説明

インバーター制御装置

【課題】各相の電流値を検出する周期を短くするとともに、負荷側の駆動に影響を与えてしまうことを抑制する補正をして、負荷側を高効率に駆動する制御を実現したインバーター制御装置を提供することを目的としている。
【解決手段】指令補正部11は、指令信号の大きさの順番に並べた相間の電圧差が所定値より小さいとき、1/2PWM周期ごとに、該電圧差が所定値より小さい2つの補正前指令信号の内少なくとも一方と、他方との電圧差が、所定値以上になるようにオフセット補正を行うとともに、オフセット補正のオフセット方向を、オフセット補正前の指令信号を基準としたオフセット補正後の指令信号の積分値のうちオフセット補正より前まで積算した値が、0に近づくように演算して決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバーター制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3相モーターを駆動するにあたり、例えば電流制御のPWMインバーター制御を採用したものが、各種提案されている。このような技術の中には、該3相モーターに接続されている各相の電流値を検出し、その検出結果に基づいて負荷トルクや回転子の位置等の情報を算出し、制御するものがある(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載の技術は、各相の電流値を検出する電流検出器が、直流母線に配置されており、PWM周期内のスイッチングタイミングに応じて各相の電流値を検出し、その検出結果に基づいて、3相モーターを制御するものである(以下、直流母線電流による相電流検出法とも呼ぶ)。
【0003】
直流母線電流による相電流検出法を採用し、さらに、PWM周期の前半に各相の電流値を検出するための補正を行い、その後半に該補正をオフセットするものがある(例えば、特許文献2)。
特許文献2に記載の技術は、該補正により、生成される各相のPWMパルスのスイッチングタイミング間隔を広げることで、1PWM周期を最小周期として各相の電流値を検出するとともに、PWM周期の後半と前半で、補正前の電圧値を基準としてオフセットする方向を逆にしているので、該補正によって負荷側の駆動に影響を与えてしまうことを抑制しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−19263号公報(例えば、図3参照)
【特許文献2】特許3664040号公報(例えば、5頁〜8頁、図1、図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、各相の出力電圧が0近傍であったり、各相の出力電圧の差が充分なものでなかったりして、電流値を検出しにくくなってしまっていた。つまり、各相の電流値に基づいて、負荷側を高効率に駆動する制御を実現できなかった。
【0006】
特許文献2に記載の技術では、上記記載の制御を採用しており、各相の電流値をより確実に検出することができる周期がPWM周期より大きいので、負荷側を高効率に駆動する制御を実現できなかった。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、各相の電流値を検出する周期を短くするとともに、負荷側の駆動に影響を与えてしまうことを抑制する補正をして、負荷側を高効率に駆動する制御を実現したインバーター制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインバーター制御装置は、複数相からなる誘導負荷に供給される相電流を制御するための逐次更新される指令信号に基づいて駆動するインバーター主回路と、インバーター主回路の直流母線電流を所定周期で検出する電流検出手段とを有するインバーターを制御するインバーター制御装置において、指令信号を補正して出力する指令補正部と、指令補正部から出力された補正後の指令信号に基づいてPWM信号を生成し、インバーター主回路に出力するPWM信号生成手段と、を有し、指令補正部は、指令信号の大きさの順番に並べた相間の電圧差が所定値より小さいとき、1/2PWM周期ごとに、該電圧差が所定値より小さい2つの補正前指令信号の内少なくとも一方と、他方との電圧差が、所定値以上になるようにオフセット補正を行うとともに、オフセット補正のオフセット方向を、オフセット補正前の指令信号を基準としたオフセット補正後の指令信号の積分値のうちオフセット補正より前まで積算した値が、0に近づくように演算して決定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るインバーター制御装置によれば、各相の電流値を検出する周期を短くするとともに、負荷側の駆動に影響を与えてしまうことを抑制する補正をして、負荷側を高効率に駆動する制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係るインバーター制御装置の回路ブロック例図である。
