに、同ロータコア11の中心部を軸部13に固定し、該軸部13を、軸受等(図示せず)を介してステータコア21に対し回転自在に支持している。
【0021】
また、ステータ20は、ロータ10の周囲に周方向に間隔を置いて複数のティース部21aを配設したステータコア21と、ティース部21aに巻き付けられた巻線22と、隣り合うティース部21a,21a間のスロット開口部20aに装着されたスペーサ23と、ステータコア21及びスペーサ23の外周部を囲む筒状のハウジング24とを具備している。
【0022】
ステータコア21は、図2に示すように、複数の薄板状の磁性体を、相互間を絶縁するとともにロータ軸方向に積層してなり、ロータ周方向へ間隔を置いて配置された複数(図示例によれば6つ)のティース部21aと、各ティース部21aにおけるステータ内周側の端部から周方向の両側へ延設されて隣り合うティース部21aに連結される連結部21b,21bと、各ティース部21aのステータ外周側の端部から周方向の両側へ延設された張出し部21cとを有する。
そして、このステータコア21は、隣り合うティース部21a,21a間を巻線22を収容するためのスロット空間Sとするとともに、隣り合うティース部21a,21a間(詳細には、隣り合う張出し部21c,21c間)に、スロット空間Sとステータ外周の空間とを連通するスロット開口部20aを有する。
【0023】
このステータコア21の材質は、周知の薄板状磁性体から選択でき、好ましい態様としては、図8の表に示すケイ素鋼板とされる。前記表には2種類のケイ素鋼板を例示しており、これらは、製造メーカが異なるとともに、飽和磁束密度が若干異なるが、何れも適用可能である。
前記ケイ素鋼板は、ロータ軸方向へ多数積層され、各鋼板間が接着やダボ止め(凹凸による嵌合)等の接合手段によって接合される。
【0024】
また、ステータコア21におけるティース部21aは、図1に示す一例によれば、スロット空間S側の両側面を平行に配置した断面柱状に形成される。
【0025】
連結部21bは、ティース部21aのステータ内周側の端部から周方向へ延設されるとともに、その延設方向へ向かって徐々に薄肉になるように形成される。
隣り合う連結部21b,21b間の接合箇所には、局部的に薄肉に形成された薄肉部21b1が設けられる。
この薄肉部21b1は、前記接続箇所のステータ内周側部分に凹溝を形成するとともに、対応するステータ外周側部分に凸条を形成し、これら凹溝内面と凸条外面との間の肉厚を、連結部21bにおける他の箇所よりも狭くすることで構成される。
そして、前記構成の連結部21bによれば、コギングトルクを効果的に低減することができる。
【0026】
また、張出し部21cは、ティース部21aのステータ外周側の端部から周方向へ延設され、図示例によれば、その内面を、ティース部21aの側面に対し略直角な平面に形成するとともに、外面を断面円弧状の曲面に形成している。そして、隣り合う張出し部21c,21cの先端部間が、後述するスペーサ23を装着するためのスロット開口部20aとされる。
スロット開口部20aは、ステータ内方向(換言すれば、ロータ軸心へ向かう方向)へ向かってロータ周方向の間隔が徐々に狭くなるように形成される。
【0027】
そして、前記構成のステータコア21の外面には、電着塗装によって、絶縁皮膜が形成される。この絶縁皮膜は、少なくとも、ステータコア21における軸方向両端の露出面、スロット空間S内に位置する表面に形成されればよいが、本実施の形態では、その皮膜形成作業を簡素化して作業性を向上するために、ステータコア21外周面及びステータコア21内周面を含む全外面に絶縁皮膜を形成する。
なお、ステータコア21の外面に絶縁皮膜を形成する手段は、前記電着塗装に限定されるものでなく、例えば、粉体塗装等の他の塗装手段であってもよい。さらに、前記のような塗装による絶縁皮膜に置換して、ステータコア21の外面にインシュレータを装着した態様とすることも可能である。
【0028】
前記構成のティース部21a,連結部21b,張出し部21cにより囲まれる空間(つまり、スロット空間Sの片半部)は、図1に示すように、隣り合うティース部21aへ向かって徐々に断面積を拡大した空間となる。そして、このような形状の空間によれば、巻線22の巻装作業性を向上するとともに、巻き付けられた巻線22の占積率を比較的大きくすることが可能となり、ひいては、モータ効率を向上することができる。
