説明

インバータ制御装置

【課題】コアレス電流センサを用いた際の検出精度の悪化の影響を無くしてモータを正常に駆動させることが可能なインバータ制御装置を提供する。
【解決手段】コアレス電流センサ40が備えるシールド板により生じる残留磁束の影響により出力電圧Vuv、Vvwに含まれる位相遅れ及びゲイン誤差が無くなるように、出力電圧Vuv、Vvwを補正し、その補正された補正出力電圧Vuv、Vvwと、外部から入力される指令値とに基づいて、モータインバータ41を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアレス電流センサの出力電圧に基づいてモータインバータの動作を制御するインバータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来のインバータ制御装置を示す図である。
図8に示すインバータ制御装置30は、位置速度算出部31と、電流算出部32と、電流変換部33と、電流テーブル34と、指令電圧出力部35と、電圧変換部36と、制御信号生成部37とを備えて構成されている。
【0003】
位置速度算出部31は、レゾルバ38(モータ位置センサ)から出力される、モータ39のロータの回転数に比例した周波数の交流電圧に基づいて、ロータの現在の位置θ及び回転速度ωを算出する。
【0004】
電流算出部32は、コアレス電流センサ40の出力電圧Vuv1、Vvw1に基づいて、モータ39のU相に流れる交流電流Iu、V相に流れる交流電流Iv、及びW相に流れる交流電流Iwを算出する。
【0005】
電流変換部33は、交流電流Iu、Iv、Iwを、モータ39のd軸方向に流れている電流id及びモータ39のq軸方向に流れている電流iqに変換する。
電流テーブル34は、外部(例えば、ECU(Engine Control Unit)など)から入力される指令値(例えば、回転数やトルクなど)と、回転速度ωと、モータ39のd軸方向に流すべき指令電流id1(d軸指令電流)及びモータ39のq軸方向に流すべき指令電流iq1(q軸指令電流)とが対応付けられて格納されており、指令値と回転速度ωとが入力されると、それらに対応する指令電流id1、iq1を出力する。
【0006】
指令電圧出力部35は、電流id、iq及び指令電流id1、iq1に基づいて、指令電圧Vd、Vqを出力する。
電圧変換部36は、指令電圧Vd、Vqを、指令電圧Vu、Vv、Vwに変換する。
【0007】
制御信号生成部37は、指令電圧Vu、Vv、Vwに基づいて、モータインバータ41のスイッチング素子42〜47のそれぞれのオン、オフをPWM制御するための制御信号S1〜S6を出力する。
【0008】
これにより、モータ39のU相、V相、W相に互いに位相差が120度異なる交流電流Iu、Iv、Iwが流れ、モータ39のステータに回転磁界が生成され、モータ39のロータが回転する。
【0009】
図9は、コアレス電流センサ40の断面図である。
図9に示すコアレス電流センサ40は、交流電流Iuが流れるバスバー48と、交流電流Ivが流れるバスバー49と、交流電流Iwが流れるバスバー50と、バスバー48及びバスバー49の近傍に設けられるホール素子51(第1のホール素子)と、バスバー49及びバスバー50の近傍に設けられるホール素子52(第2のホール素子)と、外部からの磁束を遮蔽するためのシールド板53とを備えて構成されている。
【0010】
ホール素子51は、バスバー48に流れる交流電流Iuにより発生する磁束、バスバー49に流れる交流電流Ivにより発生する磁束、及びバスバー50に流れる交流電流Iwにより発生する磁束に基づいて、出力電圧Vuv1を出力する。
【0011】
同様に、ホール素子52も、バスバー48に流れる交流電流Iuにより発生する磁束、バスバー49に流れる交流電流Ivにより発生する磁束、及びバスバー50に流れる交流電流Iwにより発生する磁束に基づいて、出力電圧Vvw1を出力する。
【0012】
そして、電流算出部32は、例えば、特許文献1に記載されるように、交流電流Iu=((Kwb−Kvb)×Vuv1−(Kwa−Kva)×Vvw1)/((Kua−Kva)×(Kwb−Kvb)−(Kub−Kvb)×(Kwa−Kva))により交流電流Iuを算出するとともに、同様にして交流電流Iv、Iwを算出する。なお、Kua、Kub、Kva、Kvb、Kwa、及びKwbは、ホール素子51、52の透磁率やホール素子51、52の感度などにより求められる係数とする。
【0013】
このように、コアレス電流センサ40は、集磁コアを用いないため、コストや体格を低減することができるので、その分インバータ制御装置30のコストや体格も低減させることができる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2008−58035号公報