【図2】図1に示すインバーター制御装置の指令補正部の補正フローチャートである。
【図3】図1に示すインバーター制御装置の各信号の波形チャートを説明するものである。
【図4】図1に示すインバーター制御装置のPWM周期と、指令信号と、電流検出周期の関係を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るインバーター制御装置の回路ブロック例図である。図3は、図1に示すインバーター制御装置の各信号の波形チャートを説明するものである。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図1〜図4における、*の記号はインバーター回路に「指令」をする信号であることを表すために便宜上つけられているものである。
【0012】
[インバーター制御装置1の構成]
まず、インバーター制御装置1の構成について説明する。
図1に示すように、インバーター制御装置1は、負荷を駆動するための電力を供給する直流電源2、電流を整流する平滑コンデンサー6、直流電流を交流電流とするインバーター主回路3、インバーター主回路3に制御される誘導負荷5、電流を検出する電流検出手段13、検出される電流に基づいて各相の電流値を演算する相電流演算部30、相電流演算部30で演算結果及び電流指令値に基づいてインバーター主回路3を制御する電流制御部10、電流制御部10の指令信号を補正する指令補正部11、指令補正部11で補正された信号からPWM信号を生成するPWM信号生成手段12と、から構成されている。
ここで、電流指令値とは、例えば誘導負荷5がモーターであった場合には、モーターの回転数を所定の値に制御するための信号をさす。また、指令信号とは、相電流演算部30で演算された電流値及び電流指令値に基づいて、電流制御部10が送信する信号である。さらに、誘導負荷5は、三相(U相、V相及びW相と呼ぶ)であるものとして説明する。また、この指令信号は、1/2PWM周期で更新されるものである。
【0013】
直流電源2は、誘導負荷5を駆動するための電力を供給するものである。平滑コンデンサー6は、直流電源2からインバーター主回路3を介して誘導負荷5に供給される電流を整流するものである。インバーター主回路3は、直流電源2から供給される直流電流を、電流、電圧及び周波数が制御された交流電流に変換するものである。インバーター主回路3は、6個のスイッチング素子6a〜6fが、三相ブリッジ回路を構成している。この三相ブリッジ回路の負荷側は、誘導負荷5のU相、V相及びW相に接続されている。これらの直流電源2、平滑コンデンサー6及びインバーター主回路3は、図1に示すように、並列に接続されている。ここで、これらU相、V相及びW相を流れる電流をそれぞれ相電流UI、相電流VI、相電流WIと呼ぶ。電流検出手段13は、直流母線Lを流れる電流Isを所定周期Tで検出するものである。なお、直流母線Lとは、平滑コンデンサー6の一端P1と、インバーター主回路3の直流電源2の正極側の間の配線のことである。
【0014】
相電流演算部30は、電流検出手段13で検出された直流母線Lを流れる電流Is及びPWM信号生成手段12から出力される信号に基づいて、相電流UI、相電流VI及び相電流WIの値を演算(推定)し、その演算結果を電流制御部10に出力するものである。この相電流演算部30は、電流検出手段13、PWM信号生成手段12及び電流制御部10に接続されている。
【0015】
電流制御部10は、相電流演算部30の演算結果及び外部より与えられる電流指令値に基づいて、各相(U相、V相及びW相)を制御するための指令信号を、指令補正部11に送信するものである。ここで、U相が指令信号vu1に、V相が指令信号vv1に、W相が指令信号vw1に対応している。この電流制御部10は、相電流演算部30と指令補正部11に接続されている。また、インバーター制御装置1において、指令信号vu1〜指令信号vv1が、指令補正部11に出力される最小の周期は、後述するPWM信号生成手段12のキャリアの半周期となっている。
【0016】
