説明

ウエハ保護シートおよびその製造方法と輸送容器

【課題】ダイシングウエハ上のウエハ保護シートの挿入時にダイシングウエハ表面に傷を付けることなく挿入する。
【解決手段】ウエハ保護シート1の挿入時に、その端部が曲線状に加工されたウエハ保護シート1を用いる。これにより、挿入時にウエハ保護シート1の外周部がダイシングウエハ2の表面を擦った場合でも、端部はダイシングウエハ2の表面の凸部に引っ掛からないためダイシングウエハ2の表面に傷を発生させることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハのダイシング工程において、ダイシングフレームにダイシングフィルムを介して支持された状態の半導体ウエハ(以下、ダイシングウエハという)を複数枚まとめて搬送する際などに使用するダイシングウエハ収納構造に関し、詳しくは、ダイシングウエハの収納、取り出し等の作業に好適なウエハ保護シートおよびその製造方法と輸送容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、シリコンなどの半導体インゴットからワイヤーソー等によりスライスされた半導体ウエハ(ダイシングウエハ)は、両面が平面研削された後、少なくとも片側の表面が鏡面にポリッシング加工され、その表面に回路パターンが形成される。そして、このダイシングウエハは、ダイシング工程において、ダイシングフレームにダイシングフィルムを介して支持された状態で多数のチップにダイシングされる。
【0003】
ここで、ダイシングフレームにダイシングフィルムを介して支持された状態のダイシングウエハを収納するには、例えば特許文献1に記載のような専用の収納容器に複数枚積み重ねて収納され、この状態で輸送、保管される。
【0004】
従来の収納構造について、図13(a)〜(f)を用いて詳しく説明する。図13(f)に示すように、この輸送容器21は、容器本体22と、蓋体23と、容器本体22に蓋体23が覆われた(被せられた)状態で、蓋体23を容器本体22に保持(固定)するための固定具24とから構成されている。なお、この固定具24は側面視がコの字形状に形成されたもので、容器本体22と蓋体23の周囲に複数箇所(例えば、2〜4箇所)に設けられて両者を上下から一体的に把持するものである。
【0005】
前記の容器本体22は、円形の底板(支持板でもある)31と、この底板31の上面の左右にそれぞれ所定高さでもって立設された平面視が円弧状の保持部材(位置決め部材ともいえる)32とから構成されている(図13(a),(b)参照)。これら両保持部材32の内側に、複数個のダイシングウエハ2が積層して収納されるよう形成にされている。
【0006】
また、蓋体23は、円形の蓋板35と、この蓋板35の下面に設けられて前述した左右の保持部材32を外側から、かつ全周囲に亘って囲うように形成された円筒状の側壁部材36とから構成されている(図13(e)参照)。なお、この側壁部材36は、容器本体22の保持部材32と略同一高さにされている。
【0007】
図13(c),(d)に示すように、ダイシングフレーム4は、例えば厚さが1〜3mm程度のステンレス鋼鈑を円環状に打ち抜き加工したものであり、その内径は、公称5インチ,6インチ,8インチ,12インチのダイシングウエハ2を内側に嵌合できる寸法に設定されている。
【0008】
また、ダイシングフィルム3は、ダイシングフレーム4の下面に張設されており、ダイシングフレーム4の内側に嵌合される未加工のダイシングウエハ2に接合してこれを支持する。このダイシングウエハ2は、両面が平面研削された後、少なくとも片側の表面が鏡面にポリッシング加工され、その表面に回路パターンが形成されたものであり、裏面を前記ダイシングフィルム3に接合してダイシングフレーム4の内側に固定される。
【0009】