【特許文献2】特開2004−61217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記インバータ制御装置30では、コアレス電流センサ40にシールド板53が備えられているため、そのシールド板53により生じる残留磁束がホール素子51、52に影響を及ぼし、出力電圧Vuv1、Vvw1が正確な値にならないおそれがある。
【0015】
図10は、シールド板53により生じる残留磁束の影響がない場合の出力電圧Vuv1、Vvw1と、シールド板53により生じる残留磁束の影響がある場合の出力電圧Vuv1、Vvw1とを示す図である。
【0016】
残留磁束の影響がない場合、出力電圧Vuv1=αsin(ωt)、出力電圧Vvw1=αsin(ωt+β)となる。なお、αはコアレス電流センサ40の磁気特性を示し、βは出力電圧Vuv1、Vvw1の位相差を示している。
【0017】
一方、残留磁束の影響がある場合、出力電圧Vuv1に含まれるゲイン誤差をα1、出力電圧Vvw1に含まれるゲイン誤差をα2、出力電圧Vuv1に含まれる位相遅れをX、出力電圧Vvw1に含まれる位相誤差をYとすると、出力電圧Vuv1=α1sin(ωt+X)、出力電圧Vvw1=α2sin(ωt+β+Y)となる。
【0018】
このように、コアレス電流センサ40を使用する場合、シールド板53により生じる残留磁束の影響により出力電圧Vuv1、Vvw1が正確な値にならないおそれがある。そのため、電流算出部32で算出される交流電流Iu、Iv、Iwが正確な値にならず、最終的にモータ39を所望な指令電流id1、iq1で駆動することができなくなってしまう。
【0019】
そこで、本発明では、コアレス電流センサを用いた際の検出精度の悪化の影響を無くしてモータを正常に駆動させることが可能なインバータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決するために本発明では、以下のような構成を採用した。
すなわち、本発明のインバータ制御装置は、モータインバータからモータに流れる交流電流により発生する磁束を電圧に変換するコアレス電流センサの出力電圧に基づいて、前記モータインバータの動作を制御するインバータ制御装置であって、補正値が格納されるマップを備え、そのマップから取り出した補正値及び前記出力電圧に基づいて、前記コアレス電流センサが備えるシールド板により生じる残留磁束の影響が無い前記交流電流を算出する電流算出手段と、前記電流算出手段により算出された交流電流と、外部から入力される指令値とに基づいて、前記モータインバータの動作を制御する制御手段とを備える。前記コアレス電流センサは、前記モータインバータから前記モータに流れるU相、V相、W相の各交流電流がそれぞれ流れる各バスバーと、U相及びV相の各交流電流が流れる前記各バスバーの近傍で、前記磁束を電圧に変換して出力する第1のホール素子と、V相及びW相の各交流電流が流れる前記各バスバーの近傍で、前記磁束を電圧に変換して出力する第2のホール素子と、前記各バスパー並びに前記第1及び第2のホール素子が入り、外部からの磁束を遮蔽する前記シールド板とを備える。
【0021】
これにより、コアレス電流センサのシールド板により生じる残留磁束の影響が無い交流電流が制御手段に出力される。そのため、残留磁束の影響を無くしてモータインバータの動作を制御することができ、モータを正常に駆動させることができる。
【0022】
また、前記マップは、前記残留磁束の影響により前記出力電圧に含まれるゲイン誤差を補正するためのゲイン補正値と、前記残留磁束の影響により前記出力電圧に含まれる位相遅れを補正するための位相補正値とが格納されており、前記電流算出手段は、前記マップから前記ゲイン補正値及び前記位相補正値を取り出し、その取り出したゲイン補正値及び位相補正値に基づいて前記出力電圧を補正する補正手段と、前記補正手段により補正された補正出力電圧に基づいて、前記交流電流を算出する交流電流算出手段とを備えるように構成してもよい。
【0023】
また、前記補正手段は、前記モータに流すべき指令電流に基づいて、前記マップから前記ゲイン補正値及び前記位相補正値を取り出すように構成してもよい。
また、前記制御手段は、モータ位置センサにより検出される前記モータのロータの位置情報に基づいて前記ロータの回転速度を算出する位置速度算出手段を備え、前記電流算出手段は、複数の前記マップを備え、前記複数のマップのうち前記回転速度に対応するマップから取り出した補正値及び前記出力電圧に基づいて、前記残留磁束の影響が無い前記交流電流を算出するように構成してもよい。
【0024】