指令補正部11は、電流制御部10から受信した指令信号(vu1、vv1及びvw1)を、補正後指令信号(vu2、vv2及びvw2)に補正し、この補正後指令信号(vu2、vv2及びvw2)をPWM信号生成手段12に送信するものである。ここで、補正前指令信号vu1が補正後指令信号vu2に、補正前指令信号vv1が補正後指令信号vv2に、補正前指令信号vw1が補正後指令信号vw2に対応している。なお、どのように指令信号(vu1、vv1及びvw1)を補正後指令信号(vu2、vv2及びvw2)に補正するかについては、図2の説明にて後述するものとする。この指令補正部11は、電流制御部10とPWM信号生成手段12に接続されている。
【0017】
PWM信号生成手段12は、指令補正部11から受信した補正後指令信号(vu2、vv2及びvw2)とキャリア(図4の三角波を参照)に基づいて、スイッチング素子6a〜スイッチング素子6fをオン/オフするためのPWM信号を、スイッチング素子6a〜スイッチング素子6fに送信するものである。また、PWM信号生成手段12は、相電流演算部30にもPWM信号に関するデータを送信している。このPWM信号生成手段12は、指令補正部11とスイッチング素子6a〜スイッチング素子6fに接続されている。
【0018】
[指令補正部11の補正について]
指令補正部11は、直流母線Lで検出される電流Isから各相電流UI、相電流VI及び相電流WIを演算することが困難になるほど、インバーター主回路3のスイッチングタイミング間隔が短くなった場合に、該スイッチングタイミング間隔を長くするようにオフセット補正をかける。該スイッチングタイミング間隔が短くなることは、指令信号(vu1、vv1及びvw1)の電圧差が小さくなることに対応している。そこで、指令補正部11は、指令信号(vu1、vv1及びvw1)の電圧差が、所定電圧差Dminより小さい場合に、電圧差を大きくするように所定のタイミング(後述して説明する)でオフセット補正をかけるようになっている。なお、該オフセット補正をかける周期は、1/2PWM周期である。つまり、指令補正部11は、1/2PWM周期ごとに送信された指令信号vu1〜指令信号UW1に該オフセット補正をかけて、1/2PWM周期ごとに該オフセット補正をかけたvu2〜指令信号UW2をインバーター主回路3に出力している。
【0019】
図2は、図1に示すインバーター制御装置1の指令補正部11の補正フローチャートである。図2に基づいて、指令補正部11の補正について説明する。ここで、図2のS1〜S15は、以下に説明するステップ1〜ステップ15に対応している。
(ステップ1)
電流制御部10から受信した指令信号vu1〜指令信号vw1の大きさを演算し、一番大きいものから順番に、最大相電圧指令値vmax1、第2相電圧指令値vmid1、最小相電圧指令値vmin1とする。
【0020】
(ステップ2)
最大相電圧指令値vmax1から第2相電圧指令値vmid1を引いた値を、Δv12’とする。
【0021】
(ステップ3)
積分値Δv12(t−1)に差Δv12’を加えた値を、更新積分値Δv12として更新する。ここで、積分値について説明する。指令補正部11は、本フローチャートで説明する補正を、キャリアの半周期(1/2PWM周期)で逐次している。この指令補正部11は、電流検出手段13が電流を検出する周期(所定周期T)の間において、更新時の指令信号vu1〜UW1の電圧値を正負の基準として、所定周期の始めから補正前までの指令信号の基準に対する積分値を演算しており、この積分値が、Δv12(t−1)に相当するものである。従って、更新積分値Δv12は、厳密には更新積分値Δv12(t)と表記することになるがこの(t)は、省略している。再び、図2に基づいて、指令補正部11の補正フローチャートの説明に戻る。
【0022】
(ステップ4)
更新積分値Δv12の絶対値が、所定電圧差Dmin以上であるかを演算する。ここで、更新積分値Δv12の絶対値が、所定電圧差Dmin以上ならばステップ6Aに進み、所定電圧差Dminより小さければステップ5に進む。なお、所定電圧差Dminとは直流母線Lを流れる電流Isの検出可能である時間間隔に相当する値として、予め設定されているものである。
【0023】
(ステップ5)
更新された積分値Δv12の値が、0以上であるならばステップ6Bに進み、0より小さいならばステップ6Cに進む。
【0024】
(ステップ6A)
更新された積分値Δv12の絶対値が、所定電圧差Dmin以上であるので、補正する電圧値であるvcmp12の値を0とし、ステップ7へ進む。
(ステップ6B)
更新された積分値Δv12の絶対値が、所定電圧差Dminより小さく、さらに、更新された積分値Δv12の値が0以上であるので、vcmp12の値をDmin−Δv12と設定してステップ7へ進む。
(ステップ6C)