次に、輸送容器21にダイシングウエハ2を収納する方法について、図13(a)〜(f)に基づき説明する。まず、図13(a),(b)に示すように、空状態の容器本体22を準備し、そして、図13(c),(d)に示すように、その底板31の上面(容器内底面である)にポリエチレンフォームなどで構成された円形の下部クッション材41をチップ割れ防止用として配置した後、ダイシングウエハ2を、その表面が上側となるように、両保持部材32,32同士間に収納する。さらに、ウエハ保護シート71をダイシングウエハ2の上に載せる。これを繰り返し、ウエハ保護シート71をダイシングウエハ2間に挟みサンドイッチ状態にして、所定数のダイシングウエハ2を積み重ねて収納する。
【0010】
次に、図13(e)に示すように、積層された最上部のウエハ保護シート71の上面に円形の上部クッション材42を配置した後、蓋体23で積層されたダイシングウエハ2の全体を覆う(蓋体を被せる)。もちろん、蓋体23は、その側壁部材36が両保持部材32の外周を覆うように配置される。
【0011】
次に、図13(f)に示すように、複数個の固定具24により、蓋体23を容器本体22に対して固定する(把持させる)。
【0012】
ウエハ保護シートの役割は、ダイシングフィルム裏面に付着したダストがダイシングウエハ表面への付着を防止する役割をしており、一般的には、一度の使用で使い捨てである。
【特許文献1】特開2002−240883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このような従来の収納構造においては、積層されたダイシングウエハ2間で、その上部を覆うウエハ保護シート71は、通常、合成樹脂フィルムにより形成され、一般に厚さ100μmから300μmの円形のシート状となっており、剛性がなく、ウエハ保護シート71の一部(図14(a),(b)に示す破線囲み部X)を片手で持ち上げると、支持されていない外周部が垂れ下がる。そのため、ウエハ保護シート71をダイシングウエハ2の上に載せるときには、ダイシングウエハ2の表面上を滑らすように移動させる。そのため、ウエハ保護シート71の外周部がダイシングウエハ2の表面を擦ることとなる。ウエハ保護シート71は、カッターや円形に形成された打ち抜き刃物により裁断されるため、図15(a),(b)に示すように端部は鋭利な角が形成されている。そのため、ウエハ保護シート71の外周部がダイシングウエハ2の表面を擦ると、図16に示すように、鋭利な角がダイシングウエハ2の表面に形成された凸部に引っ掛かり、その凸部を破壊させてしまうという問題があった。
【0014】
また、図17(a)に示すように、ウエハ保護シート71を両手で取り扱う場合には、外周部が垂れ下がらないように両手でウエハ保護シート71の破線囲み部Wの2箇所を持ち上げて、ウエハ保護シート71の中心が下に凸となるようにした後に、ダイシングウエハ2の中央ラインにウエハ保護シート71の中央ラインを接触した後に、両手を斜め下に下げ、順次ウエハ保護シート71を下ろしていけば、片手で扱ったような外周部の接触はなくなる。しかし、その両手で持ち上げるときに、両手間の距離が離れる方向に変化すると、両手間にあるウエハ保護シート71に張力がかかり、図17(b)に示すように支持されていない外周部が垂れ下がってしまうため、両手間の距離を微妙に調節しなければならない。
【0015】
本発明は、前記従来技術の問題を解決することに指向するものであり、ウエハ保護シートの挿入時にダイシングウエハ表面に傷を付けず、また外周部が垂れ下がることがなく、ダイシングウエハ表面とウエハ保護シートの外周部とが接触することなく挿入できるウエハ保護シートおよびその製造方法と輸送容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載したウエハ保護シートは、ダイシングフレームにダイシングフィルムを介して支持されたダイシングウエハと、複数枚重ねたダイシングウエハの上下両端部に配置したクッション材とを収納する輸送容器で用いるダイシングウエハ間に介在したウエハ保護シートであって、ウエハ保護シートの端部を滑らかな曲線状としたことにより、ウエハ保護シートをダイシングウエハ表面上に載せるため挿入する際に、ウエハ保護シート端部がダイシングウエハ表面を擦っても、ダイシングウエハ表面に傷を発生させることなく挿入できる。