また、前記制御手段は、モータ位置センサにより検出される前記モータのロータの位置情報に基づいて前記ロータの現在の位置及び回転速度を算出する位置速度算出手段と、前記指令値と、前記回転速度と、前記モータのd軸方向に流すべきd軸指令電流及び前記モータのq軸方向に流すべきq軸指令電流とが対応付けられて格納される電流テーブルと、前記電流算出手段により算出された交流電流を前記ロータの現在の位置に基づいて前記モータのd軸方向に流れているd軸電流及び前記モータのq軸方向に流れているq軸電流に変換する電流変換手段と、前記電流テーブルから取り出されたd軸指令電流及びq軸指令電流並びに前記電流変換手段により変換されたd軸電流及びq軸電流に基づいてd軸指令電圧及びq軸指令電圧を出力する指令電圧出力手段と、前記指令電圧出力手段から出力されたd軸指令電圧及びq軸指令電圧を前記ロータの現在の位置に基づいて前記モータの各相にそれぞれ対応する指令電圧に変換する電圧変換手段と、前記電圧変換手段により変換される各指令電圧に基づいて前記モータインバータに備えられる複数のスイッチング素子をそれぞれオン、オフさせるための制御信号を生成する制御信号生成手段とを備えるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コアレス電流センサの出力電圧に基づいてモータインバータの動作を制御する際、コアレス電流センサの検出精度悪化の影響を無くしてモータを正常に駆動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のインバータ制御装置を示す図である。なお、図8に示す構成と同じ構成には同じ符号を付している。
【0027】
図1に示すインバータ制御装置1は、位置速度算出部31(位置速度算出手段)と、電流算出部2(電流算出手段)と、電流変換部33(電流変換手段)と、電流テーブル34と、指令電圧出力部35(指令電圧出力手段)と、電圧変換部36(電圧変換手段)と、制御信号生成部37(制御信号生成手段)とを備えて構成されている。
【0028】
電流算出部2は、補正部3(補正手段)と、交流電流算出部4(交流電流算出手段)とを備えて構成されている。
補正部3は、モータ39のロータの所定回転速度ω毎に、電流テーブル34から取り出される指令電流id1、iq1に対応する補正値が格納されるマップ5を備え、そのマップ5から取り出した補正値に基づいて、コアレス電流センサ40の出力電圧Vuv1、Vvw1を補正し、補正出力電圧Vuv、Vvwを出力する。
【0029】
交流電流算出部4は、補正部3から出力される補正出力電圧Vuv、Vvwに基づいて交流電流Iu、Iv、Iwを算出する。
図2(a)〜図2(d)は、それぞれ、マップ5に格納される指令電流id1、iq1と補正値との対応関係を示す図である。
【0030】
図2(a)では、30Hz、50Hz、100Hzの各所定回転速度ωにおける指令電流id1、iq1とゲイン補正値A1との対応関係が示されている。なお、実際には所定回転速度ωが30Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応するゲイン補正値A1とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−1と、所定回転速度ωが50Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応するゲイン補正値A1とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−2と、所定回転速度ωが100Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応するゲイン補正値A1とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−3とが補正部3に備えられており、補正出力電圧Vuvに残留磁束の影響によるゲイン誤差α1が含まれなくなるように、マップ5−1、マップ5−2、及びマップ5−3のそれぞれのゲイン補正値A1が実験的に求められているものとする。
【0031】
また、図2(b)では、30Hz、50Hz、100Hzの各所定回転速度ωにおける指令電流id1、iq1と位相補正値A2との対応関係が示されている。なお、実際には所定回転速度ωが30Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応する位相補正値A2とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−4と、所定回転速度ωが50Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応する位相補正値A2とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−5と、所定回転速度ωが100Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応する位相補正値A2とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−6とが補正部3に備えられており、補正出力電圧Vuvに残留磁束の影響による位相遅れXが含まれなくなるように、マップ5−4、マップ5−5、及びマップ5−6のそれぞれの位相補正値A2が実験的に求められているものとする。
