説明

インバータ及びそれを含む論理回路

【課題】インバータ及びそれを含む論理回路を提供する。
【解決手段】第1酸化物層をチャンネル層として有する空乏型の負荷トランジスタ、及び負荷トランジスタと連結され、第2酸化物層をチャンネル層として有する増加型の駆動トランジスタを有するインバータであって、第2酸化物層と、それに対応するソース電極及びドレイン電極との間に、第2酸化物層より仕事関数が大きなバリヤ層をさらに具備することを特徴とする。バリヤ層は、Ti酸化物層、Cu酸化物層、Ni酸化物層、TiドーピングされたNi酸化物層、ZnO系酸化物層、I族,II族及びV族元素のうち少なくとも一つがドーピングされたZnO系酸化物層、及びAgがドーピングされたZnO系酸化物層のうち一つである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子に係り、さらに詳細には、インバータ及びそれを含む論理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、不揮発性メモリ、液晶表示装置及び有機発光表示装置など多様な半導体集積回路で、NAND(not and)及びNOR回路のようなさまざまな論理回路が使われる。かような論理回路の基本になるのがインバータ(inverter)である。
【0003】
一般的に、シリコン(Si)基盤のインバータは、NMOS(N−channel Metal−Oxide Semiconductor)トランジスタとPMOS(P−channel Metal−Oxide Semiconductor)トランジスタとを共に具備するCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)インバータである。チャンネル層としてSi層を使用する場合、チャンネル層にドーピングする元素の種類を異ならせることによって、NMOSまたはPMOSトランジスタを容易に製造でき、従ってCMOSインバータの製造が容易である。例えば、Si層にボロン(B)のような3族元素をドーピングすればp−チャンネル層になる。
【0004】
ところで、酸化物半導体でチャンネル層を形成する場合、酸化物半導体の材料特性によってp−チャンネル層を具現し難い。すなわち、酸化物半導体で形成したチャンネル層は、ほとんどn−チャンネル層である。従って、酸化物半導体をチャンネル層として適用したトランジスタを利用する場合、n−チャンネルトランジスタとp−チャンネルトランジスタとをいずれも有するインバータの具現が容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酸化物半導体トランジスタを有するインバータ及びそれを含む論理回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例は、第1酸化物層をチャンネル層として有する空乏型負荷トランジスタと、前記負荷トランジスタと連結され、第2酸化物層をチャンネル層として有する増加型駆動トランジスタとを備えるインバータを提供する。
【0007】
前記第2酸化物層と、それに対応するソース電極及びドレイン電極との間に、前記第2酸化物層より仕事関数が大きなバリヤ層がさらに備わりうる。
【0008】
前記バリヤ層は、Ti酸化物層、Cu酸化物層、Ni酸化物層、TiドーピングされたNi酸化物層、ZnO系酸化物層、I族,II族及びV族元素のうち少なくとも一つがドーピングされたZnO系酸化物層、及びAgがドーピングされたZnO系酸化物層のうち一つでありうる。
【0009】
前記第1酸化物層と前記第2酸化物層は、同一層でありうる。
【0010】
前記第1酸化物層と前記第2酸化物層は、互いに異なるキャリア濃度を有することができる。
【0011】
前記第2チャンネル層のキャリア濃度は、前記第1チャンネル層のキャリア濃度より低くありうる。
【0012】
前記第1酸化物層の表面はプラズマ処理され、前記第2酸化物層より高い電気伝導度を有することができる。
【0013】
前記第1酸化物層の表面は、Arプラズマで処理されうる。
【0014】
前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のうち少なくとも1層は、ZnO系の物質を含むことができる。
【0015】
前記負荷トランジスタ及び前記駆動トランジスタのうち少なくとも一つは、ボトムゲート構造を有することができる。