【0029】
また、巻線22は、前記スロット開口部20aに対しステータ外周側から巻線機のフライヤを挿入するようにして、各ティース部21aに巻き付けられる。そして、各ティース部21aに巻線22が巻装された後、各スロット開口部20aには、スペーサ23が装着される。
【0030】
スペーサ23は、磁性体からなるとともにスロット開口部20a毎に独立した部材である(図1及び図3参照)。すなわち、各スペーサ23は、ステータコア21やハウジング24に対して、別体の部材であって、隣り合う他のスペーサ23に対しても別体の部材である。
そして、このスペーサ23は、スロット開口部20aを塞ぐようにして、ロータ軸方向へわたってスロット開口部20aに嵌合される。
このスペーサ23の内面(ステータ内周側の面)は、図示例によれば、前記連結部21bに略平行な平面状に形成される。また、スペーサ23の外面(ステータ外周側の面)は、張出し部21c外面に対し面一となって連続する断面円弧状の曲面に形成される。
そして、このスペーサ23は、ステータ内方向へ向かってロータ周方向の間隔が狭くなる断面楔状に形成され、スロット開口部20aに装着された際、スロット開口部20a内面との間にほとんど隙間が生じないように嵌合する。
【0031】
このスペーサ23の材質は、ステータコア21の材質とは異なるものとされる。
その具体例としては、図8の表に示す5種類の磁性体、すなわち、パーマロイPB、パーマロイPC、3%ケイ素快削鋼、パーメンジュール、Fe−Al磁性材(又はFe−Al磁性鋼板)が挙げられる。なお、Feは鉄、Alはアルミニウムを意味する。また、前記記号(PB,PC)は、JISC2531で定められた記号である。
このスペーサ23は、渦電流の発生を低減する観点より、ステータコア21よりも固有抵抗(電気抵抗)が高い材料であることが好ましい。したがって、前記具体例の中では、特に、パーマロイPB、パーマロイPC、3%ケイ素快削鋼、Fe−Al磁性材のうちの何れかであることが好ましい。
【0032】
また、スペーサ23の材質は、良好な磁路Mを形成する観点からは、飽和磁束密度が比較的高い材質(あるいは磁気抵抗が比較的小さい材質)であることが好ましく、特に、ステータコア21と同等又は同等に近い飽和磁束密度を有する材質であることが好ましい。
したがって、この観点からは、前記具体例中、パーマロイPB、3%ケイ素快削鋼、パーメンジュール、Fe−Al磁性材が好ましく、特にはパーメンジュールが好ましい。
【0033】
さらに、スペーサ23の材質は、渦電流損失を低減し且つ良好な磁路Mを形成するために、固有抵抗がステータコア21よりも高く且つ飽和磁束密度が比較的高い材質であることが好ましく、この観点からは、前記具体例中、パーマロイPB、3%ケイ素快削鋼、Fe−Al磁性材が特に好ましい。
【0034】
このスペーサ23は、図3に示す一例によれば、前記材質からなる板状部材をロータ軸方向に多数配置するとともに相互間を絶縁して積層し、各板状部材間(層間)が接着やダボ止め(凹凸による嵌合)等の接合手段によって接合される。
このように、スペーサ23を積層板から構成した態様では、例えばスペーサ23をロータ軸方向へわたる一体の部材として構成した態様と比較して、該スペーサ23内で発生する渦電流の発生を低減することができる。
【0035】
そして、上記構成のスペーサ23は、各ティース部21aに巻線22を巻き付ける工程よりも後の工程で、スロット開口部20a内に楔状に圧入嵌合される。
なお、必要に応じて、スロット開口部20a内面とスペーサ23との間に接着剤を介在させたり、ステータ20内面とスペーサ23とを凹凸によって嵌合する構造としたりして、強度アップをはかるようにしてもよい。
【0036】
なお、スペーサ23の他例としては、スペーサ23をロータ軸方向へわたる一体の部材(すなわち積層板を用いない一つの塊状の部材)とすることも可能である。この態様によれば、積層体であるステータコア21に一体のスペーサ23が嵌合された構造となるため、ステータコア21を構成する鋼板の間が離間するようなことを防ぐことができる。