【0032】
例えば、補正部3は、入力される回転速度ωが50Hzのとき、入力される指令電流id1、iq1に対応するゲイン補正値A1をマップ5−2から取り出すとともに、入力される指令電流id1、iq1に対応する位相補正値A2をマップ5−5から取り出した後、補正出力電圧Vuv=出力電圧Vuv1×ゲイン補正値A1+位相補正値A2を計算する。これにより、図3に示すように、出力電圧Vuv1(実線)は、残留磁束の影響によるゲイン誤差α1及び位相遅れXが含まれない補正出力電圧Vuv(破線)に補正される。
【0033】
また、図2(c)では、30Hz、50Hz、100Hzの各所定回転速度ωにおける指令電流id1、iq1とゲイン補正値B1との対応関係が示されている。なお、実際には所定回転速度ωが30Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応するゲイン補正値B1とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−7と、所定回転速度ωが50Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応するゲイン補正値B1とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−8と、所定回転速度ωが100Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応するゲイン補正値B1とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−9とが補正部3に備えられており、補正出力電圧Vvwに残留磁束の影響によるゲイン誤差α2が含まれなくなるように、マップ5−7、マップ5−8、及びマップ5−9のそれぞれのゲイン補正値B1が実験的に求められているものとする。
【0034】
また、図2(d)では、30Hz、50Hz、100Hzの各所定回転速度ωにおける指令電流id1、iq1と位相補正値B2との対応関係が示されている。なお、実際には所定回転速度ωが30Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応する位相補正値B2とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−10と、所定回転速度ωが50Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応する位相補正値B2とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−11と、所定回転速度ωが100Hzのときの指令電流id1、iq1とその指令電流id1、iq1に対応する位相補正値B2とがマトリクス状に並んで格納されるマップ5−12とが補正部3に備えられており、補正出力電圧Vvwに残留磁束の影響による位相遅れYが含まれなくなるように、マップ5−10、マップ5−11、及びマップ5−12のそれぞれの位相補正値B2が実験的に求められているものとする。
【0035】
例えば、補正部3は、入力される回転速度ωが50Hzのとき、入力される指令電流id1、iq1に対応するゲイン補正値B1をマップ5−8から取り出すとともに、入力される指令電流id1、iq1に対応する位相補正値B2をマップ5−11から取り出した後、出力電圧Vvw=出力電圧Vvw1×ゲイン補正値B1+位相補正値B2を計算する。これにより、出力電圧Vvw1は、出力電圧uv1と同様に、残留磁束の影響によるゲイン誤差α2及び位相遅れYが含まれない補正出力電圧Vvwに補正される。
【0036】
このように、補正部3は、マップ5−1〜5−12を備え、それらマップ5−1〜5−12を使って出力電圧Vuv1、Vvw1を残留磁束の影響によるゲイン誤差及び位相遅れが含まれない補正出力電圧Vuv、Vvwに補正する。なお、補正部3は、ある1つの回転速度ωにおけるマップ5のみを備え、そのマップ5のみを使用して補正出力電圧Vuv、Vvwを求める構成としてもよい。
【0037】
そして、電流算出部32は、補正部3から出力される補正出力電圧Vuv、Vvwに基づいて、モータ39のU相に流れる交流電流Iu、V相に流れる交流電流Iv、及びW相に流れる交流電流Iwを算出する。
【0038】
以降の動作は、図8に示すインバータ制御装置30の動作と同じであるため省略する。