【0016】
前記負荷トランジスタ及び前記駆動トランジスタのうち少なくとも一つは、トップゲート構造を有することができる。
【0017】
本発明の他の実施例は、前述の本発明の実施例によるインバータを有する論理回路を提供する。
【0018】
前記論理回路は、NAND回路、NOR回路、エンコーダ、デコーダ、マルチプレクサ、デマルチプレクサ及びセンスアンプのうち少なくとも一つを有することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施例によれば、酸化物半導体を使用し、優れた動作特性を有するE/D(Enhancement/Depletion)モード・インバータを実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例によるインバータの回路図である。
【図2】本発明の実施例によるインバータの断面図である。
【図3】本発明の実施例によるインバータの断面図である。
【図4】本発明の実施例によるインバータの断面図である。
【図5】本発明の実施例によるインバータの断面図である。
【図6】本発明の実施例によるインバータの断面図である。
【図7】本発明の実施例によるインバータの断面図である。
【図8】本発明の実施例によるインバータに含まれる負荷トランジスタのゲート電圧Vg−ドレイン電流Idの特性を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例によるインバータに含まれる駆動トランジスタのゲート電圧Vg−ドレイン電流Idの特性を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例によるインバータの入力電圧VI−出力電圧VO特性を示すグラフである。
【図11A】本発明の実施例によるインバータの製造方法を示す断面図である。
【図11B】本発明の実施例によるインバータの製造方法を示す断面図である。
【図11C】本発明の実施例によるインバータの製造方法を示す断面図である。
【図11D】本発明の実施例によるインバータの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例によるインバータ、インバータの製造方法及びインバータを有する論理回路について、添付された図面を参照しつつ詳細に説明する。添付された図面に図示された層や領域の幅及び厚さは、明細書の明確性のために多少誇張されて図示されている。詳細な説明全体にわたって同じ参照符号は、同じ構成要素を示す。
【0022】
図1は、本発明の一実施例によるインバータの回路図である。
【0023】
図1を参照すれば、負荷トランジスタT1と駆動トランジスタT2とが互いに連結されている。負荷トランジスタT1と駆動トランジスタT2は、いずれも酸化物半導体層をチャンネル層として有するトランジスタ、すなわち、酸化物半導体トランジスタである。負荷トランジスタT1は空乏型(depletion mode)トランジスタであり、駆動トランジスタT2は増加型(enhancement mode)トランジスタである。空乏型トランジスタは、ゲート電圧が0Vであるとき、実質的に無視できない電流以上の電流が流れる「オン(ON)」状態である。一方、増加型トランジスタは、ゲート電圧が0Vであるとき、「オフ(OFF)」状態である。従って、前記空乏型トランジスタのスレショルド電圧は0Vより小さく、前記増加型トランジスタのスレショルド電圧はOVより大きくありえる。
【0024】
電源VDDは、負荷トランジスタT1のドレイン電極に連結され、入力端子Vinは、駆動トランジスタT2のゲート電極に連結され、出力端子Voutは、負荷トランジスタT1のソース電極及び駆動トランジスタT2のドレイン電極の両方に連結されうる。一方、負荷トランジスタT1のゲート電極と駆動トランジスタT2のソース電極は、接地されうる。
【0025】
入力端子Vinに0Vの電圧を印加した状態、すなわち、駆動トランジスタT2がオフ(off)となる状態で、電源VDDを介してハイレベル(high level)の電源電圧を負荷トランジスタT1のドレイン電極に印加すれば、出力端子Voutでハイレベルの電圧が検出される。前記電源電圧VDDを負荷トランジスタT1のドレイン電極に続けて印加した状態で、入力端子Vinにスレショルド電圧以上の電圧を印加して駆動トランジスタT2をターンオンさせれば、ほとんどの電流が駆動トランジスタT2を介して接地に流れる。従って出力端子Voutでは、ローレベル(low level)の電圧が検出される。すなわち、前記電源電圧VDDが固定された状態で、入力端子Vinに印加する電圧によって、出力端子Voutで出力される電圧が変わりうる。