ただし、このスペーサ23の他例では、前述したように積層板から構成した態様と比較して渦電流が増加するおそれがあるため、好ましくは、ステータコア21よりも固有抵抗が高い上記材料を用いて構成する。
【0037】
また、ハウジング24は、ステータコア21及びスペーサ23の外周面に接触するようにして、ステータコア21及びスペーサ23の外周面に環装される略筒状の部材であり(図1参照)、スペーサ23がステータコア21から外れたりずれたりするのを阻むとともに、スペーサ23及びステータコア21を構成する鋼板が離間するのを防いで、ステータ20を強度アップする。
【0038】
このハウジング24は、比較的薄肉な材料とすることが可能であり、その具体的な材質例としては、図8の表に示すように、Al(アルミニウム)、樹脂(天然樹脂及び合成樹脂を含む)、SPCC(JISG3141:一般用冷間圧延鋼板)、SPCE(JISG3141:深絞り用冷間圧延鋼板)が挙げられる。特に、ハウジング24の材質を樹脂材料とした場合には、ハウジング24内の渦電流の発生を防止できる上、軽量化の上でも好ましい。
【0039】
次に、上記構成のブラシレスモータ1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
先ず、製造段階においては、各ティース部21aに対しステータ外周側から巻線を巻装することができる上、スロット開口部20aのロータ周方向の寸法がステータ内側へ向かって徐々に狭まる形状であるため、巻線機のフライヤをスロット空間S内へ挿入し易く、ひいては、巻線の巻装作業性を向上することができる。
また、スロット開口部20aにスペーサ23を圧入する際には、スペーサ23が断面楔状であるため、その圧入作業を容易に行える上、装着後のスペーサ23を容易に抜けることのないように保持することができる。
【0040】
また、ブラシレスモータ1の完成後に、巻線22への通電が行われた際には、隣り合うティース部21a及び張出し部21cと、これらの間に挟持されたスペーサ23によって、図1の二点鎖線で示す環状の磁路Mを形成することができる。よって、例えばスペーサ23を省いた構成や、隣り合う張出し部間に空間や溝を有する構造と比較し、磁気抵抗の小さい良好な磁路Mを得ることができ、ひいては、当該ブラシレスモータ1のモータ効率を向上することができる。
特に、本実施の形態では、上述したスペーサ23の積層構造及び材質の工夫により、スペーサ23内の渦電流の発生を低減し、モータ効率を効果的に向上することができる。
【0041】
また、前記したように、ティース部21a、張出し部21c及びスペーサ23によって磁路Mを形成するようにしているため、ハウジング24を磁路形成のために厚肉にする必要がなく、該ハウジング24を薄肉軽量化して、当該ブラシレスモータ1の小型軽量化をはかることができる。
なお、強度的に十分であれば、上記構成のブラシレスモータ1からハウジング24を省いて、更に小型軽量化をはかることも可能である。
【0042】
次に、本発明に係る第2の実施の形態であるブラシレスモータ2について、図4〜7を参照して説明する。
このブラシレスモータ2に関しては、上述したブラシレスモータ1に対し、一部構成を変更したものであるため、ブラシレスモータ1と共通する部分については同一の符号を付けることで重複する詳細説明を省略する。
【0043】
このブラシレスモータ2は、上記ブラシレスモータ1に対し、ステータ20をステータ20’に置換した構成とされる(図4参照)。
ステータ20’は、ステータコア21’と、巻線22と、スペーサ23’と、スペーサ保持部材30(図6及び7参照)とを具備している。
【0044】
ステータコア21’は、上記ブラシレスモータ1と同様に、複数の薄板状の磁性体をロータ軸方向に積層してなり、ティース部21a’、連結部21b’、薄肉部21b1’、張出し部21c’、スロット開口部20a’、スロット空間S等を有する。
さらに、このステータコア21’は、その外周面(詳細には各張出し部21c’の外面)に、ロータ周方向へ連続する凹部21c1’を、ロータ軸方向へ間隔を置いて複数設けている(図5参照)。
【0045】
また、スペーサ23’は、上述したスペーサ23と略同様の外観形状を呈し、その外面に、前記複数の凹部21c1’と同ピッチでロータ軸方向へ並ぶ複数の凹部23a’を有する。各凹部23a’は、ロータ周方向において、前記凹部21c1’と連続するように配設される。