【0017】
また、請求項2に記載したウエハ保護シートは、ダイシングフレームにダイシングフィルムを介して支持されたダイシングウエハと、複数枚重ねたダイシングウエハの上下両端部に配置したクッション材とを収納する輸送容器で用いるダイシングウエハ間に介在したウエハ保護シートであって、ウエハ保護シートの外周部の一部を、円周方向に沿って直径の両端を残して切り込みを入れたことにより、切り込みにより切り離された外周部の一部を持ち上げることで、ウエハ保護シートの中心部が垂れ下がり、ウエハ保護シートの外周部の垂れ下がりがなくダイシングウエハ表面に傷を発生させることなく挿入できる。
【0018】
また、請求項3に記載したウエハ保護シートの製造方法は、ウエハ保護シート材料を電熱線を取り付けた打ち抜き刃で円周状に外周部をくり抜き、くり抜いた直後に電熱線で打ち抜き刃を加熱することでウエハ保護シートの外周部の端部を溶融して滑らかな曲線状に加工することにより、簡単に端部を曲線状にすることができる。
【0019】
また、請求項4に記載したウエハ保護シートの製造方法は、ウエハ保護シート材料を円周打ち抜き刃で円周状に外周部をくり抜くと同時に、円周打ち抜き刃に沿った内側に取り付けた切り込み刃でウエハ保護シートの外周部の一部を、円周方向に沿って直径の両端を残して切り込みを入れて加工することにより、切り込みで切り離された外周部の一部を持ち上げると中心部が垂れ下がり、外周部の垂れ下がりが生じないウエハ保護シートができる。
【0020】
また、請求項5に記載した輸送容器は、ダイシングフレームにダイシングフィルムを介して支持されたダイシングウエハと、複数枚重ねたダイシングウエハ間に介在したウエハ保護シートと、複数枚重ねたダイシングウエハの上下両端部に配置したクッション材とを収納する輸送容器であって、ダイシングウエハの上部に可動な2枚のシャッターを備え、シャッターの上に載せたウエハ保護シートを滑らせて、ダイシングウエハの上に載せることにより、ウエハ保護シートを、シャッターを開くことでウエハ保護シートの外周部をほぼ水平に落下させて、外周部がダイシングウエハ表面に接触することなく載せることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ウエハ保護シートの挿入時にダイシングウエハ表面に傷を付けることなく、また外周部がダイシングウエハ表面と接触することなくダイシングウエハ上に載せるウエハ保護シートの挿入をすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
図1(a),(b)は本発明の実施形態1におけるウエハ保護シートを示す図、図2はウエハ保護シートとダイシングウエハ表面との接触している状態を示す図、図3(a),(b)と図4(a)〜(d)はウエハ保護シートを作製する治具、およびウエハ保護シートの作製方法を示す図、また図5(a)〜(f)はウエハ保護シートを用いたダイシングウエハの収納方法を示す図である。
【0024】
本実施形態1のウエハ保護シート1は図1に示すように、円形形状であり、外周部の端部の断面が滑らかな曲線となっていることが特徴となっている。
【0025】
ここで、ウエハ保護シート1の端部を曲線状に加工する製造方法について説明する。本実施形態1のウエハ保護シート1を作製するため、合成樹脂フィルム8の材料としては、高密度ポリエチレン等がある。合成樹脂フィルム8からウエハ保護シート1を切り抜くために使用する打ち抜き刃5には電熱線6が取り付けられている(図3(a),(b)参照)。
【0026】
また、図4(a)〜(d)に、合成樹脂フィルム8からウエハ保護シート1を切り抜く工程を示す。打ち抜き治具7を打ち抜き装置(図示せず)に装着し(図4(a))、打ち抜き台9上に複数枚重ねられた合成樹脂フィルム8の上面から打ち抜き刃5を下降することにより(図4(b))、合成樹脂フィルム8から、ウエハ保護シート1が円周状にくり抜かれる。
【0027】