更新された積分値Δv12の絶対値が、所定電圧差Dminより小さく、さらに、更新された積分値Δv12の値が0より小さいので、vcmp12の値を−Dmin−Δv12と設定してステップ7へ進む。
【0025】
(ステップ7)
最大相電圧指令値vmax1にvcmp12を加えた値を、最大相電圧指令値vmax2として更新する。また、更新された積分値Δv12にvcmp12を加えた値を新たな積分値Δv12として更新する。
【0026】
(ステップ8)
第2相電圧指令値vmid1から最小相電圧指令値vmin1を引いた値を、Δv23’とする。
【0027】
(ステップ9)
積分値Δv23(t−1)に差Δv23’を加えた値を、更新積分値Δv23として更新する。
【0028】
(ステップ10)
更新積分値Δv23の絶対値が、所定電圧差Dmin以上であるかを演算する。ここで、更新積分値Δv23の絶対値が、所定電圧差Dmin以上ならばステップ12Aに進み、所定電圧差Dminより小さければステップ11に進む。なお、所定電圧差Dminとは直流母線Lを流れる電流Isの検出可能である時間間隔に相当する値として、予め設定されているものである。
【0029】
(ステップ11)
更新された積分値Δv23の値が、0以上であるならばステップ12Bに進み、0より小さいならばステップ12Cに進む。
【0030】
(ステップ12A)
更新された積分値Δv23の絶対値が、所定電圧差Dmin以上であるので、補正する電圧値であるvcmp23の値を0とし、ステップ13へ進む。
(ステップ12B)
更新された積分値Δv23の絶対値が、所定電圧差Dminより小さく、さらに、更新された積分値Δv23の値が0以上であるので、vcmp23の値をDmin−Δv23と設定してステップ13へ進む。
(ステップ12C)
更新された積分値Δv23の絶対値が、所定電圧差Dminより小さく、さらに、更新された積分値Δv23の値が0より小さいので、vcmp23の値を−Dmin−Δv23と設定してステップ13へ進む。
【0031】
(ステップ13)
最大相電圧指令値vmax1にvcmp23を加えた値を、最小相電圧指令値vmin2として更新する。また、更新された積分値Δv23にvcmp23を加えた値を新たな積分値Δv23として更新する。
【0032】
(ステップ14)
第2相電圧指令値vmid1の値を第2相電圧指令値vmid2として更新する。
【0033】
(ステップ15)
最大相電圧指令値vmax2、第2相電圧指令値vmid2、最小相電圧指令値vmin2をPWM信号生成手段に送信する補正後電流指令値(vu2、vv2及びvw2)に設定する。
【0034】
[補正のタイミングの説明]
図3は、図1に示すインバーター制御装置1の指令補正部11の補正タイミングを説明するものである。図2のフローチャートを参照しながら、図3の説明をする。図3では、指令信号vv1とvw1の電圧値が近接している場合を例としている。指令補正部11が受信した指令信号vu1〜指令信号vw1の電圧の大きさの順番に紙面の上からvu1、vv1及びvw1としている(ステップ1に相当)。図3の例の場合においては、指令信号vv1とvw1の電圧値が近接しているので、ステップ2〜6の補正は行われないので説明を省略する。なお、ステップ6A、ステップ6B及びステップ6Cをステップ6と総称している。
【0035】
次に、ステップ8〜12に基づいてW相に対応する指令信号vw1が補正される。指令信号vv1が第2相電圧指令値vmid1、指令信号vw1が最小相指令信号vmin1に対応しており、第2相電圧指令値vmid1ー最小相指令信号vmin1をしてΔv23’を演算する(ステップ8)。ここで、図3のタイミングAの以前までの積分値Δv23(tー1)の値と、vv1とvw1との差であるΔv23’との和である、更新積分値Δv23が負になっている(ステップ9)。従って、タイミングAから1/2PWM周期(キャリアの半周期)後のタイミングBまでは、vw1に対して上側にオフセットがかかった指令信号vv2に補正されていることがわかる(ステップ10〜12)。引き続いて、図3の矢印Bのタイミングでは、矢印Aから矢印Bまでのタイミングの正の値の積分値Δv12が、積算されていることにより、タイミングBからは、指令信号vv2(なお、指令信号vv2は、第2相電圧指令値なので補正はかからないのでvv1と同じである)に対して電圧値が低くなるように下側にオフセットがかかっている。
【0036】