【0026】
図2は、本発明の一実施例によるインバータの断面図である。
【0027】
図2を参照すれば、基板SUB1上に、空乏型の負荷トランジスタT1aと増加型の駆動トランジスタT2aとが備わっている。負荷トランジスタT1aと駆動トランジスタT2aは、ボトムゲート構造を有する薄膜トランジスタでありうる。さらに詳細に説明すれば、基板SUB1上に、第1ゲート電極G1及び第2ゲート電極G2が離隔されて形成され、第1ゲート電極G1及び第2ゲート電極G2を覆うように、基板SUB1上にゲート絶縁層GI1が備わっている。第1ゲート電極G1上側のゲート絶縁層GI1上に、第1チャンネル層C1aが備わって、第2ゲート電極G2上側のゲート絶縁層GI1上に、第2チャンネル層C2aが備わっている。第1チャンネル層C1a及び第2チャンネル層C2aは、酸化物半導体、例えば、ZnO、InZnO、GaInZnO及びZnSnOのようなZnO系の酸化物半導体を含むことができ、Hf、Cr、Ta、Y、Ti及びZrのうち少なくとも一つをさらに含むことができる。第1チャンネル層C1a及び第2チャンネル層C2aは、同じ物質層でありうる。第2チャンネル層C2a上に、第2チャンネル層C2aより仕事関数が大きなバリヤ層B2が形成されうる。バリヤ層B2の物質は、第2チャンネル層C2aの物質によって変わりうるが、例えば、第2チャンネル層C2aより大きな仕事関数を有するZnO系酸化物層、Ti酸化物層、Cu酸化物層、Ni酸化物層、TiドーピングされたNi酸化物層、I族,II族及びV族元素のうち少なくとも一つがドーピングされたZnO系酸化物層、及びAgがドーピングされたZnO系酸化物層のうち一つでありうる。しかし、バリヤ層B2の物質は、それらに限定されるものではない。第2チャンネル層C2aとバリヤ層B2は、上方から見たときに、類似した形態を有することができる。以下では、第2チャンネル層C2aとバリヤ層B2とからなる二重層の構造物を積層構造物SS2とする。第1チャンネル層C1aと積層構造物SS2とを形成する方法について簡略に説明すれば、ゲート絶縁層GI1の一部上に単一層を形成し、他の一部上に二重層を形成した後、前記単一層と前記二重層とをパターニングし、前記単一層から第1チャンネル層C1aを、前記二重層から積層構造物SS2を得ることができる。または、ゲート絶縁層GI1の全面上に単一層を形成した後、前記単一層の一部領域を二重層構造に変化させた後、前記二重層構造に変化した領域と単一層構造として維持された領域とをパターニングし、積層構造物SS2と第1チャンネル層C1aとを形成できる。その場合、第1チャンネル層C1aと積層構造物SS2との厚さは、同一または類似している。ゲート絶縁層GI1上に、第1チャンネル層C1aの両端にそれぞれ接触する第1ソース電極S1及び第1ドレイン電極D1が備わっており、バリヤ層B2の両端にそれぞれ接触する第2ソース電極S2及び第2ドレイン電極D2が備わっている。第1ソース電極S1と第2ドレイン電極D2は互いに分離されているが、一体型に形成することも可能である。また、図示されていないが、ゲート絶縁層GI1上に、第1チャンネル層C1a、第1ソース電極S1、第1ドレイン電極D1、バリヤ層B2、第2ソース電極S2及び第2ドレイン電極D2を覆う保護層(passivation layer)がさらに備わりうる。
【0028】
第1ゲート電極G1、第1チャンネル層C1a、第1ソース電極S1及び第1ドレイン電極D1が負荷トランジスタT1aを構成でき、第2ゲート電極G2、第2チャンネル層C2a、バリヤ層B2、第2ソース電極S2及び第2ドレイン電極D2が駆動トランジスタT2aを構成できる。
【0029】
仕事関数が大きなバリヤ層B2が、第2チャンネル層C2aと第2ソース電極S2との間、及び第2チャンネル層C2aと第2ドレイン電極D2との間に介在されて(interposed)いるために、駆動トランジスタT2aのスレショルド電圧が負荷トランジスタT1aのスレショルド電圧より高く、従って駆動トランジスタT2aは増加型であって、負荷トランジスタT1aは空乏型でありうる。
【0030】