このように、第1実施形態のインバータ制御装置1では、コアレス電流センサ40の出力電圧Vuv1、Vvw1を補正部3においてコアレス電流センサ40のシールド板53により生じる残留磁束の影響を無くした補正出力電圧Vuv、Vvwに補正しているので、残留磁束の影響を無くした交流電流Iu、Iv、Iwが電流変換部33に出力される。そのため、残留磁束の影響を無くしてモータインバータ41の動作を制御することができ、モータ39を正常に駆動させることができる。
【0039】
なお、上記第1実施形態のインバータ制御装置1では、補正部3において、指令電流id1、iq1に基づいて、ゲイン補正値A1、位相補正値A2、ゲイン補正値B1、及び位相補正値B2をマップ5から取り出す構成であるが、図4に示すように、補正部3において、電流変換部33で変換された電流id、iqに基づいて、ゲイン補正値A1、位相補正値A2、ゲイン補正値B1、及び位相補正値B2をマップ5から取り出す構成としてもよい。このように構成する場合、マップ5には所定回転速度ω毎に、電流id、iqに対応するゲイン補正値A1、位相補正値A2、ゲイン補正値B1、又は位相補正値B2を格納しておく。
【0040】
図5は、本発明の第2実施形態のインバータ制御装置を示す図である。なお、図8に示す構成と同じ構成には同じ符号を付している。
図5に示すインバータ制御装置6は、位置速度算出部31(位置速度算出手段)と、電流算出部7(電流算出手段)と、電流変換部33(電流変換手段)と、電流テーブル34と、指令電圧出力部35(指令電圧出力手段)と、電圧変換部36(電圧変換手段)と、制御信号生成部37(制御信号生成手段)とを備えて構成されている。
【0041】
電流算出部7は、モータ39の現在の位置θに対応する補正値が格納されるマップ8を備えており、コアレス電流センサ40の出力電圧Vuv1、Vvw1に基づいてモータ39の現在の位置θを求めた後、その位置θに対応する補正値をマップ8から取り出し、その取り出した補正値に基づいて、残留磁束の影響を無くした交流電流Iu、Iv、Iwを算出する。
【0042】
図6は、マップ8に格納される位置θと補正値との対応関係を示す図である。
図6は、交流電流Iuを算出するための位置θと補正値との対応関係が示されている。なお、実際には残留磁束の影響が無い交流電流Iuを出力電圧Vuv1で割った値を補正値とし、その補正値と、その補正値に対応する位置θとがマトリクス状に並ぶマップ8−1及び残留磁束の影響が無い交流電流Iuを出力電圧Ivw1で割った値を補正値とし、その補正値と、その補正値に対応する位置θとがマトリクス状に並ぶマップ8−2が電流算出部7に備えられている。同様に、残留磁束の影響が無い交流電流Ivを出力電圧Vuv1で割った値を補正値とし、その補正値と、その補正値に対応する位置θとがマトリクス状に並ぶマップ8−3、残留磁束の影響が無い交流電流Ivを出力電圧Ivw1で割った値を補正値とし、その補正値と、その補正値に対応する位置θとがマトリクス状に並ぶマップ8−4も電流算出部7に備えられている。
【0043】
電流算出部7は、出力電圧Vuv1、Vvw1に基づいて、位置θ=atan2(Vuv1、Vvw1)を求め、その求めた位置θに対応する補正値をマップ8−1〜8−6から取り出す。次に、電流算出部7は、交流電流Iu=出力電圧Vuv1(又は出力電圧Vvw1)×補正値、交流電流Iv=出力電圧Vuv1(又は出力電圧Vvw1)×補正値を求め、その求めた交流電流Iu、Ivに基づいて残りの交流電流Iwを求める。これにより、電流算出部7において残留磁束の影響が無い交流電流Iu、Iv、Iwが算出される。
【0044】
そして、電流変換部33は、電流算出部7で算出された交流電流Iu、Iv、Iwを電流id、iqに変換する。
以降の動作は、図8に示すインバータ制御装置30の動作と同じであるため省略する。
【0045】
このように、第2実施形態のインバータ制御装置6では、コアレス電流センサ40のシールド板53により生じる残留磁束の影響を無くした交流電流Iu、Iv、Iwが電流算出部7により算出される。そのため、残留磁束の影響を無くしてモータインバータ41の動作を制御することができ、モータ39を正常に駆動させることができる。
【0046】
なお、上記第2実施形態のインバータ制御装置6では、電流算出部7において、出力電圧Vuv1に対応する補正値が格納されるマップ8(マップ8−1、8−3)、又は、出力電圧Vvw1に対応する補正値が格納されるマップ8(8−2、8−4)のどちらか一方を使用して交流電流Iu、Iv、Iwを算出する構成であるが、電流算出部7において、位置θを求めた後、出力電圧Vuv1及び出力電圧Vvw1のうち絶対値が大きい方の出力電圧に対応するマップ8を使用して交流電流Iu、Iv、Iwを算出するように構成してもよい。
【0047】
図7は、このように構成する場合における電流算出部7の動作を説明するためのフローチャートである。