ここで、タイミングBの次にタイミングCで上側にオフセットがかかるのではなく、タイミングDで上側にオフセットがかかっていることについて説明する。タイミングAからタイミングBまでの間において、指令信号vw1を基準としたとき、上側にオフセットした量の方が、下側にオフセットした量より大きいためである。つまり、タイミングBまでの正の積算値を相殺するために、下側にオフセット期間が1PWM周期となっている。これは、該下側にオフセットする期間を1PWM周期として(タイミングCでの電圧値を変えない)おり、タイミングBまでに積算された積分値を0に近づけるように指令補正部11が演算して補正したことによる。
【0037】
[所定周期T(電流検出周期)と積分区間T2について]
図4は、図1に示すインバーター制御装置1のPWM周期と、指令信号vu1〜指令信号vw1と、電流検出周期の関係を説明するものである。なお図4では、指令信号vu1だけオフセットが必要な期間T3、オフセット必要なし期間T4、指令信号vu1だけオフセットが必要な期間T5が続くものを説明の都合上、例としているが、指令信号更新周期(1/2PWM周期)ごとにオフセットが必要になる場合もあることを述べておく。
【0038】
インバーター制御装置1は、図1で説明したように、電流検出手段13が、所定周期(電流検出周期)で、直流母線の電流を検出している。ここで、インバーター制御装置1は、所定周期の最小値が1/2PWM周期としても各相の電流を検出することができるようになっている。つまり、確実に各相の電流を検出できる周期が、PWM周期よりさらに短いので、負荷側を高効率に駆動する制御を実現できるようになっている。なお、この所定周期は、1/2PWMと設定されていてもよいし(図4のPA1参照)、1/2PWM周期より長い周期に設定されていてもよいし、1/2PWM周期と1/2PWM周期より長い周期を組み合わせていてもよい(図4のPA2参照)。
【0039】
インバーター制御装置1は、所定の期間の積分区間T2で、ステップ3〜ステップ7及びステップ9〜ステップ13(図2参照)に相当する演算を行っており、該演算の値が0に近づくように、指令信号VU2〜指令信号VW2のタイミングをとっている。ここで、この積分区間T2の最小値は、1PWM周期で、最大値は、特に、限定されるものではない。インバーター制御装置1は、積分区間T2ごとに、ステップ3〜ステップ7及びステップ9〜ステップ13に相当する演算(積算)をして、その演算結果が0に近づくようにしているので、指令信号vu1〜指令信号vw1に、上記のような電圧信号を検出できるようにする補正をしても、誘導負荷5の駆動に与える影響が低減されるようになっている。
【0040】
[インバーター制御装置1の有する効果]
インバーター制御装置1は、指令信号vu1〜指令信号vw1の電圧の大きさの順番に並べた相間の電圧差が所定値より小さいとき、1/2PWM周期ごとに、該電圧差が所定値より小さい2つの補正前指令信号の内少なくとも一方の電圧を、他方に対する電圧差が所定値以上にする補正をしているので、負荷側を高効率に駆動する制御を実現できるようになっている。
また、上記積分区間T2内において、指令信号vu1〜指令信号vw1の更新時から補正前までの指令信号vu1〜指令信号vw1の基準に対する積分値を演算し、該積分値に補正後指令信号の基準に対する積分値を加えた値が、0に近づくように、補正のタイミングを決定しているので、上記補正をしても誘導負荷5の駆動に与える影響が低減されるようになっている。
【0041】
[その他]
インバーター制御装置1は、指令信号vu1〜指令信号vw1の代わりに、指令信号vu1〜指令信号vw1のそれぞれと、直流母線を流れる電流値を割った値であるPWMデューティー比に基づいたものを指令信号として採用してもよいことは言うまでもない。
【0042】
インバーター制御装置1は、相電流演算部、電流制御部、指令補正部及びPWM信号生成手段は、1つのマイクロコンピューターに設けられていてもよいことは言うまでもない。これにより、インバーター制御装置1を、安価、小型にすることができる。
【0043】
このマイクロコンピューターは、A/D変換器を有し、該A/D変換器によって相電流演算部が、誘導負荷の各相の相電流を演算するような構成としてもよいことは言うまでもない。これにより、相電流演算部だけのためのA/D変換器を設ける必要がなくなり、インバーター制御装置1を、安価、小型にすることができる。
【0044】
インバーター主回路3は、3相6素子が1パッケージに封止されたものであってもよいことは言うまでもない。これにより、インバーター制御装置1を小型にすることができる。
【0045】