図示例のスペーサ23’は、強度向上の観点より、ロータ軸方向へわたる一体の部材として構成される(図6参照)。このスペーサ23’は、渦電流の発生を軽減するために、好ましくは、ステータコア21’よりも固有抵抗が高い材料を用いて構成する。
【0046】
スペーサ保持部材30は、図6及び7に示すC型止め輪状の部材であり、拡径方向へ弾性変形するように、バネ材等の弾性金属材料により形成される。
このスペーサ保持部材30の断面形状は、凹部21c1’及び凹部23a’内に嵌り合うとともに、これら凹部から外部に突出しないように設定されている。
このスペーサ保持部材30は、ロータ軸方向に略平行に並ぶ複数の凹部21c1’及び凹部23a’のうちの少なくとも一つに対応して設けられる。そして、このスペーサ保持部材30は、周方向に隣り合う凹部21c1’と凹部23a’の間を跨ぐようにして、これら凹部21c1’及び凹部23a’内に環状に嵌め合わせられる(図7参照)。
【0047】
次に、第2の実施の形態である前記ブラシレスモータ2について、その特徴的な作用効果を説明する。
先ず、製造段階においては、ステータコア21’に巻線22が環装され、さらにステータコア21’のスロット開口部20a’にスペーサ23’が装着された後、スペーサ保持部材30が弾性的に拡径されて、ロータ軸方向に略平行に並ぶ複数の凹部21c1’及び凹部23a’のうちの少なくとも一つに装着される。
よって、ステータコア21’に対しスペーサ23’がラジアル方向やスラスト方向(ロータ軸方向)へずれたり外れたりするのを、スペーサ保持部材30によって阻むことができる。
なお、スペーサ保持部材30の装着数は、単数であってもよいし、複数であってもよく、スペーサ23’の装着強度を十分に確保できる範囲内で必要最小限の数とすればよい。
【0048】
また、巻線22への通電が行われた際には、上述したブラシレスモータ1と同様に、隣り合うティース部21a’及び張出し部21c’と、これらの間に挟持されたスペーサ23’によって、良好な磁路を形成することができる。
この際、ステータコア21’及びスペーサ23’の外周部には、複数の凹部21c1’及び凹部23a’によって複数の凹凸が形成されているため、これら凹凸によってステータコア21’及びスペーサ23’内の熱を放熱することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態によれば、好ましい一例として、スペーサ保持部材30をC型止め輪状に形成したが、このスペーサ保持部材30は、凹部21c1’と凹部23a’に跨るようにして嵌合されるものとすれば、前記形状のものに限定されず、例えば、円弧状の部材とすることも可能である。
【0050】
また、上記実施の形態の一例によれば、良好な磁路を形成する観点から張出し部21c(又は21c’)を設けたが、他例としては、この張出し部21c(又は21c’)を図示のものよりも短くしたり省いたりして、ティース部21a(又は21a’)に対する巻線22の巻装作業性をより向上することも可能である。
【0051】
また、上記実施の形態の一例によれば、好ましい態様としてスペーサ23の材質を、ステータコア21の材質と異なるものとしたが、他例としては、スペーサ23とステータコア21を同材質とすることも可能である。
【0052】
また、上記第2の実施の形態によれば、特に放熱性を良好にするとともに小型軽量化をはかるためにハウジング24を省いた態様としたが、他例として、より強度アップをはかる観点からは、上記構成のブラシレスモータ2に対しハウジング24を環装した態様とすることも可能である。
【0053】
また、上記第2の実施の形態によれば、スペーサ23’を、強度向上の観点より、ロータ軸方向へわたる一体の部材としたが、特に渦電流の発生を軽減するようにした他例としては、スペーサ23’を積層板からなる部材とすることも可能である。
【0054】
また、上記第2の実施の形態では、放熱性を良好にする特に好ましい態様として、ステータコア21’とスペーサ23’の双方の外面に凹凸を設けたが、他例としては、上記第2の実施の形態におけるステータコア21’から凹部21c1’を省き、スペーサ23’の外面のみに凹部23a’による凹凸を有する態様とすることも可能である。