まず、電流算出部7は、出力電圧Vuv1、Vvw1に基づいて、位置θ=atan2(Vuv1、Vvw1)を計算する(ステップS1)。
【0048】
次に、電流算出部7は、出力電圧Vuv1の絶対値が出力電圧Vvw1よりも大きいか否かを判断する(ステップS2)。
出力電圧Vuv1の絶対値が出力電圧Vvw1よりも大きいと判断すると(ステップS2がYes)、電流算出部7は、ステップS1で計算した位置θに対応する補正値をマップ8−1から取り出し、その補正値と出力電圧Vuv1とを積算して交流電流Iuを求める(ステップS3)。
【0049】
次に、電流算出部7は、ステップS1で計算した位置θに対応する補正値をマップ8−3から取り出し、その補正値と出力電圧Vuv1とを積算して交流電流Ivを求める(ステップS4)。
【0050】
そして、電流算出部7は、ステップS3で求めた交流電流Iu及びステップS4で求めた交流電流Ivに基づいて交流電流Iwを算出する(ステップS5)。
一方、出力電圧Vuv1の絶対値が出力電圧Vvw1よりも大きくないと判断すると(ステップS2がNo)、電流算出部7は、ステップS1で計算した位置θに対応する補正値をマップ8−2から取り出し、その補正値と出力電圧Vvw1とを積算して交流電流Iuを求める(ステップS6)。
【0051】
次に、電流算出部7は、ステップS1で計算した位置θに対応する補正値をマップ8−4から取り出し、その補正値と出力電圧Vvw1とを積算して交流電流Ivを求める(ステップS7)。
【0052】
そして、電流算出部7は、ステップS6で求めた交流電流Iu及びステップS7で求めた交流電流Ivに基づいて交流電流Iwを算出する(ステップS5)。
このように、出力電圧Vuv1の絶対値が出力電圧Vvw1の絶対値よりも大きいとき、マップ8−1、8−3を使用する構成であるので、出力電圧Vvw1がゼロ付近のとき、補正値が無限大になってしまうマップ8−2やマップ8−4を使用しないように構成することができる。また、出力電圧Vuv1の絶対値が出力電圧Vvw1の絶対値よりも大きくないとき、マップ8−2、8−4を使用する構成であるので、出力電圧Vuv1がゼロ付近のとき、補正値が無限大になってしまうマップ8−1やマップ8−3を使用しないように構成することができる。これにより、電流算出部7における交流電流Iu、Iv、Iwの計算処理の負荷を軽くすることができる。
【0053】
また、上記第2実施形態のインバータ制御装置6では、モータインバータ41からモータ39に流れる交流電流Iu、Iv、Iwの周波数特性の影響による補正値の変動を考慮していないが、交流電流Iu、Iv、Iwの所定周波数毎に、マップ8−1〜8−6を用意しておき、電流算出部7において、位置速度算出部31で算出される回転速度ωに基づいて交流電流Iu、Iv、Iwのそれぞれの周波数を求め、その求めた周波数に対応するマップ8から位置θに対応する補正値を取り出し、その取り出した補正値に基づいて交流電流Iu、Iv、Iwを求めるように構成してもよい。このように構成することにより、交流電流Iu、Iv、Iwの周波数特性の影響も無くして交流電流Iu、Iv、Iwを求めることができるので、さらに精度良くモータインバータ41の動作を制御することができモータ39を正常に駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態のインバータ制御装置を示す図である。
【図2】マップに格納される指令電流id1、iq1と補正値との対応関係を示す図である。
【図3】出力電圧Vuv1と補正出力電圧Vuvを示す図である。
【図4】第1実施形態のインバータ制御装置の変形例を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態のインバータ制御装置を示す図である。
【図6】マップに格納される位置θと補正値との対応関係を示す図である。
【図7】第2実施形態のインバータ制御装置の変形例の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】従来のインバータ制御装置を示す図である。
【図9】コアレス電流センサを示す図である。
【図10】コアレス電流センサの出力電圧Vuv1、Vvw1を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 インバータ制御装置
2 電流算出部
3 補正部
4 交流電流算出部
5 マップ
6 インバータ制御装置
7 電流算出部
8 マップ
30 インバータ制御装置
31 位置速度算出部
32 電流算出部
33 電流変換部
34 電流テーブル
35 指令電圧出力部
36 電圧変換部
37 制御信号生成部
38 レゾルバ
39 モータ
40 コアレス電流センサ
41 モータインバータ
42〜47 スイッチング素子
48〜50 バスバー
51、52 ホール素子