また、インバーター制御装置1は、例えば永久磁石を有するブラシレスDCモーターに採用することができる。その他に、空気調和機の圧縮機やファン、冷凍機、洗濯乾燥機、冷蔵庫、除湿器、ヒートポンプ式給湯機、ショーケース、掃除機等、インバーターと、モーター(誘導負荷5に相当)を用いる家電製品全般、さらには換気扇、手乾燥機などへ採用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 インバーター制御装置、2 直流電源、3 インバーター主回路、3A 三相ブリッジ回路、5 誘導負荷、6 平滑コンデンサー、6a スイッチング素子、6b スイッチング素子、6c スイッチング素子、6d スイッチング素子、6e スイッチング素子、6f スイッチング素子、10 電流制御部、11 指令補正部、12 PWM信号生成手段、13 電流検出手段、20 電流制御部、30 相電流演算部、Is 電流、L 直流母線、P1 一端、UI 相電流、VI 相電流、WI 相電流、T 所定周期、T2 積分区間、T3 vw1*のみ補正が必要な期間、T4 補正なし期間、T5 vw1*のみ補正が必要な期間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相からなる誘導負荷に供給される相電流を制御するための逐次更新される指令信号に基づいて駆動するインバーター主回路と、前記インバーター主回路の直流母線電流を所定周期で検出する電流検出手段とを有するインバーターを制御するインバーター制御装置において、
前記指令信号を補正して出力する指令補正部と、
前記指令補正部から出力された補正後の指令信号に基づいてPWM信号を生成し、前記インバーター主回路に出力するPWM信号生成手段と、を有し、
前記指令補正部は、
前記指令信号の大きさの順番に並べた相間の電圧差が所定値より小さいとき、1/2PWM周期ごとに、該電圧差が所定値より小さい2つの補正前指令信号の内少なくとも一方と、他方との電圧差が、所定値以上になるようにオフセット補正を行うとともに、
前記オフセット補正のオフセット方向を、オフセット補正前の指令信号を基準としたオフセット補正後の指令信号の積分値のうち前記オフセット補正より前まで積算した値が、0に近づくように演算して決定する
ことを特徴とするインバーター制御装置。
【請求項2】
前記指令信号を、PWMデューティー比に基づいた信号とした
ことを特徴とする請求項1に記載のインバーター制御装置。
【請求項3】
前記電流検出手段は、前記所定周期を1/2PWM周期とした
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインバーター制御装置。
【請求項4】
前記電流検出手段の直流母線電流の検出結果及び前記PWM信号生成手段のPWM信号に基づいて、前記誘導負荷の各相電流を演算し、該演算結果を出力する相電流演算部と、
前記相電流演算部の各相電流の演算結果と、外部より与えられる電流指令値に基づき、前記指令信号を生成して、該指令信号を前記指令補正部に出力する電流制御部と、を有している
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のインバーター制御装置。
【請求項5】
前記相電流演算部、前記電流制御部、前記指令補正部及び前記PWM信号生成手段は、1つのマイクロコンピューターに設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載のインバーター制御装置。
【請求項6】
前記マイクロコンピューターは、A/D変換器を有し、該A/D変換器によって前記相電流演算部が、前記誘導負荷の各相の相電流を演算する
ことを特徴とする請求項5に記載のインバーター制御装置。
【請求項7】
前記インバーター主回路は、3相6素子が1パッケージに封止された
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のインバーター制御装置。
【請求項8】
前記誘導負荷は、永久磁石を有するブラシレスDCモーターである
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のインバーター制御装置。
【請求項9】
前記誘導負荷は、圧縮機を駆動するモーターである
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のインバーター制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−60847(P2012−60847A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204113(P2010−204113)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】