また、上記第1の実施の形態においては、積層体からなるスペーサ23の外面に凹凸を設けなかったが、他例として、小型軽量化等のためにハウジング24を省いた態様とする場合には、積層体からなるスペーサ23の外面に凹凸を設けて、放熱性を向上するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,2:ブラシレスモータ
10:ロータ
11:ロータコア
12:永久磁石
20,20’:ステータ
20a,20a’:スロット開口部
21,21’:ステータコア
21a,21a’:ティース部
21b,21b’:連結部
21c,21c’:張出し部
21c1’:凹部
22:巻線
23,23’:スペーサ
23a’:凹部
30:スペーサ保持部材
S:スロット空間
M:磁路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を有するロータと、該ロータの周囲に周方向に間隔を置いて複数のティース部を配設したステータコアと、前記各ティース部に巻き付けられた巻線とを具備するインナーロータ型ブラシレスモータにおいて、
隣り合う前記ティース部間のステータ内周側に、これら両ティース部間を連結する連結部を設けるとともに、両ティース部間のステータ外周側には、両ティース部間のスロット空間とステータ外周の空間とを連通するスロット開口部を設け、
前記スロット開口部内に、磁性体からなるとともに前記スロット開口部毎に独立した部材であるスペーサを装着したことを特徴とするインナーロータ型ブラシレスモータ。
【請求項2】
前記スペーサは、ステータ内方向へ向かってロータ周方向の間隔が狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載のインナーロータ型ブラシレスモータ。
【請求項3】
前記スペーサは、パーマロイPB、パーマロイPC、3%ケイ素快削鋼、パーメンジュール、Fe−Al磁性材のうちの何れかからなることを特徴とする請求項1又は2記載のインナーロータ型ブラシレスモータ。
【請求項4】
前記スペーサは、前記ステータコアよりも固有抵抗が高い材料からなることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載のインナーロータ型ブラシレスモータ。
【請求項5】
前記ステータコア及び前記スペーサの外周部を囲むようにハウジングを設けたことを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載のインナーロータ型ブラシレスモータ。
【請求項6】
前記スペーサは、複数の板状の磁性体を、相互間を絶縁するとともにロータ軸方向に積層してなることを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載のインナーロータ型ブラシレスモータ。
【請求項7】
前記スペーサは、ロータ軸方向へわたる一体の部材であることを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載のインナーロータ型ブラシレスモータ。
【請求項8】
前記スペーサの外面に、凹凸を設けたことを特徴とする請求項1乃至7何れか1項記載のインナーロータ型ブラシレスモータ。
【請求項9】
前記スペーサ外面の凹凸の凹部をロータ周方向へ連続するように形成するとともに、前記ステータコアの外面に、前記スペーサ外面の凹部に連続する凹部を設け、これら双方の凹部を跨ぐように、スペーサ保持部材を装着したことを特徴とする請求項8記載のインナーロータ型ブラシレスモータ。
【請求項10】
前記スペーサは、前記各ティース部に前記巻線を巻き付ける工程よりも後の工程で、前記スロット開口部内に装着されることを特徴とする請求項1乃至9何れか1項記載のインナーロータ型ブラシレスモータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−65486(P2012−65486A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208925(P2010−208925)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【Fターム(参考)】