そして、従来は、そのまま、打ち抜き刃5は上昇して作業を終了するが、本実施形態1においては、打ち抜き刃5を上昇する前に電熱線6に電流を流し打ち抜き刃5を加熱する。加熱された打ち抜き刃5は、打ち抜き刃5に接しているウエハ保護シート1の外周部の端部を溶融させるため、従来、打ち抜かれたままでは鋭角になっている端部が、曲線状に滑らかとなる(図4(c))。
【0028】
その後、電熱線6の電流を停止し、打ち抜き刃5の温度が低下してから打ち抜き刃5を上昇させる(図4(d))。この製造方法により、一連の打ち抜き工程中にウエハ保護シート1の端部を曲線状に加工ができ、薬品などを使って端部を溶かし曲線状にする方法などに比べて、製造時間が短縮できる。
【0029】
次に、前述のように作製されたウエハ保護シート1を用いたダイシングウエハ2の収納方法について、図5(a)〜(f)を用いて説明する。
【0030】
図5(a)〜(f)に示すように、この輸送容器21は、容器本体22と、蓋体23と、容器本体22に蓋体23が覆われた(被せられた)状態で、蓋体23を容器本体22に保持(固定)するための固定具24とから構成されている。なお、この固定具24は側面視がコの字形状にされたもので、容器本体22と蓋体23の周囲に複数箇所(例えば、2〜4箇所)に設けられて両者を上下から一体的に把持するものである。
【0031】
前述の容器本体22は、円形の底板(支持板でもある)31と、この底板31の上面の左右にそれぞれ所定高さでもって立設された平面視が円弧状の保持部材(位置決め部材ともいえる)32とから構成されている。これら両保持部材32の内側に、複数個のダイシングウエハ2が積層して収納されるように構成されている。
【0032】
また、蓋体23は、円形の蓋板35と、この蓋板35の下面に設けられて前記左右の保持部材32を外側から、かつ全周囲に亘って囲うようにされた円筒状の側壁部材36とから構成されている。なお、この側壁部材36は、容器本体22の保持部材32と略同一高さにされている。
【0033】
ダイシングフレーム4は、例えば厚さが1〜3mm程度のステンレス鋼鈑を円環状に打ち抜き加工したものであり、その内径は、公称5インチ,6インチ,8インチ,12インチのウエハを内側に嵌合できる寸法に設定されている。
【0034】
前記ダイシングフィルム3は、ダイシングフレーム4の下面に張設されており、ダイシングフレーム4の内側に嵌合される未加工のダイシングウエハ2に接合してこれを支持する。このダイシングウエハ2は、両面が平面研削された後、少なくとも片側の表面が鏡面にポリッシング加工され、その表面に回路パターンが形成されたものであり、裏面をダイシングフィルム3に接合してダイシングフレーム4の内側に固定される。
【0035】
次に、輸送容器21内にダイシングウエハ2を収納する方法について、図5(a)〜(f)に基づき説明する。まず、図5(a),(b)に示すように、空状態の容器本体22を準備し、そして、図5(c),(d)に示すように、その底板31の上面(容器内底面である)にポリエチレンフォームなどで構成された円形の下部クッション材41をチップ割れ防止用として配置した後、ダイシングウエハ2を、その表面が上側となるように、両保持部材32,32同士間に収納する。さらに、端部が曲線状に加工されたウエハ保護シート1をダイシングウエハ2の上に載せる。これを繰り返し、ウエハ保護シート1をダイシングウエハ2間に挟みサンドイッチ状態にして、所定数のダイシングウエハ2を積み重ねて収納する。
【0036】
次に、図5(e)に示すように、積層された最上部のウエハ保護シート1の上面に円形の上部クッション材42を配置した後、蓋体23で積層されたダイシングウエハ2の全体を覆う(蓋体を被せる)。もちろん、蓋体23は、その側壁部材36が両保持部材32の外周を覆うように配置される。
【0037】
次に、図5(f)に示すように、複数個の固定具24により、蓋体23を容器本体22に対して固定する(把持させる)。
【0038】