電源VDDは第1ドレイン電極D1に連結され、入力端子Vinは第2ゲート電極G2に連結され、出力端子Voutは第1ソース電極S1及び第2ドレイン電極D2の両方に連結されうる。一方、第1ゲート電極G1と第2ソース電極S2は、接地されうる。
【0031】
図3は、本発明の他の実施例によるインバータを示している。
【0032】
図3を参照すれば、駆動トランジスタT2bは図2のバリヤ層B2を含まず、第2ソース電極S2と第2ドレイン電極D2とが第2チャンネル層C2bの両端それぞれに直接接触している。この場合、第2チャンネル層C2bは、第1チャンネル層C1bと異なる組成及び異なるキャリア濃度を有することができる。一例として、第1チャンネル層C1bと第2チャンネル層C2bは、GaInZnO層となり、互いに異なるGaドーピング濃度及び/またはInドーピング濃度を有することができる。第2チャンネル層C2bのキャリア濃度が第1チャンネル層C1bのキャリア濃度より低いことが望ましい。かようなキャリア濃度の差に起因し、駆動トランジスタT2bのスレショルド電圧が負荷トランジスタT1bのスレショルド電圧より高く、従って駆動トランジスタT2bは増加型であり、負荷トランジスタT1bは空乏型でありうる。第1チャンネル層C1bと第2チャンネル層C2bは、GaInZnO層以外の他の酸化物半導体、例えば、ZnO、InZnO及びZnSnOのようなZnO系の酸化物半導体を含むことができ、Hf、Cr、Ta、Y、Ti及びZrのうち少なくとも一つをさらに含むことができる。図2及び図3で同じ参照符号は同じ構成要素を示すので、それらに係る反復説明は省略する。
【0033】
図4は、本発明のさらに他の実施例によるインバータを示している。
【0034】
図4を参照すれば、第1チャンネル層C1cは、その表面部に低抵抗領域R1を有することができる。低抵抗領域R1は、プラズマ、例えば、Arプラズマで処理された領域でありうる。Arプラズマで処理された領域は、多数の欠陥(defects)を有するが、前記欠陥がキャリアと共に作用しうる。従って、Arプラズマで処理された領域の電気抵抗は、そうではない領域の電気抵抗より低くありうる。第1チャンネル層C1cと第2チャンネル層C2cは、同一物質層から形成できる。すなわち、同じ酸化物半導体からなる第1層及び第2層を形成した後、前記第1層の表面のみ選択的にArプラズマで処理し、第1チャンネル層C1cを形成できる。Arプラズマ処理していない前記第2層が第2チャンネル層C2cでありうる。図4には、低抵抗領域R1が第1チャンネル層C1cの表面部全体にわたって存在すると図示されているが、第1チャンネル層C1cの表面部のうち一部にのみ存在することも可能である。第1チャンネル層C1cが低抵抗領域R1を有するために、第2チャンネル層C2cより低いスレショルド電圧を有する。従って、負荷トランジスタT1cは空乏型であり、駆動トランジスタT2cは増加型でありうる。図2及び図4で同じ参照符号は、同じ構成要素を示す。
【0035】
図2ないし図4では、図1の負荷トランジスタT1及び駆動トランジスタT2がボトムゲート構造を有する場合について図示したが、本発明のさらに他の実施例によれば、図1の負荷トランジスタT1及び駆動トランジスタT2は、トップゲート構造を有することができる。図2ないし図4の負荷トランジスタT1a,T1b,T1c及び駆動トランジスタT2a,T2b,T2cがトップゲート構造に変形された実施例が、図5ないし図7にそれぞれ図示されている。
【0036】
図5を参照すれば、基板SUB2上に、互いに離隔された第1チャンネル層C1a’及び第2チャンネル層C2a’が備わり、第2チャンネル層C2a’上にバリヤ層B2’が備わっている。第1チャンネル層C1a’及び第2チャンネル層C2a’及びバリヤ層B2’は、それぞれ図2の第1チャンネル層C1a及び第2チャンネル層C2a及びバリヤ層B2と対応しうる。従って、バリヤ層B2’の仕事関数は、第2チャンネル層C2a’の仕事関数より大きくありえる。基板SUB2上に、第1チャンネル層C1a’の両端にそれぞれ接触した第1ソース電極S1’及び第1ドレイン電極D1’が備わり、バリヤ層B2’及び第2チャンネル層C2a’の両端に接触した第2ソース電極S2’及び第2ドレイン電極D2’が備わっている。基板SUB2上に、第1チャンネル層C1a’、第1ソース電極S1’、第1ドレイン電極D1’、バリヤ層B2’、第2ソース電極S2’及び第2ドレイン電極D2’を覆うゲート絶縁層GI1’が備わっている。第1チャンネル層C1a’上側のゲート絶縁層GI1’上に、第1ゲート電極G1’が備わり、第2チャンネル層C2a’上側のゲート絶縁層GI1’上に、第2ゲート電極G2’が備わる。