53 シールド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータインバータからモータに流れる交流電流により発生する磁束を電圧に変換するコアレス電流センサの出力電圧に基づいて、前記モータインバータの動作を制御するインバータ制御装置であって、
補正値が格納されるマップを備え、そのマップから取り出した補正値及び前記出力電圧に基づいて、前記コアレス電流センサが備えるシールド板により生じる残留磁束の影響が無い前記交流電流を算出する電流算出手段と、
前記電流算出手段により算出された交流電流と、外部から入力される指令値とに基づいて、前記モータインバータの動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記コアレス電流センサは、
前記モータインバータから前記モータに流れるU相、V相、W相の各交流電流がそれぞれ流れる各バスバーと、
U相及びV相の各交流電流が流れる前記各バスバーの近傍で、前記磁束を電圧に変換して出力する第1のホール素子と、
V相及びW相の各交流電流が流れる前記各バスバーの近傍で、前記磁束を電圧に変換して出力する第2のホール素子と、
前記各バスパー並びに前記第1及び第2のホール素子が入り、外部からの磁束を遮蔽する前記シールド板と、
を備えることを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインバータ制御装置であって、
前記マップは、前記残留磁束の影響により前記出力電圧に含まれるゲイン誤差を補正するためのゲイン補正値と、前記残留磁束の影響により前記出力電圧に含まれる位相遅れを補正するための位相補正値とが格納されており、
前記電流算出手段は、
前記マップから前記ゲイン補正値及び前記位相補正値を取り出し、その取り出したゲイン補正値及び位相補正値に基づいて前記出力電圧を補正する補正手段と、
前記補正手段により補正された補正出力電圧に基づいて、前記交流電流を算出する交流電流算出手段と、
を備えることを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のインバータ制御装置であって、
前記補正手段は、前記モータに流すべき指令電流に基づいて、前記マップから前記ゲイン補正値及び前記位相補正値を取り出す
ことを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインバータ制御装置であって、
前記制御手段は、モータ位置センサにより検出される前記モータのロータの位置情報に基づいて前記ロータの回転速度を算出する位置速度算出手段を備え、
前記電流算出手段は、複数の前記マップを備え、前記複数のマップのうち前記回転速度に対応するマップから取り出した補正値及び前記出力電圧に基づいて、前記残留磁束の影響が無い前記交流電流を算出する
ことを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のインバータ制御装置であって、
前記制御手段は、
モータ位置センサにより検出される前記モータのロータの位置情報に基づいて前記ロータの現在の位置及び回転速度を算出する位置速度算出手段と、
前記指令値と、前記回転速度と、前記モータのd軸方向に流すべきd軸指令電流及び前記モータのq軸方向に流すべきq軸指令電流とが対応付けられて格納される電流テーブルと、
前記電流算出手段により算出された交流電流を前記ロータの現在の位置に基づいて前記モータのd軸方向に流れているd軸電流及び前記モータのq軸方向に流れているq軸電流に変換する電流変換手段と、
前記電流テーブルから取り出されたd軸指令電流及びq軸指令電流並びに前記電流変換手段により変換されたd軸電流及びq軸電流に基づいてd軸指令電圧及びq軸指令電圧を出力する指令電圧出力手段と、
前記指令電圧出力手段から出力されたd軸指令電圧及びq軸指令電圧を前記ロータの現在の位置に基づいて前記モータの各相にそれぞれ対応する指令電圧に変換する電圧変換手段と、
前記電圧変換手段により変換される各指令電圧に基づいて前記モータインバータに備えられる複数のスイッチング素子をそれぞれオン、オフさせるための制御信号を生成する制御信号生成手段と、
を備えることを特徴とするインバータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51871(P2013−51871A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229509(P2012−229509)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【分割の表示】特願2008−206230(P2008−206230)の分割
【原出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】