このように、端部が曲線状に加工されたウエハ保護シート1を用いているので、図2に示すように、ウエハ保護シート1の外周部がダイシングウエハ2の表面を擦った場合でも、端部はダイシングウエハ2の表面の凸部に引っ掛からないためダイシングウエハ2の表面に傷を発生させることがない。
【0039】
図6(a),(b)は本発明の実施形態2におけるウエハ保護シートを示す図である。図6(a)に示すようにウエハ保護シート13は、円形形状であり、外周部の一部を、円周方向に沿って直径の両端を残して切り込み14を入れた状態となっていることが特徴となっている。
【0040】
ここで、ウエハ保護シート13の外周部の一部を、円周方向に沿って直径の両端を残して切り込み14を入れた状態に加工する製造方法について説明する。
【0041】
本実施形態2におけるウエハ保護シート13を作製するための合成樹脂フィルム8の材料としては、高密度ポリエチレン等がある。合成樹脂フィルム8からウエハ保護シート13を切り抜くために使用する打ち抜き治具12には、ウエハ保護シートの円周に位置する場所に円周打ち抜き刃10を設置すると共に、その円周打ち抜き刃10に沿って、5mm〜10mm内側に、切り込み刃11を設置する(図7(a),(b)参照)。
【0042】
また、図8(a)〜(c)に、合成樹脂フィルム8からウエハ保護シート13を切り抜く工程を示す。打ち抜き治具12を打ち抜き装置(図示せず)に装着し(図8(a))、打ち抜き台9上に複数枚重ねられた合成樹脂フィルム8の上面から打ち抜き治具12を下降(図8(b))、上昇する(図8(c))ことにより、合成樹脂フィルム8から、ウエハ保護シート13が円周状にくり抜かれるとともに、外周部の一部を、円周方向に沿って直径の両端を残して切り込み14を入れた状態となる。
【0043】
このウエハ保護シート13の切り込み14により切り離された外周部の一部(図6(a)に示す破線囲み部Z)を持ち上げると、支持されていないウエハ保護シート13の中心部が必ず垂れ下がる。図6に示すウエハ保護シート13を示す矢印C方向からの側面視が図9(a)、同様に矢印D方向からの側面視が図9(b)である。また、図10(a),(b)に示すように、ダイシングウエハ2上にウエハ保護シート13を載せるため挿入するときに、両手間の距離を微妙に調節する必要がなくなり、ウエハ保護シート13の外周部の垂れ下がりは起こらないためダイシングウエハ2の表面に傷を発生させることがない。
【0044】
また、本実施形態2において、前述の実施形態1で説明した打ち抜き治具7のように、抜き打ち治具12においても電熱線6を設けても良く、これにより、ダイシングウエハ2の表面に傷を発生させることがなくなる。
【0045】
図11(a),(b)は本発明の実施形態3におけるダイシングウエハの輸送容器を示す図である。図11(a),(b)に示すように、この輸送容器51は、容器本体52と、蓋体53と、容器本体52に蓋体53が覆われた(被せられた)状態で、蓋体53を容器本体52に保持(固定)するための固定具24とから構成されている。なお、この固定具24は側面視がコの字形状にされたもので、容器本体52と蓋体53の周囲に複数箇所(例えば、2〜4箇所)に設けられて両者を上下から一体的に把持するものである。
【0046】
前記の容器本体52は、円形の底板(支持板でもある)61と、この底板61の上面の左右にそれぞれ所定高さでもって立設された平面視が円弧状の保持部材(位置決め部材ともいえる)62とから構成されている。これら両保持部材62の内側に、複数個のダイシングウエハ2が積層して収納されるようにされている。
【0047】
また、蓋体53は、円形の蓋板65と、この蓋板65の下面に設けられて前述した左右の保持部材62を外側から、かつ全周囲に亘って囲うようにされた円筒状の側壁部材66とから構成されている。なお、この側壁部材66は、容器本体52の保持部材62と略同一高さにされている。
【0048】
容器本体52の保持部材62には、切り込み部62aが形成され、そこを通る2枚のシャッター67が具備されている。2枚のシャッター67は円弧状であり、回転軸67aを中心に回転する。また切り込み部62aは、各シャッター67が通る分だけあればよく、破線囲み部Yのように切り込みがない部分がある。