【0037】
第1ゲート電極G1’、第1チャンネル層C1a’、第1ソース電極S1’及び第1ドレイン電極D1’が負荷トランジスタT1a’を構成し、第2ゲート電極G2’、第2チャンネル層C2a’、バリヤ層B2’、第2ソース電極S2’及び第2ドレイン電極D2’が駆動トランジスタT2a’を構成できる。負荷トランジスタT1a’は空乏型であり、駆動トランジスタT2a’は増加型でありうる。
【0038】
電源VDDは第1ドレイン電極D1’に連結され、入力端子Vinは第2ゲート電極G2’に連結され、出力端子Voutは第1ソース電極S1’及び第2ドレイン電極D2’の両方に連結されうる。一方、第1ゲート電極G1’と第2ソース電極S2’は、接地されうる。
【0039】
図2の構造が図5の構造に変形されたように、図3及び図4の構造は、それぞれ図6及び図7の構造に変形されうる。図6で、第1チャンネル層C1b’及び第2チャンネル層C2b’は、図3の第1チャンネル層C1b及び第2チャンネル層C2bに対応し、参照符号T1b’及びT2b’は、負荷トランジスタ及び駆動トランジスタを示す。一方、図7で、第1チャンネル層C1c’及び第2チャンネル層C2c’及び低抵抗領域R1’は、図4の第1チャンネル層C1c及び第2チャンネル層C2c及び低抵抗領域R1と対応し、参照符号T1c’及びT2c’は、負荷トランジスタ及び駆動トランジスタを示す。
【0040】
図8は、本発明の実施例によるインバータに含まれる負荷トランジスタのゲート電圧Vg−ドレイン電流Idの特性を示している。
【0041】
図8を参照すれば、ゲート電圧Vgが0Vであるとき、ハイレベルのオン電流(ON−current)が流れるので、本発明の実施例による負荷トランジスタは、空乏型であることが分かる。
【0042】
図9は、本発明の実施例によるインバータに備わる駆動トランジスタのゲート電圧Vg−ドレイン電流Idの特性を示している。
【0043】
図9を参照すれば、ゲート電圧Vgが0Vであるとき、ローレベルのオフ−電流(OFF−current)が流れるので、本発明の実施例による駆動トランジスタは、増加型であることが分かる。
【0044】
図10は、本発明の実施例によるインバータの入力電圧V−出力電圧V特性を示している。図10の結果を得るのに使用した電源電圧VDDは、10Vほどであった。ここで、入力電圧V及び電源電圧VDDは、それぞれ図1の入力端子Vin及び電源VDDに印加する電圧を示し、出力電圧Vは、図1の出力端子Voutで検出される電圧を示す。
【0045】
図10を参照すれば、入力電圧Vが0Vであるとき、出力電圧Vは、電源電圧VDDと類似したハイレベルであるが、入力電圧Vが4.5Vほど以上に増加することによって、出力電圧Vがほぼ0Vレベルに落ちることが分かる。これを介して、本発明の実施例によるインバータを利用すれば、Si基盤のCMOSインバータレベルのフルスウィング(full swing)特性を得ることができることが分かる。
【0046】
また、従来のSi基盤のCMOSインバータの場合、Si層に導電型不純物をイオン注入する工程が要求されるが、本発明の実施例によるインバータの場合、イオン注入工程なしに製造できるという長所がある。イオン注入工程は、製造費用を高める要因になり、製造工程を多少複雑にしうる。従って、本発明の実施例によれば、さらに単純であって廉価な工程で、従来のCMOSインバータレベルの特性を有するインバータを製造できる。
【0047】
以上で説明した本発明の実施例によるインバータは、多様な論理回路、例えば、NAND回路、NOR回路、エンコーダ、デコーダ、マルチプレクサ、デマルチプレクサ及びセンスアンプのような論理回路の基本素子として利用されうる。前記論理回路は、本発明の実施例による少なくとも1つのインバータを有することができる。前記論理回路の基本的な構造は周知であり、それらに係る詳細な説明は省略する。
【0048】
以下では、図11Aないし図11Dを参照しつつ、本発明の実施例によるインバータの製造方法について説明する。
【0049】