【0049】
次に、輸送容器51にダイシングウエハ2を収納する方法について、図12−1(a)〜(f)、図12−2(g)〜(l)、図12−3(m),(n)に基づき説明する。まず、図12−1(a),(b)に示すように、空状態の容器本体52を準備し、シャッター67を開けた状態にする。そして、図12−1(c),(d)に示すように、その底板61の上面(容器内底面である)にポリエチレンフォームなどで構成された円形の下部クッション材41をチップ割れ防止用として配置した後、ダイシングウエハ2を、その表面が上側となるように、両保持部材62,62同士間に収納する。さらに、図12−1(e),(f)に示すように、シャッター67を閉じ、図12−2(g),(h)に示すように、ウエハ保護シート71をシャッター67の上に載せる。
【0050】
その後、図12−2(i),(j)に示すように、2枚のシャッター67を開けていくと、破線囲み部Yのように切り込みがない部分でウエハ保護シート71が止められ、その後はシャッター67とウエハ保護シート71との界面でウエハ保護シート71が滑っていく。そして、ウエハ保護シート71が止められた破線囲み部Yの反対側から、ウエハ保護シート71がダイシングフレーム4上に滑り落ち、最終的にシャッター67が全て開いたときには、図12−2(k),(l)に示すようにウエハ保護シート71は、ダイシングウエハ2上に載った状態となる。
【0051】
これを繰り返し、ウエハ保護シート71をダイシングウエハ2間に挟みサンドイッチ状態にして、所定数のダイシングウエハ2を積み重ねて収納する。
【0052】
次に、図12−3(m)に示すように、積層された最上部のウエハ保護シート71の上面に円形の上部クッション材42を配置した後、蓋体53でダイシングウエハ2の全体を覆う(蓋体を被せる)。もちろん、蓋体53は、その側壁部材66が両保持部材62の外周を覆うように配置される。
【0053】
次に、図12−3(n)に示すように、複数個の固定具24により、蓋体53を容器本体52に対して固定する(把持させる)。
【0054】
このように、ダイシングウエハ2の表面に傷を発生させることなくウエハ保護シート71を挿入できるシャッター67を具備している輸送容器51を使うことにより、ウエハ保護シート71の外周部がダイシングウエハ2の表面を擦ることを防ぐことができ、ダイシングウエハ2の表面に傷を発生させることがない。
【0055】
本実施形態3において、従来と同様の形状のウエハ保護シート71を用いて説明したが、前述の実施形態1において説明したウエハ保護シート1を用いても良く、この場合には、さらにダイシングウエハ2の表面に傷を発生させることがなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るウエハ保護シートおよびその製造方法、輸送容器は、ウエハ保護シートの挿入時にダイシングウエハ表面に傷を付けることなく、また外周部がダイシングウエハ表面と接触することなくダイシングウエハ上に載せるウエハ保護シートの挿入をすることができ、ダイシングウエハの収納、取り出し等の作業に好適な複数枚まとめて搬送する際などに使用するダイシングウエハ収納構造として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態1におけるウエハ保護シートを示す(a)は平面図、(b)は断面図
【図2】ウエハ保護シートとダイシングウエハ表面の接触状態を示す図
【図3】ウエハ保護シートを作製する治具を示す(a)は平面図、(b)は断面図
【図4】(a)〜(d)はウエハ保護シートの作製方法を示す図
【図5】(a)〜(f)は輸送容器内にダイシングウエハを収納する方法を示す図
【図6】本発明の実施形態2におけるウエハ保護シートを示す(a)は平面図、(b)は断面図
【図7】ウエハ保護シートを作製する治具を示す(a)は平面図、(b)は断面図
【図8】(a)〜(c)はウエハ保護シートの作製方法を示す図
【図9】図6(a)の破線囲み部Zを持ち上げたときウエハ保護シートの(a)はC方向、(b)はD方向の側面視を示す図