図11Aを参照すれば、基板SUB1上に、第1ゲート電極G1及び第2ゲート電極G2を形成し、第1ゲート電極G1及び第2ゲート電極G2を覆うゲート絶縁層GI1を形成する。次に、ゲート絶縁層GI1の全面上にチャンネル物質層C’を形成し、第2ゲート電極G2上側のチャンネル物質層C’上に、バリヤ物質層B’を形成する。バリヤ物質層B’は、チャンネル物質層C’より仕事関数が大きな物質層でありうる。チャンネル物質層C’は、酸化物半導体、例えば、ZnO、InZnO、GaInZnO及びZnSnOのようなZnO系の酸化物半導体を含んで形成でき、Hf、Cr、Ta、Y、Ti及びZrのうち少なくとも一つをさらに含むことができる。バリヤ物質層B’の物質は、チャンネル物質層C’の物質によって変わりうるが、例えば、チャンネル物質層C’より大きな仕事関数を有するZnO系酸化物層、Ti酸化物層、Cu酸化物層、Ni酸化物層、TiドーピングされたNi酸化物層、I族,II族及びV族元素のうち少なくとも一つがドーピングされたZnO系酸化物層、及びAgがドーピングされたZnO系酸化物層のうち一つで形成できる。しかし、前記以外の他の物質でバリヤ物質層B’を形成することもできる。
【0050】
バリヤ物質層B’とチャンネル物質層C’とをパターニングし、図11Bに図示されているように、第1ゲート電極G1上側に第1チャンネル層C1aを形成し、第2ゲート電極G2上側に第2チャンネル層C2aとバリヤ層B2とを形成する。第2チャンネル層C2bとバリヤ層B2は、積層構造物SS2を構成する。
【0051】
図11A及び図11Bでは、ゲート絶縁層GI1の一部上にチャンネル物質層C’を形成し、他の一部上にチャンネル物質層C’とバリヤ物質層B’との二重層を形成した後、前記チャンネル物質層C’とバリヤ物質層B’とをパターニングして第1チャンネル層C1a及び積層構造物SS2を形成した。しかし、本発明の他の実施例によれば、ゲート絶縁層GI1の全面上に単一層を形成した後、前記単一層の一部領域を二重層構造に変化させた後、前記二重層構造に変化された領域と単一層構造に維持された領域とをパターニングし、積層構造物SS2と第1チャンネル層C1aとを形成できる。
【0052】
図11Cを参照すれば、ゲート絶縁層GI1上に、第1チャンネル層C1aとバリヤ層B2とを覆うソース/ドレイン電極層M1を形成する。
【0053】
ソース/ドレイン電極層M1をパターニングし、図11Dに図示されているように、第1チャンネル層C1aの両端にそれぞれ接触する第1ソース電極S1及び第1ドレイン電極D1を形成し、バリヤ層B2の両端にそれぞれ接触する第2ソース電極S2及び第2ドレイン電極D2を形成する。第1ソース電極S1と第2ドレイン電極D2は、互いに分離されているが、一体型に形成することも可能である。
【0054】
図11Aないし図11Dは、図2の構造を製造する方法の一例である。図3及び図4の構造は、図11Aないし図11Dの方法を変形することによって製造できる。例えば、図3の構造を製造する方法は、単一チャンネル物質層を形成した後、前記単一チャンネル物質層の局部領域のキャリア濃度を変化させる段階を含んだり、または第1領域に第1チャンネル物質層を形成し、第2領域に前記第1チャンネル物質層とキャリア濃度が異なった第2チャンネル物質層を形成する段階を含むことができる。また、図4の構造を製造する方法は、単一チャンネル物質層を形成した後、前記単一チャンネル物質層の局部領域を、プラズマ、例えばArプラズマで処理する段階を含むことができる。
【0055】
一方、図5ないし図7の構造は、図2ないし図4の構造の製造方法をトップゲート薄膜トランジスタの製造方法に変形させることによって製造できる。
【0056】
前記の説明で多くの事項が具体的に記載されているが、それらは、発明の範囲を限定するものとするより、望ましい実施例の例示として解釈されるべきものである。例えば、本発明が属する技術分野で当業者ならば、図1ないし図7のインバータの構成要素及び構造は、それぞれ多様化及び変形が可能であるということが分かるであろうし、本発明の実施例によるインバータ及び論理回路は、液晶表示装置や有機発光表示装置分野だけではなく、メモリ素子及びその他の素子にも適用可能であるということが分かるであろう。よって、本発明の範囲は、前述の実施例によって定められるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想によって定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のインバータ及びそれを含む論理回路は、例えば、半導体集積回路関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