【図10】ダイシングウエハ上のウエハ保護シート挿入時を示す(a)は平面図、(b)は側面図
【図11】本発明の実施形態3におけるダイシングウエハの輸送容器を示す(a)は側面図、(b)は平面図
【図12−1】(a)〜(f)は輸送容器内にダイシングウエハを収納する方法を示す図
【図12−2】(g)〜(l)は輸送容器内にダイシングウエハを収納する方法を示す図
【図12−3】(m),(n)は輸送容器内にダイシングウエハを収納する方法を示す図
【図13】従来の(a)〜(f)は輸送容器内にダイシングウエハを収納する方法を示す図
【図14】ダイシングウエハ上のウエハ保護シート挿入時を示す(a)は平面図、(b)は側面図
【図15】ウエハ保護シートを示す(a)は平面図、(b)は断面図
【図16】ウエハ保護シートとダイシングウエハ表面の接触状態を示す図
【図17】ダイシングウエハ上のウエハ保護シート挿入時を示す別の例で(a)は平面図、(b)は側面図
【符号の説明】
【0058】
1,13,71 ウエハ保護シート
2 ダイシングウエハ
3 ダイシングフィルム
4 ダイシングフレーム
5 打ち抜き刃
6 電熱線
7,12 打ち抜き治具
8 合成樹脂フィルム
9 打ち抜き台
10 円周打ち抜き刃
11 切り込み刃
14 切り込み
21,51 輸送容器
22,52 容器本体
23,53 蓋体
24 固定具
31,61 底板
32,62 保持部材
35,65 蓋板
36,66 側壁部材
41 下部クッション材
42 上部クッション材
62a 切り込み部
67 シャッター
67a 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングフレームにダイシングフィルムを介して支持されたダイシングウエハと、複数枚重ねた前記ダイシングウエハの上下両端部に配置したクッション材とを収納する輸送容器で用いる前記ダイシングウエハ間に介在したウエハ保護シートであって、
前記ウエハ保護シートの端部を滑らかな曲線状としたことを特徴とするウエハ保護シート。
【請求項2】
ダイシングフレームにダイシングフィルムを介して支持されたダイシングウエハと、複数枚重ねた前記ダイシングウエハの上下両端部に配置したクッション材とを収納する輸送容器で用いる前記ダイシングウエハ間に介在したウエハ保護シートであって、
前記ウエハ保護シートの外周部の一部を、円周方向に沿って直径の両端を残して切り込みを入れたことを特徴とするウエハ保護シート。
【請求項3】
ウエハ保護シート材料を電熱線を取り付けた打ち抜き刃で円周状に外周部をくり抜き、くり抜いた直後に前記電熱線で前記打ち抜き刃を加熱することでウエハ保護シートの外周部の端部を溶融して滑らかな曲線状に加工することを特徴とするウエハ保護シートの製造方法。
【請求項4】
ウエハ保護シート材料を円周打ち抜き刃で円周状に外周部をくり抜くと同時に、前記円周打ち抜き刃に沿った内側に取り付けた切り込み刃で前記ウエハ保護シートの外周部の一部を、円周方向に沿って直径の両端を残して切り込みを入れて加工することを特徴とするウエハ保護シートの製造方法。
【請求項5】
ダイシングフレームにダイシングフィルムを介して支持されたダイシングウエハと、複数枚重ねた前記ダイシングウエハ間に介在したウエハ保護シートと、複数枚重ねた前記ダイシングウエハの上下両端部に配置したクッション材とを収納する輸送容器であって、
前記ダイシングウエハの上部に可動な2枚のシャッターを備え、前記シャッターに載せた前記ウエハ保護シートを滑らせて、前記ダイシングウエハの上に載せることを特徴とする輸送容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−62989(P2008−62989A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245234(P2006−245234)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】