B’ バリヤ物質層
B2,B2’ バリヤ層
C’ チャンネル物質層
C1a,C1a’,C1b,C1b’,C1c,C1c’ 第1チャンネル層
C2a,C2a’,C2b,C2b’,C2c,C2c’ 第2チャンネル層
D1,D1’ 第1ドレイン電極
D2,D2’ 第2ドレイン電極
G1,G1’ 第1ゲート電極
G2,G2’ 第2ゲート電極
GI1,GI1’ ゲート絶縁層
Id ドレイン電圧
M1 ソース/ドレイン電極層
R1 低抵抗領域
S1,S1’ 第1ソース電極
S2,S2’ 第2ソース電極
SUB1,SUB2 基板
SS2 積層構造物
T1,T1a,T1a’,T1b,T1c,T1c’ 負荷トランジスタ
T2,T2a,T2a’,T2b,T2c,T2c’ 駆動トランジスタ
入力電圧
in 入力端子
出力電圧
out 出力端子
Vg ゲート電圧
VDD 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1酸化物層をチャンネル層として有する空乏型負荷トランジスタと、
前記負荷トランジスタと連結され、第2酸化物層をチャンネル層として有する増加型駆動トランジスタとを備えるインバータ。
【請求項2】
前記第2酸化物層と、それに対応するソース電極及びドレイン電極との間に、前記第2酸化物層より仕事関数が大きなバリヤ層をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のインバータ。
【請求項3】
前記バリヤ層は、Ti酸化物層、Cu酸化物層、Ni酸化物層、TiドーピングされたNi酸化物層、ZnO系酸化物層、I族,II族及びV族元素のうち少なくとも一つがドーピングされたZnO系酸化物層、及びAgがドーピングされたZnO系酸化物層のうち一つであることを特徴とする請求項2に記載のインバータ。
【請求項4】
前記第1酸化物層と前記第2酸化物層は、同一層であることを特徴とする請求項2に記載のインバータ。
【請求項5】
前記第1酸化物層と前記第2酸化物層は、互いに異なるキャリア濃度を有することを特徴とする請求項1に記載のインバータ。
【請求項6】
前記第2チャンネル層のキャリア濃度は、前記第1チャンネル層のキャリア濃度より低いことを特徴とする請求項5に記載のインバータ。
【請求項7】
前記第1酸化物層の表面はプラズマ処理され、前記第2酸化物層より高い電気伝導度を有することを特徴とする請求項1に記載のインバータ。
【請求項8】
前記第1酸化物層の表面は、Arプラズマで処理されたことを特徴とする請求項7に記載のインバータ。
【請求項9】
前記第1酸化物層及び前記第2酸化物層のうち少なくとも1層は、ZnO系の物質を含むことを特徴とする請求項1に記載のインバータ。
【請求項10】
前記負荷トランジスタ及び前記駆動トランジスタのうち少なくとも一つは、ボトムゲート構造を有する薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項1に記載のインバータ。
【請求項11】
前記負荷トランジスタ及び前記駆動トランジスタのうち少なくとも一つは、トップゲート構造を有する薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項1に記載のインバータ。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のうちいずれか1項に記載のインバータを含む論理回路。
【請求項13】
前記論理回路は、NAND回路、NOR回路、エンコーダ、デコーダ、マルチプレクサ、デマルチプレクサ及びセンスアンプのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項12に記載の論理回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【公開番号】特開2009−246362(P2009−246362A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70507(P2009−70507)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】